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運動療法を気管挿管中に施行し,人工呼吸管理から離脱,抜管できたネマリン・ミオパチーの一例

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(1)理学療法学 第 47 巻第 1 号 55 ∼ 運動療法を気管挿管中に施行したネマリン・ミオパチーの一例 60 頁(2020 年). 55. 症例報告. 運動療法を気管挿管中に施行し,人工呼吸管理から 離脱,抜管できたネマリン・ミオパチーの一例* 野々垣政志 1)# 阪 井 裕 一 2) 山 本   満 1). 要旨 【目的】乳児重症型ネマリン・ミオパチーを有し,肺炎後に集中治療室関連筋力低下にて人工呼吸管理が 長期化した幼児に対し,呼吸筋の筋力回復を目的に医師,看護師と連携し離床,運動療法を行い抜管に成 功したので報告する。 【症例】乳児重症型ネマリン・ミオパチーの 3 歳男児,肺炎のため気管挿管,人工 呼吸管理を行い,挿管後 6 日目に計画抜管したが呼吸筋の筋力低下と気道内分泌物の自己喀出困難により 再挿管となった。これに対し,経鼻挿管下に離床,バギーへの乗車,立位練習,歩行練習を行い,呼吸筋 の筋力回復を図った。介入中に計画外抜管を起こさず, 再挿管後 22 日目に抜管することができた。1 回目, 2 回目の抜管前の呼吸機能検査値より呼吸筋の筋力回復を認めた。 【結語】乳児重症型ネマリン・ミオパチー を有し気管挿管・人工呼吸管理が長期化した症例でも,気管挿管中の身体活動量を増加させることで呼吸 筋の筋力向上が促され抜管が可能となった。 キーワード 運動療法,人工呼吸,ネマリン・ミオパチー,集中治療室関連筋力低下,経鼻挿管. ていないのが現状である。. はじめに.  今回,乳児重症型ネマリン・ミオパチーを有し肺炎に.  集中治療室(Intensive Care Unit:以下,ICU)にお. て人工呼吸管理が長期化した幼児例を経験した。本児は. ける早期リハビリテーションは,短期・長期ともに予後. 一度計画抜管したがネマリン・ミオパチーと ICU‒AW. を改善し,人工呼吸管理中であっても積極的な離床や運. の影響により呼吸筋の筋力が不十分であったこと,また. 動療法を行うと,退院時や退院後の運動機能が改善す. 肺炎による気道内分泌物がみられ自己喀出が困難であっ. る. 1‒3). とされている。また,その安全性についても報告. たことから再挿管となった。経鼻挿管下にて呼吸筋の筋. 4) されている 。. 力回復を目的に医師,看護師と連携して離床し運動療法.  一方,ICU における集中治療室関連筋力低下(Inten-. を行ったところ,呼吸筋の筋力回復が認められ抜管に. sive Care Unit‒acquired weakness: 以 下,ICU‒AW). 至った症例を経験したのでその経過を報告する。なお,. の予防や回復に関しては,早期離床や早期からの積極的. 本報告の趣旨と内容について両親に十分に説明し,同意. な運動療法が功を奏したという症例報告は散見されるも. を得ている。. のの,科学的根拠は乏しいとされている 分野においても ICU‒AW が報告. 6)7). 5). 。近年,小児. されているが,人. 工呼吸管理下での運動療法については十分な検証がされ *. A Case of Nemaline Myopathy who Received Exercise Therapy while Intubated, which Facilitated Weaning from Mechanical Ventilation and Extubation 1)埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部 (〒 350‒8550 埼玉県川越市鴨田 1981) Masayuki Nonogaki, PT, BS, Mitsuru Yamamoto, MD, PhD: Saitama Medical Center 2)埼玉医科大学総合医療センター小児科 Hirokazu Sakai, MD, PhD: Saitama Medical Center # E-mail: [email protected] (受付日 2019 年 3 月 22 日/受理日 2019 年 10 月 2 日) [J-STAGE での早期公開日 2019 年 12 月 25 日]. 症   例  3 歳 10 ヵ月の男児。身長 90 cm,体重 12.5 kg,体格は 2 歳 6 ヵ月の平均相当であった。出生直後より日齢 3 日 まで人工呼吸管理を要し,その後は生後 6 ヵ月まで nasal Continuous Positive Airway Pressure(以下,CPAP)を 使用した。生後 10 ヵ月時に胃瘻造設術を施行し,1 歳時 に寝返りまで獲得し退院した。医療ケアは,胃瘻からの 経管栄養のみであった。1 歳 9 ヵ月で筋生検を行いネマ リン・ミオパチーと診断された。今回の入院直前の生活 は,食事は経管栄養が主であったが,経口摂取も軽食程.

(2) 56. 理学療法学 第 47 巻第 1 号. 度は可能であった。言語発達は良く,3 語文まで話して. (FIO2:0.4,PIP:20 cmH2O,PEEP:8 cmH2O,換気回. いた。運動面は,走ること,階段昇降が可能であり通常. 数 10/ 分,PS:8 cmH2O)であった。SpO2 は 98%,EtCO2. の保育園に通園していた。. は 35 mmHg であった。血液ガス分析(足底採血)は,.  入院 2 日前に喘鳴,酸素化不良にて前医に入院し,鎮. pH:7.45,PO 2 :55.4 mmHg,PCO 2 :48.9 mmHg,. 咳 薬, 去 痰 薬 に て 治 療 し て い た。 検 査 で は,CRP:. ‒ HCO3 :33.9 mmol/L であった。気管内の分泌物は多量. 1.3 mg/dL,WBC:9,600/µ L であった。抗原検査では,. であり,咳嗽のみでは喀出できず頻回に吸引が必要で. インフルエンザウィルス,RS ウイルス,ヒトメタニュー. あった。四肢の筋力は,動作観察上徒手筋力検査(manual. モウイルスともに陰性であった。その後,呼吸状態が急. muscle testing:以下,MMT)2 ∼ 3 であり,Medical Re-. 激に悪化したため気管挿管となり,全身管理目的に当院. 8) search Council Examination score (以下,MRC score). Pediatric Intensive Care Unit(以下,PICU)に転院し. は 36 点以下であった。起居動作は,寝返り,起き上がり. た。混合感染に伴う肺炎と診断され,セフォタキシムに. は困難であった。生活はベッド上のみであり,計画外抜. よる抗生剤投与を開始した。その後,喀痰培養よりモラ. 管しないように抑制帯を使用していた。リハビリテー. クセラ,メチリン感受性黄色ブドウ球菌が検出されたた. ションの際,指示に対して手足の運動を数回は行えるが,. め,スルバクタム / アンピシリン治療にデ・エスカレー. 本人の意欲の問題で反復することは困難であった。また,. ションし,1 週間投与した。鎮静薬はミタゾラム 0.1 mg/. 寝返りや介助座位など姿勢を変えることには非協力的で. kg/hr,鎮痛薬はフェンタニル 1 µ g/kg/hr を使用し,. あった。. ミオパチーのため筋弛緩薬は使用しなかった。挿管後 3.  本症例が再挿管に至った問題点は,抜管前の呼吸機能. 日目より排痰を目的に理学療法を開始し,挿管後 6 日目. 検査が呼吸筋の筋力低下を示していたこと,CRP は低. に 計 画 抜 管 し た。 抜 管 前 の 検 査 で は,CRP:0.7 mg/. 値であったが気道内分泌物が多量であり自己喀出ができ. dL,WBC:5,300/µ L であった。CPAP(自発呼吸)モー. なかったこと,再挿管前にエアウェイでは呼吸状態が改. ドによる自発呼吸状態の評価を 3 時間行い問題を認めな. 善しなかったこと,理学療法評価にて全身の著明な筋力. かった。また,気管チューブ周囲からのエアリークは充. 低下を認めていたことから,ネマリン・ミオパチーと. 分であった。抜管前の呼吸機能検査は,アイビジョン社. ICU‒AW の影響により呼吸筋の筋力低下と気道内分泌. 製 の ARFEL Ⅲ に て 測 定 し, 啼 泣 時 肺 活 量(crying. 物の自己喀出が困難であったことが主要因であると考え. vital capacity:以下,CVC) :18.5 ml/kg,最大吸気流. た。呼吸筋トレーニングは,腹式呼吸や機器を使用する. 速(peak inspiratory flow rate:以下,PIFR) :3.0 ml/. 方法が一般的であるが,本症例は幼児であり単純な反復. sec/cm,最大吸気圧(maximum inspiratory pressure:. 運動は困難であった。また気管挿管下であったことから. 以下,MIP):17.9 cmH2O であった。抜管後,あらかじ. 機器を使用した練習も困難であった。そのため,本人の. め準備していた高流量鼻カニュラ酸素療法(high-flow. 意欲向上と呼吸筋の筋力向上を促すことを目的に,離床. nasal cannula:以下,HFNC) (FIO2:1.0,flow30 L/min). の促しと病棟生活での活動量を増加させることから介入. を開始したが,吸気性喘鳴,陥没呼吸が著明となった. した。また,気管内分泌物が多量であったため適宜排痰. ため,ただちにマスク CPAP(FIO2:0.5-0.6,PEEP:. を行った。. 5 cmH2O)に変更した。マスク CPAP で 3 時間程経過.  再挿管後 2 ∼ 31 日目までの呼吸管理と理学療法経過. 観察している間,酸素化は SpO298% が維持できていた. を図に示す(図 1)。. が心拍数は 170 回 / 分程度の頻拍が続き,呼吸様式は改 善を認めず静脈血での PCO2 は 60 mmHg に上昇した。. 2.治療と理学療法経過(再挿管後 2 日目∼ 9 日目). そのため経鼻エアウェイを試したが呼吸状態は改善しな.  離床を促すにあたり,筋力低下により頭部の保持が困. かった。その後嘔吐し,SpO2 が 85% 程度から改善が認. 難であり,また介助座位には非協力的であったことか. められなかったため再挿管となった。. ら,バギーへの乗車をまず試みた(図 2) 。本人はバギー に乗車することを気に入り,日中の大半をバギーに乗車. 1.理学療法評価(再挿管後 2 日目). して過ごすようになった。バギーに乗降する際は,看護.  Glasgow Come Scale は E4VTM6 と,挿管のため発語. 師と挿管チュ−ブやライン類の管理を行いながら用手換. できないこと以外は満点であり,意思疎通は首振りで可. 気下で行った。さらにバギーに乗車中のかかわり方を医. 能であった。鎮静薬は,ミタゾラム 0.1 mg/kg/hr,プレ. 師,看護師,家族に呈示することで患児とのかかわりが. セデックス 0.5 µ g/kg/hr を使用し,Richmond Agitation. 増え,バギーに乗車して本を読む,塗り絵をする,風船. Sedation Scale は 0 であった。経鼻挿管下に人工呼吸器. で遊ぶなど日中の活動量が増加した。バギーへの乗車開. を使用し,モード設定は同調性間歇的陽圧換気(Synchro-. 始当初は医療従事者が離れる際は抑制帯を使用していた. nized Intermittent Mandatory Ventilation;SIMV). が,かかわりが増える中で抑制帯は解除できるように.

(3) 運動療法を気管挿管中に施行したネマリン・ミオパチーの一例. 57. 図 1 呼吸管理と理学療法の経過 呼吸管理は,再挿管後 2 日目から再挿管後 22 日目まで SIMV モードで管理し,再挿管後 10 日 目より数時間の SPONT モードを使用した.再挿管後 22 日目に抜管し,再挿管後 26 日目まで HFNC で管理した。その後,室内気で経過した. 理学療法は,バギーへの乗車より開始し,座位,立位,歩行練習を組み合わせながら実施した. SIMV:Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation(同調性間歇的陽圧換気) SPONT:Spontaneous(自発呼吸) HFNC:high-flow nasal cannula(高流量鼻カニュラ酸素療法). 図 2 経鼻挿管下でのバギーへの乗車 A:看護師が気管挿管チューブの管理を行い,理学療法士が移乗の介助を行ってはじめてバギー に乗車した. B:バギーに乗車し,理学療法士が本を使用して活動を促した.. なった。. 人の表情やバイタルサイン,姿勢,筋収縮の程度を評価 しつつ,気管挿管チューブが抜けないように配慮した。. 3.治療と理学療法経過(再挿管後 10 日目∼ 21 日目). 立位台では風船バレーや本を読む等の課題を行い,15.  再挿管後 10 日目より人工呼吸器の SPONT モード. 分 程 の 立 位 を 保 持 し た。14 日 目 に は SPONT モ ー ド. (FIO2:0.4,PEEP:6 cmH2O + Pressure Support:. (FIO2:0.4,PEEP:5 cmH2O + Pressure Support:. 8 cmH2O)での管理を 1 時間から開始した。再挿管後. 5 cmH2O)で日中 8 時間を過ごした。16 日目より栄養. 12 日目には,本人の運動に対する意欲向上が見られ気. サポートチームが介入し,理学療法実施後に分岐鎖アミ. 管内分泌物が減少してきたため,看護師による用手換気. ノ酸強化栄養剤を補給することにした。17 日目より理. 下で介助立位練習を実施した。しかし,疲労感が強く立. 学療法中は人工呼吸器を外して人工鼻(酸素ポート付). 位練習は 3 回のみの実施であった。また,立位保持はほ. を 装 着 し た。 こ の 際,SpO2 は 酸 素 投 与 1 L/min で は. ぼ全介助を要した。そのため,13 日目は立位台を使用し ,. 98% 程度,室内気では 90 ∼ 94% 程度であり,呼吸状態. 用手換気下で立位練習を実施した(図 3) 。この際,本. に応じて適宜酸素を使用した。気道内分泌物の自己喀出.

(4) 58. 理学療法学 第 47 巻第 1 号. 図 3 経鼻挿管下で立位台を使用した立位練習 A:看護師が用手換気,気管挿管チューブの管理を行い,理学療法士は起立台を調整した. B :看護師が用手換気を行い,理学療法士は頸部の保持を補助しつつ本を読みながら立位練習を実施した.. は困難であり,1 時間に 1 回程度は吸引が必要であった。. くなった。31 日目に退院となった。退院時の運動機能. PICU からバギーでリハビリテーション室に移動し,座. 面は,MMT は動作観察上上肢 4,下肢 2 ∼ 3 であった。. 位での遊びを通した運動や歩行練習を開始した。座位で. 端座位での遊びは 30 分以上可能となり(図 4),立位保. の運動は,端座位保持は困難であり,背もたれありの椅. 持は数秒可能となった。歩行は介助を要し,数歩のみ可. 子や介助下で行った。歩行練習は,下肢の筋力低下によ. 能であった。. り介助下で数歩程度のみ可能であり,本人が拒否しがち.  退院後,紹介元の病院にて経過観察となった。運動機. であったため反復しての練習は困難であった。そのため. 能面は,退院後約 3 ヵ月後に歩行が自立し,約 4 ヵ月後. ベッドからバギーまで歩く,バギーから遊ぶための椅子. に入院前と同等の日常生活動作能力に回復した。また,. まで歩く,というように本人が乗り気になるような工夫. 約 7 ヵ月には保育園への通園を再開した。. をして行った。  18 日目の呼吸機能検査では,CVC 17.8 ml/kg,PIFR. 考   察. 3.6 l/sec/cm,MIP 26.1 cmH2O と最初の抜管前の検査時.  本症例は,挿管後 6 日目に計画抜管したがネマリン・. と比べて PIFR と MIP は改善を認めた。CVC の数値は. ミオパチーと ICU‒AW に伴う呼吸筋の筋力低下と気道. やや低下したが,抜管の目安とされる 15 ml/kg は上回っ. 内分泌物の自己喀出困難により再挿管となった症例であ. ていた。また,検査では CRP:0.4 mg/dL,WBC:5,700/. る。ネマリン・ミオパチーは,顔面を含む全身の筋緊張. µ L であった。以上の結果と SPONT モードで 8 時間は. 低下と筋力低下を主症状とし,長期的に緩徐に進行する. 過ごすことができていたこと,また原疾患と ICU‒AW. 疾患である。つまり,今回の急速な呼吸筋の筋力低下は. により短期に著しい筋力の回復が望み難い点を考慮し,. ネマリン・ミオパチーによる不可逆的なものではなく,. 抜管を試みてもよい状況に至ったと判断した。しかし,. 呼吸筋の筋力は挿管前の状態まで改善する可能性がある. 気道内分泌物の自己喀出にはいまだスクイージングや吸. と考えられた。そのため,治療方針は早期の気管切開で. 引を要することがあったため,家族には三度挿管管理に. はなく挿管管理を継続し再度抜管を目指す方針とした。. なりうる旨を担当医より説明がなされた。. これに対し,理学療法では病棟生活での生活動作や遊び を通して活動量を増やしつつ,経鼻挿管下で座位,立位. 4.治療と理学療法経過(再挿管後 22 日目∼ 31 日目). の運動を促すことで呼吸筋の筋力向上を図ることに.  再挿管後 22 日目に計画抜管し,あらかじめ準備をし. した。. ていた HFNC(FIO2:0.4,flow30 L/min)を装着した。.  ICU‒AW は,ICU 入室後から数日以内に重症患者に. 気道内分泌物の自己喀出は不十分であり,吸引は必要で. 発症する左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群であ. あった。理学療法は,排痰補助として肺内パーカッショ. る。ICU‒AW の診断は,2014 年に American Thoracic. ンベンチレーターを使用しつつ,座位での運動や歩行の. Society からガイドライン. 促しを継続した。26 日目に HFNC を離脱し,酸素マス. 臨床所見による診断方法が提唱されている. クを経て同日酸素中止となった。この時点で気道内分泌. MRC score を 含 む 神 経 学 的 所 見 よ り 診 断 し,MRC. 物を自己喀出できるようになり,吸引を要することはな. score の合計点が 60 点満点中 48 点未満と定義している。. 9). が発表され,さらに簡便な 8). 。診断は,.

(5) 運動療法を気管挿管中に施行したネマリン・ミオパチーの一例. 59. 図 4 座位での運動 A:足蹴り乗用玩具を使用し,体幹・下肢の運動を促通した. B:座位でおままごとを行い,上肢・体幹の運動を促通した.. 本症例の再挿管後 2 日目の MRC score は,MMT が動. 6 日目 / 再挿管後 21 日目)であり,基準値には満たな. 作観察上で 2 ∼ 3 であり,36 点以下であった。また,. いが MIP でより高い改善率を示した。つまり,抜管で. 本児は入院前には保育園に通園し走って遊ぶことができ. きた要因は気道抵抗の改善も影響しているが,呼吸筋の. ていたことから,今回の入院中に急激な筋力低下を起こ. 筋力向上がより大きく影響したと考える。. しており,ICU‒AW の診断基準を満たす状態であると.  安田. 考えた。ICU‒AW の発症リスクは,長期の人工呼吸管. の増加,排痰出の強化,また下肢接地により筋収縮の刺. 理,敗血症,多臓器不全,全身性炎症反応症候群,麻酔. 激から体幹を支える筋力増強を期待でき,結果的には呼. 薬および神経・筋弛緩薬の使用,高血糖等,様々な要因. 吸筋力の改善も獲得できるとしている。松下. が指摘されている。本症例では,人工呼吸管理,体動の. 位や立位負荷は呼吸機能に影響し,換気血流比の改善,. 抑制,鎮静薬の使用に加え,ネマリン・ミオパチーを有. 肺活量・機能的残気量の増加,効果的な排痰を期待でき. していたことが要因であったと考える。. る。さらに運動負荷を与えれば,生理的に換気が惹起さ.  中川は,呼吸機能検査値の抜管基準について,CVC. れ,呼吸筋の強化と肺コンプライアンスの改善につなが. ≧ 15 ml/kg,PIFR ≧ 4 ml/sec/cm(最大吸気流速を身. るとしている。本症例においても,挿管下での座位,立. 長 [cm] で補正したもの) ,MIP の絶対値≧ 35 mmH20. 位,歩行の運動により上記の効果が得られ呼吸筋の筋力. であると述べている. 10). 。これらの基準を満たさない場. 11). は,早期離床の効果として覚醒に伴う換気量. 12). は,座. 向上が促されたと考える。 13). 合は,それぞれの要素でなにが問題なのかを検討するこ.  本症例は,計画外抜管を一度も起こさなかった。長. とが重要とし,たとえば CVC が低い場合は肺コンプラ. は,長期人工呼吸器管理を行う際,計画外抜管に対する. イアンスが改善していない,PIFR が低い場合は気道抵. 工夫として経口挿管から経鼻挿管への入れ替えの必要. 抗が高い病態がないか,MIP(呼吸筋がつくり出す陰圧. 性,気管挿管チューブのテープ固定方法について解説し. を評価するもの)が低い場合は潜在的な神経筋疾患や横. ている。当院 PICU でも,気管挿管下での腹臥位や介助. 隔神経麻痺がないかを考えるとしている. 10). 。本症例の. 座位等を行う際は,経口挿管ではテープ固定が唾液で緩. 呼吸機能検査値は,挿管後 6 日目は CVC 18.5 ml/kg,. みやすいこと,口角周囲の軟部組織が柔らかく可動性が. PIFR 3.0 ml/sec/cm,MIP 17.9 cmH2O で あ り, 再 挿. 大きいことから経鼻挿管に入れ替えてから行っており,. 管後 21 日目は CVC 17.8 ml/kg,PIFR 3.6 ml/sec/cm,. 本症例にも同様の対応をしたことが計画外抜管を防ぎ得. MIP 26.1 cmH2O で あ っ た。CVC は, 挿 管 後 6 日 目,. た一因であったと考える。さらに本症例は経鼻挿管を. 21 日目ともに基準値を満たしており,肺コンプライア. 行った際に口腔内容積に対して舌が大きいことで挿管に. ンスは問題ないと考えた。PIFR と MIP の値を抜管基. 難渋したため,計画外抜管を防止するという医師・看護. 準値に対する割合で示すと,PIFR は 75%/89%(挿管後. 師の意識が高く,呼吸回路の取り扱いや頻回な固定テー. 6 日目 / 再挿管後 21 日目) ,MIP は 51%/75%(挿管後. プの貼り替え等の管理体制が厳格に行われたことも計画.

(6) 60. 理学療法学 第 47 巻第 1 号. 外抜管を防ぎ得た一因であったと考える。リハビリテー. たことが主要因で人工呼吸管理が長期化した幼児でも,. ション介入中は,医師,看護師と連携し気管挿管チュー. 医師,看護師と連携し経鼻挿管下であっても身体活動量. ブの固定,ライン類の管理,介助者等の役割分担を明確. を増加させることで呼吸筋の筋力向上が促され抜管が可. にしたうえで複数名での介入を行った。また,長. 13). は,. 能となった。また,幼児の挿管例においては本人の知的. 運動療法中は一時的に人工呼吸器を外せる患者であれば. な発達と身体機能を的確に評価し,気管挿管チューブの. 人工呼吸器を気管挿管チューブから外し,加温加湿に対. 管理を厳格に行うことができれば,抑制帯を使用するこ. 応するために人工鼻を装着して活動性を高めることを提. となく安全に生活し,運動療法を提供できることが示さ. 案している。本症例においても呼吸機能の改善に伴い,. れた。. 運動療法は人工呼吸器を外して人工鼻を装着して行うこ.  今回の経験から,呼吸筋の筋力低下と気道内分泌物の. ととした。これにより不意な頸部の回旋や姿勢変化によ. 自己喀出が困難であったことにより気管挿管が長期化し. る気管挿管チューブの計画外抜管のリスクを下げ,活動. た幼児例であっても,患児の状態に合わせて離床し,運. 範囲の拡大を図ることができた。また,入院前の本症例. 動療法を提供することが重要であると考える。. は 3 語文を話し,走るまでの発達を獲得していた。一般 的に 3 歳児は身の回りのことが自分でできるようにな り,ルールを守ることができるようになる年齢である。 幼児であっても本症例のようにルールを守ることがで き,かつ自分で抜管してしまう程の筋力を繰り返し発揮 することができない症例であれば,挿管中に抑制帯を解 除しても計画外抜管することなく生活,運動が可能であ ると考える。  ICU での早期リハビリテーション実施にあたり,日 本集中治療医学会では多職種連携の必要性や専従理学療 法士の配置が望ましいとしている. 5). 。当院 PICU では,. 専任理学療法士を 1 名配置し,年間約 80 例の臨床業務 に加え,病棟カンファレンス等に参加し,普段の臨床業 務から医師,看護師,臨床工学技士等と多職種で連携し やすい体制にある。そのため,用手換気やライン類の管 理に関する診療補助だけでなく,経鼻挿管下での座位, 立位練習や人工鼻の許可等,状態に応じたプログラムの 相談が日々行える環境であり遅滞なく運動療法を提供す るうえで効果的であったと考える。一方,幼児における 経鼻挿管下での立位,歩行練習は当院の PICU でははじ めてで,文献も見あたらない。こうした中,専任理学療 法士が過去に成人の気管切開例で人工呼吸管理下での立 位練習や歩行練習を行った臨床経験があったことは,今 回経鼻挿管管理下での立位・歩行練習を進めるうえで効 果的であったと考える。  本稿は,一症例に限った報告であり,運動療法以外に も栄養状態の改善や SPONT モードの使用も呼吸筋の筋 力向上に寄与した可能性があると考える。今後も引き続 き幼児の挿管例でも計画外抜管を起こさないように注意 しながら離床,運動療法を提供し,その効果を検証する 必要があると考える。 結   語  肺炎後にネマリン・ミオパチーと ICU‒AW による呼 吸筋の筋力低下と気道内分泌物の自己喀出が困難であっ. 利益相反  本症例報告について開示すべき利益相反はない。 文  献 1)Schweickert WD, Pohlman MC, et al.: Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009; 373: 1874‒1882. 2)Bailey P, Thomsen GE, et al.: Early activity is feasible and safe in respiratory failure patients. Crit Care Med. 2007; 35: 139‒145. 3)Burtin C, Clerckx B, et al.: Early exercise in critically ill patients enhances short-term functional recovery. Crit Care Med. 2009; 37: 2499‒2505. 4)Morris PE, Goad A, et al.: Early intensive care unit mobility therapy in the treatment of acute respiratory failure. Crit Care Med. 2008; 36: 2238‒2243. 5)日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会: 集中治療における早期リハビリテ−ション─根拠に基づく エキスパートコンセンサス─.日本集中治療医学会雑誌. 2017; 24: 255‒303. 6)Kukreti V, Shamim M: Intensive care unit acquired weakness in children: Critical illness polyneuropathy and myopathy. Indian J Crit Care Med. 2014; l8: 95‒101. 7)Coçkun-Benlidayı İ , Baçaran S, et al.: Early rehabilitation of a child with intensive care unit auquired weakness secondary to membranoproliferative glomerulonephritis: A case report. Turk J Pediatr. 2015; 57: 422‒425. 8)Stevens RD, Marshall SA, et al.: A framework for diagnosing and classifying intensive care unit-acquired weakness. Crit Care Med. 2009; 37: 299‒308. 9)Fan E, Cheek F, et al.: An official American Thoracic Society Clinical Practice guideline: the diagnosis of intensive care unit-acquired weakness in adults. Am J Respir Crit Care Med. 2014; 190: 1437‒1446. 10)中川 聡:小児の人工呼吸からのウィ−ニング.ICU と CCU.2006; 30: 65‒69. 11)安田英人,高橋 充,他:人工呼吸器離脱のためのリハ ビリテーション.MB Medical Rehabilitation.2017; 215: 72‒81. 12)松下隆義,吉川 達,也:急性期リハビリテーション. MB Medical Rehabilitation.2018; 222: 1‒6. 13)長 順子:長期人工呼吸器装着患者のケア.呼吸器ケア. 2011; 9: 2‒7..

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