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ロシア:カスピ海の天然ガスは欧州へ―EUに翻弄された「Nabucco計画」―

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ロシア:カスピ海の天然ガスは欧州へ

-EUに翻弄された「Nabucco計画」-

2013年9月19日

本村眞澄

欧州委員会(EC)の欧州のガス輸入増加予測 欧州の域内ガス生産は2002 年に53%であったものが2030 年には19%まで減少する。 EU は複数のソースから供給するTENs(Trans‐ European Networks)計画を立ち上げた。 「南回廊(South Gas Corridor)パイプライン」もその計画の一部。

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南回廊パイプラインにTAPを選定

• カスピ海のShah Denizガス田からのガスの欧

州輸出ルート(南回廊)に3計画乱立

– Nabucco:OMV(墺)主導、EU支援、消費者の立場 – ITGI(Interconnector Turkey‐Greece‐Italy):Edison 主導、ギリシャまで開通。2011年Nabuccoに吸収 – TAP(Trans Adriatic):Statoil(ガス田の生産者)主導

2013年6月:Shah Denizコンソーシアムは輸出PL計

画としてTAPを選択。理由は経済性。

• 注目点:EUの要請するアンバンドリング(生産

と輸送の分離)よりも、欧州企業は自己系列

のPL計画を選択

3 南コーカサス・ガス・パイプラインでShah Denizガス田 のガスを運ぶ(第1期65億m3+第2期160億m3)

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パイプライ ン Nabucco (Nabucco-West) Interconnect or Turkey- Greece-Italy(ITGI) TAP-Trans Adriatic Pipeline TANAP-Trans Anatolian Pipeline South Stream 工事開始 2013年 ? ? 2014 2012.12 操業開始 2017年 2016-2017 2015 2018 2015 事業者/パー トナー OMV(Austria) MOL(Hungary) RWE(Germany) Botas( Turkey) Transgaz(Romania BEH*(Bulgaria)各 16.6% Edison(50%), Depa、Botas EGL Statoil(42.5%) EGL(42.5%) E.On(15%) SOCAR(80%) Botas(15%) TPAO(5%) Gazprom (50% ) ENI( 伊20%) 、 EdF( 仏)15% Wintershall (独)15% 供給ガス田 Shah Deniz II Shah Deniz II(

8-12Bm3) ShahII(8-12Bm3)Deniz Shah DenizII West Siberia 積出し地点 Turkey Turkey Turkey, Kipoi

目的地/ 陸揚げ地点 Austria 南 イ タ リ ア San Foca 北Italy 南Italy 総延長 3,300km 陸上 ギ リ シ ャ ; 590km ギリシャ~トル コ;285km 海底:210km ギ リ シ ャ ・ ア ル バ ニ ア ・ ア ド リ ア 海 横 断:520km 海底:115km 詳細未定: アゼルバイジャ ン~ギリシャ 伊北部まで 1,300km ギリシャ 990km(黒海 902km) 容量 31Bm3、18Bm3 to Baumgarten 6.48-12Bm3 20Bm3 16Bm3将来60Bm3 63Bm3 口径 56” 32”~45” 48”(1,219mm) 圧力 15~8MPa 総費用 Eur79 億 ( $110 億) 海底:Eur3.5億

陸上:Eur6億 Eur15億 $100億 Eur155億($218億) 現況 2009年7月政府間合 意。2013年6月、落 選。 Azerbaijan-Italy ガ ス 供 給 MOU。 停止状態 2008 年 2 月 JV 設 立 。2013 年 6月ShahDeniz ガ ス の 輸 送 に TAPを選択 2011.12.26発足 2012.6.26 政 府 間合意 2012 年 11 月 に 投 資 決 定2012 年12月、工事開 始。 南回廊及び South Steam の諸元比較 5

欧州のガスパイプラインと南回廊

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Nabuccoパイプライン

2004年:コンソーシアム発足(墺,洪,羅,勃,土)

• 当初案:トルコ→バルカン半島→オーストリア

– 総延長3,300km、通ガス量310億m3/年、$79億 – 2009年7月:通過5か国政府間合意 – EUは「アンバンドリング」の代表案件として支持 – ガスソース不足。ロシア、イランのガスは不可。

• 縮小案(Nabucco West):

– 2011年12月:トルコ・アゼリがTANAP計画発表 – トルコ内から撤退。バルカン半島、南欧域のみ – 2013年6月、Shah Denizの輸出ルートに落選 • Nabuccoは黒海のガスPLに転戦 7

当初のNabucco計画(トルコ~墺)

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Nabuccoコンソーシアムの想定していた

天然ガスソース(ロシア、イランも)

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ITGI(Interconnector Turkey‐Greece‐Italy)

2005年:コンソーシアム発足(土、希、伊)

– トルコ→ギリシャ→イタリア 総延長1,085km – DEPA(希50%), Edison(伊50%)の参加企業 – 輸送量:100億m3/年 総工費:$13億(最も安価)

• ギリシャ向けITG区間(296km)を2007年に建設

– 輸送量:70億m3/年 – ギリシャ東部のKomotiniまで

2011年2月:EUは乱立気味の「南回廊」を整理

– ITGIとNabuccoを統合へ。Nabuccoを残す。

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ITGI(Interconnector Turkey‐Greece‐Italy)

ITG(Interconnector Turkey‐ Greece)区間のみ2007年に建設済み 11

TAP(Trans Adriatic Pipeline)

2003年:EGL(瑞)がTAP構想発表

– トルコ→南イタリア 635km 100億m3/年

2010年:EGL(42.5%),Statoil(42.5%),E.On(15%)

– StatoilはShah Denizガス田で25.5%。BPと並ぶ – TAPはShah Denizコンソーシアム直系のPL構想

–Shah Deniz:BP 25.5%, Statoil 25.5%, Socar 10%, Total 10%

– コスト最小、ビジネス志向が特徴

2013年6月:Shah DenizコンソーシアムはTAPを選択

– 新株主BP(20%), Socar(20%), Statoil(20%),  Fluxys(16%), Total(10%), E.On(9%), Axpo(5%)

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TAPのルート

TAPはITGの終点であるKomotiniを起点とする 13

SEEP(South East Europe PL)

2011年9月:Shah DenizコンソーシアムはNabucco, 

ITGI, TAPに替わり自ら土→墺PLを提案

– これも明確にアンバンドリングに対抗する案

• 総延長約800km、但し詳細ルートは未定

– 2017年160億m3で輸送、内100億m3が欧州へ

• 同時にShah DenizコンソーシアムはNabucco, ITGI, 

TAPに詳細事業計画の提案を求めた

– 自案と比較して経済性の良い案を採る

2011年11月:アゼリ、トルコのTANAP案で覆さ

れ、消滅

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TANAP(Trans‐Anatolian Gas PL)

2011年11月:アゼリ、トルコ両国政府が発表

2012年6月:両国の政府間合意

– 2017年160億m3で輸送、内100億m3が欧州へ

TANAPはSEEPメンバーを取り込み

– Socar (51%), Botas(15%), TPAO(5%), BP(12%),  Statoil(12%), Total(5%)となる – EUの支持したNabuccoは計画を縮小し、ブルガリ ア以遠の西半分のみでNabucco‐Westへ

2013年6月:南回廊はTANAP‐TAPで最終決着

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South Stream

2007年6月:露伊のNabuccoへの対抗策

– Gazprom(50%),ENI(20%),EdF(15%),Wintershall(15%) – 伊へ1,000km、墺へ1,300km、630億m3/年

2010年4月:通過7か国の政府間合意

– 墺, Bulgaria, Croatia, 希, Hungary, Serbia, Slovenia

2011年12月:ルート変更(TANAPと同時期)

– 南支線廃止。→ TAPとは競合せず – 北支線は墺でなく北イタリアへ。→ 競争相手なし

2012年11月:最終投資決定済み

2014年:工事開始予定

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南回廊ガスパイプラインの現状

欧州の天然ガス政策(1)

• 基本的考え:競争市場の促進

– 自由化が競争市場を創出し、産業の効率化とコス ト・販売価格の低廉化を促し、需要を増大させる

• 第1次エネルギーパッケージ:

– 1998年:「ガス指令」 – 以下は競争を阻害し自由化に反するので排除 • Take or Pay条項付長期契約 • 第3者転売を禁止した仕向地条項(Destination Clause) – Gazprom,Shellは大規模な新規投資を阻害と懸念

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欧州の天然ガス政策(2)

• 第2次エネルギーパッケージ

– 2003年:「石油・ガスの安定供給に関する指令」 ①小売市場の全面自由化 ②生産者と輸送者の分離(アンバンドリング) バリューチェーンを否定、消費側に有利 ③輸送手段への第3者アクセス – 一方、Take‐or‐Payに関しては容認へ

• 第3次エネルギーパッケージ:2009年7月

• 「法人分離」から「機能分離」へ緩和 – 2012年3月3日までに加盟国は国内法整備 19

2009年ウクライナ・ガス紛争との関連

• 2009年1月1日~19日:第2次ウクライナ・ガス紛争。 – ガス価格が$235と$250で決裂した後、Q1を$360で合意 • 1月23日:Nabucco関係5か国で「ウクライナ後」討議 • 1月27日:ブダペストで”Nabucco Summit”開催 • 3月20日:EU首脳、Nabuccoへ2億Eurの拠出金 – 3/23にEUがウクライナのPL改修で$26億拠出、露は酷評 • 5月8日:EUと旧ソ連6カ国で「東方パートナーシップ」 、「Nabucco支持宣言」採択。 • 7月13日:Nabuccoパイプラインに関する関係5か国 による政府間合意調印 • ウクライナのNabucco支持による対露牽制意図か 20

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まとめ

• 2013年6月、カスピ海Shah Denizからのガス の輸送 手段としてTAPが選ばれ、EUの推すNabuccoは敗退。 • TAPの高い経済性が勝因。政治は機能せず。 • EUが主張するunbundlingに対し、欧州企業側はチェ ーンビジネスにより得られる大きな利益と実務上の 安定操業を選択。 • ロシア・イタリアが進めてきたSouth Stream計画とっ て、バルカン半島においてNabuccoと戦う前に、 Nabucco計画自体が消滅し不戦勝。当面は、バルカ ン半島域へのガス供給を想定した唯一の計画。 • South StreamとTAPで南欧部を分け合う形で整備か。 21

参照

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