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オオイタデジタルブック「明日を守る~防災立県めざして」

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Academic year: 2021

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  ( 二〇〇七年三月四日 ) 第3回公開シンポジウム

  

危機感持ち、高めよう「地域の力」

▽ 大分大学 山崎 栄一 助教授 (教育福祉科学部) ▽ 大分県 財前 賢治 課長補佐 (防災危機管理課) ▽ 中津市社会福祉協議会 吉田 瑞穂 地域福祉担当 ▽NHK 山崎 登 解説委員 ▽ 大分合同新聞 小田 圭之介 記者 ▽ NHK 横田 晃洋 記者 ▽ NHK 富田 典保 アナウンサー        地域のきずなが防災につながる―。      二月二十五日、大分市で開いた大分合同新聞社 の創刊百二十周年記念企画「明日を守る―防災立県めざして ―」の第三回公開シンポジウム。高齢化、過疎化が進む中、「防 災力を高める地域づくりとは?」と、来場者とともに論議した。 地域の防災力について議論を深めるパネリスト(大分市のNHK大分放送局)

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  阪神大震災では、がれきに埋もれた人の八割近くが近隣住 民らに救助され、 「地域の力」 が大きくクローズアップされた。 大分県では都市部でも中山間地でも、人々のきずなが薄れつ つある。 コミュニティーの現状   防災的に脆弱な社会 小 田   大 分 市 中 心 部 の マ ン シ ョ ン 居 住 者 を 対 象 と し た ア ン ケ ー ト 調 査 で は、 助 け 合 い の 基 盤 と な る 近 隣 関 係 が 非 常 に 希 薄 だ っ た。 マ ン シ ョ ン に 象 徴 さ れ る よ う に、 都 市 部 で は ラ イ フ ス タ イ ル や 価 値 観 が 多 様 化。 異 質 な 人 々 の 集 団 と な り、 防 災 的 に 脆 弱( ぜ い じ ゃ く ) な 社 会 に な っ て いる。 横田   山間部では過疎・高齢化が深刻だ。日田市の旧上津江 村 で は、 若 い 消 防 団 員 が 減 っ て い る。 市 町 村 合 併 に 伴 い 消 防 出 張 所 を 廃 止 す る 動 き も あ る。 出 張 所 廃 止 は、 住 民 の 反 対 運 動 で 凍 結 と な っ て い る が、 県 内 に は 過 疎・ 高 齢 化 が 進 ん だ 地 域 が 多 く、 防 災 力 の 維 持 が 難 し く な っ て き ている。 財 前   中 山 間 地 で は 複 合 的 な 要 因 か ら、 「 地 域 の 力 」 自 体 が 衰 え て き て い る。 県 と し て は、 女 性 や 事 業 所 の 職 員 を 動 員 す る 機 能 別 消 防 団 を 導 入 し た り、 モ デ ル 的 に 自 主 防 災 組 織 の 活 動 を 強 化 す る な ど の 対 策 を 実 施。 地 域 振 興 は も ち ろ ん、 住 ん で い る 人 が 安 全・ 安 心 に 暮 ら せ る 地 域 づ く りを進めたいと考えている。   地域の防災を担う自主防災組織。各地で防災マップ作りな どの取り組みが広がる一方、形骸(けいがい)化したところ も多く、地域によって温度差があるのが現状だ。 災害リスクの認識   情報の共有と活用を 山崎登   防災活動の最初の取り組みは、自分の地域にどんな 危 険 が あ る か を 知 る こ と だ。 津 波 や 河 川 の は ん ら ん、 土 砂 災 害 … と、 身 近 な 危 険 を 知 る た め に、 防 災 マ ッ プ 作 り は大きな意味がある。

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防災教育   リーダーの育成必要 富田   県内の自主防災組織の組織率は 76・5%と高い割には、 あまり活動してないようだ。 山崎栄   災害に対する危機感がないのが一つの原因ではない だ ろ う か。 例 え ば、 福 岡 県 西 方 沖 地 震 に 見 舞 わ れ た 玄 界 島 は 家 屋 が 密 集 し、 一 度 火 災 が 起 き る と た ち ま ち 燃 え 広 が っ て し ま う。 住 民 は こ の こ と を 常 に 意 識 し て い る の で 防災活動が活発で、地震にもスムーズに対応できた。 小田   県内には、地震の発生源となる活断層が密集している が、 県 民 は そ の 詳 細 な 位 置 を 知 る す べ が な い。 県 は 今 年 か ら 地 震 の 被 害 想 定 づ く り に 着 手 し た。 す べ て の デ ー タ を 県 民 に 公 表 し、 分 か り や す く 説 明 す る こ と が 大 切 だ。 災害のリスクを正確に知ることから危機感が生まれる。 横 田   県 は 浸 水 や 土 砂 災 害 の 危 険 区 域 を 記 し た マ ッ プ を 全 地 区 に 配 布 し た が、 公 民 館 に 張 ら れ て い る だ け と い っ た ケ ー ス が 目 立 つ。 災 害 に 関 す る 情 報 が 住 民 レ ベ ル で う ま く 活 用 さ れ て い な い。 行 政 が 活 用 の 場 づ く り を 支 援 す る ことも必要だ。 財前   災害に関する情報をきっちり集め、県民に提供するこ と が 行 政 の 第 一 の 義 務。 皆 さ ん が 地 域 や 家 庭 で 防 災 マ ッ プ を 作 れ る よ う、 市 町 村 と と も に 情 報 提 供 に 努 め、 防 災 を考える場づくりを各地に広げていきたい。   都市でも中山間地でも、防災活動を担っているのは、自治 会役員などの高齢者がほとんど。いつ襲ってくるか知れない 災害に備え、地域ごとにリーダーを育てる「防災教育」が求 められている。 富田   佐伯豊南高校の生徒が、クラブ活動で防災意識に関す るアンケート調査を実施した。 生徒   二〇〇五年三月の福岡県西方沖地震が発生した直後の ア ン ケ ー ト で は、 「 避 難 勧 告 で す ぐ に 逃 げ る 」 と 答 え た 人 が 33% い た。 約 一 年 半 後 に は 27% に 減 り、 時 間 が た つ につれて防災への意識が低下していることが分かった。 山崎栄   これまで、地域の防災活動はたまたま熱心な人がい

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アンケート結果について説明する佐伯豊南高校の生徒たち て 機 能 し て き た。 防 災 リ ー ダ ー を 育 成 す る 社 会 的 な 仕 組 み が 必 要 だ。 東 南 海・ 南 海 地 震 の 発 生 確 率 は 三 十 年 以 内 に 50― 60% と な っ て い る。 ま さ に、 今 の 高 校 生 ら が 活 躍 し な け れ ば ならない。 山 崎 登   全 国 に は、 住 宅 の 耐 震 化 や 地 域 の 水 害 に つ い て 学 ば せ る 学 校 が あ る。 防 災 授 業 は、 子 ど も た ち が 成 長 し た と き、 防 災 に 頑 張 っ て も ら う こ と を 狙 い に し て い る が、 子 ど も の 学 習 や 活 動 が 保 護 者 や 祖 父 母 に 伝 わ り、やがては地域に広がってくる可能性もある。 生徒   防災の地域リーダーになれるよう頑張ります。 女性・要援護者の視点   「同じ生活者」として   災害時に、自力での避難が難しい高齢者、障害者たちをど う支援していくかが大きな課題になっている。 防災対策には、 さまざまな立場からの視点が求められている。 吉田   被災するとみんなが生活に困る。男性だけ、女性だけ で防災を考えるのでは不十分だ。 トイレが男女兼用だと、 高 齢 者 が ト イ レ に 行 く の を 我 慢 し て 体 調 を 崩 し て し ま っ た り す る。 紙 お む つ を 備 蓄 し た り、 洗 濯 物 の 干 し 場 を 男 女別にするなど、女性だからこそ気付く部分がある。 山崎栄   県の「女性の視点による防災指針」作成に携わり① 被 災 者 支 援 に 女 性 の 視 点 や 気 配 り を 盛 り 込 む ② 防 災 政 策 の 意 思 決 定 の 場 や 自 主 防 災 組 織 で 女 性 の 参 加 を 進 め る べ き―と考えた。 富田   女性の視点だけでなく、要援護者の視点も大切。防災

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にはいろいろな視点が求められる。 財前   国の災害時要援護者支援ガイドラインに基づき、市町 村 は 支 援 プ ラ ン の 作 成 に 向 け 取 り 組 み つ つ あ る が、 要 援 護 者 の 把 握 は 個 人 情 報 保 護 法 と の か か わ り で 非 常 に 難 し く、 う ま く 進 ん で い な い の が 現 状。 今 後、 関 係 者 の 協 力 を 得 な が ら、 要 援 護 者 の 台 帳 づ く り に 取 り 組 ん で い き た い。 吉田   高齢者や障害者が地域の一員として、日ごろから地域 の 活 動 に 参 加 で き る よ う 環 境 づ く り を す る こ と が 大 事。 例 え ば 聴 覚・ 視 覚 障 害 者、 車 い す 利 用 者 を 安 全 に 誘 導 す る に は ど う し た ら い い か と、 支 援 す る 側 も さ れ る 側 も 同 じ生活者としてともに学んでいくべきだと思う。 災害に強い地域へ   「同じ生活者」として   災害時に、自力での避難が難しい高齢者、障害者たちをど う支援していくかが大きな課題になっている。 防災対策には、 さまざまな立場からの視点が求められている。 山崎栄   地域防災の第一歩は災害に対するイメージを持つこ と。 そ の 手 助 け を す る の が 行 政 や マ ス コ ミ だ と 思 う。 行 政 や マ ス コ ミ は、 で は、 ど う 行 動 し て、 地 域 の 課 題 を ど う 解 決 し て い け ば い い か と い う と こ ろ ま で 住 民 に 示 し て いくべきだ。 横田   防災への取り組みが遅れている部分が目立つが、じわ じ わ と 進 ん で き て も い る。 地 域 の 人 々 は 危 機 感 を 持 つ こ と が 大 切。 行 政 に は、 地 域 が 活 動 し て い く た め に は 何 が 必要なのかと考えて対策を進めてほしい。 小田   災害による被害は、高齢者や古い木造家屋の密集地な ど、 社 会 の 弱 い 部 分 に 集 中 す る。 災 害 を 通 じ て、 社 会 の さ ま ざ ま な ひ ず み が 見 え て き た。 社 会 の 在 り 方 そ の も の が 問 わ れ て い る と い え る。 防 災 は わ た し た ち の 暮 ら し を 取 り 巻 く 問 題 を 考 え る こ と で あ り、 暮 ら し や 地 域 を 見 つ め直すことにほかならないと思う。 山崎登   地震や台風の発生は防げないが、わたしたちの努力 で 被 害 を 減 ら す こ と は で き る。 そ の 要 が 地 域 の 防 災 力 を

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題といえる。   行 政 が 自 助、 共 助 を 強 調 し 過 ぎ る と、 責任転嫁に聞こえる。自分たちの 命は自分たちで守れと言うなら、 持っ ている情報をすべて出し、 どう支援す るかもっと考えないといけない。 耐震 補強では補助制度をつくり、 相談窓口 を設けて業者を紹介するとか、 行政に できることはいくつもある。 地域任せ にせず、 血の通った支援をしないと地 域の取り組みは進まない。   も う 一 つ は、 企 業 の 地 域 貢 献。 消 防 団 の 構 成 は 従 来、 一 次 産 業、 自 営 業 な ど が 主 だ っ た が、 今 は 約 七 割 が サ ラ リ ー マ ン。 企 業 が 防 災 面 で ど ん な 役 割 を 果 た す か、 社 会 的 な 責 任 が 問 わ れ て い る。 企 業 が 地 域 の 防 災 活 動 に か か わ る よ う に な れ ば、 社 員 は 変 わ る。 マ ン シ ョ ン に 住 む 若 い 人 も 参加するようになるのではないか。   災 害 に よ る 被 害 を 少 な く す る に は 「 地 域 の 防 災 力 」 が 大 切。 行 政 が 避 難 勧 告、 避 難 指 示 の 情 報 を 防 災 無 線 で 伝 え る よ り、 近 所 で「 逃 げ よ う 」 と 呼 び 掛 け 合 う 方 が 行 動 に つ な が る。 生 き 埋 め に な っ た 人 を 救 助 す る ときと同様に避難も地域の力だ。   住 宅 の 耐 震 化 も、 顔 見 知 り の 大 工 さ ん が「 お ば あ ち ゃ ん、 筋 交 い 作 っ て や る か ら 」 と 日 常 の 付 き 合 い の 中 で 呼 び 掛 け れ ば、 「 い く ら 掛 か る の 」 と 話 が 進 む。 地 域 が 一 体 と な っ た 耐 震 補 強 を し な い と、 災 害 に 強 い ま ち と は な ら な い。 い ろ ん な 意 味 で、 地 域 の 防 災 力 を 高 め る こ と が 最 大 の 課 行政は血の通った支援を 社会的責任問われる企業 ●山 崎 登 解 説 委 員 イ ン タ ビ ュ ー 高 め る こ と だ。 防 災 の た め だ け の 組 織 を 維 持 す る こ と は 難 し い。 祭 り や 運 動 会 を ど う す る か、 そ ん な 地 域 の 取 り 組 み の 中 に 防 災 の 視 点 を ち ょ っ と 加 え、 地 道 に 防 災 に 取 り組むことが大切だ。 会場からも議論に参加。防災について共通認識を深めた 助け合いが第一歩   耐震化の協議も ● 会 場 の 声 ケ ー シ ョ ン が 取 れ な い。 災 害 に 備 え て 障 害 者 で あ る こ と を 知 っ て も ら う 準備が必要」 と説明。 「避難訓練でも、 こ こ に い ま す よ、 と 手 を 挙 げ る 感 じ で 地 域 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 取 っ ていけたら」と話した。   シ ン ポ ジ ウ ム に は 約 百 人 が 参 加、 議 論 に 加 わ っ た。 大 分 市 の マ ン シ ョ ン に 住 む 男 性 は「 い ざ と い う と き、 ま ず は 隣 人 が 頼 り。 助 け 合 い が 命 と 財 産 を 守 る 第 一 歩 」 と コ ミ ュ ニ テ ィ ー の 大 切 さ を 強 調。 マ ン シ ョ ン 管 理 士 の 男 性 は「 大 分 市 に は 約 四 百 三 十 棟・ 約 一 万 九 千 戸 の マ ン シ ョ ン が あ り、 約 五 万 五 千 人 が 暮 ら し て い る。 建 物 の 耐 震 化 や、 そ れ に 必 要 な 費 用 な ど を 話 し 合 う こ と も コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の き っ か け に し て ほしい」と提案した。   視 覚 障 害 者 の 男 性 は「 自 主 防 災 組 織 や 地 域 イ ベ ン ト な ど へ の 参 加 が 難 し く、 近 隣 住 民 と 十 分 に コ ミ ュ ニ

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■オオイタデジタルブックとは  オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と学校法人別府 大学が、大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げた インターネット活用プロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一 環です。  NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要 な、さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します。そして、 読者からの指摘・追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発 展を図っていきたいと願っています。情報があれば、ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください。  NAN-NAN では、この「明日を守る~防災立県めざして」以外 にもデジタルブック等をホームページで公開しています。イン ターネットに接続のうえ下のボタンをクリックすると、ホーム ページが立ち上がります。まずは、クリック!!! 別 府 大 学 デジタル版「明日を守る~防災立県めざして」 第 45 回 編集     大分合同新聞社 初出掲載媒体 大分合同新聞(2006 年1月 1 日~ 2007 年 3 月 5 日) 《デジタル版》 2012 年 6 月 8 日初版発行 編集 大分合同新聞社 制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部/川村研究室 発行 NAN-NAN 事務局    (〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 企画調査部内) ●デジタル版「明日を守る」について  「明日を守る」は、大分合同新聞社が創刊 120 周年記念事 業として大分大学と立ち上げた共同プロジェクトの一環で、 2006 年1月から翌3月まで、同紙朝刊に掲載した連載記事。 今回、デジタルブックとして再構成し、公開する。登場人物 の年齢をはじめ文中の記述内容は、新聞連載時のもの。 2011 年8月5日           NAN-NAN 事務局 大分合同新聞社

参照

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