「
伝統
的
工
芸
品
」
の
今
日
的 意 味
CQntemporary
Necessity
ofTraditionat
Crafts
荻
野 克彦
荻
野 克彦
デ ザ イン事務
所OGINO
Katsuhiko
Ogino
Katsuhiko
Design
1 ,
は じめ に これ ま で、
私は プロ ダ ク トデザ イ ナー
と して、
主 に 生活用 品の デザ イン開発と製 品 化にか か わる仕 事 を してきた。 プロ ダク ト デ ザ イナー
と言っ て も、
対 象は さま ざま で、
地域の伝
統的 な手
仕 事か ら、 機 械 化され た量産 品 まで多
種多
様な 産業 形 態に関わっ て きた。
その体 験 を踏 ま えて伝 統的工芸品の今日的 意 味につ い て考えて みたい 。 本 稿で は、
まず、
今日の社 会 状 況 を概 観 する。 併 せ て、
先人たちは どの ような 世界観 や 自 然 観 を もっ て、
どの ように 日本 列 島で暮ら して き た か を考え、 そこか ら、
伝統的工芸品の今日的 な意 味を考えて み たい と思う
。2 .
今 日の社会 状況 (1
)MA1NSTREAM
Its
’
One World :地球は有限で劣 化す る。Intcrnationa 且
fair
trade :世界公 [E
貿 易。Voiuntary
Simplicity
:自制を持つ ことで自ら の価 値 と す る生活。Autarkie
:自給 自足 圏の形 成=
適正規 模 社 会Sustainabie
Community
:持 続可能な 地 域 社会。 Zero Emission:資源還元型社会の 為の 企業の連帯。 まず、
時代を切 り開 く世 界 共通 認 識とし て、
21世紀 の課 題は環 境 問 題である ことは確かである。
企業に とっ ても、
市民 生 活 に おい て も、
これ らのキー
ワー
ド にい かに取 組み、
結 果を出して行 くかに全てがかかっ てい る。 例 えば、
ゼ ロエ ミッショ ンに 対 し、
生 産 時の 廃 棄物 「ゼロ」
を 目指して、
日本で も異種企業 間が連 帯する機運にあ るの はその好 例であろ う。 (2
)Socio
Design
21 世紀の企 業 理念の ひとつ と して
、Socio
Design
が 挙 げら れ る。 企業の 将 来性と市 民 資 本の形 成を目指 し、 企業 自ら厳 しい基 準を課し、
環 境に配 慮し た製 品 開発を積 極 的に行 うこと が 肝 要 である。 ウィ ル クハー一
ン社は フ ォル クス ワー
ゲン の 工場 な ど がある ドイツ北 部の 家 具メー
カー
で、
日本の 規模 か らすれば中小 企 業に過 ぎない が、
「ソ シオ デ ザ イ ン」
に徹
し た 製 品 開 発 を行っ てい る。 (3
)ノキア の質 問 事 項U
環 境管 理システム はあるかc、 2!廃 棄物 管理 機能とリサ イ クル シス テ ム はあるか。
3涛
命 を終 えた製品の リサ イクル システムは あるか。41
環境に影
響を及 ぼ す事
故に対す る対応シス テム は あ る か。
これ ら は、
携 帯 電 話で、
世界シェ アの23 〜24
% を 占め てい る フ ィ ン ラ ン ドの ノ キ ア が、
日本は じめ世 界の協 力メー
カー
に対 して行っ て い る質問事
項であ る。 人口600 万に過 ぎない 森と湖で知 られるフ ィ ンラ ン ドは、 IT
情 報 産 業 先 進 国であ り、
「ソ シオ デ ザ イン1
を実 践してい る環境
先 進国であ る。 そ れ と同 時に、20
世紀のモ ダンデザ インに大き な影 響を与え たアル バ・
ア ア ル ト、
カイ・
フ ランク らの デ ザ イン を 切手にするなど、
「生活
」
と 「デ ザ イン」の 関わ りが深い 国で もある。
その フ ィン ラン ドの 先端企業 が 世界に 問いか けてい る。 (4
)1SO14000
「国 際標 準 化機 構 / internationa]
Organization
Standard
−
izationの 略 称」 国や 地 域に よっ て異な る製 品規 格や基 準 を 世界共 通化するこ と を目 的とし て 設 立 さ れ た ISOI4000 は
、
製 品が環境に与える影響 を、
原料調達 か ら完 成にい た るエ ネル ギー
消 費、
流通、
破 棄、
汚 染 物 質の処 理 方 法を評 価し、
製 品の ライフサイク ル を環 境配 慮 型にする国際 環境 規 格である。ウィ ル クハ
ー
ン の 「ピ ク ト(
図1
) 」はこ の規 格 を ク リヤー
してい る。 接 斉1」着を用いず、
ほ ぼ100 %分 解可能な椅
子で、
リ サ イ ク ル に適 し てい るばか り か、
常に部 品の 取 り替えに応 じ られ る利点もある。
既 に、
この 規格に よっ て生 産 さ れて い る製 品は数 多 く、 日本でも対応が急が れてい る。10 SPEclAL IssuE oF JssD vol
,
8 No.
2 2001 デ ザ イ ン学 研 究 特 集 号図1 ウィ ル クハ
ー
ン 「ピ ク ト」(
5
) 「地球」
人 工衛 星に よ る探 査
、
測定技 術や観 測システ ム の 進 歩、
現 地 調査 等か ら、
オ ゾン層の破 壊、
環境 汚 染 の実
態、
平 均 気温の ヒ昇による気 象の異 常 変 化と 災害
とい っ た深 刻な形で 「今日の人 間の 生 き方」に、
地 球は 「有 限」 だと警
告 してい るこ とが わ かる。地球は無限 だ と信 じて来た人 類が 「限 りあ る 地 球 」 を認 識 したの は
、
地球を 初め て別の天体か ら観 測 した1969 年以降の こと だ。 天災 だと さ れてきた洪 水や干ばつ は人 災であり、
自然の乱用による 「文 明 の ッ ケ」 だ とはっ きり わ か る ほ ど、
地 球は人 類に対 し て さ まざま な問題を投 げかけてい る。(
6
)環境 悪 化の構図1
環境 悪 化の構 図に はい くつ か あ る よ
う
に思 える。まず
、
工業 化と都市
化の進行、
豊かで便 利 な生 活 を 求 めての 浪 費、
人口 の爆 発 的 増 加が も た ら す環 境 汚 染な ど、 構 造 的 な悪 循 環が 生 じ てい ること。 (7
) 環 境 悪 化の構図2
農 業と食糧の分 離、 農 村の疲 弊が生 む 都 市 化
、
そ れによ り都市
環 境が極 端に悪 化 する こ と。世界の人口 は100 年前には
16
億、
現在60
億で50
年 後 に は100 億人 に な る だろうと予 測さ れ、
人類は確 実に一
人当
た りの面積が減る時代を迎 える。 人 口 過剰の問 題は、 す なわち食 糧確 保の問題で あ る。 食料の効 率 的 な増 産の た め に農業
と食糧の分 離が起こ り、
農村の疲 弊が過剰な都市化
と都 市環 境の極 端な悪化
を招 く。 若 者が村を出て都 会に行 くとい うことは、
村の構成力を 弱め る ことで、
工業 化に よ る 豊 か さの象徴が都 市だ と すれば、
工業 化社 会 は村を切 り捨て て きた歴史だろう
。 農 村が都 市を包 囲してい たのは 過去の ことであり
、
工業
化の波が 田畑を驚 異 的なス ピー
ドで侵 食し続 けてい る。
(
8
)環境 悪化の構 図3
急 激な都 市化によりもた ら され るのは貧 困であ り
、
貧 困がが人間の 大 移動を呼ぶ。 強制 移住、
アマ ゾン入 植な ど が 政策 的に行わ れてい るが、結
局、
都 市に移 住 者が舞 戻るとい う悪循環を繰り返 して い る 。こ れ らの 環
境
悪化の構 図をながめ る と、
人間と自 然の 循 環の 輪が 断 ち 切 られ て い る状 況 が見えて く る。 自然 か ら食物や もの づ く りの 材料
を得て生活の 糧 と し、
使 用 後には ま た自然に 返 してい く.
とい う循 環、
ま た同 時に、
自然を慈しみ 畏 れる とい う逆 方 向 の循環。
そ の輪がい ま断 ち 切 られてい る。(
9
)地球 温 暖 化と要 因の連鎖
地 球温 暖化は何の脈絡も なく存 在してい る要 因が
、
何ら かの きっ かけで連鎖し て ひ き起こす 問 題の代 表で あ る。 関係 する要 因の連鎖
と して、
消える熱帯雨林、
縮 小 する森 林、
失わ れ る 土壌、 砂 漠 化、
塩 害、
干 ば つ、
異常 気象など地球規 模の環 境 変化が あ る。さま ざま な要 因が連鎖 する こ と で、 オ ゾン層の破 壊 や
、
エ ルニー
ニ ョ現 象 など、
今 まで、
考え られなかっ た問題が発 生してい る。 森林が文 明の発 展と生 活に決 定 的な役割
を果た したこ と は、 アマ ゾン の強制入植を み るまでも なく、 古 代 文 明の発 祥地 が、
こ と ご とく荒 れ 地に変っ たことか らもわ か る。東 京の 熱の状 態の
解
析 か ら は、
山手線の 内側にある 樹 木 を倍に増 やすと、
木を植えるだけで熱帯
夜が解消 する とい うデー
タ や、
地球 温 暖化は森
林伐
採が原 因だ とする 「地 球 白書 」、
木は用 材に成っ てか らで も、
C
O2
を 固定 する との指
摘な ど、 木の持つ 豊か な ポ テン シ ャ ルに今 更な が ら驚かされる。 しか し、1968
年と1998
年の世界の森林分布を比較 する と、 この30 年間だ けでかな りの森林が消 滅してい る。 特に熱帯
雨林の減 少は、
地球
の 空冷
浄 化 装置を失 うばか りで な く、
そこ に 生 き る未 知の生物 種を永 久に喪失す る とい う取 り返 しの付かない 問題 を抱 えてい る。3
.
日本 を振り 返 っ て世界が 「地 球レベ ル」で
考
えな け れ ば な ら ない 背 景 にはこ の様な 現実と危
機 感がある。「限 りある地 球
」
デ ザ イ ン学 研究特集 号 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
,
8 NQ.
2 200111が
、
どこまで人 間を養 える のか とい っ た さし迫っ た現 実の 中で、
振 返えっ て日本の実 態は どうだろうか。 (1
)状 況順 応 型 根 底ビ ジョ ンが はっ き り しない反 面、
流行に敏 感に 対 応し、
かつ、
短 時間に忘れる国とい わ れる。日本列
島
は、
太平洋、
フ ィリ ピン海、
ユー
ラシアの 各プレー
トが 重 なり合 う位 置に乗ってい る た め、 全国 で温 泉が楽しめ る とい う利 点はある もの の、 常に、 噴 火や大 震 災の危険 と 背 中 合 わせ で暮ら し てい る。
ま た、
大小4000 の島か ら成る 日本は、
恵ま れ た自然と、
季 節の移 り変わ りが はっ き りしてい る ことから、
概 し て 「状 況川頁応 型 」の 国民だ とい わ れてい る。 (2
) 大 量 生産・
大 量 消 費 経 済、
消 費 者 利 益 還 元薄 利
多
売で稼ぐ企業に とっ て 「総 額 と しての付 加 価 値 」を 追求できる大量
の消 費 者が不可 欠 で あ る。 企業の掲 げる消 費 者 利 益 還 元とはあ くまで も企業の 都 合にす ぎない 。 「安 くて便 利 」なモ ノ の供 給は企業
の サー
ビ ス、
消費
者の利 益優
先こそ 企業
の使命
で あ り便 利で安 けれ ば、 単 価 当た りの コ ス トパ フ ォー
マ ンス は高
くユー
ザー
メリッ トになる。消
費
社 会とは、
高 度な産 業と生産 力に依 存して人び と が 生活してい る社 会の こと だ。 雑 多な消 費財 を 「便 利で安い」とい うだけで、
つ い買っ てしま う消費 者 が多
く、
改め て見 渡せば、
い らない モ ノが 家の 中 に溢れ てい るという
の が、
日本型消費 文化の実態だろう
。 (3
)商 品 価値
「売 りモ ノ」と して の み優れてい る商 品、
そのよう な一
側 面だけが追 求 され た商 品は、
一
・
一
見 「使 えそう」 「お も し ろ そう」
「使い易そう」で
、
モ ノ と して優 れ てい る ように見 える もの の、 そ れ「
ら し さ」だけが強 調 され た 「生活のた めの」とい うリア リティー
が ない もの である こ とが多
い。 この よう
な多
量 同種
僅差の「
た だの商品」
が、
現在、市
場に溢れてい る。 使い手
の 「顔」の見えない、
独 りよ が りな多 機 能化の厚 化粧 を競い、
短命な商品の 開 発 を 繰 り返 してい る。 「商 品 の価 値 」と は何だろうか、「
商 品の価 格 」と は異な る ものなのか、
い ま、
問い 直すときにきてい る。 (4 )市 場 原理厂
価 格が全て」という
市 場ま か せの経 済は、 無 制 限に便 利さ と欲 望の充 足、
利 己主義を優 先さ せる。 自 国の土 壌をあっ さ りと捨て て、
他 国の土壌を 「金 で買い叩 く」 略 奪 型競 争社 会の芽が こ こ に はある。 「安ければ安い ほどい い」とい う考 え方は、
果たして 誰のた め なのか。安
価な労
働力
と材 料を求め、
行く先々 で生産 者を買い叩 き、
少しでも安い製 品を 生産し、
薄 利多
売で利益 を追求 する企 業や業者が後 を絶ない。 日本 を 放 棄する とい うこと は、
他 国の土壌を奪 うことであ り、 他 国の土壌を潰 すこ と だ。100
円ショ ップで売られ る天 然素材の アジア風の小物も、
飽 きた ら捨てられ る運命
に ある。 「売れ れ ば勝ち」の日本の経 済システム を、
業界 も消 費者 も見 直 す必 要がある。 エ コ ノ ミックアニマ ル だ、
と世界 中か非 難されて久しい 日本 人は、
果た して、
アニマ ル体質から脱 皮し たの だ ろうか。薄 利
多
売の 体質
と は、
ひ た す ら売
れ筋商 品 を求 め、
生産 現 場も流 通 サ イ ド も、
利 益 目標を目指して 走 り続 ける ことで ある。 企業と業 界は何よ り も効 率 を優 先し、
社 員に して も、
必ずしも生活
の 「質
」の向
上 に結びつ かず、常
に不安
を抱えてい る。 (5
) 問 題は個 人 消 費の「
質 」「
安
くて も否定
する」勇気、安
け れば安
い にこ し たことは ない が 「なぜ安い の か」
を 問う
姿 勢、
逆に 少々高 くて も納 得し、
高 くて も その理由に満 足でき れば購入する とい うように、
消 費 者 か ら 「生 活 者」
へ の変革
が望 まれ る。 消 費 者が 生産 者に変るこ と が ない 限 り、 私たちは 生 産さ れた商 品 範 囲 内で、
限ら れ た選択をし、
あ く まで も受 動 的 な立場で満 足 してい る に過 ぎない。 し た がっ て、
豊かに生 活 するとい うことは、
い か にモ ノ を 大 切に使う
か とい う意識の 問 題であ り、
モ ノを 浪 費 することでは なく、 む しろ モ ノか ら解 放 され た 楽 しみを、
生 きる ことではない だろうか。 (6
>Keywords
二 不 況 力= 景気
か ら の解 放 つ ぎつ ぎ と新しい モ ノ を求める文 明 形 態 自体が終 わ りつ つ あるMetabOlism
:村 社会の 知 恵。島
国 な りのや り方で、
自然と共生 して きた長い伝 統がある。Closed
syslem :江 戸時代の鎖国 に よっ て藩
制 連鎖
連 鎖 共生 社会を体 験。Community
Spirits
:愛 郷 精 神、 住 民が 心 か ら自分た ちの よくし たい と思 う気 持 ち。12 sPEcIAL ISSuE OF JSSD vol
.
8 No.
2 2001 デ ザ イ ン学研究 特 菓 号今日の不 況の意 味は
、大量
生 産・
大 量 消費
に支 え ら れてきた 「景 気 」か らの解 放だろう。
キー
ワー
ド 「不 況力 」に は、
世 界 認 識に掲げ ら れ た 長期的に持続
で きる生 活 圏の 形 成、
自給 自足や節 制な ど ポ ジ ティブ な意味
が あ る。
メ タボ リ ズム、
クロー
ズ ドシ ステム、
コ ミュ ニ ティー
スピ リッツは、 地 球が有限 で 閉ざさ れ てい る という
認 識 か ら生 ま れたもの であ り、 こ うした「
応 分 負 担 」の 考 え方は、
物 質的な富より、自
然と 共 生 し た生活を優 先せ ざるを得
なか っ た 日本の 村 社 会 や、
鎖 国 時代の基層と し て、
すでに 日本 人が経 験し てきた ことである。興 味 深い ことに 「とにか く自然を愛 するこ と
。
それ が、
芸術を理解
するの に欠か せない」と、
ゴッホ は弟に 宛てた手
紙に書いてい る。 しか も初期の代 表作、
『ラン プの明か りの 下 で ジャ ガイモを食べ てい る人た ち (図2
)』に対して、 「
皿に伸ば さ れ た手
と 同 じ手が、
土 を掘
りジャ ガイモを育てたのだ。 農 家の人た ち がいか に労
働に励み、 正直に自分た ちの糧 を得ている か。 この絵か ら 『ベー
コ ン とジ ャガイモ の湯気や匂い』を感じ取れ る よう
であれば、
それ が健全な見方だ」と も書い てい る。
ゴッホが 浮 世絵 を模写して 「雨の 中の橋」を描いたこと など、
ま た、
浮世絵
を理解す る に は 明 るい 空の下で自然 を観 察する こと だ とアル ル に移 り、
その後、多
くの作 品 と独 自の様式 を残したこ とはよく知られている。 ゴ ッホ が 「応 分負
担 」に価値
をお き、
日本を光に満ち た国、神
と仏を区別し ない、宗
派にとらわ れない民族だ と理解し て いた ことは、
ゴッホ自身が自然を宇宙
的 な絶対 的存在 と して とらえていた からで、
当時の 日本文化の本質と も い え る 「欲望の 限界
」 を、
自分に厳 し く課していた か ら に違いない 。4 .
ものづ く り、
もの つ かい の根 底に流れ る概念
(1
)八百万の神
々自然 界に存 在 する もの の数だ け無 数に神は存 在 す る。 人間 自体 を他の 自然 物と同 列におき、 人間の都 合によっ て変 化 する優しい
神
々 と 自然界とを一
種の 連帯
感によっ て と ら えてい た。ゴッホの 洞 察ど お り
、
日本の「
神 」はヤオヨ ロズ = 無 数に存
在してい る。
今 も各 地で様々 なお祓い が (部分 ) 行われてい る ように、
神は自然界の隅々 に宿り、
人 間の内 部にも宿っ てい る。
自然と神は一
体で、
入も ま た、
自然と結ば れてい ると日本 人は考
えてきた。 (2
) 自然 觀 かつ て、
日本人 に とっ て自然は よい もの、
人 間に 恩 恵を与えて くれる もの であっ た 。 家の 内と外との 区 別 がほとん どなく、
自然の風 物を家の 内 部(
襖絵
や欄
間)
にまで持 ち込んだ。 特に晴れ着に代 表さ れ る着物 や 帯に嫌い な もの をわざわざ描 く訳が ない。自然を遮 蔽し たヨ
ー
ロ ッパ の壁構
造 に 比べ、
日本
建 築の柱と梁の構 成は、 頼 りない ほ ど解 放 的だ。 こ の 差は自然の違い であ り、
風 土の差であろう。
(3
) 水水に流 すと は
「
過去の事
をと が め ない」
とい う意 味。 常にきれい な水が豊 富に 流 れて い る環境
に身
を 置い て きた 人 び とにとっ て、
水は無 尽 蔵に一
ヒ流か ら 流 れて くる ものに違い ない 。「
水 」が 日本人の 生活文
化とい か に深 く関 わっ て きた か は、
日本 語の 「過去の こ と は と が め ない」、
水
に流す とい う、
世 界で も独 特の 用 例に始まっ て、
水 も滴る、
水 際立つ、
水があ く、
水の泡、
水 入 り、
水かけ論、
水 心、 水ぽい 、 水 臭い な ど、
水に 託 した表
現が 豊富
にあることか ら もわ かる。 言 葉が たくさ んある とい うこ とは、
それだ け 関 わ り方が 複雑
だ と い うこ と だろう。 特に、水
に向け る 日本人の まなざ し と受
止 め 方は、
雨 や 川に対 する 「あわ れ」の感 情 ば か りか、水
は単
な る水で はな く、
つ く られ たものデザ イン学研究特集号 SPECIAL
ISSUE
OF
JSSD Vol
.
8 No.
2 200113だ との
、
や は り世 界に例のな
い 認 識があっ た か ら だ。
水 をつ くる とい うこ と は、
木を山に育 成 する こ と で、
根に滲み込んだ大 量の 雨を山に貯 え、
川 をつ く り、
平 野を蛇 行し、
田畑を潤す という
壮大なネッ ト ワー
クの創 出に他な ら ない 。 昨今の都 市 化によ る水 質 汚 染、
海や 河 川の汚れ は、
水を自然 物とし て大量に消 費して い る私たちの生活
が、
自然を荒 廃さ せ る ほ ど脆 弱 化してい ることを何よ りも如 実に示 してい る。
(4
) 米 人と大 地との合 同傑 作。 自然か ら得た ものは自然 に 還 元するシ ス テ ム、
祭 りに しろ、
童 謡に しろ、
民 話、
相撲 まで歴史と環境と を養い つ づ けて来た 日本 文 化の土 台で もあ る。
「米 」は 日本の土台であ り
、
米 作に代表
さ れ る農 業によっ て、
水と同様、
日本の景 観もつ く ら れ た と い っ て も過 言では ない。 「山に木を植える のは、 子 の代、
孫の代 を思っ ての こと、, 春 先、
田植 え をして か ら穂が た れ る まで には半年、
柿は8
年
た た なきゃ 実はなら ん。 『未 来のため に汗を流 す。 』 農業
っ て もの はそ うい う もん なんだ。 街の 人たちは 自分の 贅 沢の た め に、
子供の財 産 を食い潰
し、
おまけ に借 金 まで負わ せるそうだ が、 俺た ち百姓 じゃ考 えら れ な い 」とは、
ある農 山村で聞い た心に残る言 葉だ。 (5
) 森 人 間の最 も貴 重 な資 源である 「空 気 」と 「水 」を蘇 生 し、
貯 える源。
豊富な生物 量 「バイ オマ ス」
をはぐ くむ 木々は地 域資 源であ り地 球の財 産である。 「森 」は米 作 を基 軸に した緻 密な水のネッ トワー
ク の象 徴であ り、
由の緑は、
先人 た ちの暮ら しが、
いか に自然と密 接な関係を保っ てい た か を示 してい る。 「米」
が人と大地との傑 作だ とすれば、 「
森 」は 人 と 自然との 共 生 をシ ンボライ ズするもの だろ う。
5
.
伝 統 的工芸 品の今日的 意 味では
、
日本の 「安定
と秩 序」、
し か るべ きゴー
ル と は何か。 そして、 何を目標に どう取 組んで行 けば い い のか を考
えて み たい。これ まで の話 をまとめ る と
、
まず、
世界の 先 進 的な 国や企業は、
時代を 切り開 く「
安
定と秩 序 」の共通 認 識を掲 げ、
具 体 的に行 動してい る こと。 その背 景に、
地球が 人類を養 う限界に近づ い てい る現 実が あるこ と。 日本は経 済 大 国であ りな が ら状 況順応 型で、
「安 定と秩 序」に対 する展 望 もなく、
誰も が将 来へ の不 安 を感じ なが ら、
ゴー
ルなき競 争 を続けてい る こ と。 他 方、「
神と自然は・
体 で、 入 も ま た、
自然と結ば れて い る」とい う世界に例の ない 日本の伝 統 的思想が 生活 と環 境のバ ラン スを維 持し、
日本の 田園風 景までも を つ くっ て きた こと、
などに要 約で きる。日
本
に は利益の ために環 境問題に取 組 む産 業界
は あっ て も、 生 産や流 通段 階で のエ ネル ギー
の無 駄 を 問 題にする企業は ほ とん どない 。 しか し、
体 制 維 持 だけの ため に大 量生産を繰 り返す企業は、
今 後、
「グ リー
ン コ ン シュー
マ、
ハ イコ ン シ」L・
一
マ 」と呼 ばれ る 「安定
と秩 序」
の 規範 を持
っ た実質
的 なユー
ザー
か ら は 見 放 さ れ る 運命に あ ろう。 化 学調 味料や 添 加 物の多い食 品は 「質の悪い 食 物だ」とい う考え が常 識 化しつ つ ある ように、
きわめ て日常 的 なモ ノ か ら始まっ て、
住宅関連消費
財に い た る商品の 価値
基 準が、
価 格か ら「
環境」
や「
健康」
を キー
ワー
ド に 「安 心」と 「安全 」へ と確 実に変っ て行 く。 21 世 紀は 「環境 」と 「持 続可能 」 を見い だせ る商 品 だけ が、 価 値を持つ 時代にな る だろう。
このように考えると、 昔か ら風土の中で自然観や世 界観をベー
ス に、
自然と共生 しな が ら資 源 循環とい う 原理に もとつい て作ら れ、
使わ れてきた伝 統 的工芸 品 は、
「環境」
と 「持続可能 」とい う両 側 面 か ら、
きわ めて今日的な意 味を有 する とい えよう。 しか し な が ら、
伝 統 的工芸 品の有 する今日的 意味は伝 統 的工芸 品 産業の 従事
者に さえ、
認 識 さ れ てい る と は 言い難い。 本 稿では、 これ らの今日的 意味を紹 介 する と と もに、 今 後に残されてい る課題を整理 した。 (1
) 資源の活 用資
源の再生、
持続
可能
な農林
漁工 は、
環境
と親密
で調 和の と れ た関 係 を培っ て 来た地 域の総 体であ る。 永い 試練
を経て身に付けて来た、
白然に対 する 敬 意と洞 察 力が 地 域資 源 活 用の 基本に違い ない 。 サ ス ティナ ブ ル・
コ ミュ ニ ティー
= 持 続 可 能な社 会 形成の基 本は、
その 土 地 ならで はの 環境づ く りをお こ ない、 地 域 を 「経 済 化」
させ るこ とに あ る。
例えば、
民 芸 焼で知ら れ る大 分 県の小 鹿田 は、
山合い の集 落14 sPEcIAL IssJE oF JSsD vol
.
8 No,
2 2001 デザ イン学 研 究 特 集 号で
、
今でも水 車 を使っ て陶土の 粉砕を行っ てい る。
渓 谷の せせ らぎと水車
が打つ杵
の音とが、 民芸
のイメー
ジ に重なっ て「
焼 物 」を引き立て てい る。 そのため今 では、 民 芸ファ ンば か りで なく、
四季の趣 きを楽しむ 観 光 客で年 間 を通し賑わっ てい る(
図3
>。
「限 りある地 球 」と
、
地域の 風 土 的 な 制 約と は同 意 語で、
何が 自分たち を支 えて きたの か を考
えるこ と が 「ソシ オ デ ザ イン」
のス ター
トなの だ。 持 続 可 能な 社会 形成 と は、 エ コ ノ ミー
とエ コ ロ ジー
と を共 生 さ せ た社 会のこ とであ り、
伝 統 的工芸品の可能 性 が そこ にある。工芸の土台ともい える
、持
続可能な仕事
の意 味を 掘り 下 げ、
見 直 すこ とこそ先 決だ ろう。 と もする と、
「売れ るか、
売れない か」の議 論に終 始し が ち であるが、
伝 統 的工 芸 品 産 地は、
自分 た ちの 地域を 認 識 し、
伝 統 的 工 芸 品 を 地 域資 源と 位置づけ る価 値 観を確立すべ きで ある。(
2
) 地 域の ブラ ン ド 日々 の暮ら しの 中で自分 達 が 何を大 切にして 来た か、
何を大 切にしてい るか、
生活環 境 を 支えて来 た 事 物 を、
固有の資
源と し て 「形 」にする。 その地 域 だか らこそ 可能な「
必 然 」を素 直に表 現 するこ と が 肝 要である。少し角 度を変えて見て み たい。 屋 久 島や
、
白神
山 地 などの世 界 遣 産は、
文 字通 り世界ブラ ン ドで あ る。 静岡 県も、
富士山の世界 遺 産 登 録を熱 心に働 き 掛 け、 ユ ネスコ か ら調 査 員 を呼ん だところ、
ユ ネス コ から きた調 査 員が、
こ こは 「由 じゃ ない 」と帰っ て し まっ たとい う経 緯がある。 行っ た人 なら頷ける だろう。
登山 道のい たるとこ ろ に大き な休 憩 所が軒
を連ねてい る し、
客 引 き まがい の こと が行 なわ れて い る。 登 山 者の マ ナー
も悪 く、
小 屋や道の周 辺な ど は か な り汚れてい る。 世 界 遺 産の認 定は、
島や山 地 に代 表 され たハー
ド面ばか りでな く、
その地域;
ハー
ドを 中心に関係 者が、
日々「
何を大 切にしてき た か」、
「
何を大切に して い るか」 とい う、
ソフ ト 面に対 するお墨 付で もある。 したがっ て、
ハー
ド面 を保 護 する ため に は、
「何 を大切 に し な け ればな ら ない か」とい うソ フ ト面の柱が必 要であ り、
肝心な のだ。 「何か しな けれ ば」と他 所を真 似て も、
自分 図3
大分 県 の 民 芸 品 産 地 小 鹿 田の風景 た ちの手
足 に基づ い た 「その地域 ならでは」の必 然 が なけれ ば、
世 界 遺 産ブランド とい えども、
中身
の ない タダの箱に 過 ぎない 。伝 統 的工芸品の産 地 も、 今まで は、 他の産 業と同
様、
増 大、
増幅
志 向が強 く、 売上げや生産 量とい っ た ビジ ネス 情 報だ けが取り沙 汰さ れ て きた。 産 地 は、
ユー
ザー
や市場の情報を得よ うとはするもの の、
伝統 的工芸 品が 日本の生 活 文 化を担っ てきた とい う 自負を 持っ て、
産地 か らの情報
を発信 すること は ない 。 デザ イン と は自己の 中の情 報を取 出 す作 業であ り、
その情
報
を表 現 する ことで はない の か。 そこ に、
地域のブラ ン ドが表 出するのではない だろ うか。
(3
> 地 域 社 会の基 盤を 強 く す るモ ノ伝統 的工芸 品は
、
地域 資 源を活用 し な が ら、
生活 環 境 (衣・
食・
住 )の質 を高め る ことを可能に す る。 ま た、
生活へ の意欲や楽し さ を、
生 産 (ブラン ド)を通 して知ることが出来る‘
’
Sustainable
(bmmmity”
・=持
続 可能
な 地域 社会を確立する ことにつ な がる。フ ラン ス人の食へ の 関心の 高さ は食 糧自給 率が、 アメリ カ を 超えてい る こ と か ら も わ か る。 しか し 日 本 料理 とい う
一
般 的な料 理が無い ように、
フラン ス 料 理とい う料理は存 在し ない 。 あ るの は 風 土 と、 そ の 土 地 に暮らす 人の 手、 その土地 ならで はの素 材 が つ く り だ す その土 地の味だけだ。 海や山、
南 部と北 部な ど各 地の特 異 性が、
多 彩で個 性 的な料理を無数
に生 み、
その多様
な 「質 」の 総体が、 世 界に名だ た るフラン ス料理 と な り、
食を芸術の域まで高めていデ ザ イン学研究特集号 SPECIAL IssUEOF JssD vol
.
8 No.
2 2001 15るの であ る。
伝 統 的工芸 品は、 その 土 地で得 ら れ た材 料で
、
そ の土地の人材の技術 を もっ て制 作さ れる。 その土地 な らで はの 素 材がつ く りだす 特異性が個牲 を放っ て い る。
そ れ ゆえに、
こ れ らの工芸 品は地域の資 源を 活 用し た産 物という
意 味に おい てだけで はな く、 地 域の個 性を代 弁 するモ ノ と しても、
「地域 社 会の基 盤を築くモ ノ」と して の要 素を もっ てい る。 (3
) 人 間 関係の循 環を結ぶ モ ノ (Risk
Society
の 逆とし て)
Risk S ietyは
、
市民の合意、
コ ンセ ンサスが取れ て い ない社 会を 「リス ク社 会」とす る概念である。 日本 は 「原 発をとる か」、
「電 気に頼らず生活する か」の どち らか を迫る選 択強 制、
分 断型 と も言える。
市民の 合意が な け れ ば それは社 会の 「リス ク」であ り、
その 解 決のた め に は、
不安と問題 点をきちんと位 置付 け解 決にあたる開か れ た 思考と展望 が 必 要 である。 どこ の町に行っ てもあるコ ンビニ やファー
ス トフー
ド の店は、
いず れ も経 済と利 便性の追求か ら人を分 化し積 極 的に人間関係を省 く最も身近 な例だ ろう。 リス ク社 会 とは、
人び とが分断し、
相互 理解
の ない状態の まま、
自 分に関係ない ことには無 関心で、
妥協 することで 疎外し 合 う弛緩した 社会を意 味する。 他 方、
リス ク社 会の対極 にある のが、 人 と人 との関係 を付 加価 値とする 「ア ウ タ ル キー
の形成 」で、
人間 関係重視の循 環型 社会だ。 地域 社会(
家庭か ら国家に至る)
の 自立 とは、
コ ンセンサス = 地 域の枠組み ともい える価 値観の基軸の中で、
住民一・
人一
人が自立 してい ることだろう。
そもそも、
工業化社 会は複 雑な要 素を より単 純 化するこ とで今日に 至っ てい る。
そこで働 く人たちは、
それぞれ分 業化した特 定の仕 事を してい る に過 ぎない し、仕事
はあ くまで会社の もの であっ て、
自分のもの では ない 。 当然、 定年や リス トラ にな れば、
会社に仕事
まで取 り上げられ るという、
きわ めて、
一
元 的 な関係にお か れてい る。 しか し、
これ か ら は、
環境に配 慮し な が ら各
自(
地域、
社 会、
企業、
個 人)
の内部にある資 質を外在化させ、 外 部=
どれ だ けの 人 と共有して行
け る かとい っ た、
多 元 的な個と個の関係 になっ て行 くと思わ れ る。 端的にい えば、
大量生産・
大 量消費
・
大量破棄に象徴されるこれ まで の一
方 的な デザ イン の 「型」は過 去の もの とな り、
急速に力を失っ て行 くだろ う。 ま して、 さ らに、 超高齢・
少 子化社会が 進め ば、
新しく必 要な モ ノな どほとんどな くな り、
今あるモ ノを取 り替える程 度にな る筈だ。 そうな れ ば、 生活道具 といえども、
ゴ ッホ の絵に向かう真摯な情 熱=
作 り手の 魂の ような ものが求め ら れ るように なる。 道具 と して生 まれ た時 点か ら、 既に機 能を満た し、
風化
すること な く、
今日 に至っ てい る 「工芸」にこそ、21
世紀の モ ノづ くりの 「ヒ ン ト」力穏 され てい ると考える。この意 味におい て
、
「工芸 」は、
人 間が生 きるた め に存 在 する固有のもので あ り、
個人 が多
くの 数値
化できない 能 力を要し、 個 性を発 揮し な が ら 「自
分 の仕 事 」を自
分で創出 して行 くとい う、
極め て自立 する考えに立っ た 、 持 続可能な循 環型 社会の 規 範に な る もの と考 える。
デ ン マー
クの ハ ン ス・
ウェ グ ナー
がデザ イ ン し たウ ィ ッ シュ ボー
ン チェ ア(
図4 )
は、
日本で はもっ ぱ らY
チェ ア と呼ばれ てい る が、
計 量 する と、
驚い たこ とに リンゴ箱 と同量のブ ナ材でつ くら れてい る。 資 源を同じ活用するに して も、 リン ゴ箱に し て消 費 する の と、
椅 子に して永 く 使 用す るの とで は大 きな違い だ。「私たちの 目標 は
、
物 事をで きる限 りシン プルで純 粋 に表
現 す るこ と、
私たちの 手で創 り出せ る もの を示 すこと、
木を 生 きた もの にすること、
木に魂と生 命 力を与える こ と、 そして私た ちに し か できない もの に す るこ と だ」
とハ ンス・
ウェ グ ナー
は語っ てい る。「
木」を広く 「伝
統 的 産業工芸 品」に置 換えて み る と、
売らんが た めに失っ て きた 工芸の意 味と役割、
人 間的 な 良質 主 義を持つ た クラ フ トマ ン シッ プの重 要性 を よ り理解
することがで きの ではないだろうか。16 SPECIAL ISSuEOF JssD vol
,
B NQ.
2 2001 デ ザ イ ン学 研 究特集号6 .
デ ザ イン事 例 図5
モノプロの食 器 (1970年/ 岐 阜 県・
駄 知) 経 済優 先の無 意 味 な過 当 競 争によっ て、
質の低下 を き た し ていた陶 磁 器メー
カー
に対し、
従 来の方式で 作 ら れ てい る食 器を 見直し、
多品種 少 量 生産によ る良 質 化 を 目指し た。
自 分た ちの生 濡に合っ た器づ く り か ら、
日常に おけ る食事の意 味、
食物 や 生 活様式 の 変化 にそっ た、
和 食 器でも洋 食器でもない 日常 食器のデ ザ インと、
使い方の提 案。 図6
箱膳 (1975年/ 青 森 県・
弘前 ) かつて は最も庶民的な食膳 形 式で、
あっ た箱 膳は箱の 中に一
人前の食器を納め、
蓋 を膳と して使 う道 具であ る。
そ の中に は漆や陶 磁 器 な ど日本 人 が培っ て き た素 材と技 術 が あ る。 こ れ ら を デ ザ インす ること は、
私に とっ て実に重 要 な仕 事だ。
なぜなら、
経済と効率 を優 先さ せて き た 日本に おい て、
「土から得た ものは 土 に 還元さ れ る」とい う日本の伝 統 的 自然思 想の要 素 を伝 える ものだか ら で ある。 図 ア 厨 房 用 品 (1980年 / 岩 手 県・
盛岡) 優れ た熱保 有 量を持った南 部鉄 鋳 物の素材特性 は、
焼 く、
煮 込 む な ど の食材 を 生 か し た調理に は欠か せな い。
し かも、
毎日使っ て こ れ ほど長 持ち する素 材も他に 例がない。
したがっ で,
デ ザ インも 表 面 だ け を装 うの は意 味が ない。
む しろ、
しかるべ きモ ノ の用途 性か ら 割り出 され た サ イズを基 本に、
時代に左右さ れ ること のないシンプルな デザインをこ ころ が け る必要 が あ る。 図 8 桶の器 (tg95年 / 秋田 県・
能代〉 軽 く て 水の漏 ら ない容 器 と して必需品 だっ た桶や樽 も、
プラ ス チ ック の普 及に よ る需要の激滅に伴 い、
全 国 各 地か ら姿 を消 し て し まっ た。
しか し、
木の割裂性 を 活 用し た割り木工 は、
最も 無駄の ない木 材の利用方 法とし て、
見直され て しか る べき技 術 な の だ。木 曽五 木に代 表 さ れ る日本の針 葉 樹 林を活 用し、
轆 轤では不 可能 な 自 由な形や、
北斎 (図9
) に 描 か れ た 桶 の よ う に 大 き な器 を作 るの には最適 なの だ。 図9 桶デ ザ イ ン学研 究 特 集 号 SPECiAL ISSUE OF JSSD Vol