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呼吸理学療法に伴う吸引に関する注意事項

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Japanese Physical Therapy Association

NII-Electronic Library Service

Japanese  Physioal  Therapy  Assooiation

理 学 療 法 学

 

38

巻 第

8

号  

644

−一

 

645

頁 〔2011

内部障害

療法

研 究

学 療 法

伴 う

吸 引

に 関

注 意

* * は じ め に

 

2010 年4月30 日付で厚生労 働 省 医 政 局 長よ り

都 道 府

知 事 宛に通 知 され た文 書におい て

理 学

療 法

lt

の吸引が

的に認 め ら れることになっ た

この文 書で は

「吸 引 は

痰 を行

際 に必 要な行 為であ り

理学 療 法士 及 び

作 業療

法士法の 中に

ま れるもの と解し

実 施 する ことが で きる

為と して

り扱わ れ る 」 と さ れて お り

こ れ に より

H

頃か ら呼 吸理学 療 法に携わっ てい る 理学 療 法士の長年の念 願で あっ た吸 引が

排 痰に伴 うひ とつ 業 務と して実 施「∫能となっ た

し か しこれ と同 時に我々 は

吸 引 を実 施 する た め に は適 切 な 知 識や技 術 を

十 分 な リスク管 理 を行 わ な ければ

大 きな事 故につ な が る 可能性が あ る こと も認 識しな ければ なら ない

 

そ こ で本 稿では

呼 吸理学

療法

に伴っ て実施 する 吸 引 に関し て

必要な知識 と して の解 剖 学や 吸引に伴 う合 併 症

さ らには 感 染 予 防と して の標準 予防策な ど を中心に解 説 する

鼻 腔

咽 頭

気 管

解 剖 学

  吸 引は チュ

ブ を鼻 腔

[腔や気 管 内に挿 入し て行 う行 為で あ り

入し た チュ

ブが どの よ

になっ てい る かを 視 覚 的に

ること が できない 目的な

作である

し た がっ て

吸 引 操 作におい ては

鼻腔

目腔

咽 頭

気 管な どの解 剖を 十分理 解してお くこと が 必要であ る

  鼻 腔 ;鼻 腔は鼻の穴 (鼻 孔 )の内で

外 鼻 孔か ら内 鼻 孔まで の空隙を さす

鼻 中 隔によっ て左右の 2室に分け ら れ

空気の 通 り道 となる

機 能 と しては

発 声 時の共 鳴 作 用

吸 気の加 湿

加 温 等が挙 げ られ る

鼻腔の内 部には 鼻 毛 が密 生 してお り

外 気の粉 塵 をか ら め取るフ ィ ルタ

の役 割 を 果 たし てい る

 冂 腔 :口 腔 は食 物を 取 り こ む消 化器系の 人 口 で あ る が

後 方 で咽 頭と 連 なっ てい る

  咽 頭 :消 化 管の前 部で [ 腔 と 食 道の中間に あ り

上咽 頭

中 咽 頭

下 咽 頭の三つ の部分 に 分 け ら れ る

咽 頭 で は 鼻 腔 か ら 肺 に 至る通 路 と

口腔 か ら食 道へ る食 物の経 路 が 交 叉 する た め

図 i)

嚥 下 機 能 が 低 下し てい る症 例で は誤 嚥を引 き起こ しゃ すい

 

気 管:輪 状 軟 骨 下縁か ら気 管 分11皮部ま で で

高さ は第

7

から

eg

 4胸 椎 あた りである

長さ は

10

13

 cm であ り

1k:径 は約2cm である

管は

4

胸椎

位 (第

2

肋 骨

付 近で左 右 に分 岐 するが

門 歯か らの距 離は 約

24

27cm

であ る

  PoinL Lo Notice Df the SuCtiOll in Respirut(,ry Physical Therapy

兵 庫 医 療 大 学 大 学 院 医 療 科 学研 究 科リハ ビ リ テ

シ ョン科 学 領域

  (〒 650

853D  兵 庫 県神 戸 市 中 央 区港 島 1

3

6)

  Akira Tamaki

 PT

 PhD :1)epartment  of Rehabilltation Scienue

  Graduarc Schoo]of HealLh Science Hyogo  UniversiLy  of Ileulth

  Sciences   キ

ド:吸 引

標 準 予防策

呼吸 理学 療 法    実 線ル

ト(呼 吸 器 系) :鼻 腔

咽 頭

喉 頭

気道

   点 線 ル

トC削 匕器 系 ) :□腔

咽頭

食 道       文 献1〕より引 用 図

1

  呼吸 器系 と消 化器系の流 れ が 交 叉 す る 咽 頭 部

吸 引

目 的

  吸 引の

H

的は

吸 引 する ことで患 者の呼 吸 を安 楽にすること である

気 道に擁が貯 留し閉塞 状 態になれ ば

気 道 抵 抗が上 昇 する ため 呼 吸 困 難が惹 起 される

Poiseuillc

法則

か ら

える と

気 道の半 径が半 分に な ると気 道 抵 抗は計 算 上

16

倍に な る

し た がっ て吸 引

る ことで気 道の

放 性 を

仕事

量や

吸困

減 する こと

肺 胞

で の ガス交

能を

改 善すること を め ざ して いる

さ ら に凵腔

鼻 腔 内の分 泌 物を取 り除 くことで

誤 嚥 性 肺炎 を予防すること も重要な目的である

気 管 吸 引

伴 う合 併

症   先に述べ た よ う

吸 引

R

的 は 患 者呼 吸 を 安 楽 とであるが

気 管 吸 引 に は 様々な合 併 症 が あ ること も理 解 して お か な けれ ば な らない

1

患 者の苦 痛 :吸引 は本来 患 者の呼 吸 を楽にするため に実 施 す る もので あ る が

誤っ た方 法で行 うと患 者に多 大な苦痛 を も た ら す こ と に な る

まず吸 引時間 が 長くな ら ない ように気をつ け ること が 大切 で あ る

1

回の吸 引時問 は

一・

般的 に10

15秒 以内で実 施し

可 能で あ れ ば

10

以内で

r

する

が よい

長 時 間の 吸引は患

痛 を与 えるだ けでな く

気 管 内にある 峻 素を 吸 引 す るこ と で低 酸 素 血 症 を引 き起こすこ とになる

ま た 吸 引カ テ

テルを 人 れ す ぎた り

不 必 要 な吸 引 を実 施 (ル

チンな 吸 引 ) すること も避 けるべ

2

気 道 感 染 :口腔か ら咽 頭 部にか けて の上気 道には常 在 菌が 存 在してい るが

気 管 以 下の下 気 道は無 菌状態であ る

し た がっ て

無薗 状 態の気 管へ 挿入する 吸引カテ

テ ルに素手で触 れる こ とや

 

度 使 用し た カテ

テ ルを 再 度使用 す る

さ ら に は口腔 内

鼻 腔 内を 吸引し た カテ

テル を 気 管 内 に挿人 す るこ と な ど は

絶 対に やっ ては な ら ない為 で あ るn ま た 吸 引 した N工 工

Eleotronio  Library  

(2)

Japanese Physical Therapy Association

NII-Electronic Library Service

Japanese  Physioal  Therapy  Assooiation

呼 吸 理 学 療 法に伴 う吸 引に関 する

645

囀痰を飛 散さ せてし ま え ば

ま わ り が 感染 する危 険性 もあるた め

注 意 が 必 要であるv

3

気 道 粘 膜の損 傷:吸 引は盲 目的 方 法で実施する た め

挿 入 し たカテ

テルが どのように動い て い るのか を常に 想像し な が ら 実 施するこ とが大 切である

そのた めには先に説 明し た解 剖 学を ト 分に理 解 してお く必 要 が あ る

ま た気 管 分 岐

部 を超 えて カ テ

テ ルを挿 入した り

単 孔 式カ テ

テルを 回 しなが ら吸 引 するなど は

気道粘 膜 に損傷 を与 える

ロ∫能性が あ ること理 解 すべ きである。 た だ し カ テ

テルに は側 孔のあるものがあ り

その タイプを使 用 す る場 合 は

カ テ

テルを 回 し な が ら吸引すること は有 効である

4

肺胞 虚 脱

無気

は末梢 部にい く と軟 骨で支 持 さ れ てい い た め

末 梢 気 道や肺

易に虚 脱し

無気

を 起こ してしま う。 し た がっ て

圧をかけ なが ら カ テ

テルを 挿 入 する こ と や

末梢 気 道ま で カ テ

テ ル を

入 し よ

とする 行 為は絶 対に やっ て はな ら ない。

5

低 酸 素 血 症

高 炭 酸ガ ス 血症:必 要 以上に長い時 間 吸 引 す ることは

低 酸 素 血 症 を 引 き起こす 原 因となる

また吸 引 時に は

SpO2

をモニ タ

する とこが 多いが

 

SPO2

の値は実 際の変 化が 反映さ れ るまで に数 十秒か かるため

その値のみを信じて 吸

行 う

こ とは

険であるn

6

縮 :気 管 吸 引 を する機 械 的 刺 激に よっ て気 管 平 滑

攣縮

こ し

気管支 喘

の症 状が出現 する ことがある

7

血 圧

不 整 脈

徐脈

:気 管 吸引の刺 激に より 自

神 経 〔交 感 神 経

副 交 感 神 経 )が興 奮し

1[iエ圧 な どの循 環 動 態が変 化 する場 合が あ る

ま た交 感 神 経の過 剰な興 奮に より内 因性の カ テ コ

ル ア ミ ンが分 泌 されて血 圧 が急 激に

L

昇し

その結

頻 脈不 整 脈 を誘 発 する こ とが ある

また逆に副 交 感 神 経 の緊 張 が 高 ま る と

血 圧の急 激 な 低 下や徐 脈になること も あ る

した がっ て

気 管 吸 引 を実 施 する際には

血 圧や心 電 図 な どでモニ タ

す ることが 大 切である

8

冠 動脈攣縮 :気 管吸 引 に よっ て交感 神 経 が 過 剰 に 緊張し

冠 動 脈 攣 縮を引 き起こすこと が あ る た め

吸引 中 は 必 ず 心 電 図 モニ タ

で 観察し て お くべ き で あ る

1

標 準 予 防 策 適応のた めの

璽鑾蠶 蠶 一

騨 鱗 撒 騨

毳難

靉 醗

鑿釜

1

手 指衛 生

血液

体液

分 泌液

汚 染 物に触れ た後

手 袋を外し た直後

患 者と患 者の ケ アの問 2

個 人 防護 具   手袋

血 液

体 液

分 泌 液

汚 染 物に触 れる場 合

粘 膜 や 創 傷の ある皮 膚に触れ る場 合 ガ ウン

衣 類 / 露 出し た皮 膚が 血液

体 液

分 泌 液

排せつ 物に接 触 する こ と が予想 さ れ る処置 や ケ アの聞

感 染 対 策

標 準

防 策

:ス タ ン

レコ

ション

 標

準 予 防 策と は

感 染 症の

無に関わらず すべ ての患 者のケ ア に際し て適 用 する疾 患 非 特 異 的 な 予 防 策のこ とである

標 準 予

策は

の血液

体 液

唾 液

胸 水

腹 水

心 嚢 液 脳

髄 液

すべ て の体 液 )

分 泌 物 除 く

排 泄 物

る い は傷のある皮 膚や

粘 膜を感 染の可 能 性の ある物 質と みな し対 応する方 法であ る

 こ れ らの物 質の触れ た場 合は手 洗い を励 行し

またあら か じ め接 触が予 想 され る場 合は手 袋やマ ス ク

エ プロ ンな どの予 防 具 を用い

処 置の前 後で手 洗いや手 指 消

を 実 施 する こ と で

すべ 院 内 感 染 を予 防 す

  医療 現 場にお けるすべ ての患 者に対 する標 準予防 策の適 応に つ い て の勧 告は表1の通 りである

吸 理

学 療 法

に おいて

気 管吸 引

必 要 と な る状 態 と

は ?

 

患 者 自身の咳嗽

呼 吸 理学療 法 に おける排 痰 手 技や加 温

加 湿 等の非侵襲的 な方法 を 実 施 し た に も関わ らず

気 管 内の分 泌 物 喀 出が困 難であ り

以 ドの 所 見で 気

内分泌物が存 在 する と マ ス ク

グル

   

血 液

体 液

分 泌 液のはね や しぶ き を作 り フェイ ス シ

ル ド    やすい処 置や患 者の ケ アの 問 (特に吸 引

       気管内 挿管 )       文 献

D

より引 用 評価さ れ た場 合に実 施 する

1

力 性

吸 が 強 くな

ている場合

呼 吸 仕 事 量 増 加の所 見:

 

呼 吸 数

浅 速 呼

吸  

陥 没 呼 吸

呼 吸 補 助筋の活 動 増 加

  呼気

延 長な ど

2

的に チュ

ブ内

道 内 分泌

認さ れ る

合 3

胸 部 聴 診で気 管か ら左 右主気 管 支にかけて分 泌 物の存 在を   示 唆 する副 雑 音 (rhonchi や coarso  crackle な ど)が聴 取

  ま た は呼 吸 音の低 下や減 弱が認め ら れる場 合 4

胸 部 を 触 診し

ガス の移 動に伴っ た振 動 (rattling ) が 感じ   られる場 合

5

頻 回 な 湿性 咳 嗽 を認 める場 合

6

誤 嚥した 場合 7

SpO2

(経 皮的 酸素飽和 度 )や

PaO2

〔動 脈血 酸素 分圧)の   低

ドに おける低酸素血 症の存 在 8

人 工呼 吸 器 下の患 者で は気道内圧の上昇や換 気暈の低下

  飾w 曲 線の動 揺の存 在 が 認め られる場 合

吸 引 実 施

に お い て の

留 意 点

  吸 引 を実 施 する にあ たっ ては

緊 急 時にた だ ちに医 師の応 援 が 得 ら れ る 体 制 を 整 え て お くべ き で あ る

気 管吸 引 はメディカ ルコ ントロ

ル体制 下 に 行 わ れ るべ き で あり

と り わ け緊急 時 に は 病 院 内外を問わず 確 実に医師の指 示

処置が受 けられ る よ うな体制 を 整備し て お か ね ば な ら ない

在 宅におい ても 同様で あ り

常 に 緊 急 連 絡 体 制 を確 立 してお くこ とが 大 切である

お わ りに   吸 引が法 的に可 能 と なっ たこ とで

呼1及 ケ ア領 域に お け る 理 学 療 法 士の役 割は重 要と なっ た

し か し 理 学療法 士のこ れ ま で の教 育 課 程に おい て吸引 に 必 要 な知識

技 術の習得は な さ れ て い ない

吸引 を安 全に 実施す る た め に も

教育

研 修 を

ず受 け

事 故

こ さ ない よ

に努め る こ とが 大LJJである

吸 引は 目的で は なく最

終手段

である。 理 学 療 法 士で あ る 以 上

可 能 な 限 り非 侵 襲 的 な方 法を駆 使 し

患 者 が 楽 に痰 を 喀 出できる よう 援

すべ である。

1) (禰 [i本 理学 療法 士協 会 内 都 障 害 研 究 部 会 呼 吸 班 (監 修 ):吸   引 プロ コル (第2版)

2010

2) 道 又元 裕:吸 引の危 険 性と そ の対 策

Nursing Today

201D:253):   31

42

3) 玉 木 彰 (編);理学療 法 テ キ ス ト 内部 障 害 理 学 療 法 学 呼 吸 〔

L5   レク チ

シ リ

ズ)

吸 引

中 山書 店

東 京

2010

pp153

162

N工 工

Eleotronio  Library  

参照

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