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三豊干拓におけるチュウジシギ Gallinago megala の観察記録-香川大学学術情報リポジトリ

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香川生物(ぬ伊WaSeibutsu)(33):19−23,2006

三豊干拓におけるチュウジシギGα〃加α伊椚e卵Jαの観察記録

岩 田 篤 志

〒76ト2305 香川県綾歌郡綾川町滝宮2172−8

ArecordoftheSwinhoe’sSnipeGallinagomegalaatMitoyo−kantaku,

KanonjiCity,KagawaPrefecture,Japan

AtsushiIwata,2J乃一旦Tbた∼〃0刑≠yちA.γαg(‡Wα一dわ,A.γα〟Jα−g〟均励g‘ZWq乃ノー2・ヲ¢ちJ‘甲α〃

筆者は1999年8月1日に観音寺市三豊干拓

にてタシギ属1羽を観察し,現地にてチュウ ジシギと識別し,写真撮影を行った(図1)。 その後茂田(2000)や渡辺・三河(2005)な ど,タシギ属の識別資料が新たに公表され より精度の高い検証が可能となった。そこで 今回これらを踏まえ,再検討を行った。 観察からかなり経過したが前述の状況は変 わっておらず,本報告は香川県におけるチュ ウジシギの写真を伴う記録としては初めての ものと考えられる。本報告が本種の保護に資 す−ることを期待する。 なお筆者を含む3名が観察したが,本報告 にかかる検討は筆者のみが行った。また報告 項目は,日本鳥学会における様式に従った.。 1.種名 チュウジシギ GαJJ∫乃αgO仇曙αJα 2.観察者名 岩田篤志,岩田のり挙,矢本賢 3..観察日時,場所 1999年(平成11年)8月1日 午後1時∼4時 観音寺市三豊干拓内休耕田 は じ め に タシギ属GαJJ∼〃αgOの4種,タシギGαJJ∫〝αgO gαJJよ〃αgO,ハリオシギGα損〝αgO 5Je〃〟用, チュウジシギGαJJf〃αgO別邸Jα,オオジシギ GαJJよ〃αgOムα′dwヱcた∠よは外見が酷似しており,日 本産鳥類のなかでおそらく最も識別が難しい グループといわれる(茂田,2000)。 このうちチュウジシギはシベリア中部で繁 殖し,インド・南アジア・ジャワ・オ、−・スト ラリア北部で越冬する(藤巻,1996)。日本は

春秋に通過するのみであり,日本鳥学会

(2000)は四国での分布を旅烏PV(passage

visitoT)としている。 しかし前述のとおり識別が困難なために, タシギとの誤認や,種名が確定できない場合 も多く,写真や識別根拠の説明を付した観察 記録は四国内でも少ない。 香川県ではこれまで明確な記録は発表され て−おらず,過去には鳥獣日録に掲載されてい た(香川県,1980)ものの,近年では記録があ る種としても認知されていない(香川県, 1999)。そのため現状では,本種は少数が旅烏 として香川県を通過していると推測されるに すぎない。 −19 −

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図1.チュウジシギGαJJg〃αgO〝legαJα

に下記の特徴を確認した。 ①肩羽下列の外弁には白色,内弁には淡褐色 の羽嫁がある。羽繚の幅はほぼ等幅であ る。 ②眉斑は目先で著しく太い。 ③初列風切は三列風切より明瞭に突出してい る。 ④初列風切のPlOはP9より明瞭に突出してい る。 ⑤尾羽は初列風切より明瞭に突出している。 ⑥次列風切後端に太い白色帯はない(飛翔時 に確認)。 ⑦中両夜の先端に黒い軸斑が無い。 7.計測値 野外観察のため計測は行っていない。 4.観察距離 5∼6m程度離れた車中から,双眼鏡及びス コ岬プ(×25∼45)で観察した。 5.観察した環境 三豊干拓地は大部分が田及び休耕田であ

り,一部に畑が点在している。観察場所は休

耕田であり,東側と南側が稲の生育した軌 北側と西側が舗装路である。土が掘り返され ていたことから数日内に耕されたものと思わ

れる。なお耕されて満となった箇所には,午

前中に降った小雨による雨水が若干残ってい た。 天候は曇りであり,無風であった。 6.形態に関する記述 観察及び写真から,識別ポイントとして主

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8.極■亜種を同定した基準 (1)橙の同定 タシギ属の識別は,まずタシギかどうかを 判定し,タシギの可能性がなければ残る3種 を検討することが妥当である。そこでまずタ シギか否かを検討する。 木偶体の眉斑は目先で著しく太いが,タシ ギの場合は目先と冒の後方で眉斑の幅はほぼ 等幅であり異なる。また飛翔時に,次列風切 後端にタシギの特徴である太い白色羽緑は見 られなかった。これらはタシギかどうかを判 定する基準として最もよく用いられる特徴で ある。 さらに,タシギ成鳥であれば肩羽 ̄F列外弁 は明瞭に太いが,本個体の肩羽下列の模様は 外弁と内弁がはぼ等幅であり異なる。ただ本 個体は後述するとおり幼鳥であるため,この 点については参考にとどめるが,以上により 本個体がタシギではないことは確実である。 次にタシギ以外の3種については,羽色, 畷の太さ,脚の太さ等の識別点が指摘されて いる(茂田,2000)。しかしそれらの多くは, タシギや他種と比較するとどうかというもの で,それらを客観的に検証することは難し い。そこで写真から検証可能な識別点である 初列風切と三列風切との関係,初列風切のPlO とP9の関係及び初列風切と尾羽との関係に着 目した。 まず茂田(2000)や渡辺・三河(2005)により 種別に特徴を整理すると,以下のとおりであ る。 〈ハリオシギ〉 。初列風切と三列風切:ほぼ同じ長さ。 。初列風切と尾羽:ほぼ同じ長さ。体側面 から見ると後部の突出がほとんどなく, 全体的に寸詰まりに見える。 。PlOとp9の差:はとんどない。 〈オオジシギ〉 。初列風切と三列風切:初列風切ほとんど 図2.初列風切(PlO,P9),三列風切及び尾羽 突出しない。 。初列風切と尾羽:尾羽は初列風切からか なり突出し,タシギ属の中で最大の突出 幅となる。 。PlOとP9の差:差は小さく,0.9∼1,6mm (茂田,2000)。 〈チュウジシギ〉 。初列風切と三列風切:初列風切は三列風 切から明瞭に突出し,その幅は平均13mm (渡辺・三河,2005)。 。初列風切と尾羽:尾羽は初列風切から明 瞭に突出する。 。PlOとP9の差:タシギ属中最も大きい。 本個体は,初列風切が三列風切より明瞭に 長いこと,初列風切から尾羽が明瞭に突出し ていることから,ハリオシギではない(図 2)。 次にオオジシギとチュウジシギの検討とな るが,両種の明瞭な識別点はP10とP9の幅で ある。そこで本個体を確認するとPlOとP9の 幅が大きいことから,チュウジシギの可能性 が高いと考えられる。 ほぼ真横からの写真であるので,正確には 測定できないものの,この点について写真か ら検証を試みる。 写真を測定すると,本個体の囁の露出囁峰 − 21−

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曲がりながら上昇し,地上約20m以上を戻っ てきて−,ジグザグに別の耕地へ降りた。この ように低く直線的に飛んだ後,急激に上昇す るのはチュウジシギの特徴(茂臥 2000)と いわれており,行動面でもチュウジシギを支 持している。 11.写真あるいは写真の有無 掲載した.写真(図1)を含めて,筆者がデ

ジタルカメラ(Nikon COOLPIX950,211万画

素)にて−23カット撮影した。 12.過去の記録とその文献

四国内の主要な文献を確認すると,和田

(1973)や石原(1982)に種は掲載されている

ものの,具体的な記録は言及されていない。

また日本野鳥の会愛媛県支部(1992)は本種 を愛媛県における「写真,録音または標本が 残っているもの」に分壊しているが,具体的 な写真や記録は掲載していない。確認した限 りでは,四国における写真を伴う記録として

は,徳島県小松島市田野町(1983年9月18

日)での記録(高知新聞社,1995)のみと思 われる。 また香川県では,香川県鳥獣目録(香川

凰1980)に掲載されているが,根拠となる

記録は触れられていない。1998年10月までに 香川県で観察記録があったとされる種のリス ト(香川県,1999)には掲載もなく,香川県 のレッドデー・タブックの対象種にもなってい ない(香川県,2004)。 以上のとおり,四国における写真または明 確な識別経緯を伴って発表された本種の記録

は非常に少ない。特に香川県では,これまで

確実な記録は公表されていなかったと考えら れる。

長:PlO−P9は1:0.032である。チュウジシ

ギ(性不明)の露出畷峰長の平均値は64.6mm (山階鳥類研究所,1989)というデータをあて はめると,本個体のPlO−p9は2.08mmとなる。

またオオジシギ幼鳥の露出畷峰長の平均値

70.7mm(山階鳥類研究所,1989)を当て−はめ ると,2.26mmとなる。いずれの場合もオオジ シギの上限1.6mmを超えており,撮影時の体の 傾き等を考慮しても1.6mm未満になることはな いと考えられる。よって本個体はやはりチュ ウジシギと考えるのが妥当である。 なお,タシギ属は尾羽の枚数及び形状を確 認できれば,確実な識別が可能である(山階鳥 類研究所,1989)。今回も2時間の観察中尾羽 を4回程度開いたので注意して観察したが,

枚数等の確認はできず,撮影もできなかっ

た。 (2)亜種の同定

チュウジシギは亜種が認められていない

(Haymanetal.,1986)。 9.性と齢の識別 本個体は中雨覆の先端に黒い軸斑がないこ と,また初列風切先端には淡色の羽縁がある など,各羽に幼羽の特徴を備えている。 よって本個体は当年生まれの幼鳥である。 10..観察した行動 本個体は湿ったあぜの上で採餌をし,水溜

りの中でははとんど採餌しなかった。2時間

後,水溜りの中で羽づくろいをした後一・時眠 り始めたように見えたが,すぐ飛翔して離れ た耕地へ着地し,見失った。 飛翔する際に鳴いたが,その声はタシギの 「ジェッ」よりも高く,「ジェッ」と「ギェッ」 の中間のように聞こえた。本県で聞きなれて いるタシギとは異なる声質と感じた。 またしばらく直線的に低空を飛んだあと, 13.その他 本個体は1999年8月1日の筆者ら以外には

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観察されていない。短期間で渡ったのか,発

見できなかっただけなのかは不明である。し かし今回夏季の干拓地において一本種が確認さ れたことから,今後注意すれば同時期に別個 体が観察される可能性も高いと考えられる。 なお本個体の識別にあたり,今井宗丸氏に ご意見をいただいた。また山階鳥類研究所の 茂田島光氏には,本個体の識別と,齢による 識別の注意点をご教示いただいた。謝意を表 する。

引用文献

日本野鳥の会愛媛県支部.1992愛媛の野鳥 観察ハンドブック はばたき.383pp.愛媛 新聞社,松山. 石原保.1982.四国の野鳥誌.190抑築地書 館,東京. 香川県.1980.香川県鳥獣目録.83pI)香川 県環境保健部自然保護課,高松. 香川県1999.第53回愛鳥週間「全国野鳥保

護のつどい」記念誌 かがわの野鳥.

169pp香川県,高松.

香川県り 20041香川県レッドデータブック 香川県の希少野生生物.416pp.香川県環境 森林部環境・水政策課,高松

高知新聞社1995.四国の野鼠 215pp.高知

新聞社,高知. 永田尚志.日本動物大百科第3巻 鳥類Ⅰ.

1996小182pp.平凡社,東京.

日本鳥学会.2000.日本鳥類目録(第6版). 220pp… 日本鳥学会.北海道. Hayman,PMar℃hant,Jand Prater,Tり1986.

SHOREBIRDS An identirication gulde to the

Waders of the world Cristopher・Helm,Lon−

don

茂田良光2000い 日本産ジシギ類4種の識

別.BIRDER14(5):38−47

和田豊洲.1973.四国の野鳥157pp.高知営

林局,高知 渡辺修治・三河一・郎.2005.考える識別・感

じる識別 第29回 ジシギ.BIREDR19

(9):59−65

山階鳥頼研究折1989.鳥類識別マニュアル

(識別編No・5)タシギ属GαJJよ〝αgO4種の 識別.4pp.山階鳥類研究取 我孫子. − 23 −

参照

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