中央大学商学部久保知一研究室第 4 期生卒業論文 1
プラットフォームにおける外部規制の有効性
-消費者のプラットフォーム利用意図の実証分析-
水沢綾花
中央大学商学部 久保知一研究室 第 4 期 E-mail: [email protected] 要約: 今日、プラットフォームビジネスが話題となっている。プラッ トフォームとは、異なる需要を持った第三者間の相互作用を促す基盤 を提供するような財やサービスのことであり、プラットフォームの例 としては、電話やIC カード、SNS、家庭用ゲーム機など様々なものが 挙げられる。プラットフォームではネットワーク外部性が働くため、 プラットフォーム企業は利用者数を増やし、利用者の満足度を高め、 更なる需要を得ようとする。しかし、ここで重要なのは、ネットワー ク外部性には負のネットワーク外部性も存在することである。ネット ワーク外部性は量だけでなく質も重要である。量を増やすことで提供 する商品・サービスの質が低下する。そのため、品質の低い商品・サ ービスによりユーザーが減っていくという負のネットワーク外部性が 働く可能性がある。よって、本論ではプラットフォーム企業が負のネ ットワーク外部性の働きを抑え、外部規制をする必要性を述べる。 キーワード:プラットフォーム、ネットワーク外部性、外部規制、 情報の非対称性、コンジョイント分析、分散分析1.
はじめに
本論の目的は、プラットフォーム (platform) の外部規制の有効性を示すことである。 既存研究では、外部規制について事例を基に研究が行われているが、本論では実証研究 を用いて外部規制の有効性を明らかにする1。プラットフォームは様々な定義付けがさ1 Boudreau & Hagiu (2008) において、Facebook、TopCorder、六本木ヒルズ、ハーバードビジネ
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れているが、本論においては「異なる需要を持った第三者間の相互作用を促す基盤を提 供するような財やサービス」とする (国領 1999) 。また、外部規制の定義は、「プラッ トフォームに参加する企業の企業行動のルール決めと制限」とする (Boudreau & Hagiu 2008) 。
近年、プラットフォームビジネスが注目を浴びているが、衰退してしまったプラット フォーム企業と成功を遂げたプラットフォーム企業には、いかなる違いが存在するのだ ろうか。直観を養うために、ゲーム産業を例に挙げてみよう (Boudreau & Hagiu 2008) 2。 1977年、アメリカのゲーム機メーカーのアタリは、カートリッジ型の家庭用ゲーム機を 発売し、1977年からの3年間で家庭用ゲーム機市場の80%を占めた。しかしその後、ア タリの了解を得ずにソフトを作成および販売するソフトウェア企業が続出し、1,000以 上のソフトが市場に出回った。そして、それらのソフトが粗悪だったためにソフトの価 格は暴落し、アタリは事実上倒産となった。この例では、アタリがプラットフォーム企 業としてソフトウェア企業の外部規制を行わなかったことにより、衰退していったこと が分かる。また、粗悪なソフトウェアが増えたことによりユーザーが減っていくという 負の間接的ネットワーク外部性が働いたと考えられる。 このように、第三者を野放しにしたままでは、サービス・製品の信頼性をなくす可能 性があるため、プラットフォーム企業は第三者の行動を制限しルール決めをする必要が ある。そのため、本研究では実証分析によって外部規制の有効性を検討する。 本論は以下のように構成される。第2 節では、プラットフォーム、ネットワーク外部 性、情報の非対称性に関する既存研究のレビューを行う。第3 節では、仮説を提唱し、 第4 節では調査設計および、分析結果の検討をする。そして最後の第 5 節においては、 本論の知見と今後の課題について言及する。
2.
先行研究
本節では、第1項にてプラットフォームについての先行研究を述べる。第2項では、ネ ットワーク外部性についての先行研究を記述する。最後の第3項においては、プラット フォームの外部規制の有効性に影響を及ぼすと考えられる情報の非対称性に関する先 行研究を検討する。 2-1. プラットフォーム プラットフォームはいくつかの種類に分類される。Hagiu (2007) によると、プラット フォームは、ワンサイドプラットフォーム 、ツーサイドプラットフォーム、マルチサ ム上で行われている外部規制について述べている。2 Boudreau & Hagiu (2008) においては、アメリカのゲーム企業であるアタリと任天堂を比較して
いる。任天堂は、ソフトウェア企業に対して任天堂独自の規定を設け、その規定をクリアしたゲ ームソフトのみを市場で販売した。そのため、アタリのような失敗を避けることが出来た。
プラットフォームにおける外部規制の有効性 3 イドプラットフォームの3 つに分けられる3 (図 1 参照) 。まず、ワンサイドプラットフ ォームはプラットフォームの中で一番シンプルな形態であり、特定の機能・サービスを ユーザーに提供している。次に、ツーサイドプラットフォームは、特定の機能・サービ スを提供するサイドが構成し、 ユーザーに提供している。最後に、マルチサイドプラ ットフォームは、多様なサービスをユーザーに提供している。Boudreau & Hagiu (2008) によると、マルチサイドプラットフォームは、相互作用と相互依存という特徴を持ち、多 くのプラットフォーム企業がこの形態を取っている。そのため、今回の研究においては プラットフォームで主流になりつつあるマルチサイドプラットフォームに着目し研究 を進めていく。 図1 プラットフォームの形態 また、前述した分類以外にも、プラットフォームはオープンプラットフォーム、クロ ーズドプラットフォームの2 つに分類することが出来る (Hagiu 2007) 。オープンプラ ットフォームは第三者である提携企業、消費者に外部規制を実施せず、プラットフォー ムを自由に利用させることである。反対に、クローズドプラットフォームはプラットフ ォームの利用に制限をかけることである。本研究においてはオープンプラットフォーム とクローズドプラットフォームの違いに着目し、外部規制のあり方について検討してい く。
クローズドプラットフォームで制限をかけることに関して、Parker & Van Alstyne (2008) は、適切な制限によって提携企業のイノベーションを管理し、利益を増加させ 3 ワンサイドプラットフォームの例としては、電話や FAX などが挙げられ、ツーサイドプラッ トフォームには、ゲーム機やクレジットカードなどが当てはまる。そして、マルチサイドプラッ トフォームには、スマートフォンやGoogle などの検索エンジン、SNS などが含まれる。 プラットフォーム 企業 プラットフォーム ワンサイド プラットフォーム ツーサイド プラットフォーム マルチサイド プラットフォーム ユーザー プラットフォーム ユーザー
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ることができると述べている。また、Iansiti & Levien (2004) では、プラットフォームを 生態系 (ecosystem) と呼び、食物連鎖のような循環をプラットフォーム企業と提携企業、 消費者間で行い、生態系を管理し健康を維持する必要があるとしている4。そして、Gawer & Cusumano (2002) では、プラットフォームがリーダーシップを獲得するために、内部 組織、企業境界、製品技術、補完業者という指標から、生態系を調整する必要があると 述べている。さらに、Farrell & Katz (2000) では、プラットフォーム企業を独占者 (monopoly) と表現し、プラットフォーム企業は効率的に利益を獲得することができ、 第三者を規制するインセンティブがあるとしている。 このように、多くの研究において、プラットフォーム企業が第三者を規制する必要性 が問われている。しかし、ここで問題となるのは、プラットフォームビジネス成功のキ ーとなるネットワーク外部性の存在である。ネットワーク外部性については次項で詳し く述べるが、プラットフォームは前述した既存研究にもあるように「生態系」と呼ばれ る程、プラットフォーム企業と提携企業、消費者間のバランスが重要となってくる。そ のため、一方が増大すれば他方も増大し、その逆も然りなのである。よって、クローズ ドプラットフォームにおける外部規制について、制限の程度やルールを慎重に決める必 要があると考えられる。 2-2. ネットワーク外部性 ネットワーク外部性とは、ある財のユーザーや、ある財に関わる補完財のユーザー数 が増加することによって、財から得られる満足度が増大する効果である (Katz & Shapiro 1985) 。また、ネットワーク外部性は直接的ネットワーク外部性 (direct effects) と間接 的ネットワーク外部性 (indirect effects) に分類される。直接的ネットワーク外部性は、 電話の利用者が多ければ多いほど、利用者の満足度が増大するというような効果のこと である。間接的ネットワーク外部性とは、ゲーム機のソフトなどの補完財が多いほど、 ユーザーの満足度が増大するというような効果である。これらを図で示すと、図2 のよ うになり、矢印がそれぞれのネットワーク外部性を表わしている。 そして、ネットワーク外部性には、正のネットワーク外部性と負のネットワーク外部 性が存在し、前項で述べた生態系の働きに類似する点がある。正のネットワーク外部性 が働くことで、電話の利用者が増大すれば利用者の満足度は増大し、更なる利用者を見 込むことが出来る。しかし、負のネットワーク外部性では、品質の低い補完財や悪質行 為などの倫理に反する行動をとる利用者が増えることで、ユーザーの満足度は下がり、 ユーザーが低減していく。そのため、プラットフォーム企業にとっては、いかに正のネ 4食物連鎖とは、生物群集内での生物の捕食、被食という点に着目し、それぞれの生物群集にお ける生物種間の関係のことを示している。また、生態系は、生産者、消費者、分解者に区分され、 それら三者がバランスよく存在することで生態系が成り立つ。そのため、Iansiti & Levien (2004) では、プラットフォームのことを生態系と示している。
プラットフォームにおける外部規制の有効性 5 ットワーク外部性を働かせ、第三者を増やしていくのかがプラットフォームを運営して いく上で重要な課題となる。 図2 直接的ネットワーク外部性と間接的ネットワーク外部性 2-3. 情報の非対称性 情報の非対称性 (asymmetric information) とは、市場の各取引主体が保有する情報 が不均衡であることを指す (Akerlof 1970) 。通常、買い手は商品に対する品質等の情報 について詳しく分からないが、売り手は詳しく把握している。このような情報の非対称 が生じている場合、取引主体のうち情報が少ない方が不利となり、市場における取引自 体が円滑に進まないことがある。プラットフォーム市場においても、商品・サービスの 情報が不十分である場合、取引が円滑に進まず、利用者が増加しないことが考えられる。 そのため、プラットフォーム企業は外部規制を実施し、情報の非対称性を緩和させるこ とによって、取引を円滑に進める必要がある。
3.
仮説提唱
本節では前節で述べた既存研究のレビューをもとに、プラットフォームの利用意図に 影響を及ぼすと考えられる要因を導出するとともに、独自の仮説を提唱する。 本研究の目的は、プラットフォームにおける外部規制の有効性を示すことであるため、 どのような要因が消費者のプラットフォームの利用意図に影響を及ぼすのか、仮説を立 てていく。まず、第1にネットワークの外部性に関する仮説を述べる。第2に、外部規制 に関する仮説を提唱する。 3-1. ネットワークの外部性に関する仮説 プラットフォームにおいて、ネットワークの外部性は重要であると考えられる。その 間接的ネットワーク外部性 直接的ネットワーク外部性 補完財 補完財 プラットフォーム ユーザー ユーザー プラットフォーム ユーザー ユーザー水沢綾花 6 ため、直接的ネットワーク外部性と間接的ネットワーク外部性についての仮説を提唱す る。 まず、直接的ネットワーク外部性についてだが、利用者数が多ければ多いほど利用者 の満足度が高まるので、プラットフォームにおいても、プラットフォームの利用者が増 えれば、ユーザーの満足度が高まると考えられる。そのため、以下の仮説を提唱する。 仮説1:利用者数は利用意図に正の影響を及ぼす。 次に、間接的ネットワーク外部性についての仮説を提唱する。間接的ネットワーク外 部性も、直接的ネットワーク外部性と同様に、その製品・サービスの補完財が増えるこ とでユーザーの満足度が高まる。そのため、ゲーム機のソフトウェアが多く存在するこ とや、スマートフォンのアプリが多数インストール出来ることは、消費者の満足度を高 めることが出来ると考えられる。よって、以下の仮説を提唱する。 仮説2:アプリ数は利用意図に正の影響を及ぼす。 3-2. 外部規制に関する仮説 プラットフォームにとって、外部規制を行うことは重要であると考えられる。もし、 プラットフォーム企業が外部規制を実施せず、ただ単にプラットフォームを運営してい るだけでは、プラットフォームが第三者をコントロールできずに衰退していくだろう。 また、そのようなプラットフォームでは負のネットワーク外部性が働く可能性がある。 外部規制を行わないと製品・サービスの品質を保てずに品質の低い補完財が増大し、ユ ーザーの満足度は低下する。そして、プラットフォームの利用者は減少する。そのため、 外部規制を実施することで負のネットワーク外部性が働くことを避け、プラットフォー ムの生態系としてのバランスも保つ必要があると考えられる。すなわち、外部規制の有 無は消費者の利用意図に影響を与えると考えられる。よって、以下の仮説を提唱する。 仮説3:外部規制は利用意図に正の影響を及ぼす。 また、ゲーム機のソフトウェアのように情報の非対称性があるものの場合は、情報の 非対称性がないものに比べて、プラットフォームおよび第三者にとって外部規制が重要 であると考えられる。なぜなら、Googleなどの検索エンジンのように製品・サービスを ユーザー自身が認識できるのであれば、外部規制の必要性は少ないが、不動産物件サイ トのように情報の非対称性がある場合、消費者は製品・サービスの質を認識できないま ま、取引を行わなければならない5。そのため、プラットフォーム企業が外部規制を実 施し情報の非対称性を緩和することで、消費者の信頼を得る必要があると考えられる。 5 不動産物件サイトは、不動産が提携企業となり消費者がインターネット上で物件を閲覧するこ とでプラットフォームが成り立つ。しかし、多くの不動産物件サイトでは外部規制が十分に行わ れておらず、搭載されている物件の情報が十分ではなかったり、正しい情報を掲載していない場 合がある。そのため、情報の非対称性の事例でよく取り上げられる中古自動車産業と似たような 状況になっている。
プラットフォームにおける外部規制の有効性 7 以上のことから次の仮説を提唱する。また、仮説4を図に示すと図3のようになる。 仮説4:外部規制がある場合、情報の非対称性がないときよりも情報の非対称性がある ときの方が、利用意図は高まる。 図3 仮説4モデル
4.
調査方法および分析結果
前節で提唱された仮説の経験的妥当性をテストするために、場面想定法による質問票 を用いた調査を行った。場面想定法とは、あるシナリオで描写された社会的場面の中に 自分がいると想定し、その場面での自分の認知、感情、行動などを推測することである (村田他 2007) 。本研究においては、外部規制の有無による消費者の利用意図の差異を 検証するため、スマートフォンの新規購買においてどういったスマートフォンを利用し たいかという場面を想定し調査を行った。そして、国内におけるスマートフォン所有者 の3 分の 1 が 20 歳代であるという調査結果と6、就職活動において、近年スマートフォ ンを利用する学生が多いことから、調査対象を東京都内の大学生とした。調査期間は 2011 年 12 月 22 日から 2012 年 1 月 6 日までとし、115 人にアンケートを配布した。回 収数は115 (回収率 100%) であり、回収されたアンケートから欠損値のあるものや著し く回答に隔たりがあるものを除くと、コンジョイント分析に用いるアンケートの有効回 答は95 (有効回答率 82.6%) であり、分散分析に用いるアンケートの有効回答は 109 (有 6日経BP コンサルティングが実施した「携帯電話・スマートフォン“個人利用”実態調査 2011」 によるものであり、調査概要は以下のとおりである。調査目的:携帯電話の個人利用実態とその 動向をまとめるため、回収数:11 区分の年齢区分 (15 歳以上から 5 歳刻み、65 歳以上は一括) に 対して男女それぞれ200 人ずつの計 4400、調査方法:Web アンケート調査、調査期間:2011 年6 月 22 日から 2011 年 6 月 27 日 利用 意図 外部規制なし 外部規制あり 情報の非対称性 あり なし水沢綾花 8 効回答率94.7%) であった。 第3 節で示された仮説の検証のため、統計ソフトである SAS 9.1 とIBM SPSS Statistics 19を用いてコンジョイント分析と分散分析を行った。コンジョイント分析で は仮説1、仮説 2、仮説 3 を実証し、分散分析においては仮説 4 を実証した。コンジョ イント分析においては、従属変数を「利用意図」とし、「外部規制」、「アプリ数」、「利 用者数」を独立変数とした。また、分散分析においてもコンジョイント分析と同様に、 従属変数は「利用意図」を用いる。そして、外部規制の有無を第一の分類変数とし、情 報の非対称性の有無を第二の分類変数とし、二元配置分散分析 (two-way Anova) を行っ た。 4-1. コンジョイント分析の結果 まず、モデルの全体的評価を行う。コンジョイント分析の結果、F 値=70.26、p 値は.000 であり、1%水準で有意であった。よって、モデル全体が信頼できるものと判断される。 モデル全体が信頼できると分かったため、続いて各パラメーターの評価を行う。モデル の全体および部分的評価は以下の表1 にまとめられる。「外部規制」属性の重要度は 43.453 であり、カテゴリーは「あり」の効用推定値が正の値であった (t=14.78、p<.01) 。 次に「アプリ数」属性の重要度は31.109 であり、カテゴリーは「100 社」の効用推定値 が正の値となった (t=5.805、p<.01) 。最後に、「利用者数」属性の重要度は 25.438 で あり、カテゴリーは「10000」の効用推定値が正の値となった(t=6.534、p<.01) 。また、 表1 から分かるように、「アプリ数」属性のカテゴリー「50」は t=1.356 となり非有意 となってしまったが、それ以外は1%水準もしくは 5%水準で有意となった。このこと から、仮説1、仮説 3 は支持されたといえる。仮説 2 に関しては、カテゴリー「50」が 非有意となってしまったが、カテゴリー「30」とカテゴリー「100」は有意となったた め、一部支持されたといえる。 表1 コンジョイント分析結果 属性 重要度値 カテゴリー 推定値 t 値 外部規制 43.453 あり なし 0.9337 -0.9337 14.786** -14.786** アプリ数 31.109 30 50 100 -0.7384 0.1398 0.5986 -7.161** 1.356 5.805** 利用者数 25.438 100 1000 10000 -0.4194 -0.2545 0.6738 -4.067** -2.468* 6.534** **1%水準で有意、*5%水準で有意
プラットフォームにおける外部規制の有効性 9 コンジョイント分析の結果から、消費者は「外部規制」、「アプリ数」、「利用者数」 のうち、「外部規制」を一番重視していることが分かった。次いで、消費者は「アプリ 数」、「利用者数」の順に重視している。 4-2. 分散分析の結果 分散分析では、仮説4 について検証する。コンジョイント分析同様、「利用意図」を 従属変数とし、分類変数を「外部規制」の有無、「情報の非対称性」の有無とし、二元 配置の分散分析を行った。 表2 分散分析表 ソース タイプ III 平方和 自由度 平均平方 F 値 有意確率 モデル 8486.477a 4 2121.619 1368.944 .000 情報の非対称性 464.450 1 464.450 299.679 .000 外部規制 573.394 1 573.394 369.975 .000 情報の非対称性 * 外部規制 .917 1 .917 .592 .442 誤差 669.523 432 1.550 総和 9156.000 436 a : R2 = 0.927 (調整済み R2 = 0.926) 分析の結果は表2、3、および図 4 のとおりである。情報の非対称性については、 F=1368.94、p<.01 となり 1%水準で有意となった。外部規制においても、F=299.67、p<.01 となり1%水準で有意な結果となった。交互作用においては非有意となったが、仮説 4 では外部規制がある場合の情報の非対称性の違いによる利用意図の差異をみているた め、仮説4 は支持された。
水沢綾花 10 表3 記述統計量 また、外部規制がない場合の利用意図の平均値は、情報の非対称性なし=1.91、情報 の非対称性あり=4.06 であり、その差は 2.15 となった。そして、外部規制がある場合 の利用意図の平均値は、情報の非対称性なし=4.29、情報の非対称性あり=6.27 であり、 その差は1.98 となった。 図4 分散分析結果
5.
本論の知見と今後の課題
近年、プラットフォームビジネスが話題となっているが、プラットフォーム企業は第 三者である消費者や企業をうまくコントロールしていく必要があるだろう。そのコント ロール方法もプラットフォーム企業によって多種多様であり、今後はどういった外部規 制が必要なのか、第三者をどこまで制限するかなど、外部規制の内容や程度もプラット フォームを運営していく上で大きな課題となるだろう。ネットワーク外部性を有効に利 分類変数の組み合わせ 平均値 標準偏差 外部規制なし×情報の非対称性なし 1.91 .967 外部規制なし×情報の非対称性あり 4.06 1.461 外部規制あり×情報の非対称性なし 4.29 1.523 外部規制あり×情報の非対称性あり 6.27 .899 外部規制なし 2.99 1.642 外部規制あり 5.28 1.592 情報の非対称性なし 3.10 1.746 情報の非対称性あり 5.17 1.638 利用 意図 外部規制なし 外部規制あり 情報の非対称性 あり なし 1.91 6.27プラットフォームにおける外部規制の有効性 11 用することでプラットフォームの規模は大きくなる。しかし、規模のみを考えて行動す ると、前述したゲーム企業アタリのような失敗が繰り返される。そのため、規模だけに 目を向けるのではなく、消費者や提携企業に対してしっかりとした外部規制を行うべき である。また、時間の経過とともに外部規制の内容や程度を柔軟に変化させていくこと もプラットフォームの成功につながっていくと考えられるだろう。 本論では、プラットフォームの外部規制の有効性について実証研究を基に研究し、以 下の知見を得た。まず、ネットワーク外部性が消費者のプラットフォームの利用意図に 及ぼす影響を明らかにした。そして、外部規制が消費者のプラットフォームの利用意図 にどう影響を及ぼすのかを示し、情報の非対称性の有無による違いを示すことが出来た。 また、コンジョイント分析の結果から、消費者は利用者数やアプリ数よりも外部規制を 重要視していることが分かった。すなわち、プラットフォームにおいてネットワーク外 部性は重要な概念ではあるが、外部規制がしっかりと行われていなければ、いくら利用 者やアプリ数が多かったとしても、いずれ利用者は減り、ユーザーの満足度は下がって しまうものと考えられる。 また、本論の課題として以下のことが挙げられる。第1 に、概念の定義についてであ る。外部規制の概念が既存研究では明確に定まっておらず、Boudreau & Hagiu (2008) が述 べたプラットフォームの管理 (management) と規制 (regulation) を外部規制と総称して 定義した。これは、プラットフォームの管理や規制に関する既存研究が少なく実証研究 がなかったことが原因として挙げられる。そのため、今後プラットフォームの研究が進 んでいき、様々な定義付けがされていくことで、より多次元的な概念による測定が可能 になるものと考えられる。第2 に、プラットフォームの利用意図に影響を与える他要因 についてである。本論では、ネットワークの外部性、外部規制、情報の非対称性につい てを取り上げて研究を行ってきたが、実際にはプラットフォームの利用意図に影響を与 える要因は多々存在すると考えられる。しかし、外部規制の有効性に焦点を当て研究を 行っていたため、他要因については考慮したものの実証は行わなかった。以上のような 課題が存在するが、本研究はプラットフォームの外部規制の有効性を実証研究で示した 先駆的なものとして、一定の貢献をなすものであろう。
謝辞
卒業論文作成にあたって、授業内の貴重な時間を割いてアンケートに協力して頂いた 馬場政孝先生、袴田兆彦先生、高松英樹先生、および多くの時間を割き指導していただ いた久保知一先生に、心より感謝の意を述べさせていただきたい。水沢綾花
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参考文献
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プラットフォームにおける外部規制の有効性 13 プラットフォームにおける外部規制の有効性 < ごあいさつ > 現在、私は卒業論文でスマートフォン利用における消費者行動に関して研究しています。この度、調査の ご協力をお願いしたく、以下のようなアンケートを作成いたしました。回答結果はコンピュータで統計的 に処理され、プライバシーは保護されます。また、学術研究以外の目的で使用されることもございません。 大変お手数ではございますが、何卒ご協力のほど、よろしくお願いいたします。 < 調査概要 > 今回、スマートフォン利用に関して、ある状況下を想定していくつかの質問させていただきます。 < 場面想定 > あなたは携帯電話 (スマートフォン) を新しく購入しようとしています。そこで、どういっ た携帯電話を利用したいかお考えください。 スマートフォンについてのアンケート調査 中央大学久保知一研究室 4 期生 水沢綾花 次ページへ
水沢綾花 14 < 用語説明 > 質問1 以下の A~G のスマートフォンを利用したい気持ちを 1~7 から 1 つ選択してください。 アプリ管理 スマートフォンの故障原因 (ウイルス感染、フリーズ) となりうるアプリ を事前に除外するなど、数多く存在するアプリを検査し管理すること。 アプリ 天気予報やゲームなど様々なアプリケーションのこと。 利用者 OS 別 (Apple、Android、Windows Phone など) の利用者 アプリ管理 利用可能な アプリ数 利用者数 利用したい気持ち
利用したくない――利用したい
例 あり 50 1 万人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 A あり 100 1 万人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 B あり 50 1000 人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 C あり 30 100 人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 D なし 100 1000 人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 F なし 50 100 人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 G なし 30 1 万人 7 ・ 6 ・ 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・ 1 BAD BAD BAD 安全なアプリのみを消費者へ提供 BAD BAD BAD すべてのアプリを消費者へ提供 アプリ管理あり
アプリ管理なし
次ページへプラットフォームにおける外部規制の有効性 15 質問 2 以下の条件のとき、お答えください。 質問 2-1 どういったアプリかが分からずアプリ管理がない場合 そのスマートフォンを利用したいと思いますか? 質問 2-2 どういったアプリかが分からずアプリ管理がある場合 そのスマートフォンを利用したいと思いますか? 質問 2-3 どういったアプリかが分かりアプリ管理がない場合 そのスマートフォンを利用したいと思いますか? 質問 2-4 どういったアプリかが分かりアプリ管理がある場合 そのスマートフォンを利用したいと思いますか? どういったアプリか分かる BAD
?
BAD or GOOD?? どういったアプリか分からない 次ページへ 1-2-3-4-5-6-7 1-2-3-4-5-6-7 1-2-3-4-5-6-7 1-2-3-4-5-6-7 全然そう思わない とてもそう思う 全然そう思わない とてもそう思う 全然そう思わない とてもそう思う 全然そう思わない とてもそう思う水沢綾花 16 質問 2-5 どういったアプリかが分からずアプリ管理がない場合 そのスマートフォンを使ってみたいと思いますか? 質問 2-6 どういったアプリかが分からずアプリ管理がある場合 そのスマートフォンを使ってみたいと思いますか? 質問 2-7 どういったアプリかが分かりアプリ管理がない場合 そのスマートフォンを使ってみたいと思いますか? 質問 2-8 どういったアプリかが分かりアプリ管理がある場合 そのスマートフォンを使ってみたいと思いますか? 質問は以上となります。ご協力ありがとうございました。 1-2-3-4-5-6-7 1-2-3-4-5-6-7 1-2-3-4-5-6-7 1-2-3-4-5-6-7 全然そう思わない とてもそう思う 全然そう思わない とてもそう思う 全然そう思わない とてもそう思う 全然そう思わない とてもそう思う