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1年課程で学ぶ助産師学生が妊娠期の講義・演習で習得したと感じたこと

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(1)

日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 29, No. 2, 303-309, 2015

*1島根県立大学出雲キャンパス(The University of Shimane Izumo Campus)

2015年6月17日受付 2015年11月9日採用

資  料

1年課程で学ぶ助産師学生が妊娠期の

講義・演習で習得したと感じたこと

Midwifery students’ perceived learning from classes

on pregnancy accounts given after lectureses and seminars

藤 田 小矢香(Sayaka FUJITA)

狩 野 鈴 子(Reiko KANO)

濵 村 美和子(Miwako HAMAMURA)

嘉 藤   恵(Megumi KATO)

* 抄  録 目 的  妊娠期の講義・演習で1年課程で学ぶ助産師学生が何を習得したと感じていたのか,具体的な学習内 容を明らかにすること 対象と方法  対象者はA大学短期大学部専攻科助産学専攻学生18名。研究倫理審査委員会の承認を経て,2013年7 月に実施した。データ収集方法は,学生が妊娠期講義終了後に提出した,妊娠期の学習で何を習得した と感じたかについての記述を逐語録にしてデータを抽出した。 結 果  助産師学生が妊娠期講義で習得したと感じていた内容は大きく2つ示された。【基礎的知識を基に,妊 娠期の助産診断を行うこと】では《妊娠期の経過診断を行うための基礎的知識の獲得》《対象に応じた保 健指導の実施,ケアを提供すること》であった。【主体的に妊婦を取り巻く人や環境へも目を向け,関わ りを深め支援していくこと】では,《妊婦やその家族に思いやりを持って接し,より良い関係を築いてい くこと》《知識を生かし,実践により必要な情報を自ら獲得しようとすること》を学んでいた。 結 論  助産師学生は,知識の習得だけではなく,対象者への支援,妊婦や家族への配慮を学び,自己学習姿 勢を身につけていた。 キーワード:助産師学生,妊娠期,学習内容

(2)

This study aimed to clarify what midwifery students learn from lectures on pregnancy by querying the stu-dents' perceived learning after the lectures.

Methods

The subjects comprised 18 midwifery students in a non-degree graduate course in midwifery specialty studies at University A Junior College. This study was implemented after receiving approval from the ethics committee at the university to which the authors belong. The investigation reached in July 2013.We analyzed data from verbatim records of student accounts of perceived learning from lectures and seminars on pregnancy.

Results

The contents of midwifery students' perceived learning from lectures on pregnancy were broadly divided into two categories. The first category was based on basic knowledge and comprised "the acquisition of basic knowledge in order to diagnose the progression of pregnancy" and "providing health guidance and care tailored to the patient" in terms of the ability to perform midwifery diagnoses. The second category comprised learning to "build better re-lationships by treating pregnant women and their families with compassion" and "use knowledge to independently acquire information essential to practice" in terms of deepening and supporting relationships by focusing on the people and environments surrounding pregnant women.

Conclusion

Midwifery students not only acquired knowledge, but also learned to support patients, show consideration to-ward pregnant women and their families, and adopt an attitude of self-learning.

Keywords: midwifery students, pregnancy period, learning content

Ⅰ.緒   言

 厚生労働省の助産師教育ワーキンググループ報告 (厚生労働省,2015)によると,妊娠期の診断とケアに おける今後より強化されるべき助産師の役割と機能と して,4つの項目が挙げられている。その項目は1)正 常妊婦の健康診査,2)超音波装置を用いた妊婦健康診 査,3)ハイリスク妊婦のケア,4)バースプランへの支 援である。また,妊娠期の診断とケアにおける助産師 の卒業時の到達目標と到達度(厚生労働省,2015)では, ほとんどの項目で「少しの助言で自律してできる」到 達度が示された。島袋(2014, p.1)はワーキンググルー プからの提案について,産科医療の崩壊へ対応するた めに助産師外来・院内助産の普及を視野に入れ,助産 師の診断能力・分娩期における緊急時の対応能力を強 化する方向性が打ち出されたものと考えると述べてい る。五十嵐(2009, p.645)は,助産学校は1年間という 短い期間のなかで,看護学校よりさらに専門性を追求 することが求められるため,学習者個々の学ぶ姿勢が さらに重要となると述べている。現在,日本における 助産師教育課程は,看護教育終了後に位置づけられて いる。修業年限が1年以上の助産師学校から2年の大 学院教育と様々である。それぞれの教育課程における 卒業時の到達目標を達成するには,講義・演習・実習 等を効果的に実施し,知識と技術の統合を図っていく 必要があると考える。  実践力の強化という点では,臨地実習での分娩期に おける助産師学生の学びの内容や技術習得のプロセス, 助産診断に関連したものが報告されている(服部・堀 内・谷口他,2007, pp.3-8;堀内・服部・谷口他,2007, pp.9-17;菊池・遠藤・西脇,2008, pp.83-92;清水・ 宮澤・松原他,2012, pp.584-592;大滝・遠藤・竹他, 2012, pp.337-348)。学内演習における報告においては 演習における技術の習得状況と学習過程(野口・竹内 ・宮本,2006, pp.87-95),少人数グループでの演習に よる学習プロセス(大平・井端・町浦他,2005, pp.23-29)の報告がみられる。知識や技術の習得に学内試験 等で学力や知識を計ることは可能であるが,妊娠期の 講義・演習において助産師学生が何を習得したと感じ ていたかついての報告はほとんどない。本研究の目的 は妊娠期の講義・演習で助産師学生が何を習得したと 感じていたのか,具体的な学習内容を明らかにするこ とである。助産師基礎教育での妊娠期の知識及び学内 学習における学習課題から今後のどのような内容が学 生に必要なのかを考える資料としたい。

Ⅱ.研究方法

1.研究デザイン  質的記述的研究方法

(3)

1年課程で学ぶ助産師学生が妊娠期の講義・演習で習得したと感じたこと 2.用語の定義  助産診断技術学Ⅰ(妊婦):助産師にとって必要な 妊婦のケアのための助産課程および診断技術の習得を 目的にした科目である。開講時期は4月から7月,必 須科目(2単位:60時間)である。講義・演習で構成さ れている。 3.研究対象者  2013年度入学のA大学短期大学部専攻科で助産学 を学ぶ学生18名。 4.研究期間  2013年7月 5.調査方法  助産診断技術学Ⅰ(妊婦)では,学習意欲を高める ことを目的に初回講義時に学生が助産師をめざした理 由,どのような助産師になりたいか,目指す助産師に なるために妊娠期の学習をどのように進めたいかにつ いて学生に記載してもらっている。自らの目指す助産 師に近づくために講義受講における学生個々の目標を 毎回記載し,講義終了後には学びの内容や今後の課題, 講義に対する自己満足度と達成度を記載し,講義終了 後に担当教員に提出している。講義全体のまとめとし て「あなたがめざす助産師になるために,妊娠期の学 習をどのようにすすめましたか」「妊娠期の学び・成 長したところ」「妊娠期の学習で何を習得しましたか」 をA4サイズ1枚に自由記述している。講義初回時に 学生18名全員に説明を行い,記載用紙は毎回の講義 分と講義全体のまとめを記載する用紙をまとめて配布 した。研究で使用することについての説明は春学期成 績入力終了後に行った。今回,「妊娠期の学習で何を 習得しましたか」について,自由記述を分析する。尚, 助産診断技術学Ⅰ(妊婦)は講義と演習で成り立って いる。 6.データ分析方法  研究依頼は助産師学生18名に行い,同意の得られ た18名が記述した「妊娠期の学習で何を習得しました か。」の自由記載を逐語データとした。講義・演習を 通して習得したことについて記載されたセンテンスを 抽出し,コード化した。今回,学生が記載したセンテ ンスは,短い文章で簡潔に記載されたものであったた め,記述そのものをコードとして採用した。次にコー ド間の類似性と相違性,関連性を検討しながら,サブ カテゴリーとし,さらにサブカテゴリー間の相互の関 係性を検討し,類似の内容のまとまりをカテゴリーと した。データ分析の信頼性を高めるために,データ分 析は助産学,質的研究,教育に精通している研究者で 分析に偏りがないかメンバーチェッキングを行いなが ら検討を行い,妥当性を確保した。 7.倫理的配慮  研究参加の同意を得る際に,口頭と文書で研究目的 と方法について科目担当者の講師である主任研究者が 説明を行った。研究の説明は,オリエンテーション 等で18名が集合した時に,オリエンテーション前に 約10分程度かけて行った。研究説明時に依頼書,研 究同意書,研究同意撤回書を同時に配布した。研究へ の参加は自由意志に基づくものであること,研究への 参加・不参加によって何ら利益・不利益を生じないこ と,研究への参加に同意した後でも,参加を取りやめ ることができ,その際も何ら不利益を生じないことを 説明した。また,研究データの使用目的と管理,守秘 義務について説明した。研究への参加は同意書への署 名によって確認した。署名から記録用紙を使用する旨 を伝え,その後はナンバリングされ分析時,個人が特 定されることがないことを伝えた。尚,春学期の成績 入力終了後に研究依頼を行ったため,学業と研究参加 の同意の有無は一切関係ないことを伝えた。研究説明 以外での配布物や提出物の回収もあり,同意書の回収 は,科目を担当していない助手である共同研究者が行 った。同意書の提出への心理的圧迫をできるだけ回避 できるよう最大限配慮した。本研究は,島根県立大学 研究倫理審査委員会(承認番号115)の承認を経て実施 した。

Ⅲ.結   果

1.対象者の属性  対象者18名は20歳から30歳であった。 2.助産師学生が妊娠期講義・演習で習得したと感じ た内容  各カテゴリーが抽出された分析結果内容を,表1,2 にまとめた。なお,以下では分類過程で抽出された大 カテゴリーを【 】,カテゴリーを《 》,サブカテゴリー 〈 〉,コード「 」と表記した。

(4)

 《妊娠期の経過診断を行うための基礎的知識の獲得》 と《対象に応じた保健指導の実施,ケアを提供するこ と》の2つのカテゴリーが抽出された(表1)。 (1)《妊娠期の経過診断を行うための基礎的知識の獲 得》  助産診断を行うための基礎的知識の獲得として基礎 的な知識が必要であることを感じていた。「他の教科 書では違った見解や数値が載っているので,複数の教 科書を用いるようにした」「何でそうなるのか根拠を 基に考える習慣がついた気がするため現場でも役立 ちそうだと思った」と〈さまざまな資料や文献を検索 し,正しい知識や情報を収集すること〉を習得してい た。妊娠期に伴う変化については「妊娠期の生活行動 の知識」「分娩前の妊婦の経過診断をしていく」「妊婦 の身体・心理・社会的な変化についてさまざまなこと を知ることができた」という記述から〈妊娠経過にお ける身体面・心理面・社会面の基礎知識〉を習得して いることが考えられた。特に心理面では「常に妊婦の 気持ちになって考えることが大切であるということを 日々の講義の積み重ねから習得できた」「妊娠期では, 解することで妊婦の安心につながると感じた」と〈妊 娠に伴う心理過程を理解し,妊婦が安心して過ごせる よう配慮すること〉を習得していた。さらに情報収集 や知識だけではなく「妊娠期のアセスメント視点」「妊 婦のイメージが具体的になり,何を観察しどうアセス メントしていくのか学んだ」と〈必要な情報を意図的 に収集し,アセスメントすること〉と感じていた。 (2)《対象に応じた保健指導の実施,ケアを提供する こと》  対象に応じた保健指導の実施について,また個別的 なケアを提供することについて習得していた。助産診 断を行った後のケアや支援について,「妊娠期に注意 することや支援内容が理解でき実習でも活かしてい けそう」「妊娠期あっての分娩期・産褥期だと思うの で,つなげて周産期にある母子のケアに活かしていき たい」という記述から〈妊娠期のケアを実施するため に,妊婦や胎児の状態を診断すること〉が導き出され た。ただ,研究した時点では実習はまだ開始していな いので「実習では自分で必要な情報を意図的にとって いき,アセスメントできるようになりたい」と習得し 表1 【基礎的知識を基に,妊娠期の助産診断を行うこと】 カテゴリー サブカテゴリー コード 妊娠期の経過診断 を行うための基礎 的知識の獲得 さまざまな資料や文献を検索し, 正しい知識や情報を収集するこ と 他の教科書では違った見解や数値が載っているので,複数の教科書を用いるように した 改めて知識,技術,診断能力を1から学び修得することができた 何でそうなるのか根拠を基に考える習慣がついた気がするため現場でも役立ちそう だと思った 妊娠経過における身体面・心理 面・社会面の基礎知識 妊娠期の生活行動の知識 分娩前の妊婦の経過判断をしていく 妊婦の身体・心理・社会的な変化についてさまざまなことを知ることができた 妊娠に伴う心理過程を理解し, 妊婦が安心して過ごせるよう配 慮すること 常に妊婦の気持ちになって考えることが大切であるということを日々の講義の積み 重ねから習得できた 妊娠期では,母体の変化や気持ちの変化など,妊婦自身もとても不安であると感じ ていたので,自分自身がしっかりと理解することで妊婦の安心につながると思った 必要な情報を意図的に収集し, アセスメントすること 妊娠期のアセスメント視点 正常をしっておかなければ妊婦の状態をアセスメントできないということを学んだ 妊婦のイメージが具体的になり,何を観察しどうアセスメントしていくのか学んだ 今はまだペーパーペイシェントである情報からのアセスメントだが,実習では自分 で必要な情報を意図的にとっていき,アセスメントできるようになりたい 対象に応じた保健 指導の実施,ケア を提供すること 妊娠期のケアを実施するために, 妊婦や胎児の状態を診断するこ と 介入方法 妊娠期に注意することや支援内容が理解でき実習でも活かしていけそう 妊娠期があっての分娩期・産褥期だと思うのでつなげて周産期にある母子のケアに 活かしていきたい。実習を頑張りたい これを活かして受け持たせていただく妊婦の状態を診断し,ケアを実施していきた い。 妊娠週数に応じた情報を収集で き,対象にあった保健指導を行 うこと 妊娠期の母体や胎児の状態を診断しケアプランを立てることができ,妊婦個人にあ った保健指導をすることができる 妊娠期は健診時の関わりが主なので,今回の健診で知っておく必要がある情報なの か考え,優先順位を立てて情報収集していくことや視診,触診など五感を使って妊 婦をみて必要な指導や援助を行っていく必要がある

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1年課程で学ぶ助産師学生が妊娠期の講義・演習で習得したと感じたこと たことを活かすことに期待を寄せていた。保健指導に ついて「妊娠期は健診時の関わりが主なので,今回の 健診で知っておく必要がある情報なのか考え,優先順 位を立てて情報収集していくことや視診,触診などの 五感を使って妊婦をみて必要な指導や援助を行ってい く必要がある」と〈妊娠週数に応じた情報を収集でき, 対象にあった保健指導を行うこと〉の必要性を習得し たと感じていた。 2 ) 【主体的に妊婦を取り巻く人や環境へも目を向け, 関わりを深め支援していくこと】  《妊婦やその家族に思いやりを持って接し,より良 い関係を築いていくこと》と《知識を生かし,実践に より必要な情報を自ら獲得しようとすること》の2つ のカテゴリーが抽出された(表2)。 (1)《妊婦やその家族に思いやりを持って接し,より 良い関係を築いていくこと》  知識・技術の習得だけではなく,対象者との関係性 についての理解を示していた。「実習や働いていく中 で,どんな場面でも忘れず妊婦との信頼関係を築くた めに役立てたい」と〈妊婦やその家族との,信頼関係 を築くこと〉の必要性を感じていた。また気配りとし て「妊婦と関わる際は妊婦の負担を考え行動しなけれ ばならないと学んだ」「今後実習や働いてから外来で 関わらせていただくときに,見るポイントや配慮する 点について習得できたのでそれを是非活かして行きた いと思う」と〈妊婦の身体的負担に対する配慮〉につい て習得したと感じていた。習得できていないと感じた 助産師学生は「技術試験の際に配慮できなかったとこ ろ,忘れていたところ,失敗したところを見直したい」 と習得に向けて前向きな姿勢がみられた。 (2)《知識を生かし,実践により必要な情報を自ら獲 得しようとすること》  学生は計測においても知識や技術が身についたと感 じていた。「妊婦の妊娠経過をみていく中で,必要な 知識とフィジカルアセスメントを習得することができ た」「骨盤外計測や腹部触診の場面で役立つ」と〈妊婦 健診でフィジカルイグザミネーションを実践するため 知識と技術の習得〉を感じていた。「技術面では知識は あっても実施できないので,実習では計測など積極的 にさせてもらい正しく計測できるようになりたい」と いう希望を持っていた。  また「妊婦健診の実践力」「実習で保健指導や計測を するときに役立てて行きたい」「妊婦健診やマタニティ クラスなどの妊婦と関われる時に活かしたい」と〈集団 指導や保健指導など妊婦との関わりで妊娠期の知識を 活かすこと〉と習得した知識を活用したいと感じていた。 表2 【主体的に妊婦を取り巻く人や環境へも目を向け,関わりを深め支援していくこと】 カテゴリー サブカテゴリー コード 妊婦やその家族に 思いやりを持って 接し,より良い関 係を築いていくこ と 妊婦やその家族との,信頼関係を築 くこと 実習で妊婦や家族へ対する説明 実習や働いていく中で,どんな場面でも忘れず妊婦との信頼関係を築くために 役立てたい 妊婦の身体的負担に対する配慮 妊婦への配慮をしていきたい 妊婦と関わる際は妊婦の負担を考え行動しなければならないと学んだ 今後実習や働いてから外来で関わらせていただくときに,見るポイントや配慮 する点について習得できたのでそれを是非活かしていきたいと思う 技術試験の際に配慮できなかったところ,忘れていたところ,失敗したところ を見直したい 知識を生かし,実 践により必要な情 報を自ら獲得しよ うとすること 妊婦健診でフィジカルイグザミネー ションを実践するための知識と技術 の習得 問診技法 健診などで計測を行う時に手技や流れ,配慮も一連の流れでテストしてもらえ たからある程度身についた 妊婦の妊娠経過をみていく中で,必要な知識とフィジカルアセスメントを習得 することができた 骨盤外計測や腹部触診の場面で役立つ 妊婦健診(外来)などで,今日実施した技術試験を生かせるようにしたい 健診時,要領よく計測し,うまくいかなかったときには焦るのではなくもう一 度やり直してみたり,代替法を試してみたりして対応できるようにする。今後 の実習でも役に立つと考える 技術面では知識はあっても実施できないので,実習では計測など積極的にさせ てもらい正しく計測できるようになりたい 集団指導や保健指導など妊婦との関 わりで妊娠期の知識を活かすこと 妊婦健診の実践力 妊婦健診での実践 妊婦健診やマタニティクラスなどの妊婦と関われる時に生かしたい 実習で保健指導や計測をするときに役立てていきたい 赤ちゃんができてから,お母さんにどういう風に保健指導や健診を行っていく のか,妊娠期に学んだ知識を生かしてできると思う

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 助産師学生が妊娠期講義で習得したと感じた内容 1.【基礎的知識を基に,妊娠期の助産診断を行うこ とができる】  助産師学生は〈さまざまな資料や文献を検索し,正 しい知識や情報を習得すること〉ができたと感じてい た。五十嵐(2009, p.646)は調べる過程こそ自律した 専門職業人になるために重要であり,もし,調べても 答えが間違っていたり,見つけられなかったとしても, 調べた学生にとっては学びとなると述べている。本研 究でも,複数の教科書を用いて学習を進めていた。疑 問を持ち,根拠を明らかにするための学習方法が備わ ってきていると考える。これらの情報をもとに〈妊娠 経過における身体面・心理面・社会面の基礎知識〉を 習得しようとしていたと考える。「常に妊婦の気持ち になって考えることが大切であるということを日々の 講義の積み重ねから習得できた」「妊娠期では,母体 の変化や気持ちの変化など,妊婦自身もとても不安で あると感じていたので,自分自身がしっかりと理解 することで妊婦の安心につながると感じた」の記載か ら分かるように,学内での講義,演習では対象者で ある妊婦をイメージしながら学習を進めている。妊娠 に伴う心理過程を知識として学習し,妊婦の心理的な 変化にどのように寄り添っていくのか配慮について もイメージしていた。また,情報収集においても妊 婦健診等の限られた時間を想定し,〈必要な情報を意 図的に収集し,アセスメントすること〉に着目してい た。助産師学生を対象とした妊娠期における助産診断 ・技術についての研究は見当たらなかった。新人助産 師の視座から捉えた調査において中島・國清・阪本他 (2009, p.14)は,新人助産師が実習で学びたかった内 容は,妊産褥婦および新生児の対象理解に繋げるため の助産診断・技術学が全体の3割を占めていた。さら に中島・國清・阪本他(2009, p.14)は例を挙げ,妊娠 期の助産診断・技術には,助産師外来における個別指 導や助産ケアの見学が(中略)有効であろうと述べて いる。本研究において,助産診断を行う知識は,対象 をイメージしながら少しずつ身につけていると考える。 講義・演習では実際の場面をイメージするのには限界 があるが,助産師学生は助産実習まで数ヶ月で助産診 断を行う基礎知識は習得しつつあると考える。  さらに助産師学生は,助産診断後に保健指導や援助 ジカルなデータ収集等,情報を自分自身で収集する ことについては,実践への期待を寄せていた。野口・ 竹内・宮本(2006, p.94)は「助産師教育の技術教育方 法について,助産学実習において,妊婦の健康診査や 産婦の診察及び分娩介助技術等の様々な場面において, 対象者へ 看護行為 を実施する機会は多い。助産過 程にしたがって1つ1つの看護行為を対象者との関わ りを通して学ぶことで,技術として習得できたのでは ないか」と示唆している。助産師学生が学内演習を通 して,実践への準備段階をさらに高め,助産師学生が 自信をもって実習に臨めるよう,演習方法に工夫が必 要だと考える。例えば,意図的な情報収集について, 実際の外来での場面を想定した模擬患者を対象に,実 践的な演習を取り入れることで助産師学生が問診や援 助の方法について学習を深めることができると考える。 2.【主体的に妊婦を取り巻く人や環境へも目を向け, 関わりを深め支援していくこと】  《妊婦やその家族に思いやりを持って接し,より良 い関係を築いていくこと》において助産師学生は,対 象者との関係性について〈妊婦やその家族との,信頼 関係を築くこと〉の必要性を感じていた。気配りや配 慮についても習得できたと感じていた。助産師学生は, 看護実習を終了しており,さまざまな発達段階の患者 と接している。看護実習での経験が,対象者との信頼 関係の大切さを意識付けさせているのかも知れない。 家族看護を含めた視点で,対象を捉えようとしてい た。また,習得できていないと感じた助産師学生は「技 術試験の際配慮できなかったところ,忘れていたとこ ろ,失敗したところを見直したい」と自身の課題を明 らかにしていた。実践においても「技術面では知識は あっても実施できないので,実習では計測など積極的 にさせてもらい正しく計測できるようになりたい」と 実習への期待を持っていた。看護学生を対象とした調 査において勝田,工藤,西村他(2013, p.67)は,模擬 患者を対象とした母性看護技術演習後に「実習で実施 したいこと」として,《対象者と向き合う》《対象者への 声かけ》《適切な技術》《対象者に配慮した援助》《信頼 関係を築く》《対象者への説明》があがっていたと報告 している。助産師学生も看護学生と同様に,対象者を 意識した場面をイメージ化し技術習得に努めていたと 考える。知識の習得だけではなく,助産師学生が確実

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1年課程で学ぶ助産師学生が妊娠期の講義・演習で習得したと感じたこと に技術習得できる演習の工夫や,緊張感のある実習で も実力が発揮できるよう自身の傾向を助産師学生が把 握する機会を提供する等が必要であると考える。助産 師の卒業時の到達目標と到達度(厚生労働省,2015)に おいて,妊娠期の診断とケアの到達度は項目のほとん どで少しの助言で自立してできると示されている。今 回実習前の段階では,助産師学生は助産診断を行うこ とや家族を含めた支援について学んだと感じ取ってい た。学生の実習前の準備段階を十分に把握し,助産師 の卒業時の到達度に到達できるよう実践的な技術や診 断のための情報収集を助産師学生が行えるよう学内で の講義や演習,実習方法内容を検討する必要がある。

Ⅴ.結   論

 助産師学生が妊娠期講義・演習で習得したと感じた ことは,基礎知識を基に,妊娠期の助産診断ができる ことと主体的に妊婦を取り巻く人や環境へも目を向け, 関わりを深め,支援していくことであった。助産診 断を行うために《妊娠期の経過診断を行うための基礎 知識の獲得》《対象に応じた保健指導の実施,ケアを 提供すること》について習得したと感じていた。また, 対象者への支援として《妊婦やその家族に思いやりを 持って接し,より良い関係を築いていくこと》の必要 性や,《知識を生かし,実践に必要な情報を自ら獲得 しようとすること》について学びとっていることが明 らかとなった。講義での学びにおいて,助産師学生は 基礎知識の習得だけではなく,対象者への支援や妊婦 や家族への配慮の重要性を学び,自己学習の姿勢を身 につけていた。

Ⅵ.本研究の限界と課題

 本研究は,18名の助産師学生の記述を逐語録にし, データ分析を行った。しかし,1校での研究であり, 学習環境の特徴的偏りは否定できない点から,一般化 には限界があると考える。今後は,より多くの教育機 関や学生を対象に,データを増やし研究を重ねていく 必要があると考える。 文 献 服部律子,堀内寛子,谷口通英,布原佳奈,名和文香,宮 本麻紀子(2007).本学における助産実習での学びの 内容.岐阜県立看護大学紀要,7(2),3-8. 堀内寛子,服部律子,谷口通英,布原佳奈,名和文香,宮 本麻紀子(2007).本学学生の分娩介助技術習得のプ ロセスとそれに応じた臨床指導のありよう.岐阜県立 看護大学紀要,7(2),9-17. 五十嵐和美(2009).看護学校卒業生と助産学生の2つ立 場から学習者として成長できるための支援.医療, 63(10),645-648. 勝田真由美,工藤里香,西村明子,末原紀美代(2013). 模擬患者を対象とした母性看護技術演習の学習効果. 兵庫医療大学紀要,1(1),57-68. 菊池圭子,遠藤恵子,西脇美春(2008).助産学実習にお ける助産診断・技術の到達度と自己評価能力.山形保 健医療研究,11,83-92. 厚生労働省 助産師教育ワーキンググループ報告(2015). http://www.mhlw.go.JP/stf/shingi/2r9852000000teyj-att/2r9852000000tf1q.pdf [2015-04-02] 中島久美子,國清恭子,阪本忍,荒井洋子,常磐洋子 (2009).新人助産師の視座から捉えた分娩介助・継続 事例実習指導の課題.日本助産学会誌,23(1),5-15. 野口純子,竹内美由紀,宮本政子(2006).助産師教育に おける技術教育方法の検討̶入学時の看護技術の習 得状況と学習課題̶.香川県立保健医療大学紀要,3, 87-95. 大平光子,井端美奈子,町浦美智子,古山美穂,工藤里香, 森山香織他(2005).主体的学習態度をはぐくむ教育 方法̶助産学演習における少人数グループワークの試 み̶.大阪府立看護大学紀要,11(1),23-29. 大滝千文,遠藤俊子,竹明美,小林康江,斎藤益子,村本 淳子他(2012).助産学実習における助産実践能力の 習得に関する研究.母性衛生,53(2),337-348. 島袋香子(2014).第26回神奈川母性衛生学会 会長講演  助産師教育を考える.神奈川母性衛生学会誌,17(1), 1-6. 清水嘉子,宮澤美知留,松原美和,藤原聡子,上森友記 子(2012).助産実習における分娩第1期の学生の学び. 母性衛生,52(4),584-592.

参照

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