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(1)

3 章 静電場のマックスウェル方程式

3-1.静電場のマックスウェル方程式

電荷があると,それだけで空間の性質が変わると述べた.すなわち電荷があると,それ により電場が生じる.生じた電場の中にもう一個の電荷がやってくると,電場から電荷に 力が及ぼされる.しかし,このストーリーには,どうも作為的な香りがする.結局は電荷 が電場をつくり,その電場が電荷に力を及ぼすなら,電場をわざわざ考えずに電荷どうし の力を考えればそれで済むではないか.本当に電場という概念は必要なのだろうか.要す るに,電場は物理的実在なのであろうか. + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + -- -- -- -Q F(r)=QE(r) 図 3-1-1 思考実験をしてみよう.図 3-1-1 のように,空っぽの部屋が宇宙空間に浮かんでいると する.部屋の外に広がる宇宙空間には無数の電荷が分布していて,その空っぽの部屋の中 にも電場を及ぼしている.しかし,部屋の外の電荷分布はあまりにも複雑で,それを知る ことは事実上不可能である.この場合,2 章で学んだ公式 3 3

( ')

(

')

'

'

ρ

=

e V

k

r

d

E

r r

r

r r

(3-1-1) によって部屋の中の電場を求めることはできない.では,部屋の中の電場を求めることは 不可能なのであろうか.いや,そんなことはない.部屋の中に電荷を持ってきて,さまざ まな場所で電荷に働く力を求めれば,その値から

(2)

( )

( )

Q

=

F r

E r

(3-1-2) によって部屋の内部の電場が測定値として求まる.「そんなの,当たり前だ」と思うだろう. その通りである. だがもし,部屋の壁における電場の値だけから部屋全体の電場を決めることができると したら,どうだろうか.もちろん,これは当たり前のことではない.その部屋の内部空間 において,電場に関する物理法則が(3-1-1)式とは異なる形で成立していなければ,そんな 芸当はできない.数学的には部屋の壁すなわち境界の電場の値から内部の値をくまなく決 定する境界値問題であり,その主役が場の微分方程式なのである. 結論から述べると,静電場の満たす微分方程式は 0 y x

E

z

E

E

x

y

z

ρ

ε

+

+

=

(3-1-3) および

0,

0,

0

y y z

E

x z

E

x

E

E

E

E

y

z

z

x

x

y

=

=

=

(3-1-4) の4つである. 発散(ダイバージェンス:divergence)とよばれる演算記号

div

A

x

A

y

A

z

x

y

z

=

+

+

A

(3-1-5) および回転(ローテーション:rotation)と呼ばれる演算記号

rot

A

z

A

y

,

A

x

A

z

,

A

y

A

x

y

z

z

x

x

y

=

A

(3-1-6) を用いると,上の電場の方程式群は 0

div

ρ

ε

=

E

(3-1-7) および

rot

E

=

0

(3-1-8) という2つの式でコンパクトに表現できる.この 2 式を静電場のマックスウェル方程式と いう.ダイバージェンスやローテーションなどという記号を見て目を回している人や,頭 の中が発散してしまう人もいるかも知れないが,要するにこれは慣れの問題であって,時 間が経つとなぜ目を回したのかが思い出せないくらい当たり前の式になってしまうから不 思議である.なお,なぜダイバージェンスとかローテーションとか呼ぶのかは,4-7 節() および 6-5 節で説明する. 部屋の中の電場を決める問題に戻ろう.部屋の外には電荷がたくさんあるが,中や壁に は電荷が存在しないと仮定した.したがって,部屋の内部に対しては

=

div

E

0

(3-1-9)

(3)

および(3-1-8)式が成立していることになる. 壁の電場の値を境界条件として,この 2 式 を解くことにより電場を決定することができる.そもそも部屋の中では外の様子が分から ないとするならば,壁に加わっている電場が元来どのように作られたのかを語ること自体 ナンセンスである.部屋の中の人はこう思うだろう.(その人が存在することによる電場へ の影響はないとする.)「この部屋には電場というものが存在している.なぜならば,電荷 があると,それは力を受けて運動するから.」と結論するだろう.さらに,電荷に力を与え て運動させる,すなわちエネルギーを与えることから,逆に電場にはエネルギーがあるこ とも理解するだろう.そう,部屋の中は空っぽに見えても実は電場が満たしていて,その 電場はエネルギーを持っているのである.エネルギーを持つものは実在である.したがっ て,電場は実在する. さて,電荷と切り離して電場を考えることに意味があるということは上の思考実験で納 得できたとしても,天下りに与えられた静電場のマックスウェル方程式にはとても納得で きないという読者は多いであろう.そこで,原点にある 1 個の点電荷のつくる電場 3 e

Q

k

r

=

E

r

(3-1-10) が確かにマックスウェル方程式を満たすことを確かめよう.まず,(3-1-7)式であるが,電 荷密度

ρ

は点電荷 1 個を考えているので原点のみ値を持ち,それ以外では 0 である.そこ で,

r

0

の領域において(3-1-9)式が成立することになる.確認しよう.(3-1-10)式の発 散は 3 3 3 3

div

e

div

e

k Q

r

x

y

z

k Q

x r

y r

z r

=

=

+

+

r

E

(3-1-11) である.第1項の微分は 3 3 2 2 2 3/ 2 2 3 5

1

1

(

)

1

3

x

x

x

x r

r

x

x x

y

z

x

r

r

=

+

+

+

=

(3-1-12) と実行される.したがって,

x

y

z

x

y

z

x r

y r

z r

r

r

r

r

r

r

⎞ ⎛

⎞ ⎛

+

+

=

+

+

⎟ ⎜

⎟ ⎜

⎟ ⎜

∂ ⎝

⎠ ∂ ⎝

⎠ ∂ ⎝

⎠ ⎝

⎠ ⎝

⎠ ⎝

=

2 2 2 3 3 3 3 5 3 5 3 5

1

3

1

3

1

3

0

(3-1-13) すなわち y x

E

z

E

E

x

y

z

=

+

+

=

div

E

0

(3-1-14) が確かに成立している.

(4)

次に,

rot

E

=

0

を満たすことを確かめよう.

rotE

x

成分は y z e e

E

E

z

y

k Q

y

z

y r

z r

zy

yz

k Q

r

r

=

∂ ⎝

⎠ ∂ ⎝

=

+

=

3 3 5 5

3

3

0

(3-1-15) となる.他の成分も全く同様である.したがって,確かに

rot

E

=

0

は成立している. 一般の電場を与える(3-1-1)式に対しても,同様の直接計算によって,マックスウェル方 程式を満たすことが示せる.例えば 3 3

( ')

(

')

'

'

ρ

=

x e V

E

k

x

x d

x

x

r

r

r r

(3-1-16) は,領域

V

の外側,すなわち

ρ

( )

r

=

0

となるような

x

においては 3 2 2 2 3/ 2 2 3 3 5

(

')

( ')

'

[(

')

(

')

(

') ]

1

3(

')

( ')

'

'

'

ρ

ρ

=

+

+ −

=

r

r

r

r

r r

r r

x e V e V

E

x

x

k

d

x

x

x

x

y

y

z

z

x

x

k

d

(3-1-17) と計算される.

y z

,

に関しても同様なので,領域

V

の外側で

div

E

=

0

が成立していること が分かる.すなわち,さきほどの部屋の思考実験において,確かに部屋の中では(3-1-9)式 が成立していると言える.(3-1-1)式に対して

rot

E

=

0

が成立していることを示すことは, 読者の演習問題としよう. 上の確認においては,「

ρ

( )

r

=

0

となるような

r

において」という制限がついた.これを 取り除くことは,直接の微分計算では(3-1-10)式を見れば明らかなように

r

=

0

,すなわち, 微分不能の点を相手にすることになり,通常の意味では示すことができない.付録にポア ソン方程式の解法を説明したので,厳密な静電ポテンシャルおよび静電場の導出法に興味 のある読者はそちらを参照して欲しい.

3-2.静電ポテンシャルとポアソン方程式

1 章で,静電ポテンシャル

φ

を導入した.これを用いると,3 成分を持つ静電場を,ひと つの関数

φ

から

φ

= −∇

E

(3-2-1) の関係によって導くことができるのだった.実際,(3-1-1)式で与えられる一般的な静電場 の式は,静電ポテンシャルの一般形

(5)

3

( ')

'

'

ρ

φ

=

e V

k

r

d

r

r r

(3-2-2) を(3-2-1)式にあてはめれば導けるのであった. 一方,前節では静電場のマックスウェル方程式を登場させた.それは電場に対する 2 組(正 確には4つ)の偏微分方程式なわけだが,これらを静電ポテンシャルに対する式として書き 直すとどうなるのだろうか.それを見るのは簡単である.静電場のマックスウェル方程式 に静電ポテンシャルの定義

E

= −∇

φ

を代入してみればよい.まず,

div

E

=

ρ ε

/

0に代入 してみよう.

(

)

0

div

φ

ρ

ε

−∇ =

(3-2-3) であるが,微分は

( )

2 2 2 2 2 2

div

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

∂ ∂

∂ ∂

∂ ∂

∇ =

+

+

=

+

+

x

x

y

y

z

z

x

y

z

(3-2-4) と計算される.そこで,新たにラプラス演算子と呼ばれる微分演算子

2 2 2 2 2 2 2 2

+

+

= ∇

x

y

z

(3-2-5) によって導入すると,(3-2-3)式は 2 0

ρ

φ

ε

−∇ =

(3-2-6) と書き直される.これを,ポアソン方程式と呼ぶ.なお,静電ポテンシャルの導入にはも う一つのご利益がある.任意のスカラー関数

f

に対して恒等的に

( )

rot

∇ =

f

0

(3-2-7) が成り立つので,(簡単に証明できるので,各自の演習問題とする) 静電場を与える第2の マックスウェル方程式

rot

E

=

0

は,静電ポテンシャルの定義から恒等的に満たされている ことになる. 「空っぽの部屋の思考実験」に当てはめるならば,部屋の壁における電位(すなわち静 電ポテンシャル)を境界条件としてポアソン方程式を解くことにより,部屋内の電位を求 めることができることになる.部屋の中は空っぽなのであるから,(3-2-6)式で

ρ

=

0

とおい た式 2

0

φ

∇ =

(3-2-8)

(6)

を解くことになる.これを,ラプラス方程式と呼ぶ. ラプラス方程式(3-2-8)を解くことにより,空っぽの部屋の静電ポテンシャル場は決定さ れる.静電ポテンシャルが決まれば,電場は

E

= −∇

φ

によって求めることができる.以上 の筋書きで部屋の中の電場がくまなく決定されることになる. つまり,部屋の外側でど のような電荷分布によって電場がつくられているかを知らなくても,境界すなわち部屋の 壁における静電ポテンシャルさえ与えられれば電場を求めることができるのである.

3-3.簡単な例:平行平板コンデンサ

Excel を用いた数値計算に移る前に,最も簡単な例を用いて今まで学んだ場の方程式の考 え方を具体的にみておこう.

L

V(L)=E

0

L

x

V(x)=E

0

x

E=-E

0

0

V(0)=0

図 3-3-1 図 3-3-1 のような,

x

方向に垂直な 2 枚の壁で仕切られた空間を考える.これを,「空っ ぽの部屋の思考実験」における空っぽ部屋の 1 次元版と考えてもよい.2つの壁は

yz

方向 に無限に広がっているものとする.そんな部屋は勿論存在しないが,高校物理などにでて くる「平行平板コンデンサー」の理想化されたモデルと実は同一である.壁(もしくは極 板)の位置を

x

= ,

0

L

とし,壁の内側(

0

< <

x

L

)は空っぽの空間(すなわち真空)と仮定 する.このとき,極板間には何も無いから

ρ

=

0

なので,ラプラス方程式(3-2-8)が成立し ている.さらに,壁における静電ポテンシャルの値は一定で,

x L

=

では

φ

( )

L

=

V

0

x

=

0

では

φ

(0)

=

0

であるとする.このとき壁の内側の空間は,

yz

方向には一様かつ無限に真空 が広がっているだけなので,静電ポテンシャルは

y z

,

に依存するはずがない.すなわち,

φ

x

だけの関数

φ

( )

x

である1.この場合,ラプラス方程式は単に 1 壁における静電ポテンシャルの値がこの例のように一定でなく

y z

,

に関して異なる値を与え たならば,もちろん壁内部の静電ポテンシャルも

y z

,

の関数となる.この場合は,3 次元のラプ

(7)

2 2

0

d

dx

φ

=

(3-3-1) となる.これは直ちに解けて,

( )

x

ax b

φ

=

+

(3-3-2) となる.(

a b

,

は積分定数.) 境界条件

φ

( )

L

=

V

0および

φ

(0)

=

0

を見たす解は 0

( )

x

V x

L

φ

=

(3-3-3) である.電場は,

E

= −∇

φ

に(3-3-3)式を代入して 0

,

0,

0

x x z

V

E

E

E

x

L

y

z

φ

φ

φ

= −

= −

= −

=

= −

=

(3-3-4) と求まる.電場の大きさは一定で,

x

軸に平行かつ下向きである.これは,高校で学習した 平行平板コンデンサの電場と一致する.なお,電場(3-3-4)がマックスウェル方程式

=

div

E

0

および

rot

E

=

0

を満たすことは暗算で確認できる.

3-4.ラプラス方程式・ポアソン方程式の差分化:場の方程式の意味

与えられた境界条件の下でラプラス方程式を解き,静電ポテンシャルや電場を決定する ことは,前節で述べたような単純な系を除き,手計算で行うことは不可能である.一般的 には,コンピュータを使って数値的に解くしかない.しかしながら,ラプラス方程式のよ うな偏微分方程式をコンピュータに解かせることは,数値計算法の中心課題であるくらい, 複雑な問題なのである.しかし,ありがたいことに Excel を用いると,そのようなフクザ ツな問題を全く意識せずに,ラプラス方程式の数値解を求めることができるのである. まず,偏微分方程式を数値的に解くということはどういうことなのかを見ておこう.2 次 元のポアソン方程式 2 2 2 2 0

( , )

( , )

( , )

φ

φ

ρ

ε

+

= −

x y

x y

x y

x

y

(3-4-1) を考える.これを数値的に解くためには,微分をコンピュータ向けに近似する必要がある. 例として,

x

に関する

φ

( , )

x y

の偏微分

( , )

(

, )

( , )

lim

φ

φ

φ

∆ →∞

=

+ ∆

x

x y

x

x y

x y

x

x

(3-4-2) を考えよう.この例のように微分には

∆ →

x

0

といった「限りなく小さくしていく」とい う数学的操作が伴う.しかし,コンピュータは飛び飛びの値しか扱えないので,

∆x

を無限 小ではなく有限値で近似的に扱わねばならない.すなわち, ラス方程式を解かねばならない.

(8)

( , )

x y

(

x

x y

, )

( , )

x y

x

x

φ

φ

φ

+ ∆

(3-4-3) と近似するわけである.要するに,微分を平均変化率で近似するということである.

x

x+

x

x-

x

φ

(x+

x,y)-

φ

(x,y)

φ

(x,y)-

φ

(x-

x,y)

図 3-4-1 ラプラス方程式やポアソン方程式は 2 階の偏微分方程式なので, 2 2

(

, )

( , )

( , )

lim

x x x

x

x y

x y

x y

x

x

φ

φ

φ

∆ →∞

+ ∆

− ∂

=

(3-4-4) などの2階微分を近似する必要がある.ここで,簡略のため

φ

( , )/

x y

∂ ≡ ∂

x

x

φ

( , )

x y

とお いた. (3-4-3)式を繰り返し使ってそのまま差分化すると,2 ステップずれた微分が現れ差分化 による近似が悪くなる.そこで,微分係数が

∆x

の 0 への近づけ方に依らないことを利用し て(3-4-4)式の代わりに 2 2

( , )

(

, )

( , )

lim

x x x

x y

x

x y

x y

x

x

φ

φ

φ

∆ →∞

− ∂

− ∆

=

(3-4-5) と後ろから近づけた極限で微分を表し,これを 2 2

( , )

(

, )

( , )

x y

x

x y

x

x

x y

x

x

φ

φ

φ

− ∂

− ∆

(3-4-6) と近似する.(3-4-3)式を用いて右辺を計算すると,

(9)

[

]

2

( , )

(

, )

1

(

, )

( , )

( , )

(

, )

1

(

, )

(

, ) 2 ( , )

(

)

x

x y

x

x

x y

x

x

x y

x y

x y

x

x y

x

x

x

x

x y

x

x y

x y

x

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

− ∂

− ∆

+ ∆

⎤ ⎡

− ∆

=

⎥ ⎢

⎦ ⎣

=

+ ∆

+

− ∆

(3-4-7) となることがわかる.すなわち,2 階の偏微分は

[

]

2 2 2

( , )

1

(

, )

(

, ) 2 ( , )

(

)

φ

φ

φ

φ

+ ∆

+

− ∆

x y

x

x y

x

x y

x y

x

x

(3-4-8) と表される.同様にして,

[

]

2 2 2

( , )

1

( ,

)

( ,

) 2 ( , )

(

)

φ

φ

φ

φ

+ ∆ +

− ∆ −

x y

x y

y

x y

y

x y

y

y

(3-4-9) となる. 差分化された微分(3-4-8)式と(3-4-9)式をポアソン方程式に代入しよう.その際,式の 意味を考えやすくするために,

∆ = ∆ =

x

y

h

とおいてみる.すると,

[

]

[

]

2 2 0

1

1

(

, )

(

, ) 2 ( , )

( ,

)

( ,

) 2 ( , )

( , )

φ

φ

φ

φ

φ

φ

ρ

ε

+

+

+

+ +

− −

= −

x h y

x h y

x y

x y h

x y h

x y

h

h

x y

(3-4-10) を得る.この式を,

φ

( , )

x y

について解くと 2 0

(

, )

(

, )

( ,

)

( ,

)

( , )

( , )

4

4

φ

φ

φ

φ

ρ

φ

ε

+

+

+

+ +

=

x h y

x h y

x y h

x y h

+

h

x y

x y

(3-4-11) となる.特に,ラプラス方程式 2 2 2 2

( , )

( , )

0

φ

φ

+

=

x y

x y

x

y

(3-4-12) に対しては,

(

, )

(

, )

( ,

)

( ,

)

( , )

4

φ

φ

φ

φ

φ

x y

=

x h y

+

+

x h y

+

x y h

+ +

x y h

(3-4-13) となることが分かる. (3-4-13)式から,ラプラス方程式の意味がはっきりと理解できる.(3-4-13)式の右辺は, 空間(今の場合は 2 次元平面)上の 1 点

( , )

x y

の近傍である四方の点

(

x

+

h y

, )

,

(

x

h y

, )

+

x y h

( ,

)

,

( ,

x y h

)

における

φ

の平均値を表している.すなわち,ラプラス方程式は,あ る点における関数値が常にその近傍の平均値となるような関数を与える方程式なのである. 次に,差分化されたポアソン方程式(3-4-11)を見てみよう.右辺第1項は,ラプラス方 程式と同じく周囲のポテンシャルの平均値を与えている.それに電荷密度に比例した第2 項が付け加わっている.これは,電荷が静電ポテンシャルすなわち電場を生み出している

(10)

ことを表しているのである. 要するにポアソン方程式は,「関数

φ

( , )

x y

の値はその周囲の値の平均値とその場所の電荷 密度の値で決まる」ということを数学的に表現したものでである.

φ

( , )

x y

は空間的に少し ずつオーバーラップしながら電荷密度の値を加味して微視的なネットワークをつくり,空 間をくまなく覆うように決まっていく.なお,ここで述べたことは 3 次元のポアソン方程 式・ラプラス方程式に対してもまったくそのまま成り立つ. 演習問題 3 次元ラプラス方程式 2 2 2 2 2 2

( , , )

( , , )

( , , )

0

x y z

x y z

x y z

x

y

z

φ

φ

φ

+

+

=

(3-4-14) を 2 次元のラプラス方程式(3-4-12)と同様に差分化すると

(

, , )

(

, , )

( ,

, )

( ,

, )

( , ,

)

( , ,

)

( , , )

6

x h y z

x h y z

x y h z

x y h z

x y z h

x y z h

x y z

φ

φ

φ

φ

φ

φ

φ

=

+

+

+

+

+

+

+ +

となることを示せ.

3-5.Excel を用いて静電ポテンシャルを求めよう

準備が整ったので,Excel を用いてラプラス方程式あるいはポアソン方程式を解き,静電ポ テンシャルを求める方法を学ぼう.先ほど述べたように,偏微分方程式をコンピュータに よって解くことは数値計算法の主な課題のひとつであり,そのようなプログラムを C や Fortran などでプログラミングできるようになるには,かなり高度な訓練が必要である.と ころが Excel を用いると,「循環参照」に対する「反復計算」という表計算独特の機能のお かげで,大した苦労も無く解が求まってしまうのである.早速,やってみよう. 2 次元平面における変域を 1 2

,

1 2

x

≤ ≤

x

x

y

≤ ≤

y

y

(3-5-1) とする.これをそれぞれ

M N

,

個の長さ

h

の微小区間に分割したとする.すなわち, 2 1

,

2 1

x

x

=

Nh

y

y

=

Mh

(3-5-2) とする.離散化された座標は,それぞれ 1

(

0,1,2, , ),

1

(

0,1,2, ,

)

x

=

x

+

ih i

=

"

N

y

=

y

+

jh

j

=

"

M

(3-5-3) と表すことができるので,考えている平面上の変域は,

( , )

i j

を指定することで定まること になる.したがって,静電ポテンシャルは

φ

( , )

i j

で表すことができる.これに応じて,差分

(11)

化されたラプラス方程式(3-4-13)は

(

1, )

(

1, )

( ,

1)

( ,

1)

( , )

4

φ

φ

φ

φ

φ

i j

=

i

+

j

+

i

j

+

i j

+ +

i j

(3-5-4) ポアソン方程式は 2 0

(

1, )

(

1, )

( ,

1)

( ,

1)

( , )

( , )

4

4

φ

φ

φ

φ

ρ

φ

ε

+

+

+

+ +

=

i

j

i

j

i j

i j

+

h

i j

i j

(3-5-5) と表される. 図 3-5-1 準備ができたので,具体的な問題を考えよう.まず,考えたい境界条件をシートに与える. ここでは,境界値は全て0 とおいた例を図 3-5-1 に示す.中心に 1 という値をおいた.これ は,ポアソン方程式の電荷項 2 0

( , ) / 4

h

ρ

i j

ε

の値を与えたと考えても良いし,境界条件とし て与えた電位差と考えても良い.なお,いつものように絶対値にはこだわらないことにす る.(必要ならば,具体的な数値を入れて計算すればよい.何ら難しいことはない.) 次に,表の空白に数式を入れる.まず,図のように,左上のB2へ数式 fx=(A2+B1+C2+B3)/4 を入力しよう.ミスを防ぐためにも,A2,B1,C2,B3 をクリックすることによって入力す ることをお勧めする.

(12)

図3-5-2 入力したら,オートフィルによって一息にB列を埋める.引き続きE列までオートフィル で埋めよう.すると,数値がくるくると勝手につじつまの合う値を探して変化していくの がわかる.さらに,F11 を避けながらオートフィルを続け,全体を覆うと,要求された計 算精度に値が落ち着いたところで,表の値が確定する(図 3-5-3).これで,静電ポテンシャ ルが求まった.プログラミングで苦しんだ目から見ると,このようにあっさりラプラス方 程式が解けてしまうことは,奇跡のようにすら思えるだろう. 図 3-5-3 なお,もしも自動的に反復計算が行われなかったら,「ツール」の「オプション」から「計

(13)

算方法」ダイアログを開き,反復計算をオンにする.なお,「反復計算」における「変化の 最大値」の数値によって,計算精度をコントロールすることができる.(図 3-5-4)

図 3-5-4

求めた値でグラフを描くと,図 3-5-5,あるいは図 3-5-6 が得られる.

(14)

図 3-5-6 演習問題 平行な電極間に電位差を与え,その途中に長方形の導体を挿入した場合の等電位線(静電ポ テンシャルの等高線)を求めよ.答えは図 3-5-7 のようになる. (ヒント:導体は,全体が等電位となる.したがって,導体内部の静電ポテンシャルは全 て等しくなるように数式を組む.また,その値は周囲の静電ポテンシャルの平均値とすれ ばよい.) 図 3-5-7

3-6.Excel を用いて静電場を求めよう

(15)

静電ポテンシャルが求まれば,

( , )

( , )

( , )

= −

φ

,

( , )

= −

φ

x y

x y

x y

E x y

E x y

x

y

(3-6-1) によって電場も求まる.Excel を用いて数値的に電場を求めるには,

(

, )

( , )

( ,

)

( , )

( , )

≈ −

φ

+ ∆

φ

,

( , )

≈ −

φ

+ ∆ −

φ

x y

x

x y

x y

x y

y

x y

E x y

E x y

x

y

(3-6-2) と微分を差分化する.

( , )

i j

を用いて表すと,

(

1, )

( , )

( ,

1)

( , )

( , )

= −

φ

+

φ

,

( , )

= −

φ

+ −

φ

x y

i

j

i j

i j

i j

E i j

E i j

h

h

(3-6-3) となる.この関係式により

E i j

x

( , )

E i j

y

( , )

を求めることは簡単である.図 3-6-1 の A25 には,静電ポテンシャルの数値解(図 3-5-3)の B2-A2 を代入してある.これが,差分によ る

x

方向の偏微分に他ならない.あとはオートフィルを用いると,次々に差の値が計算され て行く.ただし,正確には A25 の値は B2 と A2 座標の中点における差分値を表すことにな る.したがって,より正確には両隣の値を用いて差分計算をする必要がある.これは第 5 章の磁場を求める際に行うことにして,今は単に差をとる最もシンプルな方法でやってみ よう.

y

方向の偏微分に対する数表も同様に作成しよう(図 3-6-2).これで,電場の数表が出 来上がった. 図3-6-1

(16)

図3-6-2 電場は求まったなら,後は2-8 節で述べたように,マクロを組んで矢印による電場表現を 行う.ここでは,以下のプログラムにより電場を描くことにする. Sub drawfield() n = 19 m = 9 Call DrawRectangle(700, 100, 33 * n, 33 * m) For i = 1 To m For j = 1 To n dy = -Cells(24 + j, i) * 40 dx = Cells(44 + j, i) * 40

Call drawline(700 + 30 * j, 100 + 30 * i, 700 + 30 * j + 5 * dx, 100 + 30 * i + 5 * dy) Next j

Next i End Sub

Sub drawline(x1, y1, x2, y2)

ActiveSheet.Shapes.AddLine(x1, y1, x2, y2).Select

Selection.ShapeRange.Line.EndArrowheadStyle = msoArrowheadStealth

Selection.ShapeRange.Line.EndArrowheadLength = msoArrowheadLengthMedium

(17)

Selection.ShapeRange.Line.EndArrowheadWidth = msoArrowheadWidthMedium Selection.ShapeRange.Line.ForeColor.SchemeColor = 2

End Sub

Sub DrawRectangle(x1, y1, x2, y2)

ActiveSheet.Shapes.AddShape(msoShapeRectangle, x1, y1, x2, y2).Select Selection.ShapeRange.Fill.ForeColor.SchemeColor = 9 End Sub なお,表と重ならないように描画するためには,スペースを調整する必要がある.矢印 の長さも計算すれば求まるが,試行錯誤で適当な長さにすれば十分であろう.マクロで描 いた電場の様子を図3-6-3 に示す.図 3-5-6 に示した静電ポテンシャルの等高線と比較する と,確かにその勾配を表している様子を目で確かめることができる. 図3-6-3

(18)

参照

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