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制がん剤処理および放射線照射が腫瘍細胞の浸潤能に      及ぼす影響

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 )    水 瀧 正人 学 位 論 文 題 名

制がん剤処理および放射線照射が腫瘍細胞の浸潤能に      及ぼす影響

学位論文内容の要旨

  浸潤 は転 移の 一要 素で あり 、転 移は がん治 療の 際最 も注 意を 払う 必要 があ る 点の ーつ であ る。 一般 的に 、が ん治 療は制 がん 剤、 外科 手術 なら びに 放射 線 照射 を状 況に 応じ て組 み合 わせ て行 われて いる 。し かし なが らこ れら のが ん 治療 は、 望ま ずに 浸潤 およ び転 移を 促進し てし まう りス クが ある こと が報 告 さ れ て い る 。 例 え ば 、DNAに 挿 入 さ れDNAト ポ イ ソ メ ラ ー ゼHを 阻 害 す る制がん剤であるドキソルピシンは、transforming growth factor‑[3 (TGF‑p) を 介し て乳 がん 細胞 の転 移お よび 浸潤 を刺激 する こと が報 告さ れて いる 。ま たZhaiら は 、 放 射 線 が 膠 芽 腫 の 浸 潤 性 を 促 進 す る 事 を 報 告 し て い る 。   制が ん剤 およ び放 射線 は様 々な 影響 を細胞 に及 ぽす ため 、上 記以 外に も腫 瘍 細胞 の転 移お よび 浸潤 を亢 進す る可 能性が ある 。そ こで 私は 、制 がん 剤お よ び放 射線 が腫 瘍細 胞の 浸潤 能に 及ぽ す影響 を調 ベ、 浸潤 能が 促進 した 場合 に そ の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て 研 究 を 行 っ た 。   第 一 章 で は 制 が ん 剤 に 着 目 し、 作用 機序 の異 なる4種類 の制 がん 剤が ヒト 胃 腺 が ん 由 来MKN45細 胞 の 浸 潤 能 に 及 ぼ す影 響 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 ピ ン ク リ ス チ ン がMKN45細胞 の ア メ ー バ 様 運 動 をguanine nucleotide exchange factor‑Hl (GEF‑Hl)/RhoA/Rho‑associated protein kinase (ROCK)/myosin light chain (MLC)シ グ ナ ル経 路 を 介 し て誘 導し、 その 結果 浸潤 能を 促進 する こと が 示唆 され た。 続い て第 二章 では 放射 線のバ イス タン ダー 効果 に着 目し 、放 射 線 を 照 射 し た ヒ ト 乳 が ん 由 来MDA‑MB‑231細 胞 お よ び ヒ ト 肺 が ん 由 来 A549細 胞 の 培 養 後 の 培 地 が そ れ ぞ れ の 細 胞 の 浸 潤 能 に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ た 。そ の結 果、X線を照射したがん細胞の培養培地はepidermal growth factor (EGFR)を 介 し て が ん 細 胞 の 細 胞 外 基 質 分 解 能 を 促進 し 、 そ の 結果 浸潤 能を 促進することが示唆された。

  本 研 究 か ら 、 ピ ン ク リ ス チ ン を 用 い た が ん 治 療 に お い てGEF‑Hl/RhoA/

ROCK/MLCシ グ ナ ル 経 路 を 阻 害 す る こ と 、 な ら び にX線 に よ る が ん 治 療 に お い てEGFRシ グ ナ ル 経 路 を 阻 害 す る こ と に よ り が ん細 胞 の 浸 潤 能を 抑制 し治 療効率を増強出来ることが期待される。

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学位論文 審査の要旨 主 査    教 授    稲 波 副 査    教 授    稲 葉 副 査    教 授    木 村 副査   准教授   山盛

学 位 論 文 題 名

    修     睦 和弘   徹

制がん 剤処理お よび放 射線照射が腫瘍細胞の浸潤能に      及 ぼす影響

  制が ん剤処置に は、がん の種類、 発症部位 ならびに がんのス テージ等に応じ て多 種多様な薬 剤が用い られてい る。同様 に、がん に対する 放射線治療も広く 行わ れており、 胃がん、 乳がん、 前立腺が んや肺が んを始め 、多くのがん種が 治療 対象である 。しかし ながら、 臨床では 制がん剤 およぴ放 射線で原発がん病 巣を 制御できた としても 、しばし ば浸潤を 起こし、 転移によ る死亡に至る例も ある ことが知ら れており 、その対 応が望ま れている 。しかし メカニズムについ ては 不明な点が多く、どのような制がん剤が転移を起こしやすいのか、さらに、

その 制がん剤や 放射線で の浸潤や 転移のメ カニズム について は明らかにするこ とは 治療中に起 きる予期 しない浸 潤や転移 の制御法 を開発す る上で重要である と考 えられる。 永瀧正人 氏は本学 位論文に おいて第 一章では 制がん剤によるが ん細 胞の浸潤能 の増強機 構につい て、第二 章では放 射線照射 部位の近傍の非照 射が ん細胞の浸 潤能の増 強機構に っいて明 らかにす る目的で 各種がん細胞株を 用いたインビトロでの実験を行い、これらのメ・カニズムの一部を明らかにした。

  第一 章 に おい て は 、DNA損 傷を 起 点 とす る 制が ん 剤 とし て シス プ ラ チン と エト ポシドを、 微小管に 影響を与 える制が ん剤とし てパクリ タキセルとビンク リ スチ ン の4つ の制 がん剤 によるがん 細胞の浸 潤能に及 ばす影響 に焦点を 当て 検 討 を行 っ た 。ヒ ト 胃腺 が ん 由来MKN45細 胞 を用 い て 検討 し たと こ ろ 、シ ス プ ラ チン 、 エ トポ シ ドな ら ぴ にパ ク リ タキ セ ルはMKN45細 胞 の浸 潤 能 を有 意 に抑 制したが、 微小管重 合阻害剤 であるビ ンクリス チンによ る処理は浸潤能を 逆に 促進するこ とが示さ れた。そ してこの 浸潤能の 促進はguanine nucleotide exchange factor‑Hl (GEF‑H1)/RhoA/Rho‑associated protein kinase (ROCK)/ myosin light chain (MLC)シグナル経路の活性化を介していることが示された。

更に 本研究によって、GEFーHl/RhoA/ROClくニノMLCシグナル経路の活性化ががん     ―531−

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細胞 の膜ブレ ブ形成と アメーバ様運動を引き起こすことも明らかにされた。既 に他 の研究グ ループか らアメーバ様運動と浸潤能は密接に関連していることが 報 告 され て いる こ と から 、 本研 究 で 得られ た結果は 、MKN45細胞の ビンクリ ス チ ン処 理 によ る 浸 潤能 促 進に はGEF‑Hl/RhoA/ROCK/MIーCシ グ ナ ル経路を 介 し た ア メ ー バ 様 運 動 が 関 与 す る こ と を 強 く 示 唆 し て い る 。   第二 章におい ては、X線 照射が間接 的(バイ スタンダ ー効果)に乳腺がん由 来MDA‑MB‑231細 胞 お よ び 肺 腺 が ん 由 来A549細 胞 の 浸 潤 能に 及 ば す影 響 を 検討 した。ま ず、X線を 照射したが ん細胞の 培養培地 を非照射のがん細胞の培 地と して用い て培養し たところ、非照射のがん細胞の浸潤能を促進することが 示さ れた。こ の結果はX線を照射し たがん細 胞の培養 培地中に細胞浸潤能を促 進す る何らか の因子が 存在するこ とを示し ている。 次に、X線を照射したがん 細 胞 にお い てepidermal growmfぬtor¢GF) のmRNA量 と 培地 中 のEGF濃度が 増 加 する 事が明ら かにされ 、細胞浸 潤能の促 進には照 射細胞か ら合成され る EGFが 関与 する事が示 唆された 。また、X線を照射 したがん 細胞の培 養培地が 非照射のがん細胞のepider111algrowthfactorreceptor(EGFR)を活性化させるこ と 、 なら びに非照 射細胞のEGFRを介して 細胞浸潤 能および 細胞外基 質分解能 を促進させることも明らかにされた。

  本研 究はビン クリスチ ンを用いたがん治療においてがん細胞浸潤能の活性化 が起こる可能性があること、さらにそのメカニズムには

GEF‐H1/RhoA爪OC尉MLCシ グ ナ ル経 路が 重要であ ること、 また、X線 照射さ れ た がん 細胞の近 傍の非照 射がん細 胞では浸 潤能の活 性化の可 能性がある こ と 、 その メカニズ ムとしてEGFRシグナル 経路の活 性化が重 要である ことを示 唆し た初めて の研究で ある。本研究成果はこれらのシグナル経路を標的にする こと で転移を 抑制し、 治療効率の増強を図ることが期待されることから、今後 のが ん治療法 の開発に おいて非常に意義のある研究であると認められる。よっ て、 審査委員 一同は、 上記博士論文提出者永瀧正人氏の博士論文は、北海道大 学大 学院獣医 学研究科 規定第6条の 規定によ る本研究 科の行う博士論文の審査 等に合格と認めた。

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