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Vol. 64, 3, 防食塗装システムにおける国際規格の動向 為信一郎 a, 青木隆一 a, 田邉弘往 b a 大日本塗料 技術開発部門研究部 ( 栃木県大田原市下石上 ) b 大日本塗料 技術開発部門 ( 東京都大田区蒲田 5

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(1)

1 .はじめに

 塗装の重要な目的は,被塗物を美しく見せる「美装」と, 被塗物がその置かれた環境の下で長期にわたり機能を維持で きるように「保護」することである。特に,鋼構造物に対し て塗装を施すことにより様々な因子から腐食を防ぐことは, 最もポピュラーな防食方法として位置付けられている。さら に他の防食方法,例えば亜鉛めっきや電気防食と併用するこ とにより,それらの持つ機能を一層高めることができる場合 もある。  塗料の組成の中で塗膜となる主な構成成分はバインダーと なる樹脂と顔料であり,基本的な性能はこの両者の選択によ る。中でも特に用いられる樹脂によって,その塗料の特徴が 決定付けられる。鋼構造物を腐食環境から護るためには,多 くの場合いろいろな特徴を持つ塗料を組み合わせ,複層の塗 膜を形成して用いる。例えば,犠牲防食作用を持つ防錆顔料 として亜鉛末を用いたジンクリッチペイントを最下層の防食 層として用い,中間層として耐久性のよいエポキシ樹脂塗料 を,最上層には耐候性に非常に優れるフッ素樹脂塗料を用い るといった例が上げられる。このような塗料の組み合わせを 塗装系あるいは塗装システムという。  日本における塗料に関する規格としては,JIS K 5600 シ リーズ,いわゆる塗料 JIS と呼ばれる規格がある。この規格 では塗料に関する一般試験方法と「JIS K 5659 鋼構造物用耐 候性塗料」などのように個別塗料の品質を定める製品規格が ある。しかしながら被塗物を絞ってそれに適用する塗装シス テムを規定したものはない。被塗物を維持 ・ 管理する各官公 庁,公社や民間では,それぞれ独自に各用途に適した塗装シ ステムに関する規格を定め,運用している場合が多い。例え ば,構造物の防食に関しては「鋼道路橋塗装・防食便覧(㈳ 日本道路協会編,平成 17 年 12 月)」が広く使用されている。  国際規格では鋼構造物の塗装による防食に関して例えば ISO 規格が制定されており,これは海外ではもっとも活用さ れている規格であるといわれている。

2 .防食塗装システムに関する国際規格

 国際標準として最も一般的な ISO 規格には鋼構造物の防 食塗装システムを定めた ISO 12944 シリーズがある。これは, 日本塗料工業会を事務局として日本も参加した ISO/TC35/ SC14 委員会での審議を経て 1988 年に初版が制定されたもの であり1)∼4),一部は 2007 年に改定されている。最近では海 外に展開する鋼構造物の建設に際してこの規格に関する案件 が増加するなど,益々その有用性が注目されてきている。さ らに,厳しい腐食環境である海洋鋼構造物に関する塗装シス テムの国際規格として ISO 20340 や NACE SP0108 がある5) 本稿ではこれらの規格の概要について紹介する(表 1)。

3 .ISO 12944 防食塗装システムによる鋼構造物の

腐食防食

(Paint & varnishes - Corrosion protection of steel

structures by protective paint systems)

 ISO 12944 は,塗料メーカー,設計エンジニア,顧客,塗 装業者を対象に,鋼構造物に対する防食塗料および防食塗装 システムを選定するための要領について紹介している。1987 年の ISO/TC35(塗料およびワニス)ブタペスト会議にて「鋼 構造物に対する防食塗装システム」という分科会を設立する ことが決議されたことを皮切りに,1990 年ロッテルダム会 議における SC14 分科会の設立,1991 年オスローにおける第 1 回の会議への日本の初参加を経て,1998 年に制定に至った。 本規格は「ISO 12944 シリーズ」と称しているように,全部 で Part 1 から Part 8 まで次の 8 つの部分から成り立っている。  ・Part 1: General introduction

 ・Part 2: Classification of environments  ・Part 3: Design considerations

 ・Part 4: Types of surface and surface preparation  ・Part 5: Protective paint systems

防食塗装システムにおける国際規格の動向

為 信一郎

a

,青木 隆一

a

,田邉 弘往

b

a大日本塗料㈱ 技術開発部門 研究部(〒 324︲8516 栃木県大田原市下石上 1382︲12) b 大日本塗料㈱ 技術開発部門(〒 144︲0052 東京都大田区蒲田 5︲13︲23)

The Trend of the International Standards in Corrosion Protective Paint Systems

Shinichiro TAME

a

, Ryuichi AOKI

a

and Hiroyuki TANABE

b

a Research Debelopment Department, Technical Development Devision Dai Nippon Toryo Co., Ltd.(1382-12, Shimoisigami, Ohtawara-shi, Tochigi 324-8516)

b Technical Development Devision, Dai Nippon Toryo Co., Ltd.(5-13-23, Kamata, Ota-ku, Tokyo 144-0052) Keywords : Corrosion Protection, Protective Paint System, Steel Structures, ISO, NACE

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解  説

 ・Part 6: Laboratory performance test methods  ・Part 7: Execution and supervision of paint work

 ・ Part 8: Development of specifications for new work and maintenance

 3.1 ISO 12944 - Part 1: 総論(General introduction)

 この Part 1 では ISO 12944 の導入として規格の適用範囲や 定義,要求事項などについて記載されている。  適用範囲は「防食塗装システムによる鋼構造物の腐食防食」 であり,「微生物(海洋付着物,バクテリア,付着物,他)」,「化 学物質(酸,アルカリ,有機溶剤,ガス,他)」,「機械的作用 (侵食,他)」,「火」などに対する保護は対象外と明確にして いる。  適用する分野は「構造物の種類」,「表面調整の種類」,「環 境の種類」,「防食塗装システムの種類」,「塗装作業の種類」, 「塗装システムの耐久性」であり,とくに「環境の種類」と「塗 装システムの耐久性」を規定していることはこの規格の特徴 である。  各々の分野の適用範囲は以下の通りである。 ・構造物の種類:  厚さ 3 mm 以上の炭素鋼または低合金鋼とし,鋼材で補強 されたコンクリート構造物は適用外 ・表面調整の種類:  「コーティングされていない面」,「亜鉛,アルミニウムあ るいはそれらの合金の溶射面」,「溶融亜鉛めっき面」,「電気 亜鉛めっき面」,「シュラダイジング面」,「プレファブリケー ションプライマーが塗装された面」,「その他の塗装面」 ・環境の種類:  大気環境について 6 分類,水中もしくは土中埋設環境では 3 分類 ・防食塗装システムの種類:  大気条件下で乾燥・硬化する塗料としており,「粉体塗料」, 「焼付け塗料」,「熱硬化塗料」,「乾燥膜厚が 2 mm 以上の塗料」, 「タンクのライニング」,「化成処理(リン酸塩処理など)」は 除外 ・塗装作業の種類:  「新設」および「塗り替え」 ・塗装システムの耐久性:

 期待耐用年数(原文 The expected life)を最初の主な補修塗 装までの期間とし,   ・low(L) 2 ~ 5 年   ・medium(M) 5 ~ 15 年   ・high(H) 15 年以上 の 3 分類。ただし,この期待耐用年数は「保証期間ではない」, 「保証期間は,大抵期待耐用年数より短い」,「この 2 つに関 連性はない」としている6) 3.2  ISO 12944 - Part 2: 環境分類 (Classification of environments)  塗装システムによる鋼構造物の防食を考えた場合,その腐 食環境を考慮しなければならないことは言うまでもない。 Part 2 では,腐食環境の分類を定めている。この Part の適用 範囲では「鋼構造物が置かれている基本的な環境の分類およ びそれらの腐食性について扱う」としている。また「ISO 12944 では,特別な大気(例えば化学プラントや冶金プラン ト周辺)に分類される環境には対応していない」としている。  腐食環境として「大気腐食」と「水中および土中埋設腐食」 の大きく 2 つ分けて規定を行っている。  腐食カテゴリーの分類(抜粋)を表 2,表 3 に示す7)。「大 気腐食」では腐食性を ISO 9223 のカテゴリーに従った 5 分 類(C1 ~ C5)を基本とし,さらに C5 を工業地域と海洋地域 の 2 分類に分け,次の 6 カテゴリーに分類している。   ・C1:極めて低い   ・C2:低い   ・C3:中程度   ・C4:高い   ・C5-I:極めて高い(工業)   ・C5-M:極めて高い(海洋)  この分類方法は単純にその環境を記述しているのではなく, 低炭素鋼および亜鉛の初期 1 年間の消耗量によって規定され ている。具体的な使用環境は「例」として記載されており,「実 環境で曝露試験が実施できない場合は環境例によって推測で きる」としている。  また,「水中および土中埋設腐食」については,「腐食性を 定めるのは困難」ながらも Im 1 ~ Im 3 の 3 カテゴリーに分 類している7) 規格

特徴 ISO 12944 ISO 20340 NACE SP0108

適用範囲 ・防食塗料による鋼構造物の防食 ・塗装系の防食機能 ・塗装現場の特徴づけ ・構造物のタイプ ・表面及び素地調整のタイプ ・環境のタイプ ・防食塗装システムのタイプ ・作業のタイプ ・塗装システムの耐久性 ・海洋構造物及びその関連構造物の防食塗装 システム ・腐食カテゴリー:C5-M,浸漬カテゴリー: Im 2,温度範囲:- 20 ~ 80 ℃ ・没水部の塗装系周囲の温度:最大 50 ℃(目 標) ・石油及びガス産業における海洋構造物の防 食塗装に関する必要最低条件のガイドライ ンを与える。 ・大気部,飛沫帯,外側の浸漬部,バラスト ウォータータンク ・大気部の海洋構造物で,化学タンクの外部 保護を含む 使用環境 (腐食カテゴリー) ・ 大 気 部( カ テ ゴ リ ー:C1,C2,C3,C4, C5-I,C5-M) ・水中および土中埋設(カテゴリー:Im 1, Im 2,Im 3) ・海洋大気部(カテゴリー:C5-M) ・海洋浸漬(カテゴリー:Im-2) ・干満帯・飛沫帯(カテゴリー:C5-M + Im-2) ・大気部 ・飛沫帯 ・外部の浸漬部 ・バラストウォータータンク その他の防食工法 の記載 なし なし アルミ溶射,シーラント,ペトロラタム工法,ワックステープなど 塗装系の記載 あり なし あり 性能試験 あり あり あり 表 1 各国際規格の特徴6)∼13),15),16)

(3)

防食塗装システムにおける国際規格の動向  3.3  ISO 12944 - Part3: 設計上の考慮事項 (Design considerations)  この Part の適用範囲は「防食塗装システムによって塗装 される鋼構造物の基本的な基準を扱う」となっている。詳細 は「5 防食を目的とした基本的な設計基準」に「手入れのし 易さ(Accessibility)」,「隙間の取り扱い」,「沈殿物や水の滞 留を防止するための注意事項」,「エッジ部」,「溶接部の欠陥」, 「ボルト結合部分」,「ボックス構造部および凹部」,「切り込み」, 「補強材」,「電解腐食の防止」,「取り扱い,輸送,組み立て」 の 11 項目について述べられている8)  3.4  ISO 12944 - Part 4: 表面の種類と表面処理 (Types of surface and surface preparation)

 塗装にとって表面処理は重要である。いくら高性能な塗料 を用いてもそれに適した表面処理が施されなかった場合には, 本来の性能が発揮し得ない。  この Part では,表面処理の方法として,「水,溶剤及び化 学的処理」と「機械的処理」の 2 つに分け,前者では「水洗」, 「蒸気洗浄」,「エマルション洗浄」,「アルカリ洗浄」,「溶剤 洗浄」,「化成処理」,「(アルカリ)脱膜」,「酸洗」が,また後 者については「手工具処理」,「電動工具処理」,「ブラスト処 理」,「火炎洗浄」を挙げている。  表面処理のグレードとしては「全面処理」と塗り替えなど で旧塗膜を残した「部分処理」に分けている。「全面処理」 は Sa,St,Fl,Be が,「部分処理」は PSa,PSt,PMa と分 類し,Annex として表にまとめられている。「全面処理」は 基本的には日本でも馴染みのある ISO 8501-1 に従っている。 一例を表 4 に示す9) 腐食 カテゴリー 単位面積当たりの重量損失/減耗量(曝露初年度) 温暖な気候における環境の例 低炭素鋼 亜鉛 屋外 屋内 重量損失 g/m2 減耗μm 重量損失g/m2 減耗μm C1 very low ≪ 10 ≪ 1.3 ≪ 1.7 ≪ 0.1 - (例:事務所,店,学校,ホテル)清浄な環境の保温された建物 C2 low >10 ~ 200 >1.3 ~ 25 >0.7 ~ 5 >0.1 ~ 0.7 低汚染雰囲気,農村地域 (例:倉庫,体育館)結露が生じる保温のない建物 C3 medium >200 ~ 400 >25 ~ 50 >5 ~ 25 >0.7 ~ 2.1 都市及び工業の雰囲気,中程度の 二酸化汚染雰囲気,低塩分濃度の 海岸 高湿度でやや空気汚染のある生産 設備(例:食品加工工場,洗工場, 醸造所,搾乳場) C4 high >400 ~ 650 >50 ~ 80 >15 ~ 30 >2.1 ~ 4.2 工業地域及び中塩分濃度の海岸 化学工場,スイミングプール,海岸の乗船場 C5-I(工業) very high >650 ~ 1500 >80 ~ 200 >30 ~ 60 >4.2 ~ 8.4 高湿度且つ腐食の激しい工業地域 建物または結露状態の高汚染領域 C5-M(海洋) very high >650 ~ 1500 >80 ~ 200 >30 ~ 60 >4.2 ~ 8.4 高塩分濃度の海岸及び海洋構造物 ビルまたは結露状態の高汚染領域 表 2 ISO 12944-2における大気腐食カテゴリーおよび環境例7) 浸漬 カテゴリー 環境 環境及び構造物の例 Im1 淡水浸漬 河川設備,水力発電所 Im2 海水または汽水浸漬 水門,堰堤,桟橋のような構造物のある港領域,海洋構造物 Im3 土中埋設 埋設タンク,鉄杭,鉄製配管 表 3  ISO 12944-2 における水中及び土中埋設環境の腐食カテゴリー例7) 標準調整 グレード 素地調整方法 ISO 8501-1 の見本写真に記載の処理グレード※ 1 素地調整に必要な特徴(より詳細な素地調整の方法,ISO 8501-1 参照) 適用分野 Sa 1 ブラスト処理 B Sa 1 C Sa 1 D Sa 1 除去できそうなミルスケール,さび,塗膜,異物を除去する a) 塗装されていない鋼面の素地調整 b) 記述されている調整グレードに達す るまで塗膜を除去する場合の,塗装 された表面の素地調整 Sa 2  B Sa 2C Sa 2 D Sa 2 大部分のミルスケール,さび,塗膜,異物を除外する。残っ ている汚染物質はしっかり付着していること。 Sa 2 1/2 A Sa 2 1/2 B Sa 2 1/2 C Sa 2 1/2 D Sa 2 1/2 ミルスケール,さび,塗膜,異物を除去する。残っている汚 染物質は,スポットや縞のような形でわずかに汚れがある程 度にする。 Sa 3 A Sa 3 B Sa 3 C Sa 3 D Sa 3 ミルスケール,さび,塗膜,異物を除去する。表面は金属色 がでている。 St 2 手動処理,または 動力工具処理 B St 2 C St 2 D St 2 除去できそうなミルスケール,さび,塗膜,異物は除去する。 St 3 B St 3C St 3 D St 3 除去できそうなミルスケール,さび,塗膜,異物は除去する。 しかし,表面は St 2 よりも念入りな素地調整が必要であり, 金属から光沢がでていることが条件である。 Fl 火炎処理 A Fl B Fl C Fl D Fl 除去できそうなミルスケール,さび,塗膜,異物は除去する。 残っているかすは,表面の変色したものとする。 ※ 1 著者注:原表では調整グレード前の記号について「A,B,C,D は未塗装鋼材表面の初期状態を表す(ISO8501-1 参照)」との注釈がある。 表 4 ISO 12944-4 における表面処理の例9)

(4)

解  説

 3.5  ISO 12944 - Part 5: 防食塗装システム (Protective paint systems)

 この規格の中核をなすものの一つである塗装システムにつ いて記載されている。この Part 5 のみ,2007 年に改訂版が でている。この Part では,「塗料の種類」と「塗装系」およ び「防食塗装系表」が記載されている。  「塗料の種類」として各種塗料の記載があり,その中には「水 系塗料」も含まれている。また。日本では一般的となった「フッ 素樹脂塗料」は「2 液ポリウレタン樹脂塗料」の主剤の例の 中に「フッ素樹脂」の記載があり,ここに含まれている。  「塗装系」については,「塗装前処理」,「乾燥膜厚」,「耐久 性」等について記述がある。  「塗装系表」には,各種塗装系と 腐食環境,期待耐用年数 まとめられている。A1 ~ A8 迄の表があり,A1 が総括した 表となっている。A1,A7,A8 は複数の腐食環境に対して上 塗り塗料の樹脂タイプ別に配列されており,上塗り塗料の性 能を基本として塗装系を選択する場合や,腐食環境のカテゴ リーが良く分からない場合に便利にできている。また,A2 ~ A6 は特定の腐食カテゴリー別の表で,プライマーに用い る塗料に従って配列されており,腐食環境が分かっている場 合に便利にできている。適用する塗装系の例を表 5 に示す10) 3.6  ISO 12944 - Part 6: 実験室における性能試験方法

(Laboratory performance test methods)

 この Part では,実験室における防食塗装系の試験方法お よび条件について規定している。ただし,ここでの試験結果 は塗装系選択のための手段であり耐久性を決定するための正 確な情報ではないとしている。また Part 5 の塗料では塗料の 種類に水系塗料を含んでいるが,水系塗装システムのいくつ かについては,ここにある試験をそのまま適用することはで きないとしている。表 6 に鋼へ適用する塗装系の耐久性試験 方法の抜粋を示す11)  3.7  ISO 12944 - Part 7: 塗装作業の実施と監督 (Execution and supervision of paint work)

 この Part では,工場(workshop)あるいは現地における鋼 構造物に関する塗装作業の実施と監督について規定しており, 「塗装実施の前提条件」,表面処理などの「被塗物の条件」,「健 康・安全および環境保護」,保管条件などを記した「塗料」, プライマー 上塗り 塗装系合計 期待耐久性 表中で関連する塗装系 塗装系 No. 樹脂系 d タイプa 塗り回数 標準 膜厚 μm b 樹脂系 塗り回数 標準 膜厚 μm b C2 腐食性 low C3 medium highC4 C5-I very high (industry) C5-M very high

(marine) A.2 A.3 A.4 (I)A.5 (M)A.5

L M H L M H L M H L M H L M H

A1.15 EP 他 1-2 80 EP,PUR 2-3 120 A2.06 A3.07

A1.16 EP 他 1-2 80 EP,PUR 2-4 160 A2.07 A3.08

A1.17 EP,PUR,ESI Zn(R) 1 60 e EP,PUR 2-3 160 A3.11 A4.13

A1.18 EP 他 1-2 80 EP,PUR 3-5 200 A3.09

A1.19 EP,PUR,ESI Zn(R) 1 60 e EP,PUR 3-4 200 A4.14

A1.20 EP,PUR,ESI Zn(R) 1 60 e EP,PUR 3-4 240 A4.15 A5I.04 A5M.05

A1.21 EP 他 1-2 80 EP,PUR 3-5 280 A4.09

A1.22 EP,PUR 他 1 150 EP,PUR 2 300 A5I.03 A5M.01

A1.23 EP,PUR,ESI Zn(R) 1 60 e EP,PUR 3-4 320 A5I.05 A5M.06

A1.24 EP,PUR 他 1 80 EP,PUR 3-4 320 A5I.02 A5M.02

A1.25 EP,PUR 他 1 250 EP,PUR 2 500 A5M.04

A1.26 EP,PUR 他 1 400 - 1 400 A5M.03

A1.27 EPC 他 1 100 EPC 3 300 A5M.08

A1.28 EP,PUR Zn(R) 1 60 e EPC 3-4 400 A5M.07

a Zn(R)=ジンクリッチプライマー 5.2 参照 他=種々の防錆的顔料 b 標準膜厚 5.4 参照 d 上塗りを Tie coat として推奨 e 選ばれたジンクリッチプライマーによっては標準膜厚が 40 ~ 80 μm の範囲で変動してもよいことがある プライマー樹脂系 1 液 2 液 水性 上塗り樹脂系 1 液 2 液 水性 EP エポキシ ○ ○ EP エポキシ ○ ○ ESI エチルシリケート ○ ○ ○ PUR ポリウレタン ○ ○ ○ PUR ポリウレタン ○ ○ ○ EPC 変性エポキシ ○ 表 5  ISO 12944-5 腐食環境 C2,C3,C4,C5-I,C5-M に適用する塗装系の例10) ISO 12944-2 で 定義された 腐食カテゴリー 期待 耐用 年数 ISO 2812-1 (耐薬品性) h ISO 2812-2 (水浸漬) h ISO 6270 (結露) h ISO 7253 (塩水噴霧) h C2 ML H - - - - - - 48 48 120 - - - C3 ML H - - - - - - 48 120 240 120 240 480 C4 ML H - - - - - - 120 240 480 240 480 720 C5-I ML H 168 168 168 - - - 240 480 720 480 720 1,440 C5-M ML H - - - - - - 240 480 720 480 720 1,440 Im1 ML H - - - - 2,000 3,000 - 720 1,440 - - - Im2 ML H - - - - 2,000 3,000 - - - - 720 1,440 Im3 ML H - - - - 2,000 3,000 - - - - 720 1,440 表 6 ISO 12944-6 における鋼材に対する塗装系の試験方法11)

(5)

防食塗装システムにおける国際規格の動向 膜厚や塗装方法などを記した「塗装の実施」,「塗装管理」,「リ ファレンスエリア」の章からなる。  特に「リファレンスエリア」については留意が必要である。 リファレンスエリアは,最低限の受け入れられる基準を確立 するために,製造業者または請負業者によって与えられる データが正しいものかチェックするために,また塗膜の性能 が完成後いつでも評価できるようにするために使用する構造 物の適切な場所のことである。リファレンスエリアは通常は 保障の目的で用いるものではないが,当事者間で同意された 場合はこの目的で用いることができるとしている12)  3.8  ISO 12944 - Part 8: 新設及び補修のための塗装仕様 の展開

(Development of specifications for new work and maintenance)

 この Part は 12944 シリーズの Part 1 から Part 7 までの内容 を束ね,防食塗装システム全体で最も大きなボリュームと なっている。仕様として「プロジェクトの仕様」,「防食塗装 システム仕様」,「塗装作業仕様」,「検査・評価仕様」が挙げ られており,各々についてその内容がまとめられている13)

4 .ISO 20340 Paint & varnishes - 海洋構造物に必要

とされる防食塗装システムの性能

(Performance requirements for protective Paint

systems for offshore and related structures)

 ISO 12944 が鋼構造物一般の防食塗装システムについて詳 細に記述しているのに対し,ISO 20340 は海洋鋼構造物を対 象とした防食塗装システムを選定するためのラボ試験方法, 塗装システムの耐久性を評価するためのラボ試験方法および 評価基準が示されている14)。2009 年版が現状の最新版である。 この規格の対象とする腐食カテゴリーは,ISO 12944 - Part 2 に示す C5-M(海洋大気部),Im-2(海洋浸漬),およびこれら を組み合わさった C5-M+Im-2(飛末帯・干満帯)とし,それ ぞれに必要なラボ試験方法が記されてある。試験項目は海洋 大気部には耐エージング試験(紫外線照射,塩水噴霧および 寒熱繰り返しを含むサイクル試験),海洋浸漬部は海水浸漬 試験および耐電気防食性を念頭に置いた陰極剥離試験,飛沫 帯・干満帯についてはそれぞれの試験を要求している。塗装 系については適用環境別に,最小必要条件として,プライマー の種類・膜厚,総合膜厚および付着強度について規定してい る。表 7 に性能試験の概要を示す15)。また,この規格に沿っ た性能試験についての評価結果について報告されている事例 がある。

5 .NACE SP0108 防食塗料による海洋構造物の腐食

防食

(Corrosion Control of Offshore Structures by

protective Coatings)

 NACE(National Association of Corrosion Engineers International)の定めた海洋鋼構造物に対する規格で,2008 年 版が最新である。規格の適用範囲としては,石油およびガス 産業・取扱施設に関する海洋鋼構造物に対する防食塗装系の 最小限のガイドラインを与えるとなっている。  全体では 12 の章からなっている。ISO 12944 定めるよう な腐食カテゴリーの分類はないが,塗装システムについては 新設と塗り替えそれぞれについて別途に規定し,フランジ部 やパイプ支障部などの使用部分について一つの章を割り振る, あるいは使用部分別に塗装仕様を定めるなど,より実際的な 内容となっている。また,性能試験についても記載されてい るが,ISO 20340 とは異なった内容となっている。表 8 に NACE SP0108 における,大気部での鋼構造物新設塗装系の 例を示す16)

6 .おわりに

 防食塗料・塗装システムに関する国際規格を中心にその概 略について述べた。  ここで述べてきた国際規格は,先進工業国のみならず開発 途上国がその国の社会資本を整備しようとする際の有用な拠 り所として多用されるようになってきている。例えばオイル ・ ガスなどのエネルギー資源の確保はいずれの国においても 大きな問題であるが,それらの生産現場は陸上から沿岸へ, 沿岸から海上,さらには深海へと展開してきており,防食技 術の立場から見ると構造物の立地条件はより厳しい方向へと 向かっていると感じざるを得ない。これらへの対応を含め, グローバルな視点での確かな技術的展開のためには,国際的 に認められた規格は重要なアイテムとなる。  また国際規格が定められる背景には,従来からある国際的 にメジャーな操業会社等の塗装に関する仕様がそれぞれ多岐 に渡るため,国際規格という一つの目安が定まることは,そ れらに従事する当事者の負担を軽減することに貢献するとも 言われている。  本稿をまとめるに当たり,例えば ISO 12944 シリーズは塗 装に携わるものには非常に有用であり,また金属材料の腐食 量に従った腐食環境の分類などはもっと活用すべきものであ ると考える。グローバル化が進む中,特にここで紹介した防 食塗料・塗装系を扱う国際規格は益々その重要度を増してい 試 験 カットの付与 腐食環境C5-M 腐食環境 C5-Mと Im-2 組合せ (飛沫帯及び干満帯) 腐食環境 Im-2 耐エージング試験 *1 あり 4200 h 4200 h 陰極剥離試験(ISO 15711:2003)*2 なし 4200 h 4200 h 海水浸漬試験(ISO 2812-2) あり - 4200 h 4200 h

*1 原文 Annex A に定める。[ISO 11507 による紫外線照射及び湿潤× 72 H]+[ISO 9227

による塩水噴霧× 72 H]+[- 20 ℃× 24 H]のサイクルテスト

*2 別段の合意がない限り A 法

(6)

解  説 く。本稿をきっかけとして,是非各規格の原文に触れ,詳し い内容を知って頂くことを切に願っている。 (Received February 6, 2013)

文  献

₁ )竹本 勲 ; 防錆管理, 38, 111(1994). ₂ )中尾義一 ; 表面技術, 46, 529(1995). ₃ )田邉弘往 ; 鋼橋塗装, 26, (1), 14(1998). ₄ )田邉弘往 ; 鋼橋塗装, 26, (3), 39(1998). ₅ )高瀬勝治 ; 防錆管理, 56, 70(2012). ₆ )ISO 12944-1(1998). ₇ )ISO 12944-2(1998). ₈ )ISO 12944-3(1998). ₉ )ISO 12944-4(1998). 10)ISO 12944-5(2007). 11)ISO 12944-6(1998). 12)ISO 12944-7(1998). 13)ISO 12944-8(1998). 14)高瀬勝治 ; 防錆管理, 56, 29(2012). 15)ISO 20340(2009). 16)NACE SP0108-2008

仕様 No. 工程 塗装システム μm(mil)乾燥膜厚 目標乾燥膜厚μm(mil)

CN - 1 大気部 - 50 ~ 120 ℃ (- 58 ~ 248 °F) 断熱有/無 1 2 3 ジックリッチプライマー エポキシ ポリウレタン 50 - 75(2 - 3) 125 - 175(5 - 7) 50 - 75(2 - 3) 75(3) 125(5) 75(3) 1 2 3 エポキシ下塗 エポキシ ポリウレタン 125 - 175(5 - 7) 125 - 175(5 - 7) 50 - 75(2 - 3) 125(5) 125(5) 75(3) 1 2 3 アルミ溶射 封孔剤(エポキシ) シーラー(エポキシ) 250 - 375(10 - 15) 乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない 250(10) 乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない CN - 2 大気部 120 ~ 150 ℃ (248 ~ 302 °F) 断熱無 1 2 無機ジンクリッチプライマーアクリルシリコーン 50 - 75(2 - 3)25 - 50(1 - 2) 75(3)50(2) 1 2 3 アルミ溶射 封孔剤(アクリルシリコーン / フェノールエポキシ) シーラー(アクリルシリコーン / フェノールエポキシ) 250 - 375(10 - 15) 乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない 250(10) 乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない CN - 3 大気部 120 ~ 150 ℃ (248 ~ 302 °F) 断熱有 1 2 フェノールエポキシフェノールエポキシ 100 - 125(4 - 5)100 - 125(4 - 5) 125(5)125(5) 1 2 3 アルミ溶射 封孔剤(アクリルシリコーン / フェノールエポキシ) シーラー(アクリルシリコーン / フェノールエポキシ) 250 - 375(10 - 15) 乾燥膜厚に加えない(A) 乾燥膜厚に加えない(A) 250(10) 乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない CN - 4 大気部 150 ~ 450 ℃ (302 ~ 842 °F) 断熱有/無 1 2 3 アルミ溶射 薄いシーラー(エポキシ) シーラー(エポキシ) 250 - 375(10 - 15) 乾燥膜厚に加えない(A) 乾燥膜厚に加えない(A) 250(10) 乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない 1 2 3 無機ジンクリッチプライマー シリコーン シリコーン 50 - 75(2 - 3) 25 - 50(1 - 2) 25 - 50(1 - 2) 75(3) 50(2) 50(2) CN - 5 デッキ部と床- 通常の腐食環境 1 2 3 4 ジンクリッチプライマー ハイソリッドエポキシ 滑り防止エポキシ ポリウレタン 50 - 75(2 - 3) 125 - 175(5 - 7) 125 - 175(5 - 7) 50 - 75(2 - 3) 75(3) 125(5) 125(5) 75(3) 1 2 3 4 エポキシ下塗 ハイソリッドエポキシ 滑り防止エポキシ ポリウレタン 50 - 75(2 - 3) 125 - 175(5 - 7) 125 - 175(5 - 7) 50 - 75(2 - 3) 75(3) 125(5) 125(5) 75(3) 1 2 シーラー(ポリウレタン)アルミ溶射 乾燥膜厚に加えない250 - 375(10 - 15)(A) 乾燥膜厚に加えない250(10) 1 滑り防止厚膜型エポキシ ベンダーの指定 ベンダーの指定 CN - 6 デッキ部と床- 著しい腐食環境と ヘリデッキ 1 2 3 4 ジンクリッチプライマー ハイソリッドエポキシ 滑り防止エポキシ 安全性の高いポリウレタン 50 - 75(2 - 3) 200 - 300(8 - 12) 200 - 300(8 - 12) 50 - 75(2 - 3) 75(3) 250(10) 250(10) 75(3) 1 2 3 4 エポキシ下塗 ハイソリッドエポキシ 滑り防止エポキシ 安全性の高いポリウレタン 125 - 175(5 - 7) 200 - 300(8 - 12) 200 - 300(8 - 12) 50 - 75(2 - 3) 125(5) 250(10) 250(10) 75(3) 1 2 アルミ/酸化アルミ合金溶射シーラー(ポリウレタン) 300 - 400(12 - 16)乾燥膜厚に加えない 乾燥膜厚に加えない300(12) 1 滑り防止厚膜型エポキシ ベンダーの指定 ベンダーの指定 表 8 NACE SP0108 における大気部での鋼構造物新設塗装系の例16)

参照

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