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ゴッシェンおよびアフタリオンの為替理論と購買力平価説-香川大学学術情報リポジトリ

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ゴッシェンおよび、アフタリオン

の為替理論と購買力平価説

宮 田 亘 朗

本稿は,為替相場決定理論としてのゴッシェンの国際貸借説〔収支説)とア フタリオンの為替心理説をカッセルの購買力平価説との関連で考察するもので ある。われわれは,それを,かつて考察した(拙稿「購買力平価説と国際的貨 幣ベール観」香川大学経済学部年報23)国際的貨幣ベール観の克服という観点 からみる。第I節は,ゴッシェンの国際貸借説を取り扱う。そこにおいてわれ われは,それが,

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S.ミルの相互需要均等の原理や比較生産費説を背後に持っ と解釈する場合国際的貨幣ベール観に立脚するものとなり,またそれらと分離 し非ベール観に立っと解釈する場合為替相場の重要な部分すなわち国際的決済 手段のフローと国際的財フローの関係の分析をせずに残す理論となることをみ る。他方,第II節は, アアタリオンの為替心理説を取り扱う。それは,為替相 場決定の量的要素と質的要素た峻別し特に後者を強調する。しかしながら,結 局それは,通常の需要および供給の両曲線による相場決定を主張するものに他 ならず,カ yセルが拒否した為替需給説に帰着することになる。そして,われ われは,それが需給の変動要因のうち特に質的心理的要素を強調するものとす るならば,為替相場変動の原因をすべて心理の問題に帰せしめ上記の国際的決 済手段のフローと国際的財フローの関連と言う問題を敢えて分析する必要がな いような理論となると結論する。 I ゴッシェンの為替理論(国際貸借説

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J

ゴグシェンは, Rカンティヨン, Aスミス, JSミルと受継がれて来た

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-2- 第57巻 第4号 752 為替相場論における国際収支説的考え方を体系的に纏め上げたと言われる。第 一次大戦後,カッセルの購買力平価説が唱えられる以前にあっては,このゴy シェンの為替理論すなわち国際貸借説は,支配的な唯一の体系的理論であった と言いうる。以下,われわれはこのゴッシェンの為替理論をかつて考察した国 際的貨幣ベール観と為替理論との関わりと言う観点から考えてみることとす る。 ゴyシェンは,外国為替を各国聞の債券あるいは債務(正laimor debt)の交 換として把握する。「外国為替の議論において考えなければならない第一の要因 は,・・1…国際貸借 (internationalindebtedness) である。当該問題の交換は, 債権あるいは債務の交換である。」彼は,外国為替取引で何が行われているかに 注目する。、勿論,それは外国為替手形 (foreignb

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1

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s)の取り引きである。そし て,その手形は,各国の対外債権債務が具体化されたものにすぎない。周知の ように,いま甲乙ニ国の為替取引を考える。甲国の

A

が乙国の

C

に輸出し,甲 国の

B

が乙国の

D

から輸入するものとすれば(甲国の

A

と乙国の

D

は債権者 credilorであり,甲国の

B

と乙国の

C

は債務者 debtorである), Aが

D

宛の手形 を振り出し , B がこれを買い乙閣の D~こ送り , D は C よりこれを呈示し支払い を受ける。このとき甲乙二国間の債権債務は,その手形を通じて各国国内の債 権債務に変えられることによって決済を完了することになる。「この記述は,実 際為替手形の媒介によって取り引きが行われると言う考えを含んでいる。しか し考察の現段階では,この為替手形を全く無視する方がよし、。まず最初,取り 引きを単なる債権債務の交換として取り扱い,それが遂行される手段を考えに 入れないのが便宜である。…国際貿易の結果として一国社会のある人々は, 外国の商人に対して債務を負う。彼等は鋳貨を送る労苦,危険,出費を節約す るために,当該問題の外国が債務を負っているような自国社会の人々を探す。 そして, この外国の債務を買うことによって,自己の外国債務者に対する支払 *この第I節と第II節は,拙著 r国際的貨幣ヴェーノレ観』昭和35年竜谷大学経済学部研究叢 ~l1 4第2章および第5主主を修正したものである。 ( 1) Goschen, G.. J.The Theoηof the Foreign Exchanges, 3rd.. ed 1919..p 11

(3)

753 ゴ ヅ シ zンおよびアアタリオンの為替理論と購買力平価説 -3-いにあてる。」したがって,為替取引 (foreignexchange)はニ国間債務の決済 であり,他方為替手形はそれを遂行する手段 (inst仰m仰のであると共に対外 債権債務の決済のために行う地金輸送費の節約手段である。債務者は債権を買 いそれを外国に送り決済を行うから,ある時点でのある国の対外債権債務(満 期の)が同じであるならば,その購買価格は,債権と債務が互いに相殺されて, 不変となり平価(tarvalue)にとどまることになる。そして,もし債権債務の 一方が大であるならば,その価格は売手または買手の競争を通じて変動する(た だい金輸出入点内においてのこと)。 このような相互間貸借(mutualindebtedness or debt due)の具体的内容は, ゴッシェンによれば商品の輸出入だけでなく国境を通過するすべての支払いか ら生じるものである。「各国の生産物の交換がら生じるだけでなく,むしろ生産 物の支払い,株式や公債の購入,利潤・手数料・すべての種類の貢納の支払い, 外国居住者または旅行者の出費の支払い等々の相互に支出し合ったすべてのも のの相対的総額すなわち事実上当該国の聞を通過するすべての支払(あるいは 支払の約束〉から生じてくることがわかるであろう。」したがって,それは通常 の貿易収支と貿易外収支および資本収支を含むことになる。なお,外国への貸 付は,貸付および支払の時点においてのみ為替相場に影響を与える。したがっ て,永久の貸付は,その実行時点を除けば,何等為替相場に作用しない。すな わち,問題となるものは,浮動の貸借伊oati略 的debtedness)のみと言える。 そこで,空手形,投機,利子,本位の違いなどは r為替に影響を与え非常に事 態を複雑にし根本的なものから目をそらす,・…・・しかしながら,それらは,相 対的な貸借 (relativeindebtednιss)の問題に対する付属物であるにすぎない。 相対的な貸借が第一の最も重要なものであり,その何たるかを理解することこ そが何より必要なことである。J(なお,そのうちでも為替に影響する重要なも ( 2) Ibid, pp. 3-4 (3) lbid, p..4 (4) lbid, p 3 ( 5 ) lbid, p.12 ( 6) lbid, p..9 ( 7) lbid, p 8

(4)

4- 第57巻 第4号 754 のは商品貿易から生じるものであるとみている〉と結論することになる。かく して,彼は,債権債務の決済に用いられそれ自体を生じないような地金の移動 を除色所得勘定および資本勘定の均等をもって均衡相場を定義するのである。 もし一国の債権が債務より大きいなら振出される手形に対する買手は少なく 売手競争を生じ,手形に支払われる自国通貨量は少なくなる(割引 at a dis -じount)。逆のときは買手競争を生じ,通貨量は多くなる(打歩。ta

ρ

remiUm)。 この場合,売手または買手が割引または打歩に満足しているのは,地金移動に 伴う危険や労苦および出費を避けようとするためである。ゆえに,このような 費用と手形価格の変動によって蒙むる損失とが等しくなるか,あるいは後者が 大となるときには,地金の移動を生じてくる。かくして,ゴッシェンは,手形 価格の変動範囲を,平価

ρ

(

arvalue)を中心にしその上下地金移動費の聞とな し(その極限点 specze

ρ

oinおと呼ぶ), r実際には為替がこのどちらかの極限に 達することは稀であり,種々の措置およびこの極限に達する以前に逆方向に反 作用を引起こすような種々の影響のために両極限の聞を変動するのである。」 と言うO ところが,反面で, ゴッシェンは,為替相場がときにこの極限を越え て変動し,したがってこの貸借関係によってその変動のすべてを説明Lうるも のではないと考える。例えば彼は,異常な変動の例として

1

8

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1

年におけるアメ リカの為替相場変動を挙げ次のように言う。当時アメリカは南北戦争に対する 種々の不安が増大し,そのため相場が鋳貨輸出入点(speae

ρ

oints)以下に下落 した。他方で,アメリカの豊作による大量の穀物輸出とこの戦争に対する危倶 からの輸入減退を導き,大量の対外債権が存在した。したがって,このような 場合,相場が鋳貨輸入点まで下落することは,当然、のことであり国際貸借によっ て説明することができるものであった。しかしながら,為替相場はその限界を 越えてなお下落したのであり,このことは貸借によって説明できないもので あった。そこで,彼は, <:イ)輸出者がその手形を如何なる犠牲を払っても売却し ようとしたこと〈ヨーロ yパより地金を取り寄せるために必要な日時を待つ余 ( 8) lbid, p 48

( 9) 南北戦争は, 1861年-1865年である。

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-755 ゴソシェンおよびアアタリオンの為替理論と購買力平価説 5-裕がなかったこと), (ロ)投機者が利子率変動に対する不安から鋳貨輸入点と手 形価格との聞の差異より得る利益だけで手形の買手となることを好まず, した がって手形買手の大幅な減少を導いたこと 付長期手形の場合には手形割引率 および手形振出人や引受け人の支払能力に対して不安があったこと(長期手形 を地金に換えようとする人々は割引率すなわち当時支配的影響力のあったイギ リスの利子率を考慮した。他方,長期手形を買って満期日に支払を受けようと する人々は当時アメリカの商品価格の下落に伴ったその支払能力に不安を持っ た。〉等々の理由を述べる。他方,彼は別の異常な変動の例としてロシアについ て次のように言う。すなわち,彼によるとロシアの異常変動の主たる原因は通 貨の減価にあった。彼は, これを外国の貨幣本位の差としてとらえた。すなわ ち,上記のアメリカのような政治社会上の不安のケースを除くと,為替相場は 鋳貨の輪出入点内に留まる筈であった。しかし,一国が紙幣本位であるとかあ るいは地金の輸出禁止を実施しているような場合には,その為替相場の変動を 限るものは存在しない。そこで,彼は,当時のロシアも通貨の減価に原因して その為替相場を鋳貨輪出入点を越えて大きく変動させたと言うのである。しか しながら,ゴッシェンは,この場合でもなお,ある穫の漠然、とした限界がある ことを期待している。それは,通貨の減価が生じた場合,地金の流出入を認め ている国(例,オーストリア〉と金本位国(例,イギリス〉の聞について彼の 行う説明あるいは地金輸出を禁止する国についての説明から推察しうる。例え ば,前者のケースについて彼は,通貨の減価によってオーストリア宛手形をも っ人がその手形の買手により多くのオーストリア通貨(フローリン〉を渡さね ばならず(さもなければ,買手は手形を購入せず地金を送って債務支払にあて ることになる),その結果紙幣増発に原因した通貨の減価によって大幅な為替 相場の変化を経験したこと,およびその為替相場の変動の大きさが地金の騰貴 で生じた打歩の範囲内にあること等を示唆した。さらに後者の例(地金輸出 禁止〉においても彼は iこの場合為替の変動は,需要供給のみに依存する。そ (10) このような場合でも,債権債務が均等であるなら,この状態は長期間は続かないとみ る。

(6)

-6ー 第57巻 第 4号 756 して,手形の需要が供給を超過するならば,理論的に手形の価格に限界を劃す るものは何もなし、」と言う反面で,その相場が平価から通貨の減価率を差し引 いたものとなるであろうことを推測しそこにある種の限界を示唆したのであ る。さて,以上のアメリカとロシアの二つの異常な為替相場の例について,ゴッ シェンは両者が重要かっ全く異質の要因にもとずくことに注目する。すなわ ち,後者のロシアの為替変動のケースで、は,国際貸借差額はもはや為替相場変 動の主要な要因とはならず,以前と異なるところへ為替相場をシフトさせると いう形で通貨の減価が主要な為替相場変動要因となってくる。これに対し前者 のアメリカの為替変動のケースでは,たとえ政治的危機があるとしても,あく まで国際貸借が為替相場変動の主要な決定因としてなおとどまっている。すな わち,かりに輸出と輸入が相等しいものとするならば政治的危機によって支払 の延期を行うとしてもそれを長期に亘って行うことは不可能である以上早晩国 際貸借の決済をせねばならず,またもし輸出と輪入が等しくなく国際貸借が不 均等であるならば政治的危機によってその不均等傾向を強めることがあるとし てもいずれ国際貸借の決済を通じて妥当な相場へ落着くことになるのである。 以上の考察はすべて金が通貨の根底にある場合を想定していた。次に,銀本 位固と金本位国の聞の問題についてゴッシェンの主張をみよう。ゴッシェンに よれば,例えば銀の支払われるハンブノレク宛手形がロンドンにおいて金貨ある いはその代替物によって買われるケースで,その価格について次のように言う。 フランスの例を除いて,銀本位国での金また金本位国での銀は単なる商品であ り,したがってその価格は通常の商品としての変動に支配されることになる。 ハンブノレク宛手形は,前述したように利子率や信用状態および国際貸借等々に よって影響され,そのうえさらにイギリス市場での銀の価格変動の影響を受け (ll) Ibzd.., p. 75 (12) Ibid.., p..75 (13) Ibid., pp.. 51-52 and p..92 (14) 当時,フランスは金銀複本位制をと、っていた。この場合,金本位国との為替相場は,両 国に共通な本位が与える範囲〔金輸出入点〉を越えることができなし、。このことはイギリ スで銀需要が増大し,金に対し銀の価格が騰貴したケースを考えれば明白であるという。

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757 ゴyシェンおよびアフタリオンの為替理論と購買力平価説 -7-る(逆にロンドン宛の手形のハンブルクにおける価格は,ハンフやルクの金価格 の影響を受ける〉。すなわち,イギリスで銀の需要が増大しその価格が騰貴する ときハンフ事ルク宛手形の価格は銀を獲得する目的で需要されて騰貴する。換言 すれば,イギリスにおいて銀が金に対し騰貴する場合ハンフ守ルグ宛手形の価格 も騰貴す町る。しかしながら, この価格騰貴は,ある限界をもっている。すなわ ち,直接金をハンフソレクに送って銀を得る方法があるためそれに要する出費以 上に上昇することができないのである(逆のことはロンドン宛手形について言 いうる〉。 以上,ゴッシェンが述べる為替相場の変動要因を列挙すれば次のようになる。 最も重要な要因として国際貸借がある。次に,地金の輸出入点を越えるような 大きな変動の要因として不換紙幣増発にもとずいた通貨価値の減価がある。第 三に,異なる金属を本位としているこ国聞の為替相場の変動要因としてその異 なる金属の比価の変動が加えられねばならない。最後に,国際貸借ほど重要で ないがある期間大きな変動要因となるものに政治社会的パニッグ(商人の支払 能力や利子率変動の不安定性などを含めて〉がある。 さて,ゴァシェンは,上の叙述でみたように為替相場の平価を国際的債権債 務の均等で規定し,その国際的債権債務の内容を国境を通過するすべての支払 (および支払の約束〉とした。したがって,彼の均衡相場は,いわゆる所得勘 定と資本勘定の両者の均等によって規定されるものであると言い得る。そこで, 以下われわれは,彼の考えるこの均等関係が近代理論における収支均衡概念と 同じものかどうかについて考察することとしよう。 ゴyシェンは,前述したようにアメリカの1861年における為替相場の下落に ついて,その根本的要因を政治社会上の危機から生じた為替投機に求めず(そ れは単に傾向を一時的に強めたにすぎないとして〉国際貸借に求め,当時一般 的風潮であった考え方(主たる原因を為替投機としたもの〉に反対した。それ は, もし国際貸借がアメリカにとって不利であったとすれば,投機的原因にも とずく為替下落をそれほど長期に亘って引き延ばさなかったであろうからであ る。他方で彼は,それに引き続く二年間(J862年-1863年〉のアメリカにおけ

(8)

-8- 第57巻 第4号 758 る地金の輸出入点を越える為替相場の異常な上昇(ロンドン宛手形は400%も 騰貴した〉がヨーロッパへの資本の突然の移動やアメリカにおけるヨーロッパ 商品の需要増大および小麦の輸出の減少等から生じた国際貸借に原因したとい うよりも,鋳貨の支払停止やグリーン・パ yグの発行による通貨価値下落に原 因したものと論じた。そして,次のように結論する。 r1861年のアメリカに関す る叙述において,最も重要な要因すなわち相対的な貸借を見落としたことが, 第一に当然の地金流入に誤った説明を与えることとなり,第二にその流入に関 する継続期間についての見積りを誤ることとなった。それに続く

2

カ年聞の同 様の為替の変動過程においては,そこに発生した驚くべき変動を解釈する一方 で考察せねばならないとして我々が見出したものは,通貨の減価であった。両 ケースにおいて,事実上主な影響原因を lつのものに求めながら他方で他の価 値の要素をも見逃さないようにすることが必要不可欠であるように思われる。 しかしながら,何よりも重要なことは,常に真実の根本的な原因が求められる べきこと,そしてしばしばなされるような投機者の行動によって自然の原因が 修正され急がされあるいは遅らされると考えるべきでないことである。」以上 の考察から明らかなように,ゴッシェンは,政治社会的不安にもとずく為替投 機を国際貸借とは異なる別個の為替変動の要困として取扱い, したがってこの ような為替投機による各種勘定項目の変動を国際貸借項目の中から除外して残 る貸借によって為替相場の均衡を規定していたとみねばならなし、。これは,現 代の撹乱的為替投機を除く収支説における均衡の規定と同じものである。 さらに,ゴッシェγは,短期資本移動に関して次のように言う。彼は,これ を「為替の匡正策J という章でまとめている。彼によれば,貿易差額の変動と (15) 北部では騰貸するのが多少おくれた。コ、ッシェンによるとその理由は政府不換紙幣発 行の初めの頃,私立銀行が自己の銀行券を回収しつつあったこと,およびアメリカの広範 囲な地域に紙幣が行きわたるには日時を要したこと,また西部では紙幣発行以前から通 貨不足があったこと等によるという。なお,400%は南部の上昇率である。 (16) アメリカの穀物輸出は南部の港湾封鎖により,またヨーロッパの豊作によって減少し た。 , (17) Ibid, pp 116-17

(9)

759 コyシェンお上びアフタリオンの為替理論と購買力平価説 -9-利子率の変動とは為替の有利・不利すなわち地金の移動に関し逆の働きをする ものである。貿易収支が負である国宛の手形の売却は非常に困難であり, した がってその国からの金の流出を招くことになる。このときその国(金流出国) の利子率は騰貴しそのため資本の移動を誘発しその国宛の手形の需要を回復さ せる。ゆえに,為替が不利となる場合の回復策は, (イ)輸出の増加と輸入の減 少, (ロ)利子率の上昇の二つがあると言える。そこで,彼は, 長期に豆り貿易 に逆調を生じない限り,高利子率を通じて資本の移動を招き,他方で利子率上 昇による価格下落作用を通じて貿易収支の改善を導くことが望ましいと結論す る。すなわち rもし一時的事態から生じる金の輸出が充分に節約できる量を越 えるとの危慎,および発生した資本あるいは通貨の引出しが普通の規模で営業 を行うことを困難にするほどの犠牲を強L、るとの危倶が感じられるならば,外 国へ失いつつあるものを取り戻すよう誘うほど有効な救済策はない。資本の流 入がわ,..“一時の間,失ったものにとって代わるのは,望ましいことである。そ して, この資本の流入は, 単に高利子率の利益ーすなわち資本が本国でうるよ りも高くかっ一国から他国へ移動するのに必要なすべての出費を償うのに充分 な利子率ーを提供することによってのみ作り出されるものである。」と言う。そ して, ゴッシェンによれば, このような利子率の騰貴は実際上は人為的なもの であるよりも貿易収支悪化→地金の流出(貨幣量の減少〉 とそれに関する危倶 →利子率上昇という自然の過程によって引起こされるものなのである。 なお, (18) ゴyシェンにおいては,為替の不利とは地金を引き寄せるような状態を指す。すなわ ち,この場合,外国為替は売却困難となり貿易収支出超である。彼は,この言葉を貨幣的 に解釈すべきであり一国の繁栄と問一視すべきでないという(重商主義批判〕。貨幣的に 金の流入と解することは,貿易理論が示すように金の過剰流入→貿易の逆調→再び金の 流出の語意とも一致するという。 (19) ここに言う手形とは,短期手形である。ゴッシェンによれば短期手形は貿易の状態のー 般的指標であり,したがってその価格変動は地金の移動を示す。これに対し,長期手形は, 信用や利子率の状態を反映す町ると言う。 (20) ゴグシェンは,資本と金とを伺ーとみている。その効果は,為替問題では変わらないと 言う。なお,彼は貨幣の価値と利子惑とを混同して用いている。われわれは,これを区分 して用いた。 (21) このようなときは生産を増し消費を減じる以外に方法はないと言う。 (22) lbid, pp 130-31

(10)

-10- 第57巻 第4号 760 利子率の上昇が資本を誘引するのに充分であるか否かは,その国宛手形の需要 が増大し手形価格が騰貴するか否かにかかっている。かくして,彼は「実際上 イギリスに資金を置く目的で手形を購入することの効果は金の船積みの効果と 同じことである」ということになる。 以上がゴッシェンの資本移動に関わる筒所の要旨である。要するに彼は,国 際貸借が不利に変化した場合に利子率の変動(金の移動に基づく通貨量の変動 により自動的に生じるか,このようなことが生じるとの危倶〔予想〕にもとづ くか,あるいは人為的政策によるか,いずれかで変動する)とそれに誘発され る短期資本の移動によって地金の移動を引起こさないで為替相場を回復し均衡 にすることができると考える。そして,彼はこの資本移動(彼によると利子率 の

1%

程度の差によって大量の移動を生じる)を「金の船積」と同一視するの である。換言すれば,このような利子率に誘発される短期の資本移動は,金に 代わるこ園聞の決済手段であると言いうる。この意味で,彼の貸借説は,現代 の事前的概念に立つ収支説の考え方と同じであり,国際貸借のうち短期資本の 項目が果たす役割を重視する点においてその特色を有しているのである。 以上,ゴッシェンは,為替相場の変動要因に関し国際貸借や政治社会的不安 による為替騰貴また通貨の減価等について言及したのち,最後に地金の国際的 移動(したがって為替相場の変動の性格〉について次のように述べる。すなわ ち,地金の移動は短期手形(外国宛〉が少なくなり獲得できなくなるときに送 られるのものである。換言すれば,その国にとって貸借が負となるとき送られ る。ゆえに,彼にしたがえば,もし利益が得られないならば,地金を移動しな いであろうとする考えは,全くの誤りとなってくる。すなわち rしばしば金は それを送る人にとって利益がなければ決して輸出されないものと考えられてい (23) Ibid, pp 131-32 (24) ゴyシエンによれば,金の移動はその専門業者や投機業者によってなされる。彼等は自 己の組織力により安く移動させそこに生じる利益を獲得する。通常,彼等はこのような狭 い範囲の利益で行動するが異常事態では手形を安く買い高く売るという行動Jこより為替 変動に拍車をかけることもあると言1。 (25) 前出の脚注(19)を参照。

(11)

761 ゴッシェンおよびアアタリオンの為替理論と購買力平価説 -11ー る。しかしながら,これは明らかに誤った考えである。しばしば使用される表 現すなわちある国の為替相場が金の船積みによって何の利益もえられないよう な点にあるという表現は,誤らないように注意深く用いられなければならない。 このような事実は,ある程度知っておる価値はある。しかしながら,それは地 金が自然的必然的に輸送されないことを証明するものではない。もし手形を見 出すことができないならば,その国に負債をおった人,々は,金を送らなければ ならないのである。貸借差額は決済されるかと問うことが遥かに重要なことで ある。為替は,その手形売買業者に何らかの利益見込みも提供せず、にしかも長 期に亘って債務を弁済するために地金の継続的流出を強要するような地金輸出 点にとどまり得るのである。」かくして,地金の国際的移動は,リカァドォが主 張するような利益を求めた結果ではなく,単なる受動的な国際貸借の決済にす ぎないものとされるのである。そして,そこに生じる為替取引は,国際貨幣と しての地金に対して取引業者が保有する選好を予め仮定した場合の国際貸借か ら生じるものではない。また同様に,その結果為替相場が変動する場合も,そ の変動は地金に対する選好の存在する世界での変動という性格をもつものでは ないことになるのである。 われわれは, ゴッシェンの為替理論の性格を以上の考察から次のようにまと めることができる。まず第ーに,彼の理論は, 日々の為替相場の変動を説明す るけれども,金平価あるいは金銀平価などの王子価に関する分析を持たす予め それを前提として成り立つ特色をもっていることである。これは,次のことか ら理解することができる。ゴッシェンが主張する債権債務は,同ーの貨幣単位 で論じられて意味があるものであり, したがってそこにある相場が存在しそれ によって行った換算が入っている。さらに,債権債務は,アフタリオンが指摘 するようにその換算相場如何で、均衡にも不均衡にもなりうるものである。した (26) lbid, pp 118-19 (27) 拙稿「購買力平価説と国際的貨幣ベーノレ観」香川大学経済学部年報24,1985年。 (28) アフタリオン,松岡訳『貨幣・物価・為替論』有斐閣 昭和29年第3部第1:章第3, 254-56ベージ。

(12)

-12ー 第57巻 第4号 762 がって,為替相場の均衡を債権債務の均等によって規定しようとするとき,そ こに少なくともある換算相場が予め前提されていなければならないことにな る。それは,金平価や金銀平価のこともあり,また前日の相場(事前の概念) 'のこともある。しかしながら,前提される相場がもし金平価や金銀平価である ならば,それらの平価が如何なるものかについての分析が予め示されていなけ ればならない筈である。しかし,ゴッシェンではこの点の言及は存在しないの である。このことは周知のようにのちに第一次大戦後のインフレ時代おいて金 本位制度の崩壊に直面し新しい平価の認定を説くカッセノレによってその国際貸 借説が全く無力であるとして強く批判された点で、ある。ところで他方,前提さ れる相場がもし前日の相場であるとするなら,このような前日の相場でみた債 権債務の不均等は相場が変動するであろうこと,また債権債務が均等であるこ とは相場が前日の相場にとどまるであろうことを述べるにすぎず,この場合も また前提された相場自体の成り立ちは何の言及もされないままで残されること となる。そこで, もし後者の考え方に沿い均衡相場自体を規定しようと努める ならば,そのときの均衡相場は,前提とされる相場が長期に亘って維持される という形で規定される以外に規定し得ないことになろう。いうまでもなく,こ の道を歩んだものがヌルクセや近代の収支理論における均衡為替相場の規定で あると言えよ〕しかし,この規定も,のちに均衡すべき収支項目の内容や維持 されるべき長期の意味に関して未解決の多くの問題を生じることとなるので ある。 次に,ゴ yシェンの理論における第二の特徴は,為替相場,地金移動と債権 債務並びに利子率,通貨の減価等の分析を行っているけれどもそれらと需要お よび生産,特に相対価格や雇用との関係の分析を行っていないことである。債 (29) 拍稿「カ yセノレの購買力平価説」香川大学経済論叢 第57巻3号,昭和59年12月。 (30) 拙稿「国際収支の均衡」香川大学経済論叢 第43巻1・2・3・号,昭和45年3月。 拙 稿 「 均 衡 為 替 相 場 に つ い て ( 其 ー)j国 際 経 済 学 研 究 シ リ ー スNo..14. 1958年7月。 Nurkse, R, Conditions of International Monetary Equilibrium, Essay恒 例 I招ter -national Finanじe,No 4, Spr 1945 (31) 捌稿「国際収支表とその均衡(l)j香川大学経済論叢 第53巻2号昭和55年 10月。

(13)

763 ゴッシェンおよびアアタリオンの為替理論と購買力平価説 13ー 権債務は,各国圏内から任意に与えられるとみるかあるいは

JS

“ミノレのように 相互需要均等と比較生産費の両原理を実現するように与えられるとみるか,い ずれかである。ゴッシェンにおいては,既引用のように地金は,利益があるた めに移動されるのではなくて貸借差額の結果として移動されるにすぎないもの である。この観点からみるならば,彼の理論は,国際的貨幣ベール観に立脚し ていると言い得ることになる。したがって,彼の理論は,

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ミルの実物理論 の上に立ちそれを実現す町るような為替相場の変動を分析したものであるとみて 良いであろう。このことは,彼の理論がその最も大きな貢献であるとされる利 子率変化と国際的資本移動の関係の分析を含むと言えども,なお正当である。 なぜなら,当時の理論からみて貨幣利子率は実物利子率の,また貨幣資本の移 動ぼ実物資本の移動の,それぞれ単なる反映にすぎないものであり,そこに国 際的決済手段に対する保有欲求の認識を見出すことができなし、からである。 なお,ゴッシェンの理論は,

lS

ミルの相互需要均等の原理と比較生産費の 原理とから分離し非ベール的に解釈しても,充分に成立するものである。しか しながら,この場合は,その理論と相対価格や雇用との関係をどのように分析 するかという問題が残されてくることになる。 II アアタリオンの為替理論(為替心理説〉 アフタリオン (Albert

Af

talion)は, カッセルの購買力平価説に対する批判 者として現れた。そして,貨幣論において貨幣心理説,為替論において為替心 理説 (latheoηe psychologique du正hange)を主張する。まず,貨幣心理説か ら考察すると,次のようになる。 効用価値説によれば,商品価値は,あらゆる個人にとってその最終効用すな わちその使用し得る最終単位の効用に根拠を持っている。そしてそれは,その 使用しうる単位数の増大とともに減少する。したがって,-価値は二つの要素, 一つは量的な要素,もう一つは質的な要素に依存することになる。量的なもの は我々の使用し得る商品の大なり少なりの分量であり,その稀少性である。質 (32) 前掲脚注(2iiを参照。

(14)

-]4- 第57巻 第4号 764 的なものはその特性に従い我々個々人にとってその最終単位が示し得る効用で ある。量的要素と質的要素とは最終効用の観念に於いて互いに結合する。」そし て,量的要素は単に最終単位がどれだけであるかを決めるために関係するだけ であり,価値の根拠はやはり効用であり本来心理的なものであると云う。 貨幣に関しても同様のことが妥当しなければない。「貨幣に関する個人的評価 は,所得の最終単位が交換によって与える満足」であり,より

E

確に言えば「貨 幣の仲介によって獲得せんとする満足即ち各人がその所得の最終貨幣単位に期 待する満足に依存する。」ただし,この場合の評価は,貨幣が獲得する商品の効 用に関係するだけでなく r商品より独立せる要素即ち貨幣に関する質的要素が はいりこんでいる。」例えば,交換における個人の要求の差(貨幣単位に与える 個人の評価の違い〉とか個人の貯蓄心とか貨幣の将来価値に対する予測といっ た質的要素が関係してくるのである。 アアタリオンによれば社会的価値は, このような個人評価に基礎を持ち,そ れを総合して成立つ需要供給曲線によって決定されるものである。したがって, これもまた,量と質との二つの要素に依存することになる。「問題となるものは 単なる供給および需要に関するもののみではなく,更に多くの価格に於ける供 給需要曲線に関するものである。従って物価は量的変化に依存するのみでなく, 更に個人的評価に於ける即ち供給需要価格に於ける質的変化に依存して変動す (33) ア7タリオン・松岡訳『貨幣・物価・為替論』有斐閣 昭和29年 20ページ。 (34) 上掲訳書209ベージ。 (35) 上掲訳書209ページ。 (36) 上掲訳書209ベージ。 アフタリオンが貨幣の効用を「独立」とする意味は,次のま日くである。ヴィーザーの所得 説では貨幣所得と商品に対する効用の目盛が同ーなら,各個人の貨幣に対する評価は同 じになる。なぜなら,貨幣の効用は,商品の効用そのものの反映にすぎないからである。 したがって,貨幣の手持額が増大するか商品の効用が同じであるならば,貨幣に認める効 用も同じになる。そして,もしこの両方について差がなければ個人は同ーの行動をとる。 しかし,事実は各個人の所得が等しく商品への効用も等しいとしても違った行動をして いる。それは各個人が歴史的経験を通じて商品と異なった効用を貨幣に感じているから である。人々は貨幣の購入しうる商品蚤が変わっても貨幣の評価を変えないこともある。 また,貨幣はそれ自体のために求められもする(守銭奴j。これらのことを考えると,貨 幣l士,商品の効用から歴史的に派生したもので,半独立の効用をもっているといわねばな らない。

(15)

765 コグシェンおよびアフタリオンの為替理論と購買力平価説 -15-るものである。評価とか予測とかと言うことが量的評価とともに著しい役割を 演じている」のである。換言すれば,需要や供給は, ある価格における需要供 給として意味をもつものであり, したがって需要量供給量とし、う量的要素とと もに,需要価格供給価格という質的要素(価格を個人的評価の質的なものの現 れとしてとらえる〕が関わってくる。 この量と質の両要素は,需給両曲線を形 成しその中で融合している。そして, その両曲線の交点において市場価格が決 定されてくることになる。 アフタリオンは, この点に関して貨幣につき次のように言う。商品の需要曲 線および供給曲線は,貨幣の供給曲線および需要曲線である。 またそれは,商 品の場合と向じく,貨幣に対する個人的評価の総合として形成される。すなわ ち,貨幣の社会的価値は i貨幣に関する此等の個人的評価即ち比較され相交わ る貨幣の供給需要曲線に依って成立する。併し特定商品に関しては実際その価 値が測定されるのは貨幣手段に依ってである。従ってかかる商品価値が表現さ れるのは特にその商品に関する供給需要曲線の交点、で決定される特定価格に於 いてである。貨幣にその社会的価値が生ずるのは,あらゆる商品並びにあらゆ る労務に関する供給需要曲線の作用からである。かかる価値の表現が見出され るのは,商品または労務に於けるその一般購買力を表現する価格の総体に於い てである。従ってその変動の測定は便宜上程度の差はあるが一般物価指数に 依る。Jiゆえに貨幣の社会的価値は比較されるこつの分量に依るものでもなけ れば, また殆ど一定されている貨幣量並びに商品量に依るものでもなく, は供給需要曲線に依るものである。」 それ そこで,彼は, このように貨幣の社会的価値を変動させる要因をその需要供 給曲線を作りだした個人的評価の中に見出すことになる。前述のように,貨幣 に対する個人的評価は,個人が所得の最終単位に期待する満足に依存する。ゆ えに, (3i (38) (39) それは貨幣所得という量的要素と期待する満足とし、う質的要素によって 上掲訳書203ベージ。 上掲訳書234ペーシ。 上掲訳書235ベージ。

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-16- 第57巻 第4号 766 変化してくる。 このうち後者の期待する満足とは,貨幣に直接の効用がないこ とカ込らして (商品から派生し多少独立した効用はあるが), i交換に依って獲得 されんとする商品に対して期待する満足」である。したがって,彼が言う貨幣 に関する質的要素は,商品に対して期待するものと貨幣がどれだけの商品を獲 得するかにつき期待するものとの両者を含むことになる。いま,貨幣価値の商 品に関する変化を抽象し,商品に関して分量と欲求とを不変とすることによっ より純粋な貨幣的変化の要素のみをとり出すものとする。そのとき, アフ て, タリオンによれば, 量的要素として貨幣所得が, また質的要素として貨幣の価 値(物価指数の逆数で表示)への予測や交換に際しでの偲人的気むずかしさお よび貯蓄心などが,見出されることになる。そして, ここに予測等の質的要素 を入れることは,決して誤りではないと言う。すなわち i各個人の貨幣単位の 評価は一方に於いては貨幣単位の前日の購買力が如何なるものであったかと言 うことが, また他方に於いては翌日の購買力が如何なるものとなるであろうか と言うミとにも依存し,結局今日の購買力が如何なるものであるかを意味する ものに依ることになる」かくして, アフタリオンによれば,貨幣の社会的価値 は,貨幣に対する需要供給が商品に対する供給需要であるという関係からして 商品の量(量的要素〉とそれへの欲求度(質的要素)によって変動すると共に, 他方それ以外により純粋に貨幣的なものとして貨幣所得(量的要素〉と貨幣の 価値への予測など(質的要素〕の要因によっても変動するものであるというこ とになる。 なお,彼は貨幣の価値に関する予測を左右するものとして,通貨の 増発や為替相場変動等を指摘する。すなわち,彼はそれらを貨幣数量説の主張 するように機械的に直接物価に作用するのではなく予測あるいは貨幣所得を通 じて間接に物価に作用するものとみるのである。 以上がアフタリオンの貨幣心理説の大要である。彼が自己の理論を心理説と (40) 上掲訳書237ベージ。 (41) 上掲訳書237ベージ。 (42) 上掲訳書237ベージ。 (43) 為替相場の作用は,アフタリオンによれば,フランス,ベノレギー,イタリアでは所得を 通じて, ドイ;;,オーストリア,ポーランドでは予想を通じてなされている。

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767 コッシェンおよびアフタリオンの為替理論と購買力平価説 -17-呼 ぶ 理 由 は , 上 記 考 察 の よ う に そ の 理 論 的 根 拠 を 個 人 的 評 価 に 置 く こ と に よ る 。 す な わ ち , 貨 幣 の 価 値 を 決 定 す る も の は , 貨 幣 の 需 要 曲 線 と 供 給 曲 線 で あ り , そ れ ら は 個 人 的 評 価 の 総 合 か ら な る も の で あ る 。 し た が っ て , そ の 価 値 を 動 か と 質 的 要 素 ( 予 測 , 貯 蓄 心 な ど , 商 すものは, 量 的 要 素 ( 貨 幣 所 得 , 商 品 量 ) 品 の 効 用 ) で あ る 。 そ し て , そ の う ち で 最 も 重 要 な も の は 質 的 要 素 で あ る 。 な お , こ こ に 言 う 貨 幣 の 価 値 と は , 一 般 物 価 指 数 の 逆 数 で 表 示 さ れ る も の で あ る 。 ゆえに, ア ア タ リ オ ン の 貨 幣 価 値 の 特 色 は , 貨 幣 の 需 給 を 商 品 の 需 給 の 別 の 反 面 と し て と ら え , さ ら に 個 人 的 評 価 の 量 的 要 素 と 質 的 要 素 を 見 出 す こ と に (44) アフタリオンのフランスに関する統計的研究による分析は,次のようである。 l期 U914-1919)通貨物価問の全期的一致の時代 引為替は,物価騰貴の主役でなく, 他と一致する変動を示さなし、。この期の決定因は,通貨,商品欠乏, 軍隊による大量需要である。 2期 U919-1920)通貨物価聞の1/2の一致(循環的好況の様相)の時代 為替の三者とも変化し,主要因不明。 3期 (J920-192])通貨物価聞の主として循環的不一致の時代(下落期〉 4期(J922 -1924)為替による不一致の時代一為替支配期。 通貨,物価, この3期と4期の特徴は,対外購買力変動が物価を支配したこと〔ただし, 1921年ま では物価の国際的循環の役割大〉およびそれが国際貿易品と圏内品の価格変動差に 表れること,また通貨が物価に支配されたことである。したがって,為替→輸入品価 格→物価→通貨の逮鎖がみられる。 5期(1925-1926)通貨物価の1/2の一致の時代} られる。 他方, フランス以外のヨーロッパ諸国については, f期 U914-1919)通貨物価の全期的一致の時代 じ。 主要因不明。多少為替の支配もみ 次のようである。 各国で多少の差があるが,ほほ同 2期 (J919-1920)通貨物価問の主として循環的騰寅期の不一致の時代(オランダを除 く〉。 3期 (1920-1921)通貨物価聞の主として循環的下手喜期の不一致の時代。 4期(J921-1922)為替による通貨物価問の不一致の時代“ 為替の支配期。 5期(1922中頃より〉極めて異なる方向への複雑な為替制覇の時代(1)真のインフレにもと ずかない為替物価の騰貴(ベルギー,デンマーク, ノノレウェー〉為替支配明白。 (2)通貨増加に照応しない為替物価の激騰(ドイ Yのマノレク崩壊,ポーランド,そ の他中央ヨーロッパ諸国〉為替が通貨増に先行し変動大。 (3)著しいデフレにもと ずかない為替物価の下落(チェコ,フィンランド,デンマーク )0(4)通貨の激増 に対し,為替物価不変(ドイ;;1923年初めから2カ月問。〕 6期(各閣で異なる〉為替安定期 h通貨激増に対し物価不変。スェーデン(1924年中頃 より), ノノレウェー(1925年末より),スイス (J924年末より), ドイツ(1923年 末11月レンテンマノレクより),オーストリア(1922年末より),ポーランド(1924 年 l月より〉。

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-18- 第57巻 第4号 768 よって,従来の全く実物理論と違っていた貨幣理論を統一的に解釈しようと努 めた点にある。そして,最も注目すべきは,彼が貨幣に直接の効用がないこと を一応認めながらも,商品の効用から派生した独立の貨幣の評価(例えば予測 など)を認めることである。他方,アアタリオンの貨幣心理説の欠陥は,貨幣 の価値の変動を貨幣に対する評価すなわち心理的要因に依存せしめることのう ちにあるように思われる。アフタリオンおいて主役を演じるのは,量的要素で はなくむしろ質的要素である。なぜなら,量的要素は,評価に際し最終単位を 決めるだけであるからである。したがって,貨幣心理説は,貨幣の問題を心理 学の問題にすりかえ,その原因をすべて経済外的要因に帰してしまう恐れがあ ると言い得る。 以上の貨幣観をもって,アアタリオンは為替相場の分析を行う。以下,彼の 為替心理説を考察することにする。まず,彼は,当時の支配的学説である国際 貸借説と購買力平価説につき,統計的事実に着目しながら,次のように批判す る。 国際貸借説に関しては次のようである。この説は,一定期間の貸借額によっ て為替相場が変動すuることを主張するものである。したがって,それは,-必然 的にその資産および負債要素についての同一貨幣による換算を条件として いる。」いま,フランスの輸入 100百万ポンド,輸出 10十億フランとし,当時 の為替変動を1ポンド 60フランから140フランとする場合,フランスの貸借 は,換算相場として為替相場変動平均の lポンド 100フランをとれば, ともに 10十億フランとなり均衡する(したがって,より以上の相場変動がなしう。しか し,買入平均相場

1

ポンド 120フラン(予想売買すなわちポンド下落時の為替 購入見送りと上昇時の購入増大を考慮する〉をとるなら,輸入12十億フラン, 輸出 10十億フランとなり入超を示す(したがって,為替相場は益々悪化〉こ とになる。かくして,彼は,国際貸借説を換算相場如何で変化する漠然とした 貸借概念を基礎に置いた理論であるとみる。さらに,彼は,この貸借説に依拠 し自由本位制において貸借概念を見出そうとする限り,必然、的に広義の国際収 ( 45; 上掲訳書254ページ。

(19)

769 コ、ッシェンおよびアアタリオンの為替理論と購買力平価説 -19一 支の中からその一部を取り除き,残されたものによって為替相場の変動を説か ねばならないことになる点を指摘する。なぜなら,貿易収支や資本収支および その他すべての収支を含む貸借は,常に均衡であり為替相場の説明原理として 役に立たないからである。このように収支の一部を取り除くものとすれば,そ の除去したものの中に「為替の重要な量的要素があってバランスに数えられる 諸要素の結果を破壊するようなもの」を含めることがおこる筈である。そして, このような方法で「当該年に行われる新投資中のあるものしか含まれていない 貿易勘定差額の新概念を,ひどく細部に宣って規定しても難点は解決されない であろう。蓋し若し新投資が総てノミランスに現れないとすれば,パランスに現 れる要素の結果を否定し得る量的要素は常にバランス以外に残るであろうし, 若しパランスがかかる量的要素の総てを含むとすれば,それは明らかに均衡を 示し従って為替変動を決定する上には無力となるであろうからである」と言う ことになる。また,彼はたとえこのような貸借に関する難点が克服しえたとし ても,次のような問題がなお残ると云う。いま,出超が

5

十億フランあったと する。これは,正常な状態で、は外国への資本移動によって一時的に相殺され為 替相場の変動の原因を形造らない。しかしながら,もしフランスにおいて悲観 的風潮が流れ資本を逃避しようとする思惑が生じ,しかも同じ理由で外閣が新 しい外貨の売却を拒むような場合には,同一の貸借状態でありながら為替相場 は急激に変動し得るものである。なぜなら,フランスの資本家が利用しうる外 国為替は

5

十億フランのみであり,他方この固定額に対して生じる需要は一時 的大量に集中するからである。かくして彼は,この例示で明らかなように国際 貸借説をすべてを量的要素のみで説明するものであるとし,心理的質的な要素 例えば資本逃避(予想を含む〉を全て無視する「為替数量説」であると結論す (46) 上掲訳書262ベージ。 (47) 上掲訳書262-63ベージ。アフタリオンによれば,収支には三つの概念がある。(イ) 狭 義の貿易勘定差額, 貿易,サービス等からなるもの, (ロ) 最終決済収支 1 貿易勘定 差額に本年度の新投資をくわえたもの,付総計決済収支 最終決済収支に本年度中 に相殺され清算された一時的投資を加えたもの。なお, (吋と付は恒常的に均衡である。 (48) 上掲訳書252ベージ。なお,アアタリオンは,為替学説として貨幣数量説を取り上げる。 それは為替相場を通貨:mの比としてとらえるものである。しかし,彼は,これを当時の事 実に一致しないとして批判する。なお,この貨幣数量説は,通常は,購買力平価説の初歩 的形態とされているものである。

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-20- 第57巻 第4号 770 るのである。 他方,購買力平価説については次のように言う。アアタリオンによれば購買 力平価説は, (イ)r買 手 は 外 国 貨 幣 を 求 め る こ と に 依 っ て 何 を 獲 得 せ ん と す るか」の問し、を提起し,質的要素のうち唯一の要素すなわち貨幣の購買力のみ を正解とする理論である。「蓋しこの学説は為替をば為替の質即ち貨幣の国内購 買力が貨幣に与える価値に依存させているからであるJ(ここにアアタリオンが 貨幣の購買力を質的要素とする理由は,カッセルが需給説に対し r需給の目的 物ーすなわち需給されるものーそれ自身が戦前のものとは同ーでないある もの」となっていることを倍らなかったとして批判したところから理解しう る〉。一方,またそれは, (ロ)市場為替よりも正常為替に関する学説であり,商 品貿易の変動を通じて日常の為替相場を「遂に…ーその水準(物価〉に索きつ けてしまう」ような一方的関係を主張する理論である。 したがって,アアタリオンによれば,購買力平価説は,第一次大戦後の事実 によく適合し一部の真理を含むといえども,次のような諸々の欠陥を有するこ とになる。まず第一に,為替が物価を動かす逆の因果関係の無視である。すな わち「為替と平価との聞に相等しいものがあること…が…"この学説を肯定 するものと考えてはいけない。その確認はかかる等性に於ける一致及び傾向が 平価の為替に対する作用即ち貨幣の対内価値下落の対外価値への作用に依ると きでなければ,論ずることはできなし、」のであり,事実はむしろ逆のことをし ばしば示しているのである(例えば, 1922年-1924年のフランスでは為替から 物価への影響がみられる〉。第二に,為替に影響する量的要素の無視である。為 替取引は,購買力が不変の場合でも行われる。したがって,為替相場の変動は, 為替に対する需給に関してその量が変化するならばたとえ購買力が不変でも生 じるものとみなければならない。第三に,為替に関する質的要素のうち購買力 (49)上掲訳書274ページ。 (50)上掲訳書274ページ。 (51) Casse!, G, Mone'yand Foreign Exchange ajter 1914, 3rd, ed 1925, p.138 (52)上掲訳書276ベ-)。 (53) 上掲訳書281ベージ。

(21)

771 コッシェンおよびアフタリオンの為替理論と購買力平価説 -21 以外の要素を看過していることである。外国為替は,投機の対象や脱税手段と なり既に契約された債務の弁済手段(免債力〉になるものである。そして, れらは,いずれも直接購買力と関係しない別の質的要素である:また,為替は, 、 “ー 、 ー 特定商品に対して購買力を有するために購入される場合の方が一般的購買力を それは,貿易が特定商品の価格差から生じ このような特定商品への購買力を目的として行 動する結果がカッセルの言う購買力平価に一致するためには,すべての商品が 、 し 多 に て か し 造 そ 、 も も 引

ω ω

り 江 G M る よ あ A 口 で 場 ら る か す だ と の 的 も 同 口 ヲ ハ Q V 自由に輸出入され為替の売と買の両側において購買力より高い商品と低い商品 とを適当に購入してちょうど平均が購買力平価になるような非現実的仮定を必 要とすることになる。最後に, 以上のように購買力平価説が一方において量的 要素を無視し他方において一般的な購買力以外の質的要素を看過する理論であ ると批判する場合に, カッセルからそれが市場相場を説明するのではなく平価 を説明するものであると反論されることを予想して i併し平価はそれ自体為替 の結果であるわけだからそれが正常為替の法則として認められようとは思われ ない。」とする。 アフタリオンは,以上のように国際貸借説と購買力平価説を批判し, その過 程で見出した量的要素と質的要素を「恰かも……聯絡あるー総体にまで結合し, これをば論理的な綜合に於いて融合させる」ことを目ざし,為替心理説を提唱 する。そこで, 以下彼の積極的主張を考察しよう。 アフタリオンは,各個人が何のために為替手形に価格を支払うかと自問する。 圏内貨幣の場合その個人的価値は, それと交換に得ると期待する 彼によると, 満足に依存する。これと同様に,各個人が為替に価格を支払うのは i外国貨幣 に関して期待するもの」のためである。したがって i外国貨幣に対して支払を (54) (55) (56) (57) (58) (59) 上掲訳書285ベージ。 上掲訳者285ページ。 上掲訳書287-88ベージ。 上掲訳書291ページ。 上掲訳書251ベージ。 上掲訳書294ベージ。

(22)

-22 第57巻 第4号 772 認める価格は我々個々人にとって我々が二つの貨幣に期待するものの比に依存 (60) すると言うことになる。」そして,アフタリオンによればこの期待するものと は,まず一般的購買力である。さらに,輸入業者等にみられる特定商品に対す る購買力である。また,免債力や租税負担の回避および投機目的(将来価値の 予想)などである。これらは,いずれも質的要素である。さて,このような期 待するものは,外国為替の量と共に減じる。ゆえに,外国為替相場は,その最 終単位に期待するものに依存すると言わねばならない。かくして,アフタリオ ンは,この個人の評価には質と共に量の要素が含まれそれによって支配される ことになると考えるのである。 かくして,アフタリオンによれば各個人は,外国貨幣に対する逓減的評価曲 線(外国貨幣の買手にとっては需要曲線,売手にとっては供給曲線〉を持って 市場に参加してくる。そして,その曲線の総体として外国為替に対する需給両 曲線が成立し,その交点において相場が決定されることとなる。ゆえに i為替 相場なるものは需要供給量に依存するものではなく,一定価格に於ける需要供 給量に依存するものである。換言すれば為替相場なるものは分量と同時に供給 需要価格に依存す}るものである」となり,そこに質的要素も関与してくること になる。アフタリオンは,為替の分量を支配する要因として貿易勘定差額と資 本の差額を,また為替の質を支配する要因として通貨量(一般購買力と特定購 買力とし、う質的要因に大きな作用を与える)予算および国庫の状態(特に予測 に作用する〉予想(たとえば貿易勘定差額の予測〉租税政策(資本逃避を導く〉 為替安定政策等を挙げる。これらの量および質の要素は,上記のように為替に 対する需給両曲線という形で総合され為替相場の決定に関わってくる。しかし ながら,アフタリオンは,このうち量より質の要素が重要であるという。すな わち i併し量的与件が関係するのは如何なるものが最終単位であるかというこ とを決定するために過ぎない。最終単位とはその評価が決定的なものとなる単 位である。従ってある意味ではその根本には評価しか考えられないと言うこと, (60) 上掲訳書 295ページ。 (61) 上掲訳書302ベージ。

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773 ゴlツシェンおよびアフタりオンの為替理論と購買力平価説 -23-またあらゆる商品価値の根拠と同じく外国貨幣価値の最高の根拠も本質的に は,心理的なものであると言うことが言い得られる」と結論するのである。 アアタリオンによれば, 以上の為替心理説の特色は,次のようになる。 まず それは,為替相場決定に参与する要素をすべて考慮しており, その一部たりと も除外していないことであり,それにも拘わらず(すべての要素を含むなら常 に国際収支は均等となり理論として無意味となる〉為替相場の決定を説き得る 理論として形成されていることである。すなわち,-分量の尺度の価格の尺度に 結合せるものとして理解される供給需要のバランスは, ただ一つの価格即ち市 場相場となる価格を除けば,他のあらゆる価格で不均衡なものとして現れるも のであむからである。次に,この心理説の第二の特色は,-与えられた時期に おける価格」としての相場を決定する理論であるにすぎず, 平価あるいは正常 水準を決定する理論でないということである。そして, アフタリオンは「紙幣 に関しては為替の正常水準なるものはない」とし、う。なぜなら,為替相場の決 定要因は, 本来心理的なものであり, したがって不安定な性質のものであるか らである。かくして, アアタリオンは,為替理論として日常相場を説明できれ ばそれで充分であると主張することになるのである。そして,-国際決済収支は 貿易勘定差額に資本移動を加えているため常に均衡状態にあるから, それは私 が示したように為替変動の要素とはなり得なし、。それは一つの結果であってそ れ自体何ごとをも説明するものではない。重要なことは均衡が実現されるに 到った方法であり, バランスは計上される要素である。蓋し均衡は日ーでもそ れは極めて異なる量的要素を代表するし, (62) 上掲訳書 298-99ページ。 (63) 上掲訳書 308ページ。 (64) 上掲訳書 300ページ。 (65) 上掲訳書 342ページ。 またそれは極めて異なる質的条件に なお,アアタリオンは,この心理説を金本位制にも拡張する。その場合,彼によると質的 要素は輸送費を含めて純金畳である。すなわち r外国貨幣単位に期待されるものは外国 に輸出される同一分量“のその国金貨に期待されるものを超過し得ない。J(上掲訳書334 ベージ)。したがって金輸出入点以外で、の取引は生じなし、。主たる丞的要素は貿易差額で ある。ゆえに,金本位制の下では,金の長をいう質的要素と貿易勘定差額とL、う量的要素 に依存し,金平価という為替の安定水準の成立をみると考える。

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-24- 第 57巻 第 4号 774 よってのみ求められるからである。為替に作用するものは貿易勘定差額及び新 資本移動が組合わされる様式であり,更にはその影響の下にこの組合わせが実 現される質的与件である」と言う。 以上,われわれは,アフタリオンの貨幣心理説と為替心理説を概観してきた。 アアタリオンは,まず諸財の価値は獲得しうる最終単位の効用に依存するとい う効用価値説に立脚L,それを貨幣(不換紙幣〉にまで拡大して貨幣に諸財の 効用から半独立の独自の効用を認めた。それは,諸財の効用の反映であること に反対するものではないけれども,一応財の効用と異なってその聞に予測とか 投機および貨幣に対する個人的評価の差異などの心理的要因を介在させた効用 であった。そしてそれは,人聞の心理に根ざし歴史的に成熟し成立したもので あり,財に対する効用から派生したものであると言える。 このような観点に立っとき,彼は,為替論においてもこのような半独立の効 用を外国貨幣に認めることによって理論の構築をすることとなった。すなわち, 為替相場は,外国貨幣に期待する満足に依存するものである。そして,それは 量的要素(為替

η

需給量〉と質的要素(購買力,免債力,投機その他)の両者 によって変動する。ここに言う量的要素と質的要素を近代理論における事前お よび事後の考えと比較してみると次のようになる。アフタリオンは,貿易差額 出超ゆえに為替の供給が5十億フランのみしか存在せずそれ以上に供給が増加 しない場合に資本逃避が生じるような例を挙げてゴッシェンを批判し質的要素 を見出した。この場合彼が言う量的要素とは事後的概念を意味しているようで ある。なぜなら,もし事前的に把握するならば,この場合突発的な需要が増大 (量的要素〉したために異なる為替相場の成立をみたとなし量的要素にその原 因を帰するような説明をしなければならない筈だからである。他方で彼は,量 的要素によって為替相場の変動の説明を行う場合に,しばしば事前的概念を使 用している。例えば,国際決済収支によって説明しようとする場合それが常に 均衡となるため無意味であるとの批判に対して r供給需要のバランスに関して は,国際決済収支に於けるように,それが常に均衡状態にあること,従って為 (66) 上掲訳書 314ベージ。

(25)

775 コッシェンおよびアアタリオンの為替理論と購買力平価説 -25-替のような永久に変動する現象を理解することはできないということを以てし てはもはやこれを批難し得ない。分量の尺度の価格の尺度に結合せるものとし て理解される供給需要のノミランスは,ただ一つの価格即ち市場相場となる価格 を除けば,他のあらゆる価格では不均衡なものとして現れるものである。若し ドルがある場合30フランの相場を有すときは,それはこの価格に於いてのみ供 給需要間に等性が成立することを意味するものである」と答え,明らかに事前 的需給による為替相場の成立を述べているのである。さて,アフタリオンの前 者の考えにしたがえば量的要素が為替相場変動の原因であるとする理由は,存 在しない。なぜなら,貿易勘定差額と資本収支の合計は,常に均衡となるから である。そこで,そのときの変動要因は,質的要素だけとなる。ところが,彼 の後者の考えにしたがえば変動要因は,量的要素だけである。なぜなら,質的 要素のどれをとっても,それは事前的な貿易勘定差額あるいは事前的な資本収 支〔ともに量的要素〉に反映されなければならないからである。そして,この 場合には量的要素と質的要素を分離して分析すること自体それほど意味のある ものとは言えないことになる。以上のことからして,アフタリオンの量的要素 の把握には前者のような事後的なものと後者のような事前的なものとの互いに 矛盾するニつの概念が含まれていると言える(したがって,彼は理論上すべて 事前的で量的なものの変動として把握すべき諸々の要素を量的要素と質的要素 に分割し分析に使用することとなったのである)。このような事後的概念の混用 は,ゴッシェンにもときにみられる。したがって,このようなゴγシェンの箇 所に関してはアフタリオンの批判すなわちそれが量的要素のみの理論であり質 的要素を無視するとする批判が妥当するように思われる。しかしながら,既に 考察したようにゴッシェンの主旨は,事前的需給(貸借〉による日常相場の説 明である。したがって,ゴッシzンの貸借説は,意味あるものと解する限り, 事前的貸借(収支〉による説明であり,その点で質的要素に敢えて言及する必 要のないものであったのである。このことは,アフタリオン自身の為替心理説 においても妥当する。彼の目的は, 日々の相場変動の説明であり,したがって (67) 上掲訳書 308ベージ。

(26)

-26ー 第57巻 第4号 776 上記引用のように事前的需給の均衡による説明に主眼があると思われる。ゆえ に,彼の理論は,一応量的要素と質的要素を分離するけれども,結局それ以上 区分を明確にせず為替を動かすものとして心理的質的要素を重視し,量的要素 を評価に際し最終単位の決定に関わるのみであるとして軽視する結果に至った のである。なぜなら,事前的に把握するならば,量的要素を中心にして質的要 素をその量に影響するものとして付記するか,あるいは量的要素の奥にある質 的要素を中心にして量的要素を軽視するか 為替相場 第l図 S することになる筈だからである。かくして, アフタリオンは,後者の道を選んだのであ る。われわれは,為替心理説における量的 要素と質的要素の関係を外国為替に対する 事前的な需要供給曲線を用いて次のように D' 解釈することができる。第 l図において ¥D DD曲線と

55

曲線は外国為替の需要曲線 需給量 と供給曲線を示している。そして,その交 点。bにおいて初期の均衡相場(邦貨建て〉 ぬと均衡取引量

Q

が決定されるものとする。いま,アフタリオンの言うように 為替の供給弾力性をゼロとしてその供給量を5十億フラン(距離OQo) に限定 するとすれば,供給曲線はQ。点における垂直な直線で表されてくる。そこで, もし外貨に関する購買力やその他の予測に変化が生じ為替の需要曲線のDD D' S' O S Q からD'D'への上方シフトが起こった場合を考えよう。この場合,為替の取引量 はOQoを不変のままに維持し為替相場のみをおからぬへと上昇させる結果に なる。アアタリオンは,このようなケースを考え,為替の取引

OQ

。を引き起こ した貿易勘定差額が資本収支を不変にとどめる場合でも質的要素である予測の 変化を通じて為替相場の変動を生じることがあるとなし質的要素の重要性を強 調し,量的要素応よってすべてを説明しようとする考え方について批判を行っ たのである。しかしながら,第

1

図にみるように事前的な需要曲線(DD)や供 給曲線

(

5

.

めを仮定しそれらを導いた事前的な貿易勘定差額や資本の移動を考

参照

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