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eヘルス・コンシューマーの登場

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        5198-122 高尾 祥代

インターネット医療について

はじめに 1、 eへルス・コンシューマーの登場 ・ eヘルス・コンシューマー ・ e ヘルスコンシューマーとドクターの姿 2、 最先端の e ヘルス ・ 良質なウェブサイトとは ・ 希望を反映したサイト     3、インターネット医療での可能性 ・ 日本の医療サイト ・ 遠隔医療 ・ 電子カルテ 4、インターネット医療の今後と課題 ・ 医療サイトの課題 ・ インターネット医療はコストダウンになるのか     おわりに  はじめに 今まで医療の領域において、患者は、病気や治療法に関して専門的な知識を持ち得なか った。対して、医療者は専門教育と経験による豊富な情報、知識を元に患者の全権を受け、 あるべき治療を施す。これが医療の基本であった。このような関係の中では、患者が当事者 として自分の発揮するパワーには限界があった。自分の持てる情報量は、医療者に比べてど んなに主体的になろうとも圧倒的な格差があったからだ。 必要な時に最新の情報を効率的にアクセスできるのは、インターネットを中心としたI Tである。これを利用して患者は、自分の家から、会社からいつでも病気や薬に関する最新 の情報を活用できるようになったため、昔からある医療の基本が崩れ去ろうとしているのだ。 医者と患者が病気の治療ケアをテーマに、対等に向き合うここに新たな医療の形がはじまろ うとしているのである。 英語でヘルス(Health)、即ちヘルスケアは、医療(Medical)から、保険まで幅広い言葉であ る。eコマースは、インターネットなどのコンピューターネットワークを使って、企業が製 品やサービスを提供し、消費者が直接これらを購入し、代金はオンラインで銀行口座から引 き落としすることを指す。英語では患者をペイシェント(patient)というが、今は消費者 という意味のコンシューマー(consumer)と呼ぶ。医療というサービスを消費する人のこと

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である。彼らは病院に行く前に医学ライブラリーで自分の症状を調べ、または、掲示板やチ ャットで、他の患者と意見、情報を交換し、薬の効用などを調べる。以前までは専門家でな ければ知る事もなかった病気の治療方法や治療についての薬の効果などを引き出す術を心 得ている。この延長からeヘルスを解釈すると、インターネットなどのコンピューターネッ トワークを使って病気や治療、健康に関する情報やサービス、製品を患者や一般消費者に直 接提供する事をはじめ、電子カルテ、遠隔医療など IT を活用した医療を指す。 わが国の医療環境においては、戦後世界の先進各国の社会保障システムを追求し、今日 の日本の医療を供給してきた。以来四〇年がたった今、経済の低迷、労働市場の悪化など、 これまでの日本の社会保障を支えてきた医療の供給体制が揺らぎ始めている。少子高齢化の 進行により、医療保険に占める高齢者の医療負担が増え、医療保険制度の財政基盤が危うく なってきた事が大きな原因である。 今後の医療制度のあり方を考える上で、海外での医療の IT 化の中でどのような変革がな されているか、e へルス革命が先行するアメリカの状況を見る事にする。 1、 e へルスコンシューマーの登場 −eヘルスコンシューマー− 家が、友人が,恋人が大きな病気にかかった時自分には何ができるだろうか。必死に励ま し、元の健康状態に戻ってほしいと願うのはその立場に置かれている全ての人たちの願いで ある。情報の宝庫インターネットは場所、時間を気にせずいつでも知識を得られる手段であ る。ここで、病気についての知識を得る。どのような病気で、どんな薬が効くのかなどアク セスするだけで簡単に得られる。病気という同じ状況の人たちと掲示板でコミュニケーショ ンをとり,治療法,ドクター,薬,アフターケアの情報を得られ、また、精神的に支えられ る仲間を得る。このようにホームページを訪れた人は、eヘルスコンシューマーでありここ に誕生するのである。 eビジネスの市場分析で定評のあるデロイット・コンサルティング&タッチ社は200 0年春に発表した「e ヘルスコンシューマーの出現」という研究論文では、アメリカにおいて e ヘルスコンシューマが発展する要因として、「①インターネットの接続性、②経済的負担、 社会構造の変化、④医療の質の要求、⑤法律環境の整備」(*1)の五つを挙げている。 ① インターネットの接続性 アメリカのホスト数は2000年1月で5316万台に達し、全世界の7240万台の 73,4%を占めている。2000年には1億400万人を超え、普及率は56%に達して いる。1999年の調査によると、インターネットを利用している成人9700万人のうち 72%にあたる7000万人が過去1年間にヘルスケア情報を利用していたという事が報 告されている。 eヘルスコンシューマーがヘルスケア情報へ容易にアクセスできるのには、ヘルスケア に特化したトータルサイトの存在が役立っている事があげられる。サービス内容は様々であ るが、利用者向けに一方向で情報を提供する方法、双方向性を生かして、患者と医師、患者 と患者などの間でのコミュニケーションの手段を提供している。個人の健康データをインタ ーネット上に保存して、患者自身が管理し、医師と共有し合おうというサービスも開始され ている。 ② 経済的負担 アメリカにおける国民の医療費は突出している。一人あたりの年間医療費は、1997 年度、日本円換算で49万5000円に達し、世界一だ。アメリカと日本は医療制度が全く 異なる。アメリカには日本のような国民が誰しも加入する保険制度がない。高齢者や妊婦、 一部の低所得者を除き多くの国民は任意で民間の保険会社と契約し、自分にあったヘルスプ ランを選択購入し、医療を受けられる。代表的な保険プランである、HMO(ヘルスケア・ メンテナンス・オーガニゼーション)は比較的安価で基本的な医療サービスが受けられる。 このHMOのコストが1998年から1999年で7,5%アップした。多くは勤務先の企 業が保険会社と契約しているので、毎年増加する従業員の保険費補助の負担を軽くするため

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費用の安い保険プランの変更を迫っているようだ。HMOの基本的な仕組みは加入者から受 け取った保険料から、医師や薬剤処方などに支払ったコストを差し引いたものが保険会社の 取り分となる。保険会社が利益を優先するとコスト抑制に走る結果、提供される医療の質が 低下してしまうのである。1999年の調査では42%の人が不満をもっている。  このように、多くのコンシューマーは雇用環境の変化にともない経済的負担から、自分や 家族の健康を自分で守る必要がある。そのため、病気の予防、健康維持に役立つ情報を利用し、 有効な治療ケアや薬剤に関する情報を収集する事に熱心になってきている。また、契約する 保険会社のヘルスプランの中身とコストを比較するニーズもでてきている。 ③ 社会構造の変化 社会の情報化と共に自営で仕事をする人たちが増えた。アメリカビジネス協会によると 自宅で仕事をする自営業の人たちが一日に3000人くらい新たに生まれている、その年間 の増加率は15%から20%に上がっているといわれる。彼らは、職場の保険に入る事がな く、全て自己負担で保険に加入しなければならない。自分に合ったヘルスケアプランを契約 するために慎重に保険会社の情報を得ようとする。その手段にインターネットはまさに最適 である。 また、ベビーブーム世代の高齢化があげられる。年齢的には37歳から56歳くらいの 人たちで彼らが仕事をリタイアする時期にヘルスケアの需要が増える。この人たちはまさに、 eヘルスのビジネスのターゲットとしてとらえられている。 これに対し、医療の供給側は必ずしも要求に応えられていないのが現状である。契約し たヘルスケアプランの指定する、かかりつけ医の医師に診てもらうことになるが、緊急の時 以外は予約がないと診察してもらえない。こうした不便さから、サービスの悪い今までの医 療に頼らずインターネットで専門的な情報、知識を得て普段から病気にかからないよう、健 康の自己管理に努める方向に向いていくのである。 ④ 質の高い医療の要求 医療技術の水準が高くインフォームド・コンセントの進んだアメリカでは患者の医療に 対する満足度は全体的に低くはない。だが、それでもなおより質のよい医療を求める傾向に ある。質よりもコストを抑制するヘルスケアプログラムによる医療には厳しい評価がなされ ている。 標準の教育を受け、医学知識に関心のある e へルスコンシューマーにはさらにこの要求 は強くなり、薬の効用、ヘルスケアプランの内容には自分で考え選択する能力を持っている。 情報公開の進むアメリカでは、各病気の情報、知識を得やすい。手段としては日常的に使う、 インターネットサイトでの情報や掲示板、または政府や企業、病院の運営するサイトなどが ある。 ⑤ 法律環境の整備 インターネット全体の領域の問題としてプライバシーの保護という問題がまずのぼる。 1996年アメリカでは「医療保険の携高性と責任に関する法律」(Health Insurance Portability and Accountability Act)と呼ばれる個人のプライバシー保護とセキュリティ対 策に対し法的規制がかけられる事になった。 eヘルスの普及と共に従来は想定しない新しい問題が持ち上がるかもしれないが、患者 や国民の権利を保護する法的環境を整えていく事で e ヘルスの発展が正しい方向に向かう ことを期待されている。 ―eヘルスコンシューマーとドクターの姿−  ここでは、eヘルスコンシューマの具体的な姿に注目して紹介したい。平均年齢は、30 歳から49歳が中心で標準的な教育を受け、健康に関心があり、コンピューター操作に慣れ た人である。利用する人は男性よりも女性の方が多い。現在病気にかかっている人だけでは なく、自分自身を健康であると認識し維持しようと考えている人や、慢性の病気を抱える人、 病気の人を支える家族、サポート団体もいる。健康状態においては人様々である。「サイバ

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ーダイアログ社の調査によると、インターネットのヘルスケアサイトを訪ねた後、回答者の 21%は医師の処方箋に信頼感を持ち、30%は診断を受けるためにドクターを訪問し、4 2%は治療法を決断した、また43%はドクターの処方箋の質問をしたと答えている。さら に興味深いのは、彼らの58%が近くの病院からオンラインで情報やサービスが提供される ことを期待していこと、62%が自分のドクター自身が提供するウェブサイトを利用する事 に関心を持っている事が報告されている」(*2)と、あるように e へルスコンシューマー はオンラインで他のヘルスケアプランと比較し自分に合ったヘルスケアと契約したいと思 っている。また、自分の病気を専門的に扱っている医師を訪れ、医師の評価を気にしている。 さらに、関心のある病気の知識、それにあわせたコンテンツがそろった、インターネット上 で自分の健康管理ができるサイト、e メールでの医師との医療相談を望む声が高い。このよ うな e へルスコンシューマーは新しいコンピューターの消費者として考えられている。  アメリカの保険制度では、ヘルスプランで指定された医師がファミリードクターといった 存在になる。完全に予約制なので大病院などにある何時間も待たされて診察は数分といった ようなことはない。しかし、じっくりと話をしていうほどの時間はなく、またファミリード クターは、日常の健康の全般的なことを診てもらうという形で契約するので、全ての病気に おいて知識が完全にあるわけではない。そういう点からいつでもアクセスできる医療情報サ イトの方が時間を気にせず情報を得る事ができる。トータルサイトでは掲示板やチャット、 メーリングサービスもあるのでこのような、同じ立場の人同士、話ができ参考になる。  このように、時間を選ばず自分の利用したい時に的確の情報を得る事ができるトータルサ イトの存在は時に、不便さを感じるファミリードクターよりも不安な気持ちを解消してくれ るインターネットに魅力を感じる事もある。  医師はこのようなeヘルスコンシューマーの存在をどう思っているのだろうか。最初にも 述べたように、医師と患者は圧倒的な格差のある関係のなかで、前者は昔から信頼と権威を 築いてきた。医師はコンシューマーたちが情報と専門的な知識を持ち始めると、プロである 仕事をこなして今までの築いてきたものを崩し、コンシューマーから信用がなくなってしま うのではないか、また、インフォームド・コンセントが進んでいるが、減らない医療事故の 多さが、医師の絶大なる力が消え去るのではないかと恐れているようだ。実際の医療現場に おいて、患者が医師を選ぶという事は医師との間で、治療を提供しこれを受けるという一つ の持続的契約を結ぶという事である。医療というものが一方的に与えたり受けたりする物で はなく、相互の義務と責任を伴う中で共同して行われるものであることを基本的に認識して いかなければならないのである。 「サイバーダイアログ社の1999年の調査では、自分の健康は自分で責任を持って維持す べきだとする人の割合が、75%にも上がっているという。また、デロイット&タッチ社に よると、1997年の時点で過去2年間の間に医師を変えた人が25%もおり、また旧来の 医療の満足できず代替医療にトライした人が、1990年の6000万人から8000万人 に増えてきた事も報告されている。」(*3)とあるように、コンシューマーも自分の健康管 理は本当に信頼できる医師と、納得いく方法でないと治療法を決定できなくなっている。情 報公開で色々な知識と情報が得られる分、それを提供する側もその人に合わせたプランを提 供しなければコンシューマーが離れていってしまう。その上このような報告もある。「オン ラインユーザーの42%が、病院の提供する有用なサイトを利用したいと思っているものの 実際に利用しできているのは、8%にしか上がっていない。また、ドクターのサイトについ ては、50%の人が利用したいと思いつつ、実際に利用できているのは4%しかいないこと が2000年1月のサイバーダイアログ社の調査で示されている。また医療機関がウェブサ イトを開設している割合はまだ三分の一しかなく、医師が患者と日常的に e メールでコミュ ニケーションを行っている割合も3%しかないことが、1999年5月のヘルシオン社の調 査で報告されている。このeメールの利用率は、医療関係者の組織Medemが2000年 1月に行った調査ではまで増えているが、まだ低いようだ。」(*4)とある。医療現場に インターネット、e メールが設置されているのもかかわらず、活用されず、まだまだ、コン

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シューマー(患者)の要求に応えられていないのが現状である。  弱者の立場であった、患者が好きな時に様々な場所で、自分で自身の身体の情報、知識を 得る手段を見出し活用していきたいという声がある中で、昔からの信頼、権威に縛られてい る医師との関係を少しでも対等な関係になるように、たくさんの努力、意識改革がお互いに 必要である。課題もたくさんある中で少しでも改善し前進していきたい。 2、最先端の e ヘルス  −良質なウェブサイトとは−  ここでは e ヘルスの主役ともいうべき、ウェブサイトについて紹介したい。カリフォルニ アヘルス基金(CHCF)は、アメリカ最大手のヘルスプラン組織であるブルークロス・カリ フォルニアが、非営利団体から営利企業であるウェルポイント・ヘルス・ネットワークに変 わった時に創設された独立慈善団体だ。ここが2000年5月に発表した「ヘルスケアにお けるインターネットの未来(The Future of Internet in Health Care)」では、e ヘルスコ ンシューマー向けに製作した、ホームページの情報やサービスについての、「4つの C」に ついて述べている。  「4つの C」とは、コンテンツ(content)、コミュニティ(community)、コマース(commerce)、 ケア(care)の4つである。  まず一つ目のコンテンツについては、提供者がサイトの利用者に合わせた情報を公開しな ければならない。性別、年齢、経済的状況、健康状態によってそのコンテンツの価値が人そ れぞれ違ってくるのである。また、コンシューマーは患者用に制限された情報よりも、もっ と専門的で医師が見るのと同じくらいのレベルの高い情報を求めている。単に、詳しく知り たいだけでなく情報が深い方が信頼性は高く正確であると評価されるのである。各サイトは 工夫を凝らし他にはない情報や、信頼性を高めようと研究している。この質の良さをどこま で上げられるかで先が左右されてくるのである。  二つ目にあげられたコミュニティについてである。コミュニティには、掲示板、チャット、 電子会議室などで出会った人たちと会話し情報交換する場である。ヘルスケアページのコン シューマーの中には、現在健康でこれを維持していこうという人、初めてその病気にかかっ てしまった人、慢性的な病気を抱えている人に大きく分類される。さらには、医者、家族、 サポートグループなどたくさんの立場の人がいる。これらの人がその場で気軽にコミュニケ ーションが取れる。また、患者同士のコミュニケーションの中に医者も加わって色々なアド バイスをする一面も見る。いくつものコミュニケーションラインができるので、独自性のあ るサービス提供を利用者は望んでいるのである。  三つ目はコマースである。ここでわが国との違いは日常的にインターネットで処方箋薬が 購入されている事である。アメリカでは自由に処方箋薬の広告をインターネット上に出して もよい認められているのである。たくさんの人がその広告を見て医師に相談しているようだ。 処方箋をネット上で発注、発送依頼もできるようになっている。また、曜日を決めてセール も行ったりする。しかし、やはり自分の身体のことなので薬選びには慎重になるようで、名 前にブランド力があるサイトが好まれる。手元に特に薬の情報がない場合、名前のあるほう が利用されやすい。アメリカのドクターは一年間に処方箋を25億枚書くといわれている。 オンライン薬局は少しでも多くのこの処方箋の一部を自店舗で販売したいと狙っているが、 最も確実な方法は実際にある薬剤店と提携を結ぶ事だろう。ただ、処方箋薬を売るだけでな く、効果、副作用、患者の疾患にあわせた医療情報などを提供し患者のニーズに応えようと している。  コマースが発展していくには課題もあり、CHCFの「ヘルスケアにおけるインターネッ トの未来」のレポートには、「①利便性(簡単な手続きで注文できる)、②輸送コスト(場所 によっては運送料が高い)、③処方箋にともなうプライバシー保護(医師からだされた処方 箋を途中誰に見られるか分らない)、④薬の品質保証(古くなった薬を送られる可能性があ る)、⑤デリバリー日数(現在オンラインのオーだでは受け取りまでに一週間かかる)」とあ

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る。この課題をクリアしてさらに向上していかなければならない。  さいごの C であるケアは、慢性的な疾患を抱える人たちは診断された病気についての情報 を自分で手に入れ、治療方法や受けた診断に疑問を感じたら従来はセカンドオピニオンを利 用したいのだが、いつでもすぐに利用できるわけではない。セカンドオピニオンとは、第三 者に症状や薬の効用などの意見を求める事で、「アメリカ人の30%は病気の診断を受けた 時や、症状が変った時には、オンラインでセカンドオピニオンを得たいと思っている。」(* 5)とあるように、自分で管理していかなければならないという流れの中で、まず医師の診 察に疑問を感じたなら、身近で簡単に相談できる手段がオンライン上にあればもっと利用者 が増えるに違いないだろう。また、この人たちには自分で施す治療方法を得る為の手段とし て、オンラインのケアプログラムに注目している。「慢性疾患を持つ患者の6%は、自分また は家族の病気をマネージメントするために、すでに提供されているケアプログラムを利用し ているという。」(*6)またこの人たちや女性特有の悩みを持つ人たちには自分の身体を自 分で管理するという意識を持ち、その情報を期待しているのである。  自分の体を管理するというニーズに応え、ウェブサイトで健康手帳のような個人情報を保 存できるページもある。身長、体重、血圧の変化、医師の診断記録、薬の服用などの記録が できるようになっている。また医師に相談したいことがあれば e メールですぐにメッセージ が送れるようになっている。 これら4つのCは単体ではなく組み合わされて提供されている。またそのサイトにとどま らず、外部のサイトとリンクを張って相互利用されるようになっている。これから、利用者 のニーズによってこのサイトは、複合と多様化を繰り返し、さらによりよいサイトに成長し ていくのである。4つのCを含むサイトはさらに利用者のニーズに応えられる環境が整って いるのでさらに伸びるチャンスがある。 −希望を反映したサイト− WebMDは、1998年から、ドクターとコンシューマー向けにインターネットでの 情報やサービスの提供を行ってきた会社である。現在は企業間電子商取引および消費者向け の電子商取引のサービスを提供する Health eon 社と合併し Health eon/WebMD社とな った。 WebMDのサイトはヘルスケアに関する利害関係者を一つの場所に集め、eヘルスの 主役である患者と医者によりよい情報と環境を提供していく事で発生したビジネスチャン スを逃がさないようにしているのである。  全員共通のトップページからは、コンシューマー、フィジシャン、オフィスサービス、ヘ ルスティチャ−、ヘルシーテレビジョンの、五つの入り口があり、その提供対象者が、一般 利用者、医療従事者、病院関係者であるかなどによって分けられている。コンシューマー向 けのトップ−ページには、右サイドバーで、メディカル・インフォメーション、ヘルス&ウ ェルネス、メンバーサービス、マイ・ヘルスケアの大きなメニューがあり、全部で24項目 のサブメニューがある。  ここで先ほど挙げた4つのCにあてはまってあるか見ていきたい。まず1つ目のコンテン ツ。このページの利用者にまず目に触れるのは、ヘルスケア関連のニュースの見出しが、日 替わりで見られることである。これらの記事は、ヘルスケアの最新の記事と、解説を載せる コーナーで正式に掲載されている情報で、テーマ−は、アレルギー、不眠症、エイズから、 ガンまで全部で65種もある。それぞれのページから病気ごとの疾患の説明、治療法、セル フケアなどの細かい記事を読んでいく事ができ、関連ページへのリンクも張っている。加え て利用度が高いのは、薬に関しての情報で処方箋薬などのデータベースにアクセスでき、効 果、用法、副作用についての情報も得られる。  続いて、コミュニティイについてだ。メンバーコミュニティというサブメニューの中に、 たくさんのディスカッション・ボードがあり、利用者を細かく分けるため、新規患者、家族、 長期ケア患者などその数、全部で112もある。女性のボードだけでも9種もあり、女性の

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利用者が多いことを反映してのことだ。このように、顔が見えなくても病気という共通のテ ーマで同じ立場の人同士が交流し、精神的な支え合いがなされている。しかし、マナー違反 や思いやりのない言動で場の雰囲気が崩れてしまうのも問題である。 WebMDではこうした事態をできるだけ避けるために、コミュニティ・モデレーター や、ライブイベント・プロデューサーと呼ばれるスタッフがいる。彼らは24時間休みなく モニターし、何か問題が発生したらすぐに対処できるようにしている。記事の二重投稿を防 ぎ、場にふさわしくない書き込みがあればそれを削除できる権限を有する。しかし、彼らは 監視するためだけにいるのではなく、ボードの司会を努めたりメンバーにニュースレターと してメールを配信したりしている。個人的な医療アドバイス、診断やケア方法などについて は行ってはならない。あくまでもガイド的な役割で、個人的なメールをメンバーに送っては いけないし、特定な医師を紹介する事も認められていない。ガイドとしての役割をきちんと 果たす事で信頼性を高めようとしているのである。 三つ目のコマースについてみると、WebMD事態が利益を得ようと積極的でない。W ebMD内で広告を出していう企業にリンクを張り、そのリンク先で購入してもらおうとい う意図が見える。ヘルスケア情報を提供、公開し利用者に情報そのものを利用しもらい、物 やサービスを購入利用するコマースとの区別をした配慮が見られる。バナ−広告は少なくW ebMDがその報酬だけで成り立っているのではなく別のところにあることを示している。 最後にケアについてだが、マイへルス・レコードというサービスがあり、自身や家族の データを記録、保存しオンライン上の健康手帳を作る事ができるページを提供している。自 分の診察記録、薬の服用記録、など自分の健康への取り組みを自分で記録する事によって自 分の生活を見つめなおす機会にもなる。また、セルフケア・アドバイザーというメニューも 便利である。一般的な病気について概略を説明し治療法、注意すべき事などの情報を提供す るサービスである。喘息や糖尿病、脳卒中のような急性的な病気までのアドバイスがもらえ る。しかし個人に合わせたアドバイスではなく、しっかりとした治療を受けるかという判断 材料に使用するよう最初に断っている。  さらに、ヘルスeツールというサービスで家族の健康管理を気遣う主婦や、フィット ネスやスポーツで健康維持をしていきたいと思っているコンシューマーには最適メニュー である。その内容は体重を入れてランニング、自転車、ウォーキングなどの運動の種類と時 間を指定すると消費するカロリーが自動的に算出される。心臓に負担をかけない心拍数を算 出するサービス、先ほど述べたマイへルス・レコードの記録を元にこの先の病気になる確率 を出すサービス、赤ん坊の生まれた家族には誕生から6歳までに受ける予防接種の時期スケ ジュールを作ってくれるサービスもある。 CHCFの報告書には、今後のeヘルスの発展が5年間の中で大きく二段階に分かれて いることを示唆している。第一段階では2000年から2002年でこの時期はヘルスケア サイトがベンチャー企業と提携し、新規参入,複合と淘汰を繰り返し競争の時代に突入する。 第二段階は、2003年から2005年までで、コンシューマーに情報提供するだけでなく さらに要求に応えたサービスの向上が望める。オンラインで処方箋薬をオーダーでき,保険 プランを切り替えたりなど、重要な手続きをオンライン上でできたり,購入したりでき、ま た,コミュニティにおいても、さらに密接にコミュニケーションを図る事ができるようにサ イトの質を向上させる努力を怠らない。 このようにアメリカの e ヘルスは明らかに、患者の生活の一部になろうとしている。病気 に関する情報を求め、サービスが付け加えられサイトが変化していくのもコンシューマーが 希望した結果であり、インターネットのへルスケアサイトを利用することに価値を置いての ことである。このeヘルスは着実に新しい医療としての頭角を現しつつある。 3、インタ−ネット医療の可能性  ここから現在の日本での医療の可能性を考えていきたい。その前に日本におけるインター ネット医療の現状について見ていきたい。

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−日本の医療サイト−  ウェブ・エムディ・ジャパン(Web MD Japan)は2章でも紹介した米国最大のヘルスケア ポータルとされる、米 Web MD とソフトバンク・メディア・アンド・マーケティング株気会 社の合弁会社として2000年7月に設立された医師向け総合ポータルサイトである。 このサイトは「医師が医療に専念できる最良の環境を提供する」ことを目指し専門的でレ ベルの高い情報を提供している。その中には、①研究支援サービス、②日常診療サービス、 ③病院経営サービス、④生活支援サービスがある。 ①の研究支援サービス、では、医学情報や医療文献検索、国内の学会開催情報などが提 供されている。次官のかかる作業がスピーディーに効率よく進められるようになった。医学 情報では数十種もの病気に関する解説が見られる。世界的な医療データベースであるMED LINEの文献検索サービスも受けられる。 ②の日常診療サービスでは、患者からの質問や本当の悩みを理解する事で日常の診断で 患者とのよりよい関係づくりを目指す。例えば一般メディアの医学関連ニュースの掲載や、 イラストつきでわかりやすく自分の担当する患者に疾患の解説用資料の提供などがある。 ③の病院経営サービスその名のとおり病院の経営改善をはかるためや、診療、治療の質向 上のため医療コンサルティングの提供などがある。 ④、生活支援サービスでは医師向けサイトということで医療求人情報、各種オンラインシ ョッピングができる。 so-net M3(ソネットエムスリー株式会社)は、ソニー・コミュニケーション・ネットワー ク株式会社の事業展開の中で、医療ヘルスケア分野において新しい、強いサービス企画、運 営を目指した2000年9月に設立された会社である。ウェブエムディ・ジャパンと、so-net M3 は2001年12月1日、メディカルインターネット分野での事業統合が行われた。 まずこのサイトは、協賛企業が多い事に驚かされる。数は72社に及び出版社、薬剤企 業など情報の提供に一役かっている。また、最も力を入れ、日本最大級といわれる「MR 君」 というサービスがある。医療関係者専用サイト「Medical Profession」の中の「My Medipro」 において運用されている。医師と MR(医療情報担当者)の情報交換をインターネット上でサ ポートするシステムである。現在、病院側の MR に対する訪問規制が厳しくなり MR と医師と のコミュニケーションは減少してきており、世界的にも初めてのシステムである。  大手薬品会社である、ファイザー製薬、日本ロシュなどのメーカーを中心にサービスは拡 大してきている。「My Medipro」を訪れた医師が登録された MR とコミュニケーションがとれ、 情報を得る事ができる。情報が回らない事に不便さを感じていた医師は、コンタクトや、ア ポイントメント、情報の入手が簡単になる。  また、受けられるサービスが多種にわたる。症状、疾患、薬、Web 版医学辞典、さらには 医療経営の情報など。内科、歯科、皮膚科の各分野の辞典もある。これらは月額、200円か ら4000円で受けられ、時間制のものもある。このような単体サービスをパックにして提 供するパッケージサービスもある。3種類あり、料金によって受けられるサービスが変って くる。また医療経営情報専門で提供されているパッケージもある。医師向けにこれだけのサ ービスが受けられる事は、患者を診断するだけでなくこれからの病院についても考えられる サービスである。  続いて、一般向けのページだがここには、「元気で VIVRE 家庭の医学」というページが ある。ここでは分りやすく、病気の情報を簡単に得る事を身近に感じてもらおうという配慮 が見られる。様々なコンテンツがある。病気が調べられる図書館では目次は18項もあり消 化器科、呼吸器科などそれぞれの分野で起こりうる病気を答えている医師の名前がでており、 症状、ケア方などが掲載されている。ここでも有料で情報を提供するサービスがあり、健康 ニュース、薬剤、医師の紹介、ダイエットなどの情報が月額で会員になればすぐに得られる。 その各情報でも数個に分けられ、とても見やすく楽しめる内容になっている。  この大手2社が事業統合され「MR 君」のソネット M3と米国最大の医療サイトの情報を得 られるウェブエムディ・ジャパンが統合することで、各サイトが相互利用できる事によって、

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利用者の増大が見込める。医師がインターネットにふれ、患者にも勧める事ができたら、患 者にもインターネットで自分の病気を調べるという事が、普通で治療を受ける事の第一歩に なるのである。さらに大規模な医療サイトになることは間違いなく大きな期待がかかる。 −遠隔医療− 遠隔医療とはその国によっても人によっても少し違ってくる。厚生省の遠隔医療研究班 によると、遠隔医療を「映像を含む患者情報を伝達に基づいて遠隔地から診断・指示などの医 療行為及び医療に関連した行為を行うこと」と定義してある。 日本では遠隔医療は25年以上の歴史があり1971年、和歌山の山間の過疎地で行わ れた。遠隔医療システムは大きく2つに分けられ医療機関同士で行うものと、医療機関と患 者宅で行なわれるものに別けられている。 最初に挙げた医療機関同士で行うものには、テレラジオロジー、テレパソロジーとよばれ るものがある。テレラジオロジーは放射線関係の伝送による遠隔診断である。医師と医師で 医療上のために使用されることが多い。X 線写真上の微妙な影を異常であるかという相談す るためなどである。テレパソロジーは、病理や疾患部の画像転送するシステムである。イン ターネットを利用し手軽にデジタル画像を送って相談する事ができる。インターネットを利 用する事で多数の人や、特定の人に送って意見を求めたりできる。内科、眼科、皮膚科、精 神科などで、患者を交えての治療相談が行われている。また、国際映像回線の普及により海 外の医療機関との遠隔医療も日常になり、これがきっかけで実際に海外の病院に実際に入院 した患者もいる。 後者である、遠隔医療については、テレケアと呼ばれるテレビ電話などで施される医療 である。医療機関と家庭を結ぶケースが多い。病院に行かずに診察を受け、病院での治療が 必要か、在宅で薬などを使い治療できるかを判断できる。適切な判断ができ患者にも医師に も有効なシステムである。高齢者の在宅介護をはじめ、内科の慢性疾患、リハビリテーショ ンの指導、妊産婦の管理などに適している。 福岡の病院と長崎県の対馬の病院との間でも画像を送って狭心症の手術を行う態勢がと られている。両者を ISDN 回線で結び、対馬から送られて来る画像を福岡にいる医師が画 像を見ながら指示し、それに従って現地の医師が執刀するのである。これまで狭心症の急患 が対馬で出ると自衛隊のヘリコプターで搬送するか、病状の安定を転院させていたのだが、 対馬と福岡の病院では死亡率が4倍も開いていた。このインターネットを使った遠隔医療で 地域の医療格差を埋めることが期待されている。 しかし、遠隔医療にインターネットを導入する事によって問題も生じる。現在、画像転 送での医療、先ほどにも挙げた、テレラジオロジー、テレパソロジーは、日本でも実用化され ていて、医療として認められている。しかし、医師が診察する時は対面診察が原則である。 (医師法第20条)平成9年12月に厚生省から慢性的な疾患、症状が安定している場合、 また離島や僻地で直接医師の対面診察が困難な場合は医師法には触れないとの通知が出さ れた。しかしまだまだ、テレケアの本格的な実用には遠いように思われる。 いかに新しい医療で、質の工場が見られるのかを考えていかなければならない。 −電子カルテ−  カルテには患者の症状、医療関係者の意見、診断結果、薬の処方など、その患者に関 わる事全てを記載している。紙で処理されており内容はほぼ担当医に任されている。医療の 課題は質の向上化、標準化、無駄をなくし各患者への一番の医療を施すことである。 野病院は福岡県八女郡にあり、140床で整形外科が中心の病院である。70台の PC が 導入され、指示、記録、報告などはほとんどペーパーレスで、ベッドサイドでノートパソコン をひろげ、カルテを読んだり、書き込んだりということは日常的である。インターネットと カルテ開示を積極的に行っている。

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電子カルテは「紙の診療記録をデジタルで記録するものであり、記録と記録を関連付けす る医療情報データベース」である究極の姿としては、全国統一で電子ファイルの標準様式が 定められ、決められた標準医学用語で全ての医師がこれに記入、全ての診療データ、検査結果、 心電図など各部署ごのとのデータが一つに集約できる。記憶容量も制限がないため、医療情 報が半永久的にみられる。情報開示の有効な手段で患者が参加しての治療計画を練る事がで きる。  国際モダンホスピタルショウ事務局がこの会に参加した150の医療機関に「電子カルテ 導入の実際に関するアンケートを行ったところ 61機関から回答をで、すでに電子カルテを導入しているのは11.5%たらずであった。 しかし導入作業中、導入に向けて検討中をあわせると9割以上が前向きな姿勢を示している。  電子カルテ導入により医療機関の効率は上がるが、電子カルテを使用しても診療報酬のよ うな医療機関にメリットがない。カルテは紙媒体での保存が義務付けられているが、デジタ ルに変えるための新しい法、マニュアルも必要になってくるだろう。やっと一部マニュアル が決まった。統一するための医学用語の標準化、システム化が進んでいない。患者の情報を 開示するので、なりすましや改ざんを防ぐプライバシー保護のため、セキュリティ強化を必 要とする。これらの課題を見直し患者満足を目指してほしい。 4、インターネット医療の今後と課題 −医療サイトの課題−  日本の厚生労働省の研究班が行った調査によると、2001年の段階で医療機関1021 件のうち34%がホームページなどで病院の業務や医療情報を提供していると答え、医師自 身のインターネット利用率は50%であった。医師の利用目的は「医学医療情報の検索」が 65%で、「連絡」が56%であった。  日本インターネット医療協議会(JIMA)同じ厚生科学研究の分担研究として2000年 2月に行った調査では、医療機関29施設から通院、入院中の患者、その家族を対象に、1 842人中インターネットを利用している割合は645人で35%であった。さて解答した 人たちのインターネット利用状況は、過去一年間に何らかの医療情報を利用した者は405 人で、インターネット利用者の63%、回答者全体では22%であった。これらの人は「病 気に関する専門的は情報を得る」が41%「健康管理など病気の予防に関する情報を得る」 30%、であった。インターネットが生活の一部 にある人は、医療情報が簡単に手に入ることを知 っているようだ。しかし、このような解答もある。 医療相談をしたいときどの手段を使うかという 質問に「直接出向いて」76.6%「電話」51. 7%である。「インターネット」は16.5%とい う数字であった。  また、JIMA が1999年3月に実施したアン ケートでは、インターネットでの医療の情報開示 の内容に関して、「信頼できる」68%だが、「信 頼できない」「どちらとも言えない」があわせて、 32%であった。理由は「情報の確かさを保証す る物がない」「内容が広告、宣伝目的になってい る」という指摘が多い。インターネット上の医療・ 健康情報の質に関しては、日本のみならず、欧米 でも問題になっている。これらの情報は、個人、 組織、営利、非営利を問わず様々な立場から様々 な目的で発信提供されているが、内容や質の管理 はそれぞれに任されておりレベルも様々である。これらの情報を客観的に評価なし、利用者 http://www.miyazaki-med.ac.jp/m edinfo/Docum.../iHICS_&_fu ture.htmより抜粋 電子カルテ見本

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に有効な情報をうまく提供するシステムはまだない。  また、個人のプライバシーを守るためのセキュリティの質も問われている。先ほどのアン ケートで、インターネットを利用したことがある人を対象にした質問で、医療情報が不用意 に漏洩されたり改ざんされたりする事の可能性について、「可能性があることは知ってい る」に61.3%の人がそう答えた。セキュリティの向上が見られないと、インターネット自 体あまり利用者が増えないのではないだろうか。 そこで、セキュリティに関して「電子証明及び認証業務に関する法律」が2001年4 月1日より施行されている。この電子署名法はもともとインターネットを活用した電子商取 引などを促進するため電子署名が手書きの署名、捺印と同様に通用するよう法律的に位置付 けることが目的である。電子署名における認証システムにおいて事実上標準となっている、 公開鍵基盤(PKI)はセキュリティを考える上で今最も有効な手段で、電子署名法は公開鍵 基盤を法的に支えるものといえる。しかし、不正アクセス、不正侵入などのセキュリティに関 する知識不足は否めず、そのシステム自体に頼り切っていうのが現状である。まして、医師 などの専門分野の人間はこれらの改善に時間を割く暇がないのである。こうした事から、専 門の管理者の養成と配置が必要になってくる。 いずれにしても、インターネットを利用する側、される側の改革が必要なのである。利 用する側の医師において、患者は今までどおり病気に関して無知では無いということを認識 しなければならない。患者も医師に頼りきりではなく、自分の健康は自分で守るという意識 をもっと高めなければならない、インターネット医療は医者、患者の関係をもっと深くより よいものにする最高の手段ではないだろうか。 −インターネット医療はコストダウンになるのか−  先ほど述べたように、インターネット医療は情報開示、インフォームド・コンセントが進 む中で患者、医師が同じ情報を共有する事ができ、今までの関係改善につながる最良の手段 であると考えた。では、実質今、問題になっている医療費負担を軽くするの新しい医療とな り得るのかということを考えたい。 日本の国民医療費は年々増加し、現在は30兆円の規模である。このうち、高齢者にか かる老人医療費は約10兆円で、全体の3分の一をしめている。このままで考えていくと、 平成37年度には医療費は全体で81兆円にも上ると推測される。

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医療費の将来推移 厚 生 労 働 省  http://www.mhlw.go.jp/の 医 療 制 度 改 革 の 課 題 と 視 点 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0306-1/h0306-1d.html より抜粋 医療制度は、保険料と受診時に支払う患者の一部負担金など、国や地方団体からの公費で支 えられている。この医療費拡大にともない、経済の低迷による保険料収入の伸び悩みとによ って医療保険財政に大きな影響が与えられ、政府管掌健康保険、健康保険組合、それぞれの 運営が難しくなってきている。 そこで、インターネット医療はこのような問題にどう向かっていけばよいのか。IT 化は、 最新の機器を導入するため、本当に高コストになりがちである。最新機器が病院、クリニッ クに導入され力を発揮していくのは医療の質向上の医療改革であって、財源の改革にはなり えないのではないだろうか。患者、病院では患者満足の態勢を取ろうと動いているが、政府 では、患者に対し何がよりよい医療で何が一番に改革すべきなのかが明確では無いように思 う。財源を確保するための現法律での、改革を探しているのではないだろうか。もっと根源 から変えるような改革が必要ではないだろうか。今の保険制度にもすばらしい点はある。国 民全員が同じ医療を少しの負担で受けられるということ、国民の負担を軽くするため、国が 負担してくれるということ。しかしこの国が負担してくれる金額が変らず、国民が負担する 保険料だけが増大していくと、この先今までの医療を受けられないだろう。 そこで、民間保険も参入した選択性のある健康保険制度に変えていくような動きは必要 ではないだろうか。自分の負担できる金額にあわせた医療、聞こえはよくないかもしれない が、国民は一番納得するのではないか。自分の健康を守る意識が確立し、医師もその患者に 対し責任を持って医療が施されるのではないだろうか。アメリカの医療制度を見習いながら

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日本の今までの流れを取り入れアレンジする、こんな斬新的な改革が必要に思う。 そのような状態になった時、インターネット医療は本当の力を発揮してくれるはずだ。 −おわりに− 私がこの問題を取り上げた理由は、私の祖母がなくなったときに今の医療は何をやって いるのだろうという疑問が生まれたからだ。祖母はいつも担当医、看護婦の不満を漏らして いた。確かに老人の不満は被害妄想が強いかもしれないがしかし、そうした人間も患者なの である。医療質向上、患者満足が掲げられる中、病院はそういう患者にふさわしい治療を施 す。あたりまえなのである。普段から健康を心掛けていてもいつかは死ぬ。その死を迎える 時、少しでもありがとうと言って死にたい。また、逝ってほしい。このインターネット医療 が今の医療の打開策になるため役立つ事を願っている。 参考文献 参考 URL ・e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える    三谷 博明  日本医療企画  2001年 ・21世紀の「医」はどこに向かうのか    村上 陽一郎  NTT データシステム科学研究所  2000年 ・改革始動する日本の医療サービス    八代 尚宏  東洋データシステム科学研究所  1999年 ・サイバーメッド http://www.cybermed.co.jp/ ・日本インターネット医療協議会 http://www.jima.or.jp/ ・Medical Profession http://www.so-net.ne.jp/medipro/ ・WebMD http://www.webmd.com/ ・ウェブエムディ・ジャパン http://www.webmd.ne.jp/ ・厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/ (*1)e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える      より、P51 抜粋 (*2)e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える      より P61、P63 抜粋 (*3)e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える      より P66 抜粋 (*4)e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える      より、P67 抜粋 (*5)e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える      より、P131 抜粋 (*6) e へルス革命 インターネット医療最前線 −「IT」が日本の医療を変える      より、P132 抜粋 (*7)http://www.miyazaki-med.ac.jp/medinfo/Docum.../iHICS_&_future.htmより抜粋 (*8)厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/の医療制度改革の課題と視点 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0306-1/h0306-1d.html より抜粋

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