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学位論文題名 Effect of temporary hepatic venous occlusion onhepatic arterial embolization:An experimental study

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 堀 尾 圭 司

     学位論文題名

  Effect of temporary hepatic venous occlusion on hepatic arterial embolization:An experimental study

(肝動脈塞栓術における一時的肝静脈閉塞の効果:基礎的研究)

学位論文内容の要旨

    「目的」

  肝動脈 塞栓術 は切除 不能肝細 胞癌( 以下肝 癌)に 対する 最も有効な治療法としてその地位が 確立し ている。 しかし、動脈血のみならず門脈血による栄養の可能性が示唆されている肝癌置換 性増殖 先端部に 対しては、肝動脈塞栓術による抗腫瘍効果が及ぱず、必ずしも治療法として万全 とはい えない。 近年、肝静脈閉塞下の肝動脈造影において、肝静脈閉塞域では肝実質の強い濃染 や逆行 性門脈描 出が認められることが報告されている。これは肝静脈を閉塞することにより中心 静脈へ の還流が 阻害さ れ、血 液の鬱 滞が生 じ、動 脈血がsinusoidを介して低圧の門脈に流入す るため と言われ ている。このことは担癌領域の肝静脈を閉塞して肝動脈塞栓術を行えば、同領域 を選択 的に高濃 度の塞栓物質で満たし、腫瘍とその周囲肝組織に対してより高い治療効果が得ら れる可 能性を示 唆する。しかし肝静脈閉塞下に肝動脈に塞栓物質を注入した際、塞栓物質がどの ような 分布様態 を示すか、かっその方法が肝癌の治療法として、実際に可能性があるのかについ ての研 究はまだ 少ない。われわれが調べた限り、塞栓物質の分布が実際に改善されるのかどうか を組織 レベルで 検討した報告はない。本研究の目的は肝静脈閉塞下に肝動脈塞栓術を行い、塞栓 物質の 組織レベ ルでの分布を調ベ、本手法の肝癌治療法としての可能性を検討することにある。

    「方法」

実験はWister系雄性 ラット (平均 体重360g)27匹を使 用し、diethyl etherに よる吸 入麻酔下 に開 腹 し て 行っ た 。 塞 栓物 質 と し てiodized poppyseed oil(以 下Lipiod ol) とIopamidol (300mgI/ ml)を等 量かつ 十分に 混和し た懸濁 液を用い た。ま ず予備実験として塞栓物質の至適 注入量 を調べる ため、肝静脈非閉塞下に固有肝動脈より異なった量の塞栓物質を注入して軟線撮 影を行い造影能を確認した。ラット6匹に対してそれそれ塞栓物質0.1,0.2,0.4,0.5,0.6,0.9ml を、30Gリ ンバ管 造影針 と1ml syringeを 用いて 用手的 に注入 した。塞栓物質O.lmlおよび0.2ml の注入 では肝動 脈、門 脈の描 出を認 めたが、sinusoidの描出は認めなかった。0.4mlの注入にて 肝動脈 、門脈周 囲にsinusoidの描出 が軽度 あり、0.6ml以上の 注入で は肝全 体に強 いsinusoid の描出 を認めた 。従っ て肝静 脈非閉 塞下で の塞栓 物質の 至適注入量は、過度のsinusoidの描出 を認 め な い0.5ml以下と 判断し た。次 に、肝 静脈閉 塞下に固 有肝動 脈より 塞栓物 質0.05mlを5 匹 に、O.lmlを6匹に 、0.2mlを5匹に 、0.5mlを5匹 に 注 入 し、 そ れ そ れの 液 量 に 応じ て1群

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(0.05ml)、2群(0.1ml)、3群(0.2ml)、4群(0.5 ml)とした。肝静脈の閉塞と塞栓物質の注入は以 下のように行った。肝鎌状間膜を切離し、肝静脈が下大静脈に流入する部位を露出し、その右側 部分を血管鉗子にて血流遮断した。肉眼的に右側肝の鬱血を確認した後、ただちに固有肝動脈よ り塞栓物質を注入した。塞栓物質注入後、ただちに肝を摘出し、10%ホルマリン加phosphate buffered saline(PBS)にて固定した。その後、en bloc silverimpregnationを用いて塞栓物質の 分布を検討した。組織切片は肝静脈閉塞域である右葉と、非閉塞域の外側左葉から作成した。非 閉塞域である外側左葉を対照として、閉塞域における塞栓物質の分布程度を評価した。組織像に おける塞栓物質の分布の評価はRappaportの分類に基づぃて行った。まず各群の閉塞域、非閉 塞域の組織切片中からそれそれ40個の古典的肝小葉を無作為に選択した。各肝小葉における塞 栓物質の最大分布が、Rappaportの分類のZoneI、H、Iuのいずれに及ぷかにより、塞栓効果を それそれGrade1,2,3に分類した。sinusoidに塞栓物質を全く認めない肝小葉はGrade0とし た。判定は注入条件をblindにした上で同一者により行われた。肝静脈閉塞に伴う組織レベルで の塞栓効果の変化を統計学的に評価するため、繰り返しのある二元配置の分散分析を用いて肝静 脈閉塞域である右葉と非閉塞域の外側左葉とで結果を比較した。

    「結果」

  Lipiod ol染色による組織学的な検討で、塞栓物質の注入量と肝静脈閉塞の有無により、

sinusoidに塞栓物 質を全く認めないGrade0からRappaportのZoneIに及ぷGrade1、Zoue II に及ぷGrade2、Zone IIIに及ぷGrade3に至るまで様々な程度の塞栓効果を認めた。注入量と 塞栓効果について、0.05ml注入量では肝静脈非閉塞群は全てGrade0であったが、閉塞群では 半数がGradeO、半数がGrade1を示した。O.lmlから0.5mlと注入量を増すにっれ閉塞、非閉 塞群ともにGrade2、Grade3の塞栓物質の分布が確認され、注入量の増加と共にGradeの高い 頻度は増した。しかし、0.5ml注入量例でもGrade0を肝静脈非閉塞群の50%、閉塞群の20% に認めた。閉塞域と非閉塞域との比較では、閉塞域で塞栓物質の分布はより広範であった。すな わち肝静脈閉塞により塞栓効果のGrade,の高い肝小葉の割合が増した。繰り返しのある二元配 置 の分散分 析を用 いた有意差検定では、閉塞域でGradeが有意に高かった(pく0.001)。

    「考察」

  今回の研究で肝静脈閉塞域では非閉塞域と比しより広範な塞栓物質の分布が有意差をもって 観察された。これは肝静脈の閉塞によって塞栓物質がsinusoidに流入しやすくなり、sinusoid における塞栓効果が増強されたためと考えられる。ヨード造影剤を用いた血管造影やcomputed tomography (CT) arteriographyにおいて、肝静脈閉塞域により多くの造影剤の分布、すなわ ち肝実質の強い濃染を認めている。これらの報告はわれわれの結果と一致する。しかし、造影剤 の 分布は必 ずしも 塞栓物質の分布と同一とは限らない。今回われわれが用いたLipiodol‑

Iopamidol懸濁液は塞栓物質そのものであり、肝静脈閉塞下動脈塞栓術の有効性がより明確に示 唆された。

    「結論」

  本研究において、肝静脈閉塞下の肝動脈塞栓術は肝動脈のみならずsinusoidにまで塞栓効果 が および、 門脈血 の関与す る肝癌 に対して も有効 な治療法となり得る可能性を示した。

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学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名

  Effect of temporary hepatic venous occlusion on hepatic arterial embolization:An experimental study    ( 肝 動 脈 塞 栓 術 に お け る 一 時 的 肝 静 脈 閉 塞 の 効 果 : 基 礎 的 研 究 )

   肝 動 脈塞栓術 は動脈血 のみなら ず門脈血 による栄 養の可能 性が示唆さ れている 肝癌置換 性増殖先 端部に対 しては、そ の抗腫瘍 効果が及ぱず治療法として万全とはいえない。近年、

肝静脈開 塞下の肝 動脈造影に 関する報 告がなされ、担癌領域の肝静脈を閉塞して肝動脈塞栓 術を行え ば、同領 域を選択的 に高濃度 の塞栓物質で満たし、腫瘍とその周囲肝組織に対して より高い 治療効果 が得られる 可能性が 示唆されている。しかし肝静脈閉塞下に肝動脈に塞栓 物質を注 入した際 、塞栓物質 がどのよ うな分布様態を示すか、かつその方法が肝癌の治療法 として、 実際に可 能性がある のかにつ いての研究はまだ少ない。本研究の目的は肝静脈閉塞 下に肝動 脈塞栓術 を行い、塞 栓物質の 組織レベルでの分布を調ベ、本手法の肝癌治療法とし ての可能性を検討することにある。

   実験はWister 系 雄性ラッ トを用いて 行った。 塞栓物質 として iodized poppyseed oil (以 下Lipiod ol) とIopamidol (300mgI/ml) の等量 懸濁液を 用いた。 肝静脈の 開塞は肝 静脈が 下大静脈 に流入す る部位を露 出し、そ の右側部分を血管鉗子にて血流遮断して行った。肉眼 的に右側 肝の鬱血 を確認後、 ただちに 固有肝動脈より塞栓物質を注入した。塞栓物質0.05ml を 5 匹 に 、 O.lml を 6 匹 に 、 0.2ml を 5 匹 に 、 0.5ml を 5 匹 に 注 入 し 、 そ れ そ れ 1 群 、 2 群 、 3 群 、 4 群 と し た 。 注 入 後 、 肝 を 摘 出 し 10 % ホ ル マ リ ン 加 phosphate  bu ffered s aline (PBS) にて固定し、en bloc silver impregnation を用いて塞栓物質の分布を検討した。

組織切片 は肝静脈 開塞域と非 開塞域か ら作成し、非開塞域を対照として、閉塞域における塞 栓物 質 の分布 程度を評 価した。 まず各群 の閉塞域 、非閉塞 域の組繊切 片中から それそれ 40 個 の 古 典 的 肝 小 葉 を 無 作 為 に 選 択 し た 。 各 肝 小 薬 に お け る 塞 栓 物 質 の 最 大 分 布 が 、 Rappaport の分類の ZoneI 、II 、III のい ずれに及ぷ かにより 、塞栓効 果をそれそれGrade1 、 2 、 3 に 分 類 し た 。 類 洞 に 塞 栓 物 質 を 全 く 認 め な い 肝 小 薬 は Grade0 と し た 。    組織学的 な検討で 塞栓物質の 注入量と 肝静脈開塞の有無により、類洞に塞栓物質を全く認 め な い Grade0 か ら Grade3 に 至 る ま で 様 々な 程 度の 塞 栓 効果 を 認め た 。 開塞 域 と 非開 塞 域との比 較では、 閉塞域で塞 栓物質の 分布はより広範であった。繰り返しのある二元配置の 分 散 分 析 を 用 い た 有 意 差 検 定 で は 、 開 塞 域 で Grade が 有 意 に 高 か っ た (p く0.001 ) 。    これは肝 静脈の開 塞によって 塞栓物質 が類洞に流入しやすくなり、類洞における塞栓効果      一383 ―

省 男

   

堂 坂

藤 宮

授 授

教 教

査 査

副 副

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が増強されたためと考えられる。これまでのヨード造影剤を用いた報告では,肝静脈閉塞 域に肝実質の強い濃染を認めており今回の研究結果と一致する。しかし、造影剤の分布は必 ずしも塞栓物質の分布と同一とは限らない。一方、 Lipiodol‑Iopamidol 懸濁液は塞栓物質 そのものであり、今回の研究で肝静脈閉塞下動脈塞栓術の有効性がより明確に示唆された。

   本研究において、肝静脈開塞下の肝動脈塞栓術は肝動脈のみならず類洞にまで塞栓効果が および 、門脈血の関与する肝癌に対しても有効な治療法となり得る可能性を示した。

   口頭発表に際し、副査の第一外科藤堂教授より肝静脈のclamp から塞栓物質注入までの 時間について、また、肝にうっ血が生じ動脈血流がうっ滞すると、動脈からの塞栓物質の 注入はテクニカルな問題が生じやすいことについて、さらに個々の詳で結果にばらっきが みられることについて質問がなされた。副査の放射線科宮坂教授より塞栓物質の注入圧お よび粒子径について、さらに臨床応用した際の塞栓物質注入量について質問がなされた。

主査の第三内科浅香教授よルラットとヒトの動門脈吻合に関する異同について、さらに正 常肝類洞と癌組織血液腔への塞栓物質の流入の違いについて質問がなされた。申請者は実 験中の肉眼所見や、これまでの塞栓物質粒子径、肝内微細血管構造に関する報告、肝癌増 殖 先 端 部 の 病 理 組 織 学 的 報 告 な ど を 引 用 し 、 概 ね 妥 当 な 回 答 を 行 っ た 。    これまで肝静脈閉塞下肝動脈塞栓術を臨床応用した報告が2 、 3 見られる。しかし、本 研究のようにその有効性を組織レベルで詳細に検討した報告はなく、臨床応用に際しての 基礎的デ一夕として、その有用性が高く評価される。今後、肝癌モデルや固形塞栓物質を 用いたさらなる研究が期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども

併せ申 請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

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