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総合講座「酪農体験」報告~2016年度開設から2018年度まで~

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総合講座「酪農体験」報告

~ 年度開設から  年度まで~

赤間 祐也

(数学科) [email protected] 要 旨 総合講座「酪農体験」は,北海道別海町「オシダファーム」での酪農実習を主とした講 座である。本稿では総合講座「酪農体験」の2016 年からの 3 年間の活動についてまとめ, 事前学習,札幌での見学やオシダファームでの実習中の活動内容,および事後学習にわた ってその内容を報告する。また,生徒の感想文や論文などの成果物をもとにして,考察を 加える。 Keywords: 酪農体験,体験学習,総合的な学習の時間,環境教育,主体的な学び, 別海町,オシダファーム

はじめに

 本校では高校1 年生を対象として「総合講座」を開講している。総合講座「酪農体験」 は2016 年度より開講し,今年度で 3 年目を迎えた。  「酪農体験」は北海道別海町にある「オシダファーム」での酪農実習を主として,事前・ 事後学習および施設見学などを行うものである。  本稿では「酪農体験」について,その開設の経緯や具体的な活動内容,3 年間の総括な どについて,担当教員として報告する。

1.開設の経緯

 総合講座「酪農体験」は2016 年度に新規に開設された講座である。本校の総合講座は担 当教員が自ら開設するもののほかに,生徒が取り組みたいテーマについて有志を集め,担 当教員を見つけて新規に開設するものがある。「酪農体験」は2016 年度に 4 名の希望者が 新規に立ち上げた講座として発足し,初年度はほかに2 名の希望者を加えた合計 6 名で活 動することとなった。 生徒の希望としては「北海道に旅行に行って,牧場で搾乳など酪農の体験をしたい」と

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いうものであった。そもそも私は数学科の教員で,酪農の専門家ではなく,実家が酪農家 なわけでもない。私の所に担当教員を頼みに来たのはただ私が札幌出身である,という 1 点のみだったようだ。伝手などを期待してのものであろう。 酪農という全く未経験の分野について講座の担当教員を引き受けたのは,生徒の「実習 先についてはもうあてがある」との言葉を信じてのことであった。しかし,実際に総合講 座の活動を始めてみると,実習として想定していたものはいわゆる「観光牧場」の1 日体 験のようなものであった。総合講座として実施するからには事前学習で何らかのテーマを 定め,実習先ではそのテーマを念頭に置いて体験学習を行い,実習後には体験の結果をも ととして事前学習の結果について考察を深めるべきである,というのが当時の私の考えで あった。当初の実習先は総合講座の実習先としては不適当であると考え,まずは実習先を 探すことから活動を始めた。 5 月頃から事前学習と並行して実習先の選定を行い,別海町の「オシダファーム」に決 まったのが6 月頃であった。オシダファームは 1 人の生徒の父親に紹介してもらった。知 り合いで酪農を始めた方がおり,その方のさらに知り合いであるとのことであった。体験 学習の受け入れについて経験があり,ファームインを営んでいることから泊まり込みでの 活動が可能である。理想的な環境であったため実習をお願いすることとなった。 7 月下旬に,札幌市での施設見学と,北海道別海町オシダファームでの酪農実習のため 北海道への研修旅行を行った。詳細については後に記す。ファームイン・オシダの押田栄 司氏・美恵子氏夫妻には大変よくして頂き,非常に充実した実習となった。 当初は生徒発案の講座として立ち上がった総合講座「酪農体験」であるが,初年度に思 いのほか充実した体験ができた。そのため翌年以降も,教師開設型の総合講座として継続 することとした。希望者がおり,ファームイン・オシダの押田夫妻に受け入れて頂ける限 りは続けていこうと考えている。

2.講座の内容

 先に述べた通り,総合講座「酪農体験」の活動は校内での事前学習,北海道札幌市およ び別海町オシダファームにおける研修旅行,および校内での事後学習からなるものである。 本章ではそれらの活動内容について報告する。

21.講座の目的と意図

 前述した通り,本講座は当初生徒発案の講座として成立したものである。そのため,本 講座の当初の目的は,生徒の主体的な興味を充足させること,の一点に尽きた。  一方で講座担当教員としては,本講座を通じて「あらかじめ調べた知識」と,「現地で体 験した経験」とが有機的につながる学びが実現できれば良い学びになると考えた。そこで, そのような学びを意図して事前・事後学習を課した。  基本的な考え方は2 年目以降も同じである。本講座の目的は,事前事後学習と現地での 実習を通して,主として酪農に関わることについて,主体的に学ぶこと,にある。また, 講座開設の意図は,事前学習での演繹的な学びと,実習での帰納的な学びをあわせた学び を経験させることにある。このことは本校「三理想」の「自ら調べ自ら考える力ある人物」 の項目や,文部科学省(2009)『学習指導要領解説 総合的学習の時間編』などの目的と概ね その方向性は一致していると考える。

22.受講者の状況について

 受講者数は2016 年度が 6 名,2017 年度が 4 名,2018 年度が 7 名である。研修旅行に連 れていくことが前提の講座であるから,教員1 人で監督可能な人数を考え,毎年 6 名程度 を上限として募集している。毎年本講座を第1 希望とする生徒を概ね確保できており,少 なくとも広い意味では酪農に興味を持っている生徒が受講していると言える。

23.事前学習について

 事前学習での学習内容は,主に2 点挙げられる。1 つは酪農に対する具体的なテーマの 選定,もう1 つは研修旅行における訪問個所やオシダファームでの実習内容についての具 体的な希望の集約である。年度によって曜日が異なるが,毎週特定曜日の7・8 限に,セミ ナー形式で実施した。  1 点目の酪農に対する具体的なテーマ選定では,書籍やインターネット上の web サイト などで調べた事柄などについて調べ,発表させた。例年6 月頃までにテーマを決定させ, 事前調査をさせている。  事前調査で調べた内容については例年7 月上旬に行う保護者会において発表する。生徒 発案の講座であることから,「出資者である保護者に対して,研修旅行の必要性を生徒自身 が説明する」スタイルを続けている。  2 点目の訪問個所や実習内容の決定について。札幌での訪問個所は web サイトや観光ガ イドブックなどを参考として生徒に選定させた。訪問個所については,「北海道」を体験す るという意味で,酪農に関係ある場所のみには制限しなかった。ただ,結果として酪農に ついての施設見学を含む内容となりがちであった。  オシダファームでの実習内容の決定について。初年度は勝手がわからず,基本的には「酪 農家のする仕事をそのまま体験させてほしい」と伝え,あとはファームイン・オシダの押 田氏にお任せする形となった。2 年目以降は前年度の活動内容から興味のあるものを伝え

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いうものであった。そもそも私は数学科の教員で,酪農の専門家ではなく,実家が酪農家 なわけでもない。私の所に担当教員を頼みに来たのはただ私が札幌出身である,という 1 点のみだったようだ。伝手などを期待してのものであろう。 酪農という全く未経験の分野について講座の担当教員を引き受けたのは,生徒の「実習 先についてはもうあてがある」との言葉を信じてのことであった。しかし,実際に総合講 座の活動を始めてみると,実習として想定していたものはいわゆる「観光牧場」の1 日体 験のようなものであった。総合講座として実施するからには事前学習で何らかのテーマを 定め,実習先ではそのテーマを念頭に置いて体験学習を行い,実習後には体験の結果をも ととして事前学習の結果について考察を深めるべきである,というのが当時の私の考えで あった。当初の実習先は総合講座の実習先としては不適当であると考え,まずは実習先を 探すことから活動を始めた。 5 月頃から事前学習と並行して実習先の選定を行い,別海町の「オシダファーム」に決 まったのが6 月頃であった。オシダファームは 1 人の生徒の父親に紹介してもらった。知 り合いで酪農を始めた方がおり,その方のさらに知り合いであるとのことであった。体験 学習の受け入れについて経験があり,ファームインを営んでいることから泊まり込みでの 活動が可能である。理想的な環境であったため実習をお願いすることとなった。 7 月下旬に,札幌市での施設見学と,北海道別海町オシダファームでの酪農実習のため 北海道への研修旅行を行った。詳細については後に記す。ファームイン・オシダの押田栄 司氏・美恵子氏夫妻には大変よくして頂き,非常に充実した実習となった。 当初は生徒発案の講座として立ち上がった総合講座「酪農体験」であるが,初年度に思 いのほか充実した体験ができた。そのため翌年以降も,教師開設型の総合講座として継続 することとした。希望者がおり,ファームイン・オシダの押田夫妻に受け入れて頂ける限 りは続けていこうと考えている。

2.講座の内容

 先に述べた通り,総合講座「酪農体験」の活動は校内での事前学習,北海道札幌市およ び別海町オシダファームにおける研修旅行,および校内での事後学習からなるものである。 本章ではそれらの活動内容について報告する。

21.講座の目的と意図

 前述した通り,本講座は当初生徒発案の講座として成立したものである。そのため,本 講座の当初の目的は,生徒の主体的な興味を充足させること,の一点に尽きた。  一方で講座担当教員としては,本講座を通じて「あらかじめ調べた知識」と,「現地で体 験した経験」とが有機的につながる学びが実現できれば良い学びになると考えた。そこで, そのような学びを意図して事前・事後学習を課した。  基本的な考え方は2 年目以降も同じである。本講座の目的は,事前事後学習と現地での 実習を通して,主として酪農に関わることについて,主体的に学ぶこと,にある。また, 講座開設の意図は,事前学習での演繹的な学びと,実習での帰納的な学びをあわせた学び を経験させることにある。このことは本校「三理想」の「自ら調べ自ら考える力ある人物」 の項目や,文部科学省(2009)『学習指導要領解説 総合的学習の時間編』などの目的と概ね その方向性は一致していると考える。

22.受講者の状況について

 受講者数は2016 年度が 6 名,2017 年度が 4 名,2018 年度が 7 名である。研修旅行に連 れていくことが前提の講座であるから,教員1 人で監督可能な人数を考え,毎年 6 名程度 を上限として募集している。毎年本講座を第1 希望とする生徒を概ね確保できており,少 なくとも広い意味では酪農に興味を持っている生徒が受講していると言える。

23.事前学習について

 事前学習での学習内容は,主に2 点挙げられる。1 つは酪農に対する具体的なテーマの 選定,もう1 つは研修旅行における訪問個所やオシダファームでの実習内容についての具 体的な希望の集約である。年度によって曜日が異なるが,毎週特定曜日の7・8 限に,セミ ナー形式で実施した。  1 点目の酪農に対する具体的なテーマ選定では,書籍やインターネット上の web サイト などで調べた事柄などについて調べ,発表させた。例年6 月頃までにテーマを決定させ, 事前調査をさせている。  事前調査で調べた内容については例年7 月上旬に行う保護者会において発表する。生徒 発案の講座であることから,「出資者である保護者に対して,研修旅行の必要性を生徒自身 が説明する」スタイルを続けている。  2 点目の訪問個所や実習内容の決定について。札幌での訪問個所は web サイトや観光ガ イドブックなどを参考として生徒に選定させた。訪問個所については,「北海道」を体験す るという意味で,酪農に関係ある場所のみには制限しなかった。ただ,結果として酪農に ついての施設見学を含む内容となりがちであった。  オシダファームでの実習内容の決定について。初年度は勝手がわからず,基本的には「酪 農家のする仕事をそのまま体験させてほしい」と伝え,あとはファームイン・オシダの押 田氏にお任せする形となった。2 年目以降は前年度の活動内容から興味のあるものを伝え

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たり,事前調査の内容をあらかじめ送付したりして生徒の興味をあらかじめ伝えるように 意識している。ただし,依然として押田氏に頼り切りであることは否めない。  なお,北海道への飛行機の手配や札幌市内のホテルの確保は,本来であれば生徒に任せ たいところであるが,現状では教員が手配している。今後任せられるようにしたい。 図 1 事前学習風景(2018)        図 2 事前学習風景(2017)

24.研修旅行について

 事前学習の内容をもととして,例年7 月中旬~下旬頃に研修旅行を行っている。3 年間 のおおまかな旅程は下記の通りである。 2016 年度:7 月 15 日(金)~7 月 16 日(土)札幌市内見学      7 月 16 日(土)~7 月 19 日(火)別海町オシダファームでの実習 2017 年度:7 月 17 日(月)~7 月 18 日(火)札幌市内見学      7 月 18 日(火)~7 月 22 日(土)別海町オシダファームでの実習 2018 年度:7 月 17 日(火)~7 月 18 日(水)札幌市内見学      7 月 18 日(水)~7 月 22 日(日)別海町オシダファームでの実習 以下では札幌市,別海町それぞれの場所での活動を紹介する。

241.札幌市内での施設見学等について

 例年東京からまず札幌市を訪れ,1 泊 2 日で何箇所かの観光名所や酪農関係施設などを 訪れている。各年度での主な訪問先は以下の通りである。 2016 年度:北海道庁旧庁舎,大通公園,藻岩山展望台,羊ヶ丘展望台, 北海道大学総合博物館など 2017 年度:大倉山展望台,旧札幌農学校第二農場, 雪印メグミルク札幌工場・酪農と乳の歴史館など 2018 年度:雪印メグミルク札幌工場・酪農と乳の歴史館,エドウィン・ダン記念館,      北海道大学総合博物館,旧札幌農学校第二農場など  初年度はどちらかというと観光名所が多く,だんだんと酪農施設見学にシフトしている。 一方で,訪問先についてはマンネリ化しつつある。 図 3 札幌見学の様子(旧道庁庁舎 2016 年)  図 4 札幌見学の様子(第二農場 2017 年)

242.オシダファームについて

 札幌での見学の後,例年新千歳空港から中標津空港へと航空機で移動し,別海町のオシ ダファームでの実習を行っている。  オシダファームは北海道野付郡別海町別海にある,家族経営が中心の牧場である。押田 栄司氏・美恵子氏夫妻はファームインである「ファームイン・オシダ」を営み,牧場の経 営はご子息の押田賢二氏が統括している。乳用牛を約120 頭飼っており,牧草地の面積は 69ha である。農林水産省(2018)畜産統計によると,乳用牛の 1 戸当たり平均飼育頭数は 84.6 頭であるが,別海町(2018)によると別海町内の 1 戸当たり平均飼育頭数は 140.5 頭である。 別海町においては概ね平均的な飼育頭数の牧場といえる。平成19 年 10 月には酪農教育フ ァームに認定されており,牧場での体験学習などを受け入れている。 図 5 ファームイン・オシダ遠景(2017 年) 図 6 ファームイン・オシダからの景色 (2016 年)

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たり,事前調査の内容をあらかじめ送付したりして生徒の興味をあらかじめ伝えるように 意識している。ただし,依然として押田氏に頼り切りであることは否めない。  なお,北海道への飛行機の手配や札幌市内のホテルの確保は,本来であれば生徒に任せ たいところであるが,現状では教員が手配している。今後任せられるようにしたい。 図 1 事前学習風景(2018)        図 2 事前学習風景(2017)

24.研修旅行について

 事前学習の内容をもととして,例年7 月中旬~下旬頃に研修旅行を行っている。3 年間 のおおまかな旅程は下記の通りである。 2016 年度:7 月 15 日(金)~7 月 16 日(土)札幌市内見学      7 月 16 日(土)~7 月 19 日(火)別海町オシダファームでの実習 2017 年度:7 月 17 日(月)~7 月 18 日(火)札幌市内見学      7 月 18 日(火)~7 月 22 日(土)別海町オシダファームでの実習 2018 年度:7 月 17 日(火)~7 月 18 日(水)札幌市内見学      7 月 18 日(水)~7 月 22 日(日)別海町オシダファームでの実習 以下では札幌市,別海町それぞれの場所での活動を紹介する。

241.札幌市内での施設見学等について

 例年東京からまず札幌市を訪れ,1 泊 2 日で何箇所かの観光名所や酪農関係施設などを 訪れている。各年度での主な訪問先は以下の通りである。 2016 年度:北海道庁旧庁舎,大通公園,藻岩山展望台,羊ヶ丘展望台, 北海道大学総合博物館など 2017 年度:大倉山展望台,旧札幌農学校第二農場, 雪印メグミルク札幌工場・酪農と乳の歴史館など 2018 年度:雪印メグミルク札幌工場・酪農と乳の歴史館,エドウィン・ダン記念館,      北海道大学総合博物館,旧札幌農学校第二農場など  初年度はどちらかというと観光名所が多く,だんだんと酪農施設見学にシフトしている。 一方で,訪問先についてはマンネリ化しつつある。 図 3 札幌見学の様子(旧道庁庁舎 2016 年)  図 4 札幌見学の様子(第二農場 2017 年)

242.オシダファームについて

 札幌での見学の後,例年新千歳空港から中標津空港へと航空機で移動し,別海町のオシ ダファームでの実習を行っている。  オシダファームは北海道野付郡別海町別海にある,家族経営が中心の牧場である。押田 栄司氏・美恵子氏夫妻はファームインである「ファームイン・オシダ」を営み,牧場の経 営はご子息の押田賢二氏が統括している。乳用牛を約120 頭飼っており,牧草地の面積は 69ha である。農林水産省(2018)畜産統計によると,乳用牛の 1 戸当たり平均飼育頭数は 84.6 頭であるが,別海町(2018)によると別海町内の 1 戸当たり平均飼育頭数は 140.5 頭である。 別海町においては概ね平均的な飼育頭数の牧場といえる。平成19 年 10 月には酪農教育フ ァームに認定されており,牧場での体験学習などを受け入れている。 図 5 ファームイン・オシダ遠景(2017 年) 図 6 ファームイン・オシダからの景色 (2016 年)

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図 7 放牧の様子(2017 年)      図 8 牧草地の様子(2016 年)

243.オシダファームでの実習について

実習中はファームイン・オシダに宿泊し,オシダファームでの作業の手伝いなどを体験 させてもらっている。ただ,オシダファームはいわゆる「観光牧場」ではなく,乳用牛か ら絞った原乳を出荷している牧場である。そのため防疫上「乳絞り」や乳用牛の世話をす ることはできず,乳用牛になる前の子牛や育成牛の世話,牧場内の環境整備の手伝いを担 当した。  滞在中の標準的な時程は以下のようなものである。  5:15 起床  5:30 朝の作業 (育成牛舎清掃・子牛の餌やりなど)  7:00 朝食  9:00 午前の活動  12:00 昼食  14:00 午後の作業 (育成牛舎清掃・子牛の餌やりなど)     午後の活動  18:30 夕食  21:00 就寝   ほぼ毎日,5 時半と 14 時に育成牛舎の清掃,餌やりと子牛の世話を行う。牛舎内の清掃 では牛舎内の糞をかき出し,尿で汚れた藁を取り除く。その後新しい藁を敷き,餌と水を 新しくする。子牛には哺乳瓶を使ってミルクを与え,牛舎内の清掃をする。(図9) それ以外の空いた時間に様々な活動などを行った。詳細は下記に記す。活動は大きく 3 種類に分けられる。1 つ目は酪農家の諸作業の手伝い,2 つ目は牧場での体験活動,そして 3 つ目は地域の方々と関わる活動である。 2016 年度 7 月 17 日(日) 午前:放牧地の雑草抜き 昼食:石窯ピサ作成 午後:放牧地の手入れ 7 月 18 日(月) 午前:敷地内の手入れ 午後:馬の世話・薪割り 夕食:バーベキュー 7 月 19 日(火) 午前:別海町研修牧場見学 午後:帰京 2017 年度 7 月 19 日(水) 午前:施設見学・子牛小屋の清掃 昼食:カレー作り 午後:子牛小屋清掃・廃棄物整理 7 月 20 日(木) 午前:石窯の清掃 昼食:石窯ピサ作成 午後:牧草地の草抜き 7 月 21 日(金) 午前:牧草地見学 午後:施設内清掃・乗馬体験 夕食:バーベキュー 7 月 22 日(土) 午前:青野氏宅訪問    パイロットファーム資料館見学 午後:帰京 2018 年度 7 月 19 日(火) 午前:別海高校訪問・酪農経営科生徒と交 流 午後:河﨑牧場チーズ工房にてストリング チーズ作成体験 7 月 20 日(水) 午前:施設見学・廃棄物の整理 昼食:バター作成・石窯ピザ作成 午後:敷地内の草刈り 7 月 21 日(木) 午前:牧草地見学・牧柵修理 昼食:カレー作り 午後:薪割り 夕食:バーベキュー 7 月 22 日(金) 午前:奥行臼駅・同駅逓跡見学 明郷伊藤牧場見学 午後:帰京

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図 7 放牧の様子(2017 年)      図 8 牧草地の様子(2016 年)

243.オシダファームでの実習について

実習中はファームイン・オシダに宿泊し,オシダファームでの作業の手伝いなどを体験 させてもらっている。ただ,オシダファームはいわゆる「観光牧場」ではなく,乳用牛か ら絞った原乳を出荷している牧場である。そのため防疫上「乳絞り」や乳用牛の世話をす ることはできず,乳用牛になる前の子牛や育成牛の世話,牧場内の環境整備の手伝いを担 当した。  滞在中の標準的な時程は以下のようなものである。  5:15 起床  5:30 朝の作業 (育成牛舎清掃・子牛の餌やりなど)  7:00 朝食  9:00 午前の活動  12:00 昼食  14:00 午後の作業 (育成牛舎清掃・子牛の餌やりなど)     午後の活動  18:30 夕食  21:00 就寝   ほぼ毎日,5 時半と 14 時に育成牛舎の清掃,餌やりと子牛の世話を行う。牛舎内の清掃 では牛舎内の糞をかき出し,尿で汚れた藁を取り除く。その後新しい藁を敷き,餌と水を 新しくする。子牛には哺乳瓶を使ってミルクを与え,牛舎内の清掃をする。(図9) それ以外の空いた時間に様々な活動などを行った。詳細は下記に記す。活動は大きく 3 種類に分けられる。1 つ目は酪農家の諸作業の手伝い,2 つ目は牧場での体験活動,そして 3 つ目は地域の方々と関わる活動である。 2016 年度 7 月 17 日(日) 午前:放牧地の雑草抜き 昼食:石窯ピサ作成 午後:放牧地の手入れ 7 月 18 日(月) 午前:敷地内の手入れ 午後:馬の世話・薪割り 夕食:バーベキュー 7 月 19 日(火) 午前:別海町研修牧場見学 午後:帰京 2017 年度 7 月 19 日(水) 午前:施設見学・子牛小屋の清掃 昼食:カレー作り 午後:子牛小屋清掃・廃棄物整理 7 月 20 日(木) 午前:石窯の清掃 昼食:石窯ピサ作成 午後:牧草地の草抜き 7 月 21 日(金) 午前:牧草地見学 午後:施設内清掃・乗馬体験 夕食:バーベキュー 7 月 22 日(土) 午前:青野氏宅訪問    パイロットファーム資料館見学 午後:帰京 2018 年度 7 月 19 日(火) 午前:別海高校訪問・酪農経営科生徒と交 流 午後:河﨑牧場チーズ工房にてストリング チーズ作成体験 7 月 20 日(水) 午前:施設見学・廃棄物の整理 昼食:バター作成・石窯ピザ作成 午後:敷地内の草刈り 7 月 21 日(木) 午前:牧草地見学・牧柵修理 昼食:カレー作り 午後:薪割り 夕食:バーベキュー 7 月 22 日(金) 午前:奥行臼駅・同駅逓跡見学 明郷伊藤牧場見学 午後:帰京

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 1 つ目については,酪農家がやらなければならない様々な作業のうち,人手がいるもの を中心としてお手伝いさせていただいた。押田氏いわく「百姓は百の仕事をする」とのこ とで,例えば牧草地の中の牛が食べない草を抜いたり(図7),牧場内の草刈りをしたり(図 10)する必要がある。また,肥料の袋や段ボールなど,酪農業に伴って出る廃棄物につい て,産廃業者に処理してもらえる形に分別するなど様々な手伝いをした。 2 つ目は,いわゆる一般的な「牧場体験」のイメージに近いものである。バターを作っ たり,ピザを作ったり,牧草地を散策したり(図11),乗馬体験をしたり(図 12)と様々 な体験をさせてもらっている。ファームイン・オシダでは本校生徒以外にも小学生から大 人まで広く受け入れており,いわゆる「牧場滞在」や「田舎暮らし」のための体験メニュ ーを取り揃えている。それらの活動の中からいくつかを体験させてもらっている。 図 9 育成牛舎での糞かき(2016 年)    図 10 草刈りの様子(2018 年) 図 11 牧草地散策(2017 年)        図 12 乗馬体験の様子(2017 年)

244.地域との関わりについて

 3 つ目の地域の方と関わる活動について述べる。ファームイン・オシダの押田栄司氏・ 美恵子氏夫妻はともに様々な分野で精力的に活動されている。例えば押田栄司氏は別海町 グリーンツーリズムネットワークの事務局長や,北海道別海高等学校の学校運営委員を担 当している。また,押田美恵子氏は「農林漁家民宿おかあさん100 選」に選定されている。 押田夫妻のネットワークを頼り,オシダファームでの実習のほか別海町内のいくつかの施 設などを訪れたり,体験を行ったりした。  2016 年度には,最終日に「別海町酪農研修牧場」を訪問した。別海町酪農研修牧場は, 新規の酪農就農希望者を「酪農研修生」という形で受け入れ,研修や生活支援,就農支援 などを行う施設である。牧場長の吉田達夫氏から牧場についての説明を受け,施設を見学 した。(図13)  2017 年度には最終日に青野春樹氏宅を訪れた。青野氏はパイロットファーム事業の最初 期に別海町に入植して酪農を始められた方で,パイロットファーム事業の最初期の資料や 映像を拝見させていただいた。また,青野氏が運営委員長を務めておられる根釧パイロッ トファーム開拓資料館を見学した。(図 14・図 15)  2018 年度には 2 日目午前に北海道別海高校を訪問し,別海高校酪農経営科農業クラブの 生徒達と学校交流を行った。農業クラブ顧問の明石哲教諭に校内を案内していただき,そ の後別海高校との交流会を催した。交流会では各校学校紹介や別海高校生徒の発表(自宅 の牧場の紹介)の後,意見交換などを行った。(図16)  また,2 日目午後には河﨑牧場チーズ工房にてストリングチーズの作成体験を行った。 河崎牧場チーズ工房では河﨑弘子氏が自家生乳を用いてチーズを作成している。ストリン グチーズ(いわゆる「さけるチーズ」)は熱いチーズを何度も伸ばすことで繊維状にして作 成している。当日は作成体験をさせて頂き,更に,おいしいチーズを振る舞っていただい た。(図17)  最終日には明郷伊藤牧場を訪問した。伊藤牧場は乳牛を400 頭程度飼っている大規模牧 場であると同時に,搾乳体験用の乳牛や売店,レストランなどを備えた観光牧場でもある。 当日は牧場長の方に対応いただき,最初に搾乳を体験,その後施設を案内して頂いた。明 郷伊藤牧場は巨大な牛舎と広大な牧草地を効率的に管理するため,トラクターやミルキン グパーラーなどに最新の機械を導入していた。また,牛の干し草の捕食機会を管理するた めに,大きな「お掃除ロボット」のようなものを用いていた。(図 18)  なお,2016 年と 2018 年には北海道新聞特派員の方より活動内容について取材を受けた。 活動については北海道新聞夕刊に掲載されている。

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 1 つ目については,酪農家がやらなければならない様々な作業のうち,人手がいるもの を中心としてお手伝いさせていただいた。押田氏いわく「百姓は百の仕事をする」とのこ とで,例えば牧草地の中の牛が食べない草を抜いたり(図7),牧場内の草刈りをしたり(図 10)する必要がある。また,肥料の袋や段ボールなど,酪農業に伴って出る廃棄物につい て,産廃業者に処理してもらえる形に分別するなど様々な手伝いをした。 2 つ目は,いわゆる一般的な「牧場体験」のイメージに近いものである。バターを作っ たり,ピザを作ったり,牧草地を散策したり(図11),乗馬体験をしたり(図 12)と様々 な体験をさせてもらっている。ファームイン・オシダでは本校生徒以外にも小学生から大 人まで広く受け入れており,いわゆる「牧場滞在」や「田舎暮らし」のための体験メニュ ーを取り揃えている。それらの活動の中からいくつかを体験させてもらっている。 図 9 育成牛舎での糞かき(2016 年)    図 10 草刈りの様子(2018 年) 図 11 牧草地散策(2017 年)        図 12 乗馬体験の様子(2017 年)

244.地域との関わりについて

 3 つ目の地域の方と関わる活動について述べる。ファームイン・オシダの押田栄司氏・ 美恵子氏夫妻はともに様々な分野で精力的に活動されている。例えば押田栄司氏は別海町 グリーンツーリズムネットワークの事務局長や,北海道別海高等学校の学校運営委員を担 当している。また,押田美恵子氏は「農林漁家民宿おかあさん100 選」に選定されている。 押田夫妻のネットワークを頼り,オシダファームでの実習のほか別海町内のいくつかの施 設などを訪れたり,体験を行ったりした。  2016 年度には,最終日に「別海町酪農研修牧場」を訪問した。別海町酪農研修牧場は, 新規の酪農就農希望者を「酪農研修生」という形で受け入れ,研修や生活支援,就農支援 などを行う施設である。牧場長の吉田達夫氏から牧場についての説明を受け,施設を見学 した。(図13)  2017 年度には最終日に青野春樹氏宅を訪れた。青野氏はパイロットファーム事業の最初 期に別海町に入植して酪農を始められた方で,パイロットファーム事業の最初期の資料や 映像を拝見させていただいた。また,青野氏が運営委員長を務めておられる根釧パイロッ トファーム開拓資料館を見学した。(図 14・図 15)  2018 年度には 2 日目午前に北海道別海高校を訪問し,別海高校酪農経営科農業クラブの 生徒達と学校交流を行った。農業クラブ顧問の明石哲教諭に校内を案内していただき,そ の後別海高校との交流会を催した。交流会では各校学校紹介や別海高校生徒の発表(自宅 の牧場の紹介)の後,意見交換などを行った。(図16)  また,2 日目午後には河﨑牧場チーズ工房にてストリングチーズの作成体験を行った。 河崎牧場チーズ工房では河﨑弘子氏が自家生乳を用いてチーズを作成している。ストリン グチーズ(いわゆる「さけるチーズ」)は熱いチーズを何度も伸ばすことで繊維状にして作 成している。当日は作成体験をさせて頂き,更に,おいしいチーズを振る舞っていただい た。(図17)  最終日には明郷伊藤牧場を訪問した。伊藤牧場は乳牛を400 頭程度飼っている大規模牧 場であると同時に,搾乳体験用の乳牛や売店,レストランなどを備えた観光牧場でもある。 当日は牧場長の方に対応いただき,最初に搾乳を体験,その後施設を案内して頂いた。明 郷伊藤牧場は巨大な牛舎と広大な牧草地を効率的に管理するため,トラクターやミルキン グパーラーなどに最新の機械を導入していた。また,牛の干し草の捕食機会を管理するた めに,大きな「お掃除ロボット」のようなものを用いていた。(図 18)  なお,2016 年と 2018 年には北海道新聞特派員の方より活動内容について取材を受けた。 活動については北海道新聞夕刊に掲載されている。

(10)

図 13 別海町研修牧場の様子(2016 年)  図 14 青野氏の初期パイロットファーム関 連資料(2017 年) 15 パイロットファーム資料館の様子 図 16 別海高校との交流会(2018 年) (2017 年) 図 17 ストリングチーズ作成体験   図 18 明郷伊藤牧場のフリーバーン牛舎 (2018 年)              (2018 年)

25.事後学習について

 研修旅行終了後,夏休み明けからは体験したことをもととして事後学習を行った。夏休 みの課題として研修旅行の感想文を課し,夏休み終了後にまずは純粋な感想を共有した。 その後,体験によって学んだ内容を事前学習で調べた内容に反映させ,論文を書かせた。 また,例年4 月下旬に行われる記念祭(文化祭)での展示団体「総合講座」に出展してい る。3 月から 4 月にかけては展示のための準備をした。

251.感想文の内容から

 書かれた感想文からキーワードを取り出すと,例えば以下のような内容が含まれていた。

.

実際に酪農を体験することで,普段の食卓で何気なく食べたり飲んだりしている牛 肉や牛乳がどのような経緯をたどっているか理解できた。「産業としての酪農」を 体験できた。イメージとは違い,「意外な仕事」が多かった。酪農には多大な労力 が必要なことがわかった。すべてが自分にとって体験したことのないことだった。 「年末年始も休日ではない」という言葉にとても驚かされた。

.

札幌では自分で行くところを調べたので反省点もあるが,良い経験だった。

.

農家の「生活の中からの遊び」が体験できた。放牧地をトラックで走ったのが気持 ちよかった。

.

地域の方から昔の話を聞けたのがよかった。別海高校との交流会は自分の将来につ いて考える良いきっかけとなった。

252.論文について

 年度末を締め切りとして,論文を書かせた。2017 年度からは作成した論文を小冊子とし, 記念祭において配布している。例えば2017 年度小冊子の論文題目は下記のとおりである。 1. 酪農について オシダファームで体験したこと 2. 酪農の歴史 3. 酪農における乳質管理 4. 農場・牛の管理について 5. 終わりに

253.記念祭での展示について

 総合講座での活動内容をもととして,記念祭「総合講座」の展示にポスターを出展して

(11)

図 13 別海町研修牧場の様子(2016 年)  図 14 青野氏の初期パイロットファーム関 連資料(2017 年) 15 パイロットファーム資料館の様子 図 16 別海高校との交流会(2018 年) (2017 年) 図 17 ストリングチーズ作成体験   図 18 明郷伊藤牧場のフリーバーン牛舎 (2018 年)              (2018 年)

25.事後学習について

 研修旅行終了後,夏休み明けからは体験したことをもととして事後学習を行った。夏休 みの課題として研修旅行の感想文を課し,夏休み終了後にまずは純粋な感想を共有した。 その後,体験によって学んだ内容を事前学習で調べた内容に反映させ,論文を書かせた。 また,例年4 月下旬に行われる記念祭(文化祭)での展示団体「総合講座」に出展してい る。3 月から 4 月にかけては展示のための準備をした。

251.感想文の内容から

 書かれた感想文からキーワードを取り出すと,例えば以下のような内容が含まれていた。

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実際に酪農を体験することで,普段の食卓で何気なく食べたり飲んだりしている牛 肉や牛乳がどのような経緯をたどっているか理解できた。「産業としての酪農」を 体験できた。イメージとは違い,「意外な仕事」が多かった。酪農には多大な労力 が必要なことがわかった。すべてが自分にとって体験したことのないことだった。 「年末年始も休日ではない」という言葉にとても驚かされた。

.

札幌では自分で行くところを調べたので反省点もあるが,良い経験だった。

.

農家の「生活の中からの遊び」が体験できた。放牧地をトラックで走ったのが気持 ちよかった。

.

地域の方から昔の話を聞けたのがよかった。別海高校との交流会は自分の将来につ いて考える良いきっかけとなった。

252.論文について

 年度末を締め切りとして,論文を書かせた。2017 年度からは作成した論文を小冊子とし, 記念祭において配布している。例えば2017 年度小冊子の論文題目は下記のとおりである。 1. 酪農について オシダファームで体験したこと 2. 酪農の歴史 3. 酪農における乳質管理 4. 農場・牛の管理について 5. 終わりに

253.記念祭での展示について

 総合講座での活動内容をもととして,記念祭「総合講座」の展示にポスターを出展して

(12)

いる。また,前述した通り,2017 年度より小冊子を作成し配布した。(図 19・図 20) 19 「酪農体験」ポスター(2016 年) 図 20 「酪農体験」ポスター・小冊子(2017 年)

3.考察

 本章では,2-1において述べた,講座の目的と意図において設定した目的と意図が達成 されているか,あるいは本講座が生徒にどのような変容をもたらしているかについて,著 者の考えを述べる。

-1.生徒の感想文より

 2-5-1で挙げた生徒の感想文の記述を大きく分類すると,大きく下記に分けられる。 ①. 酪農についての見方の変容をあらわす記述 . 自らの調査についての記述 . 自然体験の楽しさについての記述 ④. 地域の方々との交流についての記述  最も多かったのは①の記述,すなわち,実習を通じて酪農や酪農家の仕事に対する見方 が変わった,という記述であった。このことから,実習中の学びが事前学習での学びから 得られた知識,あるいは先入観として持っていた酪農に対するイメージに対して影響を与 えたことが読み取れる。  次に多かったのは④の記述である。例えば2017 年であればパイロットファーム事業の開 拓の様子について知ることができたことで見方が変わったという記述がみられた。また. 2018 年のものには別海高校の高校生達が将来のビジョンを明確に持っており,意識が変わ ったという記述などがみられた。いずれも①と同様,地域の方々の話を聞いたり,交流し たりすることで,自身の価値観に変容をもたらしたことの記述がみられる。  ③については,普段味わうことにできない自然環境に触れ,様々な活動を体験できたこ とについての記述である。実習について純粋に楽しめたことが窺える。なお,著者の感想 になるが,体験中も生徒達は非常に楽しんでいる様子だった。例えば普段の授業中にはつ まらなそうな顔をしている生徒が,活動中には非常に良い笑顔をしていたことが強く印象 に残っている。  ②については,主に札幌での見学について,事前調査不足を実感した感想がみられた。

-2.生徒の論文より

 2-5-2で挙げた生徒の論文については,どれも事前調査の内容に研修旅行での体験を 反映させた,十分に練られた論文となっていた。本稿ではその内容を紹介することはしな いが,今後も記念祭で論文の掲載された小冊子を配布する予定である。手に取って読んで

(13)

いる。また,前述した通り,2017 年度より小冊子を作成し配布した。(図 19・図 20) 19 「酪農体験」ポスター(2016 年) 図 20 「酪農体験」ポスター・小冊子(2017 年)

3.考察

 本章では,2-1において述べた,講座の目的と意図において設定した目的と意図が達成 されているか,あるいは本講座が生徒にどのような変容をもたらしているかについて,著 者の考えを述べる。

-1.生徒の感想文より

 2-5-1で挙げた生徒の感想文の記述を大きく分類すると,大きく下記に分けられる。 ①. 酪農についての見方の変容をあらわす記述 . 自らの調査についての記述 . 自然体験の楽しさについての記述 ④. 地域の方々との交流についての記述  最も多かったのは①の記述,すなわち,実習を通じて酪農や酪農家の仕事に対する見方 が変わった,という記述であった。このことから,実習中の学びが事前学習での学びから 得られた知識,あるいは先入観として持っていた酪農に対するイメージに対して影響を与 えたことが読み取れる。  次に多かったのは④の記述である。例えば2017 年であればパイロットファーム事業の開 拓の様子について知ることができたことで見方が変わったという記述がみられた。また. 2018 年のものには別海高校の高校生達が将来のビジョンを明確に持っており,意識が変わ ったという記述などがみられた。いずれも①と同様,地域の方々の話を聞いたり,交流し たりすることで,自身の価値観に変容をもたらしたことの記述がみられる。  ③については,普段味わうことにできない自然環境に触れ,様々な活動を体験できたこ とについての記述である。実習について純粋に楽しめたことが窺える。なお,著者の感想 になるが,体験中も生徒達は非常に楽しんでいる様子だった。例えば普段の授業中にはつ まらなそうな顔をしている生徒が,活動中には非常に良い笑顔をしていたことが強く印象 に残っている。  ②については,主に札幌での見学について,事前調査不足を実感した感想がみられた。

-2.生徒の論文より

 2-5-2で挙げた生徒の論文については,どれも事前調査の内容に研修旅行での体験を 反映させた,十分に練られた論文となっていた。本稿ではその内容を紹介することはしな いが,今後も記念祭で論文の掲載された小冊子を配布する予定である。手に取って読んで

(14)

頂ければ幸いである。

-3.結論

 以上のより,生徒の感想文,および論文から見る限りにおいては,本講座は「主として 酪農に関わることについて,主体的に学ぶ」というその目的を達成しているように思われ る。また,感想文から見る限り,その学びは本講座において意図した学びとなっていたよ うに判断できる。それだけでなく,生徒の酪農などに対する見方や,進路についての考え 方について,変容をもたらしたことが見てとれた。  なお,著者の個人的な感想としては,本講座が多くの学びをもたらしたことに加えて, 感想文や活動中の様子から,生徒たちが実習を本当に楽しんでいた様子が見てとれたこと が何よりの喜びであった。生徒たちの普段の授業とは異なる一面を見ることができるのも, いわゆる「体験学習」引率の醍醐味といえるであろう。

4.おわりに

 以上のように,総合講座「酪農体験」の事前学習,研修旅行中の札幌見学,オシダファ ームでの実習,および事後学習について紹介し,事後学習の成果物より考察を行った。2016 年度に開設してから3 年間については,充実した活動ができていたように思われる。 また,著者自身の感想として,振り返ってみると自身にとっても非常に意義のあるもの であると感じられた。1 章でも述べた通り,条件が許す限りにおいては,本講座を続けて いけたらと考えている。 一方で,我々教員の多忙化については予断を許さない状況にある。総合講座という取り 組み自体,教員の労力も要するものである。生徒の主体的な学びを教員が支えていけるよ うな仕組みを,今後も残していかなければならない。そのためにも,教員の教育研究環境 を維持していくよう,我々自身も不断の努力をしていかなければならないだろう。 

5.謝辞

 オシダファームの皆様には,実習において大変お世話になりました。特にファームイン・ オシダの押田栄司氏・美恵子氏夫妻には,実習メニューを考えて頂くところから,実習中 の指導,寝食の提供まで,あらゆる点においてお世話になりました。また,実習中も生徒 達に対して大変親身になって指導頂きました。押田夫妻なしには本総合講座は成立しえま せんでした。深く感謝いたします。  また,別海町の皆様には,実習中にお世話になりました。吉田達夫氏をはじめとする別 海町酪農研修牧場の方々,青野春樹氏をはじめとする青野家の方々,明石哲教諭を始めと する北海道別海高校の方々,河﨑弘子氏をはじめとする河﨑牧場チーズ工房の方々,明郷 伊藤牧場の方々には生徒を受け入れて頂き感謝しております。 そして,総合講座「酪農体験」が成立したのは,2016 年度に 4 名の生徒が発案したこと によります。最初の一歩を踏み出した事に敬意を示します。また,この講座をともに作り 上げてくれた2016 年度から 2018 年度の受講生 計 17 名の生徒に感謝します。

参考文献

文部科学省.2009.高等学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編.海文堂出版 農林水産省大臣官房統計部.2018.畜産統計(平成 30 年 2 月 1 日現在). http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan/attach/pdf/index-5.pdf(2018 年 10 月 6 日最終確 認) 別海町.2018.別海町の牛の飼養戸数・頭数.https://betsukai.jp/ushi/(2018 年 10 月 6 日最 終確認) 北海道新聞.2016.「子牛にミルク 初の体験 東京の高校生酪農作業」(2016 年 7 月 25 日 北海道新聞夕刊) 北海道新聞.2018.「東京の高校生 別海で挑戦」(2018 年 8 月 8 日北海道新聞夕刊) 生徒4 名,赤間祐也.2018.総合講座「酪農体験」小冊子

(15)

頂ければ幸いである。

-3.結論

 以上のより,生徒の感想文,および論文から見る限りにおいては,本講座は「主として 酪農に関わることについて,主体的に学ぶ」というその目的を達成しているように思われ る。また,感想文から見る限り,その学びは本講座において意図した学びとなっていたよ うに判断できる。それだけでなく,生徒の酪農などに対する見方や,進路についての考え 方について,変容をもたらしたことが見てとれた。  なお,著者の個人的な感想としては,本講座が多くの学びをもたらしたことに加えて, 感想文や活動中の様子から,生徒たちが実習を本当に楽しんでいた様子が見てとれたこと が何よりの喜びであった。生徒たちの普段の授業とは異なる一面を見ることができるのも, いわゆる「体験学習」引率の醍醐味といえるであろう。

4.おわりに

 以上のように,総合講座「酪農体験」の事前学習,研修旅行中の札幌見学,オシダファ ームでの実習,および事後学習について紹介し,事後学習の成果物より考察を行った。2016 年度に開設してから3 年間については,充実した活動ができていたように思われる。 また,著者自身の感想として,振り返ってみると自身にとっても非常に意義のあるもの であると感じられた。1 章でも述べた通り,条件が許す限りにおいては,本講座を続けて いけたらと考えている。 一方で,我々教員の多忙化については予断を許さない状況にある。総合講座という取り 組み自体,教員の労力も要するものである。生徒の主体的な学びを教員が支えていけるよ うな仕組みを,今後も残していかなければならない。そのためにも,教員の教育研究環境 を維持していくよう,我々自身も不断の努力をしていかなければならないだろう。 

5.謝辞

 オシダファームの皆様には,実習において大変お世話になりました。特にファームイン・ オシダの押田栄司氏・美恵子氏夫妻には,実習メニューを考えて頂くところから,実習中 の指導,寝食の提供まで,あらゆる点においてお世話になりました。また,実習中も生徒 達に対して大変親身になって指導頂きました。押田夫妻なしには本総合講座は成立しえま せんでした。深く感謝いたします。  また,別海町の皆様には,実習中にお世話になりました。吉田達夫氏をはじめとする別 海町酪農研修牧場の方々,青野春樹氏をはじめとする青野家の方々,明石哲教諭を始めと する北海道別海高校の方々,河﨑弘子氏をはじめとする河﨑牧場チーズ工房の方々,明郷 伊藤牧場の方々には生徒を受け入れて頂き感謝しております。 そして,総合講座「酪農体験」が成立したのは,2016 年度に 4 名の生徒が発案したこと によります。最初の一歩を踏み出した事に敬意を示します。また,この講座をともに作り 上げてくれた2016 年度から 2018 年度の受講生 計 17 名の生徒に感謝します。

参考文献

文部科学省.2009.高等学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編.海文堂出版 農林水産省大臣官房統計部.2018.畜産統計(平成 30 年 2 月 1 日現在). http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan/attach/pdf/index-5.pdf(2018 年 10 月 6 日最終確 認) 別海町.2018.別海町の牛の飼養戸数・頭数.https://betsukai.jp/ushi/(2018 年 10 月 6 日最 終確認) 北海道新聞.2016.「子牛にミルク 初の体験 東京の高校生酪農作業」(2016 年 7 月 25 日 北海道新聞夕刊) 北海道新聞.2018.「東京の高校生 別海で挑戦」(2018 年 8 月 8 日北海道新聞夕刊) 生徒4 名,赤間祐也.2018.総合講座「酪農体験」小冊子

図   7  放牧の様子( 2017 年)      図   8  牧草地の様子 (2016 年 )  243.オシダファームでの実習について 実習中はファームイン・オシダに宿泊し,オシダファームでの作業の手伝いなどを体験 させてもらっている。ただ,オシダファームはいわゆる「観光牧場」ではなく,乳用牛か ら絞った原乳を出荷している牧場である。そのため防疫上「乳絞り」や乳用牛の世話をす ることはできず,乳用牛になる前の子牛や育成牛の世話,牧場内の環境整備の手伝いを担 当した。  滞在中の標準的な時程は以下のよ
図   7  放牧の様子( 2017 年)      図   8  牧草地の様子 (2016 年 )  243.オシダファームでの実習について 実習中はファームイン・オシダに宿泊し,オシダファームでの作業の手伝いなどを体験 させてもらっている。ただ,オシダファームはいわゆる「観光牧場」ではなく,乳用牛か ら絞った原乳を出荷している牧場である。そのため防疫上「乳絞り」や乳用牛の世話をす ることはできず,乳用牛になる前の子牛や育成牛の世話,牧場内の環境整備の手伝いを担 当した。  滞在中の標準的な時程は以下のよ
図   13  別海町研修牧場の様子 (2016 年 )   図   14  青野氏の初期パイロットファーム関 連資料 (2017 年 )      図   15  パイロットファーム資料館の様子 図   16  別海高校との交流会 (2018 年 )  (2017 年 )  図   17  ストリングチーズ作成体験       図   18  明郷伊藤牧場のフリーバーン牛舎 (2018 年 )                   (2018 年 )  25.事後学習について  研修旅行終了後,夏休み明けか
図   13  別海町研修牧場の様子 (2016 年 )   図   14  青野氏の初期パイロットファーム関 連資料 (2017 年 )      図   15  パイロットファーム資料館の様子 図   16  別海高校との交流会 (2018 年 )  (2017 年 )  図   17  ストリングチーズ作成体験       図   18  明郷伊藤牧場のフリーバーン牛舎 (2018 年 )                   (2018 年 )  25.事後学習について  研修旅行終了後,夏休み明けか

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