杉 と 日本 人 の つ な が りにつ い て
高
桑
進
は じ め に 1.ス ギ の 樹 木 と して の 特 徴 1-1.挿 し木 と実 生 の 根 の 違 い 1-2.材 と し て の ス ギ の 特 徴 2.ス ギ と 日本 人 の つ な が り 2-1,ス ギ の 来 た 道 2-2.ス ギ の 行 く道 2-3.日 本 各 地 に 見 ら れ る杉 2-4.杉 の 家 紋 デ ザ イ ン 3.ス ギ と生 活 用 具 の つ な が り 3-1.杉 の 割 箸 3-2.杉 線 香 3-3.杉 茶 お わ りに は じ め に 日本 列 島 の 天 然 ス ギ の 分 布 は、 年 間 降雨 量 が2000ミ リ を超 え る 地域 で あ る こ とが 知 られ て い る1)。我 が 国 の気 候 と風 土 が 、 こ の 日本 列 島 に特 有 な針 葉 樹 を育 み 、 縄 文 時代 か ら私 達 日本 人 は 身 近 な ス ギ を 利 用 して生 活 して 来 た 。 ス ギ の 持 つ 植 物 と して の 特 性 を生 か した 様 々 な生 活 用 品 が あ る。 そ れ らの 製 造 法 を通 し て 「杉 と 日本 人 の かか わ り」 につ い て 考 察 した い。1.ス ギ の 樹 木 と し て の 特 徴 1-1.挿 し木 苗 と実 生 苗 の 根 系 の 違 い よ く知 られ て い る こ とで あ るが 、 吉 野 杉 は 実 生 苗 を苗 畠 で種 子 か ら育 て て2 ∼3年 生 に して か ら適 地 に 植 え る のが 一 般 的 で あ る。 これ と対 照 的 な のが 、 九 州 地 方 の 杉 の 植 林 法 で あ る。 九 州 地 方 で は 、 ほ とん どが 挿 し木 苗 、 す な わ ち杉 の精 英 樹 か ら切 り取 っ た枝 を、 適 当 な砂 等 に 挿 して 発 根 させ た 苗 を生 産 して植 林 す る。 こ の 二 つ の 方 法 に は 、 そ れ ぞ れ 一 長 一 短 が あ る。 す な わ ち 、 実 生 苗 を生 産 す る に は 広 い 圃 場 が 必 要 で あ り、 移 植 す る 前 に根 切 り と称 し て直 根 を切 り、多 数 の根 を発 根 させ て か ら移 植 す る。 そ の 過 程 で 、 苗 の 選 別 を行 う こ とが 出 来 る。 一 方 、挿 し木苗で は狭 いスペ ースで多数の苗 を育 てる ことが 出来る とい う利 点 が あ る。 また 、 最 初 か ら多 数 の 根 が 切 断 面 か ら発 根 す るた め 生 育 が早 い。 こ の や り方 で は、一本 の精 英 樹 か ら多 数 の 同 じ性 質 を持 つ 苗(ク ロー ン)が 得 られ る。 この 方 法 は全 国各 地 で 用 い られ て き たの で、 現 在 で は ク ロ ー ン苗 の杉 が 日本 全 国 の 広 い 面 積 に植 え られ る こ とに な った 。 古 くか らの 京 都 北 山 の 林業 家 で あ る 古 原 氏 か らの 聞 き取 り調 査 に よれ ば 、 十 数 年 に一 度 は発 生 す る 大 雪 の 被 害 を被 るの は、 実 は地 域 性 の 苗 で は な くて この よ うな生 育 が 早 い とい う こ とで 気 候 風 土 が 違 う他 所 か ら移 植 した ク ロー ン苗 で あ る とい う。 杉 苗 の生 育 した 地 域 に よ る気 候 や 雨 量 ・地 質 等 が 、 そ の苗 が 植 え られ た地 域 と は違 う こ とが 原 因 で あ る こ とが わ か る。 ス ギ の調 査 で 数 年 前 に 訪 れ た 奈 良 県 吉 野 に あ る川 上 村 の 山 の 斜 面 が 皆 伐 され て い た の で 、 なぜ 植 林 しな い の で す か、 と吉 野 の 林 業 に60年 以 上 携 わ って き た 方 に お 聞 き し た所 、 何 度植 林 して も鹿 が 来 て 苗 を警 っ て し ま う の で、 諦 め た と の こ と。 な る ほ ど と納 得 した 。 と こ ろ が、 林 道 沿 い の斜 面 に 見 られ る スギ や ヒ ノ キ の 自然 の実 生 は 獣 に は食 べ られ て い な い こ とに 気 い た。 つ ま り、 成 長 が 早 い ス ギ 苗 を多 数 植 林 す る と、 た ち ま ち鹿 の 食 害 に 出 会 う。 鹿 にす れ ば美 味 しい
杉 と日本人のつなが りについて 苗 な の で あ ろ う。 で は、 鹿 は な ぜ 林 道 沿 い に生 育 す る 実 生 苗 を食 べ な い の か 不 思 議 で あ る。 そ の ヒ ン トに な る の は 、 苗 の 生 育 の ス ピ ー ドで あ る。 挿 し木 苗 は確 か に植 林 す る と生 育 が 早 い が 、 実 生 か ら育 つ 苗 は初 期 生 長 が ゆ っ く りで あ る 。 そ れ は、 図1に 示 した よ う な根 系 の 違 い が 原 因 で は な い だ ろ うか2)。 挿 し木 苗 は、 根 が 多 数 で き る の で養 分 の 吸 収 が よ くな り生 育 が 早 い の に対 して、 実 生 苗 の 場 合 は ま ず 直 根 を 出 して か ら細 根 を 出 して い く。 野 菜 と同 様 に、 成 育 が 早 い もの ほ ど食 害 を うけ やす い の で は ない だ ろ うか 。 熊 本 県 で 、 「植 え ない 森 づ く り」 を進 め て お られ る平 野 虎 丸 氏 に よれ ば、 最 近 の 土 砂 災 害 で 目立 つ 斜 面 崩 壊 の 場 所 は、 挿 し木 苗 のス ギ を移 植 した 所 で あ る と 主 張 され て い る。そ の理 由 は、挿 し木 苗 の ス ギ は根 が 横 に しか伸 び て い な いの で 、 大 雨 が 降 る と倒 れ や す い か ら だ と言 う。 と こ ろが 、 実 生 の場 合 は根 が 真 っす ぐ に下 に伸 長 して い る の で、 しっか りと倒 れ ず に 生 育 で きる た めで あ る とい う。 た しか に 、 天 然 生 の ス ギ 生 育 地 を何 カ所 か 調 査 して きた が 、根 が 下 に あ る 岩 を抱 き込 ん で い る こ とが 多 い 。 全 国 各 地 に あ る ス ギ の大 木 は 、 神 社 の 境 内 か寺 院 の 中 に 生 育 して い る もの が 多 い。 尾 根 筋 に生 育 す る もの で はそ の根 が 岩 盤 の 割 れ 目、 とい うか 破 砕 帯 を貫 通 して 地 下 水 が得 や す い よ う に思 わ れ る。 ス ギ は 水 を 大 変 好 み 、 過 湿 に は 強 い が 乾 燥 に は 大 変 弱 い 、 に も関 わ らず 尾 根 筋 に生 育 す る ス ギ の 巨木 の場 合 、破 砕 帯 に根 を伸 ば す こ とで水 を取 り込 ん で い る と考 え られ る。 そ の た め 数 百 年 間 も枯 れ ず に来 た の で は な い か 。 吉 野 杉 は大 変 急 な斜 面 に植 え ら れ て い るが 、 そ の 腐 植 層 は大 変 厚 く根 が か な り下 ま で伸 び て い る。 樹 齢 数 百 年 もの吉 野杉 が 倒 れ ず に 急 斜 面 で 生 育 で き る理 由 は、 挿 し木 ス ギ と は 違 い 実 生 苗 を使 い 、 か つ 直 根 が発 達 し て い る た め で は な い か と考 え られ る。 天 然 生 の 実 生 育 ち の ス ギ と挿 し木 の ス ギ苗 の 根系 の 違 い を今 後 も検 討 して ゆ き た い 。
左:実 生 苗,右:挿 木 苗(佐 藤敬 二)
左:挿 木 苗2年 生,右:実 生 苗2年 生 ス ギ の根 系
杉 と日本人のつなが りについて 1-2.材 と して の ス ギ の特 徴2) ス ギ は、 北 海 道 南 部 や 台 湾 に は 植 栽 され た もの が あ るが 、 日本 特 産 の 針 葉樹 で 本 州北 部 以 南 ・四 国 ・九 州 ・屋 久 島 に分 布 す る"2)。 い う まで もな く日本 にお け る造 林 樹 種 で 一 番 多 い。 人 工 造 林 地 で 有 名 な杉 に は、 奈 良 県 の吉 野 杉 、 大 分 県 の 日田杉 、 静 岡 県 の 天竜 杉 、 宮 崎 県 の 飯 肥 杉 、 鳥 取 県 の 智 頭 杉 、 三 重 県 の尾 鷲杉 等 が あ る 。 直 幹 性 大 高 木 で 、樹 高 は40∼60m、 胸 高 直径 は2∼6mに 達 す る ものが あ る。 樹 形 は 円錐 ∼ 卵 形 の樹 冠 を形 成 す る。 葉 は小 枝 の 回 りに生 じて 、針 状 や や や 湾 曲す る が、 針 葉 の 断面 は 菱 形 で あ る。 オ モ テ ス ギ で は縦 長 の 菱 形 、 ウ ラ ス ギ で は縦 横 が ほ ぼ 同 じか や や 縦 長 の菱 形 とな る こ とが 知 られ て お り、 私 達 の研 究 か ら針 葉 断 面 の 縦 と横 の 比 で 明 確 に 区 別 で きる こ とが 明 らか と な っ た(高 桑 ら、 2009、 2010) 1().IUO 木 材 と し て の特 徴:心 材 は、 淡 紅 色 か ら暗 赤 褐 な い し黒 褐 色 。 辺 材 は 白色 。 心 材 と辺 材 の 区別 は 明 瞭 。心 材 の鮮 紅 色 の もの を特 に ア カ ジ ン(赤 心)、 黒褐 色 の もの を ク ロ ジ ン(黒 心)と 呼 ぶ こ とが あ る。 春 秋 材 の推 移 は一 般 に 急 で 、 木 理 は通 直 。 肌 目は粗 く、 特 有 の匂 い が あ る。 樹 脂 細 胞 が 比 較 的多 く、 木 口 面 に お い てお もに 秋材 に散 在 す る が 、 多 少 接 線 ∼群 状 に 現 れ る。 心 材 で は 黒 褐 色 の 樹 脂 の充 填 が 著 しい 。 化 学 的 に は、 心 材 と くに ク ロ ジ ンの 漂 白 に難 点 が あ りパ ル プ用 材 と して は適 し て い ない 。 た だ し、 心 材 に含 まれ る精 油 は 日本 酒 に 木香(き が)を 与 え る。 耐 久 性 ・保 存 性 は 心 材 で は 中 庸 で 、 辺 材 は低 い。 割 裂 性 は大 き く、 加 工 工 作 が 容 易 で あ り乾燥 に は時 間 が か か る。 樹 皮 は赤 褐 ・灰 褐 色 、 繊 維 質 で 縦 に長 く剥 げ る。 断面 は 年 輪 状 で多 層、 外 樹 皮 は赤 褐 色 、 内樹 皮 は黄 褐 色 で 後 に赤 褐 色 と な る。 用 途:非 常 に広 汎 な 使 い 方 が あ る。 第 一 は建 築 材 と して 、 柱 ・貫 ・板 類 とす る だ け で な く、 建 具 、 電 柱 、 船 舶 、 車 両 、 家 具 、 包 装 、 樽 や桶 ・下 駄 ・箸 な ど の 器 具 に利 用 した。 特 筆 す べ きは秋 田杉 ・屋 久 杉 ・吉 野 杉 な どで 天 井 板 、 京 都
の 北 山産 の床 柱 ・垂 木 に使 用 す る 磨 丸 太 、 吉 野 杉 か ら作 られ る酒 樽 、 飲 肥 杉 か ら作 られ る船 舶 用 弁 甲材 等 が あ る。樹 皮 は屋 根 茅 葺 き用 と して 利 用 され て きた 。 昔 の木 造 日本 家 屋 で は外 壁 に も使 用 した2'3)。 2.ス ギ の 来 た 道 と 行 く 道 2-1.ス ギの 来 た道 日本 列 島 の 氷 河 時 代 は、 寒 冷 で 乾 燥 した気 候 に 支 配 さ れ た。 東 北 日本 で は ト ウ ヒ、 カ ラ マ ツ 、 ト ドマ ツ等 の亜 寒 帯 性 の 針 葉 樹 が優 勢 で あ り、 西南 日本 で は 冷 温 帯 性 の 落 葉 広 葉 樹 林 が 優 勢 で あ っ た と考 え られ てい る。 冷 温 帯 性 の 落 葉 広 葉 樹 で もブ ナ で は な くて、 乾 燥 と寒 さ に強 い ミズ ナ ラや カ シ ワ 等 や カバ ノ キ の 仲 間が 卓 越 して い た。 こ の 頃 に 、 ス ギ が 日本 海 側 の 海 岸 沿 い の温 暖 で 湿 潤 な場 所(逃 避 地)に 細 々 と生 き延 び て い た3)。塚 田松 雄(1980)は 花 粉 分析 か ら、 温 暖 湿 潤 な気 候 を好 む ス ギが 氷 河 期 に は福 井 県 の 若狭 地 方 に残 存 して 、 そ の 後 の 温 暖 化 に と もな い急 速 に分 布 域 を拡 大 した こ とを指 摘 した4)。 こ の氷 河 期 は 約1万 年 前 に 終 わ り、 そ の後 温 暖 ・湿潤 化 が 進 み ス ギ は 日本 列 島 に広 く拡 大 し た。 特 に多 か っ た の は、 本 州 の 日本 海 側 と東 海 地 方 で 、 年 間の 降 水 量 が2000ミ リ以 上 の 地 域 で あ る。 ス ギ の 天 然 分 布 域 が 年 間 降水 量2000ミ リ 以 上 の 地域 と よ く一 致 す る こ とは、 遠 山 富 太 郎(1976)氏 が 指摘 して い るD。 現 在 で は 天 然 生 の ス ギ の 生 育 地 は 日本 海 側(佐 渡 島 の天 然 ス ギ 、 黒 部 市 入 善 の 沢 ス ギ、 立 山 ス ギ)に 多 く見 られ るが 、 縄 文 時代 か ら弥 生 時代 に は太 平 洋 側 の 静 岡県 に もス ギ が 広 く生 育 して い た と考 え られ る。 とい うの は、 静 岡 県 の 弥 生 時 代 遺跡 で あ る登 呂遺 跡 で は、 大 きな ス ギ の 立 株 が 何 本 も発 掘 され て い る だ け で な く、 高 床 式 の 建 物 の 柱 や 板 材 、梯 子 な どの 他 、 水 田 の 畦 に は矢 板 や 杭 、 田下 駄 に も ス ギ が 使 わ れ て い るか ら で あ る。 さ ら に、 日常 使 用 す るス プ ー ン、 片 口容 器 、 丸鉢 型 容 器 な どの 食 器 まで もが ス ギ か ら作 り出 され て い る。 ス ギ は 非 常 に身 近 な 資 源 で あ り、 大 量 に利 用 で き る もの で あ っ た と考 え られ る4>。 約6000年 前(縄 文 前 期)の 低 湿 地 に あ っ た福 井 県 三 方 町 に あ る鳥 浜 貝 塚 遺 跡
杉 と日本人のつなが りについて で は 、 長 さが6m、 幅63cmの ス ギ を割 りぬ い て作 っ た 丸 木 舟 が 出土 して い る。 こ の他 に も、 大 量 の ス ギ の 割 板 材 が 見 つ か っ て い る 。 また 、 富 山県 魚 津 市 に は 埋 没 林 と呼 ば れ る 、 海 中 よ り発 見 され た 約4000年 前 に生 え て い たス ギ の大 木 の 株 と根 が 見 つ か っ て い る。 島根 県 三 瓶 山 に あ る小 豆 原 埋 没林 は、 約4000年 前 に 三 瓶 山 の 噴 火 に よ っ て埋 没 した ス ギ で あ る。 こ の よ う に 日本 海 側 に も広 く巨 大 な ス ギ の森 林 が あ っ た こ とが わ か る。 木材 を伐 採 す る 道 具 と して石 器 か ら鉄 器 に 変 わ り、 古 墳 時 代 に は鋸 が 使 わ れ る よ うに な り、 木材 の 加 工 が ス ピー ドア ッ プ した。 飛 鳥 ・奈 良 時 代 には 、 宮廷 、 仏 教 寺 院 な どの 巨 大 な木 造 建 築 が 造 営 さ れ た 始 め 、 針 葉 樹 の建 材 と して はス ギ よ りも優 れ て い る ヒ ノキ が 重 用 され た 。 奈 良 の 平 城 京 か ら出 土 した柱 材 、角 材 、 板 材 の70%以 上 が ヒ ノ キ で あ る。 畿 内 地 域 に は 滋 賀 県 の 田 ノ上 山 の よ う な ヒ ノ キ林 が多 か っ た こ とが 上 げ られ る3)。 ヒ ノ キ材 が 豊 富 に な い 地 方 で も律 令 制 に基 づ き 国分 寺 ・国分 尼 寺 の 大 型 建 築 物 が都 に習 い建 て られ たが 、本 州 の 日本 海 側 や東 海 地 方 はス ギ が 大 変豊 富 に あ っ た の で 、 ス ギが ヒ ノ キ の代 わ りに巨 大建 築 の主 要材 と して使 用 され た4)。都 との 文 通 や 木 の荷 札 、 祭 祀 具 等 に も都 で は ヒ ノ キ が 使 われ た の に対 して 地 方 で はス ギ が 使 わ れ た 。 曲 物 、 折 敷 、 井 戸 枠 、 箸 な ど もス ギ が 使 用 され た。 福 井 県 の遺 跡 か ら出土 した 木 材 の 中 で ス ギ の 占 め る割 合 は70%以 上 、 石 川 県 で は65%に も な る こ とか らス ギ が 最 も利 用 しや す い 木 材 資源 で あ っ た と鈴 木 一 男(2003)が 指 摘 して い る3)。ス ギ、 ヒ ノキ の 少 な い所 で は 、佐 賀 県 の吉 野 ケ里 遺 跡 、宮 城 県 の 多 賀 城 遺 跡 な ど モ ミが そ の 主 要 材 で あ っ た。 ど の地 域 で も、 一 番 豊 富 な針 葉 樹 を建 築 や生 活 用 具 の材 料 と して 利 用 して い た こ とが 分 か る4)。 縄 文 時 代 か ら古 代 に か け て 大 型 の 建 築 物 を造 っ た た め 、 天 然林 か ら木 材 の収 奪 が 進 ん で森 林 資 源 が不 足 して き た。 そ れ を補 う 目的 で 、植 林 活 動 が 始 ま っ た 時 に成 長 が早 く、 良 質 の加 工 しや す い樹 種 と して ス ギ が 選 ばれ た。 ま さ に、 ス ギ が 我 が 国 の 木 の 文 化 を 支 えて き た の で あ る。 そ の後 、 中 世 に は、 大 規 模 な城 郭 や 寺 院建 設 に よ る 第2の 森 林 の 略 奪 期 を経 て、 近 世 に な る。 近 世 で は、 人 口
が 当時 世 界 一 で あ りなが らエ コ な 生 活 が 営 ま れ て い た 江 戸 で は木 造 家 屋 が 頻 発 す る火 事 で 焼 け た た め大 量 の 木 材 が 必 要 とな り、 木 材 資 源 が各 地 の 造 林 地 か ら 供 給 され た 。 成 長 が早 いス ギ が 最 も適 した建 材 で あ っ た3.A)。 江 戸 時 代 の 人 口 は約3000万 人程 度 で あ っ た が 、 明 治 時 代 ・大 正 ・昭和 と経 過 して 人 口 は1億2千 万 人 に まで 増 加 した。 そ れ に伴 う住 宅建 設 に は 、 日本 列 島 の杉 ・ヒ ノ キが 大量 に伐 採 され 続 け て きた こ とは 言 うま で もない 。 2-2.ス ギ の 行 く道 第2次 世 界 大 戦 後 に 国外 か ら帰 って きた 国 民 の 住 宅 を短 期 間 に 建 設 す る 目的 で、 木 材 の 輸 入 関税 をゼ ロ に した た め 、 大 量 の 外 材 が 輸 入 され た。 そ の 一 方 、 1950年 代 か ら行 わ れ た拡 大 造 林 で 産 み 出 され た1000万 ヘ ク ター ル もの ス ギ人 工 林 は 間 伐 な どの適 切 な 森 林 管 理 を放 棄 し た た め に、 い まや 自然 災 害 や 花 粉 症 を 引 き起 こす 張 本 人 と して 悪 者 扱 い され る よ う に な っ た 。 と こ ろが 、 森 林 が 急 激 に 減 少 し て い る 世 界 全 体 か ら見 る と、1000万 ヘ ク タ ー ル とい う巨 大 な材 積 の 人 工 林 を作 り上 げ た我 が 国 は 賞 賛 に値 す る森 林 大 国で あ る とい え る。 これ か らの我 が 国 に は50∼60年 経 過 した 伐 採 適 期 の ス ギ 林 が あ る の で、 ス ギ 間 伐 材 で バ イ オ マ ス 発 電 を進 め た り、 伐 採 しス ギ 国 産 材 で の 木 造 住 宅 の建 設 な ど に活 用 す る こ とが 出 来 る 時 期 が 来 た。2011年3月11日 に発 生 したM9.0と い う 千 年 に一 度 の 東 日本 大 震 災 を 契機 と して、 地 産 地 消 の ス ギ を活 用 した木 の 文化 を花 開 かせ る チ ャ ンスが や って きた とい え る。 2-3.日 本 各 地 に見 られ る杉4) 日本 各 地 に は 、 地 域 ご とに歴 史 の あ る 銘 木 の 杉 産 地 が あ る。 図2に 示 した よ う にそ れ ぞ れ の 地域 の 自然 環 境 に適 した杉 の 品種 が 知 られ て い る。 全 国 各 地 の杉 産 地 に は そ の 地 域 と文 化 に根 ざ した 様 々 な杉 が 知 られ て い る。 そ の内 で 代 表 的 な 地域 の杉 とその 材 の 特 色 を紹 介 す る。 秋 田杉:【産 地 】秋 田県 県 北 、特 に米代 川流 域 一 帯 。 江 戸 時 代 の 佐竹 藩 の遺 産 。 【材
杉 と日本人のつなが りにつ いて の特 色 】 年輪 幅 が そ ろ い、 木 目が細 か く美 しい。 狂 い が 少 な く強 度 が大 。 天 井 板 に良 く使 わ れ る。 西 山杉:【 産 地 】 山形 県 西 村 山 郡 一 帯 。 【材 の 特 色 】 光 沢 が あ り色 が い い。 住 宅 の 構 造 材 、 内装 材 に使 用 。 金 山杉:【 産 地 】 山形 県 最 上 郡 金 山 町一 帯 。 【材 の 特 色 】 樹 齢80年 を こ え た もの が 金 山杉 と呼 ば れ、 木 目が細 か く山吹 色 で 赤 身 が大 きい。 気 仙 杉:【 産 地 】 岩 手 県 気 仙 郡 ・下 閉 伊 郡 南 部 地 方 。 【材 の特 色 】 年 輪 幅 が 広 く 素 直 な材 質。 も と も と電 柱 材 と して使 わ れ た が 、 現 在 は柱 材 ・端 柄 材 と して使 わ れ る 。 図2 各 地 の 杉 の産 地4)(杉(2003)大 澤 一登 編 よ り)
日光 杉:【 産 地 】栃 木 県 日光 市 の 日光 山 内 お よ び 日光 市 ・今 市 市 ・鹿 沼 市 周 辺 。 松 平 正 綱 が30年 を費 や して街 道 並 木 と して 杉 を植 え た もの。 【材 の 特 色 】 柾 目材 の 年 輪 が 細 か く、 薄桃 色 を して い る。 通 直 、 完 満 な材 の た め 、 角 材 、 板 材 に使 用 され る。 良質 な もの は、建 具材 、根 曲 が り部 は下 駄 に利用 され る。 八 溝 杉(栃 木 県)い ば ら ぎ杉(茨 城 県):【 産 地 】 栃 木 県 東 部 黒 羽 町 周 辺 か ら茨 城 県 大 子 町 ・里 美村 にか け て の 八 溝 山系 一 帯 。 黒 羽 町 で は、 江 戸 時 代 か ら森 林 育 成 が 行 われ 、 明 治 末 期 に急 速 に造 林 が 進 ん だ。 【材 の特 色 】 木 質 ・年 輪 幅 ・節 な どは 中 の上 。 建 築 用 材 、 小 径 木 は 土 木用 の 資材 に使 われ る。 西 川 杉:【 産 地】 埼 玉 県 飯 能市 周 辺。 針 葉樹 植 林 の歴 史 が古 くか らあ り、 高度 成 長 期 に生 育 の 良 い杉 の生 産 が 拡 大 した 。 【材 の 特 色 】 扱 い や す く、建 築材 ・建 具 材 に利 用 。 山武 杉:【 産 地 】 千 葉 県 東 部 山 武 地 方 。 【材 の 特 色 】 成 長 が 早 く、 通 直 ・完 満 で 芯 材 は淡 紅 色 。 建 具 ・板 材 ・柱 材 に利 用 。 花 粉 を ほ とん どつ け ない の で 、花 粉 症 対 策 品 種 で あ る。 青 梅 杉:【 産 地1青 梅 市 近 辺 奥 多 摩 一 帯。 【材 の 特 色 】 粘 り気 が あ る。 主 に柱 材 と して利 用 。 青 梅 林 業 地 は 昔 か ら足 場 丸太 の 産地 と して 有名 。 天竜 杉:【産 地 】静 岡県 天 竜 市 、磐 田郡(水 窪 町 ・佐 久 問 町 ・龍 山村)周 智 郡 春 野村 。 【材 の 特 色 】 気候 が温 暖 。 雪 害 が ない ので 根 曲 が りが少 な く通 直 。 淡 い 赤 色。 三 河杉:【産 地 】 愛知 県 南 設楽 郡 ・北 設 楽 郡 ・新 城 市 ・東 加 茂 郡 ・額 田郡 【材 の特 色 】 土壌 が肥 沃 土 で通 直 、 完 満 な材 。 冬 目 と夏 目が 明確 な年 輪 。 長 良 杉:【 産 地 】 岐 阜 県 郡 上 郡 、武 儀 郡 長 良 川流 域 【材 の特 色 】 目が 均 等 で冬 目 が 太 い た め 、仕 上 が りが 豊 か 。 板 材 ・柱 材 と して利 用 。 根 羽 杉 ・遠 山杉:【 産 地 】 長 野 県下 伊 那 郡根 羽村 ・南 信 濃 村 【材 の特 色 】 赤 身 の 光 沢 が きれ い 。 油分 が多 く粘 りが あ る。 立 山杉:【 産 地】 富 山県 東 部 地域 【材 の特 色 】 年 輪 幅 は小 さ くか た い。 木 目が細 か く明確 。 富 山県西 部 の ボ カ杉 な ど と と もに 「とや まス ギ」 と呼 ばれ る。 足 羽杉 ・河 和 田杉 【産 地 】福 井 県 美 山町 ・鯖 江 市 な ど 【材 の 特 色 】 材 質 が赤 身 で柾 目が きれ い。 大 径 木 の 生 産 地 で 、柱 ・桁 材 と内 装 材 と して 利 用 。 現 在 は、
杉 と 日本 人 のつ なが りにつ いて 福 井材 と呼 ば れ る。 谷 口 杉:【 産 地 】 滋 賀 県 浅 井 町谷 口 【材 の特 色 】 田根 杉 と も呼 ば れ る。 択 伐 施 業 が 行 わ れ 、生 長 が よ くや わ らか く淡 い赤 色 。 北 山杉:【 産 地 】 京 都 市 北 区 中川 地 区 を 中心 と した北 山 地方 。京 北 町以 北 で 生 産 され る もの は丹 波材 と して 区別 され る。 【材 の 特 色 】北 山杉 丸 太 は同大 で 円直 材 。 無 節 で 年輪 が 密 な た め 、材 を磨 くと独 特 の 光 沢 あ り。 シ ロ ス ギ と呼 ばれ る 品種 で生 長 が 遅 く、 心材 に割 れ が入 りや す い 。 宇 治 田原 杉1【 産 地 】 京 都 市 南 部 、 宇 治 田 原 町 一 帯 。 【材 の 特 色 】 生 長 が 早 く、 高 齢 木 外 周 の 年 輪 も円 形 に 近 い。 春 日杉:【産 地 】奈 良市 東 部 、春 日大 社 に あ る春 日山原 始 林 一 帯 の枯 損 老 木 の杉 【材 の特 色 】 油 分 が 多 く、 赤 み を帯 び て、 柾 目 が 明確 にあ らわ れ る が、 強 度 は劣 る。 吉 野 杉:【 産 地 】 奈 良 県 吉 野 郡 の 吉 野 川 上 流 域 。 川 上 村 、 東 吉 野 村 、 黒 滝 村 を 中 心 とす る 一 帯 【材 の 特 色 】 手 入 れ が 良 く通 直 。 油 分 が あ り、 冬 目が硬 い 。 時 間 を経 る と、 美 しい 飴 色 と な る。 天 井板 に多 用 され るが 、 磨 丸 太 と して も有 名 。 構造 材 と して多 用 され 、 長 い 幹 で 目が 込 み 強度 が 高 い。 御 山杉:【 産 地 】 三 重 県 伊 勢 市 の 内宮 ・外 宮 お よ び 滝 原 宮 の神 域 。 【材 の 特 色 】 赤 み をお び 、杢 目が 細 か く、 美 しい 笹杢 が 見 られ る。 河 内杉:【 産 地 】 大 阪 府 河 内 地 方 。 【材 の 特 色 】 吉 野 材 の影 響 を受 けて 発 展 。 密 植 で木 目が 細 か い 。 柱 材 と し して 多 用 さ れ る。 良 質 の もの は 吉 野 材 と して 市 場 に 出 る。 若 桜 杉:【 産 地 】 鳥 取 県 東 部 の 若 桜 町 一 帯 。 【材 の 特 色 】 緻 密 で 油 分 が 少 な く、 秋 田杉 に似 た 材 。 智 頭 杉:【 産 地 】 鳥 取 県 東 南 部 の 智 頭 町 一 帯 。 【材 の 特 色1心 材 が濃 い 赤 色 。粘 り強 く、 年 輪 が 一 定 幅 。 や や 柔 らか い。 木 頭 杉:【 産 地 】 徳 島県 西 南 部 の那 賀 郡 ・海 部 郡 。 【材 の 特 色 】 奈 良 ・平 安 時 代 か ら都 で使 用 され た。 強 度 に優 れ 、厚 板 ・割柱 ・内装 材 と して 使 用 され る。 魚 梁 瀬 杉:【 産 地 】 高 知 県 東 部 の馬 路 村 ・東 洋 町 を 中 心 と した 一帯 。 【材 の特 色 】 材 の色 彩 が 豊 富 で 、 多 種 多 様 な杢 目が 見 られ る。 樹 脂 分 が 多 く、 時 を経 る と光
沢 が 美 しい 。 天 井 板 ・内装 材 と して使 用 。 土 佐杉 と も呼 ば れ る。 八 女 杉:【 産 地 】 福 岡 県 八 女 郡 一 帯 。 【材 の特 色 】 建 築 材 と して は、 心 材 に 赤 身 が 多 くつ や が あ る。 磨 丸 太材 で は通 直 で、 真 円性 。 日田 杉:【 産 地 】 大 分 県 日 田市 を 中 心 と し た一 帯 。 【材 の 特 色 】 直 材 で あ るが 、 古 くか ら造 成 材 と して 使 用 。 比 較 的硬 くて 強 度 もあ る 。建 築 用 材 と して 人気 が あ る。 市 房 杉:【 産 地 】 熊 本 県 水 上 村 の 市 房 神 社 の 神 社 林 お よ び周 辺 一帯 。 【材 の特 色 】 年 輪 は緻 密 で 、 細 か い 摺 曲状 。笹 杢 が 多 い 。 小 国杉:【 産 地 】 熊 本 県 阿 蘇 郡 小 国地 方。1750年 代 か ら藩 令 に よ り、 各 戸25本 の 杉 穂 の じか差 し を した こ と に由 来。 【材 の 特 色 】 粘 りが あ る。 心 材 は湿 潤 地 で は や や黒 味 が か っ た赤 、 乾 燥 地 で は赤 褐 色 。 構 造 用 材 と して広 く利 用。 霧 島杉:【 産 地 】 鹿 児 島 県 霧 島町 の 霧 島神 宮 の神 宮 林 。 広 くは、 狭 野 杉 を は じめ とす る霧 島 山系 全 体 や 、 南 九 州全 体 に 産 す る もの を総 称 す る こ と もあ る。 【材 の 特 色 】心材 の色 は黄 色 が か った 淡 紅色 。大 径 木 は摺 曲状 で、繊 細 で優 雅 な杢 あ り。 1沃肥 杉:【産 地 】宮 崎 県 日南 市 を中 心 と した飲 肥 地 方 一 帯 。 【材 の特 色 】油 分 が多 く、 曲 げ に強 い 。 古 くか ら造 船 材(弁 甲材)と して有 名 で 、 韓 国 に も輸 出 して い た。 屋 久 杉:【 産 地 】 鹿 児 島県 屋 久 島の 屋 久 町 ・上 屋 久 町 。 【材 の特 色 】 油 分 が多 く、 腐 りに くい 。 年 輪 は 緻 密 で 変 化 に 富 ん だ 杢 が 見 られ る。 ひ び割 れ や 中 が 空 洞 の こ とが 多 い。 2-4.杉 の 家 紋 の デ ザ イ ン ス ギ を家 紋 に デ ザ イ ン化 した もの を図3に 示 した 。 ス ギ の葉 が 常 緑 で あ る こ と を賞 し てつ く られ た も の とい わ れ て い る。 江 戸 時 代 に は十 数 の 家 柄 で杉 紋 が 用 い られ 、 大 和 国 の 大 神 神 社 の神 官 関 係 者 が 多 く、 大 神(お お み わ)氏 な らび に そ の 一 族 で あ る緒 形氏 も これ を も ち い た2)。1本 杉 、2本 杉 、3本 杉 とな り、 円錐 形 、 卵 形 とス ギ の樹 形 の 特色 が よ く出 て い る。
杉 と日本 人 のつ なが りにつ いて 三 本 杉 重 ね 三 本 杉 丸 に 三 本 杉 三 つ 割 杉 杉 巴 頭合せ 三 つ割 り杉 中輪 に三つ鱗杉 丸 に重 ね五 本杉 本 杉 丸 に 一 本 杉 陰 一 本 杉 本 田 一 本 杉 光 淋 一 本 杉 中 太輪 に一つ鱗 形 並 び 杉 丸 に 二 本 杉 糸輪 に陰並 び杉 割 り 杉 丸 に覗 き二 本杉 割 り 杉 菱 図3 杉 の 家 紋 の色 々2>
3.杉 と 生 活 用 具 の つ な が り 林 弥 栄(1969)の 「有 用 樹 木 図 説(林 木 編)」 に よれ ば、 ス ギ の 用 途 と して 、 建 築 材 、 器 具 材 、 土 木 用 材 、 船 舶 材 、 車 両 材 、 楽 器 材 等 、 極 め て 多 岐 に わ た る 使 い 道 が あ る こ とが 分 か るb)。 かまち す な わ ち 、材 は建 築 材(天 井板 、建 具 、欄 間 、長押 、磨 丸太 、床 柱 、枢 、壁 止 め 、 縁 桁 、 戸 、 障子 、襖 の 縁 と骨 、 屋 根 板 、 木 羽 板 、 湯 屋 の 流 し板 、 踏 み 板 な ど)、 器 具 材(家 具 類 、 指 物 、 箪 笥 、 長 持 、 陳 列 棚 、 洋 家 具 、 寄 木 細 工 、 木 象 は め 、 装 飾 用 、 活 字 ケ ー ス 、 屏 風 の 骨 、 一 閑 張 りの器 物 、 支 那 鞄 、 額 縁 、 鏡 縁 、柱 掛 、 短 冊 掛 、 仏 壇 、 飯 びつ 、 茶 器 、 菓 子 器 、 箸 、 笹 折 、 蒲 鉾 板 、 曲 物 、 曲 輪 、 呑 口 ひね り、 木 釘 、 荷 棒 、 鋸 柄 、 吹 子 、 張 板 、 木 型 、 鋳 型 、 梯 子 、 遊 動 円 木 、 そ り、 釣 瓶 、 油 樽 、 そ の 他 桶 お よ び樽 類 、 た らい、 農 具 等)土 木 用 材(電 柱 、橋 梁 、 水 道 の樋 な ど)船 舶 材(河 船 、漁船 、ボ ー ト、帆 柱 、擢 、船 悼 、筏 樟)、 車輌 材(人 力 車 、 箱 車 な ど〉、彫 刻 材 、 下 駄 材(焼 下 駄 、 塗 下 駄)経 木 材 、 楽 器材(神 楽 太 鼓 の 胴 お よ び ば ち な ど)、包 装 箱 材 な ど用 途 が 非 常 に多 い 。 葉 は線 香 お よび抹 香 とす る。 樹 皮 は 屋 根 茅 葺 用 とす る。 老 木 の根 は木 香 と して清 酒 に香 気 をつ け る に使 う。 3-1.杉 箸7) 箸 の起 源:現 在 の 所 、 中 国 の 遺 跡 で あ る 雲 南 省 祥 雲 大 波 那 か ら青 銅 の箸 が 墓 王 の 陪 葬 品 と して3本 出土 したの が 最 古 の箸 で あ る7)。この 遺 跡 は 、戦 国 時代(紀 元 前403∼221年)中 期 の も の と言 わ れ て い る。 雲 南 地 域 は早 くか ら稲 が 栽 培 さ れ 、 米 を 食 べ て い た こ とが 出 土 し た 箸 との 関連 を考 え られ る。 この 地 域 に は木 や 竹 が あ り、現 在 の よ うな木 や 竹 の箸 が用 い られ た と考 え られ るが 、中 国 の 『北 京 日報 』 の 記 事 に よれ ば、夏周(紀 元 前20世 紀 ∼ 紀 元 前3世 紀 頃)か ら漢魏(紀 元 前3世 紀 ∼ 紀 元3世 紀 頃)の 時 代 に な っ て、牙 、銅 、鉄 や 漆 塗 の 箸 が 出現 した、 と推 察 され て い る7)。 竹 の箸 は、 湖 北 省 江 陵楚 紀 南 故 城 で 、 西 漢(前 漢 、紀 元前200∼ 紀 元8年)初
杉 と日本人のつ なが りについて たいふんとう 期 の 墓 か ら21本 も発 掘 され て い る。 ほ ぼ 同 時 代 の湖 北 省 雲 夢 大 攻 頭 西 漢 墓 か ら も竹 筒 に入 っ た 竹 箸 が 出土 して い るか ら、 紀 元前 か ら 中 国 で は 食事 に竹 の箸 が 使用 され て い た。 日本 で の 箸 の 発 祥:日 本 で 最 も古 い二 本 組 の 箸 は、7世 紀 の 遺 跡 で あ る奈 良 県 飛 鳥板 葺 宮 遺 跡 か ら出土 した 檜 の箸(長 さ は30∼33セ ンチ 、箸 先 の 直 径 は0.3 ∼1.0センチ)で 、 日常 の食器 ではな く祭器 で はなか ったか と推察 され ている。 694∼710年 頃 の遺 跡 であ る藤 原 京 跡 か ら も、檜 の箸 が 出土 して い る(向 井 、橋 本 、 2001)7)。 平 城 京 か らは、 宮 内 省 大 膳 職 の 建物 跡 や堀 や井 戸 か ら も多 数 の檜 の箸 が 出土 して い る 。 これ らの 箸 は そ の サ イ ズ(長 さが13∼17セ ンチ の も のが16本 、 17∼21セ ンチ の も のが23本 、21∼26.5セ ンチ の ものが15本)が 今 日使 用 され て い る 箸 とあ ま り変 わ ら ない こ とか ら も、 恐 ら く平 城 京 の 建 築 に 関 わ っ た 人 が 使 用 した もの と推 察 で き る。 弥 生 時代 か ら平 安 時 代 頃 ま で の 遺 跡 が あ る静 岡 県 浜 松 市 の伊 場 遺 跡 か ら も、 長 さが22∼26セ ンチ で 、 径 が0.6セ ンチ の 面 取 りした檜 の箸 が 出土 して い る。 6世 紀 に は仏 教 が 伝 来 し、7世 紀 に は遣 階 使 が 送 られ た こ とか ら、 中 国 か ら の 使 者 を もて なす 際 に大 陸 風 の 金 属 箸 が 使 用 され た の で は な い か と推 察 され る が 、 わが 国 で の 箸 の起 源 は7世 紀 頃 と考 え られ る。 杉 箸 の起 源:檜 は宮 殿 の 造 営 に適 した 木 材 で あ り、 腐 り に くい の で そ の建 築 廃 材 を利 用 し て食 器 で あ る箸 を作 り利 用 した と考 え られ 、 出土 した箸 はほ とん ど檜 であ る。 江 戸 時 代 に な る と建 築 材 や 酒 樽 な ど に杉 が 多 用 され た こ とか ら、杉 樽 を作 る 際 の廃 材 か ら箸 を 製 造 す る よ うに な った 。 間伐 材 も多 くで きる の で 箸 材 と して 杉 が用 い られ て きた。い う まで もな く、杉 は柾 目で は割 りや す く(割裂 性 が あ る)、 木 肌 が 美 し く、 い い 香 りが して 、 口 当 た りが い い こ とか ら檜 よ りも箸 に 向 い た 材 料 で あ る とい え るi.4)。 千 利 休(1522∼1591)が 、 茶 席 で一 期 一 会 の 気 持 ち を込 め て客 を迎 え る 際 に、 吉 野 杉 の赤 身 を削 り出 して 作 っ た の が、 有 名 な利 休 箸 で あ る。 現 在 の よ うに使
用 時 に割 る の で は な くて 、 始 め か ら1本1本 が 別 の 箸 で 、 中 央 が 平 らで 両 端 に 行 くほ ど細 くな る箸 で あ る。 割 り箸 の起 源:明 治 時 代 に は割 箸 を客 に 出す の は 、 高 級 な料 亭 で あ っ た。 昭 和 の 初 期 ま で一 般 の 飲 食 店 の箸 は 塗 箸 で、 使 用 後 に洗 い 直 して く り返 し使 用 し て い たか らで あ る 。 大 正 時 代 以後 に、 飲 食 店 で割 箸 を出 す 習 慣 が広 ま り、 昭 和 の 初 め に割 箸 製 造 機 が 考 案 され 大量 生 産が 可 能 とな った 。 杉 の 割 箸 の発 明:現 在 、 割 箸 とい わ れ る使 用 時 に割 る箸 は、 「割 りか け箸 」 と か 「引 裂 箸 」 と呼 ば れ て い た。 吉 野 地 方 で 生 産 され て い た 日本 酒 を作 るた め の 樽 丸 か らで る廃 材 を利 用 して柾 目の 割 箸 づ く りは 、 江 戸 時 代 の文 政 の こ ろか ら 吉 野 地 方 で作 られ た とい わ れ て い る。 天 保13年(1842)に 書 か れ た 『箸 類 引 き 下 げ 値 段 取 調 書 』 に は、 割 箸 の値 段 が 記 さ れ て い る 。 割 箸 の 生 産 地 は 奈 良 県 の 吉 野 地 方 が 主 で あ っ た こ とか ら杉 の 箸 は、 酒 樽 を作 る際 の樽 丸 の 余 材 、 建 材 の 端 材 で あ る背 板 か ら作 られ て い た 。 た だ し、 現 在 は 木 材 不 況 で背 板 や 端 材 が 入 手 困 難 で あ り、 また 家 内 工 業 的 な 生 産 過 程 の た め 生 産 量 が 少 な い 。 国 内 消 費 さ れ る割 箸 は平 成22年 度 は 約150億 膳 で あ っ たが 、 そ の 内 で 国 内産 割 箸 は約2億 膳 で あ る。 杉 の割 箸 は 、 柔 らか く、 油 分 が 少 な く、 口 当 た りもい い の で 食 器 と し て は檜 箸 よ り も優 れ てい る ため 、価 格 は檜 の割 箸 よ りも高 い 。 杉 の 割 箸 の 製 造 工 程:吉 野 の 国 栖 で、 実 際 に杉 の 割 箸 を作 っ て い る工 場 を見 学 した 。 乾 燥 過 程:ま ず 、杉 材 か ら柱 や 梁 を取 り出 した残 り部 分(こ れ を背 板 とか 木 皮(こ わ)と 呼 ぶ)を 屋 外 で、 雨 風 に 当 て て 自然 乾 燥 す る。 こ の 過程 で 杉 の 油 分 等 が抜 け る。 箸 の 加 工 過 程:ダ イ ヤ モ ン ドの 刃 が つ い た 円 盤鋸 で 、 こ の乾 燥 した 長 さが5 m程 度 の 背 板 を7寸(21セ ンチ)か8寸(24セ ンチ)に 切 断 す る。 ダ イヤ モ ン ドの 刃 を使 用 しな い と、 断 面(割 箸 の両 端 に な る)が きれ い に な ら ない との こ とで あ る。 次 に、 柾 目に な る よ う年 輪 に直 角 に割 箸 の厚 さ にス ラ イ ス す る。 こ れ を冬 な
杉 と日本人のつなが りについて ら一 晩、 夏 な ら数 時 間水 槽 に つ け て か ら、 割 箸 の 幅 に切 断 す る。水 につ け る理 由 は、 切 断 を容 易 にす る た め で あ る とい う。 乾燥 した ま ま で切 断 す る と刃 が す ぐに鈍 っ て しま う とい う。 春 目 と秋 目が あ る杉 は 柔 らか い が 、 加 工 す る場 合 は 工 夫 が 必 要 で あ る こ と を学 ん だ。 箸 の形 に 成 形 さ れ る 時 に 、 同 時 に箸 に溝 が作 られ る。 目 に も と ま らな い早 さで箸 が 作 り出 され て い く。 そ の 後 、 乾 燥(昔 は 天 日乾 燥 、 今 は電 気 乾 燥)し た 後 、 吉 野 もみ と よ ば れ る 工 程 が あ る。 こ れ は 数 百 本 ま とめ た割 箸 を横 に して 、 ゴ ロ ゴ ロ と 回転 させ て 表 面 の 毛 羽 を とる作 業 で あ る。 な か な か 工 夫 さ れ た 細 か い 工 程 が あ り、 最 後 に仕 上 が っ た箸 を ヒ トの 目で 検 品 す る。 一 番 高 級 な利 休 箸(ら ん ち ゅ う、 と もい う)の 場 合 は、1級 品か ら5級 品 ま で に 目 で検 品 す る。 素 人 目に は、 ど こが 悪 い の か わ か ら な いが 、 目を凝 らす と 小 さ な穴 が あ い て い た り年 輪 が きれ い で な か った りす る。 しか し、 職 人 気 質 と 吉 野 の高 級 箸 とい う商 品価 値 をつ け る た め に1級 品 の み が 商 品 とな る。 商 品 価 値 が ない とい う赤 身 の利 休 箸 を頂 い て使 用 して み た が、1年 間使 用 して も折 れ ず腰 が強 く大 変 素 晴 ら しい 品 質 で あ る とい う こ とが わ か っ た。 3-2.杉 線 香5) ス ギ の葉 を蒸 留 す る と約0.5%の 精 油(杉 葉 油)が とれ 、 主 成 分 は ピ ネ ン、 リ モ ネ ン等 の テ ル ペ ン類 が80%、 ボ ル ネ オ ー ル そ の 他 の ア ル コー ル 類 が 約15%で あ る。 こ の杉 葉 油 成 分 は、 化 粧 品 の 香 料 、 医 薬 等 に用 い られ る が 、 ス ギ の 葉 を 粉 砕 して 昔 か ら線 香 に使 われ る際 に も役 立 って い る 。 まず 線 香 は、 香 が 大 衆 向 け に棒 状 に な っ た もの で あ る。 この棒 状 に な っ た こ とで、 推 古 天 皇 以 来 平 安 時 代 ま で 上 流 階 級 しか 手 に入 ら な か っ た 粉 末 の香 が 、 大 量 に しか も安価 に使 わ れ だ した。 線 香 の 開発 は、飛 躍 的 に 普及 す る契 機 にな っ た とい え る。 線 香 は 、16世 紀 末 に 中 国 で 開 発 さ れ た 。 李 時 珍 は 「本 草 綱 目」 の 中 で、 様 々 な材 料 を粉 末 と して 、 楡 の 皮 の粉 末 で作 っ た糊 の 中 に入 れ て、 型 に は め 込 ん で
線 香 を つ くった と書 い て い る。 この 製 法 が 中 国 独 自 の もの か、 イ ン ド辺 りか ら 伝 わ っ た もの か ど うか につ い て は詳 し い こ と はわ か っ て い ない4)。 我 が 国 で 最 初 に線 香 に つ い て書 か れ た 「香 料 」 に は、 優 秀 な 製 品 は 中 国製 で あ り、18世 紀 の 始 め 頃 よ り長 崎 で作 り始 め、 つ い で 堺 で も製 造 す る よ う に な っ た とあ る。1720年 に 書 か れ た西 川 如 見 の 「長 崎 夜 話 草 」 で は、 線 香 は、 福 州 よ り伝 え られ 長 崎 で作 り始 め た とあ る 。 した が っ て、 線 香 は 室 町 時 代 末 か ら江 戸 初 期 に 中 国か ら技 術 が伝 え られ た と考 え られ る4)。' と こ ろが こ こ で い う線香 は匂 い線 香 で あ り、 高 価 な輸 入 した 材 料 か ら作 られ る もの で あ る。 我 が 国 で も手 に入 る材 料 を使 っ た の が杉 線 香 で あ る。 こ の杉 線 香 の 始 ま りは、 栃 木 県 の 安 達 繁 七 が 元 治 元 年(1864)頃 に栃 木 県 今 市 に線 香 工 場 を作 っ た の が は じ ま り とさ れ て い る(太 田正 秀 著 『栃 木 の線 香 』)。こ の線 香 の 製 造 法 は越 後 か らの技 術 移 入 で始 ま っ た と言 わ れ て い るか ら、 越 後 は堺 か ら 技 術 を学 ん だ こ とに な る4)。 ス ギ は言 う まで も な く全 国各 地 に 生 育 して い る針 葉 樹 で あ る。 そ の どこ に で もあ る杉 を材 料 に し た理 由 と して は、 人 が死 ん だ時 に は杉 の 卒塔 婆、杉 仏 とい っ て 、 杉 の 生 木 を墓 地 に植 え る風 習 が 各 地 に見 られ た よ う で あ る。 こ の 木 が 、霊 魂 の よ る木 と信 じら れ た よ うで あ る。 ま た、 人 が死 ん だ時 に発 生 す る死 臭 を 消 した り、 殺 菌 す る 目的 で 杉 線 香 を 使 用 しは じめ た の で は な い か と思 わ れ る。今 で も水 車 で本 物 の 杉 線 香 を 製 造 され て い る駒 形 さ ん に よれ ば、 現 在 で も合 成香 料 を使 用 した 線 香 で は喉 を痛 め るお 坊 さん が 多 く、 そ れ に気 づ い た 人 は 本 物 の 杉 線 香 を求 め て くる との こ とで あ る。 全 国 の 葬儀 屋 さ ん で使 用 され て い る 安価 な線香 は 、合 成 の香 料 を使 って い るの で は な い か と思 われ る。 杉 線 香 の 製 造 過 程:2011年2月 に 、 茨 城 県 石 岡 市 小 幡 で た だ 一 軒 、 今 で も100 年 前 と同 じ製 法 で本 物 の杉 線香 を製 造 して お られ る杉 線 香 づ く りの 老 舗 「駒村 清 明 堂 」を訪 れ た。五 代 目の当 主 、駒 村 道 廣 さ んが つ くる杉 線 香 は杉100%で あ る。 1)杉 葉 か ら杉 の粉 を作 る過 程:線 香 づ く りは秋 か ら冬 に か け て 原料 の杉 の 葉 を調 達 す る と こ ろか らは じ ま る。 駒 村 さん に よ る と、 あ ま り樹 齢 の 若 い 杉
杉 と日本人のつ なが りについて の葉 は、 線 香 に適 さな い とい う。 「う ち で は樹 齢50年 以 上 の 杉 だ け を使 っ て い ます 。 木 が 若 い と、 ど う して も粘 りが 足 りな い ん で す 。 昔 か ら この あ た りの 山 で は、 香 り、 粘 り と もお 線 香 に 最 適 の杉 が 採 れ ま した 。 と ころ が 、 近 ごろ は そ の宝 の 山 が ほ っ た らか しに され て い る。 山主 さ ん は あ ま り木 を 伐 らず 、 植 林 も し ませ ん 。 お 線 香 の 原 料 だ け で な く、水 車 や 水 路 をつ くる 材 木 も、 地 元 で手 に 入 れ る の が だ ん だ ん難 し くな って き ま し た。」 と駒 村 さ ん は お っ しゃ る。 間 伐 され た杉 葉 を 自分 で集 め て きて 、 杉 葉 を 纏 め3束 ず つ 立 て て乾 燥 させ る。 そ の 後 、 水 車 小 屋 の 中 に あ る カ ッ タ ー で杉 の 葉 を2 セ ンチ 程 度 に 荒 く刻 む 。 そ れ を水 車小 屋 の 中 に あ る舟 形 の 臼 に 入 れ て 水 車 で動 く杵 で原 料 の 杉 の 葉 を 一 昼 夜 揚 く と、 土 色 を し た粉 が 出 来 て くる。 水 車 小 屋 内 に は、 さわ や か な緑 の香 りが 漂 っ て い た。 2)杉 粉 か ら線 香 づ く り:節 に か け て さ らに細 か くし た杉 の葉 の 粉 を直 径 が60 セ ンチ 程 度 の桶 に 入 れ 、 次 に オ ク ドさ ん で沸 か した お 湯 を注 い で 機 械 で練 りあ げ る。 約5分 程 度 で 練 り上 が る。 使 う材 料 は そ れ だ け。 糊 や つ な ぎの 類 は い っ さい 入 れ ない 。 「お 湯 で練 っ て い る うち に、 自然 と固 まっ て くる ん で す よ。杉 に含 まれ るヤ ニ が糊 の か わ りに な る ん です 。 た だ 、 そ の 練 り加 減 が 難 しい。 原 料 の 質 や そ の 日の 天 気 に よっ て 、 粘 り も香 り も微 妙 に違 っ て くるか ら。 こ の杉 線 香 の 香 りとい うの は、 原 料 に何 か を混 ぜ た り、 加 え た りして 、"つ くれ る"も の じゃあ りませ ん。 私 た ち は杉 本 来 の香 りを、 た だ 引 き出 してい るだ け な ん で す 」 とお っ し ゃっ た。 3)杉 粉 の 押 し出 し:練 り上 げ られ た 緑 色 の杉 粉 を、細 長 い孔 が 多 数 あ る プ レ ス 機 械 に い れ て 、 油 圧 ピス トンで 高 圧 をか け る と、 下 か ら直径 が1ミ リ程 度 の そ う め ん状 の 線 香 が ヌ ル ヌ ル と押 し出 され て くる。 長 さ を揃 え る た め 円板 で 一 定 の 長 さ に カ ッ トされ 、段 ボ ー ル上 に のせ た そ う め ん状 の線 香 が 、 あ っ と い う 間 に 出 て くる。 こ れ を何 段 もの棚 の あ る段 ボ ー ル に 載 せ た ま ま 乾燥 す る。 段 ボ ー ル が ほ ど よ く水 分 を 吸収 す るの で、 昔 の よ う に板 に載 せ て 乾 す 場 合 に較 べ て 乾 燥 時 間 が 短 くて す む とい う。 こ の段 ボ ー ル 板 を使 う
とい うア イ デ ア は素 晴 ら しい工 夫 で あ る。 4)線 香 の 仕 上 げ:室 内 で3、4名 の 方 が 、 こ う して乾 燥 され た線 香 を一 定 の 数 ま とめ て 薄 い 紙 で 包 い て い た 。 竹 串 で長 さ を測 り、 ま と め て トン トン と 長 さ を揃 え て ま とめ あ げ て か ら1セ ンチ ほ どの杉 線 香 と印 刷 され た薄 い 紙 で ま とめ る。 こ う して 着 色 しな い 本物 の杉 線 香 が 完 成 す る。 駒 村 さん に教 え て頂 い た偽 物 と本 物 の 線香 の 見 分 け方 は、 線 香 に火 をつ け た 後 、 灰 の 中 に 線香 が 残 る の が 偽 物 で 、 本 物 の 線香 ば 灰 の 中 の根 元 まで 燃 え尽 き る こ とか ら分 か る そ うです 。 安 い線 香 や 石 油 か ら出 来 た ロ ウ ソ ク を燃 や す 事 で、 喉 を痛 め て い る お坊 さん が い ま だ に多 い とか。100年 前 と同 じ製 法 で 、 本物 の杉 線 香 を今 で も作 り続 け る 駒 村 さ ん ご夫 婦 が これ か ら も杉 線 香 を作 り続 けて 欲 しい もの で あ る。 3-3.杉 茶 杉 茶 の 製 造 法 に つ い て 調 査 した 。 昔 か ら山奥 で は お 茶 な ど に不 自由 す る と 「マ タギ の 知 恵 」 に よ り杉 葉 や サ カ キ の葉 を煎 じて飲 む と良 い とされ て い た。 こ の 言 い伝 え に基 づ き小 柴 幸 吉(こ しば こ う きち)氏 とそ の孫 で あ る高 野 ま ち子(取 締 役)氏 は正 しい製 法 を現 代 に よみ が え らせ た。 能 登 半 島 の 正 常 な杉 林 か ら枝 打 ち を して杉 葉 を集 め て、 沢 水 に て 洗 浄 後 乾 燥 し て3日 以 内(そ れ 以 上 放 置 す る と発 酵 して し ま うた め)に 静 岡市 にあ る製 茶 工 場 に 運 び 、 製 茶 と同様 の 過 程 で杉 葉 か ら杉 茶 を製 造 す る。1999年 以 来 、 こ の よ う に して 製 造 され た杉 茶 を販 売 して い る とい う。 お 茶 パ ック に 入 っ た杉 葉 を 煎 じて飲 ん で み る と、 見 た 目に は 紅 茶 と見 間 違 う よ う な紅 茶 色 が 出 て くる。 飲 ん で み る と、微 か に杉 の香 りが す る もの の飲 み に くさ は全 くな か っ た。 効 用 に つ い て は、 ア レル ギ ー を改 善 した り、 杉 花粉 症 を減 少 させ る作 用 が あ る とい う。 今 後 、 さ らに詳 し く杉 茶 につ い て は調 査 す る予 定 で あ る。
杉 と 日本 人 のつ なが りにつ い て お わ り に い う まで も な く、 ス ギ は 日本 特 産 の 針 葉 樹 で あ り、 こ の地 球 上 で は 日本 列 島 に しか 生 育 して い な い とい わ れ て い る。 い ま まで に杉 の種 子 の 採 集 法 、杉 苗 の 育 て 方 、育 林 の 仕 方 、 病 害 虫 の 防 除 等 、 林 学 的 な 知 見 は多 数 得 られ て い るi2)。 一 方、 ス ギ の 生 い 立 ち や ス ギ の 生 育 特 性 な ど の歴 史 的、 理 学 的 な 知 見 は ま だ十 分 に は総 合 的 な検 討 が加 え られ てい ない よ うに 思 わ れ るi,x)。 日本 人 とス ギ の か か わ りにつ い て 調 査研 究 して きた が 、 ス ギ とい う植 物 ・材 木 が い か に私 達 日本 人 の 生 活 と密 接 な 関 係 と い うか 、 つ な が りを持 っ て い るか を実 感 した。 縄 文 時 代 の鳥 浜 遺 跡 や 弥 生 時 代 の登 呂 遺 跡 か ら出土 した ス ギ の 丸 木 舟 にみ る よ う に、 恐 ら く縄 文 時 代 頃 よ り 日本列 島 で 豊 富 に入 手 で きた 、 大 木 で あ るス ギ を使 い 丸 木 舟 を作 っ た こ とを 手 始 め に 、 色 々 な生 活 道 具 をス ギ か ら作 り出 して 利 用 して い た こ とが わ か る3,4)。 室 町 時 代 か ら江 戸 時 代 に か け て は 、 大 衆 的 な レベ ル で も大 量 に利 活 用 され た ス ギ は、 建 材 と して は ヒ ノ キ に劣 る もの の 、 材 に は春 材 と秋 材 で の年 輪 が 明確 で あ り、 割 裂 性 とい う柾 目で簡 単 に 割 る こ とが で き る とい う特 性 を生 か した利 用 が す す ん だ。 特 に、 ス ギ の 割 箸 の発 明 が 奈 良 の吉 野 地域 で 見 られ た こ とは興 味 深 い。 吉 野 杉 の 酒樽 と して の 利 用 は 江 戸 時代 を 通 じて 広 汎 に行 わ れ た。 そ の 際 に、 出 て くる端 材(背 板)を 箸 に す る こ とは、 無 駄 な くス ギ を利 用 す る エ コ な商 品 で あ っ た7)。 と こ ろ が、 様 々 な生 活 用 品 が ス ギ か ら作 り出 され て い た の は戦 前 まで で 、戦 後 に 出 て きた石 油 か ら作 り出 され る プ ラ ス チ ッ ク製 品 に取 っ て代 わ られ た 。特 に、 こ こ50年 間 で はス ギ の持 つ 柔 らか さや 清 潔 性 な ど、 日本 の木 の 文化 を象 徴 す る ス ギ の 生 活 用 品(飯 び つ 、 三 宝 等)が 完全 に忘 れ 去 れ て い るの は、大 変 寂 しい 限 りで あ る。 石 油 に依 存 す るの で は な く、 天 然 自然 の材 料 を見 直 す 時代 と な り再 び ス ギ の 時代 が 到 来 す る こ と を期 待 した い。 地 球 温 暖 化 を 防 ぐた め に も、 カー ボ ンニ ュ ー トラ ル とな る木 製 品 の 利 用 を推
進 すべ きで あ ろ う。 地 下 資 源 で あ る 、 石 油 、 石 炭 、 天 然 ガ ス 、 ウ ラ ンな どの再 生 で きな い エ ネ ル ギ ー 資 源 に 依 存 し た文 明 か ら地 上 資 源 で 再 生 可 能 な エ ネ ル ギ ー で あ る木 材 バ イ オ マ ス を活 用 し、 また循 環 可 能 な 資材 で あ る木 材 を もっ と 活用 す る こ とが これ か らの 文 明 に も必 要 で あ ろ う。 今 後 も、 日本 人 が どの よ う に ス ギ を活 用 して きた か を さ らに調 査 研 究 して い き た い 。 この研 究 は、平成22年 度 の京 都 女子 大学 宗 教 ・文化 研 究所 の研 究 助 成 に よっ た。 文 献 1)遠 山富太 郎(1976)杉 の来 た 道 中 公新 書 2)上 原 敬二(1988)ス ギ ・ヒ ノキ の博 物学 大 日本 山林会 3)鈴 木 三男(2002>日 本 人 と木 の文 化 入 坂 書 房 4)杉(2003)大 澤一 登 編 新 建 新 聞社 5)柏 順 子(1980>杉 線香 の話 筑波 書 林 6)林 弥 栄(1969)有 用 樹 木 図説(材 木 編) 7)向 井 由紀子 、 橋 本慶 子(2001)箸 法 政大 学 出 版局 8)有 岡利幸(2010)杉1 法 政 大学 出版 局 9)高 桑 進 ・米澤 信 道 ・綱 本 逸雄 ・宮本 水 文(2011)我 が 国 に分 布 す る天 然 生 スギ の起 源 につ い て 京 都女 子 大 学 宗教 ・文化 研 究所 『研 究紀 要 』24、1-32 10)高 桑進 ・米 澤信 道 ・綱 本 逸雄 ・宮 本水 文(2010)日 本列 島 にお け る ス ギの 分布 状 況 と針 葉 の形 態 変化 につ い て 京都 女 子大 学 宗 教 ・文 化研 究 所 『研 究 紀 要』23、1-32 11)高 桑進 ・米 澤信 道 ・綱 本 逸雄 ・宮 本水 文(2009)京 都北 山 にお け る ア シ ウス ギ とオ モ テ ス ギ の分 布調 査 京都 女 子 大学 宗 教 ・文 化研 究 所 『研 究 紀 要』22、17-42 〈キ ー ワ ー ド〉 杉 、 日本 人