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瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究 I 畑地かんがい上の基礎調査項目について-香川大学学術情報リポジトリ

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180 香川大学農学部学術報告

瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究

Ⅰ畑地かんがい上の基礎調査項目について 上原 勝樹 松田 松二 山田 宣良 Ⅰ 富 え が き わが国農業の近代化を実現するためにほ,畑地の基盤整備を行ない,土地の生産性ならびに労働の生産性を飛躍的 に向上させる必要がある なかでも適正.な畑地かんがいの実施は目下の急務と考えられるが,従来の畑地かんがい法 ほ欧米から直輸入されたものが大勢をしめ,必ずしもわが国,あるいは各地力の自然条件や社会経済的条件に適合し た経済的な畑地かんがいであるとはいえ.ない 特に瀬戸内地方はそれら諸々の条件において他地方と比べて特異な実態を示しており,独自の畑地かんがい基準の 設定が必要であると考えられるすなわら,われわれは農業気象学,植物生理学,土壌物理学などに.もとづいた総合 的な見地から瀬戸内地方に適合した畑地かんがい方法の確立を目的として本研究を推進せんとするものである. Ⅱ 試験地の選定 主として自然的条件に着日Lてみた場合瀬戸内地方の畑地は以7に記述するような特質を有している

1降水是が少ない,掛こ作物生育上遥要な夏二季(6一、−8月)における降水義が他の地方と比べ僅少であり,この期

間における蒸発鼠(487Ⅰ一皿)ほ降水鼠(46511ml)を上まわっている(1) 2段畑,急傾斜畑が多い,すなわち面掛こおいては全仰也の約49%,耕作農家数では約44%に.ものぼっている(2) また,作付体系に着日してみると,果樹栽培が盛んであることがわかる.すなわち瀬戸内でほ総農家数の約17%が 果樹栽培農家であり,産出餅においても給紙の約12%にものぼっている(2)これらはいずれも全国平均を大幅に上ま わる倍である. これらの結果を・総合してみると,瀬戸内地方の畑地は,夏季において1二害が生じやすい気象条件下にある(畑地か んがいが不可欠な)傾斜地果樹園によって代表されるものと考えられる 以上の見地から,われわれは本研究の試験地として香川大学農学部付属傾斜地農場を選定した.以下に試験地にお ける基礎調査結果について論述する Ⅲ 基礎調査結果ならびに考察 畑地かんがい計画を樹立するために必要とされている基礎調査項目を大別すると −・般的調査:対象地区の地形,地風 気象,常葉などの条件について行なうもの 個別的調査:主として対象地区の土壌についてその物理性,化学性などを調査する とになる,このうち一・般的調査項目については上院(3)斉藤(4)らによって充分な検討がなされているので,今回ほ特 に個別的調査結果について報告する なお傾斜地農場における個別的調査は−・部玉置(5)によっても行なわれているの で,そのデー・タをもとにして必要に応じて土壌の物理的性質などの経年変化についても論述してゆく▲予定である。 1其比重,仮比重,間隙率 試験地土壌の物理性については,深さ0∼100cmに亘り,斜面,テラス山側,テラス谷例の3ケ所について調査を行 なったこのうち特に探さ0・∼50cmまでは,果樹(甘橘類)の生育との関連性が大であると考えられるので,それぞ れ3連ずつ5cmおき●に100(Cの定容採土を行ない,物理性を判定した 其比嘉,仮比窪.間隙率の測定結果を玉置のデータ(S)と併記すると,表−1のとおりである.

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181 この表から明らかなように,其比倭の値は上 風 下層による差異,経年的変化とも顕著では なく,いずれもほほ25∼26の値を示してお り,母岩(閑却E崗岩)に依存するところが大 であるものと考えられる つぎに仮比重についてみると,一一般に今回の 測定値のほうが大きくなっている一 従って真比 墓と仮比重とによって決定される間隙率ほ今回 のほうが小さい偲を示していることがわかる しかし.ながら仮比卦£測定の場所,方法,時 期などによって非√断こ異なった値なとるのがさ話− であり,一・概に経年変化であるとの結論を下す 第20巻第2号(1969) 表−1其比重,仮比盈,間隙率 1968年 10月 19≡諸声19苧引19…箔 上層土】 257

竺し__そ.竺竺】しへぞ空 】

1:1:: 11】 lニ1T

l‖35∠126/155

上層せ∴ 420 う福i卜五言

三  ̄=二 ∴ 二

間隙率 わけにはゆかない.すなわち,これについては今後更1こ詳しい検討を加えてゆく必要があるものと考えられる 2粘度分析 土壌な分析するにあたって・ほ,一腰に粒虔分析が行なわれる概に論述したようにり本試験粕は傾斜地であるの で,雨水による細粒土壌の流亡など天然の粒度分析がなされる可能性があるすなわち採土鋸凱こよって閲歴が老し く異なることが考え.られる そこで今回は一腰性を知るために前記採土位首の各層から得られた土展な混合し,四分法によって調られた凧乾土 壌を供試した なお測定はJIS.A1204(比重計法)にもとづいて行なった その結果ほ図膿1に示すとおり1である % 柳眉通湖東 J∫−t一往;n川り 同一Wl粒 径 加 杭 州l線 この聞からわかるように,供試土壌のうち2,000爛を通過する部分(実線)は砂賀ロー・ムに属するものであるま た2,000〃舗残留部分が全試料の30%近く存在することは注目に個す■るすなわち,試験地が傾斜地であり,抑削二瀾 亡の恐れがあることを考慮すると早急に充分な保全対策が必要であることが示唆される また逆に粒度分析を各地点,各層毎に行なうことも土壌改良,遵地保全なとの見地から歪費であると考えられる 3pF一合水比曲線と閲場容水故 土壌水分保留の特性を表わす重要な指標としてpF一合水比曲線があるこれを作成するには種々の方法があるが, 今回はpf・0∼2の範囲についてほ吸引法,pF2∼42の簡閲についてほ遠心法によって行なった測定に際しては現 場の物理憤超そのまま維持するために採ニヒ円簡に収納したまま負圧吸引,遠心脱水を行なったその結果を平均的に・ 表わすと図−2に示すとおりてある「

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182 香川大学農学部学術報告 閉場容水晶(F,C‖)は一・般にl ̄排水が良好な 均一・構造をも、つた土壌で,多量の降雨があった2 へJ3日後,水の下降移動が非常に小さくなったと きの土壌水分最」と定義されている.今回は充分 な降雨(1968年10月3∼4日,23mm)の2日後 (10月6日)に深さ50cmまで採土して求めたもの である..その結果については雛二報に.おいても詳 しノく論述するが,−・般に15∼17%であった従っ て図】1から明らかなように圃場容水晶に相当す るpF値は2“0前後である. 畑地かんがい上の葡効土壌水分は閻場容水晶∼ 遠心水分当毘であるので,本試験地では16−13 %,すなわちわずかに3%前後にすぎず,保水力 が非常に小さい土壁であることがわかる 4イソテークレー・†,透水係数 かんがい強度を決屈するための現場測定事項と してインチ−クレー・トがあるここではテラス山 側4ケ所,谷側4ケ所に.おいてシリンダインチ− クレ−・トを測定し,透水係数との関連性の検討を 試みた測定結果の一周ちを・主な畑地かんがい地区 におけるデーータとともに併記してみると表−て2の とおりである ∴_.._....._. し. 15 10 含水比(%) l叉i−2 pF一合 水 化 曲 線 表−2 インテ−・クレー・ト 地区名土性芦浸入速度(叫加)l転壷丈壷i示 この安か らわかるように,本試験他におけるイ ンチー・クレー】、ほ,ほほ同一土性とみなされる他 の畑地かんがい地区よりやや大きく,かなりのか んがい強度でも許容されうる状況にあるしかし ながら傾斜地であることをもあわせて考えると, 余裕をもった言†両が必要となろう。 また表−2の結果をみると谷例のほうが小さい テラス山側 テラス谷例 砂壁土 /′ 2,

・・

ニー〒ミ≡・−∴∴・二 インテ−ク レ−・トを示しているLかしながら谷側4ケ所のうち2ケ所ほバッファ」−・ポソト作成にもかかわらずイン チ−・クレ−トが時間とともに不班別に変動し,一般に非常に大きな透水性を示したのでこのデータには加えていな い従って特にテラス谷側においては測定地点の選定が非常に妥要であり,あわせで土壌の不均一性をも充分に.考慮 する必要があるものと考えられる つぎに周時に測定した現場透水係数についてみると,一腰に10−1∼10−2cm/secと非常に大きな億を示し,特にテラ ス谷側の一一部でほ著しい透水性を示Lたこの結果はインチγ・−・・・クレ−トとも関連して傾斜地の特性を表わすものであ ろう… nr 総 合 考 察 以上の結果傾斜地農場における畑地かんがい基準をある程度明らかにすることができた 今後の課題として次のこ とがらをあげることができる 1継続的観測が必要であるすなわち傾斜地土壌の物理性は経年変化するのか否かについて明らかにする必要があ る,

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弟20巻第2号(1969) 183 2土壌の不均一一億笹ついて検討を加える必要がある一 すなわち水平的,鉛蘭的位置の変化に伴ない土性が異なるこ とを考慮し.測点の代表性を明らかにしなけれほならない. このように.特に土壌条件に限定した場合にも,瀬戸内地力に適合した畑地かんがい法を確立するためには数多くの 問題点があるこれらについてほ今後漸次検討を加えてゆく予定てある 参 考 文 献 (1)大島一志:畑地かんがいの計画と設計′ 畑地農業研究会(1963) (2)森 和男:瀬戸内地区守こおける果樹農業の林道分析,香大更隻学報16(1964) (3)」二原勝樹:傾斜地果樹園の開設に関する徴気象学的研究,番犬濃学報11(1959)など (4)斉藤実ら:香川県における傾斜地の地質ならびに花嗣岩の風化についで香農大学報4(1953)たと (5)玉置鷹彦:傾斜地新開果樹園土壌の研究,香大農学報9(1958)

Fundamentalstudies on the rationalirrlgation for

the district along theInland Sea ofJapan

IBasieinvestlgations forirr・1gation

MasakiUErIARA MatsuiiMAT・SUDA and NoriyoshiYAMAl)A

Summar・.y

In the fields along theInland Sea ofJapan,Sloping orchards are especially representativeSo,inirrigation plannlng Ofthis district,determinlng the soilphysicalproperties preciselylS Of ma】OrimportanceThis paper, therefore,rePOrtS the soilphysicalproperties of the sloping orchard of Kagawa University

1Density of the soilper・ticle:The densityis2.55・260,and seems no allnualexchange 2.Pt!rticle sizc of t王Ie SOil:By the hydrometer method,the soilproved to be siltyloam 3pF・・WatCr・COntent relationships:Fieldcapacity equalspFl5−23and the availablemoisture(FCへC−

ME)is about3%

4Intakc rate:Representedin table2.Many attentions are need for the point selection

Ftlrthermore,COntinuous measurements are reqtlired and the heterogeneity of the soilwillbe proved

(1968年11月30日受理)

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