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 筆者は近世末期から明治初期にかけて下津具村(現,愛知県北設楽郡設楽 町津具地域)の医師であり,上層農民であった山崎譲平が書き残した『日知 録』をもとに山崎家の家族構成員別の行動領域および山崎家にかかわる人物 の行動領域を分析した(村田:2001).その一節で,医師・山崎譲平の診療行 動の分析も試み,診療圏が津具地域にとどまらず,東隣の豊根村や北隣の根 羽村にまでおよんでいたことを明らかにした.聞き取り調査を進めていくな かで,山崎家は代々医業を営み,現在でも続いていることを知ることになっ た.そこで,下津具村に残る診療報酬請求書綴および伝染病発生患者転帰届 を元に,引き続き追跡し,大正∼戦後期までの地域の疾病の特徴を明らかに したい.本史料は『日知録』とは異なり,日記ではなく公的な史料であるた め,必然的に山崎家ではなく,疾病の内容に主眼が置かれることになる.  疾病に関する地理学的研究として,医学地理学では籾山の一連の研究 (1971:79)がよくしられる.歴史地理学では小林(2000),川口(2001),渡 辺(2010)など近世期における流行病の拡散パターンの研究は蓄積されつつ ある.加賀美(2004)は発生頻度が地域的に異なる病気の空間パターンを明 らかにすることでより広い空間の構造を解釈することが可能になるといい, 住民活動内容の変化とともに,疾病の発生の起こり方は変化をみせ,また, 疾病は人間活動の空間的な特徴を分析,解釈するための手がかりになるとも いう.この点は,地域独特の様々な事象が複雑に絡み合い地域の疾病が発生 するという千葉(1969:79)の視点に繋がる部分もある.そこで本研究では, 奥三河という環境下における疾病の特徴を導き出し,下津具村を中心とする 人間活動の一端を解明していきたい.

第6章

20世紀前半,奥三河・下津具村を中心とする疾病の特徴

村 田 祐 介

Ⅰ はじめに

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 下津具村は,2005年の市町村合併によって設楽町と合併した旧津具村の東 側地域に位置している.現在は愛知県北設楽郡設楽町大字津具地域となって いるが,ここでは主に合併以前の津具村について概要をあげる.  津具村は愛知県北東部に位置し,北は長野県根羽村に,東,南,西はそれ ぞれ北設楽郡に面していた(図1).上津具村と下津具村の境界付近に位置し ていた村役場付近は標高約670m であり,村内を北西から南東へ流れる天竜 川水系の津具川とその支流の本沢川,油戸川などが形成する盆地の中心地域 となっている.盆地部の平坦面は水田としての利用が多く,奥三河では設楽 町名倉地域と並ぶ米どころであった1).周囲は最高標高約1,200m の山地に囲 図1 津具地域 1)奥三河地域では水田耕作を大規模に営むことができる地域は少なく,「津具に嫁に行くと米 が食える」ということで喜ばれたという. Ⅱ 津具地域の概要

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まれており,林地としての土地利用が卓越し,山地と盆地の境界付近は畑地 として利用されることが多かった.  津具中学校観測資料によると,津具村の最暖月平均気温は8月の23.2℃, 最寒月平均気温は1月の0.2℃である.年平均気温は12.1℃となっており,同 じ愛知県の名古屋市よりも3℃ほど低く,長野県の松本市,飯田市などに近 い気候を呈しており,夏冷涼冬寒冷の年較差,日較差の大きい地域であった.  1947(昭和22)年の臨時国勢調査によると同年の津具村の人口は4,122人 (下津具村2,376人,上津具村1,746人)であった.また,1950年の国勢調査に よると津具村において農業に従事するものが約62%を占め,製造業が10.2%, 卸売・小売業が5.4%,鉱業が5.1%,サービス業が5.0%,林業・狩猟業が 4.2%と続いていた.津具村には武田信玄によって採掘されたのがその始まり だという津具金山がかつて存在し,幾度も採掘と閉山を繰り返し,1957年ま で存在した.多いときには従業員・抗夫は350人も達したという.  医療面では,1926(大正15)年まで津具村で医療に携っていたのは上津具 村・下津具村それぞれにおける山崎医院二軒だけであった.上津具村の山崎 寛仲,下津具村の山崎譲平は各々美濃国,備前国で医業を学び,当時として は最先端の医療技術を津具村に持ち帰っている(村田:2001).1940年以後 になると,山崎医院のほかに次々と医院が開業し,医療はかなり充実したと される(津具村2000:239). Ⅲ 診療報酬請求書綴の分析  下津具村に残る診療報酬請求書綴は「昭和二十三年二月分診療報酬請求書 綴」,「昭和二十三年三月分診療報酬請求書綴」,「昭和二十三年四月分診療報 酬請求書綴」,「昭和二十三年九,十,十一月分診療報酬請求書綴」,「昭和 二十三年十二月分診療報酬請求書綴」であった2)  本研究では,季節的な特徴をみせる疾病と季節的な影響を受けにくい疾病 についても明確にしていきたい.そこで,史料が残存するなかで,当該地域 において平均気温が最も低い「昭和二十三年二月分診療報酬請求書綴」と平 均気温が最も高い「昭和二十三年九,十,十一月分診療報酬請求書綴」を利用 2)戦後すぐということを踏まえ,公的な書類である診療報酬請求書綴でさえも裏紙を活用する 場合もあり,史料の保存状態は決してよいものとはいえない.

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する.  「昭和二十三年二月分診療報酬請求書綴」には,1948年2月分が202件残存 していた.一方で,「昭和二十三年九,十,十一月分診療報酬請求書綴」には, 1948年9月∼11月分がまとめて170件残存していた.内訳をみると,9月分が 62件,10月分が49件,11月分が59件である.  診療報酬請求書綴のなかに記載されるべき項目は以下の通りである.順に 並べると,年月日,診療番号,受診番号,住所,被保険者名,性別,生年月, 傷病名,初診(日),入院(日),終了(日),転帰,診療日数,請求内容,担 当医師という項目である.しかしながら,担当医師によって書式が大きく異 なることがあるうえ,各項目ごとに空欄が存在することも多々ある.また, 欄外の余白部へ患者の世帯主の名や患者の住所の小字を示したと思われる書 き込みが散見されるときもある.  被保険者名,性別,傷病名,初診(日)は多くの診療報酬請求書綴に記され ているものの,住所が書かれているものは少なかった.ただし,そのなかで も初見の患者に関しては簡便ながら書かれることもあった.恐らく現存する 診療報酬請求書綴以前に診察したことのある患者に対しては住所を省略した ものだと推測される.生年月については記載されているものがほとんどで, 生年月の項目をもとに,受診時の年齢を推定することが可能である3).なお, 後述する伝染病患者発生転帰届での年齢が数え年で記載されているため,診 療報酬請求書綴においても年齢の推定作業は数え年で行った. 1. 二月分診療報酬請求書綴  最初に,二月分診療報酬請求書綴に記された年齢階層ごとに区分し,特徴 を見いだしていきたい.二月分診療報酬請求書綴に記された性別は男が95 件,女が107件の計202件であり,患者の最高年齢が80歳,最少年齢が1歳で あった.5歳ごとに確認していくと,1∼5歳が31件,6∼10歳が25件,11 ∼15歳が11件,16∼20歳が10件,21∼25歳が10件,26∼30歳が11件,31∼35 歳が6件,36∼40歳が9件,41歳∼45歳が13件,46∼50歳が11件,51∼55歳 が15件,56∼60歳が9件,61∼65歳が8件,66∼70歳が9件,71∼75歳が5 件,76歳以上が5件,不明8件であった.  その中で,期間内に転帰(治癒)したものが122件,死亡が3件,継続治療 3)初診月と生年月の月が重なる場合は正確な年齢の特定ができない.

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や経過観察が36件,不明が41件であり,担当医師は佐々木五郎(下津具村) が84件,山崎旦(下津具村)が77件,村松忠子(上津具村)が25件,山崎譲 一(上津具村)が16件であった.なお,山崎譲一は『日知録』を残した江戸 時代末期の医師・山崎譲平の姉・つさの曾孫にあたり,山崎旦とは親戚関係 にあたる.  表1は各年代の男女別に疾病内容を全て記したものである.なお,表記は 二月分診療報酬請求書綴に記載されているまま記している.  表1をみると,実に様々な疾病で村民が医者にかかっていることが理解で きる.ただ,その中でも5歳までの乳幼児の診療数が圧倒的に多く,10歳ま で診療数の多さは持続した.その後は40歳代から50歳代前半にかけて緩やか なピークを確認することができた.2月という季節柄,年齢層に関係なく気 管支炎や感冒など呼吸器系の疾患で医師にかかる傾向が強く,全年齢階層で 確認できる気管支炎は43件を,感冒は16件を数えた.20件の蛔虫症もまた年 齢に関係なく罹患していることを読み解くことができる.なおこれら三種の 疾病で診療数の4割を占めていた.また,年齢階層ごとに罹患する傷病名も 変化していった.10歳代半ば以降の男性ではいわゆる怪我またはそれに伴う 化膿が増加していき,20歳代以降の女性では女性特有の疾病が表れてきた. 40歳代を過ぎると消化器系に関連する疾患が,50歳代を過ぎると筋骨格系に 関連する疾患がそれぞれ増加していく傾向にあった.  担当医師による差異をみてみると,佐々木五郎,山崎旦,山崎譲一では特 定の専門分野に関わらず診療にあたっていたことを読み取ることができた. 一方で,村松忠子による診察では25件中23件について,全ての傷病名に耳と いう記載が見受けられた.津具村誌にも村松忠子の専門は小児科耳鼻科とあ る(津具村2000:239).上記の佐々木,両山崎医師による傷病名の記載には, 耳に関連する診療記録が見受けられるものの,下津具村の人々にとって耳に 関連する体の不具合には,より専門性の高い上津具村の村松忠子のもとへと 足を運ぶ傾向があったことが分かる. 2. 九,十,十一月分診療報酬請求書綴  九,十,十一月分診療報酬請求書綴に記された性別は男が89件,女が80件, 不明が1件の計170件となり,2月と比較すると診療数は,男性が女性を上回 る点で異なっていた.患者の最高年齢は84歳,最少年齢が1歳であった.年 齢毎の内訳は,1∼5歳が18件,6∼10歳が12件,11∼15歳が18件,16∼20

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表1 昭和二十三年二月分診療報酬請求書綴にみる年齢性別ごと疾病一覧 表記は史料のまま表記し,年齢は数え年によるもの.○は不明.その他の欄の傷病名中の数字は 年齢. (昭和二十三年二月分診療報酬請求書綴 下津具村より作成) 年齢 件数 性別 件数 傷  病  名 1∼5歳 31 男 12 蛔虫症2,脚気,頸部琳把腺炎,百日咳,上気道カタル百日咳,腸カタル,気管枝炎 中耳炎扁桃腺炎,急性中耳炎,気管支炎兼顔面湿疹,火傷(右足○) 女 19 気管枝炎5,蛔虫症3,感冒2,気管支炎中耳炎,胃炎兼蛔虫症,腸炎中耳炎 胃腸炎兼蛔虫症,頸部化膿,急性腎炎,腔内炎,外耳炎,急性腎炎外耳皮フ炎 6∼10歳 25 男 13 急性中耳炎4,感冒3,蛔虫症,急性胃炎兼蛔虫症,急性胃腸炎,頭頸部膿湿疹 腹部及両大腿大傷,胃経レン 女 12 気管枝炎2,感冒2,急性中耳炎2,中耳炎扁桃腺炎,扁桃腺炎,腸カタル 急性胃腸炎兼蛔虫症,大葉性肺炎,疥癬 11∼15歳 11 男 7 気管枝炎2,中耳炎2,急性中耳炎扁桃腺炎,慢性中耳炎,扁桃腺炎 女 4 右手外4指○症,結膜炎,欧氏管カタル,胃腸炎 16∼20歳 10 男 7 顔部湿疹,右下腿化膿,左趾化膿,肺結核,蛔虫症,感冒,急性中耳炎3 肺結核,気管枝炎,急性中耳炎 21∼25歳 10 男 3 腸カタル,気管枝炎,喘息 女 7 感冒,脚気及気管枝炎,気管枝炎兼頭部琳把腺炎結核,左乳腺炎,右足捻挫BCG潰瘍,心臓辨膜症 26∼30歳 11 男 4 気管枝炎,手指割創(3本),肺結核,顔部湿疹 女 7 蛔虫症,急性胃炎兼蛔虫症,気管枝炎,感冒,脚気,肺結核,子宮内膜炎 31∼35歳 6 男 1 右手第2指化膿5 蛔虫症,気管枝炎,扁桃腺炎,胃腸炎,腸カタル 36∼40歳 9 男 2 肺結核,気管枝炎 女 7 腸カタル○痛,胃腸カタル,胃痙攣,蛔虫症,感冒腎炎,疥癬,脚気 41∼45歳 13 男 6 感冒,肋間神経痛,メニエール氏病,急性胃炎,胃炎,気管枝炎7 気管枝炎3,慢性気管枝炎,肝硬変症,結膜炎,乳腺炎 46∼50歳 11 男 6 気管枝炎3,気管枝炎及右足母指膿症,右足打撲傷,急性中耳炎 女 5 胃腸カタル,左膝ロイマチス,肝臓膿瘍,心臓辨膜症,大腸炎 51∼55歳 15 男 7 胃潰瘍,胃腸カタル,急性胃炎兼蛔虫症,関節リウマチ兼坐骨神経痛関節リウマチ,筋肉リウマチ,気管枝炎 女 8 気管枝炎2,気管枝喘息,気管枝炎兼蛔虫症,貧血兼蛔虫症,大腸炎 心臓辨膜症,関節リウマチ 56∼60歳 9 男 5 気管枝炎2,感冒,後頭部傷,気管支喘息 女 4 左関節炎(足),関節リウマチ,左足首神経痛,急性胃炎兼蛔虫症 61∼65歳 8 男 5 気管枝炎2,感冒2,喘息 女 3 蛔虫症,右下肢湿疹,腸炎肩凝結膜炎 66∼70歳 9 男 5 気管枝炎2,頸部粉腫,蕁麻疹及右大腿筋○,急性中耳炎 女 4 胃腸カタル,蛔虫症,胆石症,喘息 71∼75歳 5 男 2 脚気,坐骨神経痛 女 3 気管枝炎2,脚気及肩化膿 76歳∼ 5 男 2 右上肘骨髄炎,気管枝炎 女 3 虫垂炎,右肺間浸潤,関節ロイマチス その他 14 男 3 10(11)歳男・感冒,55(56)歳男・気管枝炎,75(76)歳男・胃癌 女 3 5(6)歳女・耳○○雫,25(26)歳女・右下腿筋炎,65(66)歳女・両足首神経痛 不明 8 中耳炎2,気管枝炎,趾化膿,右足捻挫,神経衰弱,敗血症,急性中耳炎咽頭炎

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歳が19件,21∼25歳が15件,26∼30歳が10件,31∼35歳が0件,36∼40歳が 7件,41歳∼45歳が9件,46∼50歳が8件,51∼55歳が7件,56∼60歳が2 件,61∼65歳が7件,66∼70歳が11件,71∼75歳が13件,76歳以上が5件, 不明が6件であった.  その中で,月内に転帰したものが95件,死亡が1件,継続治療や経過観察 が71件,不明が3件であった.担当医師は山崎旦が164件,夏目壽雄(豊根 村)が5件,横田誉(新城町)が1件である.  表2は各年代の男女別に疾病内容を全て記したものである.なお,表記は 診療報酬請求書綴に記載されているまま記している.  「九,十,十一月分診療報酬請求書綴」のなかでも,全体に占める5歳までの 乳幼児の診療数が多いものの,1∼5歳とほぼ同数で10歳代の診療件数が多 いため,2月と比べると極端に乳幼児が多いということでもなかった.また, 60歳代後半から70歳代前半にかけて,他の世代と比べると緩やかなピークが 存在している.以上のことから診療に訪れる年齢階層は,2月とは若干異 なっていることがわかる.  疾病の内容にも,2月と比較すると大きな差異があることがわかった.2 月で猛威を振るっていた気管支炎はなりを潜め,わずかに3件しか見当たら ない.一方で,男性を中心として「傷」,「化膿」などと記載されるいわゆる 怪我に関連する診療割合が増加し少なくとも38件に上る.2月でも10代以降 で怪我に関連する診療が増加しているものの,9∼11月では25歳までを中心 にさらに顕著な傾向をみせている.犬やマムシに咬まれるケースも散見でき ることから,夏場は主産業の農業,林業や鉱業をはじめとして野外での作業 が多く,そこで傷を負い,医師のもとに駆け込んでいるものだと考えられる. 一方で30歳以降の怪我に関連する診療は急激に減少している.ただ,9∼11 月の怪我後の化膿の多さ(23件)を含めて考えると,下津具村の衛生状態や 衛生意識は必ずしも良好であったとはいえないのかもしれない.  また,9月∼11月への連続した診療報酬請求書綴を分析していることか ら,長く医師のもとへ通い続ける患者の姿も少なからずおり,同じ疾病で違 う月の診療報酬請求書綴に書かれた人物は実に16人に上った.当然月末に病 院に赴けば月をまたいで通院するということもありうるが,このうち13人が 初診日から転帰(死亡)日まで半月以上の日数を要していることからも,治 癒に時間のかかる内容で通院していたものだと考えられる.月をまたいで通 院していた人物の内訳をみると,11∼25歳では怪我および怪我後の化膿によ

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表2 昭和二十三年九, 十, 十一月分診療報酬請求書綴にみる年齢性別ごと疾病一覧 表記は史料のまま表記し,年齢は数え年によるもの.○は不明.その他の欄の傷病名中の数字は 年齢. (昭和二十三年分九,十,十一月診療報酬請求書綴 下津具村より作成) 年齢 件数 性別 件数 傷  病  名 1∼5歳 18 男 9 感冒2,腸カタル,腸カタル及左足大腿化膿,頸部琳把腺炎,右下腹部傷左足化膿切開,左手指○○4指化膿,顔部打撲 女 9 腸炎2,腸カタル,感冒及顔部湿疹,気管枝炎,蛔虫症右大腿犬口傷後化膿,両足下腿火傷後化膿2(同一人物×2) 6∼10歳 12 男 9 腸カタル,頸部琳把腺炎,腎臓炎,顎骨膜炎,角膜炎,右下腹部蛔虫による脳延,頭部切傷,塩酸嚥下 女 3 腹痛,頸部琳把腺炎,顔面 11∼15歳 18 男 11 腎臓炎,扁桃腺,肺炎,結膜炎,左大腿傷,右足趾切傷化膿2(同一人物×2)右手中指○疸2(同一人物×2),右足関節上切傷化膿,トラホーム 女 7 蛔虫症3(同一人物×3),扁桃腺炎2,左前○骨折,トラホーム 16∼20歳 19 男 16 腸炎,蛔虫症,結膜異物除去,右肺浸潤2(同一人物×2),右足関節炎 右足関節化膿,右足切傷化膿2(同一人物×2),左足膝関節化膿 右足ノ裏化膿2(同一人物×2),左小指及示指切傷2(同一人物×2) 右前膝切傷化膿左足下腿切傷化膿,右足趾化膿 女 3 感冒,右甲掌化膿,顎部 21∼25歳 15 男 9 腸炎2(同一人物×2),腎臓結石,蕁麻疹,胃痛及顔部神経痛右手指挫滅創,右足下腿打撲,右下腿切傷後化膿,右手小指挫滅創 女 6 蛔虫症2(同一人物×2),気管枝肺炎及死産,左関節ロイマチス腎臓炎,扁桃腺炎 26∼30歳 10 男 6 胃炎,結膜炎,肺浸潤,角膜異物摘出,右肋膜炎,マムシニ咬ル4 感冒,肺浸潤,両肩部湿疹,右胸膜炎人工妊娠中絶 31∼35歳 0 男 0 −0 − 36∼40歳 7 男 1 右足首切傷後化膿6 腸カタル2,感冒,腸炎,右手掌針創,産褥熱 41∼45歳 9 男 1 感冒8 肺浸潤3(同一人物×3),顔部湿疹,脚気,喘息,扁桃腺炎,神経衰弱 46∼50歳 8 男 6 肩痛2,腰痛,胃腸カタル,胃潰瘍,右上膊神経痛2 気管枝炎,不全流産 51∼55歳 7 男 5 腸炎,胃ケイレン,白内障,左下腿切傷化膿,左足関節上切傷2 腸カタル,急性腸カタル 56∼60歳 2 男 1 結膜炎1 左関節ロイマチス 61∼65歳 7 男 2 感冒,肩痛5 蛔虫症,腸カタル,気管枝炎,両眼周囲湿疹,心臓辨膜症 66∼70歳 11 男 4 右上膊犬咬創2(同一人物×2),蛔虫ニヨル胃ケイレン,胃ケイレン7 膽石症3(同一人物×3),胃ケイレン2(同一人物×2),感冒 蛔虫ニヨル胃ケイレン 71∼75歳 13 男 4 右上膊湿疹,胃炎,右足関節切傷後化膿,右前膊神経痛9 急性腸カタル2(同一人物×2),急性腸カタル及老衰症2(同一人物×2) 肩神経痛及腸カタル,蛔虫症,扁桃腺炎,左前膊湿疹,右下腿及左関節化膿 76歳∼ 5 男 2 腸カタル,顔部3 大腸炎,左小指切傷,結膜炎及左手化膿 その他 9 男女 2 40(41)歳男・右肋膜炎2(同一人物×2)1 15(16)歳女・結膜異物除去 他 6 不明6件

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るもの,70歳前後では消化器系の疾病によるものと大きく大別できることに 特徴がある.  年代ごとの傷病名の変遷についても2月同様認めることができるものの, 加齢とともに,2月に多かった筋骨格系に類する疾病よりも消化器系に関連 する診療が増えていった.先述の通り,衛生状態が必ずしも良いものではな いとするならば,とくに夏は消化器系に大きな負担がかかるのだろう.さて, 10件を数える蛔虫症に関しては2月同様に各世代において確認できることか ら,季節的な理由とは関係なく,慢性的に下津具村の人々を悩ませていた疾 病であると考えられる4).さらに,不全流産や産褥熱という表記から分かる ように,女性特有の疾病に関しても20歳代以降でみられるのは2月同様であ る.2月には確認できない傷病名としては上述の通り,犬やマムシにかまれ て通院してきた例や,塩酸嚥下でやってきた例などあり,日常生活に関わる あらゆる分野への対応が求められる医師の姿が確認できる.  なお,9∼11月の疾病については基本的に山崎旦が一手に引き受けてい た.豊根村黒川の夏目壽雄のもとに下津具村民が訪れたのはいずれも眼病が 理由であり,2月の耳に関連する疾病で村松忠子のもとへ通う様子と似たよ うな傾向をうかがうことができた.遠く新城町まで赴いたのは女性で,傷病 名が右胸膜炎及人工妊娠中絶であった. Ⅳ 伝染病患者発生転帰届の分析  ここでいう伝染病患者発生転帰届は正確には「自大正十二年 傳染病患者 発生転帰届 下津具村役場」,「自昭和二十二年三月 マ司令部より指示に依 る疾病発生転帰届綴 下津具村役場」,「昭和二十四年以降 伝染病発生関 係 愛知県設楽郡上津具村役場」の三種類の史料を指している.先の2つは 下津具村,後の1つは上津具村へ提出した書類である.現状残存している伝 染病関係の史料はこの三種であり,1923(大正12)年10月4日から1952(昭 和27)年8月22日までの30年間,全77件分が存在している.  各史料の中では,氏名,病名,住所,本籍地,続柄,年齢,生年月日,発 病日時,初診日時,診断日時,転帰日時,死亡日時,原因・系統,症状,届 4)「戦後になっても全村民のうち10人中8人は寄生虫をもっていた.村では駆除のための講演 会などを開催したが,村民はいっこうに関心をもたなかったため,役場の担当者は一戸ごとに 薬を配布して回りその駆除につとめた.」とある(津具村2000:238).

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出時間,医師,発病地名,受付番号,職業そして他,と多岐にわたる項目に 分かれてそれぞれ記されるが,こちらも診療報酬請求書綴同様に空欄がある ことも多い.  まず住所については上津具村,下津具村などの村名までは全ての伝染病患 者発生転帰届に書かれ,上津具村が11件,下津具村が63件,豊根村,振草村, 東郷村が各1件であった.大字以下の記載があるものは77件中69件であっ た.次いで本籍地の記載のあるものは1件のみであった.続柄も住所同様に 77件中69件の記載があった.年齢および生年月日については双方書かれてい るものは少なく77件中14件のみであった.なお,年齢と生年月日双方書かれ ている史料から,年齢項目に関しては数え年で書かれていることが確認でき た.そのため,年齢の項目が空欄であるものが8件あったものの,すべての 伝染病患者発生転帰届に生年月日が書かれていることを利用し,全77件の伝 染病患者発生転帰届について年齢を推定することが可能となった.  発病日時,初診日時,診断日時についてはいずれも年月日に加えて24時間 単位での時間帯が記載されている.転帰日時と死亡日時のいずれかが書かれ ているものは77件中65件であった.転帰,死亡のどちらもが書かれていない 伝染病患者発生転帰届はすべて昭和22年以降であるため,「自昭和二十二年 三月 マ司令部より指示に依る疾病発生転帰届綴 下津具村役場」,「昭和 二十四年以降 伝染病発生関係 愛知県設楽郡上津具村役場」それぞれの作 成段階で全快していないものだと思われる.  医師については山崎輝,山崎譲一,岡秀子,夏目壽雄,伊藤嘉市,松下兼 治,吉川芳穂,山崎旦,村松忠子の9人および豊橋とだけ書かれているもの が全てである5).山崎譲一,夏目壽雄,山崎旦,村松忠子の4人は診療報酬 請求書綴においても登場した医師たちであり,山崎輝は,山崎旦の父親にあ たる6).30年もの長い期間にわたるものの奥三河の津具村周辺に計9人もの 医師がおり,診療に携わっていた.  発病地名は77件中72件の記載があった.「自宅」や「住所ニ同ジ」と書かれ 5) 津具村誌によると,昭和10年代に在村の医師が応召されたため,無医村の期間があり,旧 上津具役場前,旧下津具役場敷地内に診療所が設置され,派遣医師が診療にあたった.また, 昭和12年ごろから県から週一回巡回診療班が来村しこれも診療活動にあたったとされる(津 具村:2000:238).昭和12年から昭和20年まで伝染病転帰届に記載される医師名はめまぐる しく変化しており,上記の裏付けだろう. 6) 山崎家系図による.

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ているものがほとんどを占めている.  職業については,77件中51件の記載があった.最多は「無業」または「無 職」で32件であるが,そのなかで「家計は農業」または「家計は農」と付記 されているものが26件見受けられ,ほかの付記には家計が「職工」「金山人 夫」「自由労働」「郵便局員」「小学校教員」「自動車修繕工」と書かれている ものがそれぞれ1件ずつであった.なお,これらは患者が世帯主ではないこ とからの付記として書かれていた.次に多いものは「農」,「農業」や「平民 農」と書かれた農業従事者の11件であった.続いて,抗夫が2件とある以外 は,宿屋業,津具鉱山運搬夫,下津具村助役,蹄鉄,土工/隧道工事飯場同 居人,佐官が各1件となった.このうえで,本人が有職であっても「家計は 農業」と書かれているものが2件あった.これらの結果から,農業に関連す る内容が51件中39件を占め,あらためて下津具村界隈では農業を日常生活の 基盤としていたことが理解できる.合わせて,鉱山関連業種や公務などが村 の産業を支えていたものと思われる.  欄外に備考が書かれているものは45件あった.このうち,療養場所の記載 があるものは40件であり,「療養場所は自宅」,「住所ニ同ジ」,「自宅隔離」, 「治療は自宅」などと記され,患者自身の自宅と考えられるものが30件ある 7).ほかは「住宅側近隔離室」が4件,「金山長屋別棟ニ隔離」が2件,「同 人所有別宅」,「別棟隠居所隔離ス」,「自宅外ニ隔離」,「入院(中村病院)」が それぞれ1件であった.津具村(2000:237-238)によると,下津具村には大 正初年から昭和13年まで村立避病院が設置され,患者を隔離,看護したとあ り,できる限り隔離して治療しようという様子も垣間見られる.しかしなが ら,基本的には自宅での治療,療養が中心であり必ずしも避病院へ隔離され ていたとは言えない状況にあったと考えられる.  さて,伝染病患者発生転帰届全77件を年齢階層毎に区分し,詳細を紐解い ていきたい.まず届に記載される最高年齢は65歳,最少年齢は1歳であった. 伝染病患者発生転帰届は先に述べたように,概ね数え年で記されているので 0歳は存在しない8).5歳ごとに確認していくと,1∼5歳が31件,6∼10 7)「住所に同じ」との記載も含む. 8)「年齢のとなえ方に関する法律」は昭和25年4月1日から施行された.実際,年齢と生年月 日が共に記載されている昭和26年の伝染病患者発生転帰届では実年齢で記載されているため, 昭和25年4月1日以降の伝染病患者発生転帰届は実年齢であるとし,本研究では数え年に変 換した.

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歳が20件,11∼15歳が3件,16∼20歳が3件,21∼25歳が1件,26∼30歳が 2件,31∼35歳が2件,36∼40歳が4件,41∼45歳が2件,46∼50歳が0件, 51∼55歳が4件,56∼60歳が1件,61∼65歳が4件であった.  表3は伝染病患者発生転帰届に基づき,各世代ごとの転帰または死亡の過 程をまとめたものである.男女別では,男性が45件,女性が31件,性別不明 が1件であった.転帰および死亡別では,転帰が41件9),死亡が21件,不明 が15件となった.年齢階層別では1∼5歳のいわゆる乳幼児の数が多く全体 の4割強を占めていた.1歳∼10歳までならば全体の6割強に達する.さら に,年齢階層ごとに死亡率および病名が大きく異なっていることが理解でき る.というのも,伝染病発生転帰届に記載されている1∼5歳では,31件中 14件が死亡しているが,6∼10歳になると,20件中7件にまで減少し,11歳 以上では転帰および死亡が不明である者を除けば全員が転帰しているという 結果になった.基本的には発病してからおよそ1∼2日の期間で初診にかか る場合がほとんどであるものの,乳幼児の場合,発病から初診までの期間が 短いからといって生存率が上昇するというわけでもないことも分かった.  病名では,1∼5歳では疫痢や赤痢に類するもの10)が31件中17件,ジフテ リア11)が10件と大勢を占め,肺炎12)が4件と続いている.6∼10歳では疫痢 や赤痢に類するものが20件中7件,ジフテリアも7件と同数を占めるように なり,肺炎が3件のほか,新たに腸チフスが3件現れた.死亡者が確認され なかった11歳以上における最も多い疾病は26件中18件の腸チフス / パラチフ ス(うち,パラチフスは2件)となり,10歳以下で罹患する伝染病としては 1∼5歳時に猛威をふるった疫痢や赤痢に類するものは3件に,ジフテリア は1件になり,大きく数を減らしていった.なお,1∼5歳での疫痢や赤痢 に類するものの初診日から死亡日までの平均日数は1.9日(転帰日までの平均 日数は7.4日)であり,ジフテリアの平均日数は3.3日(同,6.7日)であるこ とを考えると,疫痢や赤痢に類するものは村民にとって最大の脅威であった ことは間違いないだろう.これを裏付けるかのように,1∼5歳での疫痢や 赤痢に類するものは17件中8件が死亡,6件が転帰,3件が不明となってい 9)このうち一件は転帰となっているものの,「後胎症(脳症)ヲ残シ」と備考に記されている. 10)ここでは赤痢,擬似赤痢を赤痢に類するものとした. 11)ここでは,ジフテリア,咽頭ジフテリア,喉頭ジフテリア,咽喉ジフテリアなどジフテリア と表記されるものは全て含んでいる. 12)ここでは急性肺炎,クループ性肺炎,気管支肺炎を合わせて肺炎とした.

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表3 伝染病患者発生転帰届にみる年齢性別,病名,および発生転帰一覧 年齢 件数 性別 傷病名 経過 発病日時 初診日時 診断日時 転帰日時 死亡日時 日数 1∼5歳 31 女 疫痢 転帰 T121004 T12100511 T12100511 T12100513 1 男 ジフテリア 転帰 T121124 T12112517 T12112517 T12120111 7 男 赤痢 転帰 T130710 T13071122 T13071323 T13072109 11 男 疫痢 死亡 T130824 T13082415 T13082508 T13082516 2 男 ジフテリア 転帰 T140523 T14052317 T14052322 T140529 7 男 喉頭ジフテリア 転帰 T14052914 T14052917 T14052917 T140602 5 男 咽頭ジフテリア 転帰 T140815 T14081613 T14081622 T140821 6 女 疫痢 死亡 T14090703 T14090710 T14090711 T14090803 2 女 喉頭ジフテリア 転帰 T150429 T15043008 T15043008 T150504 5 男 疫痢 転帰 T150815 T15081518 T15081611 T150823 8 男 喉頭ジフテリア 死亡 S02121521 S02121612 S02121612 S02121720 2 男 疫痢 死亡 S050806 S05080616 S05080709 S05080713 2 男 疫痢 死亡 S05081014 S05081017 S05081019 S05081022 1 男 疫痢 死亡 S050828 S05082811 S05082814 S05083123 3 男 咽頭ジフテリア 死亡 S110518 S110519 S11051908 S11052015 2 男 疫痢 死亡 S110903 S11090405 S11090412 S11090502 2 女 疫痢 死亡 S120829 S12083012 S12083013 S12083016 1 女 疫痢 死亡 S13070410 S13070410 S13070415 S13070710 4 女 疫痢 転帰 S130709 S13070907 S13070923 S130729 21 男 咽頭ジフテリア 転帰 S14060117 S14060411 S14060411 S140610 7 男 疫痢 転帰 S14071812 S14071913 S14071913 S140725 7 女 咽頭ジフテリア 転帰 S150930 S151001 S151001 S151006 6 女 喉頭ジフテリア 死亡 S19102218 S19102308 S19102311 S19102322 1 男 急性肺炎 死亡 S22022515 S22030210 S22030412 S22031419 11 女 急性肺炎 死亡 S220303 S22030509 S22030510 S22030610 2 男 クループ性肺炎 死亡 S220312 S22031310 S22031411 S22031413 2 男 クループ性肺炎 不明 S22052609 S22053114 S22053114 女 疫痢 転帰 S240716 S240716 S24071707 S24071721 2 女 赤痢 不明 S240720 S240721 S24072322 女 疫痢 不明 S260817 S260817 S26081708 女 擬似赤痢 不明 S260831 S260831 S26090119 6∼10歳 20 男 ジフテリア 転帰 T140510 T14051016 T14051105 T14051616 7 男 疫痢 死亡 T150908 T15090819 T15090907 T15090912 2 女 疫痢 死亡 S020922 S02092304 S02092305 S02092309 1 男 腸チフス 転帰 S040612 S04061311 S04062109 S040711 29 男 疫痢 不明 S05062908 S05062923 S05062923 男 腸チフス 転帰 S100410 S10041210 S10041615 S10052013 39 女 疫痢 死亡 S110525 S110526 S11052608 S11052611 1 男 咽喉ジフテリア 死亡 S141125 S14112910 S14112911 S14113008 2 男 腸チフス 転帰 S160630 S16070516 S16070910 S16081614 38 女 咽頭及喉頭ジフテリア 転帰 S180117 S18011809 S18011909 S18012416 7 女 咽頭ジフテリア 死亡 S180222 S18022311 S18022512 S18022706 5 男 喉頭ジフテリア 転帰 S180829 S18083110 S18090109 S18090616 7 女 咽頭ジフテリア 死亡 S180917 S18091723 S18092221 S180924 8 男 咽頭ジフテリア 転帰 S19041517 S19041912 S19041912 S190425 7 男 肺炎 転帰 S22050111 S22050215 S22050215 S22050811 7 男 肺炎 不明 S22050709 S22050810 S22051115 女 気管支肺炎 不明 S220514 S22051509 S22051709 男 疫痢 転帰 S240716 S24071707 S24071721 2 女 疫痢 不明 S251018 S251019 S25101910 男 疫痢 死亡 S260828 S26082822 S26082822 S26082916 2

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るのに対し,ジフテリアは10件中3件が死亡,7件が転帰となっており,乳 幼児の疫痢や赤痢に類するものでの死亡率は極めて高い.  最後に,伝染病の発生についても季節的な傾向を把握することができた. 例えば,ジフテリアは発生月が5月に最大になるが,3月と7月を除き,毎 月発生していることが分かった.腸チフス/パラチフスは4月から12月まで の発生に限定されるが,最大発生月は11月であった.疫痢や赤痢に類するも のに至っては5月から10月までの発生とその期間はさらに限定されるが,7 ∼9月で発生数全体の8割以上を占めていた. 年齢 件数 性別 傷病名 経過 発病日時 初診日時 診断日時 転帰日時 死亡日時 日数 11∼15歳 3 女 腸チフス男 腸チフス 転帰 T150828転帰 T151001 T15090510 T15091416 T150922T15100316 T15100708 T151111 1840 男 肺炎 不明 S220506 S22050721 S22050908 16∼20歳 3 女 腸チフス 転帰 T150801 T15080211 T15081214 T150826 11 男 腸チフス 転帰 S151111 S151112 S151120 S15011616 66 男 擬似赤痢 不明 S270821 S270822 S27082221 21∼25歳 1 女 腸チフス 転帰 S151108 S151108 S151120 S15011616 69 26∼30歳 2 女 腸チフス男 肺結核 転帰 S160702不明 S191210 SS22030317 S2203031716070516 S16070910 S16081110 38 31∼35歳 2 男 腸チフス女 腸チフス 転帰 S091015転帰 S151110 S091017S151112 S091026S15111815 S15122810S091109 2347 36∼40歳 5 不明 鼻腔及び咽喉ジフテリア 転帰 S13040812 S13041113 S13041113 S130419 9 男 腸チフス 転帰 S141106 S14110821 S14111711 S14121611 39 男 腸チフス 転帰 S141115 S141119 S14112609 S141216 28 男 腸チフス 転帰 S160808 S16081010 S16081710 S16091510 37 男 擬似赤痢 不明 S250909 S250911 S25091109 41∼45歳 1 男 腸チフス 転帰 S151127 S151129 S15120708 S15122610 28 46∼50歳 0 51∼55歳 4 女 赤痢 転帰 T130714 T13071510 T13071511 T13072110 7 女 B 型パラチフス 転帰 T140716 T14072111 T14072510 T140805 16 女 腸チフス 転帰 S091010 S091017 S091028 S091122 37 男 腸チフス 不明 S141024 S14110315 56∼60歳 1 女 腸チフス 転帰 S040614 S04061710 S04062011 S040717 31 61∼65歳 4 男 腸チフス 転帰 S151206 S151208 S151213 S16010712 32 女 パラチフス 転帰 S180827 S18082910 S18090413 S180928 31 男 乾性肋膜炎 不明 S220514 S22060821 S22060821 女 擬似赤痢 不明 S260831 S26090222 S26090224 史料のまま表記し,年齢は数え年による. 日時のTは大正,Sは昭和を示す.その後年月日と続く.時間の記載がある場合は,24時間単位で日の後 に2桁の数字を記載している. (「自大正十二年 傳染病患者発生転帰届 下津具村役場」,「自昭和二十二年三月 マ司令部より指示に依 る疾病発生転帰届綴 下津具村役場」,「昭和二十四年以降 伝染病発生関係 愛知県設楽郡上津具村役場」 より作成)

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 診療報酬請求書綴および伝染病患者発生転帰届の分析により以下のことが 明らかになった.まず,通常の疾病,伝染病ともに乳幼児や高年齢層が罹患 することが多いのは想定できるものの,通常の疾病に比べて伝染病に関して は10歳までに罹患する割合が極端に高いことが明らかになった.また,通常 の疾病に比べ,伝染病による死亡割合は著しく高い.津具村の事例を踏まえ ると,致死性の高い伝染病発病者を把握し,適正に管理していくことは大き な意味があったものだと思われる.  次に,通常の疾病,伝染病ともに年齢によって罹患する疾病の種類が異な ることが明らかになった.通常の疾病であれば,若年層の怪我および怪我に 付随する化膿による治療が多く,高年齢層になれば消化器系または筋骨格系 での診察が増加していく傾向があった.伝染病であれば,10歳までは疫痢や 赤痢に類するもののほか,ジフテリアを罹患する場合が多いのに対し,10歳 を過ぎると腸チフスが急増し,疫痢や赤痢に類するものは大きく数を減らし た.とくに,数ある伝染病のなかでも乳幼児における最大の脅威は疫痢や赤 痢に類するものであった.  最後に通常の疾病,伝染病ともに季節性がみられることが確認できた.前 者は,冬場は呼吸器系疾患,夏∼秋にかけては外科的治療を要するものが多 かった.後者は,年間を通してジフテリアの発生患者がみられるが,チフス /パラチフスは多くが春∼秋の期間に限定され,疫痢や赤痢に類するものに 関しては,夏場に集中的に患者が発生していたことが明らかであった. 付記  本稿では字数の関係もあり,患者にとっての医療面での行動領域を追跡す るには至りませんでした.機会がありましたら,地道に研究を進めていこう と思います.なお,教育職に就くことで多様な価値観と背景を持つ青年への 対応の難しさを痛感しています.未熟で生意気だった私自身を叱咤激励し, 学問と向かい合わせて下さった溝口先生のおかげで今があると思っておりま す.この場を借りて心より御礼申し上げます. 文献 加賀美雅弘 2004.『病気の地域差を読む−地理学からのアプローチ』古今書 Ⅴ 下津具村を中心とする地域の疾病の特徴

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院. 川口 洋 2001.牛痘種痘法導入期の武蔵国多摩郡における疱瘡による疾病 災害.歴史地理学43(1):47-64. 小林 茂 2000.近世の南西諸島における天然痘の流行パターンと人痘法の 施行.歴史地理学42(1):47-63. 総務省統計局 1948『昭和22年臨時国勢調査結果報告(其の2)全國都道府 縣郡市區町村別人口』総務省. 総務省統計局 1950『昭和25年国勢調査』総務省. 千葉徳爾 1969.『地域と自然 改訂版』大明堂. 千葉徳爾・籾山政子 1979.『風土論・生気候(気候と人間シリーズ3)』朝 倉書店. 津具村編 2000.『津具村誌』津具村. 村田祐介 2001.近世末期奥三河・山崎家「日知録」にみる行動領域.歴史 地理学43(3):36-52. 籾山政子 1971.『疾病と季節』大明堂. 渡辺理絵 2010.近世農村社会における天然痘の伝播過程−出羽国中津川郷 を事例として−.地理学評論83(3):248-269.

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