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河川技術論文集2010

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論文 河川技術論文集,第16巻,2010年6月

洪水流による砂州の移動・変形と

砂州粒度構成の変化

SANDBAR MOVEMENT AND TRANSFORMATION BY FLOODS

AND GRAIN COMPOSITION CHANGES

忠津 哲也

1

・下條 康之

2

・内田 龍彦

3

・福岡 捷二

4

Tetsuya TADATSU, Yasuyuki SHIMOJO, Shoji FUKUOKA and Tatsuhiko UCHIDA

1学生会員 中央大学大学院 理工学研究科 土木工学専攻(〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27) 2正会員 国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所

(〒230-0051 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央2-18-1)

3正会員 博(工) 中央大学研究開発機構准教授(〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27) 4フェロー Ph.D 博(工) 中央大学研究開発機構教授(〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27)

The movement and development of the local scour is associated with the sandbar movement and transformation. The local scour around the river structure increases the risk of the structure failures. Therefore it is important for structures maintenance and management to clarify the characteristics and grain compositions of the sandbar. So, we surveyed the grain composition of sandbar in the Tama River in 2008. And we show the movement and transformation of the sandbar during the 2007 flood, which is the largest Tama River flood in recent years, using the digital map data and the cross section survey data. Then, the characteristics of sandbar movement and transformation and grain size composition of the sandbar are discussed. And we develop numerical model for bed and grain composition variation during the 2007 flood by the quasi-3D flow and bed variation model with segment mixture.

Key Words : sandbar transformation, grain size distribution, surface image analysis, sediment mixture, bed variation analysis

1. 序論 河道に形成されている砂州が洪水中に移動・変形する と,それに伴って砂州周辺の局所洗掘も移動,発達する. 局所洗掘の移動,発達は河川構造物の安全性を低下させ, 被災の危険性を増大させる懸念がある.多摩川の二ヶ領 宿河原堰(22.4km)の上流では戦後最大級であった平成19 年9月洪水(表-1参照)において,局所洗掘の移動,発達が 要因の一つとなって,堰の上流側護床工の破壊や湾曲外 岸部に設置されていた巨石護岸が被災した1).そのため, 河川構造物の維持管理においては局所洗掘の位置や大き さ,深さの時間変化を知って,構造物の被災に備えるこ とが重要となる. 著者らは,平成19年9月洪水による二ヶ領宿河原堰周 辺の砂州や局所洗掘の変動機構について,実測データや 河床変動解析を用いて検討を行ってきた2),3).その結果, 護床工に被害を及ぼしたと考えられている局所洗掘深の 発達やその移動は,砂州の変形の影響を大きく受けてい ることが明らかになった.そのため,洪水流による砂州 の変形と局所洗掘の移動,及び洗掘深の発達のメカニズ ムを明らかにすることが必要である.このためには,砂 州の状態(形状や粒度構成等)について詳細な調査,検討 が必要なことから,平成19年9月洪水後の平成20年12月 に多摩川の24.6km付近の左岸に形成されている砂州(図-1参照)を対象に,河床材料の平面的,鉛直的な構成につ いて現地調査を実施した. 本研究では,洪水流による砂州の変形について詳細に 把握すると共に,現地調査から砂州の平面的,鉛直的な 粒度構成について明らかにする.また,平成19年9月洪 水を対象に,混合粒径を考慮した河床変動解析を行い, 現地調査結果と比較・検討する. 2.砂州の現地調査の概要 現地調査は平成20年2月に図-1に示す多摩川の24.6km 付近の左岸側に形成されている砂州を対象に行った.調

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査地点は砂州を形成する河床材料の平面的な特性を把握 するため,砂州の上流面(A1,B1,B2,B3,C1,C2)と中間位置 (A2,A3,B4,B5,C3)の計11地点で行った.図中の記号は調 査地点を場所的な特徴で区別しており,水面下をA(△), 水際をB(○),砂州上をC(□)で示し,数字は各特徴別に 小さい方が上流を示している.また,各地点における鉛 直方向の河床材料特性についても約30cm間隔の掘削を 行い検討した. 粒度分布は河床材料画像解析(全11地点)とふるい分け 試験(A1,A2,A3,B3,B4の計5地点)によって分析した.画像 解析では1.2m×1.2mの枠を用いて河床表層や掘削した表 面を撮影し,調査後,枠内における河床材料の面積百分 率を算出し粒度分布を得た.ただし,水面下(A1,A2,A3 地点)や掘削した表面が水に浸かる場合には,掘削土砂 を撮影している. 表-1に示すように,今回の調査以前における石原観測 所(27.8km)での観測流量は,平成19年9月洪水が最も大 きく,次いで平成20年8月洪水が大きい.両者とも平均 年最大流量を大きく上回っている.図-1には表-1で示す 航空写真を基に平成19年9月洪水前後における砂州の形 状を示す.砂州形状の変化は平成20年8月洪水(破線から 写真の形状)に比べ平成19年9月洪水による変形(実線から 破線)の方が大きいことが分かる.そのため,調査結果 は,平成19年9月洪水を大きく反映した砂州形状のもの で行われたと考えられる. 3.数値地形データを用いた砂州の形状変化 洪水流による砂州形状の変化と砂州の粒度構成の関係 を把握するため,変化の大きかった平成19年9月洪水に おける洪水前後の砂州形状を検討する.本研究では,航 空レーザー測量による緻密な数値地形データを用いて砂 州を三次元的に再現する.しかし,航空レーザー測量で は図-2に示すように,陸上部については横断測量データ による河床高を再現しているが,水面下については再現 できていない.砂州形状の変化に伴って水際線は変動す るため,各調査地点の河床変動量や砂州の移動,変形を 明らかにするには,水面下の河床高も把握する必要があ る.そこで,水面下に関しては,200m間隔で測られて いる横断測量データを用いて縦断方向に線形補間して地 盤高を求めた. 図-3(b) ,(c)に調査対象とした砂州周辺の河床高コン ターを示す.用いたデータは表-1に示すように,洪水前 は平成18年の数値地形データ(5mメッシュ)と平成18年3 月の横断測量データ,洪水後については平成19年(洪水 後)の数値地形データ(1mメッシュ)と平成20年2月の横断 測量データである.図-3には3つの砂州が形成されてい るが,これらは図-3(a)で示すように平成19年9月洪水に よって大きく変動していることが確認できる.また,図 -3(b) ,(c)の白破線で示す洪水前後の砂州形状を比較す ることで,砂州が移動し変形していることが分かる.表 -2に洪水前後における各砂州の波長と波高を示す.波高 は砂州の形成している区間内における最深河床高と砂州 の最大河床高の差,波長は白破線で示した砂州形状にお ける上下流端の縦断距離とした.波高は最下流部の砂州 を除いて洪水後に大きくなっており,波長は各砂州で大 きくなっていることが分かる. このように,密に測ら れた数値地形データと横断測量データを用いることで, 砂州の形状や変形を詳細に検討することができる. 4.調査結果 ふるい分け試験と画像解析の結果を比較する.図-4に 航空写真:平成20年9月 図-1 調査対象砂州と調査地点 表-1 基礎データと時系列 図 -2 数値 地形 デー タと 横断 測量 データ (24.6km)の比較 年月 年最大流量 航空写真 横断測量 数値地形データ 平成17年 5月 ○ 8月 1646 平成18年 3月 ○ ○(平成18年) 5mメッシュ 10月 1034 平成19年 9月 4088 ○(洪水以降) 1mメッシュ 10月 ○ 平成20年 2月 ○ 8月 3752 9月 ○ 12月 現地調査 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 0 100 200 300 400 横断測量結果(平成20年2月) 数値地形データ(平成19年(洪水後)) 標高 [A .P .m ] 横断距離[m] 河床高が捉えられていない範囲 砂州 A1 A2 A3 C1C2 C3 B1 B2 B3 B4 B5 24.6km 24.4km 24.8km 平成19年9月洪水前 の砂州形状 (平成17年5月) 平成19年9月洪水後 の砂州形状 (平成19年10月) 調査地点 :水面下 :砂州水際 :砂州上 平成10年以降における平均年最大流量:2099m3/s

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B3地点におけるふるい分け試験と画像解析による粒度 分布を示す.画像解析の結果は,粒径の粗い範囲でふる い分け試験の結果よりも細かく,粒径が約5mm以下は計 測できていない.これは,画像解析では河床に埋もれて いる粗い河床材料粒径を小さく見積もってしまうことや, 細かい粒径を捉えることが困難であることが影響してい るためである4).しかし,石礫河川のような大粒径が重 要な役割を果たす河川において,大きな粒径集団におけ る測量結果は比較的良く,調査が容易であるため,河床 材料と河床変動の関係を検討するために有効な手段であ ることが知られている4).本調査においても比較的大き い河床材料が砂州形成に重要な役割を果たしていると考 えられるため,調査が容易である画像解析法が全調査地 点で用いられている. 図-5(a)は砂州水際(B)と砂州上(C)における表層の粒度 分布から砂州上の平面的な位置の違いによる粒度構成を 示している.実線は上流面,破線は中間位置を示してお り,砂州の表層では上流面で河床材料が粗くなっている. これは,砂州の移動に伴って上流側では河床高が低下し, 細かい粒径が抜け出したためである.一方,下流側では 上流から運ばれてくる細かい河床材料が堆積することで 粒度分布が細かくなる. 図-5(b)は砂州上の上流面C1,C2における鉛直方向の粒 度分布を示している.C1,C2の河床面は洪水流による砂 州の移動によって図-6に示すように平成18年以降低下し ている.そのため,表層より下の粒度分布は平成18年以 前に形成されたものと考えられる.表層より下では,一 回目の掘削面(30cm)に比べ二回目の掘削面(50cm,60cm) における河床材料の方が粗い.洪水中に掃流されている 砂礫は,洪水減衰期において粗い礫から留まりやすくな る.そして,移動を停止した粗い砂礫の上を相対的に小 さい砂礫が掃流,停止することで図-5(b)のような鉛直 構造が形成されたと考えられる. 図-5(c)は砂州上中間地点のC3における鉛直方向の粒 度分布である.この地点の表層より下ではC1,C2と異な り二回目の掘削面(50cm)の粒度分布が一回目(30cm)に比 べて,細かくなっている.C3では図-6に示すように, 河床高が上昇しており,その上昇量は二回目の掘削深 (約50cm)とほぼ同じであることから,二回目の掘削面は 平成19年9月洪水前の表層付近を捉えていたことが考え 24.0km 23.6km 24.8km (a) 平成19年10月の航空写真 (b) 平成19年9月洪水前 (c) 平成19年9月洪水後 白破線:砂州の形状 :平成17年5月時点での 砂州の形状 図-3 調査対象砂州周辺の河床形状 17.0   18.0  19.0  20.0  21.0  22.0  23.0  24.0  25.0  26.0  27.0  28.0 [A.P.m] 24.8km 24.8km 24.0km 24.0km 23.6km 23.6km 24.8km 24.0km 23.6km 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0.1 1 10 100 B3‐30cm B3‐50cm B3‐30cm B3‐50cm 通過重量百分率, 面積百分率 [% ] 粒径[mm] ふるい分け試験 画像解析 表-2 波高と波長 図-4 ふるい分け試験と画像解析の比較 対象砂州 波高[m] 波長[m] 23.8km右岸 H18 3.26 453 H19 2.35 480 24.2km河道中央H18 4.16 621 H19 5.74 641 24.6km左岸 H18 2.81 480 H19 3.00 499 掘削深 調査地点:B3

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られる.洪水前のC3地点は図-1に示すように砂州の下 流側に位置しており,図-5(a)の検討から洪水前のC3地 点の表層付近の粒度分布は小さかった可能性が高く,平 面的な粒度構成の影響が鉛直方向の粒度分布の変化に表 れたと考えられる. 図-5(d)は砂州側岸(B3,B4,B5地点)における鉛直方向の 粒度分布である.砂州側岸では鉛直方向の粒度分布の差 が小さい.調査対象の砂州は湾曲外岸部に形成されてお り,側岸では常に大きい流速が接していたことが考えら れる.そのため,側岸では細かい砂礫が留まりにくく, 鉛直方向の差が小さくなったと考えられる. このように,現地の砂州形状を把握しながら,砂州を 構成する河床材料について平面的,鉛直的に調査するこ とで砂州の形状,移動特性を把握することができる.こ の特性を踏まえた上で,洪水流による砂州の変形,移動 について検討することが砂州河道の河床変動の把握に重 要である. 5.混合粒径を考慮した準三次元洪水-河床変動 解析 平成19年9月洪水を対象に混合粒径を考慮した河床変 動解析を行い,現地調査より明らかになった洪水流によ る砂州の変形と砂州の粒度特性の調査結果と比較する. (1)計算方法 解析区間は二ヶ領宿河原堰(22.4km)と二ヶ領上河原堰 (25.8km)を含む21.6km~28.0kmとしている.現地河道は 砂州周辺においては図-3に示すように湾曲している.湾 曲外岸部や砂州下流に形成されている局所洗掘部におい ては,流れの鉛直流速分布構造が複雑になることが考え られる.そのため,本研究では,流れの解析において静 水圧分布を考慮せずに鉛直流速分布を求めることができ る,渦度方程式を用いた準三次元解析法3),5),6)を用いる. 河床変動解析では流砂の連続式と平衡流砂量式として芦 田・道上式7)を適用した.また,粒度分布における各粒 径階の代表粒径に対する限界掃流力は芦田・道上による 修正Egiazaroff式7)より算出した.堰,構造物区間におい ては河床高が構造物の敷高以下にならないようにしてい る.粒度分布の計算では河床表層に交換層8)を設けてい る.また,堆積土砂の鉛直方向の粒度分布の変化を考慮 するため,交換層の下の層(堆積層9)もしくは貯留層と呼 ばれる)についても,連続式により,粒度分布を計算す る.河床面近傍で粒度分布の鉛直方向変化は大きくなる と考えられることから,堆積層は河床変動に追随して高 さを変化させている. (2)解析条件 初期河床形状データの作成には3章で示した洪水前の 数値地形データと横断測量データを用いる.計算メッ 面 積百分率 [% ] 粒径[mm] 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 10 100 C1‐0cm C1‐30cm C1‐50cm C2‐0cm C2‐30cm C2‐60cm 面積 百分 率 [% ] 粒径[mm] 砂州上の 上流面 砂州上の 中間位置 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 10 100 B1‐0cm B2‐0cm B3‐0cm C1‐0cm C2‐0cm B4‐0cm B5‐0cm C3‐0cm 図-6 調査地点の河床高変化時系列 図-5 各調査地点における粒度分布の比較 (a) 砂州上の平面位置の違いによる粒度分布 (b) 砂州上の上流面における鉛直方向の比較 (c) 砂州上の中間位置における鉛直方向の比較 (d) 砂州側岸における鉛直方向の比較 21.2  21.5  21.8  22.1  H18 H19 H20 C1 C2 C3 標高 [A .P .m ] H19.9洪水 H20.8洪水 掘削深 掘削深 掘削深 掘削深 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 10 100 C3‐0cm C3‐30cm C3‐50cm 面積 百分率 [% ] 粒径[mm] 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1 10 100 B3‐0cm B3‐30cm B3‐50cm B4‐0cm B4‐30cm B4‐50cm B5‐0cm B5‐30cm B5‐60cm 面積百分率 [% ] 粒径[mm]

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シュは二ヶ領宿河原堰から二ヶ領上河原堰区間において 縦横断方向に幅が約10mになるように作成している.境 界条件は図-7に示すように上流端に25.0km,下流端に 21.6kmで観測された水位ハイドログラフを再現するよう に与えている.粗度係数は低水路に0.022,高水敷に 0.027を与えている.交換層厚は最大粒径程度の0.1m(図-8)とし,交換層の下には0.2mの層(堆積層)を鉛直方向下 向きに26層設けている.初期の粒度分布については図-8 に示すように平成17年度に23.0km,24.0km,25.0km周辺 で調査されている結果を平均した粒度分布を6つの粒径 階に分割し,交換層以下において同一に与えた. (3)解析結果と観測結果の比較 図-7に観測と解析の水位ハイドログラフの比較を示す. 二ヶ領宿河原堰上流(22.5km)の解析水位の時間変化は, 初期を除いて観測値を再現している.観測水位が初期に 低いのは洪水前に行われた二ヶ領宿河原堰のゲート操作 を考慮せず,全解析時間でゲートを全開としているため と考えられる.流量については,図-9に示すように,解 析流量(25.0km)が石原観測所(27.8km)における観測流量 を再現している.図-10に調査を行った砂州の周辺にお ける解析終了時の河床形状を示す.図-3(c)で示した実 測による洪水後の砂州形状と比較して解析による砂州は 下流への移動量が大きい.砂州の河床高が上流側に比べ 砂州中間や下流側で高くなっていることは実測を再現し ている. 図-11に調査砂州周辺における表層の平均粒径コン ターを示す.図-5(a)に示した上流面で粗く,下流方向 に細かくなっていく実測での河床材料の傾向を解析結果 は説明している.図-12(a)にC1,C2における鉛直方向の 粒度分布を示す.C1,C2は図-13に示すように洪水期間中 において河床高が低下し続けているため,表層より下の 層では初期の一定の粒度分布のままである.このように, 河床面近くであっても河床が低下する砂州の上流部など では,直前の洪水によって形成された河床材料でないた め,砂州の粒度構成を明らかにするためには,継続的な 河床変動を調べていく必要がある.一方, C3では図-13に示すように,洪水減衰期に河床高が上昇(約20cm) している.そのため,図-12(b)の実線と破線で示す粒度 分布は洪水減衰期に堆積した河床材料である.図-12(b) に示すC3での鉛直方向の粒度分布は,深いほど細かい 傾向にある.これは図-5(c)の特徴と同様である.堆積 分の粒度分布が堆積前の表層付近の粒度分布(C3-30~ 50cm)よりも粗いのは,洪水ピーク付近に上流から運ば れた相対的に大きい河床材料が堆積したためである.表 層付近(C1-0~10cm)が最も粗いのは洪水減衰期の終盤 に粗粒化した影響である. このように,混合粒径を考慮した河床変動解析を行い, 現地調査結果の平面的,鉛直的な砂州の粒度構成につい て傾向を捉えることができた.しかし,河床形状や粒度 24.8km 24.6km 24.4km 24.2km 24.8km 24.6km 24.4km 24.2km 図-7 水位ハイドログラフ 図-8 解析で用いた粒度分布 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0.01 0.1 1 10 100 通過 重量百分 率 [% ] 粒径[mm] 23k右岸上層 23k右岸下層 24k左岸上層 24k右岸上層 24k右岸下層 25k左岸上層 25k左岸下層 25k右岸上層 25k右岸下層 解析粒度分布 図-9 流量ハイドログラフ 図-10 解析終了時の砂州形状 図-11 平均粒径コンター(解析終了時) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 9/ 6 /22 :5 0 23:30 0: 1 0 0: 5 0 1: 3 0 2: 1 0 2: 5 0 3: 3 0 4: 1 0 4: 5 0 5: 3 0 6: 1 0 6: 5 0 7: 3 0 8: 1 0 8: 5 0 9: 3 0 10:10 10:50 11:30 12:10 12:50 13:30 14:10 実測流量(石原観測所(27.8km)) 解析流量(25.0km) 流量 [m 3/s ] 標高 [A .P .m ] 15.0  16.0  17.0  18.0  19.0  20.0  21.0  22.0  23.0  24.0  25.0  26.0  27.0  観測水位(25.0km) 観測水位(22.5km) 観測水位(21.6km) 解析水位(25.0km) 解析水位(22.5km) 解析水位(21.6km) 白破線:砂州の形状 :調査地点 18.0  19.0  20.0  21.0  22.0  23.0  24.0  25.0  26.0  27.0   [A.P.m] 白実線:等高線(数値は標高[A.P.m]) 20  30  40  50  60  70  [mm]

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分布の定量的な精度は低い.これは,初期条件における 河床材料の条件を平面,鉛直に対して一定に与えている ことが要因の一つであると考えられる. 7.結論 本研究では,平成19年9月洪水を対象に,密な地形情 報と河床材料に関する現地調査の結果を基に砂州の形状 変化と粒度特性について検討し,河床変動解析を用いて 砂州の変形と粒度構成の再現を試みた. (1)数値地形データと横断測量データを用いることで洪 水前後における砂州の移動と変形を三次元的に把握 することができた.洪水前後の砂州の形状から,調 査を行った砂州の洪水流による形状の変化や波高, 波長の発達について定量的に示した. (2)砂州を構成する表層の河床材料は上流域で粗く,中 流域で細かいことを示した.粒度の鉛直方向の構造 は砂州の形成過程によって異なることを示した. (3)混合粒径を考慮した河床変動解析を行い,平面的, 鉛直的な粒度構成の傾向を捉えることができた.し かし,現地調査による実測値と比較すると,河床変 動量に課題を有する.また,砂州を構成する粒度分 布は経年的に洪水を受けることで形成されるため, 経年的な砂州の移動,変形について検討することが 重要と考えられる. 謝辞:本研究の一部は,(財)河川環境管理財団の河川整 備基金助成事業の支援によって行われた.ここに 記して謝意を表する. 参考文献 1) 第12回多摩川水系河道計画検討委員会資料,国土交通省京浜 河川事務所,2007. 2) 忠津哲也,鈴木研司,内田龍彦,福岡捷二:洪水流による土 丹河床高さの経年変化と堰周辺の砂州変形に伴う洗掘深の増 大について,河川技術論文集,第15巻,pp.249-254,2009. 3) 忠津哲也,内田龍彦,石川武彦,福岡捷二:洪水中の砂州の 変形と河川構造物周辺の局所洗掘,水工学論文集,第54巻,pp. 829-834,2010. 4) 塚本洋祐,福岡捷二,須賀正志,澤原和哉,長田健吾:石礫 河川の粒度分布特性と安定河道形状,河川技術論文集,第14 巻,pp.7-12,2008. 5) 内田龍彦,福岡捷二:浅水流方程式と渦度方程式を連立した準 三次元モデルの提案と開水路合流部への適用,水工学論文集, 第53巻,pp.1081-1086,2009. 6) 岡村誠司,内田龍彦,福岡捷二:一般座標系における渦度方程 式を用いた準三次元解析,第36回土木学会関東支部技術研究発 表会講演概要集,II-1,2009. 7) 芦田和男,道上正規:移動床流れの抵抗と掃流砂量に関する基 礎的研究,土木学会論文報告集,第206号,pp.59-69,1972. 8) 平野宗夫:Armoringをともなう河床低下について,土木学会 論文報告集,第195号,pp.55-65,1971. 9) 芦田和男,江頭進治,劉炳義:二層モデルによる複断面河道の 流れおよび河床変動の数値解析,京都大学防災研究所年報,第 35号,B-2,pp.1-22,1992. (2010.4.8受付) 図-12 解析終了時における鉛直方向粒度分布 (a) C1,C2 (b) C3 図-13 C1,C2,C3を含むメッシュにおける 洪水期中の河床高変化 洪水後実測値 :C1, :C2, :C3 洪水前実測値 :C1, :C2, :C3 面積百分率 [% ] 粒径[mm] 各層の深さ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0.1 1 10 100 C1‐0~10cm C1‐10~30cm C1‐30~50cm C2‐0~10cm C2‐10~30cm C2‐30~50cm 面積 百分 率 [% ] 粒径[mm] 各層の深さ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0.1 1 10 100 C3‐0~10cm C3‐10~30cm C3‐30~50cm 20.0  20.2  20.4  20.6  20.8  21.0  21.2  21.4  21.6  21.8  22.0  9/ 6/ 17 :0 0 19 :0 0 21 :0 0 23 :0 0 1: 00 3: 00 5: 00 7: 00 9: 00 11 :0 0 13 :0 0 15 :0 0 17 :0 0 19 :0 0 21 :0 0 23 :0 0 C1 C2 C3 標高 [A .P .m ] 洪水ピーク

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※ 硬化時 間につ いては 使用材 料によ って異 なるの で使用 材料の 特性を 十分熟 知する こと

いられる。ボディメカニクスとは、人間の骨格や

(1) 汚水の地下浸透を防止するため、 床面を鉄筋コンクリ-トで築 造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じら

 既往ボーリングに より確認されてい る安田層上面の谷 地形を埋めたもの と推定される堆積 物の分布を明らか にするために、追 加ボーリングを掘