(2017年7月)
ハイチ共和国・政治・経済・社会情勢月報
1 政治(内政・外交)
(1)モイーズ大統領による緊急事態宣言 ●5日 上院における緊急事態宣言の承認(18名のうち,賛成17名)を受け,モイーズ(Jovenel MOISE) 大統領は,ニップ県,南県,グランダンス県を緊急事態(90日間),及び全国を環境緊急事態(3 0日間)とする大統領令を発出。本宣言は,当局に例外的で極めて広範な権限を与え,迅速な手続き により資金運用を可能にするほか,国際社会に対してアピールを発出できる。2010年改正の20 08年緊急事態宣言法では,当局は,自然災害時における国家対応計画に基づく措置の実施を指示す る,資金支出に係る非公開手続きの適用,必要な支出を実施する等と定められている。 (2)中国によるスポーツ用具寄贈 ●7日 フロルヴィル(Mario FLORVIL)青少年・スポーツ・市民活動省(MJSAC)事務次官等の出席 のもと,リン・ジュン(Ling JUN)中国貿易発展事務所常駐代表は,ハイチ=中国間協力としてス ポーツ用具を寄贈。同寄贈品は,ボール,ジャージ,サッカーシューズ,バスケットボール等の18 品目である。フロルヴィル事務次官は,中国の率先した行動を評する一方,リン・ジュン常駐代表は, 同寄贈品が若年層のハイチ人の体格形成やトレーニング条件の改善に役立つことを期待していると 述べるほか,体育とスポーツ開発をつなげる重要性を再確認し,学校におけるスポーツの再開を同省 に呼びかけた。<要点>
【政治】
●モイーズ大統領による緊急事態宣言(5日)
●中国によるスポーツ用具寄贈(7日)
●ハイチ軍の新兵採用試験(10日~)
●台湾滞在における査証手続きの免除(13日)
●ペトロカリベ基金運営問題:倫理・汚職防止委員会による調査(11日~)
●台湾との協力関係(18日)
●最低労働賃金に係る大統領令の公布(28日)
【経済】
●6月インフレ率,前年同月比15,8%
●コペンハーゲン・コンセンサスの報告書公開
●国連とのハイチ開発支援枠組み5か年計画への署名
●2017-2018年度の各国保健分野支援予定額(20日)
(3)ハイチ軍の新兵採用試験 ●10日 国防省は,ハイチ軍(FAD‘H)再編に向けた新兵採用試験の実施を一般市民等に公表。採用試験 に向け,本年7月17日~21日の午前9時~午後3時にかけて,レオガンとグレシエの境界にある 同省の訓練センターで,入隊希望者は必要書類を提出する。入隊の基準として,(1)ハイチ国民,(2) 独身,(3)18歳~25歳(2017年10月時点で満18歳),(4)心身ともに健康,(5)最低 でも新規中等教育Ⅱ(NSⅡ)への合格,(6)知的・身体検査への合格が挙げられた。ドゥニ(Herve DENIS)国防大臣は,モイーズ新政権の任期満了時には3,000名の兵士を召集したい旨述べる ほか,既にエクアドル等で訓練を受けた150名の兵士が,グレシエとアルチボニットにある2つの 拠点において実働していることを明かした。 ●25日 ルイサン(Dieudonne LOUICIN)大佐は,新兵採用試験の応募期間を25日まで延長し,応募を締 めきったところ,女性200名以上を含む2,250名からの応募があったと明かした。同大佐はこ れらの若者は,軍隊に加わることで自分たちの国に奉仕することを望んでいるとし,大勢の応募に驚 きを見せなかった。ルイサン大佐は,今後の採用試験の流れについて説明し,「今後,おそらく10 月に始まる研修までに結果が出る」と述べた。マルスラン(Louis Daniel MARCELIN)国防省事務 次官は「我々は,自分たちの知っている軍隊とは異なる,非政治的な軍隊の設立に向け取り組んでい る」と述べるほか,予算に関しては,法律を通過させ,国防に必要な資金を確保するよう議会に働き かけていると強調した。軍再編の脅威に注意を払う声が上がっているなか,若者は入隊する機会を得 るために行列をなしたものの,新たな軍隊に方向性を与える国のすべての勢力と議論しなければなら ない。 (4)台湾滞在における査証手続きの免除 ●13日 在ハイチ台湾大使館は,ハイチとの友好関係を強化し,2か国間の文化・商業的交流を促進するため, ハイチ一般旅券を有する国民は,2017年7月12日から,90日以内の台湾滞在における査証手 続きを免除される。同免除は,台湾の出入国管理局を通過する際に,6か月以上の有効期間を有する ハイチ一般旅券に適用される。また,帰国若しくはその他目的地の査証を有している場合,該当する 目的地までの航空券または乗船券を有していること,台湾の出入国管理局の違反者リストに載ってい ないことが適用の条件である。 (5)ペトロカリベ基金運営問題:倫理・汚職防止委員会による調査 ● 昨年8月にラトルチュ(Youri Latortue)上院倫理・汚職防止委員長(当時。現上院議長)が上院に 提出した「ペトロカリベ基金運営に関する報告書」において,2009年から2015年の間に同基 金の運用に際して25億米ドルの損失が発生し,詳細な調査が必要であるとの指摘がなされた。その 後,本年3月,ラトルチュ上院議長から上院議員に対する調査継続の指示を受け,上院倫理・汚職防 止委員会により,当該期間の首相,大臣を含む同基金関係者への調査を継続してきた。
●11日 上院倫理・汚職防止委員会による非公開の参考人招致に応じたベルリーブ(Jean Max BELLERIVE) 元首相は,(ペトロカリベ基金を使用した)総額40百万米ドルの3案件について,公募なしに外国 企業と契約を交わしたことを認めたが,ラトルチュ上院議長の調査報告書に記載されているような違 法な手段ではなかったとし,また横領した事実もないと主張した。 ●12日 参考人の1人であったクラウス(Eberwein KLAUS)社会経済支援基金(FAES)元事務局長が, マイアミのホテルの一室で頭部に銃弾を受け,死亡していることが明らかになった。マイアミ・デイ ド郡当局によれば,死因は自殺であるとされる。一方で,ラトルチュ上院議長は「クラウス氏から極
めて重要な情報を聴取しており,倫理・汚職防止委員会からの求めがあれば情報を共有する準備があ る。」と述べた。同上院議長によれば,FAESは2012年と2015年にそれぞれ27百万ドル と30百万ドルの資金をペトリカリベ基金から受領している。 ●13日 ラモット(Laurent LAMOTHE)元首相は,倫理・汚職防止委員会による参考人招致に応じた。2 012年5月から2014年12月の同首相任期中の案件であるトゥサン・ルヴェルチュール高校, アレクサンドル・ペチョン高校,フォンタマラ市場,シテ・ソレイユのジェレミー埠頭の建設等の緊 急契約について,日付を実際より前に偽っており,調達法違反にあたると2016年のラトルチュ上 院議長の調査報告書は指摘している一方,元首相は,当該契約は全て会計・行政訴訟高等裁判所(C SCCA)の承認の下,緊急事態期間中に行われたとして,報告書の指摘には根拠がないと主張した。 また,委員会は同首相在任中,5案件に対し約688百万米ドルの支出が承認されたとしているもの の,同首相は承認額が668百万ドルであると主張し,双方の認識に食い違いが見られた。 ●21日 セレスタン(Jude CELESTIN)氏(LAPEH党党首,前大統領選挙候補)は,国立重機センター(C NE)元代表として非公開で行われた同会合の参考人招致に応じ,2008年から2009年にCN Eに配分された約80百万米ドルの使用について説明した模様。セレスタン氏は,委員会から重機の 調達資金に直接関与していたかを問われたが,否定したと述べた。 ● ラトルチュ上院議長は当地ラジオ番組(ラジオスクープFM,マジック9)に出演し,「この(腐敗 の)状況を止め,法に反した者は有罪に処するために調査を実施しなければならない。そうでなけれ ば,ハイチは破滅国家だ」と述べ,調査の重要性を強調したほか,8月10日までに倫理・汚職防止 委員会は上院に調査報告書を提出し,その後同報告書を司法機関に送る予定であると述べた。 (6)台湾との協力関係 ●18日 フルーラン(Aviol FLEURANT)計画・対外協力大臣は,地理経済的側面からの二国間協力関係の 再定義を目的に,胡正浩(Cheng-Hao Hu)在ハイチ台湾新大使と会談を行った。会談の中でフルー ラン大臣はハイチ政府の優先課題に沿った二国間関係の再定義が必要であるとし,「2030年まで に新興国入りするため,ハイチは実現性と持続性があり,借款に軸を置いた,持続的な開発を保証す る事業を実施していく必要がある」と協調した上で,無償資金を排除することなく長期貸付を実施す る必要性を訴えた。 ●18日 オーギュスト(Stephanie AUGUSTE)在外自国民大臣は同省次官と共に,台湾への元国費留学生総 会に参加し,台湾が毎年ハイチ人留学生を国内の有名大学に受け入れ,質の高い教育を施しているこ とに謝意を述べた。大臣はまた,台湾で学位を取得した若者等に対しその知識を公的業務に活かすよ う,また(帰国留学生の)雇用戦略について同省に相談するよう呼びかけた。胡台湾大使は,台湾の ハイチに対する支援と友好関係を再確認するとともに,近々新たに19名の国費留学生が台湾に向け て出発すると発表した。 (7)最低労働賃金に係る大統領令の公布 ●28日 モイーズ(Jovenel MOISE)大統領は最低労働賃金に係る大統領令(アレテ)を公布し,各分野別に, 1日8時間労働あたりの最低労働賃金の基準を改定した。産業団地に拠点を構える輸出向け組み立て 加工業者等に所属する労働者は,最低労働賃金を800グルドに引き上げるため,デモ等を実施した ものの,300グルドから350グルドへ引き上げるに留まった。
2 経済(開発協力)
(1)コペンハーゲン・コンセンサスの報告書公開 ● 5月以降,シンクタンクのコペンハーゲン・コンセンサスは,ハイチ・プライオライズ(Haiti Priorise) プロジェクトの成果及び報告書を公表し,経済学的な視点からハイチにおいて費用対効果のよい優先 すべき施策を示した。最優先すべき分野と施策として,電力改革,児童栄養,予防接種の3分野を挙 げ,上位5位の最優先施策は,(1)電力利便性の改革,(2)微量栄養素を含む小麦粉の強化,(3) 早期児童(発達の)促進,(4)初期対応者の訓練,(5)母子保健であるとした。 (2)国連とのハイチ開発支援枠組み5か年計画への署名 ● 6月30日,ハイチ政府と国連は,2017年から2021年に係る持続的な開発支援枠組みへの署 名を行った。同枠組みは,2030年までに新興国入りすると共に持続可能な開発目標(ODD)を 履行するとのハイチ政府の目標を支援するもので,2008年に同枠組みが署名されて以降初めての ものである。同枠組みにおける5つの優先分野である基礎的社会サービス,貧困削減,雇用,強靱性, 男女平等,ガバナンスの各プロジェクトを実施し,開発目標を達成するには10億ドル以上(11. 最低労働賃金に係る大統領令(2017年7月28日付官報) 分野A(400グルド):民間電力企業,金融機関(銀行,送金業者,保険業者),通信事業者,輸出入貿 易企業,スーパーマーケット,装身具業者,アートギャラリー,(家具,事務用備品,家電製品等の)動 産業者,情報通信機器販売業者,レンタカー会社,航空輸送企業,(ビジネスメール,小包,貨物等の) 宅配業者,ロト・宝くじ・カジノ等取扱業者,車のディーラー,(コミュニティ出版社を除く)メディア 関連企業,民間教育機関,民間大学機関,診療所,総合病院,葬儀業者,海運・空運代理業者,専門家及 びコンサルタント事務所,旅行代理店,不動産業者 分野B(350グルド):建設業・公共事業関連企業,トラック及び重機レンタル会社,建設材料レンタ ル会社,建設材料輸送会社,金物業者,その他(分野A以外の)金融機関(協同組合/信用組合,マイク ロクレジット業者),卸売業者,化粧品業者,衣料品業者,水の量り売り及び配達業者,陸運業者,(印刷, 複写,コンピューターグラフィック,版画等の)情報技術サービス業者,美容院,マッサージ業者,(ラ ンドリー,ドライクリーニング等の)衣料品洗濯業者,(鉱山,採掘場等の)採掘産業事業者,国内市場 向けの製造業者,(炭酸飲料,ジュース,水,ビール等の)瓶詰め産業事業者 分野C(290グルド):ホテル・レストラン業者,農業・林業・畜産業・漁業関連企業,農産加工業者, (スーパーマーケット,装身具業者,化粧品業者,衣料品業者を除く)小売業者,(工芸品,皮革製品等 の)商店,海運業者,コミュニティ出版社,その他の非市場サービス業者(国内および国際NGOなどの 非営利団体,財団法人,協会,生産協同組合,非金融サービス等) 分野E(200グルド):使用人 分野F(350グルド):輸出向け組み立て加工業者,その他輸出向け 製造業者 分野G(300グルド):民間警備会社,給油関連企業 分野H(350グルド):私立職業訓 練学校,(10名以上を雇用し,入院サービスを提供している)民間医療機関08億ドル)が必要とされる。
(3)2017-2018年度の各国保健分野支援予定額
●20日 2017-2018年度の各ドナーによる支援額及び重点支援内容計画の共有を目的に,第2回目と なる保健大臣主催の保健セクター会合が開催された。クレマン(Marie Greta Roy CLEMENT)保健・ 人口大臣は会合の冒頭,「保健政策と同分野における支出,これによって得られた結果に完全な一貫 性を持たせることが喫緊の課題である。保健セクターにおけるより効率的な支援を実現するためには, 透明性,継続的な対話,報告,同分野についてのビジョンが必要である」と述べ,同会合の重要性を 強調した。