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「カイアシ類・水平進化という戦略」-海洋生態系を支える微小生物の世界-, 大塚攻著, NHKブックス(日本放送出版協会刊), 2006年9月刊, 新書版, 260pp., ISBN4-14-091069-0 C1345., 1,070円(税抜き)

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Academic year: 2021

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70 会 記 学会へのご寄付 かに道楽様および札幌かに本家様より多額のご 寄付を頂きました 。深くお礼申し上げます。 第4 5回大会のお知らせ 2007年の大会は10月13, 14日に東京海洋大学海 洋科学部で行われます。皆様こぞってご参加下さ い。詳細は,東京海洋大学の大会事務局にお問い 合わせ下さい。 お願い 皆様の住所および所属等の変更について 転勤,卒業等によって住所が変更された方,ま た学生会員から一般会員に変更される場合も卒業 と同時に直ちに変更して下さいますようお願い致 します 。変更届を提出されない場合は学会誌およ び大会等のお知らせが届かなくなります 。変更届 は

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またはハガキにて事務局までお送り下さい。 会費納入,バックナンバ ー購入,住所変更など ご不明の点がございましたら,お気軽に事務局ま でお問い合わせ下さい 。

ー海洋生態系を支える微小生物の世界一

本 書 の 著 者 の 大 塚 さ ん (広島大学 ) と私は, 大学院時代からのおつき合いで,初めてお目に かかったのは,確か大学院の修士課程か博士課程 の前半に公開臨海実習が当時私の所属していた九 州大学天草臨海実験所であり,そこに当時京都大 学瀬戸臨海実験所に所属しておられた著者が来ら れた時である 。大塚さんが,実に 几帳面に ま じめ に実習を受けられていたのが印象に残っている 。 それからあっと言う間に25年以上が過ぎて,大塚 さんがかくも典味深い本を出されたことは,同世 代の人間として自分のことのように嬉しいことで あった 。 N H Kプックスというのは,普通の書店にでま わる一般書で,内容ははっきり 言 って濃いものや そうでないものもあるが,この本は分類群として は甲殻類のカイアシ類についての 生物学の本で あ るが,とりわけ内容が濃いし内容が非常に多岐に わたる 。 しかしそうかと 言 って,難解というわ け でもなく,随所にユーモラスな逸話が挿入されて いたり, また ふだんあ ま り饒舌ではない著者が, 実は こんなに博識あるいは雑学 (?)の大家だっ

大 塚 攻 著

N H Kブックス(日本放送出版協会刊) 2006年9月刊新書版, 260 pp. ISBN4-14-091069-0 C1345. 1,070円 (税抜き) たのかと驚く(例え話で少年マンガのことまで出 てくる) 。 また大塚さんの論文は,地味な, しか し堅牢な分類学の記載論文が多いが,それらの研 究を支えているアイデア,あるいはそれらの研究 成果から考えられることなどが,実は大きな世界 を構築していることを知り,読んでいて胸がとき めく 。 全体は大きく

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つの 章 に 分 かれている 。 第一 章は「生命40億年の中のカイアシ類」と題され, 非常に壮大な内容をもち,地球の歴史とともに, 生命の誕生と進化,甲殻類の誕生,そしてカイ アシ類の進化と多様性が描かれる 。大胆不敵と いうべき内容で,進化 に関するいろいろな仮説が 紹介され,実に典味深い。 日本人研究者というの はどち らかという と保守的な人が多い中で,これ はまた何という違いであろうか。著者はこの本の 中で,故西村三郎氏の地球生物学に 心酔している ことが述べ られている が,この第一章 は西村氏の さらに上を行くロマンあふれる内容であるし,ま た生物学者が書いたものとしては,地史的考証が かなりしっかりしていると思われる 。私自身,大

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学生時代から西村三郎氏のファンであったので, このような内容が出版されたことを 心 から嬉しく 思うし,この章の中のいくつかの小見出し,例え ば「テーチス遺存からみたカイアシ類」「太平洋 を渡った リジェウェイア属 」 「プー レー トテク ト ニクスと陸水への植民」 ,「二 次元から 三 次元の海 へ」などを見ていると,自分もその よ うな内容の 本を 書 きたかったと, まった<羨ましいやら悔し いやらである 。 第二章は「カイアシ類の大爆発ーあらゆる可能 性への挑戦」と題され,カイアシ類とひとくちに いっても,例えば魚を食べる種,オタマボヤのハ ウスを食べる種,光る種などから始まり,実に多 種多様な種がいる ことが,紹介される 。 また,あ る特定の分類群の生物地理と進化 の話題が紹介さ れる 。特に興味深いの は 「大いなる旅の果ての出 戻り」と題された節とそれに関連した節である 。 著者の代表的な研究のひとつであるア リエステル 科カイアシ類の系統進化 が紹介されている 。 それ によると,本科の祖先は深海 (おそらく大陸傾斜) の近底陪に生息していて, 1つのグループは進化 の過程で近底層からプランクトンヘと移行し, もうひとつのグループは近底層をつた って深海か ら沿岸まで移動し,その後プランク トンヘと移行 したという 。 またこの研究はさらに著者の研究室 の学生の力を得て , ア リエステ ル科を含む8科を 包含するア リエステル上科の系統解析に成功した という 。 日本でおこなわれた甲殻類の研究で,こ こまで詳しく系統解析がおこなわれた研究を,私 は他に知らない 。 この部分は,ペー ジ数 にすると 10数ページ しかないが,実際にはこれだけで1冊 の本が書 けるだけの内容が含まれていると思われ る。 というよりも,ぜひ将来,大塚さんには日本 語で,この部分を詳細に紹介した本を書いてほし し

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なおこの章の内容の多く は,著者個人の研究は もちろん,著者が他大学などの研究機関の研究者 とおこなった共同研究, また著者が手塩にかけて 育てた院生の研究などが幅広く紹介されている 。 著者の人脈の広さがうかがえる 。 寄生 生活圏への適応」と題されている 。 カイアシ類と いうと浮遊生活者というイメージが強いが,実は 寄生種,共生種も多く,それらが著者らの研究成

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果を通じて紹介されていて,かなりユ ニー クな話 題を提供している 。無脊椎動物に寄生するカイア シ類は

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種,魚類に寄生する種が

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種も記載 されているというから,その多様性は目を見張る ばかりである 。 その中で著者らに よる,ウマズラ ハギの体表に寄生する新科新属新種の種の発見の 話も盛り込まれている 。 またこれとは逆に,カイ アシ類に寄生する生物の話,カイアシ類を中間宿 主とする寄生生物の話しも紹介されている 。 第四章は 「人間に翻弄 されるカイアシ類」と題 され,これまでの3つの 章 と比べるとぐっと今日 的,社会的な内容で,近年の人間の活動が生態系 に与える影響を,カイアシ類を通じて紹介されて いる 。例えば,帰化動物,水界生態系における汚 染物 質, 地球濫暖化 などを通じたカ イアシ類の話 題で, 例 えばサンフランシス コ湾の カイアシ類は ほとんどがアジア 産種に置き換わった事例 などが 出てきて,驚きである 。 大塚さんは本業のカイアシ類ばかりでなく,そ のほかの分類群でも世界的に非常に希少な甲殻類 を発見している人であることも付け加えておく 。 顎 脚 網 の バ シ ポ デ ラ 亜 綱 は 世 界 で30種 し か 知 ら れていない希少な分類群であるが,その中のイト ウヒメ ヤ ドリエピは大塚さんとその共同研究者に よって発見され新属新種として記載された種であ る。軟甲綱の B och usacea 目は世界から 4種のみ 知られるが,その中のT hetispelecaガsyurikagoは, 大塚さんとその共同研究者によってカ リプ海から 発見され,新種として 記載された種である 。 この 2つだけでも,甲殻類学 史上の偉大な発見という べきである 。 最後に個人的感想をひとつ 。大塚さんは研究者 として論文の productivity としては,かなりの多 作家で,コ ンスタン トにすぐれた論文を発表しつ づけている 。 また学生への指甜も丁寧であるし, ほかの研究者との交流も多い 。 また この業界では 有名な「豊潮丸」航海のオーガナイズもされてい るし,学会の役員としてもご活躍である 。 その中 で,いったいいつこれだけの豊富な内容の本を 書 いたのだろう,不思議である 。夜も眠らないで執 筆しているのであろうか,羨ましいことである 。 朝倉 彰 (千葉県立中央博物館)

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