(3)添付情報 (イ)登記原因証明情報 ―― 贈与契約書がこれにあたるが、死因贈与の場合は、死因 贈与により受贈者が当該不動産の所有権を取得したこと及びその年月日を記載した 法定相続人全員が作成した報告的な登記原因証明情報を作成するのが便宜である (書式解説(一)参照)。 (ロ)登記識別情報(又は登記済証) ―― 登記義務者(贈与者)が所有権取得を受け た際の登記識別情報。 (ハ)印鑑証明書 ―― 所有権の登記名義人が登記義務者として申請するのであるから、 その者の印鑑証明書(作成後3箇月以内のもの)が必要である(令16、18)。死 因贈与の場合には贈与者の相続人の印鑑証明書となる(書式解説(一))。 (ニ)住所証明情報 ―― 登記権利者である受贈者の住民票の写し(作成後3箇月以内 のものであることを要しない)。 (ホ)相続証明情報 ―― 死因贈与の場合、申請人(贈与者の相続人)の資格を証する 書面として、戸籍謄本等の添付が必要となる。 (ヘ)代理権限証明情報 (4)登録免許税 ―― 不動産の価額(課税価格)の1,000分の20(登免別表一、一 (二)ハ)。
第3章 売買による所有権移転登記
1.売買の意義 「売買」とは、当事者の一方(売主)がある財産を相手方(買主)に移転することを約 し、相手方がその代金を支払うことを約することによって成立する契約をいう(民555)。 その態様は多様である。 (1)単有の場合 (イ)甲の所有権を全部乙へ移転する場合 1.所有権保存 所有者 甲 2.所有権移転 所有者 乙 (ロ)甲の所有権の一部(2分の1)移転して、買主乙と共有とする場合 1.所有権保存 所有者 甲 2.所有権一部移転 共有者 持分2分の1 乙 (2)甲乙共有不動産の場合 (イ)乙のみが持分を全部丙へ移転する場合(甲・丙の共有となる)。 2.所有権移転 共有者 持分2分の1 甲 2分の1 乙3.乙持分全部移転 共有者 持分2分の1 丙 (ロ)乙のみが持分の一部(2分の1の2分の1=4分の1)を丙へ移転する場合(甲・ 2分の1、乙・4分の1、丙・4分の1の共有となる)。 2.所有権移転 共有者 持分2分の1 甲 2分の1 乙 3.乙持分一部移転 共有者 持分4分の1 丙 (ハ)甲・乙が共に持分を全部丙へ移転する場合(丙の単有となる)。 2.所有権移転 共有者 持分2分の1 甲 2分の1 乙 3.共有者全員持分全部移転 所有者 丙 (ニ)甲・乙が各持分の一部(各2分の1ずつ)を丙へ移転する場合(甲・乙・丙の共 有となる)。 2.所有権移転 共有者 持分2分の1 甲 2分の1 乙 3.甲持分4分の1、共有者 持分4分の2 丙 乙持分4分の1 移転 (3)甲・乙・丙共有の場合 (イ)甲・乙が持分を全部丁へ移転する場合(丙・3分の1、丁・3分の2の共有とな る)。 2.所有権移転 共有者 持分3分の1 甲 3分の1 乙 3分の1 丙 3.甲、乙持分全部 共有者 持分3分の2 丁 移転 (ロ)乙・丙が持分を全部甲へ移転する場合(甲の単有となる)。 2.所有権移転 共有者 持分3分の1 甲 3分の1 乙 3分の1 丙 3.乙、丙持分全部 所有者 持分3分の2 甲 移転 2.登記申請手続 (1)申請人 ―― 売買による所有権の移転登記は、判決による場合を除き、買主を登記 権利者、売主を登記義務者とする共同申請による。 (2)登記の目的 ―― 所有権の全部移転の場合は「所有権移転」、一部移転の場合は「所 有権一部移転」、共有持分の全部移転の場合は「何某持分全部移転」とする(上例参照)。
共有者が多数で、一部の者を除き全員が持分を全部移転するときは「甲を除く共有者全員 持分全部移転」とすれば足りる(精義上)。 (3)登記原因・日付 登記原因はすべて「売買」。日付は売買による所有権移転の日。通常売買契約成立の日で あるが次の例外がある。 原 因 日 付 所有権の移転時期を特約した場合 特約による所有権移転の日 売買の一方の予約に基づくとき 予約完結の意思表示到達の日 停止条件付売買の場合 停止条件成就の日 第三者の許可等により所有権が移転する場 合 許可書到達の日(許可後の売買の場合は売買 の日) (4)登記権利者が数人の場合の持分 ―― 「権利の……移転の登記を申請する場合にお いて、登記名義人となる者が二人以上であるときは……登記名義人となる者ごとの持分(令 3‐⑨)」が申請情報の内容となる。所有権の一部移転により、共有となる場合には、その 移転すべき部分をたとえば「持分何分の1」と記載する。 (5)添付情報 (イ)登記原因証明情報 ―― ① 売買契約の成立と同時に所有権が移転する通常の場合 は売買契約書(売渡証書)が登記原因証明情報となる。② 売買契約で所有権移転の 時期が特約されているときは、その特約記載の売買契約書、代金完済の時に所有権 が移転する特約のときは、代金完済の記載のある売買契約書がそれぞれ登記原因証 明情報となる(原因日付は代金完済の日 ―― 登研517号)。③ 売買一方の予約 契約書、売買予約書だけでは登記原因証明情報とならない。売買一方の予約契約書 と予約完結の意思表示とその日を証する書面、予約に基づく本契約の成立を証する 書面が登記原因証明情報となる(書式解説(一))。 (ロ)登記識別情報(又は登記済証) (ハ)印鑑証明書 (ニ)住所証明情報 (ホ)相続人による申請の場合の相続(その他一般承継)を証する情報(令7‐Ⅰ‐⑤ イ)。 (ヘ)代理権限証明情報 (6)登録免許税 ―― 不動産の価額(課税価格)の1,000分の20(登免別表一、一 (二)ハ)。 3.数個の持分の売買と一括申請 (1)共有者全員又はその一部の者の持分が第三者(又は他の共有者)へ売買された場合、 本来は各共有者の持分がそれぞれ売買されたのであるから各持分ごとに持分移転登記をす べきであるが、各持分につき一個の申請書で一括申請することが認められる(S37.1.1
1民甲2号 ―― 「甲・乙持分全部移転」というように)。 (2)ただし、持分に第三者の権利に関する登記(抵当権など所有権以外の権利、持分仮 登記、持分に対する差押えなど処分制限の登記)がなされているときは、一括申請はでき ず、各別に持分移転登記をしなければならない。そうしないと第三者の権利の目的である 部分が登記簿上不明となってしまうからである。 【権利部(甲区)】①~⑤は登記の順 【権利部(乙区)】 ①2.所有権移転 共有者持分2分の1 甲 ②1.甲持分抵当権設定 抵当権者 A 2分の1 乙 ③3.甲持分全部移転 共有者持分2分の1 丙 ④4.乙持分全部移転 所有者持分2分の1 丙 ⑤5.丙持分一部(順位 4番で登記した持 共有者持分2分の1 丁 分)移転 (3)単有の不動産を数人に売却した場合も、一個の申請書により数人への所有権移転登 記をすることができる。 2.所有権移転 所有者 甲 3.所有権移転 共有者 持分3分の1 乙 3分の1 丙 3分の1 丁 (順位3番の持分上に抵当 権が存在することが解る) 抵当権の負担のない持分取 得
判例・先例チェック
―― 先例に準じて扱われる登記研究の見解もチェック ―― ―― 遺贈・贈与による所有権移転 ―― □□ 包括遺贈による所有権移転登記は、受遺 者を登記権利者、登記義務者として遺言執 行者又は相続人との共同申請による。 □□ 包括遺贈で公正証書により遺言執行者が 定められている場合において、被相続人の 登記簿上の住所と死亡時の住所とが異なっ ているときは、遺贈の登記の前提として、 被相続人の所有権登記名義人表示変更登記 が必要である。 □□ 遺言者が法定相続人の一人である甲に 「A不動産を甲に相続させる」旨の遺言を して死亡したが、既に甲が遺言者より先に 死亡していた場合、甲の直系卑属乙がいる 場合でも、遺言書中に「甲が先に死亡した 場合は甲に代わり乙に相続させる」旨の文 言がない限り、法定相続人全員に相続登記 をすべきである。 □□ 1.所有権保存 所有者 甲 2.所有権移転 昭和50年12月売買 所有者 乙 3.2番所有権抹消 昭和53年受付 錯誤 この場合において、昭和57年に甲死亡。 その後昭和50年7月付の「A不動産は丙 に遺贈する」旨の遺言書が発見された場合、 当該遺言書に基づき丙が遺言執行者と共に 遺贈を原因としてした所有権移転登記の申 請は受理される。 S33.4.28民甲779号。包括遺贈 の場合でも単独申請によることはできな い。 登研380号。前提として住所変更登 記が必要である。新不動産登記法下では 「何番所有権登記名義人住所変更」とす るのが一般化しているようである。 S62.6.30民三3411号。民99 4‐Ⅰの類推適用により法定相続人全員 に相続されると解するのが相当。 H4.11.25民三6568号。遺言は あとの売買で撤回されたとも考えられる が、それが錯誤で抹消されている以上、 形式的審査権しかない登記官はその登記 を不存在と扱うしかないからである。□□ 甲が妻乙及び長男丙に土地を2分の1ず つ相続させる旨の遺言をしたが、甲の死亡 前に乙が死亡したので、甲が2分の1を第 三者に売却した場合、右遺言に基づく相続 を原因とする丙への持分2分の1の移転登 記申請は受理される。 □□ 共同相続人中のそれぞれに、相続財産の 一部をそれぞれ贈与する旨の記載のある遺 言書に基づく所有権移転登記の登記原因は 「贈与する」の文言にかかわらず「遺贈」 である。 □□ 被相続人の子が遺言書作成時及び相続開 始時に生存している場合において、遺言書 に「財産を孫に相続させる」旨の記載があ るときの登記原因は「遺贈」とするのが相 当である。 ―― 売買による所有権移転 ―― □□ 区分建物(専有部分)と敷地利用権とは、 規約に別段の定めがない限り分離処分がで きないので、両者は一体として売買しなけ ればならない。そして敷地権たる旨の登記 をした敷地権(土地の所有権、地上権、賃 借権)についてはその移転の登記はするこ とができず、また区分建物のみの売買によ る所有権の移転登記もすることができな い。 しかし、地上権、賃借権が敷地権である 場合、分離処分が禁止されるのは地上権、 賃借権であって土地の所有権ではない。従 って土地の所有権移転登記はすることがで きる。 H5.6.3民三4308号。長男丙への 遺言は撤回されたとは解されないからで ある。 登研429号。遺言によるものであっ て、贈与契約によるものではないから贈 与とするのは適当でない。 登研480号。孫は代襲相続の場合以 外、相続しないから、相続とするのは適 当でない。 区分建物22‐Ⅰ、Ⅲ、不登73‐Ⅰ、 Ⅱ各本文。この理は、遺贈、贈与につい ても同様である。 地上権 所有権 → 移転可。 分離処分禁止は敷 地権たる地上権。
□□ 同一名義人が数回に分けて各別に持分取 得の登記をしている場合、その個々の持分 を移転し、又は個々の持分に抵当権を設定 することができる。この場合、何番の持分 であるかを明らかにする必要があり、たと えば「登記の目的 何某番持分一部(順位 何番で登記した持分)移転(又は抵当権設 定)」と記載する。 □□ 甲単有名義の不動産につき「甲は年月日 売買を原因として乙・丙・丁の三名に対し 各3分の1持分の所有権移転登記手続をせ よ」との確定判決を添付して、乙は自己の 持分についてのみ持分移転登記を申請する ことができる。 □□ 土地の売買契約において、地上の立木を 除く旨の特約がなされても、当該土地の所 有権移転登記の際、その特約を登記事項の 一部として登記することはできない。 □□ 敷地権付区分建物の所有権移転登記の登 記原因証明情報は、区分建物と敷地権とを 一体として売買(遺贈・贈与)を証するも のでなければならない。 S58.4.4民三2251号。 登研539号。乙が自己の持分につい てのみすみやかに対抗要件を取得するこ とは認めてよい。 S31.2.9民甲222号。対抗は明認 によるしかない(物権法参照)。 書式解説(一)。分離処分が禁止される からである。