Title
非環式レチノイド (4, 5-デヒドロゲラニルゲラノイン酸) の
抗発癌作用に関する研究 -- 特に肝癌由来細胞株に対する分
化誘導とその作用機序 --( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
荒木, 寛司
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1070号
Issue Date
1996-09-11
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15200
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 且 荒 木 寛 司(長野県) 博 士(医学) 乙第 1070 号 平成 8 年 9 月11日 学位規則第4条第2項該当 非環式レチノイド(4,5一デヒドロゲラニルゲラノイン酸)の抗発癌作用に 関する研究一特に肝癌由来細胞株に対する分化誘導とその作用機序-(主査)教授 武 藤 泰 敏 (副査)教授 森 秀 樹 教授 佐 治 重 豊 論 文 内 容 の 要 旨 レチノイドには分化誘導作用が認められ,癌の予防・治療への応用に関心が高まっている。レチノイドの分化 誘導作用に対する分子レベルでの機序に関しては,核内レチノイン酸レセプター(RAR),レチノイドⅩレセプ ター(RXR)に結合して作用を発現すると考えられるようになった。核内レセプターの発見に伴い,そのレセ プターのリガンドの検索がなされ,天然のレチノイン酸として.オールトランスレチノイン酸(ATRA)がRAR がリガンドであること,9-シスレチノイy酸(9CRA)がRARならびにRXRのリガンドであることなどが知 られている。4,5-デヒドロゲラニルゲラノイン酸(4,5-デヒドロGGA)は天然のレチノイン酸が環状構造を 持っのに対して直鎖の化合物で非環式レチノイドと呼ばれている。4,5-デヒドロGGAは,ATRAと同様に癌 細胞由来の細胞株に対して増殖を抑制し抗発癌作用をもつこと,また,長期間の使用に際して環式レチノイドに 認められる特有の副作用が格段に少ないことが明らかにされている。4.5-デヒドロGGA■は細胞性レチノイン 酸結合蛋白(CRABP)に結合することが報告されているのみで,RARやRXRなどの核内レセプターを介して 作用を発現するか否かは不明である。 そこで.申請者は4,5-デヒドロGGAが分化誘導作用を示す際,RARあるいはRXRのリガンドとなって標的 遺伝子の転写調節をしているかどうかをレチノイド応答配列を組み換えたCAT遺伝子を用いて検討した(CAT アッセイ)。また,アルファフェトプロテイン(AFP)遺伝子とc-m)′C癌遺伝子の発現レベルに及ぼす影響とそ の経時的変動,さらにRARβ遺伝子発現レベルに及ばす影響とその経時的変動,濃度依存性を検討した。 対象および方法 肝癌由来細胞株であるHuH7を用い,ATRA及び4,5-デヒドロGGA各々を細胞溶液中の最終濃度が0.1,1.0, 10.OpMとなるように添加した。AFP遺伝子とcTmyC癌遺伝子の発現レベルに関しては,レチノイド処理後15分, 30分,1時間,2時間,4時間,6時F乱12時間後に細胞を回収し,酸性グアニジンチオシアネート法を用い RNAを抽出し[:一2P]で標識したcDNAプローブによりノーザンプロット法で解析した。RARβ遺伝子の検出は DIG標識したcDNAプローブを用いてノーザンプロット法で行った。CATアッセイ:RAREβ-CAT,CRBP-Ⅲ-CATはATRAと9CRAに対するそれぞれの応答配列であるレチノイン酸レセプター応答配列,レチノイドⅩレ セプター応答配列とレポpクー遺伝子としてCAT遺伝子のcDNAを組み換えたものである。エレクトロボレーショ ン法によりHuH7にCAT遺伝子をトランスフェクションし,ATRA,9CRA,4,5-デヒドロGGA,ゲラニル ゲラノイン酸(GGA)などGGA誘導体を1FLMとなるように添加した。16時間培養し細胞を回収し,CAT活性 を測定した。 結 果 (1)AFP遺伝子及びc-myC癌遺伝子発現レベルに及ぼす非環式レチノイドの影響とその経時的変動:ATRA, 4,5-デヒドロGGA添加群ともに時間経過とともに遺伝子の発現が抑制された。AFP遺伝子発現はレチノイド添 加後1時間目より明らかな抑制が観察され,観察範囲である12時間目まで減少を続けた。C-mツC癌遺伝子発現は 30分後より抑制が観察され12時間後まで減少を続けた。 (2)RARβ遺伝子発現レベルに及ぼす非環式レチノイドの影響とその経時的変動:RARβ遺伝子の発現はレ チノイド添加後上昇した。ATRA添加群では4時間後より明らかな発現の増加を確認でき,4,5-デヒドロGGA 添加群では2時間後より明らかな発現の増加を確認できた。
-59-(3)RARβ遺伝子発現レベルに及ぼす非環式レチノイドの影響とその濃度依存性:4,5-デヒドロGGA添加群 では,0.1iLM,1.OFLM,10〟Mと濃度を上げるのにともなってRARβ遺伝子の発現も増加した。ATRA添加群 では,0.1fLMに比し1.OfLM添加でRARβ遺伝子の発現は増加したが,10FLMでは逆に1.OFLMに比し発現が低 下した。 (4)CATアッセイによるRARに対する各種非環式レチノイド,GGA誘導体のリガンド活性の観察:4,5-デ ヒドロGGA,GGAはATRAと同様にRARに対し強いリガンド活性を示した。4,5-デヒドロー10,11ハイドロ GGA‥10,11.14,15-ハイドロー4,5-デヒドロGGAはATRAに比べると弱いもののリガンド活性を示した。 (5)CATアッセイによるRXRに対する各種非環式レチノイド.GGA誘導休のリガンド活性の観察:4.t5デ ヒドロGGAとGGAは9CRAと同様にRXRに対しリガンド活性を示した。 考 察 4,5-デヒドロGGAの抗発癌作用については多くの報告がなされている。4.5-デヒドロGGAは,ATRAと 同様にAFP遺伝子,C-m)′C癌遺伝子の発現を抑制するなど抗腫瘍作用とみなされる作用を示した。この抑制作用 はすでに報告されているものであるが,その時間経過に関しては明らかではなかった。今回の実験では,ATRA あるいは4,5-デヒドロGGA投与後30分から2時間でAFP遺伝子.c-myC癌遺伝子の明らかな抑制が認められ, その効果はその後12時間まで持続した。また,RARβ遺伝子は,投与後2から4時間で発現の明らかな増加を 認めた。また,濃度による影響の違いをみた実験では.ATRAの濃度が0.1FLMより1.OFLMで発現が増加するも のの,その発現増強効果は1.OFLMで飽和に達し10.OFLMではRARβ遺伝子の発現がむしろ低下することが観察 された。しかし,4,5-デヒドロGGAでは,0.1〟M,1.OFLM,10.OFLMと濃度に依存してRARβ遺伝子の発現 を増加させた。これは,4,5-デヒドロGGAがATRAと同様にレチノイド作用を有することの一つの指標にな ると考えられる。しかし,4.5-デヒドロGGAはRARβに対する親和性が弱く,10.OfLMの濃度でもその作用 が飽和に達しないものと考えられた。非環式レチノイドの遺伝子発現に対する効果は.ATRAと同様であるが, 今までその作用機序がATRAと同様に核内レセプターであるRARや,RXRを介しているかが確認されていなかっ た。合成ポリプレン酸のうちいわゆる非環式レチノイドである4,5-デヒドロGGA,とGGAはレチノイン酸レ セプター応答配列,レチノイドⅩレセプター応答配列の両方に対しCAT遺伝子の発現を誘導した。これはt 非環 式の化合物がレチノイドレセプターのリガンドとなることを示した最初の報告である。4,5-デヒドロGGAの 作用のある部分に関してはt レチノイドレセプターを介していることが推察された。ほかの合成ポリプレン酸で は10,11,14,15ニハイドロー4,5-デヒドロGGAはCRABPに結合能を持たないものの,RARに対しリガンド活性 を有していた。急性前骨髄芽球性白血病(APL)に対する分化誘導療法のレチノイド耐性の患者ではCRABPレ ベルの上昇が認められている。このことが,レチノイド耐性の原因の一つであるならば,10,11,14t15-ハイドロー 4,5-デヒドロGGAは,CRABPに結合能を持たないためレチノイド耐性を獲得しにくいと考えられ,臨床への 応用が期待される化合物であると考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者 荒木寛司は非環式レチノイド(4,5-デヒドロGGA)が核内レチノイドレセプターのリガンドとな ることを示し,その抗発癌作用の少なくとも一部が核内レチノイドレセプターを介して作用している可能性を示 した。 これらの新知見は腫瘍学,ビタミン学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 非環式レチノイド(4,5-デヒドロゲラニルゲラノイン酸)の抗発癌作用に関する研究 一特に肝癌由来細胞株に対する分化誘導とその作用機序一 岐阜大医紀 44(3):403∼414,1996