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現代クロアチアにおけるマイノリティ保護政策に関する研究

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Academic year: 2021

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博士論文要旨

現代クロアチアにおけるマイノリティ保護政策に関する研究

―ネイション化とヨーロッパ化の弁証法的相互作用を通して―

立命館大学大学院 国際関係研究科 国際関係学専攻 博士課程後期課程 やまかわ たかし 山川 卓

本研究は、現代クロアチアのマイノリティ保護政策を、ネイション化とヨーロッパ化という 二つの過程の相互作用から分析したものである。この事例を通じて、現代の国際社会における マイノリティ保護と国民国家の変容の意味を明らかにしている。

マイノリティは国民国家において不可避的に同化・異化・周縁化の圧力にさらされる人々 であり、現代の国際社会では、マイノリティ保護の推進とそれに対する反発の潮流が並存して いる。クロアチアは、1990年代に独立する過程で、マイノリティを排除する形での国民国家形 成を進めた。しかし同時に、マイノリティ保護を加盟条件とする欧州連合などの欧州国際組織 への参加を外交上の目的としていた。クロアチアは、国民国家形成とヨーロッパ統合への参加 の間で、マイノリティをめぐるジレンマに直面したのである。

独立直後のクロアチアでは、クロアチア系住民の権利拡大政策とマイノリティの追放政策を 通して、ロジャース・ブルーベイカーが言うところの「ネイション化」が進められた。ブルー ベイカーの議論は、ネイション概念をめぐる社会行為の動態性に着目する点に強みがある。し かし、ネイション化が進められる動態的な過程は、その根底にある論理と併せて考察しなけれ ばならない。本研究では、ネイション化に対して「ヨーロッパ化」という概念を対置させ、複 層的な普遍主義と個別主義の弁証法的相互作用として国民国家の再編成過程を把握すること によって、ネイション化の論理を解明しようとした。それにより、マイノリティ保護をめぐっ て対立すると見られる過程である、国民国家形成とヨーロッパ統合への参加がクロアチアにお いて同時に進められた理由を追求した。

本研究で分析したクロアチアの難民帰還政策とロマ保護政策は、ヨーロッパ統合への参加を 背景として形成され、マイノリティを国民に統合する志向性を持っていた。だが、クロアチア 政府のナショナリズムが変容させられることはなく、マイノリティ保護政策はネイション化を 否定するのではなく追認するものであった。ここでは、クロアチアのネイション化とヨーロッ パ化が対立するのではなく、相互に正当性を補填する形で進展した。それゆえ、現代のヨーロ ッパ統合におけるマイノリティ保護は、国民国家のナショナリズムを根底から問い直すもので はなかった。しかし同時に、その契機を国民国家の内部に再生産するものでもあったのである。

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