C A N C E R 12 (2003), p.29-30
福島県で採集された移入ザリガニ類の学名と和名
川井唯史・ 三田村敏正
日本にはニホンザリガニCambaroidesjaponicus
, タンカイザ リガニ ・ウチダザ リガニPacifastacus
leniusculus (
和名 と学名の詳細 は後述する ), ア メ リカザ リガニProcambarus clarkii
が分布 する ( 三宅 ,1982). タンカ イザ リガニ ・ウチダザ リ 込まれ,放流された (川井ら ,2002). 輸入され た種類は ,当初2
種類で,滋賀県に移入された種 類はタンカイザ リガニPacifastacus leniusculus
,北 海道東部に放流された種類はウチダザリガニp.
trowbri
・dgii
とされた (三宅, 1961 , 1982). その後 の研 究で分類学 的な認識が変わり,P.
trowbridgii
はP leniusculus
の 亜 種 で あ る と 変 更 さ れ た (Miller and Van Hyning, 1970). すなわち , タン カイザリガニP.
leniusculus
はP.
leniusculus
.
1
で, ウチダザ リガニP.
trowbridgii
はP.
1.
trowbridgii
と なった( 蛭田 ,1986). なお近年,福 島県では , これまで分布していなか ったザリガニ類が見つ かっている . これらの学名を明らかにし ,新産地 として記録した .材料と方法
採集は2002年 6 月9 日に福島県耶麻郡北塩原村 松原剣ヶ峰の小野川湖水系で行 った. 得られたザ リガニ類は ,眼街頭胸甲長 (眼禽か ら頭胸甲の正 中線後縁まで) を測定し ,雌雄を判別した . また 種査定を行うため ,額角, 雄の第一腹肢,鉛脚の 形態を観察した . また亜種の区別 を行うために全 長,尖角長,尖角幅,指節長 ,掌節内縁長を 測 定した . 加 えて尖 角側赫, 第一眼禽後縁練,第 二眼禽後縁赫,触角鱗片赫,紺脚 の長節赫 と釦脚 の腕節税を大,中, 小 に区別 した . 区別の基準はTadashi K A W A I, Toshimasa MITAMURA: Taxonomy of introduced crayfish in Fukushima Prefecture, Japan
Miller and Van Hyning (1970) を参考にした . 結果と 考察 雌雄各15個体 (平均頭胸甲 長23.8
:t
9.5 S D m m) が得ら れた. 得られた個 体は以下 の形質が共通 して観察された . 額角に 一対の赫があり (図1 -a ) ,雄の第 一腹肢に精子溝が存在せず,先端が 角質化せず, しかも大きく関口せず (図1 - b ), 甜脚の指節の付根付近が白色化 した (図1 -
c). Hobbs (1972) に従うと , これらの形質はザ リガ ニ 科Family Astacidae のPacifastacus leniusculus
に合致する .Miller and Van Hyning (1970) は
P.
leniusculus
を9
形質でP 1.
leniusculus
,P.
1.
trowbridgii
,P.
1
klamathensis
の3
亜種に区別 した . 本研究で得 ら れた標本に , この区分法を適用 したところ,9
形 質中, 6 形質が60.0 % 以上P.
leniusculus
.
1
に該当a
b
C 図1 福島県小野川湖水系産のザリガニ類.aは 頭 胸 甲 長の背面司矢印は額角の赫, bは雄の第一腹肢の 側面, c は鉛脚の背面,矢印は指節基部の白色部. スケールは1cm.
30 福島県で採集された移入ザリガニ類の学名と和名 した (表 1 ). た だ し,
P. 1.
leniusculus
に10 0 % 該 当 し た 形 質 は 無 か っ た . ま た9 %
質 中 の3
形 質 は,leniusculs
.
1
の形態に 該 当 しなかった . 以 上 の こ と か ら 福 島 県 の 個 体 群はP. 1
leniusculus
.
と最も近いが, 中 間 的 な 形質 の 個 体 も 多 い の で 亜 種 レ ベ ル の 明 確 な 区 別 が で きない . なおP. leniusculus
が 形 態 に よ り 亜 種 の 区 別 が で き な い 現 象 は , 囲 内 に 分 布 す る 他 の 地 域 個 体 群 全 て で 共 通 し て い る ( 浜 野 ら ,1992; 川 井ら ,2∞
12) . そして浜野ら (1992) は,亜種レベ ルの区別のできない地域個体群の学名を種レベル の記述に止めた . 本研究では,これと同様に ,福 島 県 の 個 体 群 の 学 名 をP. leniusculus
とする. P.
leniusculus
の分布記録は,これまで北海道と滋賀県 次 にP. leniusculus
の 和 名 に つ い て 検 討 す る . 蛭 田 ( 1986) は 形 態 で 亜 種 の 区 別 が で き な いE
leniusculus
の和名を 地 域 個 体 群 によって区別し , 滋賀県の地 域個 体 群 は タ ン カ イ ザ リ ガ ニ , 北 海 道 東部の地域個体群はウチダザリガニとすることを 提唱している . なおタンカイザリガニの名前の由 来は滋賀県淡海( たんかい ) 池 で採集されたこと による (三 宅, 1961 ) . 蛭田 (1986) の提 唱 を 拡 大して解釈し,さらにタンカイザリガニの和名の 由来から判断して,淡海池とは異なる福 島県小 野 川 湖 で 採 集 さ れ たP. leniusculus
に 与 え る 和 名 は ウチダザリガニとするのが妥当と思われる. 謝 辞 に限られていた (三宅, 1982; 蛭凹, 1986). したがっ 本研究に協力頂いた弘前大学の大高明史教授に て福島県はP. leniusculus
の新産地となる . 深謝します .表1 福島県小野川湖水系産の個体を Miller and Van Hyning (1970) に従って 3 亜種に区分した. 各 段の上部は 各亜種の形態の定義で司その下部は各
E
種の定義と 一致する個体の出現頻度とした .P. 1
.
P. 1
.
P.
Ileniusculus tro
ωbridgii klamathensis
全長150 m m
t
.
L
上 13 0 m m 通常110mm以下 0.0% (通常110 m m以下) 83.3% 0.0% 尖角長/ 幅 約1.05 1.05以下 0.95以下 20.0% 13.3% 3.3% 尖角 側 赫 大 コ司 73.3% 26.7% 0.0% 第一服筒 大 大 後縁練 93.3% 93.3% 0.0% 第二9R
鶴 大 後縁車車 60.0% 6.7% 6.7% 触角鱗片練 大 中 93.3% 6.7% 0.0% 長節練 大 90.0% 3.3% 3.3% 腕節赫 大 83.3% 6.7% 6.7% 指節長/ 約 2 1.5 約 1 掌節内縁長 33.3% 13.3% 3.3%文
献
浜野龍夫 ・林 健一 ・川井唯史・林浩之, 1992. 摩 周i
胡に分布するザリガニについて. 甲殻類の研究, 21 : 73-87. 蛭国民一,1986. 北海道の大型ザリガニ. 採集 と飼育, 48(6) : 241-244. H o b bs, H . H. , Jr. , 1972. C rayfishes (Astacidae) of North and M i d dle A merica. In Biota of Freshwater Ecosystems, Identification Manual, 9: x +173 pages, 115 figures. U nited States Environmental Protection A gency. , [ Water P ollution R esearch Control Series; rep巾ted 1976 with same paginationl川井唯史・中田和義・ 小林弥吉 ,2002. 日本における 北米産ザリガニ類( タンカイザリガニ ・ウチダザリ ガニ) の分類および移入状況に関する考察. 青森自 然誌研究, 7: 59-71.
M iJler, G . C . & Van Hyning, J. M ., 1970. T he commercial fishery for fresh-water crawfish,
Pa
αijastac
ωleniusculus
(Astacidae), in O regon, 1893-1956. Research Reports of the Fish Commission of O regon 2: 77-89目
三宅貞祥 ,1961. オレゴン州産ザリガニ属