IH クッキングヒーターは本当に住みやすく
安全である生活空間をつくりだせるのか?
1 章 はじめに 1 調査の目的 近年、住宅会社などが大々的に宣伝を行っている「オール電化住宅」。これは、床暖 房 等多種の電化製品を用いて、安全性、居住性に優れた住宅をつくりだすという仕組み で ある。その中核を担う「IH クッキングヒーター」(電磁調理器具)は、ガスを用いず に 電気の力で調理することができるため、大幅に火災を減少することができるという。 しかし、その一方で、この調理器具も含め、電化製品の多くは電磁波によるガンの発 生が指摘されている。 そこで、賛否両論多いこの IH クッキングヒーターの安全性、居住性、そして、それ に 関連する電磁波の問題について分析してみたいと思う。 2 調査の方法 (1) オール電化住宅を取り扱う企業、その他の関連するホームページ (2) 電磁波に関するホームページ (3) 関連する文献 2 章 IH クッキングヒーターのメリット まず、電力会社等が主張している主な IH クッキングヒーターのメリットについて 紹介しよう。 1 火事を減少させることによる安全性の増加 <平成 15 年の出火原因ごとの火災発生状況> まず、この調理器具のその安全性の高さの理 原因別 件数 構成比 放火 8,227 14.6% コンロ 5,856 10.4% 放火の疑い 5,755 10.2% たばこ 5,317 9.4% たき火 2,883 5.1% 火あそび 1,976 3.5% ストーブ 1,877 3.3% 電灯・電話等の配線 1,465 2.6% 火入れ 1,100 2.0% 配線器具 1,024 1.8% マッチ・ライター 944 1.7% 由は上記に記した通り、ガスを用いないことに ある。これは電気の力による調理、また、セン サーで火事、火傷などの事故を減らすことによ り従来よりも高い安全性を兼ね備えた次世代 型 の調理器具だといえる。 平成15年は56,329件もの火災が発生してお り、コンロによる火災はこのうち5,856件で全 体の10.4%にあたる。これだけ多くの火災がこ んろによって起きているというのが現状であ る。コンロがIHクッキングヒーターに完全に 取って代わることにより、これだけの数の火災 が無くなるとすると、これはかなりの安全性を電気機器 885 1.6% 排気管 841 1.5% 溶接機・切断機 614 1.1% 灯火 576 1.0% その他 10312 不明・調査中 6,677 11.9% 計 56,329 誇るということになる。 (総務省消防庁調べ) 2 空気汚染を減少させ ることによる安全性の増 加 プロパンガス(LPG)が燃えるときの化学反応式は、下記のとおりである。 この反応式から、プロパンガスの燃焼時には 5 倍の酸素が必要であることが分かる。 空気中の酸素濃度は 20%であるから必要な空気の量は 10 倍となる。居室内では更に多 く の酸素が必要であるから、燃焼のない電気コンロや蓄熱暖房機は部屋が汚れないばか り でなく、湿度や酸素濃度の変化が少ないので非常に居心地が良い。 また、気密・断熱の高い住宅等でガスコンロや石油ストーブを使うと燃焼ガス(窒 素酸化物、一酸化炭素、炭化水素など)が部屋に充満したり低酸素状態になり、頭がぼ ー っとしたりする。一般にアレルギーは食物やダニが原因とされているが、根本は低酸 素 症と言われている。そのため子どもが感染症にかかったり、お年寄りの方が咳き込む と いう影響がある。 3 経済面のメリット まず、IH クッキングヒーターに代わることによって月々のガス代がすべて浮くこと になり、調理の際の電気代を考えてもコストは安くなる。さらに、一般的に電気コンロ の 方が寿命は長く、しかもそれぞれの発熱効率と燃焼効率を比べると、ガスの方が燃焼 を 伴う分、時間の経過とともに早く衰え劣化する。 このようにメリットだけをみてみると、IH クッキングヒーターは非常に安全かつ理 想的な器具ではないかと思える。 3章 IH クッキングヒーターのデメリット(1) さて、次は前項で紹介したメリットを全面的に否定するような IH クッキングヒータ ーのデメリットについて紹介しよう。
1 上昇気流が発生しない 電気クッキングヒーターでは、コイル の真上しか過熱できないため、鍋全体に な かなか熱が伝わらない。そのため、調 理に時間がかかり、素材のうま味や水分 が流れ 出てしまう。 また、煮汁の対流は、外向きで遅く、 円 も小さいので、味が均一にしみたおい しい 煮物も期待できない。鍋全体を包み 込む力 強い加熱も、じっくり仕上げる加 熱も、上 昇気流が発生するガスならでは のことな のである。 さらに、電気クッキングヒーターは上 昇気流が起こりにくいため、換気扇を使 用 してもキッチンに煙やにおいが残りや す くなる。 2 IH クッキングヒーターによる火災につ いて 火災がないというのが 1 つのメリット であったが、実際には IH クッキングヒーター による火災が発生したことがある。 「神戸市西区のワンルームマンションで、揚げ物をするために IH クッキングヒータ ーで天ぷら鍋を加熱中に突然、鍋の中の天ぷら油が発火し、台所の一部を焼損する事案 が あった。現場にて、火災時と同量の 200CC の天ぷら油を鍋に入れ、再現実験を行っ たと ころ、開始からわずか 3 分 14 秒で油の温度が 387℃に達し発火した。天ぷら鍋の 鍋底の 形状をよく観察すると、見た目は平らに見えるものの、計測すると端部から中央 部にか けて約 2mm 浮いており、センサー部に鍋が完全に接触していない状況が確認さ れた。」 (神戸市消防局の HP より引用) これは正確には IH クッキングヒーターに根本的な原因があるのではなく、誤った使用 法による火災であった。取り扱い説明書にはセンサー部に鍋が完全に接触しない鍋は使 わないよう書かれている。 しかし、わずか 2mm の隙間で火災が起こってしまうのでは、実用に値しないような 気がしてしまう。 3 使い勝手の悪さ 前項で述べたように、IH クッキングヒーターには使用できない鍋が存在する。使用 できる鍋はセンサー部に完全に接触する鍋、つまり鍋底が平たいもので、直径が 12∼ 26cm のサイズのものしか使用できない。したがって鍋底が丸い中華鍋等は使えない。 他にも材質によって不向きなものがある等ガスこんろと比較して使い勝手が悪いという 面もあるようだ。
4 章 IH クッキングヒーターのデメリ ット(2) (電磁波の危険性) 次は、IH クッキングヒーターだけで なく、全ての電化製品に関係する最大の 問題と考 えられる電磁波の発生ついて 紹介しよう。 1 電磁波の発生 まず、電磁波は電流が流れるところ には必ず発生する。電流が流れると電場と磁場が 発生し、この二つが組み合わさって波 をつくる。これを電磁波というのである。電磁波 は、周波数の違いによってその性格に 違いがあり、高周波のものから順番に並べると、 ①ガンマ線、エックス線などの電離放射線 ②紫外線、可視光線、赤外線などの光の仲間 ③電波 の三つに分類される。 このうち、現在、問題になっているのは、電離放射線や紫外線などの光の仲間ではな く、これまでほとんど問題にされてこなかった波長の長い電波の領域である。電磁波に は、電気と磁気の両方の性格があるが、磁気は人体と空気の透過率が同じ位であるため 、 身体の中に入ってきてしまう。 2 電磁波による身体への影響 電磁調理器がつくる変動磁場は、鍋を加熱するだけでなく、人の身体にも入ってきて 誘導電流をつくり、その誘導電流が身体の内部に熱を発生させる。しかもその効果は、 発 熱だけでなく、非熱作用ももたらす。 非熱作用とは、変動磁場が免疫機構やホルモ ンバ ランスなどに影響を与えることである。10 数年前から、欧米の多数の学者が、こ の影響 と被爆の実態を調査研究している。その結果、様々な悪性腫瘍(脳腫瘍・白血病 ・小児が ん・肺がん・乳がん・子宮がん・睾丸腫瘍等)、乳児突然死、ダウン症、流産、 早産、精 子減少、痴果症、アルツハイマー等を誘発するというショッキングな研究報告 が発表さ れ,国連の WHO(世界保健機構)も 1996 年から調査研究をスタートした。 ここで、ガンと電磁波の関連性についての研究結果を見てほしい。しかし、この研究 での電磁波は比較的高周波に属する放送タワーによるものである。 ■ホッキング論文 オーストラリアのブルース・ホッキング博士は 1995 年 11 月米国の国際会議において下 記、疫学調査の研究結果を発表した。 ●調査地域: シドニー北部郊外の3つの放送タワー(4局のテレビ放送と1局のFMラ ジオ放送用)が集中する場所 ●期間: 1972 年∼90 年 ●調査対象: 14 歳以下の小児ガン
●比較対照: 放送タワー4 キロ以内(電 力密度 8.0∼0.02μW/cm2) の居住 者 放送タワー12 キロ以遠(電力密度 0.02 μW/cm2 未満)の居住者 ●結果: 12 キロ以遠に住む子供より 4 キロ以内に住む 子供に住む子供の死 亡率が変 動する。 ・リンパ性白血病 2.74 倍 ・全白血病 2.32 倍 ■ドルク論文 イギリスのサットン・コールドフィールドにある放送タワーの周辺2キロ以内で、急性 リンパ性白血病 2.56 倍、全白血病 1.83 倍と出たとする論文。(1997 年) しかし、いまだ電磁波によってガンが誘発されるという科学的根拠は見つかっていない。 ちなみに、現在の電磁波に対する世界の状況は、次のとおりである。 ① スウェーデンの規制ガイドライン 1990 年 VDT(パソコン,テレビのディスプレイ)から放出される電磁波は、前面から 30cm離れた位置で 2.0mG(ミリガウス)以下と規定。 2.0∼3.0mG を超える地域の幼稚園・保育所・学校などは閉鎖。 ② アメリカの NCRP(全米放射線防護委員会) 1995 年勧告案で『V2.0mG(ミリガウス)規制』を提唱。 米政府機関は 2.0mG(ミリガウス)以上の地域に、託児所・幼稚園・学校・遊び場な どの建設禁止の勧告案を発表。住宅・事務所等も、室内で 2.0mG(ミリガウス)以上被 爆 しないよう設計・建築されなけれぱならない。 ③ EU(ヨーロッパ連合) 1995 年電気製品の厳しい電磁波規制をスタート。 ④ WHO(世界保健機構) 1996 年 23 カ国の専門家による携帯電話や家電製品から出る電磁波が、人間の健康 に与える影響を 5 カ年計画で研究すると発表。 1998 年電磁波について、世界的研究をスタートさせると発表。 担当部門は、国際ガン研究機関(LARC) これに対し、日本は、今のところ人体に対する電磁波の規制も指針も無しといった状 況である。多くの科学者の研究を見れば、電磁波が人体に影響を与えることは一目瞭然 で あろう。科学的根拠がないからといって、日本はこんなに悠長に構えていて大丈夫な の
だろうか? 3 IH クッキングヒーター と電磁波 さて、電磁波について説明したところで、本題である IH クッキングヒーターとの関 連性について述べていこう。 IH クッキングヒーターは、調理器の中にあるコイルに電流を流すと、その周辺に磁 力線が発生し、その磁力線が鍋を通るときに誘導電流が発生し、さらに、その誘導電流 が 電気抵抗を受けてジュール熱を発生し、鍋自体が熱くなるという仕組みである。 ただここで、「誘導加熱」では強力な磁力線を鍋近辺に集中放出するが、多くは熱に 変換するため、強力な電磁波を放射する「誘電加熱」の電子レンジとは異なり、電磁波 の 放射は少ないという説がある。 しかし、電磁調理器は電子レンジとは異なり開放系で使用する。しかも使用時に電子 レンジやIH炊飯器とは異なり、人は器体から距離をとることができない。電磁波は確 実 に身体に入ってくるのだ。 電化製品の電磁波の発生量の一例 電気製品 主に使用する距離 電磁波発生量(※) IHクッキングヒーター 距離 5㎝ 真上中心部から後部 1300∼1800mG 正面 10㎝離れた時 60∼100mG 携帯電話 距離 0cm 80mG 電子レンジ 側面 1m 20mG 正面 1m 5mG ※ちなみに 1997 年にスウェーデンのフエイチング研究所は、2mG 以上の電磁波によ って急性白血病の発病増加率がおよそ 6.3 倍になると発表している。 上図より IH クッキングヒーターは他の電化製品とは比較にならないほどの多量の電 磁波を発生することがわかる。電磁波ががんなどの害を身体に与えるとすると、IH ク ッ キングヒーターは相当な害を身体に与え得るといえる。 5 章 考察・まとめ 1 これからの社会を生きる我々のあり方について 現代は、資源やエネルギーの問題などで電力の節約が求められている時代である。そ れなのに今以上の電力を必要とする社会を創り出すオール電化住宅はどうだろうか? そもそも現代技術というものは、メリットが存在する限り、もう一方で何らかのデメリ ッ トも存在するものだ。これから先、この社会を生きていく我々には、メリットを考え る とき、その裏に存在するデメリットも同時に考え、常にそれらを秤にかけた上で選択 す ることが求められるはずだ。
2 IH クッキングヒーターのこれから まず、調査の結果から述べると、現時点では IH クッキングヒーターの是非を決定す ることはできない。IH クッキングヒーターにはデメリットは存在したが、まだ新しい 器 具なのでオール電化住宅の中核として、これから多くの意見を元に更なる改良が重ね ら れるはずだと考えられる。その結果、3 章に記したデメリットは将来無くなるであろ う。 問題は、4 章に記した電磁波の問題である。なぜなら、IH クッキングヒーターか ら電磁 波の発生を取り除くのはその構造上不可能であるからだ。 しかし、電磁波は目に見えないものであるから、目に見えるメリットだけを見て、オ ール電化住宅を選ぶ人々はこれから増える一方だろう。そのため、科学者は一刻も早く 電 磁波がガンなどを誘発することの科学的根拠を発見することが求められる。そして、 日 本をはじめ他の国々は電磁波の悪影響をもっと国民に広く伝えて、その上でオール電 化 住宅を選ぶかどうかの選択をさせるべきである。オール電化住宅は、そういった選択 の 上で存在すべきものなのだ。 参考文献 扶桑工業 HP(http://www.alno-fuso.co.jp/) タナベエナジーHP (http://tanabe-e.notogawa.net/home.htm) 総務省消防庁 HP 神戸市消防局 HP ケータイ電磁波 Q&A(http://ktai-denjiha.boo.jp/faq/index.html) 日経新聞 1997/01/06 山崎智嘉『電磁波がわかる本』