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西表島網取で観察されたオオカクレイワガニによるオカヤドカリ類捕食の一例

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C A N C E R 18 (2009), p. 17 -18

西表島網取で観察されたオオカクレイワガニによるオカヤドカリ類捕食の一例

小菅丈治 ・河野裕美

オカヤドカリ科はヤドカ リ類の中でも海岸付近 の陸上で生活することに適応した 一群である. 熱 帯域を中心 に分布し,圏内では伊豆諸島南部 小 笠原諸島,南日本太平洋岸お よび琉球列島の島々 に分布する (三宅,1982; 朝倉, 2004). 沖縄県西表島西部に位置する網取湾の湾口近く には, 17世紀初頭より 1971年まで約350年間続い た網取集落があった. 集落道や,サンゴ垣,フク ギやテリハボクの集落林とい った基本的な景観を 残したまま, 1976年に東海大学海洋研究所西表分 室 (現,沖縄地域研究センター ) が設置され,現 在に至 っている. 2008年 8 月- 11月に, 旧綱取集落周辺における オカヤドカ リ類の分布と宿貝として利用している 貝殻の種組成に関する卒業研究を実施していた際 に,イワガニ科のオオカクレイワガニ

Geograpsus

crinipes

(Dana) が オ カ ヤ ド カ リ の 一 種 を 鉄 脚 で捕捉している場面に遭遇し,写真を撮影する ことができた. オカヤドカリ類の捕食者として リュウキユウアカショウビン

Halcyon coromanda

(Latham) が知られている (Imafuku,2002). 同 文献では,西表島船浮集落在住の 池田 米蔵氏の 在見察として, リュウキユウアカショウビンはオ カヤドカリの宿貝を瞬でくわえ,石などに叩き つけて殻を割 って捕食する習性が紹介されている (Im油lku,2002). しかしオカヤドカリ類が他の カニ類によ って捕食されているという事例は報告 されていないようなので 新たに知られた捕食者 として今回の観察例を記述しておく 2008年 8 月に,オカ ヤドカリ 類の観察を目的と した定点を旧綱取集落 内

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カ所に設置した 定点 Takeharu K OSUGE

&

Hiroyoshi K OHl可0:A case of

predation by a grapsid crab

G eograpsus criniPes

on a land hermit crab

Coenobita

sp. observed in A mitori, Iriomote Island

には , 日没前後の時間帯にキャッ トフード を置 き,誘引されたオカヤドカ リ類を日没後に観察 した . 8月19 日午後6時20分,定点に餌を置き, 午後

8

時30分に懐中電灯を携行して見回ったとこ ろ,海浜林の縁辺に位置する,最も海側の定点の 近くで,オオカクレイワガニが鉄脚でオカヤドカ リの一種を保持しているのを発見した( 図1 ). 写真撮影の後,捕獲を試みたが素早く草むらに逃 げ込まれた . そのためオオカクレイワガニの正確 な大きさを計測することと,オカヤドカリ類の種 を同定することができなかった. 写真を見ると , オオカクレイワガニは左の鉄脚で, 宿員から 出た 状態のオカヤドカ リ類の一種の頭胸甲の,右鉄脚 の付け根の部分を挟みつけていたことが判る. オオカク レイ ワ ガ ニ は 通 常 見 ら れ る 成 体 の 大きさで,甲幅5 - 6 c m の個体であった . 石灰 岩の岩場などにも生息し,石垣島や西表島で夜 間 に フ ナ ム シ や 脱 皮 後 の オ オ イ ワ ガ ニ

Grapsus

tenuicrustatus

(Herbst) を捕食している場面を観 察したことがある . 甲 殻類を好んで食べる捕食 者と考えられる. 同晩この定点に誘引されたオ カヤド カリ類

55

個体 はすべてナキオカヤドカ リ

Coenobita rugosus

H. Milne-Edwards であったこと から,オオカクレイワガニに捕捉された個体もナ キオカヤドカリであった 可能性が高い. 注目すべき点は,このオオカクレイワガニが, 観察された時点で既に右の鉄脚が脱落した個体で あったことである. 左の鉄脚一本を用い,どのよ うにしてオカヤドカ リの一種を殻から掴み出した のか? 飼育下で両者を観察す ることによ って捕食 行動の詳細が明らかになるであろう . 現場は,通常夕方になるとナキオカヤドカリ が多数姿を現す場所で,オオカクレイワガニの生 息場所とも重複し,両種共に夜行性であることか ら,両種の遭遇は日常的におこっていると考えら

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18

西表島綱取で観察されたオオカクレイワガニによるオカヤドカリ類捕食の一例 図1 西表島網取 で観察されたオ オカ クレ イワガニ. 左鉄脚でオカ ヤドカリの一種 を持 っている れる. 同じ半陸的環境に生息する 甲殻 類 同志の捕 食被食関係として興味深く ,捕食行動の詳細 や, 捕 食頻度について観察を深めることによって,オ カヤ ドカリ 類の死亡要因を考察する上で重要な側 而が明らかになる 可 能性がある 謝 辞 今 回 の 事例 は, 東 海 大 学 海 洋 学 部 海 洋 文 明 学 科

4

年生,佐々部友希氏・ 安田尚進氏による卒業 研究「西表島綱取 におけるオカヤドカ リ類の分布 特性」の調査中に 観 察され,安 旧氏には写真を撮 影していただし、た この場を 借 りて両名に感謝す る また卒業研究の指導に当たられ,

2009

2

月 に急逝された故 ・上野信平教授に ,此岸 よ り深謝 の意を表する次第である . 貴重な文献を提供して 下 さった今福道夫博士に 深謝する

文 献

朝 合 杉, 2004. ヤドカリ類の分類学,最近の話題一 オカヤドカリ科. 海洋と生物,150:83-89

Imafuku , M . , 2002. Ecology of th e land h ermit crab

Coenobita purjうureuson Kikaijima Island, 11. Breeding behavior, food, predator, orientation and the environ-m ent.M emoirs of Faculty of Science, Kyoto University,

Series B, 18: 15-34. 一三宅貞祥, 1982 原色 il本大型 甲殻類図鑑 (1) .261 pp. 保育社,大阪. (小菅丈治 : 東海大学沖縄地域研究センター 河野裕美 ・東海大学沖縄地域研究センター / 東海大学海洋研究所)

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