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植物由来素材

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 吉 田 美 樹

学 位 論 文 題 名

植物由来素材 PHA の医療応用に関する研究

ー肝芽腫細胞(HepG2) を用いたin vitro 実験―

学位論文内容の要旨

【背景と目的】

  生体材料(バイオマテリアル)は,生体の器官や組織や機能に対してそれを評価,治療,増強 あるいは置換するような生物システムとの接点になることを意図したものと定義される.生 分解性ポリマーは広くバイオマテリアルとして利用されており,外科手術時の組織の縫合,

固定,被覆,ステントなどの形態保持・補強や骨欠損の補填,組織誘導の足場として用いられ ている.このような生分解性ポリマーの中でポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は,多くの 微生物において基 礎栄養素が限定されたときにエネルギー貯蔵媒体として蓄えられる生分 解性ポリエステルとして知られている.PHAは生体親和性,生分解性,調整可能なカ学特性を 有するため,医療用途や工業用途への適応性を与えている.しかしながら,これまでにもPHA を用いた組織工学の足場などの研究が進められてきたが,医療応用に対して十分な研究が成 し遂げられている とは言えない.本研究は,PHA薄膜上での癌細胞の増殖および毒性の実験 による医療応用の 基本的な安全性の検証を目的とした,さらに,PHA薄膜上で培養した癌細 胞の遺伝子発現特性の解析により,再生医療をはじめとする医療応用への可能性を探ること を目的とした.

【材料と方法】

  薄膜を作成する ポリマー材料として3種類のPHAを用いた(HV2.5,HV10およびZ).培養用 の薄膜の作製には ,溶媒としてクロロホルムおよびアセトンの2種の有機溶剤を用い,溶解 したPHA溶液をガラス皿上に塗布することによ り薄膜を無菌的に作成した.この薄膜に対 して^ッドスペー スGC法を用いた残留有機溶剤の測定を行った.また,PHAは大腸菌などの バクテリアが産生する材料であるため,リムルス試験によるエンドトキシンの測定を行った.

薄膜上の培養には ヒト肝芽腫細胞の培養株HepG2細胞を用い,細胞の生存率はトリパンプル ーを用いた色素排除テストにて判定した,培養細胞の形態は光学顕微鏡および走査電子線顕 微鏡により観察した.細胞増殖能は,還元発色試薬WSTー8を利用して測定した.培養した細 胞からは全RNAを抽出し,逆転写反応を行い,cDNAを得た.このcDNAに耐熱性DNAポリメラ ーゼと目的遺伝子 として選択した肝細胞と胆管上皮細胞に特異的に発現する遺伝子のプラ イマーを加え,PCRを行った.PCR産物は,アガロースゲルにて電気泳動した後,観察を行つ た.

【結果】

  細胞培養用薄膜中には有機溶剤の残留は認められなかった.また薄膜中のエンドトキシン 含有量が実験に影 響を及ばさなぃことが確認された.光学顕微鏡やSEMによる観察結果か らは,薄膜の違いにより,細胞の成長のパターンや細胞の凝集性が異なっていることが確認 された.また,薄膜上での細胞増殖能をWST−8法で調べた結果,Z薄膜上で培養した細胞増殖 能はHV2.5,HV10およびコントロール薄膜上に比べて低かったことから,細胞の増殖に薄膜 の種類による影響が認められた.さらに,細胞死が発生し細胞生存率が低下している可能性 を調べるためにViabilityアッセイを実施した結果,HV2.5,HV10およびZともにコントロー

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ルと同様に細胞生存率は100%に近いことが確認された.一方,細胞数を比較した場合,コ ントロールに対してHV2.5では約70yo,HV10はほぼlOOYoであったのに対し,Zでは約15%であ り,Zに おい ては 細胞 生存 率 が高 いに もかかわらず細胞数が少ないことが確 認された,

RTーPCRとアガロースゲル電気泳動では,48時間培養後の遺伝子発現の比較おいて,Albはす べての薄膜上での結果が同じであった.ー方,CYP7 AlではHV2.5およぴHV10はコントロー ルと同様に遺伝子発現が低いのに対して,Zにおいてはその遺伝子発現が亢進していた.未 分化細胞に特異的に発現するAFP,DLKでは,すべての薄膜における結果は同様の傾向を示し た.また,KRT―19においては,48時間培養後では差が出ていなかった.次に,細胞培養の時間 を伸ばすことによって,上記の結果がさらに顕著になるか否かを確認するために,120時間 培養後の比較を行った.これによって,とくにZ上でのCYP7 Alの発現の亢進がさらに顕著と なった.またKRT―19は,HV2.5およびHV10において,他のものに比べて遺伝子の発現が亢進 していることが確認された,

【考察】

  本研究においては,対象とした植物由来素材PHAが生分解性および生体吸収性を備えてい ることから,医療応用に対する基礎データ取得のため,PHA薄膜上における肝癌細胞HepG2の 培養による反応を見るところから開始した.HepG2を選定するにあたり,他のヒト肝癌細胞 についても検討したが,その中でHepG2は分化・成熟した肝細胞のマーカー,未分化の肝細胞 のマーカーおよび胆管上皮細胞のマーカーなどをもともと発現している細胞であり,今回研 究対象としたPHAという材料によって,細胞がどのような方向に分化するのかを比較的幅広 く見ることができると考えた.PHA薄膜上におけるHepG2の形態的特長を観察および細胞増 殖能の測定や細胞生存率の測定によってin vitroで細胞に対する毒性のなぃことを確認し た.これによりPHAの医療応用への可能性の端緒が見えてきた.また,PCR法による遺伝子発 現の解析によって特定の遺伝子の発現の亢進をみることができた.例えば,CYP7A1遺伝子の 発現が亢進していることから,Z系のPHA上での培養によって,コレステロール代謝機能の活 性が上昇することにより,成熟した肝細胞への分化誘導が生じている可能性が考えられる.

また,V系においてはKRTー19の遺伝子発現が亢進しており,V系PHA上における培養によって,

肝癌細胞から胆管上皮細胞への分化が誘導されている可能性が考えられる,しかしながら,

調べるべき遺伝子は十分ではなく,さらなる研究が必要である.今後はin vivoにおいて生体 に与える影響についての観察が必要であり,まず動物実験において炎症反応や免疫反応を見 ることで,今回in vitroにて確認された医療応用の可能性について調べる予定である.これ らの段階を経た後,細胞培養用の基材など再生医療用材料としての可能性を探っていくこと が期待される.

【結論】

  PHAは医療応用に多くの可能性を有する素材であり,in vitroの実験により細胞に対する 毒性がないことが確認された.また,PCR法による遺伝子発現の解析によって,特定の遺伝子 の発現の亢進を見ることができた.しかしながら,PHAを医療材料として応用していくため には,in vivoにおける生体に与える影響について研究する必要がある.今後の研究の進展よ って,PHAには細胞培養用の基材や組織誘導の足場などの再生医療用材料あるいは生体機能 材料としての応用が期待される.

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    守内哲也 副 査    教 授    田中伸哉 副査   教授   佐々木文章

学 位 論 文 題 名

植 物由 来素 材 PHA の 医療 応用 に関 する 研究

一肝芽腫細胞(HepG2) を用いたin vitro 実験一

  生分解性ポリマーは広くバイオマテリアルとして利用されており、外科手術時の組織の縫合、固 定、被覆、ステントなどの形態保持・補強や骨欠損の補填、組織誘導の足場として用いられている。

こ のよう な生分解 性ポリ マーの中でポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、生体吸収性、生分解 性、調整可能なカ学特性を有するため、医療用途や工業用途への適応性が考えられている。本研究 は 、PHA薄膜上で の癌細 胞の増殖および毒性の実験による医療応用の基本的な安全性の検証を目的 と した。 さらに、PHA薄 膜上で培養した癌細胞の遺伝子発現特性の解析により、再生医療をはじめ とする医療応用への可能性を探ることを目的とした。

  薄膜を作 成するポ リマー材料として3種類のPIIAを用いた(HV2.5、IIVl0およびZ)。培養用の薄 膜 の作製 には、溶 媒とし てクロロ ホルム およびア セトンの2種の有機溶剤を用い、溶解したPHA溶 液をガラス皿上に塗布することにより薄膜を無菌的に作成した。

  細胞培養用薄膜中には有機溶剤の残留は認められなかった。また薄膜中のエンドトキシン含有量 が 実験に 影響を及 ぼさな いことが 確認さ れた。光 学顕微鏡 やSEMによる観 察結果からは、薄膜の 違 いによ り、細胞 の成長 のパター ンや細 胞の凝集 性が異なっていることが確認された。また、薄 膜 上での 細胞増殖 能をWST―8法で調べた結果、Z薄膜上で培養した細胞増殖能はHV2.5、‖V10およ び コント ロール薄 膜上に 比べて低かったが細胞生存率は100%に近いことが確認された。一方、細 胞 数 を 比較 した場合 、コン トロール に対してHV2.5で は約70%、HV10はほ ば1000であ ったのに 対 し 、Zでは約15%であ り、Zにおいて は細胞 生存率が 高いに もかかわ らず細胞 数が少ないことが確 認 さ れ た。RT―PCRに よる48時 間培養後 の遺伝 子発現の 比較お いて、Albはすべ ての薄 膜上での 結 果 が 同じ であった 。一方 、CYP7 Alで はHV2.5およびHV10はコント ロールと 同様に 遺伝子発 現 が 低いの に対して 、Zにおいてはその遺伝子発現が亢進していた。未分化細胞に特異的に発現する AFP、DLKでは、 すべて の薄膜における結果は同様の傾向を示した。また、KRT―19においては、48 時間培養後では差が出ていなかった。次に、細胞培養の時間を伸ばすことによって、上記の結果が さ らに顕 著になる か否か を確認するために、120時間培養後の比較を行った。これによって、とく にZ上 で のCYP7 Alの発 現 の 亢進 が さ らに 顕 著 とな っ た 。 またKRT一19は、HV2.5およ びHV10に

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おいて、他のものに比べて遺伝子の発現が亢進している ことが確認された。っまり、Z系のPHAで は、 分化 ・成 熟し た肝 細胞 のマ ーカ ーで あるCYP7 Alの発現が亢進し、一方、HV2.5およびHV10 系で胆管上皮細胞のマーカーであるKRT−19の発現が亢進した。これらの研究によりPHAの成分比 率によってさまざまな医療応用の可能性が開けると考え られた。

  結諭として、PHAは医療応 用に多くの可能性を有する素材であり、in vitroの実験により細胞に 対する毒性がないことが確認された。また、PCR法による遺伝子発現の解析によって、特定の遺伝 子の発現の亢進を見ることができた。しかしながら、PHAを医療材料として応用していくためには、

in vivoにおける生体に与え る影響について研究する必要がある。今後の研究の進展 よって、PHA には細胞培養用の基材や組織誘導の足場などの再生医療 用材料あるいは生体機能材料としての応 用が期待される。

  質疑応答では、冨lJ査の田中伸哉教授から植物プラスチックのPHAを研究材料に選んだ理由、これ を使用するオリジナリティ、発見者について、およびPHA上での細胞の形態の違いについて質問が あり、次いで、佐々木文章教授から、マウスを用いたin vivoモデルでの実験の有無、個々のHepG2 細胞での神経突起などの形態学的情報について質問あった。最後に主査の守内教授からは、実験に 癌細胞を用いた理由、北海道における産業としてのバイオマテリアルの優位性について質問があっ た。 いず れの 質問 に対 して も、 申請 者は 実験 データと先行論文を 引用し、妥当な回答をした。

  こ の論 文は 生分 解性ポリマーであるPHAが細胞培養用の基材や組 織誘導の足場などの再生医療 用材料あるいは生体機能材料として応用が期待できることを示した点が高く評価され、今後実用化 されることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ申請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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