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The Japanese Journal of Experimental Social Psychology. 1994, Vol. 34, No.1, The effect of negative affect and involvement on decision-making pr

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Academic year: 2021

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(1)

著 〕

不 快 感 情 と関与 が 意 思 決 定 過 程 た 及 ぼ す影 響1)2)

同志社大学3)

筑波大学

The effect of negative

affect and involvement

on decision-making

process

MANABU

AKIYAMA

(Doshisha University)

KAZUHISA

TAKEMURA

(Tsukuba University)

This paper investigated the effects of negative affect by odors and involvement with the choice task on

the decision-making process. Sixty-two male undergraduates were asked to select one of ten tape recorders,

either for actual use of the tape recorder (high involvement condition) or for fictitious use (low involvement

condition). The results showed that, in high involvement with the task, people in whom negative affect

had been induced tended to search information more slowly and redundantly, and to feel the choice more

difficult than did subjects in a neutral affect condition and in low involvement condition. These results

were interpreted in terms of a resource allocation model (Ellis & Ashbrook, 1988).

Key words: negative affect, decision making, involvement, resource allocation model, information search

strategy

問 題 我 々 が 日常 的 な場 面 で意 思 決 定 を す る際 には,必 ず し も合 理 的 な決 定 を行 うわ けで はな い こ とは従来 の研 究 で 明 らか にな ってい る。 この非合 理的 な決 定 を生 みだ す要 因 の1つ として,感 情 的 な要因 が指 摘 され て いる(Abelson &Levi,1985)。 しか し,仮 に,あ る状 況 で喚 起 され た感 情 が,意 思決定 者 に規 範 的 な(normative)決 定 ル ール を 逸 脱 す る よ う働 きか け,そ の 結果 として 非合 理 的 な決定 を下 す よ うな例 が あ る と して も,感 情 が我 々の意 思決 定 を 妨 害 す る機 能 に の み注 目して よいの で あ ろ うか。 つ ま り, 感 情 が 意 思決 定 に及 ぼ す影 響 を よ り多 角 的 に考 え る必 要 が あ る と思 わ れ る。 こ れ と類 似 し た 視 点 で,感 情 と認 知 を人 間 の 適 応 シ ス テ ム の 枠 組 み の 中 に 位 置 付 け,両 者 の 相 互 作 用 を 重 視 す べ き で あ る とい う こ と が 指 摘 さ れ て い る(Johnson-Laird&Oatley,1992;Norman,1980;谷 口,1992;戸 田,1980,1992)。Johnson-Laird&Oatley (1992)は,Simon(1967)の 主 張 に 添 っ て,感 情 の 機 能 を人 間 行 動 の 合 理 性 の 観 点 か ら 考 察 し,あ る行 動 を 起 こ す 際 に 完 全 に合 理 的 な 行 動 が 不 明 な 場 合,感 情 に は ラ ン ダ ム に 行 動 選 択 を 行 な う よ り も 所 与 の 状 況 に適 合 した 行 動 を 示 唆 す る 働 き が あ る こ と を主 張 し て い る。 これ は,戸 田(1980,1992)の ア ー ジ 理 論 や,池 田 ・村 田(1990)や Norman(1980)の 認 知 と感 情 の 相 互 作 用 モ デ ル に も共 1)本 研 究 の一 部 は第37,38回 日本 グル ー プ ダイ ナ ミッ クス学 会 で 発表 され た もの で あ る。 2)本 論 文 の作成 に あた り,ご 助 言 いた だ い た同 志社 大(現 所 属 愛 知 学院 大 学)学 小 嶋外 弘先 生 に深 く感 謝 い た し ま す。 また,3名 の覆 面審 査 員 に は貴 重 な助 言 及 び今 後 の研究 の指針 を示 して頂 き ま した こ とを深 く感 謝 いた します。 3)現 所 属 大 阪 教育 大 学

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秋 山 ・竹村:不 快感情 と関与が意思決定過程 に及ぼす影響

通 す る考 え方 で あ る。本 研 究 にお い て は,感 情 が 意 思 決 定 にお け る情 報 探 索 活動 に及 ぼ す影 響,特 に,感 情 が 意 思決 定 にお け る情 報探 索過 程 を どの よ う に方 向づ け るの か を明 らか に した い。 感 情 が情 報処 理 活 動 に及 ぼ す影 響 に関 して は,EIlis& Ashbrook(1988)が,あ る時点 で喚起 され る感情 状 態 が 所 与 の課 題 に割 り当て られ る情 報 処理 資源 の総 量 を規 定 す る とい う考 え方 を(情 報 処理)資 源 配分 モ デル(resource allocation model)と して ま とめて い る。 この ような情 報 処 理 資源 の 配分 とい う考 え方 自体 は,Kahneman(1973) が注 意 容 量 の配 分 を提 唱 した こ とか ら発 展 した考 え方 で あ り,類 似 した 概 念 は池 田 ・村 田(1990)で も認 知 的 制 約効 果 として提 唱 され て い る。 本 研究 で は感情状 態 が意思 決定 にお ける情報 探索 過程 に どの よう に影 響す るのか を明 らか にす るた め に,資 源配 分 モ デル を用い る こ ととす る。 この ため,Ellis&Ashbrook (1988)が 呈 示 した,資 源配 分 モ デル にお ける4つ の仮 定 を以 下 で検 討 して お こ う,最 初 の仮 定 は,多 くの 日常 的 に生 じ る課題 や特 定 の 記憶 を用 い る課 題 にお い て,情 報 をコー ド化 す る際 に活性 化 され る プ ロセ ス には,一 般 に, あ る一 定 の量 の資 源 あ るい は認 知 的努 力 が 必 要 とされ る とい う仮 定 で あ る。 第2は,記 憶 課 題 の遂 行 は所 与 の課 題 に割 り当 て られた 認 知 的努 力 の程 度 と正 の相 関関 係 が あ る とい う仮 定 で あ る。 第3は,悲 しみ(sadness)あ る い は抑 うつ的 な気 分状 態(depression)は 課 題 とは無 関 連 な処 理 の 総 量 を増 加 させ る とい う仮 定 で あ る。 この仮 定 にお け る,所 与 の課 題 と無 関 連 な処 理 とは,具 体 的 に は,不 快 な感情 状 態 を回復 し よ う と して行 な う情 報 処 理 過 程(Cialdini,Darby,&Vincent,1973;Cialidini,& Kenrick,1976;Isen,&Daubman,1984;Isen,Shalker, Clark,&Karp,1978)と 考 え られ る。 最後 の仮 定 は,悲 しみ あ るい は抑 うつ の気 分状 態 は所 与 の課 題(学 習 ・記 憶)に 割 り当 て 可能 な資 源 の総 量 を規 定 す る とい う もの で あ り,こ の モ デ ル の 中 心 とな る も の で あ る 。Ellis& Ashbrook(1988)の 研 究 で は,悲 しみ を中心 とした不 快 感 情 が記 憶 に及 ぼ す効 果 を資源 配 分 モ デ ル を用 い て検 討 して い る。 記 憶 以外 の情 報処 理 活 動 に関 して,特 に清 報 処 理 方 略 の観 点 か ら資 源 配分 モ デル を検 討 した もの とし て はKeinan,Friedland&Arad(1991)の 研 究 を挙 げ る ことが で き る。Keinan et al.(1991)の 研 究 で は,ス ト レ ス下 に お い て は,所 与 の課 題 を単 純 か つ明 確 な もの に す るた め,与 え られ た情 報 を よ り包 括 的 な カ テ ゴ リー に チ ャ ンキ ン グす る こ とが 示 され てい る。 資 源 配分 モ デル で は不 快 感情 に関 す る研 究 が 行 な わ れ て い るが,従 来 の研 究 の中 に は,快 感 情 が情 報探 索 方 略, 特 に意 思決 定 過程 に及 ぼす効 果 に関す る研 究 も存 在 す る。 Isen&Means(1983)の 研 究 で は,快 感 情 を有 す る被 験 者 は決 定 に要 す る 時間 が 統 制条 件 の被 験者 よ り短 く,一 度検 討 した 情 報 を再 度 検 討 す る こ とはせ ず,あ ま り重 要 で ない と思 われ る情 報 を無視 す る傾 向 があ った。 また,竹 村(1988a,b)やForgas(1989)は,快,不 快,中 性 感 情 の3つ が 意 思決 定 に及 ぼ す影 響 を検 討 して い る。竹 村 (1988a,b)に よ る と,快 感情 が 喚起 され た被 験 者 は不 快 感情 が喚 起 され た被験 者 よ り決定 に要 す る時 間が短 く,情 報 探 索 数 や 情報 の再 検 討 数 及 び再 検 討 率 が少 な か った 。 また,決 定 課題 に 関 し て関与 が 高 い被 験 者 は,情 報 探 索 数 や情 報 の再検 討 数及 び再 検討 率 が 高 く,決 定 へ の確 信 度 も高 い こ とが示 され て い る。Forgas(1989)の 研 究 で は,悲 しみが 喚起 され た 被験 者 は喜 び条 件 や 中性 条件 よ りも報 酬 の あ る選択 を好 む こ とを明 らか に して い る。 他 に も,快 状 態 の 気分 は よ り早 くか つ効 果 的 な決 定 を導 く が,そ れ は結 果 が個 人 的 にあ ま り関係 の な い場 合 に 限 ら れ る こ とや,悲 しみ の状 態 の被 験 者 は対 人 関 係 に関 す る 情 報 に よ り集 中 し,決 定 まで に よ り長 い時 間 をか け る こ とが 明 らか に され て い る。 これ らの研 究 で は,感 情 喚起 の方 法 と して,あ る検 査 を行 い そ の結 果 を被 験 者 に フィー ドバ ック す る こ とを用 い て い る。 と こ ろが,こ の 方法 に は感 情 状 態 の 及 ぼ す効 果 が被 験 者 の感 情状 態 それ 自身 に起 因 す る もの で は な く, 感情 喚起 の方 法 に依 存 す る もので あ るの で は ない か とい う問題 点 が 指 摘 され て い る。 この点 につ い て以 下 で検 討 して い く こと にす る。 感 情 が情 報処 理過 程 に及 ぼす効 果 を検討 す る際 に は,感 情 喚起 に どの 様 な 方法 を用 い る のか も明確 にす る必 要が あ る(谷 口,1992)。 従 来 の研 究 で は,快 あ るい は不快 感 情 を喚起 させ る際 に,決 定 課題 実施 前 にゲ ームや 心理 検査 を行 い,良 い もし くは悪 い結果 を無 作為 に被 験者 に フィー ドバ ックす る とい う方法 を用いて い る(Forgas,1989;Isen &Means1983;竹 村,1988a,b)。 本 研 究 で は,従 来 の研 究 と は異 な り,不 快 な匂 い を被 験 者 に呈示 す る こ とで不 快 感情 を喚 起 させ た。 この 匂 い を感 情 喚 起 に用 い る こ との利 点 とし て は,(1)実 験 者 の 意 図 を被 験 者 に悟 られ に くい,(2)言 語 課 題 に干 渉 しな い,(3)実 験 中 に継続 して感 情 喚起 を行 う こ とが 出来 る と い う点 で有効 で あ る こ とが 主張 され てい る(Ehrlichman &Halpen,1988;谷 口,1992)。 また,嗅 覚 自体 が感 覚 的 な快-不 快 の程 度 に影 響 を受 け る こ とが 指 摘 され て お り,嗅 覚 に関 す る反応 も情 緒 的 で あ る と考 え られ て い る (Engen,1982)。 本 研 究 の よ うに,被 験 者 が扱 う情報 に言 語 的 な もの を含 む場 合,以 上 の よ うな利 点 を持 つ匂 い に ―59―

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よ る感情 喚 起 は,呈 示 した 刺激 と所 与 の課 題 との間 で不 用 な相 互 作 用 を生 じさせ な い点 で優 れ てい る と思わ れ る。 また,フ ィー ドバ ックに よる感情 喚起 にお いて は,そ の 操 作 に よ り被 験者 の 自尊 心(self-esteem)を も高 揚 させ た り低 下 させ る こ とが考 え られ る。 その た め,被 験 者 の 情 報 処 理能 力 それ 自身 を被 験者 が過 大 に評価 した り過小 に評 価 す る可 能 性 が あ る と思 わ れ る。 この よ うに フ ィー ドバ ッ クに よ る感 情 喚起 を用 い る と,感 情 と情 報 処 理過 程 の関 係 を考 え る際 に,研 究者 が意 図 しな い要 因 が働 く 危 険 性 を考 慮 に入 れ る必 要 が あ る。 しか し,匂 い に よ る 感 情 喚 起 の場 合,匂 い それ 自身 が被 験 者 の 自尊 心 に対 し て影 響 を与 え ない と考 え られ るた め,被 験 者 自身 の 情報 処 理 能 力 へ の評 価 は変化 し ない と期 待 され る。 以 上 の よ うな理 由 によ り,感 情 が 意 思決 定 過 程 に及 ぼす 影 響 を検 討 す る際 に,感 情 喚起 に匂 い を用 い る こ とは有 効 で あ る と考 え られ る。 本研 究 で は,以 上 の議 論 を踏 まえ,資 源配 分 モ デ ル を 意 思 決 定 に お け る情報 処 理 活 動 に適 用 し,実 証 的 に この モ デル の検 証 を行 う。 こ の こ とに よ り,嗅 覚 刺 激 に よ り 喚 起 され た不 快 感 情 が意 思 決 定 に お け る情報 探 索 過 程 に どの よ うに影 響 を与 える のか を 明 らか にす る こ とを 目的 とす る。 また,本 研究 で は意 思決 定 過 程 の追 跡 技 法 と し て,竹 村(1988a,b)と 同様 に情 報 モニ タ リング 法 を 用 い,上 記 の 目的 を明 らか に して い く。 以 上 の 問題 に加 え,意 思 決定 課 題 の 遂行 に お け る情報 処 理 資 源 の配 分 を検討 す る際 に は,意 思 決定 者 が 所 与 の 課 題 を どの よ う に捕 らえ てい るか とい う こ と も重 要 にな る。 この課 題 状 況 の定 義 に あた っ て,意 思 決定 者 が この 決 定 課題 を どの程 度重 視 して い るか,言 い換 え る と,決 定 課 題 へ の関 与 水 準 が課 題 状況 の定 義 に大 き く影 響 を与 え る と思 われ る。 類 似 した指 摘 はPayne(1982)やIsen &Patrick(1983)に よ って もな され て い る。 特 にIsen &Patrick(1983)で は気 分 が リス ク指 向 性 に及 ぼ す影 響 を検 討 して お り,そ の 中 で,決 定 に対 して具 体 的 な報 酬 が 随 伴 す る場 合 と しな い場合 に お いて リス ク指 向 性 が 異 な る こ とを明 らか に して い る。 また,前 述 したForgas (1989)や 竹 村(1988a,b)の 研 究 にお い て も,決 定 課題 へ の関与 水 準 が 異 な る こ とで,被 験 者 の感 情 状 態 が 意 思 決 定 に及 ぼす影 響 が異 な る こ とが示 され てい る。 したが っ て,本 研 究 に おい て も,資 源 配 分 モ デル を検 討 す る際 に, 被 験 者 の感 情 状 態 を操作 す るだ けで な く,決 定 課 題 へ の 関 与 水 準 も考 慮 にい れ る こ とにす る。 また,決 定課 題 へ の 関与 水 準 の操 作 と して は,Forgas (1989)で は,決 定 に対 す る報酬 を被 験 者 自身 に与 え るの か,他 者 に与 える か に よ り行 い,竹 村(1988a,b)で は, 決定 に対 して報酬 が あ るか否 かで行 ってい る。 この よ うに 両研 究 で は決定 課 題 へ の 関与 水 準 を決 定 結 果 に被 験 者 自 身 へ の報 酬 を随伴 させ るか否 か に よ り操 作 して い る。 こ の操 作 は,決 定 に対 して報 酬 が 随 伴 す る こ とで,決 定 へ の重 要 度 が 高 ま り,決 定 課 題 へ の 関与 水 準 が 高 まる とい う前 提 に立 ってい る。本 研究 で も,竹 村(1988a,b)と 同 様 に,決 定 結果 と被 験 者 自身 へ の 報酬 を随 伴 させ る か否 か に よ り被 験者 の決 定 課題 へ の関 与水 準 を操 作 す る。 決 定結 果 と報 酬 が 随伴 す る場 合 に は決定 課 題 へ の 関与 水 準 が 高 く,随 伴 しな い場 合 に は関与 水 準 が低 い と考 え る。 以 上 の議 論 を踏 ま えて,本 研 究 で は,感 情 要 因(意 思 決定 者 の感 情状 態)と 関 与 要因(決 定課 題 へ の関 与水 準) の2要 因 を設定 す る。 感情 要 因 で は,不 快 感 情 を喚 起 さ せ る不 快 感情 条件 と感 情 喚起 刺 激 を全 く呈 示 しな い 中性 感 情 条件 の2条 件 を設 定 す る。感 情 喚起 の方 法 として は, 本 研 究 で は,被 験者 に不 快臭 を呈 示 す る こ とで操 作 す る。 関与 条 件 で は,被 験 者 の 決定 結 果 と被 験 者 へ の報 酬 とが 随伴 す る高 関与 条 件 と随伴 しない 低 関与 条 件 の2条 件 を 設 定 す る。従 属 変 数 とし て は,竹 村 ・高木(1985,1987) の研 究 を参 考 に して,意 思決 定 にお け る情 報 探 索過 程 の 各 指 標 と決 定 時及 び決 定過 程 での 内 的状 態 を用 い る こ と とす る。最後 に,本 研究 で は,竹 村(1988a,b),Forgas (1989)の 問 題 点 を修正 し,不 快感 情 と関与 が意 思 決定 過 程 に及 ぼす 影響 を検 討 す る こ とを 目的 とす る。 結果 とし て は,竹 村(1988a,b),Forgas(1989)と 類似 した もの が示 され る こ とが 予 想 され,こ れ らの結 果 を資 源配 分 モ デ ル を も とに検 討 を行 う こ と とす る。 方 法 実 験 計 画 本 研 究 で は,感 情 要 因 と関 与 要 因 の2要 因 を被 験 者 間 要 因配 置 計 画 に よ り実施 した。 感 情 要 因 に は 中性 的 感 情 条件,不 快 感情 条 件 の2条 件 を設 定 し,関 与 条件 に は高 関与 条 件,低 関与 条 件 の2条 件 を設定 した 。 被 験 者18∼21歳 の 日本 人 大学 生62名(全 て 男 性) を被 験 者 と して用 いた 。 これ らの 被験 者 を各 条件 に無 作 為 に配 置 した 。 この結 果,中 性 的 感情 条 件 で の 高 関与 条 件 に16人,同 じ条 件 で の低 関 与 条件 に18人,不 快 感 情 条件 で の高 関与 条 件 に15人,同 じ条 件 での 低 関与 条件 に 13人 の被 験者 を配 置 した。 実 施時 期 本研 究 は1989年6月14日 ∼6月30日 及 び 1989年10月6日 ∼10月13日 に実験 を実 施 した。 決 定 課題 本 研 究 に お け る決定 課 題 は,10個 の選 択 肢 の 中 よ り被験 者 か らみ て 最 も購 入 した い と思 わ れ る選 択 肢 を1つ だ け選 択 す る こ とで あっ た。

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秋山 ・竹村:不 快感情 と関与が意思決定過程 に及 ぼす影響

選択 対象 本 実験 で は選択 対象 と してCDラ ジ カセ(コ ンパ ク トデ ィスク を演奏 で きる,ラ ジオ付 きカセ ッ トテ ー プ レ コー ダー)を 用 いた 。 製 品属 性 大 学 生 男 女139人 を対 象 と した予 備 調査 を も とに,(1)デ ザ イ ン(写 真 を呈 示),(2)音 量,(3)メ ー カー,(4)大 きさ(幅,高 さ,奥 行 き),(5)価 格(定 価), (6)Wカ セ ッ トの機 能(オ ー ト リバ ー ス機 能 の有 無 とそ の機 能),(7)チ ュ ーナ ー の受信 バ ン ド(FM,AM,TV 等),(8)リ モ コ ンの有 無,(9)グ ラ フ ィック ・イ コ ライ ザー の有 無(10)自 動 編 集機 能 の有 無 の10種 類 の属 性 を設 定 した。 これ らの属 性 は製 品 カ タ ログ に記 載 され て い る も の で あ り,当 該 属 性 の 内容 も各 メ ー カ ー の発行 して い る カタ ロ グ の内容 と一 致 して い る もの で あ った 。 情 報 の 呈示 方法 被 験 者 に属 性 情報 を呈 示 す る際 に は, Bettman&Kakkar(1977)を 参 考 に,杉 本(1983)が 作 成 した情 報 呈 示 ボ ー ドを用 い た。 この情 報 呈 示 ボ ー ド に情報 を呈 示 す る際 に は,マ トリックス形 式 で行 った。 マ ト リックス の行 は10種 類 の選択 肢 で あ り,マ トリッ クス の列 は属性 で あ る,マ トリック ス の列 と行 の各 交 点 には 該 当す る製品情 報 を呈 示 した。情報 数 は10選 択肢 ×10属 性 で計100個 で あった。各情 報 は,8.5cm×4.5cmの カー ドに書 か れ,そ れ ぞれ7枚 ず つ が裏 返 し に され て各 交 点 に 吊 りさげ られ た。 な お,各 交 点 に7枚 つ つ 吊 り下 げた の は,被 験 者 が 同一 情 報 を再 度検 討 で き る よ うにす るた め で あ る。 測定 方 法 本 実 験 で は課 題 が 実行 され て い く過 程 を測 定 す るた め に,課 題 が 行 わ れ た時 間 を情 報 探 索 時 間 とし て実験 者 が ス トップ ウオ ッチ で測 定 す る と とも に,被 験 者 が探 索 した カー ドを被 験 者が 探索 した順 序 で記 録 した。 決 定段 階 の決 定 決定 段 階 の 設 定 は被 験 者 が探 索 した 情 報 の総 獲 得数 を3等 分 す る こ とに よって,前 期,中 期, 後 期 の 決定 段 階 を設定 した 。 感 情 状態 に関 す る質 問 紙 決 定 課題 終 了後,被 験 者 に は,決 定課 題 が終 了 した 時点 で の感 情 状 態 につ いて,以 下 の8項 目の 形容 詞 に7段 階尺 度 で評 定 す るよ う求 めた 。 この 質 問項 目 は竹 村(1988a,b)に も とつ い て作 成 した もの で あ り,(1)腹 が たつ,(2)う れ しい,(3)落 ち込 ん だ, (4)元気 の あ る,(5)幸 せ な気分,(6)良 い気 分,(7)自 信 の あ る,(8)明 るい気 分 とい う項 目 よ り構 成 した。 決定 過程 及び 決定 時 にお け る内 的状態 に関す る質 問紙 決 定課 題終 了後,被 験 者 に は,以 下 に述 べ る質 問項 目に 関 して7段 階尺 度 で評 定 す る よ う求 めた 。 この質 問 項 目は (1)課題 の困 難 度,(2)決 定過 程 で の混 乱 度,(3)決 定 に対 す る確 信 度,(4)課 題 中 の情 報 数 の 多 さ,(5)記 憶 へ の 負 荷,(6)決 定課 題 で 用 いた情 報探 索 方略 の使 用頻 度,(7)決 定 へ の後 悔 度,(8)決 定 へ の迷 い の程度,(9)決 定 に対 す る リス ク,(10)決 定 に対 す る不確 実性,(11)情 報 探 索 方略使 用 の意 識 の程 度,(12)課 題 の面 白 さ,(13)現 在 の 気 分 の 13項 目 か らな る もの で あ った。 この 質 問項 目 は,竹 村 ・ 高木(1987),竹 村(1988a,b)の 研究 で使 用 され た項 目 に リス ク に関 連 した不 確 実性 とい う項 目 を付 け加 えた も の で あ る。 手続 き 本 実 験 の 手続 きを,被 験 者 の感 情状 態 の操 作 を行 う部 分 及 び,被 験 者 の 決定 課 題 へ の関 与 水 準 を操 作 す る部分 と被 験 者 に決 定 課 題 を実 施 させ る部 分 に分 け て 説 明 す る。 まず,不 快 感 情 条件 で は,悪 臭(食 堂 で の残 飯 か らな る生 ごみ を1日 程 度腐 敗 させ た ものか ら発生 さ せ た もの)が 漂 う部 屋 で実 験 を行 った 。 中性 的 感 情条 件 に お いて は,感 情状 態 を変 更 させ る よ うな 操作 は一切 行 なわ なか っ た。 決 定課 題 は個別 に被 験者 を実験 室 に招 い て実施 した。被 験 者 に は最 初 に下 記 に示 す 決定 課 題 に関 す る教 示 を行 っ た。 最 初 に実験 室 は提 示 して あ る選 択 肢(商 品)は 架 空 の商 品 で はな く実在 す る商 品で あ る こ とを教 示 し,10個 の選 択 肢 の 中 か ら もっ と も購 入 した い と思 う選択 肢 を一 つ 選 ぶ こ とが 実験 の課 題 で あ る こ とを説 明 した 。次 に情 報 呈 示 ボー ドの 説 明 を行 った。 続 い て,情 報 呈 示 ボ ー ド の使 い 方 の説 明 を下 記 に示 す よ う に行 っ た。 最 初 に決 定 に必 要 な情 報 カー ドは1枚 ず つ ボー ドか ら取 得 して い く こ と,情 報 を取 得 す る順 序 や情 報 を取 得 す る総 数 及 び決 定 まで に 要す る時 間 に は制 限 の な い こ と,不 必 要 な情 報 は検 索 しな くて も よい こ と,同 一 情 報 を再 度 取 得 して も よ い こ と,一 度 取 得 した情 報 を再 度 検 索 す る場 合 は,改 め て情 報 カ ー ドを ボー ドよ り取得 す る こ と,同 時 に2枚 以上 の カー ドを取 得 しな い こ とを被 験 者 が 理解 す る まで 説 明 した 。 以 上 の教 示が 終了 した後,関 与要 因 の操 作 を行 った。本 研究 にお いて は,竹 村(1988a,b)と 同様 に,決 定課 題 に 報 酬 を 随伴 させ るか否 か によ って 被験 者 の決 定課 題 へ の 関 与水 準 を操 作 した。 具 体 的 に は,高 関与 条 件 で は,被 験 者 に “あ なた が選 ん だCDラ ジ カセ を約1カ 月 ほ ど実 際 に使 用 して いた だ い て,回 収 時 に そのCDラ ジカ セ の 使 用 した感 想 につ い て の簡 単 な ア ンケ ー トに 回答 して い た だ くとい う研 究 を計 画 して い る ので す が,で きれ ば そ れ に も参 加 して い た だ け ない で し ょうか 。”4)と依頼 を行 4)選 択 したCDラ ジカ セ を実 際 に は貸 出せ な い こ とを デ ブ リ フー ィ ング の際 に説 明 した 。 ―61―

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Table1 不 快感 情 と関 与 が知 覚 され た情 報 探 索方 略 の 指標 に及 ぼ す影 響 い,こ の依 頼 に応 諾 した被 験 者 に対 して,ラ ジ カセ の 送 り先 の住 所,郵 便 番 号,電 話 番 号 お よび 被 験者 の氏 名 を 所 定 の用紙 に記 入 させ る こ とで 完 了 す る。 低 関与 条 件 に お い て は関与 に関 す る操 作 は行 わ なか った。 決 定 課 題 終了 後,被 験 者 に は,意 思 決 定 過程 に お け る 内 的状 態 に関 す る質 問 紙,属 性 の 重要 度,現 在 の感 情 状 態 に関 す る質 問紙 に回 答 す る こ とを求 め た。実 験 終 了後, 被験 者 に は,実 験 の本 当 の 目的 を教 示 し,デ ブ リー フ ィ ング を行 った 。 結 果 1. 意思 決定 過 程 に お け る情報 探 索 方略 の 分析 決 定 過程 にお ける情 報 探 索 方略 の分 析 に あた って,本 研 究 で は情 報 探 索 時 間,情 報探 索 数,1情 報 あた りの情 報 探索 時 間,情 報 探 索 の方 向性,情 報 探 索 の変 異 性,情 報 の再 検 討数 の6つ の測 度 を用 い た。 これ らの各 指 標 の 分 析 にあ た っ て は,感 情 要 因 と関与 要 因 を独立 変 数 とす る2要 因分 散 分析 を行 っ た。情 報 探索 時 間,情 報探 索 数, 1情 報 あた りの情 報 探 索 時間 及 び情 報 の 再 検討 数 につ い て は,各 指標 の 平均 値 と標 準偏 差値 をTable1に 示 した 。 情 報 探 索 時 間 の分 析 の 結果 で は,感 情 要 因 と関与 要 因 の 交 互 作 用 効 果 の傾 向が 認 め られ た(F(1/58)=3.58, .05<p<.10)。 各 条 件 ご とに単 純 主効 果 の検 定 を行 った 結果,高 関 与条 件 にお いて の感情 要 因の効 果 が有意 で あ り (F(1/58)=4.55,p<.05),不 快 感 情 条件 にお い て の関 与 要 因 の効 果 も有意 で あ った(F(1/58)=4.19,p<.05)。 これ らの結 果 を ま とめ る と,決 定 課題 へ の関 与 が 高 い場 合,不 快 感 情 が喚 起 され る と決 定 に要 す る時 間 が長 くな る こ とが 明 らか に な った 。 また,不 快 感 情 が 喚起 さ れた 場 合,決 定 課題 へ の関 与 が 高 い と決 定 に要 す る時 間 が長 くな る こ とが 明 らか に な った。 情 報 探 索 数 を分 析 した 結 果 で は,感 情 要 因 と関 与 要因 の交 互 作 用効 果 の み が 有 意 で あ った(F(1/58)=6.18, p<.05)。 各 条件 ご とに単純 主 効果 の検 定 の結 果,高 関与 条件 で の感情 要因 の主効 果が有 意で あ り(F(1/58)=7.13, p<.01),不 快 感情 条件 にお いて,関 与 要 因 の主 効 果 の 傾 向が 認 め られ た(F(1/58)=3.37,.05<p<.10)。 ま た,中 性 的感 情 条 件 で の 関与 要 因 の主 効 果 の傾 向が み ら れ た(F(1/58)=2.80,.05<p<.10)。 これ らの結 果 を ま とめ る と,決 定 課 題 へ の関 与 が 高 い場 合 に不快 感 情 が 喚起 され る と,よ り多 くの情 報 を探 索 す る こ とが明 らか に な った 。 また,不 快 感情 が 喚 起 さ れ る場 合,決 定 課 題 へ の関 与 が 高 い とよ り多 くの情 報 を探 索 す る傾 向 が あ る こ とが 示 唆 され たが,不 快 感 情 が 喚起 さ れ ない場 合,逆 に,決 定 課 題 へ の関 与 が 高 い と探 索 す る情 報 が減 少 す る 傾 向 も示 され た。 1情 報 あた りの情 報 探 索 時 間 に関 して は,本 研究 で は 情報 探 索時 間 を情 報探 索 数 で割 った値 を用 い た。分 析 の結 果,関 与 要 因 の主 効 果 が有 意 で あ っ た(F(1/58)=4.12, p<.05)。 す なわ ち,決 定 課 題 に対 して 関与 が 高 い と1 つ の情 報 を よ り長 く検 討 す る事 が 明 らか に な った。

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秋 山 ・

竹村:不 快感情 と関与 が意思決定過程 に及ぼす影響

Table2 知 覚 され た 内 的状 態 のパ ター ン 因 子 負 荷量 が0.500以 上 の値 は太 字 に した。 情報 の 方向性 に関 して は,本 研 究 で は竹村 ・高 木(1985, 1987)の 方法 に基 づ い て,探 索 した 情 報 か ら次 に探 索 し た情 報 へ の移 動 を次 の3種 類 に分 類 し,こ れ らの分類 に 該 当す る移動 の比 率 を決定 段 階 ご とに求 めた もの を情 報 探 索 の方 向性 とした 。 この3つ の分 類 と は選択 肢 型,属 性 型,移 行 型 で あ り,選 択 肢 型 とは直 前 に探 索 した 情 報 と同 じ選 択 肢 の情 報 が 選択 され た もの で あ り,属 性 型 と は直前 に探 索 した情 報 と同 じ属 性 の情 報 が 選択 さ れた も の で あ り,移 行 型 と は探 索 した情 報 の移 動 が 同 じ選択 肢, 同 じ属 性 の中 で行 われ なか っ た もの で あ る。 これ らの指 標 の 分析 に当 っ て は各 指 標 の角 変 換値 を 用 いた 。各 方向 性 の指 標 を分析 した結果,中 期 の移 行型 にお いて,関 与 の 主 効果 の傾 向 が み られ(F(1/58)=3.19,.05<p<.10), 決 定 課 題 に対 して の 関与 が 高 い と移 行 型 の情 報 探 索 を行 う傾 向 が 高 くな る こ とが示 唆 され た。 また,感 情 の 主効 果 の傾 向 もみ られ(F(1/58)=3.53,.05<p<.10),不 快 感 情 が 喚起 され る と移行 型 の情 報 探 索 を行 う傾 向 が 高 くな る こ とが示 唆 され た。 情 報 の変 異性 につ い て も,竹 村 ・高 木(1985,1987)の 方 法 に基 づ い て特 定 の選 択肢 や 属 性 を探 索 す る傾 向 の指 標 と して,選 択 肢 間及 び 属性 間 の 情 報探 索 数 の 変異 係 数 (標準偏 差 値 を平 均値 で 割 った値)を 求 め,そ れ ぞれ選 択 肢 間 変 異性,属 性 間 変異 性 と した 。各 指標 の分 析 の結 果, 選 択 肢 間 変 異性,属 性 間変 異 性 の両 指 標 とも,有 意 な主 効 果,交 互 作用 効 果 は認 め られ な か った 。 同 じ情 報 を再 度 探 索 す る行 動 に 関 し て は,同 一 情 報 を再 度 取 得 した 回 数(再 検 討 数)を 求 め 分 析 した 結 果, 感情 要因 と関 与 要 因 の交 互作 用 効 果 の み が有 意 で あ った (F(1/58)=8.35,p<.01)。 各条 件 ご とに単 純 主効果 の検 定 を行 った結 果,高 関与 条 件 にお いて,感 情 要因 の主効 果 が 有意 で あ り(F(1/58)=5.68,p<.05),低 関与 条 件 で の感 情要 因 の主 効果 の傾 向が認 め られた(F(1/58)=2.91, .05<p<.10)。 また,不 快 感情 条 件 に お いて 関 与 要 因 の主効 果 が 有意 で あ り(F(1/58)=4.40,p<.05)。 中性 的感 情 条件 に お いて も関与 要 因 の主 効 果 の 傾 向が 認 め ら れ た(F(1/58)=3.95,.05<P<.10)。 この分 析 結 果 か ら,決 定 課題 へ の関 与 が高 い場 合 に,不 快 感情 が喚 起 さ れ る と同 一情 報 を再 度 検討 す る回 数 が増 加 す る こ とが 明 らか に な った が,し か し,決 定 課 題 へ の関 与 が 高 くない 場 合 に は,不 快 感 情 が 喚 起 さ れ る と再 検 討 す る回 数が 減 少 す る こ とが 明 らか に な った。 また,不 快 感 情 が 喚起 さ れ た 場合,決 定 課題 へ の関 与 が高 い と同一 情 報 を再度 検 討 す る回数 が増 加 す る ことが明 らか に なっ たが,し か し, 不 快 感情 が喚 起 して い な い場合 に は,決 定 課 題 へ の 関与 ―63―

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Table3 不 快感 情 と関 与 が知 覚 され た 内的 状 態 に及 ぼす 影響 が高 い と同一 情 報 を再 度検 討 す る回数 が 減 少 す る こ とが 明 らか にな っ た。 2. 意 思決 定過程 及 び 意思決 定時 にお ける内 的状態 の分 析 a知 覚 され た 内的状 態 のパ ター ンの検 討 意 思決 定 過 程 で の 内的 状 態 に感 情 状 態 と決 定課 題 へ の関 与 が及 ぼす 影響 を検 討 す るた め,決 定時 及 び 決定 過 程 にお ける知 覚 され た 内的 状 態 のパ ター ンを検 討 した。 本 研 究 で は,こ の 知覚 され な 内 的状 態 の パ タ ー ン を検 討 す るた め,決 定 過 程 や決 定 時 にお け る内 的状 態 に関 す る項 目間 の相 関行 列 を も とに因 子分 析 を行 なっ た。 この 因子 分 析 で は 固有 値 が1.0以 上 で あ る第4因 子 まで を採用 した。 さ らに解釈 の有 意 味性 を考慮 し て,こ の因 子負 荷 量行 列 にvarimax 回転 を行 った 。 この結 果 をTable2に 示 す。 第1因 子 は,決 定過 程 で の混 乱 度,課 題 の困 難 度,決 定 時 の 迷 い の程 度,決 定 に対 す る リス ク とい った 項 目が 高 く負 荷 して い るた め決 定 の 困難 度 因 子 と命 名 した 。第 2因 子 は,決 定 課 題 で使 用 した情 報 探 索 方 略 の 日常 的 な 使 用 頻 度,決 定 に対 す る確 信 度 とい った 項 目が高 く負荷 して い るた め決 定 へ の確 信 度 因 子 と命 名 した。 第3因 子 は,課 題 の面 白 さ,課 題 で の情 報数 の多 さ,記 憶 へ の 負 担度,決 定 へ の後 悔 度 とい った項 目が 高 く負荷 してい る た め決 定 課題 の評 価 因 子 と命 名 した 。第4因 子 は情 報 探 索 方略 使 用 の 意識 の程 度 が高 く負荷 して い るた め方 略 使 用 意識 因 子 と命 名 した 。 以 降 の分析 で は,因 子分 析 で の 結 果得 られ た 因子 得 点 を従属 変 数 と して用 い,決 定 時 及 び 決定 過 程 で の 内 的状 態 に感 情 と関与 が及 ぼす効 果 を検 討 した。 この 分析 で は,感 情 要 因 と関与 要 因 を独立 変 数 とす る2要 因 分 散分 析 を行 っ た。 また,各 条 件 にお け る 因 子 得点 の平 均値 及 び標 準偏 差 値 はTable3に 示 す。 b因 子得 点 の分 析 決 定 の 困難 度 因子 に関 して 分析 し た結 果,感 情 要因 と関与 要 因の 交互 作用 効果 の傾 向が 認 め られ た(F(1/58)=3.01,.05<p<.10)。 各 条 件 ご とに 単純 主効 果 の検 定 を行 な った結果,高 関 与条 件 にお いて は 感情 要 因の 主効 果 の傾 向 が認 め られ た(F(1/58)=3.05, .05<p<.10)。 つ ま り,決 定 課 題 へ の 関与 が高 い 場 合, 不 快 感情 が 喚 起 され る と決 定 へ の 困難 度 が 高 まる傾 向 を 示 した 。 決 定課 題 の評 価 因子 に関 して分 析 した 結 果,関 与 要 因 の主 効 果 が有 意 で あ った(F(1/58)=11.18,p<.001)。 す なわ ち,決 定 課 題 へ の 関与 が 高 い と,決 定 課題 に対 し て面 白い と感 じるが 同 時 に課 題 で の情 報 数 が 多 く,記 憶 へ負 担 が か か る と感 じて い る こ とが 明 らか にな っ た。 最 後 に,決 定 へ の確 信 度 因子 及 び方 略使 用 意 識 因子 に関 し て分 析 を行 っ た結 果,有 意 な主 効 果,交 互 作 用効 果 は認 め られ なか っ た。 3. 決 定課 題後 の感情 状 態 意 思 決 定 過程 の情 報探 索 方略 や 決定 過 程 や 決 定 時 の 内 的状 態 を検 討 す る前 に,被 験 者 の 決 定後 の感 情 状 態 に関 す る検 討 を行 った。被 験 者 に は竹 村(1988a,b)と 同 じ8 個 の形 容 詞 で 決定 後 の感 情状 態 を評 定 さ せ た。 これ らの 評 定項 目で は被験 者 の感 情状 態 が 肯 定 的 で あ るか 否定 的 で あ るを検 討 す る こ とを 目的 としてい る。 この場 合,個 々 に各項 目 を分 析 す る こ とで,第1種 の誤 りを犯 す 確 率 を 高 め る こ とが指 摘 され て い る(村 上,1986)。 そ こで 本研 究 で は8個 の評 定 項 目 を ま とめ,感 情 要 因 と関 与 要 因 が 決 定後 の感情 状 態 に及 ぼす効 果 を検 討 した。 具体 的 に は, 感 情状 態 を評 定 す る8項 目全 て を従 属 変 数 と し,感 情 要 因 と関 与 要 因 を独 立 変 数 とす る2要 因 多変 量 分 散 分 析5) を行 った。 この 結 果,有 意 な主効 果 及 び 交 互作 用 効 果 は 認 め られ な か った 。 5)多 変 量 分散 分 析 で は,第1種 の過誤 を犯 す確 率 を統制 す るだ けで な く,変 数 間 の相 関 も考慮 に入 れ るた め,個 々 の 変 数 の分 析 で は検 出 され な い よ うな有 意 差 を検 出 す る場 合 が あ る こ とが 指摘 され て い る(村 上,1986)。

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秋 山 ・竹村:不 快感情 と関与が意思決定過程 に及ぼす影響

また,本 研 究 で は,感 情 喚 起 にお け る操 作 が 自尊 心 に 影響 を及 ぼす のか否 か も重 要 な問題 で あった。 そ こで,以 上 の分析 とは別 に,自 尊 心 と関係 のあ る “自信 の ある ” とい う項 目 に関 して も感 情要 因 と関 与要 因 を独 立変 数 と す る2要 因分 散 分析 を行 った。 この 結果,有 意 な 主効 果 及 び 交互 作 用 効 果 は認 め られ なか った。 考 察 本 研 究 で は,意 思 決定 者 の 感情 状 態(不 快 感 情)が 意 思決 定 過 程 に及 ぼす 効 果 を資 源配 分 モ デル を用 い て検 討 す る こ とを目 的 とした 。 また,決 定 結 果 へ 報酬 が随 伴 す るか否 か で操 作 され た 決定 課 題 へ の関 与 水 準 に よ り不 快 感情 の及 ぼす効 果 に変 動 が あ るの か も併 せ て検 討 した 。 結 果 として は,第1に,決 定 に対 す る関 与水 準 に応 じ て情 報 探 索 方 略 や決 定 時 お よ び決 定過 程 での 内 的状 態 に 対 して被 験 者 の感 情 状 態 が異 な る影響 を及 ぼす こ とが 明 らか にな った。具体 的 に は決定 へ の関与 が 高い と,不 快 感 情 を喚起 す る よ うな操 作 を行 った 場 合,決 定 に要 す る時 間 や 情報 数 お よび,一 度 検 討 した情 報 を再 度 検 討 す る回 数 が 増 す こ とが 明 らか に なっ た。 決 定 に対 す る困 難 度 の 評 価 にお い て も,同 様 に決 定 へ の関 与 を高 め,不 快感 情 を喚 起 す るよ うな操 作 を行 った場 合,意 思決 定 が よ り困 難 に な る と感 じて い る こ とが 明 らか に な った。 また,決 定 に対 す る関与 が 低 い場 合,不 快 感 情 を導 入 す る操 作 を 行 う と同 一情 報 を再 検 討 す る回 数 が減 少 す る こ とが 明 ら か に な った 。 第2に,感 情 状 態 へ の操 作 を行 う こ とで,情 報 探 索 方 略 や決 定 時 お よび決 定 過 程 で の内 的状 態 に対 して決 定 へ の 関 与 の程 度 が 異 な る影 響 を及 ぼ す こ とも明 らか に な っ た 。具 体 的 に は,不 快感 情 を喚起 す る操 作 を行 った 場合, 決 定 に対 す る関 与 が高 くな る と決 定 に要 す る時 間 が長 く な り,決 定 に要 す る情 報 数 や一 度 検 討 した情 報 を再度 検 討 す る回 数 が増 す こ とが明 らか に な った 。 しか し,感 情 の操 作 を行 わ な い場 合,決 定 へ の関 与 が 高 まる と決 定 に 要 す る情 報数 が減 少 し,同 一 情報 を再 検 討 す る 回数 も減 る こ とが 明 らか にな っ た。 第3に,被 験 者 の 感情 状 態 に関 わ らず,決 定 へ の 関 与 水 準 は情 報探 索 方略 や 決 定過 程 お よび決 定 時 に お け る内 的状 態 に影響 を及 ぼす こ とが 明 らか に な った 。 具体 的 に は,決 定 に対 して の関 与 が高 ま る と1つ の情 報 を よ り長 く検 討 し,ま た,決 定 課 題 に対 して 関 心 を抱 くと同時 に 課 題 に含 まれ る情 報 数 が 多 く記 憶 へ 負 担 が かか る と感 じ てお り,決 定 に対 して不 満 を抱 いて い る こ とが 明 らか に な った 。 上 述 した 結 果 に お いて,最 初 に決 定課 題 に対 す る関与 水 準 の 高 低 が 意 思 決 定 過 程 に及 ぼ す効 果 を検 討 を行 う。 次 に,こ の決 定 へ の 関与 水 準 の違 いが 単独 で もた らす効 果 を参 考 に し つつ,被 験 者 の感 情 状 態 の差 異 と決 定 へ の 関 与 水 準 の 変動 の 交 互 作 用 を資 源 配 分 モ デル(Ellis& Ashbrook,1988)か ら検 討 を行 う こ とにす る。 本 研 究 で は,決 定 へ の関 与 を高 め る際 に,決 定 結 果 に 報 酬 が 随 伴 す る方 法 を採 用 して お り,こ の 方法 を用 い る こ とで決 定 課題 の現 実 性 が 高 ま り,決 定 結 果 の重 要 性 が 高 まる こ とが 予想 され る。 この よ うな重 要 な決 定 を求 め られ て い る と考 え られ る高 関与 条 件 で は,課 題 へ の面 白 さが増 す と同時 に,課 題 に含 まれ る情報 量 が多 く,よ り多 くの情 報 を記 憶 す る必 要 が あ る と感 じて い るた め,1つ の 情報 に よ り長 い時 間 を掛 けて検 討 を行 っ てい るが,決 定 に対 して よ り後悔 して い る とい う こ とが 明 らか に な っ てい る。 つ ま り,決 定 課 題 の現 実 性 を高 め たた め に,購 買 意 思決 定 場面 を想 定 した架 空 の状 況 設 定 に も関 わ らず, 課 題 を面 白 く感 じて い る とい うよ うに被 験 者が 課 題状 況 に積 極 的 に 関心 を抱 い て い る と考 え られ る。 また,同 時 に,決 定 に対 し て後 海 して い る とい う結 果 は,被 験 者 自 らが 設 定 した決 定 へ の 要求 水 準 を満 た さ なか っ た と考 え られ る こ とか ら,高 関 与条 件 で の 要求 水 準 の上 昇 を示 唆 す る もの と考 え られ る。 この よ うに,課 題 に対 す る関 心 が 高 く,決 定 へ の要 求水 準 が高 い状 況 で決 定 を行 お う と して い る被 験 者 が1つ の 情報 に対 して よ り長 い 時 間 を掛 けて そ の 内容 を検 討 を行 った こ とは,課 題 の情 報 量が 多 い と知覚 し,記 憶 に対 して 多 くの負 荷 が掛 か る と感 じて い る とい う結 果 と合 わせ て 考 え る と,よ り重 要 な 決定 を 的 確 に下 す た め に は処 理 す べ き情 報 量 が 多 く,記 憶 すべ き情 報量 も多 いた め1情 報 当 た りに よ り多 くの時 間 を掛 け て検 討 を行 った と考 え られ る。 以 上 の 解釈 を ま とめ る と,課 題状 況へ の 関 与 水準 を高 めた こ とに よ り,知 覚 さ れ た情 報 処理 へ の負 荷 が上 昇 した と結 論 づ ける こ とが 可 能 で あ る と思 われ る。 また,高 関与 条 件 で1情 報 当 た りの情 報 探 索時 間 が 増 加 した こ とか ら,探 索 した情 報 を入念 に検 討 した と考 え られ,こ の た め,高 関 与 条件 で は情報 探 索 の冗 長性 が 低 下 す る こ とが 考 え られ る。本 研 究 の 結果 で も,感 情 操 作 を行 わ な い場 合,高 関 与 条件 で,同 一情 報 を再 度検 討 す る回 数 が減 少 した とい う こ とは,情 報探 索 での 冗長 性 が 減 少 した と解 釈 で き,こ のた め情 報 探 索 数 も減 少 した と 考 え る こ とが可 能 で あ ろ う,し か し なが ら,こ の よ うな 情 報 探 索 で の冗 長 性 の減 少 が,不 快感 情 を喚起 す る操作 を行 った場 合 に示 され な か った こ とは,決 定 へ の関 与 が 高 ま って い る場 合 に不快 感 情 が 喚起 され た 場合 の情 報 処 ―65―

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理過 程 で は,感 情 操 作 が 行 われ ない場 合 と比 べ て 異 な る 情 報処 理 が 行 わ れ て い る こ とが 考 え られ る。 この 問題 を 資 源配 分 モ デル(Ellis&Ashbrook,1988)を 用 い て検 討 して い く。 まず,情 報 処 理 へ の 負荷 が高 ま って い る状 況 で,資 源 配 分 モ デ ル(Ellis&Ashbrook,1988)を 適 用 す る場 合 に予想 され るこ とを検 討 す る。 資源 配 分 モ デル(Ellis& Ashbrook,1988)の3番 目の仮 定 に従 う とす る と,不 快 感 情 が喚 起 され る こ とで意 思決 定 課 題 と は無 関 連 な処理 をす るた めの 処 理 資 源 が 配 分 さ れ る こ とが予 想 さ れ る。 もし,決 定 へ の 関 与 が高 い状況 に意 思 決 定 者が 置 か れ て い る な らば,知 覚 され た情 報処 理 負 荷 を高 め て い る に も 関 わ らず,不 快感 情 が 喚 起 され る と,意 思 決定 課 題 とは 無 関 連 の処 理 を行 な う処 理 資 源 が必 要 に な るた め,決 定 課 題 の 遂行 に必 要 な 処理 資 源 が確 保 で き ない状 況 に あ る と考 え られ る。 本 研 究 の結 果 で は,決 定 へ の 関与 が 高 い場 合,前 述 し た よ う に1情 報 当 た りの情 報 探 索 時間 が 増 加 した こ とか ら,入 念 に探 索 した情 報 を検 討 して い る と考 え られ るが, こ こで不 快感 情 の操 作 が加 わ る と,探 索 した情 報 を入 念 に検 討 を行 っ て も,一 度検 討 した情 報 を再 度検 討 す る回 数 が増 す とい う結 果 が 示 され て い る。 つ ま り,決 定 へ の 関与 が 高 い場 合 に不 快 感情 が喚 起 され る と冗 長 な情 報 探 索 を行 うこ とが示 唆 され て お り,こ の結 果,決 定 まで に 要 す る情 報 探 索時 間が 長 く,多 くの情 報 を検 討 した と考 え られ る。 この冗 長 な情 報処 理 は,決 定 へ の関与 が高 ま り,要 求 水準 の高 い 決定 を求 め,探 索 した 情 報 を 入念 に 検討 す るが,資 源 配 分 モ デル(Ellis&Ashbrook,1988) が仮 定 す る よ うに,不 快 感情 が 喚 起 され る と意 思 決定 課 題 とは無 関連 の 処理 を行 な う処理 資 源 も必 要 に な るた め, 処 理 し きれ ない情 報 が幾 つ か残 り,そ の た め,再 び,一 度検 討 した 情 報 の検 討 を行 う と考 え られ る。 この よ うな 決 定 は意 思 決 定 者 に 困難 な決定 を求 め て い る と考 え られ るが,本 研 究 の 結果 で も,決 定 へ の 関与 が高 い場 合,不 快 感情 が喚 起 され る と決 定 へ の困 難 度 が増 す こ とが 明 ら か にな っ て い る。 以上 の よ うに,資 源 配分 モデル か ら検 討 してみ る と,本 研 究 の 結果 は不 快感 情 に対 処 す るた めの情 報 処 理 と所与 の意 思 決定 課 題 を解決 す るた め の情 報 処 理 との間 で,限 られ た情 報 資 源 をめ ぐる葛 藤 の た め に生 じた と考 え られ る。 また,資 源 配 分 モ デル で仮 定 され る,課 題 に は無 関 連 の処 理 とは不 快 は感 情 状 態 を解 消 す るた め に行 な う情 報 処 理 過程(Cialdini et al.,1973;Isen et al.,1978)と 予 想 され る。 しか し,本 研 究 にお い て は,不 快 感 情 を喚 起 した 際 に,被 験 者 は この不快 感 情 を解 消 しよ う と意 図 的 に努 力 した のか 否 か につ いて は検証 して お らず,今 後 の検 討 課題 とな るで あ ろ う。 本 研究 の結果 を資 源配 分 モ デル に よ り解 釈 す る際 に は, 不 快 感 情 が喚 起 され た こ とを前 提 と して い るが,意 思 決 定 課 題 終 了後 に感 情 状 態 の評 定 を求 め た結 果,不 快 感 情 の操 作 は決定 後 の感 情状 態 の評 定 に直 接 的 に影 響 を及 ぼ さ なか った。 しか し,本 研 究 の結 果 は,前 述 した ように不 快 感 情 が 喚起 さ れた こ と を想 定 し資 源配 分 モ デル に よる 解 釈 が妥 当 であ る と思 わ れ る。 この ように感情 状 態 の認知 と実際 の 意 思 決定 過 程 に及 ぼす 効 果 の違 い は不 快 感情 の 喚起 に用 いた不 快 臭 に対 す る 自己順 応(self-adaptation) も し くは慣 れ(habituation)と 感 情状 態 の評 定方 法 に起 因 す る と思 わ れ る。 従 来 の嗅 覚 に 関す る研 究 に よる と,あ る匂 い物 質 が持 続 して呈 示 され た場 合,約5分 程 で その匂 い物 質 に対 し て順 応 もし くは慣 れ て し ま う こ とが 明 らか に され てい る (cf.Engen,1982)。 また,不 快臭 に関 して は順 応 が 速 く な る こ とも明 らか に され て い る(外 池,1990)。 これ らの 研 究 結果 か ら,本 研 究 の よ うに匂 い物 質 の 呈 示 を開 始 よ り長 い時 間(20∼30分)が 経過 した 後 に感 情 状態 を評 定 させ た の で は呈 示 した匂 い に順応 して いた こ とが 予 想 さ れ る。 その ため,呈 示 した匂 いが知 覚 され た感 情状 態 に及 ぼす 影響 が ほ とん ど消滅 した と考 え る こ とが 出来 る。 ま た,匂 い に対 す る反応 を言 語 で求 め る こ と自体 が 困難 で あ る とい う こ とも指摘 され て い る こ とを考 え る と(Engen, 1982),匂 い に よっ て喚 起 され た 感 情状 態 を 言語 評 定 で 明 確 にす る こ とを一 層 困難 に して い る可能 性 も存 在 す る。 次 に,竹 村(1988a,b)やForgas(1989)の 研 究 に お い て も問題 とな った,感 情 喚 起 の操 作 に よ り.被験 者 の 自 尊 心 を変 化 させ,こ の 変化 が意 思 決定 過 程 に影 響 を及 ぼ した の で は ない か とい う点 を検討 す る。本 研 究 にお い て, 感 情 喚起 に よ り被 験 者 の 自尊 心が 変 化 した と考 え るな ら, 不 快 な匂 い へ の順 応 と異 な り,自 尊 心 が比 較 的短 時 間 に 変 化 し に くい こ とを考 慮 す る と,課 題 終 了 後 に 自尊 心 に 関 して評 定 を求 めた 際 に,評 定 に何 らか の変 化 が 生 じる は ず で あ る。 しか し なが ら,本 研 究 で は 自尊 心 に対 して 感 情 喚 起 の 操作 が影 響 を及 ぼ して い な い とい う結 果 が 明 らか に な って い る。 以 上 の 結果 は,本 研 究 に おい て竹 村 (1988a,b)と 同様 に不 快 感情 と課 題 へ の関 与 水準 の 交互 作 用が 示 され て い る こ と を合 わせ て 考 慮 す る と,意 思決 定過 程 の よ うな認 知 過 程 に不快 感 情 が 及 ぼ す影 響 を検 討 す る際 に,自 尊 心 の影 響 を介在 させ る必 要 は な い とい う こ との傍 証 とな る と思 わ れ る。 こ こで疑 問 と して残 るの は,匂 い に対 して か な り速 い 時点 で順 応 した と仮定 して,順 応す るまで に喚起 され た不

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秋山 ・竹村:不 快感情 と関与が意思決定過程 に及ぼす影響

快感 情 の効 果 が いつ まで持続 した のか とい う こ とで あ る。 この問 題 に加 えて,“ 連 続的 な刺 激 に対 しニオ イ の感 覚 が 消滅 す るの は,受 容 器 レベ ルで 反応 が不 能 とな ったか ら と い うよ りも中枢 嗅覚 経路 での 活動(Adrian,1950)が 抑 制 され た た め と考 え るほ うが よい の で はな いだ ろ うか ” と い う意 見(Ottoson,1956)や “い わ ゆ る順 応 は ‘慣 れ ’ にす ぎない の で は ない か ” とい うEngen(1982)の 主張 を本 研 究 の結 果 に適 用す る と以 下 の よ うな仮 説 が 考 え ら れ るで あろ う。 つ ま り,受 容 器 レベ ル で匂 い に対 して何 らかの 反応 が 生 じた場 合,中 枢 嗅 覚 経 路 で は時 間 が 経過 す る につ れ,こ の反 応 が抑 制 され る可 能 性 が高 いが,他 の神 経 系,例 え ば,意 思決 定 に 関 わ る情 報処 理 を司 る神 経 系 に対 して は何 らか の影 響 を及 ぼ す こ とが考 え られ る。 この嗅 覚 に 関 す る議 論 は全 く仮 説 の域 を出 る もので はな い が,今 後 この よ う な嗅覚 刺 激 と社 会 的 行 動 との関 係 を 詳細 に検 討 して い く必 要性 を本研 究 の結 果 は示 唆 し てい る と思 わ れ る。 また,こ の よ うな 嗅覚 刺 激 が 及 ぼ す影 響 を考 え る際 に は,嗅 覚 自体 が感 覚 的 な快-不 快 の程 度 に 影 響 を受 け,嗅 覚 に関 す る反 応 も情 緒 的で あ る と考 え ら れ て い るた め(Engen,1982),嗅 覚 刺 激 が及 ぼす効 果 を 媒 介 す る要 因 と して感 情 を取 り上 げて い くこ とが必 要 に な る と思 わ れ る。

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(

1993年1月12日 受 稿 1993年8月22日 受 理

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