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あもんノート

ユークリッド幾何学、ニュートン力学から、相対論、量子論、素粒子 論、宇宙論、そして超ひも理論まで、理論物理学を簡潔にかつ幅広く網 羅したノートです。TOP へは下の URL をクリックして行けます。専用 の画像掲示板で、ご意見、ご質問等も受け付けております。 http://amonphys.web.fc2.com/

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目 次

第6章 リーマン幾何学 3 6.1 計量空間 . . . . 3 6.2 一般座標の例 . . . . 4 6.3 テンソル . . . . 5 6.4 共変微分と接続係数 . . . . 6 6.5 一般のテンソルの共変微分 . . . . 7 6.6 リーマン空間とテンソル定理 . . . . 8 6.7 計量条件と計量接続空間 . . . . 9 6.8 リーマンテンソル . . . 10 6.9 リッチテンソルとスカラー曲率 . . . 11 6.10 ビアンキ恒等式 . . . 11 6.11 体積要素 . . . 12 6.12 計量の微分公式 . . . 13 6.13 測地線 . . . 14 6.14 2次元球面 . . . 15 6.15 2次元リーマン空間の特殊性 . . . 16 6.16 負の曲率を持つ曲面 . . . 17 6.17 ニュートンの運動方程式の一般座標形式 . . . 18

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6

章 リーマン幾何学

リーマン幾何学は一般的な空間を記述するための数学で、特別な場合に従来の ユークリッド幾何学に帰着します。特殊相対論はミンコフスキー空間を、一般相 対論は曲がった時空を前提とするため、いずれにせよリーマン幾何学の理解が必 須になります。表記法の紹介もかねてここにまとめておきます。

6.1

計量空間

N 次元の空間(多様体)上に隣接した2点を考え、それらの座標を、順に、, + dxµ (µ = 1, 2, · · · , N) とします。座標の添字を上に付けるのは慣習で、累乗 の意味ではありません。このとき2点間の微小距離 ds が、 ds2 = gµν(x)dxµdxν で与えられるとします。縮約規則を用いています。場 gµν = gµν(x) を計量といい ます。一般性を失うことなく、対称性 : gµν = gνµ を仮定できるので、これを仮定します。このようにして距離の概念が導入された 空間は、一般に計量空間と呼ばれます。 計量の成分は座標の取り方によって変わりますが、空間の全体で定数になると き、すなわち ∂gµν/∂xλ = 0 のとき、この座標を直線座標といいます。直線座標 でない座標を曲線座標といいます。直線座標を取ることができる空間を平ら(flat) であるといいます。 特に gµν = δνµ を採用できる空間は、ユークリッド空間と呼ばれ、このときの座 標をデカルト座標といいます。ここで δνµ はクロネッカーデルタです。デカルト座 標は直線座標であり、よってユークリッド空間は平らということになります。 計量 gµν の逆行列を、添字を上付きにして gµν と表します : gµνgνλ = δµλ. いま、適当な上付き添字を持つ量 があるとき、計量を用いて、 = gµνAν

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で下付き添字の量 を定義します。この式の両辺に gλµ をかければ、左辺は gλµAµ. 右辺は gλµgµνAν = δνλAν = Aλ となるので、 = gλµAµ. よって一般に下付き添字は上付き添字の計量をかけることで上付き添字に戻せま す。これらの操作を添字の上げ下げといいます。添字の位置が定義と異なる場合、 暗黙にこの操作を行ったものと理解して下さい。

6.2

一般座標の例

一例として、2次元ユークリッド空間を考え、デカルト座標を (x, y) とします。 x0 = x − ay, y0 = y ( aは0でない定数) で斜交座標 (x0, y0) を定義すると、微小距離の式は、 ds2 = dx2 + dy2 = (dx0+ ady0)2 + dy02 = dx02 + (1 + a2)dy02+ 2a dx0dy0 ですから、x1 = x0, x2 = y0 という対応において、斜交座標の計量は、 g11 = 1, g22 = 1 + a2, g12 = g21 = a となります。∂gµν/∂xλ = 0 なので斜交座標は直線座標です。 また、3次元ユークリッド空間を考え、デカルト座標を(x, y, z) とします。

x = r sin θ cos φ, y = r sin θ sin φ, z = r cos θ,

0 ≤ r < ∞, 0 ≤ θ ≤ π, 0 ≤ φ < 2π

で3次元極座標 (r, θ, φ) を定義すると、微小距離の式は、

ds2 = dx2 + dy2+ dz2

= (sin θ cos φ dr + r cos θ cos φ dθ − r sin θ sin φ dφ)2 + (sin θ sin φ dr + r cos θ sin φ dθ + r sin θ cos φ dφ)2 + (cos θ dr − r sin θ dθ)2 = dr2 + r22 + r2sin2θ dφ2 と計算されるので、x1 = r, x2 = θ, x3 = φ という対応において、極座標の計 量は、 g11 = 1, g22 = r2, g33 = r2sin2θ (他の成分は0 ) となります。∂gµν/∂xλ 6= 0 なので極座標は曲線座標です。

(5)

計量の非対角成分(µ 6= νにおけるgµν) が全て 0 になる座標は、直交座標と呼 ばれます。上の例において、極座標は直交座標ですが、斜交座標は直交座標でな いことがわかります。デカルト座標は直交座標です。 いま、3次元ユークリッド空間の中に埋め込まれた半径 r の2次元球面を考える と、この2次元空間は、3次元極座標における2つの角変数 (θ, φ) により張られ、 微小距離の式は、 ds2 = r22 + r2sin2θ dφ2 ( rは定数) ということになります。(θ, φ) は2次元球面座標と呼ばれます(図6.1)。 図 6.1: 2 次元球面座標 2次元球面に2次元デカルト座標を張ることは不可能であることが章の後半で証 明されます。すなわち2次元球面は非ユークリッド空間の簡単な一例です。

6.3

テンソル

一般座標変換を考えると、座標の微分形式 dxµ は、偏微分の性質から、 dx0µ = ∂x0µ ∂xν dx ν という変換則に従います。また、座標による偏微分演算子 ∂µ = ∂/∂xµ は、 µ0 = ∂xν ∂x0µ ∂ν という変換則に従います。そこで一般に、 T0µν···λ··· = ∂x ∂xρ ∂x0ν ∂xσ · · · ∂xκ ∂x0λ · · · T ρσ··· κ···

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という変換則に従う量 Tµν···λ··· をテンソルと呼びます。特に添字が1つの場合、そ れが上付きなら反変ベクトル、下付きなら共変ベクトルと呼びます。dxµ は反変ベ クトルです。添字を持たないテンソルは不変量を意味することになりますが、こ れはスカラーと呼ばれます。微小距離 ds は座標に依らない不変量なのでスカラー です。 テンソル同士の積は再びテンソルになります。例えば、テンソルAµν, Bν があっ て、これらをかけあわせ、 = AµνBν を定義します。いうまでもなく、この式 の右辺は添字 ν について和を取るわけですが、このような添字の対は上下に現れ るように配置されているものとします。このとき、 C0µ = A0µνBν0 = ∂x0µ ∂xρ ∂x0ν ∂xσA ρσ ∂xλ ∂x0ν = ∂x0µ ∂xρ ∂xλ ∂xσA ρσB λ = ∂x ∂xρ δ λ σAρσBλ = ∂x0µ ∂xρ A ρσB σ = ∂x0µ ∂xρ C ρ ですから、確かに はテンソルです。これを積の定理といいます。逆に Cµ, Bν がテンソルなら Aµν がテンソルであることも証明できます。これを商の定理とい います。 商の定理と計量の定義から、計量 gµν はテンソルです : gµν0 = ∂xρ ∂x0µ ∂xσ ∂x0ν gρσ. このため計量は、計量テンソルとも呼ばれます。さらに、 δµν = ∂xρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xσ δ σ ρ が成立するため、クロネッカーデルタ δµν もテンソルです。このことと商の定理か ら上付き添字の計量 gµν もテンソルであることがわかります。また、積の定理と 添字の上げ下げの規則から、テンソルの添字を上げ下げして得られる量が、再び テンソルになることもわかるでしょう。

6.4

共変微分と接続係数

スカラー場 φ = φ(x) の座標偏微分 ∂µφ を作ると、これは共変ベクトルになり ます : µ0φ0 = ∂x ν ∂x0µ ∂νφ. しかし反変ベクトル場 = Aµ(x) の座標偏微分はテンソルになりません : µ0A0ν = ∂x ρ ∂x0µ ∂ρ µ ∂x0ν ∂xσ A σ ¶ = ∂x ρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xσ ∂ρA σ + ∂xρ ∂x0µ 2x ∂xρ∂xσ A σ.

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第2項があるためこれはテンソルではないわけです。そこでこの第2項を打ち消す ような新しいベクトルの座標微分を次のように定義します : ∇µAν = ∂µAν + ΓνλµAλ. ∇µ を共変微分(演算子)といい、Γνλµ を接続係数といいます。接続係数がしかる べき変換をすることで、∇µAν がテンソルになると考えるわけです。このため接 続係数はテンソルではあり得ません。計算の演習もかねて、接続係数の変換式を 求めてみましょう。 共変微分の式はダッシュ系において (∇µAν)0 = ∂µ0A0ν + Γ0νλµA0λ. よって、 ∂xρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xσ ∇ρA σ = ∂xρ ∂x0µ ∂ρ µ ∂x0ν ∂xσ A σ ¶ + Γ0νλµ ∂x0λ ∂xσ A σ∂xρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xσ ¡ ∂ρAσ + ΓσλρAλ ¢ = ∂xρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xσ∂ρA σ + ∂xρ ∂x0µ 2x ∂xρ∂xσA σ+ Γ λµ∂x ∂xσA σ. 左辺の括弧を展開すると、第1項は右辺第1項と相殺し、第2項においては添字 σ, λ を入れ換えて、 ∂xρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xλ Γ λ σρAσ = ∂x ρ ∂x0µ 2x ∂xρ∂xσ A σ + Γ λµ∂x ∂xσ A σ となります。 は任意のベクトルであり、全ての項に共通なので消すことができ、 ∂x0λ ∂xσ Γ λµ = ∂x ρ ∂x0µ ∂x0ν ∂xλ Γ λ σρ− ∂x ρ ∂x0µ 2x ∂xρ∂xσ. 辺々に ∂xσ/∂x0κ を乗じて、 Γ0νκµ = ∂x ∂xλ ∂xσ ∂x0κ ∂xρ ∂x0µ Γ λ σρ ∂x σ ∂x0κ ∂xρ ∂x0µ 2x ∂xσ∂xρ を得ます。これが接続係数の変換式で、右辺第2項の存在により、接続係数はテン ソルではないわけです。ただし線形変換に限って考えれば、あたかもテンソルの ように変換されることもわかります。

6.5

一般のテンソルの共変微分

一般のテンソルの共変微分を作るために、次の要請をします : スカラーの共変微分は座標偏微分と等価: ∇µφ = ∂µφ.

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例えば を共にベクトルとするとAνBν はスカラーだから、要請より、 ∇µ(AνBν) = ∂µ(AνBν). この式の左辺は、共変微分のライプニッツ則の要請と反変ベクトルの共変微分の 式から、(∂µAν + ΓνλµAλ)Bν + Aν∇µBν. 一方、右辺は (∂µAν)Bν + Aν∂µBν とな るので、 ΓνλµAλBν + Aν∇µBν − Aν∂µBν = 0. 後ろ2項の添字 νλ に取り替えれば をくくり出せて、 は任意だから、 ∇µBλ = ∂µBλ− ΓνλµBν を得ます。これが共変ベクトルの共変微分です。 2階テンソル Cµν についてはAµ, Bν を共にベクトルとして、Cµν = AµBν とお けば、やはり共変微分の公式を作れます。このようにして、結果、一般に次のよ うになります : ∇µTνρ···σ··· = ∂µTνρ···σ···+ ΓνλµTλρ···σ···+ ΓρλµTνλ···σ···· · · − ΓλσµTνρ···λ···· · · . 添字の位置がややこしいですが、よく眺めると簡単な規則性があります。テンソ ルでない量の共変微分は定義されません。

6.6

リーマン空間とテンソル定理

空間に直線座標が張れるなら、その座標において接続係数は 0 に定義されるの が普通で、これを自然な接続といいます。 任意の点の近傍で局所的に直線座標が採用でき、このときその点において接続 係数が0になると仮定された計量空間は、リーマン空間と呼ばれます。すなわち リーマン空間とは、座標変換により、任意の1点で ∂λgµν = 0 かつ Γλµν = 0 を実 現できる空間です。例えばユークリッド空間に埋め込まれた空間はリーマン空間 とみなすことができます。 以下、リーマン空間について考えていきます。 あるテンソルがあって、それが ∂λgµν やΓλµν をあらわに(微分なしで)含む項だ けに展開できるとき、そのテンソルは全空間で 0 です。なぜなら仮定から、任意 の1点でそのテンソルが 0 になるような座標を選ぶことができますが、テンソル の変換性から、ある座標で 0 ならばどの座標でもそれは 0 になるはずです。この ことは空間上の全ての点についていえるので、そのテンソルは恒等的に 0 である とわかります。これをテンソル定理と呼びましょう。

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6.7

計量条件と計量接続空間

計量はテンソルなので、その共変微分を考えることができます。それは、 ∇λgµν = ∂λgµν − Γρµλgρν − Γρνλgµρ = ∂λgµν − Γνµλ− Γµνλ となります。テンソル定理からこれは 0 です : ∇λgµν = 0 すなわち ∂λgµν = Γµνλ+ Γνµλ. これは計量条件と呼ばれます。計量条件は、計量が共変微分に対して “定数なみ” であることをいっています。 次にスカラー場 φ の2階共変微分を考えましょう。∇νφ = ∂νφ が共変ベクトル であることに注意して、 ∇µ∇νφ = ∂µ∂νφ − Γλνµ∂λφ. この式の添字 µ, ν を交換した式を考え、この式から引くと、偏微分は可換だから、 (∇µ∇ν − ∇ν∇µ)φ = (Γλµν − Γλνµ)∂λφ. テンソル定理からこれは 0 で、∂λφ は任意だから、 Γλµν = Γλνµ がいえます。すなわち接続係数は後ろの2つの添字について対称です。 計量条件の式(その後式)から、 −∂λgµν + ∂νgλµ+ ∂µgνλ = −(Γµνλ + Γνµλ) + (Γλµν + Γµλν) + (Γνλµ+ Γλνµ) ですが、接続係数の対称性に注意すると右辺は 2 Γλµν と整理されるので、 Γλµν = 1 2(−∂λgµν + ∂νgλµ+ ∂µgνλ) を得ます。これがリーマン空間における接続係数の式で、右辺はクリストッフェ ル記号と呼ばれます。計量だけから接続係数を導くことができる空間を、一般に 計量接続空間といいます。リーマン空間は計量接続空間の一例です。 (余談) リーマン空間の仮定をせず、計量条件だけを仮定した計量空間は、リーマン・カルタン 空間と呼ばれます。リーマン・カルタン空間では接続係数の添字の対称性が成り立たず、このため 接続係数を計量だけで書き表すことができなくなります。すなわちリーマン・カルタン空間は計量 接続空間ではありません。このような空間には “捩れ” と呼ばれる構造があると考えられ、スピノ ルを含む重力理論、例えば超重力理論などではこのような時空が仮定されます。

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6.8

リーマンテンソル

反変ベクトル の2階共変微分の式を作ってみましょう。µ, ν の対称項を随時 まとめて、 ∇µ∇νAρ = ∂µ∇νAρ− Γλνµ∇λAρ+ Γρλµ∇νAλ = ∂µ(∂νAρ+ ΓρλνAλ) + Γρλµ(∂νAλ+ ΓλσνAσ) + ( µνの対称項) = ∂µΓρλνAλ + ΓρλµΓλσνAσ + ( µνの対称項) = (∂µΓρσν + ΓρµλΓλνσ)Aσ+ ( µνの対称項). よって µ, ν を交換した式と差をとれば、 (∇µ∇ν − ∇ν∇µ)Aρ = RρσµνAσ, Rρσµν = ∂µΓρσν + ΓρµλΓλνσ − ( µνを交換した項) = ∂µΓρσν − ∂νΓρσµ + ΓρµλΓλνσ− ΓρνλΓλµσ を得ます。商の定理から Rρσµν はテンソルで、これをリーマンテンソルと呼び ます。 直線座標においては明らかにリーマンテンソルは 0 になります。テンソル性を 加味すれば、直線座標を張ることのできる空間においてはリーマンテンソルは全 空間で 0 になります。対偶をとれば、リーマンテンソルが 0 でない空間には直線 座標を張れない、すなわちその空間は平らでなく曲がっているということです。こ の意味で、リーマンテンソルは曲率テンソルとも呼ばれます。 リーマンテンソルの最初の添字を下付きにすれば、 Rρσµν = gρλRλσµν = gρλ∂µΓλσν + gρλΓλµτΓτνσ − (µν交換) = ∂µΓρσν − (∂µgρλλσν + ΓρµτΓτνσ − (µν交換) = 1 2∂µ(−∂ρgσν + ∂νgρσ + ∂σgνρ) − (Γρλµ + Γλρµλσν + ΓρµλΓλνσ − (µν交換) = −1 2∂µ∂ρgσν + 1 2∂µ∂σgρν − ΓλρµΓ λ σν − (µν交換). この式を注意深く眺めれば、次の対称性がわかるでしょう : Rρσµν = −Rρσνµ = −Rσρµν = Rµνρσ, Rρσµν + Rρνσµ + Rρµνσ = 0. これら対称性のため、リーマンテンソルの独立な成分はみかけほどは多くありま せん。N次元の場合、少なくとも左式より Rρσµνρ, σ および µ, ν についてそ

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れぞれ反対称で、(ρ, σ)(µ, ν) の組について対称ですから、N(N − 1)/2 次の対 称行列と同じで、その独立な成分は、N (N − 1)(N2 − N + 2)/8 個です。よって N = 2 で 1個, N = 3 で 6個, N = 4 で 21 個という具合です。N = 4 のときは 上の右式によりさらに1個減ります。

6.9

リッチテンソルとスカラー曲率

リーマンテンソルの添字を縮約し、 Rµν = Rρµρν で定義される量をリッチテンソルといいます(∗)。計量とリーマンテンソルの対称 性から、 Rµν = gρσRρµσν = gσρRσνρµ = Rνµ. すなわちリッチテンソルは対称テンソルです。また、リーマンテンソルの定義式 から、 Rµν = ∂ρΓρµν − ∂νΓµ + ΓρΓρµν − ΓρσµΓσρν, Γµ = Γννµ と表されることがわかります。Γµ は接続係数の添字を自然に縮約した量です。こ の式とリッチテンソルの対称性から ∂νΓµ = ∂µΓν であるはずですが、これについ ては後でより直接的な形で確かめます。 リッチテンソルの添字をさらに縮約し、 R = gµνRµν = Rµµ で定義される量はスカラー曲率と呼ばれます。名前の通りこれはスカラーで、採 用する座標に依存しません。 (*注) 文献によってはリッチテンソルを Rµν = Rρµνρ で定義します。これはここでの定義と符 号だけ異なります。

6.10

ビアンキ恒等式

次にリーマンテンソルの共変微分の式を作ってみましょう。それは、 ∇λRρσµν = ∂λ∂µΓρσν − ∂λ∂νΓρσµ + ( Γをあらわに含む項) という形になります。よって ∇λRρσµν + ∇νRρσλµ + ∇µRρσνλ という式を考えれ ば、これは Γ をあらわに含む項だけで表され、テンソル定理から 0 です : ∇λRρσµν + ∇νRρσλµ+ ∇µRρσνλ = 0.

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これはビアンキ恒等式と呼ばれます。 ビアンキ恒等式に δρµ を乗じると、リーマンテンソルの対称性に注意して、 ∇λRσν − ∇νRσλ+ ∇µRµσνλ = 0 となりますが、さらに gσν を乗じると、計量が共変微分に対して定数なみである ことに注意して、 ∇λR − 2 ∇νRνλ = 0 ∴ ∇ν µ λ 1 2δ ν λR= 0. よって、 Gµν = Rµν 1 2g µνR でアインシュタインテンソルを定義すると、 ∇µGµν = 0 です。これをアインシュタインテンソルに関するビアンキ恒等式といいます。こ の恒等式は特に一般相対論で重要となります。

6.11

体積要素

N 次元計量空間の体積要素は、通常、 dv = dNx で定義されます。ここで、 = p| det g| . g は計量が作る行列、det g はその行列式です。また、 dNx = dx1 ∧ dx2 ∧ · · · ∧ dxN. および dNx は、一般座標変換に対し、 √0 = ¯ ¯ ¯ ¯ det∂x∂x0 ¯ ¯ ¯ ¯ および dNx0 = det∂x 0 ∂x d Nx と振舞うため、体積要素 dv は符号の不定性を除き座標に依存しません。 特にN次元ユークリッド空間においては、デカルト座標を として、dv = dNx. また、3次元ユークリッド空間における3次元極座標 = (r, θ, φ)µ においては、

= p| det g| = q| 1·r2·r2sin2θ | = r2sin θ

に注意して、dv = √ d3x = r2sin θ dr ∧ dθ ∧ dφ です。 はユークリッド幾何学に

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6.12

計量の微分公式

ここで計量に関する微分公式をいくつか紹介しておきます。 gµνgνσ = δµσ の変分を取ると、 gνσδgµν + gµνδgνσ = 0 ∴ gµρgνσδgµν + δνρδgνσ = 0 ∴ δgρσ = −gρµgσνδgµν. これが上付き計量の微分公式です。一方、行列式の行列各成分による微分はその 行列の余因子で、余因子行列=行列式×逆行列なので(ユークリッド幾何学の章 参照)、 ∂ det g ∂gµν = det g gµν. よって、 ∂√ ∂gµν = 1 2√ ∂| det g| ∂gµν = 1 2√ | det g| g µν = 1 2 gµν. 特に座標偏微分において、 ∂µ√ = ∂√ ∂gρσ ∂µgρσ = 1 2 gρσ µgρσ = 1 2 gρσ ρσµ+ Γσρµ) = Γµ です。 これを用いると、一般にベクトル に対して、 µAµ = √(∂µAµ + ΓµνµAν) =√∂µAµ+ (∂ν√)Aν = ∂µ(√Aµ). 同様に、2階の反対称テンソル Fµν について、 µFµν = ∂µ(√Fµν). さらに、2階の対称テンソル Tλµ について、 µTλµ = ∂µ(√Tλµ) − 1 2 λgµνTµν という関係が示せるでしょう。 また、 ∂µΓν = ∂µ¡√−1∂ν√ ¢ = ∂µ∂ν log より、 ∂µΓν = ∂νΓµ という対称性がわかります。

(14)

6.13

測地線

リーマン空間における曲線の長さは、 I = Z ds = Z r gµν dx µ dxν . ここで λ は曲線上のパラメータです。いま、曲線の端の2点が定まっているとし、 曲線の長さを最小にしたいとします。そのような曲線はどのように与えられるで しょうか? これは変分法の問題です。そのためには、曲線 xµ(λ) に任意の仮想変 分 δxµ(λ) を与え、このとき積分が停留値性 : δI = 0 を持っていることが必要です。このような停留値性をもつ曲線を測地線といいま す。測地線が満たすべき方程式を導出してみましょう。 I の式の被積分関数の変分を計算すると、 δ r gµν dx µ dxν = 1 2 µ gρσ dx ρ dxσ −1/2 δ µ gµν dx µ dxν ¶ = 1 2 ds µ ∂λgµνδxλ dxµ dxν + 2gµν dxµ dδxν ¶ = 1 2∂λgµν dxµ ds dxν δx λ+ g µν dxµ ds dδxν = 1 2∂λgµν dxµ ds dxν δx λ d µ gµλ dx µ dsδxλ+ d (· · · ). 最後の全微分項は積分をとったときに落ちます。そこで δxλ の係数をさらに整理 していきます。 1 2∂λgµν dxµ ds dxν d µ gµλ dx µ ds ¶ = 1 2∂λgµν dxµ ds dxν − ∂νgµλ dxν dxµ ds − gµλ d2xµ dλds = 1 2 ¡ ∂λgµν − ∂νgµλ− ∂µgνλ ¢ dxµ ds dxν − gµλ d2xµ dλds = −Γλµν dx µ ds dxν − gµλ d2 dλds. よって結局、 δI = − Z µ gλµ d 2xµ dλds + Γλµν dxµ dxν dsδxλ

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を得たことになります。δxλ(λ) は任意ですから、測地線の満たすべき方程式は、 gλµ d 2xµ dλds + Γλµν dxµ dxν ds = 0. あるいはこれに gρλdλ/ds をかけて、 d2xρ ds2 + Γ ρ µν dx µ ds dxν ds = 0 となります。 特にユークリッド座標においては、d2xρ/ds2 = 0 となり、これは直線の方程式 に他なりません。測地線は、ユークリッド空間における直線を拡張した概念なの です。

6.14

2

次元球面

簡単で自明でないリーマン空間の例として、2次元球面を考えてみましょう。 球面座標を (θ, φ) とすると、線素の式は、 ds2 = r22 + r2sin2θdφ2 でした。r は球の半径で、定数です。θ = x1, φ = x2 という対応で、計量は、 g11 = r2, g22 = r2sin2θ, g12 = g21 = 0. 上付き計量は、 g11 = 1 r2, g 22 = 1 r2sin2θ, g12 = g21 = 0. 計量の座標偏微分で 0 でないものが、 1g22 = ∂r2sin2θ ∂θ = 2r 2sin θ cos θ だけであることに注意すると、接続係数は、 Γ122 = −1 21g22 = −r 2sin θ cos θ, Γ 212 = Γ221 = 1 21g22 = r 2sin θ cos θ で、他の成分は 0 です。添字を上付きにしたものは、

Γ122 = g11Γ122 = − sin θ cos θ, Γ212 = Γ221 = g22Γ212 = cos θ

sin θ

で、他の成分は 0 です。また、Γµ = Γννµ に対し、

Γ1 = Γ221 = cos θ

(16)

リッチテンソル Rµν = ∂ρΓρµν − ∂νΓµ + ΓρΓρµν − ΓρσµΓσρν は、 R11 = −∂1Γ1 − (Γ221)2 = 1, R22 = ∂1Γ122+ Γ1Γ122− 2 Γ122Γ212 = sin2θ となり、非対角成分は 0です。もしリーマンテンソルの全ての成分が0 なら、リッ チテンソルの全ての成分が 0 になるはずです。2次元球面でそうでないことは、2 次元球面が曲がっている(平らでない)ことを意味します。 スカラー曲率は、 R = gµνRµν = g11R11+ g22R22 = 2 r2. 球面は至るところ同じように曲がっているので、スカラー曲率が定数になるのは 当然と考えられます。 測地線の方程式 : d 2xρ ds2 + Γ ρ µν dx µ ds dxν ds = 0 は、θ = 一定 のもとで、 sin θ cos θ µ ds2 = 0, d 2φ ds2 = 0 を与えるでしょう。よって地球表面の緯度線を考えると、赤道(θ = π/2)は測地線 ですが、他の緯度線は測地線でないことがわかります。 (余談) 球の中心を含む平面と球面の交線は円になりますが、このような円は大円と呼ばれます。 球面における測地線は大円に他なりません。地球を真球と考えると、赤道は地球の大円の一つに なります。また、国際線の飛行機の航路は、おおよそ大円に沿ったものになります。それが 2 地点 を結ぶ最短経路だからです。緯度線や子午線 (経度が一定の線) を直線として表すメルカトル図法 においては、これら航路はしばしば大きく曲がって表示されます。例えば、東京とヨーロッパを結 ぶ航路は、ロシアの北部、北極海近くを通ります。

6.15

2

次元リーマン空間の特殊性

上の2次元球面座標のリッチテンソル、スカラー曲率から、さらにアインシュタ インテンソル Gµν = Rµν − (1/2) gµνR を計算すると、その成分が全て 0 である ことが簡単に確かめられますが、これはたまたまではありません。一般に2次元 リーマン空間のアインシュタインテンソルは恒等的に 0 なのです。以下、その証 明です。 [証明] 2次元リーマン空間のリーマンテンソルは、その対称性から、2次元レビ・ チビタ ²µν を用いて、 Rρµσν = R1212²ρµ²σν と表されるので、リッチテンソルは、 Rµν = gρσRρµσν = gρσR1212²ρµ²σν = R1212(˜g−1)µν.

(17)

ここで ˜g−1 は計量の逆行列 g−1 の余因子行列で、余因子行列の性質から、 ˜g−1 = det(g−1)(g−1)−1 = 1 det g g. よって、 Rµν = R1212 det g gµν, R = g µνR µν = R1212 det g g µνg µν = 2R1212 det g が得られ(∗)Gµν = 0 が確かめられます。[証明終] アインシュタインテンソルが 0 でない成分を持つのは、3次元以上のリーマン 空間においてであるわけです。 (*注) 一般に gµνgµν = δµµ は空間の次元数になります。

6.16

負の曲率を持つ曲面

3次元ユークリッド空間のデカルト座標を (x, y, z), a を定数として、 z = axy で与えられる図形を考えると、これは a 6= 0 で図6.2に示すような曲面になりま す。原点 (0, 0, 0) は、この曲面上の点で、ある方向に関しては極大、別の方向に 関しては極小となっていて、よって原点付近でこの曲面は “馬の鞍” のような形状 になっています。このような点は鞍点と呼ばれます(英語では saddle point)。 図 6.2: 鞍点を持つ曲面 曲面の膨らんだ点(あるいは窪んだ点)におけるスカラー曲率が正になるのに対 し、鞍点におけるスカラー曲率は負になります。このことを上の曲面を例に確か めておきましょう。

(18)

曲面 z = axy 上の微小距離の式は、 ds2 = dx2 + dy2 + dz2 = dx2 + dy2 + (aydx + axdy)2 = (1 + a2y2)dx2 + (1 + a2x2)dy2 + 2a2xy dxdy と書けるので、x = x1, y = x2 という対応で、計量は、 g11 = 1 + a2y2, g22 = 1 + a2x2, g12 = g21 = a2xy. 上付き計量は、 g11 = 1 + a 2x2 1 + a2r2, g 22 = 1 + a2y2 1 + a2r2, g 12 = g21 = − a2xy 1 + a2r2. ここで r = px2 + y2. ここから接続係数を計算すると、 Γ112 = Γ121 = a 2y 1 + a2r2, Γ 2 12 = Γ221 = a 2x 1 + a2r2 で、他の成分は 0 になります。よってリッチテンソルの、特に (1, 1) 成分は、 R11 = −∂1Γ221− (Γ221)2 = − a2(1 + a2y2) (1 + a2r2)2 となりますが、2次元リーマン空間では前節で見たように Rµν ∝ gµν なので、 Rµν = − a 2 (1 + a2r2)2 gµν. よってスカラー曲率は、 R = gµνRµν = − 2a2 (1 + a2r2)2 となり、確かに a 6= 0 で負になります。

6.17

ニュートンの運動方程式の一般座標形式

1粒子のニュートン理論のラグランジアンは、粒子の質量を m, デカルト座標を Xi (i = 1, 2, 3), 外部ポテンシャルを U = U(X) として、 L = m 2 | ˙X| 2 − U. ドットは時間 t による微分です(解析力学の章参照)。そうすると、一般座標 xi に おいては、˙xi = dxi/dt の反変ベクトル性、ラグランジアンのスカラー性から、 L = m 2 gij˙x i˙xj − U

(19)

と書かれるはずです。gij = gij(x) は一般座標における計量です。このとき、 ∂L ∂ ˙xk = mgkj ˙x j, ∂L ∂xk = m 2 ∂kgij ˙x i˙xj − ∂ kU, d dt ∂L ∂ ˙xk = m ¡ ˙xi∂igkj ˙xj + gkjx¨j ¢ となるので、ラグランジュ方程式 : d dt ∂L ∂ ˙xk = ∂L ∂xk は、 m¡gkjx¨j + Γkij˙xi˙xj ¢ = −∂kU を与えます。これが一般座標におけるニュートンの運動方程式です。測地線の方 程式との類似性に注意。 一例として、3次元極座標 xi = (r, θ, φ)i を考えると、計量は、 g11 = 1, g22 = r2, g33 = r2sin2θ (他の成分は0 ). 接続係数は、 −Γ122 = Γ212 = Γ221 = r, −Γ133 = Γ313 = Γ331 = r sin2θ, −Γ233 = Γ323 = Γ332 = r2sin θ cos θ (他の成分は0 ) と計算されるので、ニュートンの運動方程式の k = 1, 2, 3 成分は、順に、 m ³ ¨ r − r ˙θ2 − r sin2θ ˙φ2 ´ = − ∂U ∂r, m ³ r2θ − r¨ 2sin θ cos θ ˙φ2 + 2r ˙r ˙θ ´ = −∂U ∂θ, m ³

r2sin2θ ¨φ + 2r sin2θ ˙r ˙φ + 2r2sin θ cos θ ˙θ ˙φ ´

= −∂U

∂φ

(20)

索 引

あ アインシュタインテンソル . . . 12 鞍点 . . . 17 か 球面座標 . . . 5 共変微分 . . . 7 共変ベクトル . . . 6 曲線座標 . . . 3 曲率テンソル . . . 10 距離 . . . 3 クリストッフェル記号 . . . 9 計量 . . . 3 計量空間 . . . 3 計量条件 . . . 9 計量接続空間 . . . 9 計量の微分公式 . . . 13 さ 自然な接続 . . . 8 斜交座標 . . . 4 商の定理 . . . 6 スカラー . . . 6 スカラー曲率 . . . 11 積の定理 . . . 6 接続係数 . . . 7 接続係数の式 . . . 9 添字の上げ下げ . . . 4 測地線 . . . 14 た 大円 . . . 16 体積要素 . . . 12 平ら . . . 3 直線座標 . . . 3 直交座標 . . . 5 デカルト座標 . . . 3 テンソル . . . 6 テンソル定理 . . . 8 な 捩れ . . . 9 は 反変ベクトル . . . 6 ビアンキ恒等式 . . . 12 微小距離 . . . 3 ベクトル . . . 6 や ユークリッド空間 . . . 3 ら リーマン・カルタン空間 . . . 9 リーマン幾何学 . . . 3 リーマン空間 . . . 8 リーマンテンソル . . . 10 リッチテンソル . . . 11

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