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2. 年金改定率の推移 2005 年度以降の年金改定率の推移をみると 2015 年度を除き 改定率はゼロかマイナスである ( 図表 2) 2015 年度の年金改定率がプラスとなったのは 2014 年 4 月の消費税率 8% への引き上げにより年金改定率の基準となる2014 年の物価上昇率が大きかった

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2018 年度の年金額は据え置き

将来の年金額底上げに向けた見直しが必要

○ 2018年度の年金額は2017年度から据え置きと発表された。年金改定率の基準となる物価変動率は 0.5%の上昇となったものの、賃金変動率は0.4%のマイナスとなったことによる ○ これに伴い、公的年金の被保険者数の変動率や平均余命の伸び率に応じて年金額を抑制するマク ロ経済スライドについても発動が見送られた ○ 年金額抑制の遅れは将来世代の年金額の低下につながる。将来の年金額の底上げに向けて、マク ロ経済スライドの実施ルールの見直しや、保険料拠出期間の延長等の検討が必要である

1.2018 年度の年金額は 2017 年度から据え置き

厚生労働省は、2018年1月26日に2018年度の年金額は2017年度から据え置くと発表した。年金額は、 賃金や物価の変動率に応じて毎年度改定される1。2018年度は、年金額改定の基準となる2017年の物価 変動率が0.5%であったものの、名目手取り賃金変動率2が▲0.4%だったため、法律の規定により2017 年度から据え置きとなる3 したがって、2018年度の年金額(これから年金を受給する67歳以下の新規裁定者の年金額)は、① 国民年金のみに加入し老齢基礎年金を満額受給する場合は月額64,941円、②夫が会社員で40年厚生年 金に加入し妻が専業主婦の世帯は夫婦で同221,277円となる。なお、③厚生年金に40年加入していた男 性単身世帯は同156,336円、④同女性単身世帯は同127,081円となる(図表1)。 図表 1 2018 年度の新規裁定者(67 歳以下)の年金月額の例 2018 年度 (月額) ①国民年金(老齢基礎年金(満額):1 人分) 64,941 円 ②厚生年金(夫婦 2 人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) 221,277 円 ③厚生年金(男性単身世帯の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) 156,336 円 ④厚生年金(女性単身世帯の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) 127,081 円 (注)老齢基礎年金は保険料納付済期間が40年で満額となる。②は夫が平均的年収(平均標準報酬(賞与を含む年収の12分の1) が42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準。③は平 均標準報酬42.8万円、④は同29.1万円で40年間就業した場合。③と④はみずほ総合研究所が算出。 (資料)厚生労働省「平成30年度の年金額改定について」(2018年1月26日)等より、みずほ総合研究所作成 政策調査部上席主任研究員 堀江奈保子 03-3591-1308 naoko.horie@mizuho-ri.co.jp

政 策

2018 年 1 月 30 日

みずほインサイト

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2

2.年金改定率の推移

2005年度以降の年金改定率の推移をみると、2015年度を除き、改定率はゼロかマイナスである(図 表2)。2015年度の年金改定率がプラスとなったのは、2014年4月の消費税率8%への引き上げにより年 金改定率の基準となる2014年の物価上昇率が大きかったためである。 なお、2015年度は、現役世代(公的年金被保険者数)の変動率と平均余命の伸びを勘案した一定率 (0.3%)により年金改定率を抑制する「マクロ経済スライド」(図表3)が初めて実施されている。 マクロ経済スライドは、2004年の年金改革により導入された制度であり、賃金や物価の改定率を調整 して年金の給付水準を抑制する仕組みである。ただし、賃金や物価の伸びが小さい時には実施されな いため、これまでに実施されたのは2015年度1回のみである。 図表 2 年金改定率の推移 (注)2013年度は、4月の年金改定率は0%であったが、10月に特例水準の解消として1.0%の引き下げが実施された。 (資料)厚生労働省資料より、みずほ総合研究所作成 図表 3 マクロ経済スライドの仕組み スライド調整率=公的年金全体の被保険者数の変動率+平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%) (注)新規裁定者は賃金上昇率、既裁定者は物価上昇率に応じて年金額が改定される。賃金や物価の伸びが小さくスライド調整を 完全に適用すると名目額が下がる場合には名目額を下限とし、賃金や物価が下落した場合にはその下落分のみの引き下げで それ以上のスライド調整による引き下げは行われない。 (資料)厚生労働省資料より、みずほ総合研究所作成 ▲ 0.3 ▲ 0.4▲ 0.3 ▲ 0.7 0.9 ▲ 0.1 0.0 ▲ 0.8 ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 2005 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 (%) (年度) <例> 賃金(物価)上昇率が 1.5%で スライド調整率が 0.9%のとき 年金改定率は 0.6%(1.5-0.9)

(3)

3 公的年金は、現役世代の保険料負担が過大にならないよう2017年に保険料の上限が固定されている。 保険料と積立金を活用した年金財政の収入の範囲内で給付を行うためにマクロ経済スライドが導入さ れたものの、これまで賃金や物価の伸びが小さい年が続いたことからマクロ経済スライドが発動でき ない状況が続いており、年金の給付水準の抑制が進んでいない。

3.スライド調整期間の長期化と給付水準の低下

スライド調整が遅れ、年金給付水準の抑制が進まないと、何が起きるか。 まず、マクロ経済スライドによるスライド調整の終了見込時期が遅れる。マクロ経済スライドは、 概ね100年後に十分な積立金(給付費の約1年分)を保有できると判断される段階で調整が終了する。 2004年時点ではスライド調整は2023年度に終了見込みであったが、2009年の財政検証では2038年度(基 本ケース)4に、2014年の財政検証では2043~2044年度(ケースA~E)5とさらに遅れる見通しとなっ た。 スライド調整が遅れると、現在の受給者は給付水準が高くなる一方で、将来の受給者は給付水準が 低くなることから、世代間の年金格差の拡大につながる。この世代間格差の拡大のイメージを示した ものが図表4である。この場合の給付水準は、現役世代の収入に対する年金額の割合(以下、所得代替 率)でみている。 なお、2004年の年金改革では、保険料の上限の固定とともに、給付の下限も設定された。給付の下 限は、厚生年金世帯の給付水準(夫が20歳から60歳まで40年間平均的な所得の会社員、妻が専業主婦 の世帯の夫婦の年金額)について、年金を受給し始める時点で現役世代(男性)の平均手取り収入の 50%以上とされている。 図表 4 スライド調整期間の長期化と世代間格差拡大のイメージ (資料)厚生労働省資料より、みずほ総合研究所作成

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4 具体的に、2004年時点と2014年時点の給付水準(夫会社員、妻専業主婦世帯の所得代替率)の変化 をみると、2004年時点の所得代替率は59.3%であったが、2014年には62.7%へ上昇している。これは、 この間の現役世代の賃金水準が下がるなか、年金の給付額はそれほど下がらなかったことによる。所 得代替率が上昇したことから、スライド調整期間の見通しは2004年時点の約20年間から2014年時点に は約30年間へと長期化した(図表5)。 なお、この長期化の要因は、基礎年金のスライド調整期間が延びたことによる。基礎年金(夫婦2 人分)の所得代替率は2004年時点では33.7%であったが、2014年には36.8%へと上昇した。スライド 調整が終了する時点の基礎年金の所得代替率は、2004年時点の見通しでは28.4%であったが2014年時 点の見通しでは25.6~26.0%へと低下している(図表5)。厚生年金も含む所得代替率は50%以上を維 持することとされていることから、厚生年金の受給世帯については2014年時点の見通しにおいても将 来の所得代替率が50%以上となっているものの、基礎年金のみの受給世帯では将来の年金額がより低 下することになる。 また、スライド調整期間がさらに長期化することになり、厚生年金世帯の所得代替率が50%を下回 る見通しとなった場合には、給付水準調整の終了やその他の措置を講じるとともに、給付と負担の在 り方について検討を行い所要の措置を講じることとされている。その場合の選択肢としては、保険料 や税負担の更なる引き上げ等が考えられる。

4.年金額の改定ルールの見直しとその影響

2016年の年金改革により、公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため に2つの年金額の改定ルールの見直しが決定された。 図表 5 夫婦世帯の所得代替率の変化とスライド調整期間の長期化 (注)1.夫が会社員、妻が専業主婦の世帯の所得代替率。年金は、厚生年金(夫)と基礎年金(夫婦分)の合計。 2. < >内は基礎年金2人分の所得代替率。 3.2014年財政検証ケースA~Eは、経済再生ケース、労働市場への参加が進むケース。 (資料)厚生労働省資料より、みずほ総合研究所作成

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5 1つは、マクロ経済スライドの見直しである。マクロ経済スライドについては、スライド調整の実 施により年金額が前年度を下回らないという措置を維持しつつ、賃金や物価が大きく上昇した場合 にはその上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めた調整が行われる(2018年4月施行、図表6①)。 2018年度の年金額の改定で見送られたマクロ経済スライドによるスライド調整率は▲0.3%である が、2019年度の年金額の改定においてプラス改定となった場合には本来の改定率から未調整分(最 大0.3%分)がさらに引き下げられることになる。 もう1つの改定ルールの見直しは、賃金・物価スライドの見直しである。年金は世代間の仕送りの 仕組みであることから、現役世代の賃金が下落しており、賃金変動が物価変動を下回る場合には、 既裁定者についても賃金変動に合わせて年金額を改定するというものである(2021年4月施行、図表 6②)。 図表 6 年金額の改定ルールの見直し ① マクロ経済スライドの見直し 【2018年4月施行】 現在の高齢世代に配慮しつつ、できる限り早期に調整する観点から、景気後退期には名目下限措 置を維持し、未調整分は景気回復期に賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を調整 ② 賃金・物価スライドの見直し【2021年4月施行】 年金は世代間の仕送りであるため、支え手である現役世代の負担能力が低下しているときはそれ に応じた給付とする観点から、賃金変動が物価変動を下回る場合には、賃金変動に合わせて改定 (注)新規裁定者は賃金変動率に応じて、既裁定者は物価変動率に応じて年金額が改定される。 (資料)厚生労働省資料より、みずほ総合研究所作成 部分調整 賃金 (物価) 完全調整 未調整分の調整 年金額の改定率 賃金 (物価)

[景気後退期]

[景気回復期]

年金額の名目下限を維持

(現在の高齢世代に配慮)

キャリーオーバー分の調整

未調整分をキャリーオーバー

年金額改定なし

×

既裁定 新規裁定 既裁定 新規裁定

0>物価>賃金

物価>0>賃金

を年金額 改定に反映 物価 物価 賃金 賃金

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6 これらの改正により、これまでよりは年金額の抑制が早期に進むようになるものの、将来世代の年 金給付水準を確保するためにも早期にマクロ経済スライドの実施期間が終了するよう、もう一段踏み 込んだ改革を引き続き検討することが求められる。

5.将来の低年金対策に向けて

前述の通り、スライド調整の遅れが将来の基礎年金の給付水準の低下を招くことから、基礎年金の みの受給者の低年金化が懸念される。将来の低年金者の増加を抑制する対策としては、まずスライド 調整を毎年実施し、早急に調整を終了することが必要である。 また、より多くの現役世代を厚生年金の被保険者とし、将来、基礎年金に加えて厚生年金を受給で きる人を増やすことで年金額の底上げを図ることも不可欠だ。2016年度末の国民年金の受給者3,386 万人のうち、基礎年金のみの受給者(旧法の国民年金のみの受給者を含む)は950万人と、約3割を占 める。2016年度末の老齢基礎年金のみの受給者の平均年金月額は5.1万円、満額受給しても同6.4万円 である。一方、厚生年金の加入対象者は、①週労働時間が30時間以上の者と、②週労働時間が20時間 以上で一定の要件を満たす者6である。②については2016年10月の改正で適用されるようになったが7 2017年3月末の厚生年金被保険者3,822万人のうち、②の短時間労働者は29万人である8。短時間労働者 に対する厚生年金の適用範囲については、2019年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき必要な 措置を講ずることとされているが、厚生年金の適用範囲をさらに拡大させ、より多くの高齢者が厚生 年金も受給できるようにすることが低年金対策として有効である。 現在、国民年金の加入は60歳になるまでとなっているが、60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間 を満たしていない場合や、40年の保険料納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合 であって、厚生年金に加入していないときは、60歳以降でも任意加入することができる。任意加入が 認められているのは、①年金額を増やしたい場合は65歳まで、②受給資格期間を満たしていない場合 は70歳まで等とされている。これを見直し、保険料拠出期間を原則として65歳までに延長すれば基礎 年金の給付額の改善につながる。 なお、上記のように早期にスライド調整を進めた場合、厚生年金の適用を拡大した場合、国民年金の 保険料拠出期間を延長した場合の年金給付水準については、2014年の財政検証時にオプション試算と してその結果が示されており、いずれも年金給付水準の改善に結びつくことが明らかにされている。 次の財政検証は2019年に予定されているが、その結果を踏まえつつ、将来の年金給付額の確保に向 けた年金改革の検討を進めるべきであろう。

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7 1 年金額はその実質的な価値を維持するため、毎年度、賃金や物価の変動率に応じて改定される。これから年金を受給 し始める際の年金額(新規裁定年金額)は賃金上昇率に応じて、受給中の年金額(既裁定年金額)は物価上昇率に応 じて改定される。詳細は、堀江奈保子「2017 年度の年金改定率は▲0.1%~物価下落により 3 年ぶりのマイナス改定」 (『みずほインサイト』2017 年 2 月 1 日、みずほ総合研究所)を参照。 2 前年(2017 年)の物価変動率(0.5%)に 2 年度前(2016 年度)から 4 年度前(2014 年度)までの 3 年度平均の実 質賃金変動率(▲0.7%)と可処分所得割合変化率(▲0.2%)を乗じたもの。 3 賃金水準の変動がマイナスで物価水準の変動がプラスとなる場合には、現役世代の保険料負担能力が低くなっている ことから、新規裁定者、既裁定者ともにスライドが行われず、改定率はゼロとなる。 4 2009 年の財政検証では、出生率が高位、中位、低位の 3 通り、経済前提が高位、中位、低位の 3 通りの組み合わせ で全 9 通りの見通しが示されている。基本ケースは出生率中位、経済前提中位のもの。 5 2014 年の財政検証では、経済前提や労働力率の見通しが違う全 8 通りのケースの見通しが示された。ケース A~E は 経済再生ケースで、労働市場への参加が進むケース。 6 雇用期間が 1 年以上見込まれること、賃金月額が 8.8 万円以上であること、学生でないこと、被保険者数が常時 501 人以上の企業に勤めていることの全ての要件を満たす場合。ただし、被保険者数が常時 500 人以下の企業においても労 使合意に基づき申請する法人・個人の事務所や、地方公共団体に属する事業所は適用対象となる。 7 被保険者数が常時 500 人以下の企業の任意加入については、2017 年 4 月から実施。健康保険についても同様の適用 拡大が実施されている。 8 国家公務員、地方公務員、私立学校教職員は含まない。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基 づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。 また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。なお、当社は本情報を無償でのみ提供しております。当社からの無償の情報提供をお望みにな らない場合には、配信停止を希望する旨をお知らせ願います。

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