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p2131-小児科11月号 26.mcd

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小児の口腔の事故

医療法人 徳真会グループ 先端歯科医療研究所

みや

ざわ

ひろ

お はじめに 小児の事故や外傷は,子どもの身体的,精 神的未熟さと取り巻く環境条件により発生 し,その様相,程度も様々である。近年,小 児の事故・外傷は増加傾向にあるといわれて いるが,家屋,運動,交通手段などの環境要 因の変化とともに子ども特有の敏捷性,反射 性の低下などの身体上の条件の拙劣さも指摘 されている1) 乳幼児は,危険に対する注意不足や回避の 遅れ,歩行のアンバランスなど,行動に多く の生理的未熟さをもっている。そのため日常 生活のなかで室外での運動,遊戯中の事故, 交通事故など多くの危険に遭遇する機会が増 加し,顎・顔面・口腔領域に外傷を受けて来 院することが少なくない。また,乳歯列期の 外傷は永久歯歯胚が顎骨内にあるため,骨髄 炎,骨膜炎といった二次的な問題も起こり成 長発達に大きな影響を及ぼす。さらに,根未 完成歯や周囲の歯との接触がないなど,脱 臼,挺出,埋入(陥入)など歯の転位が起こ りやすい。外傷時の対応を熟知することによ り,回避することが可能であるため小児の歯 の外傷予防とその対応には幅広い知識が求め られる。小児の口腔領域の外傷の特徴として 以下の問題点に留意する。 ①正常な顎や歯列の成長発達が妨げられ る。 ②外傷によって歯を失うと,歯列・咬合の 不調和となる。 ③突発的状況の正確な情報(自発痛を含 め)が得られにくい。 ④処置に際し,患児の協力が得にくく,予 後の安定性に欠ける。 ⑤児童虐待,特に,身体的虐待との関連 性。 Ⅰ.子どもの顔面・口腔・歯の 事故の現状 事故の実態については全国規模の調査が行 われ,就学前の乳幼児事故について14,614例 の症例が収集,分析され実態が報告されてい る2)3)。しかし,調査対象施設は病院,救命 救急センター等が中心であり,歯科口腔領域 の事故症例が把握できていなかった。その 後,保育園での事故調査により,多くの事故 が発生していることが報告され.保育園・幼 稚園での医療機関受診事故の 分のが,口 腔・歯に関する事故であったことより,多数 の口腔領域の事故が発生していることは明ら かとなった4)。事故防止の必要性は,すでに 〒153-0063 東京都目黒区目黒1-6-17 目黒プレイスタワー12F

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厚生労働省の「健やか親子21」や次世代育成 推進法に基づく行動計画策定指針においても 取り上げられているが,社会,保護者の事故 防止に対する関心は薄く,なかでも口腔領域 の事故への対策は十分に行われているとはい えず,取り組みは遅れている。 ઃ.顔面(口腔含む)・頭部の外傷経験 口腔を含む顔面・頭部の外傷は比較的低年 齢期に集中し,医療機関を受診した小児の受 傷年齢では 歳未満児の受傷経験が1970年代 から現在に至る報告5)〜8)でも差はみられず 50〜65%と極めて高い頻度を示している。著 者 の 694 人 を 対 象 と し た 調 査9)で は 305 人 (46.0%)に受傷経験があり,1.2:と男 児にやや多い傾向がみられた。岩本ら10) : ,越前ら11) :,といずれも男児に高 いとされているが,上野12)は性差が少ない ことが小児外傷の特徴であると述べており, 一般的に乳幼児などの年齢構成が低い時期で は性差はみられない(表ઃ)。 ઄.顔面(口腔含む)・頭部の外傷部位・ 原因 顔面・頭部の外傷による受傷部位では前頭 部への受傷が最も多く,宮沢らの保育園児を 対象とした調査報告では口唇,上顎,下顎の いわゆる口腔およびその周囲への受傷は約 20%であり,比較的高い頻度で起こり得るも のと思われる。また,皮膚・粘膜の損傷が最 も多く,約40%にみられ,遊びの種類,玩具 の違いから,一般的に男児に多い傾向がみら れている9)。顔面・頭部の外傷の原因は男 児・女児ともに転落・転倒によるものが多 く,過去から現在までの報告では約70%とさ れている。低年齢期の小児では運動機能未発 達,相対的に頭部が大きく重いなどから転 倒・転落することが多く,特に運動機能の未 熟さから咄嗟に手での防御ができずに,床な どに顔面・頭部をぶつけ,その結果として前 頭部,顔面,口腔周囲の受傷へつながってい る。骨折に至る例は医療機関を受診した小児 の調査(15歳児)では歯槽骨骨折・顎骨骨折 の経験2.5〜10%と比較的高い頻度の報告も あるが,骨折の主な原因がスポーツ,暴力的 行為によるところが多いため,乳幼児期では 稀であることが多い(表઄)。 Ⅱ.乳歯の外傷 乳歯の外傷の経験の有無は,医療機関での 調査結果とフィールド調査との違いは大き く,厚生省心身障害研究「地域:家庭環境の 小児に対する影響等に関する研究」報告13) では都市部(杉並区)11.3%,地方都市(佐 久市)7.8%であり,宮沢らの顔面・頭部の 外傷経験の有無を調査した報告でも,46.0% に比べ顔面外傷の中で乳歯外傷は7.0%と比 較的少ない頻度であった。 178(59.3) 180(49.6) な し 305(46.0) 122(40.7) 183(50.4) あ り 合 計 女 児 男 児 単位:人(%) 表ઃ 顔面・頭部の外傷の経験9) 31 10 21 無回答 663 300 363 合 計 358(54.0)

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ઃ.受傷経験と年齢分布 乳歯の外傷経験は従来の報告から,男女比 はほぼ1.5〜2.0:とする報告14)〜16)が男 児に多く認められ,一般に男児が女児に比べ 行動範囲が広く,その行動が多様化している ため受傷頻度が高くなるとされている。ま た,発 育 時 期 で 男 女 比 を 比 較 し て い る 報 告17)では,年齢が進むに従い,男児のほう が女児に比べ受傷する割合が高くなる傾向が みられている。成長発育とともに,男児のほ うが女児に比べて,より行動範囲が広く活動 的になっていくことが示唆された。また,年 齢分布では歳児が最も多く,次いで 歳 児, 歳児の順であり, 歳までの幼児期前 半が全体の半数を占めている。この年齢は, 歩行や走行を始める時期でもあるが,身体機 能が未発達のために容易に転倒,衝突などし やすく,上肢で口腔顎顔面領域を保護するこ とが困難なため,受傷することが多いとされ ている5)。また, 歳児から年齢を追うごと に受傷者に減少が認められ,これは,市原 ら16)も述べているように,運動能力の発達 に伴い転倒・転落が減少し,危険回避に対す る認識も徐々にできるようになっているから と考えられる(図ઃ)。 ઄.受傷状況 受傷場所は,屋内での受傷が多い。幼児が 外遊び,運動などの屋外での活動よりテレビ や習い事など屋内での活動が多くなってお り,そのために屋内で受傷する機会が増加す る。受傷部位については上顎前歯が圧倒的に 多く,年代差はみられない。上顎歯が下顎歯 より前方に突き出ているため,上顎歯に直接 外力が加わるほか,下顎による突き上げを間 接的に受けるため,転倒・転落時に上顎前歯 を受傷しやすいと考えられる。これらの結果 をふまえ,床面の平坦化や玩具や家具の形態 などを受傷しにくいものにするなどの環境の 整備や運動能力の向上の受傷防止についての 患者教育などの予防法について考えることが 必要である。多くの疫学調査5)〜7)12)15)から 乳歯では転倒が50%を超え,衝突,転落,打 撲が,それに続いている。一般的に,乳歯外 傷は上顎乳中切歯が最も多く,歯の萌出期に 外傷が多いことから,治療にあたっては歯根 形成量に細心の注意が必要となる。外傷への 43(25.7) 67(23.7) 前頭部 合 計 女 児 男 児 重複回答 単位:人(%) 表઄ 顔面・頭部外傷の受傷部位9) 22(13.2) 35(12.4) 鼻およびその周囲 71(15.8) 23(13.8) 48(17.0) 目およびその周囲 31( 6.9) 5( 3.0) 26( 9.2) 側頭部 50(11.1) 18(10.8) 32(11.3) 後頭部 110(24.4) 0( 0.0) 0( 0.0) 喉 58(12.9) 25(15.0) 33(11.7) 口 唇 47(10.4) 17(10.2) 30(10.6) 頰 1( 0.2) 0( 0.0) 1( 0.4) 耳およびその周囲 57(10.6) 450 167 283 合 計 18( 4.0) 11( 6.6) 7( 2.5) 下 顎 7( 1.6) 3( 1.8) 4( 1.4) 上 顎 0( 0.0)

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対応は小児歯科,口腔外科など他科との連携 のもとに治療をすすめる必要がある(図઄)。 અ.歯の外傷様式 歯牙外傷の多くは,脱臼,破折,陥入に分 類される。乳歯では歯槽骨の脆弱性から脱 臼,陥入が永久歯に比べ高い頻度でみられ, 破折は永久歯に多く認められる。乳歯外傷で は,生理的歯根吸収や患者の協力度,歯の交 換,萌出状態などを考慮し,治療法が選択さ れる。基本的には保存を第一の目的に,抜歯 の適応であっても,二次感染のない場合はた だちに整復・固定とすることが多い。池田 ら18)は,受傷時に歯髄や歯周組織の損傷が 大きいと,予後不良な経過をとることが多い 図ઃ 乳歯外傷の受傷時年齢5) 図઄ 乳歯外傷の原因5)

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としている。また,石川ら19)によれば,硬 組織への損傷よりも歯周組織への損傷が後継 永久歯に最も強い影響を与えるとし,受傷時 年齢が低いほど,後継永久歯胚へ影響を及ぼ す割合,および重症度が高くなると述べてい る。そのため,乳歯受傷後,後継永久歯が萌 出するまでの長期的な経過観察は不可欠であ る。 )乳歯の破折 a)歯冠破折(写真ઃ) 歯冠の破折がエナメル質に限局している場 合は,接着性レジンなどで形態修復を行う。 また,破折がなくても歯冠に亀裂などがある ので注意が必要である。歯冠エナメル質のみ の破折は研磨,修復処置で経過観察とするこ とが多い。強力なライトで口蓋側から診察す ると,亀裂が唇側から観察できる。歯冠破折 が象牙質にまで達している場合は,覆髄後接 着性レジンで修復する。歯冠部が完全に欠け て,破折片が存在する場合は元に戻し,適合 がよければレジンで固定する。歯冠修復後 は,歯髄の生活反応を定期的に診察する。 露髄を伴う乳歯では,患児の協力状態,歯 髄炎の波及状態,感染の程度などにより処置 法が異なる。 b)歯根破折 歯根破折では初診時の動揺の程度と破折面 での転位の有無によって,処置は観察のみ, 固定,抜歯のいずれかに分かれる。この症例 では,感染防止のための投薬が必要であるた め医療機関への受診は必須である。その後の 処置は,定期的観察時に臨床症状(歯髄の生 死,破折周囲部の変化,後継永久歯の位置の 変化など)を検査し,必要に応じて対処す る。病状が定着しても観察は カ月ごとに後 継永久歯の萌出時期まで行う。破折根尖部 は,吸収消失,異物排除,残遺の機序が考え られるが,臨床的にはほとんどの場合,吸収 消失することが多い。 )乳歯の挺出(写真઄) 処置としては,受傷後の経過時間と二次的 感染の有無によって,整復固定,抜歯のいず れかになる。消炎および感染防止のための投 薬が必要である。その後の処置として,非生 活歯になる頻度が高く,予後の経過観察を十 分に行う必要がある。 )乳歯の陥入(写真અ) 陥入受傷後の経過時間,陥入程度,二次感 染の有無によって初診時の処置方針が決定さ れる。例えば経過時間が時間以内,陥入の 程度が/ 以上の場合は,整復固定。経過 時間が 日以内,陥入程度が/ 以下で二 次感染がなければ再萌出を期待し無処置観 察。陥入が/ 以上で二次感染がない場合 は,整復固定。陥入/ 以上で明らかな二 次感染を認める時は,抜歯。また, 日以上 写真ઃ 乳歯の歯冠破折 写真઄ 乳歯の挺出

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経過して来院した場合には,陥入程度に関係 なく,二次感染の有無によって無処置観察 か,または抜歯かに分ける。消炎および感染 防止のための投薬が必要である。その後の処 置は,後継永久歯への影響を考慮しながら萌 出まで観察を行う。 )乳歯の脱落(脱臼)(写真આ,ઇ) 乳歯の再植は原則的には行うことはない が,軽度な脱臼から唇舌的位置異常について は脱落歯の保存状態,歯槽部破壊程度の状態 を十分に観察・点検し,良好であれば再植・ 固定を行うこともある。一般的には受傷範囲 や周囲組織の破壊程度が大きくなるので,確 実な固定が可能な場合に限られる。固定は 週間程度必要である。また,歯槽骨突起を骨 折し,転位した例でも指頭による整復を必要 とする。 )脱落した歯の保存法(写真ઈ) 乳歯,永久歯に限らず,外傷による脱臼 (脱落)は速やかに医療機関を受診する。受 傷直後のもので,できるだけ防腐的保存(歯 槽窩あるいは舌下部に保存,生理食塩水,牛 乳などに保存)がなされているものほど予後 良好である。再植の予後は歯根膜線維と断裂 した歯髄組織の保存環境に左右される。脱落 歯は出血等の症状を確認し,可及的速やかに 元の歯槽窩に戻す,あるいは誤飲に配慮しつ つ本人の舌下に保存する。それらが困難な場 合は HBSS 培養液(歯牙保存液)か,牛乳 で付着異物を除去し保存する。これらが入手 困難な場合は,歯の乾燥を防ぐことを目的に ラップで被覆して,持参するとよい。いずれ も受傷から受診までの時間は速やかであるこ とが望ましい。 Ⅲ.歯ブラシよる口腔外傷 ઃ.ものをくわえての偶発事故(写真ઉ) 低年齢児は何にでも興味をもち,身の回り のあらゆる物を口に入れる特性がある。幼児 が玩具,歯ブラシ,箸,スプーンなど棒状の ものをくわえて前方に転倒し,口蓋,舌,頰 粘膜に刺入した症例20)21)や,異物が口腔内 に迷入した症例22)23)が報告されている。 写真અ 乳歯の陥入 写真આ 乳歯の脱落(脱臼)

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1999年には 歳児が綿菓子の割り箸をくわえ て転倒し,軟口蓋から小脳に刺さり「割り箸 による死亡事故」が起こっている。このよう な受傷は小児特有な外傷であり,これらの異 物は,比較的早期に発見されることが多い が,なかには長期にわたり放置された症例も ある。問題となる事故は異物による口腔内の 損傷や異物の口腔軟組織への刺入・迷入であ る。 「ものをくわえての受傷」部位では,軟口 蓋,上下口唇,舌(舌下,口腔底含む)への 受傷が多くみられている。これらの受傷は重 症例となることが多く,転倒の際に原因物に よる舌裂傷24)頰粘膜裂傷から頰脂肪体脱出 (Herniation)を生じた例などの報告があ る。口腔粘膜の歯ブラシによる損傷は,年齢 では〜 歳児に,受傷部位は口蓋に多い。 写真ઇ 乳歯の固定 写真ઈ 歯の保存液 写真ઉ 歯ブラシの口腔底への刺入事故 (東京女子医科大学 佐々木亮氏提供)

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歯ブラシによる口腔粘膜外傷の大部分は自然 治癒するものも多いが,なかには深部に達す る症例もあり,内頸動脈損傷や閉塞による脳 梗塞,晩期合併症の感染症による膿瘍形成な どがある。 ઄.歯ブラシによる受傷(写真ઊ) 山口25),大久保ら26)の報告でも小児外傷 の原因としては高い頻度であったと述べてい る。長野県佐久地方における宮沢ら9)の 歳 時までの調査では顎顔面部に受傷経験のある 305人中「口にものをくわえての受傷」経験 は口腔領域(頰粘膜,口唇,上下顎)に受傷 した130人中82人(63.1%)にみられ,歯ブ ラシによる受傷は11人(15.7%)であった。 このような外傷は直接的な受傷原因は転倒な どにより惹起されるものの,玩具,歯ブラシ が介在することにより外傷を増加,重症化さ せる一因となっており,特に 歳未満の発 達・成長途上にある幼児に起こりやすい特徴 を有している。齲蝕予防のための歯ブラシ習 慣は大切な生活習慣の一つではあるが,医療 機関ネットワーク27)には歯ブラシをくわえ て転倒するなどして,外傷を負った報告が平 成22年12月から平成25年までに50件寄せられ ている。また,小児科学会「傷害速報」,東 京消防庁などにも同様の報告28)があり,歯 ブラシが頰部,軟口蓋,咽頭に刺さり,手 術・入院となる重大事例が多数報告されてい る。「歯ブラシ突き刺し事故」を防ぐ対策を とった商品も販売され,持ち手に「つば」を つけることで,先端が咽頭に届かないように しているものや,持ち手をリング状にして, 口の中に深く入らないように工夫しているも のなどがある。日常的に子どもの身の回りに 存在し,硬さのある棒状の歯ブラシはそれほ ど危険とは思わないことが多いが,危険であ るという認識を持ち,歯磨きの際には保護者 が付き添い,転倒などに注意を払いながら行 う必要がある。 Ⅳ.児童虐待と外傷 わが国での口腔外傷による虐待の報告はわ ずかであるが,海外では多くの報告がみられ る。身体的虐待を受けた児童の約半数に顔 面,口腔に外傷が認められていることから, 日常の臨床において注意を要する。顎顔面口 腔領域の外傷がみられる場合は,保護者の言 動や行動を注意深く観察する必要がある。口 腔・咽頭外傷の多くは近親者の目が届かない ところで発生していることが多く29),近親 者から詳細な情報が得られずに受傷機転や損 傷の程度が不明な場合が多い。なお,本邦で は稀であるが,小児の口腔・咽頭外傷で近親 者から情報が得られない場合,欧米では虐待 も念頭におかねばならないという意見が散見 される30)。本邦の児童虐待防止にかかわる 法律では,医師も通告の義務があることか ら,現症の正確な把握にとどまらず,処置を 施すにあたっては記録が重要となる。 おわりに 運動機能の発達途上にある小児は,行動範 囲の拡大,活動量の増加,子どもを取り巻く 写真ઊ 安全を考慮した歯ブラシ

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環境等,外傷に遭遇する機会が多い。女性の 社会進出に伴い子どもの数は減少傾向にある が,一方では保育所入居希望児の増加によ り,保育園の「長時間保育」の需要は増加傾 向にあり,保育時間は長くなりつつある。園 児一人当たりの居住空間が小さくなり保育環 境の悪化も指摘されている31)。環境的要因 とともに子ども特有の敏捷性,反射性の低下 などの身体上の拙劣さも報告され,このよう な状況のなかで歯の外傷も今後減少は期待で きない。近年では児童虐待や逸脱した「教育 的」指導による「けが」等の増加も指摘され ている。今後,プライマリ・ケアの観点から 生理学的反応機能や運動機能の発達過程と外 傷の状況,実態を把握し,そのなかで外傷予 防方策の確立が必要となり,保育現場に対 し,外傷に関する知識を広めていく啓蒙活動 の重要性が示唆された。それとともに,子育 て環境整備の重要性を考えると,行政,地域 一体となった包括的なサポートが必要であ る。 文 献 1)前田隆秀,朝田芳信,田中光郎,宮沢裕夫,渡 部 茂:小児の口腔科学,第 版,学建書院, 東京,p.301〜311,2011 2)田中哲郎,石井博子:わが国における乳幼児事 故の実態調査―全国病院における14,612例の分 析.平成年度厚生省心身障害研究「乳幼児死 亡 の 防 止 に 関 す る 研 究」報 告 書,p. 76〜82, 2000 3)田中哲郎,小林正子:小児事故の全国調査の詳 細分析に関する研究結果の概要.平成10年度厚 生省厚生科学研究「小児の事故とその防止に関 する研究」報告書,p.257〜266,1999 4)田中哲郎:保育園における事故防止と危機管理 マニュアル,改訂第三版,日本小児医事出版 社,東京,p.18〜46,2006 5)小児歯科学会:小児の歯の外傷の実態調査,小 児歯誌 34:1〜10,1996 6)三宮恵子,安藤智博,宮国泰史他:過去 年間 の当教室における小児顎顔面口腔外傷の臨床統 計観察.日口外誌 29:674〜678,1983 7)間下喜一,太田一夫,山本和子他:本学小児歯 科に来院した外傷患者の実態調査.過去年間 の臨床的観察と予後について.小児歯科学誌 18:541〜547,1980 8)松田貴絵,竜 佑宗,下村―黒木淳子:本学小 児歯科における過去 年間の口腔外傷に関する 実 態 調 査.小 児 歯 科 学 雑 誌 51 (1):8〜20, 2013 9)宮沢裕夫,鈴木秀人,奥山秀樹他:長野県佐久 地方における小児の顔面,頭部,歯の外傷につ い て の 実 態 調 査.松 本 歯 学 18:250〜258, 1992 10)岩本正生,細谷養幸,咲間 茂他:過去年間 の町田市民病院口腔外科における小児顎顔面外 傷の臨床統計的観察.歯学 75(3):466〜467, 1987 11)越前和俊,及川 桂,土田秀三他:小児の顎顔 面 外 傷 に お け る 臨 床 統 計 的 観 察.日 口 外 誌 24:1301,1978 12)上野 正:前歯外傷とその発生原因ならびに関 連 外 傷 に つ い て.歯 界 展 望 32:197〜203, 1968 13)赤坂守人,中島一郎,内田 淳:小児の歯・口 腔・顔面の外傷の実態調査.平成 年度 厚生 省心身障害研究「地域:家庭環境の小児に対す る 影 響 に 関 す る 研 究」報 告 書,p. 200〜205, 1990 14)谷 和俊,竹川政範,松本 章他:旭川医科大 学歯科口腔外科における小児の口腔顎顔面外傷 に つ い て の 臨 床 的 検 討.小 児 口 外 20 (1): 37〜43,2010 15)稗田豊治他:歯の外傷の頻度・原因・受傷状 態・年齢別データ.DENTAL DIAMOND 13 (2):14〜18,1988 16)市原左知子,今井隆生,神谷祐二他:多施設に おける小児の顎顔面口腔外傷の臨床統計的観 察.小児口外 15:13〜19,2005 17)五十嵐良夫,小林 登,鴨下重彦共著:人体成 長に発育区分,成長,成熟の評価,小児科学 版,医学書院,p.29〜37,1987 18)池田孝雄,楠田千春,割田ひろ子他:小児の永 久歯外傷に関する実態調査と臨床観察.小児歯 誌 33:484〜502,1995 19)石川雅章,佐藤公子他:乳歯外傷に関する臨床 的研究 第 報 後継永久歯へ与える影.小児 歯誌 28:397〜406,1990

20)Ryo Sasaki, Hiroto Uchiyama, Toshihiro Okumo-to:A toothbrush impalement injury of the floor of mouth in autism child. Dental Traumatology 29:467〜468, 2013

21)Randall DA and Kang DR:Current manage-ment of penetrating injuries of the soft palate. Otolaryngology Head and Neck Surgery 135: 356〜360, 2006

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MS:Management of Penetrating Trauma to the Soft Palate:A Case Report. J Oral Maxillo-fac Surg 65:1279〜1285, 2007 23)山本 潤,黒田 徹:歯ブラシによる口腔・咽 頭外傷例の検討.小児耳 32(3):393〜400, 2011 24)山本英雄,沢井清治,山中一茂他:小児頬粘膜 外傷例.日口外誌 36:182,1990 25)山口 泰,橋本 渉,阿部洋一郎他:小児の口 萱損傷に関する臨床的観察.日口外誌 25: 106,1979 26)大久保雅基,横林敏夫,清水 武他:歯ブラシ による幼児の口腔軟組織損傷例の臨床統計的観 察.日 本 口 腔 外 科 学 会 51 (12):630〜633, 2005 27)消費者庁独立行政法人国民生活センター医療機 関ネットワーク.http://www.caa.go.jp /safet y/pdf/130328kouhyou_1.pdf 28)東京消防庁<安心・安全>日常生活における事 故 情 報.http://www. tfd. metro. tokyo. jp/lfe/ topics/201406/hamigaki.html

29)城 有美,浅井康一,矢野 潤他:歯ブラシに

よる口腔内刺傷により,広範な深頸部・縦隔気 腫を来した例.小児科臨床 59(9):2067〜 2070,2006

30)Lim R, Peddle M:Penetrating pharyngeal injury in an infant. CMAJ 177 (11):1351〜 1352, 2007 31)白須賀明子,浅里 仁,井上美津子他:歯の外 傷の実態調査―保育園と幼稚園に対するアンケ ート調査―.小児歯科学雑誌 42(3):412〜 417,2004 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

参照

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