日本国債市場と国債管理政策
2012年10月12日(金)
財務省大臣官房審議官(理財局担当)
美並 義人
1 ○ 1990年代の公共事業費の増加、近年の社会保障費の増加による歳出増、景気悪化や減税による税収減 により、国の債務水準は増加傾向 ○ 膨大な国債発行残高を抱えた今、国債の安定消化が課題
JGB発行残高の推移
187.4 197.2 247.0 243.2 224.9 238.3 246.3 248.3 246.7 107.8 134.5 158.4 176.1 199.1 230.6 257.6 279.9 288.5 304.5 321.0 355.6 390.0 410.9 449.5 75.6 91.8 121.6 139.4 138.9 139.8 131.1 122.2 118.2 110.9 113.5 295.2 331.7 367.6 436.2 496.7 548.8 620.6 666.3 670.6 681.2 754.5 780.8 236.9 241.4 222.0 216.3 209.1 226.4 10.7 12.7 43.8 716.2 677.0 822.3 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 (年度) 財投債残高 復興債残高 特例国債残高 建設国債残高 457.0 499.0 526.9 531.7 541.5 545.9 594.0 636.3 普通国債 計708.9 669.9 (兆円) 392.4 421.1 (注1)計数ごとに四捨五入したため、合計等において一致しない場合がある。 (注2)計数は額面ベース。22年度までは実績、23年度は実績見込み、24年度は当初見込み。 (注3)ここでの特例国債残高には、承継債務借換国債等を含む。2 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 2003 年4月 2003年 7月 200 3年 10月 2004 年1月 2004年 4月 200 4年7月 2004 年10 月 2005 年1月 2005 年4月 2005年 7月 2005 年10 月 2006年 1月 2006 年4月 2006 年7月 2006 年10月 2007 年1月 2007 年4月 2007 年7月 200 7年 10月 2008 年1月 2008 年4月 2008年 7月 2008 年10 月 2009年 1月 2009 年4月 2009 年7月 2009 年10月 2010 年1月 2010 年4月 2010 年7月 201 0年 10月 2011 年1月 2011 年4月 2011 年7月 2011 年10 月 2012 年1月 2012 年4月 2012 年7月 10年債(米) 10年債(ドイツ) 10年債(日本) 10年債(英) (%) 2006.5.10 2.005% 2006年の 最高利回り 2007.6.13 2007.7.10 1.960% 2008.6.16 1.880% 2003.6.11 ザラ場 0.430% 史上最低利回り 2008.12.30 1.165% 2010.10.6 0.840% 2010.5.29. 1.400% 2006.8.25(1.705%) 基準年次改定による インフレ率の低下 (CPIショック) 2012.7.23 2012.7.25 0.720% 1.670% 1.520% 0.815% 1.680% 2012年 9月7日現在 ○ 欧州問題や世界景気への行先き不透明感を背景にJGBに対する投資家の需要が集まり、JGBの長期金利は 2003年以来9年ぶりに0.7%台になるなど低位で安定的に推移
各国の長期金利の動向
3 一般政府 (除く公的年金) 213,265 2.3% 財政融資資金 19,693 0.2% その他 249,058 2.6% 家計 270,035 2.9% 銀行等 4,102,167 43.6% 生損保等 1,794,548 19.1% 日本銀行 962,467 10.2% 公的年金 687,320 7.3% 年金基金 289,253 3.1% 海外 816,133 8.7% ○ JGBの9割以上は潤沢な個人金融資産に支えられ、国内投資家が保有 合計 940兆3,939億円 (平成24年6月末(速報)) (出所)日本銀行「資金循環統計」 (注1)「国債」は財投債、国庫短期証券(T-Bill)を含む。 (注2)「銀行等」にはゆうちょ銀行、 「証券投資信託」及び「証券会社」を含む。 (注3)「生損保等」はかんぽ生命を含む。
国債の所有者別内訳
4 ○ 売買を積極的に行う海外投資家は、現物売買では2割、先物売買においては4割のシェアを誇るなど、海外の プレゼンスは相当に大きい
海外投資家のプレゼンスの高まり
0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0% 50.0% 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 ①国債流通市場における海外投資家売買シェア(先物) ②国債流通市場における海外投資家売買シェア(現物) ③海外投資家の国債保有割合(ストック) (注1) カレンダーベース (注2) 国債は短期国債を含む。②の数字は債券ディーラーを除いた係数 (出所) 日本銀行、日本証券業協会、東京証券取引所5 ○ アジアを中心とした海外投資家による日本債券の保有が増加 ○ 特に2010年には、中国が最大の日本債券保有国へ躍進
海外投資家の地域別動向
7.5 9.0 10.4 9.9 11.9 20.2 28.1 4.6 6.5 7.7 6.9 8.7 9.2 11.6 27.7 33.7 46.3 38.6 30.8 27.0 36.0 7.5 9.1 10.6 10.1 10.6 9.4 10.9 49.1 60.4 79.5 71.7 65.5 71.9 91.6 5.1 6.1 3.6 6.3 4.5 1.8 2.3 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 (兆円) その他 中東 欧州 北米 アジア (兆円) アジアが増加基調 (注)国債以外の債券も含めた債券全体 (出所)日本銀行「国際収支統計」 中国が英国を抜き、最大の債券保有国に 中国 18.0 シンガポール 4.8 タイ 2.0 香港 1.4 フィリピン 0.8 韓国 0.6 その他 0.56 欧州 <英国> ロンドン(11回)、 エディンバラ(1回)、 グラスゴー(1回) <オランダ> アムステルダム(4回)、 ハーグ(3回)、 ザイスト(1回)、 ロッテルダム(1回) <フランス> パリ(6回) <ドイツ> フランクフルト(6回) <ルクセンブルク> ルクセンブルク(2回) <イタリア> ミラノ(1回) <スイス> チューリッヒ(1回) 北欧・ロシア <デンマーク> コペンハーゲン(3回) <スウェーデン> ストックホルム(3回) <ノルウェー> オスロ(2回) <ロシア> モスクワ(1回) 中東 <アラブ首長国連邦> アブダビ(6回)、 ドバイ(3回) <サウジアラビア> リヤド(6回) <クウェート> クウェート(4回) <カタール> ドーハ(3回) アジア・大洋州 <シンガポール> シンガポール(8回) <香港> 香港(7回) <オーストラリア> シドニー(4回)、 ブリスベン(1回)、 メルボルン(1回) <タイ> バンコク(2回) <マレーシア> クアラルンプール(1回) <フィリピン> マニラ(1回) 北米 <米国> ニューヨーク(7回)、 ロサンゼルス(5回)、 ボストン(5回)、 サンフランシスコ(3回)、 グリニッジ(3回)、 シカゴ(2回)、 ミネアポリス(1回)、 ワシントンD.C.(1回) <カナダ> トロント(3回)、 オタワ( 1回) 2012年10月12日時点 南米 <ブラジル> ブラジリア(1回)、 リオデジャネイロ(1回) <チリ> サンティアゴ(1回) ○ 海外IRを通じ、市場ニーズを把握すると共に、JGBや日本経済に関する正確な情報を既存の海外投資家に 提供することでJGBに対する信任を維持・向上
世界各地にて海外IRを実施
7 ○ 市場との対話を一層強化することで市場のニーズを把握し、国債の安定的な消化や市場の流動性維持・向上 のための施策を的確に実施
各種懇談会等を通じた市場との対話
民間有識者から国の 債務管理について意 見・助言を得る。 生損保・年金基金・銀 行・海外投資家などの機 関投資家等と意見交換。 ◇国の債務管理の 在り方に関する 懇談会 ◇国債投資家懇談会 日本経済、国債管 理政策の現状や今 後の展望等につい て海外投資家に直 接説明。 ◇海外IR 個人の国債保有の促 進に積極的な金融機関 と意見交換。 ◇国債トップリテーラー会議 保有の促進国債発行
当局
大手銀行・証券会社 「プライマリー・ディー ラー」と意見交換。 ◇国債市場 特別参加者会合 市場との対話8 (兆円) 1997以前 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 (年度) 2007.11~ 40年債 1.6 5.4 1999.9~ 30年債 5.6 40.9 20年債 14.4 135.9 2000.6~ 15年変動利付債 - 36.5 10年債 27.6 294.7 2004.3~ 10年物価連動債 - 3.8 2000.2~ 5年債 30.0 138.8 2年債 32.4 68.2 1999.4~ TB1年物 30.0 TB6ヶ月物 0.9 2006.4~ 流動性供給入札 7.2 (注) 2003.3~ 個人向け10年変動利付債 13.9 2006.1~ 個人向け5年固定利付債 6.9 2010.7~ 個人向け3年固定利付債 1.5 新窓販10年 新窓販5年 新窓販2年 2.5 42.4 平成24年度 発行予定額 発行残高 (2012年6月 末時点) (注) 流動性供給入札と新窓版による残高は、入札発 行分の残高に含まれている。 (注) 0.5 2007.10~ 40 30 20 15 10 5 2 ・平成24年1月より個人向け 国債は「個人向け復興国 債」として発行。 ・さらに、平成24年4月より 既存の変動10年をベースに 「復興応援国債」を発行。 ○ 安定消化を進めるため、市場のニーズを把握しながら投資家層の裾野を広げるべく商品構成の多様化を実施 ○ 生保、年金基金のニーズに応じて2007年度から40年債を発行 ○ 個人投資家の保有増加に向けて、個人向け国債も発行
市場のニーズに応じた商品構成の多様化
9 7年0ヶ月 7年9ヶ月 7年9ヶ月 7年7ヶ月 7年4ヶ月 7年3ヶ月 7年0ヶ月 6年8ヶ月 6年3ヶ月 5年9ヶ月 24年度 23年度 22年度 21年度 20年度 19年度 18年度 17年度 16年度 15年度 ○ 中長期的な借換リスクの軽減に配慮して、10年債、20年債を増発した結果、平均償還年限が長期化する傾向 ○ 投資家の多様化と同様、平均償還年限の長期化もJGBの安定消化の一因を担う
平均償還年限の長期化
カレンダーベース市中発行額の平均償還年限
(注) 23年度までは実績、24年度は当初計画10
2010年度
-6.4%
2015年度
-3.2%
2020年度
0%
2021年度以降において、国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させる国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)
フロー ストック 半減財政健全化目標の設定
○ 財政再建に向けて、年度毎の収支(フロー)および債務残高(ストック)に対して具体的な目標を設定し、財政の 先行きについての市場からの信任確保を企図 (出所)財政運営戦略(平成22年6月22日閣議決定)11 歳出増・歳入減を伴う施策の新たな導入・拡充を行う際は、恒久的な歳出削減・歳入確保措置により安定的な 財源を確保 収支目標達成のため、原則として毎年度着実に財政状況を改善 構造的な増加要因である経費は安定的な財源を確保 特別会計を含め全分野の無駄の排除を徹底し思い切った予算の組み替え 財政健全化は国・地方が相協力しつつ行う。国は、地方の自律性を損ない、地方に負担を転嫁するような施策は 行わない
財政運営戦略の基本ルール
○ 新たな政策を行う際には歳入を確保するか歳出を削減することを定めたペイアズユーゴー原則など、5つの 基本ルールを策定することで規律ある財政運営を確保 1.財源確保ルール(ペイアズユーゴー原則) 2.財政赤字縮減ルール 3.構造的な財政支出に対する財源確保 4.歳出見直しの基本原則 5.地方財政の安定的な運営 (出所)財政運営戦略(平成22年6月22日閣議決定)12
中期財政フレーム
○ 複数年度を視野に入れた予算編成を行う仕組みを構築することで、財政健全化を推進 ・2013~15年度 プライマリーバランス対象経費について、71兆円を実質的に上回らない ・社会保障と税の一体改革関連法案及び三党合意に基づき税制の抜本的な改革を進めて いく ・2014年度以降についても抑制に全力を挙げる ・2013年度の新規公債発行額について、2012年度当初予算の水準(約44兆円)を上回ら ないよう全力を挙げる (年金特例公債など、別途、法律により具体的な償還財源が担保された公債を除く) 歳出面での取組 公債発行額の抑制 歳入面での取組 (出所)中期財政フレーム(平成25年度~平成27年度)(平成24年8月31日閣議決定)13 ○ 2015年10月に消費税を10%に引き上げる消費税増税法案を2012年8月に成立させるなど、財政再建に向け た改革を着実に推進
税と社会保障の一体改革の推進
消費税をはじめとする 税制抜本改革で 安定財源確保社会保障の充実・安定化
待機児童問題、産科・小児科・救急医療や 在宅医療の充実、介護問題などへの対応 + 高齢化により毎年急増する 現行の社会保障の安定化(安定財源確保)同時達成
財政健全化目標の達成
諸外国で最悪の財政状況から脱出 「2015年に赤字半減、2020年に黒字化」 日本発のマーケット危機を回避 ⇒消費税率を2015年10月に国・地方あわせて 10%へと段階的に引上げ14
プライマリーバランス改善を通じた財政健全化への取組み
○ 国債の安定消化のためには、財政再建に対する取組みを継続し市場からの信任を失わないことが必要 ○ 消費税率引き上げ等によりプライマリーバランスが改善し、2015年度には2010年度比半減という財政健全化 目標を達成できる見通し 成長戦略シナリオ: 2011年度~2020年度の平均:名目3%程度、実質2%程度 慎重シナリオ : 2011年度~2020年度の平均:名目1%台半ば、実質1%強 (%) (%) 成長戦略シナリオ 慎重シナリオ 国・地方の基礎的財政収支目標 (注) 復旧・復興対策の経費及び財源の金額を除いたベース (出所) 内閣府「経済財政の中長期試算」 (平成24年8月31日) 国・地方の基礎的財政収支(対GDP比)15
公債等残高ベースで見た財政健全化への取組み
○ 国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させるためには、消費税増税のみならず更なる改革を 講じる必要 (%) (%) (FY) 成長戦略シナリオ 慎重シナリオ 成長戦略シナリオ: 2011年度~2020年度の平均:名目3%程度、実質2%程度 慎重シナリオ : 2011年度~2020年度の平均:名目1%台半ば、実質1%強 (注) 復旧・復興対策の経費及び財源の金額を除いたベース (出所) 内閣府「経済財政の中長期試算」 (平成24年8月31日) 国・地方の公債等試算(対GDP比)16 ○ JGB市場は世界シェアの3割を占め、米国と並び世界最大級の国債市場
○ 中国・韓国・ASEANを含めたアジア国債市場で見ると世界で約4割のシェア。アジア地域の経済成長を背景に 今後もアジア国債市場のプレゼンスはさらに高まる見込み
○ JGB・アジア債券市場の安定と発展は、国際金融市場にとっても重要なテーマ
(出所)BIS、アジア開発銀行「Asian Bonds Online」
世界債券市場におけるJGB市場の位置付け
米国 37% その他 32% 中国 5 % 韓国 2 % ASEAN 1 % アジア その他 2 % 日本 21% アジア 31% (総額 42兆ドル) 米国 31% その他 31% アジアその他 2% ASEAN 1% 韓国 1 % 中国 4 % 日本 30 % アジア 38% (総額 70兆ドル) 〔公社債〕 〔国債〕 市場向け債券発行残高シェア(2011年末)17 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 中国 ASEAN インド 韓国 台湾 香港
アジア債券市場の発展
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 中国 ASEAN インド 韓国 台湾 香港 ○ 1997年のアジア金融危機を契機に、2003年よりアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)を発足 ○ アジア国債市場は2011年には約15倍に拡大(1997年比、日本を除く)。特に中国は約30倍に拡大するなど 著しく発展 ○ JGB市場は、アジア最大の市場として決済等の市場インフラや制度面の拡充などで主導的な役割を担う(出所)BIS、アジア開発銀行「Asian Bonds Online」
(10億ドル)
〔国債〕
(10億ドル) 〔公社債〕
18 ○ 債券の発行体及び種類の多様化 ・ADB等の国際機関や日系大手メーカー・小売による現地通貨建て債券の発行 ○ 域内債券市場の規模の拡大 ・債券市場の発行残高は3,600億ドル(1997年)から54,870億ドル(2011年)に拡大 ○ リーマンショック後の景気刺激策に必要な国債の円滑な発行 ○ 現地通貨建て債券の発行を支援するため、日本よりABMIの活動へ最大規模の2億ドルを出資 ○ ABMIの活動を通じ、現地通貨建て債券の発行や域内債券市場の拡大に貢献
アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)への貢献
○ アジアにおける貯蓄をアジアに対する投資へ活用する観点から、2003年8月、 ASEAN+3(日中韓)財務 大臣会議(於マニラ)で、アジア債券市場育成に取り組むこと(ABMIの開始)に合意。経緯
ABMIの成果
日本の貢献
○ アジア各国での現地通貨建て債券の円滑な発行を支援するための基金・CGIF(7億ドル規模)を設立し、 日本は中国と並んで最大規模となる2億ドルを出資 ○ 複数のタスクフォースの共同議長を務めるなど、議論を牽引 ○ アジア債券市場育成のための技術支援19 ○ 日本当局による中国国債の購入等、円建て・人民元建て債券市場の健全な発展を積極的に支援 ○ 今後も主導的な立場でアジア全体の債券市場の発展に貢献することを、日本としての重要なミッションの一つ に位置付け