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特集 ロシアの有望地域を発掘する する問題である 2012 年 5 月 7 日だけで11 件の様々な政策分野にかかわる大統領令が署名された 大統領令の大部分は社会分野にかかわるものであるが ロシアでは社会分野には地域 地方予算から支出がなされている たとえば これらの大統領令を挙げれば 国家社会政策

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■ Research Report 新プーチン体制下のロシアの地域経済政策

地域政策のプログラム文書

V.プーチン氏が2012年5月に大統領に復帰 して以降の、ロシアの地域経済政策および連邦 関係を分析するには、連邦社会経済政策の基本 となるプログラム文書を検討することから始 めなければならない。このような文書としては、 プーチンが2012年に大統領に復帰する前の時 期では、2008年11月17日付ロシア連邦政府指令 第1662-r号によって承認された「2020年までの 期間におけるロシア連邦の長期的社会経済発 展構想」(非公式ではあるが、「戦略-2020」 (Strategy-2020)という略称が広く流布してい る)があった。戦略-2020には「地域発展」の 章があり、その中で「国家の地域政策はロシア 連邦構成主体の均衡のとれた社会経済発展、地 域の社会経済状態および生活の質における地 域間格差の縮小をめざすものとする」という記 述がある。ロシアの国家政策には連邦権力機関 の政策と並んで、連邦構成主体権力機関の政策 が共存している(注:「連邦構成主体」とは、 州や共和国といった地域のこと)。ただし、戦 略-2020には国家地域政策分野における連邦権 力機関と地域権力機関との区分けが明確にな されておらず、連邦権力機関の地域政策の立案 に対して戦略-2020がさしたる影響を及ぼすこ とはなかった。 戦略-2020は、これを立案する過程で、その 当時すでに進行していた経済危機に関する考 察が反映されなかったため、改訂する必要に迫 られていた。戦略-2020の改訂作業は2011年に 権力機関に近い専門家たちの手で進められた。 戦略-2020新訂版は次期大統領の任期中におけ る基本文書になるはずであった。しかし、戦略 -2020新訂版の執筆陣は連邦権力機関が納得す るような文書を完成することはできなかった。 したがって、戦略-2020新訂版は承認されるこ となく、旧版がそのまま形式的に継続すること になった。 戦略-2020を巡るこのような状況の中で、 2012年5月7日、プーチンは大統領に就任し、 そしてまさにその日に社会経済政策の様々な 分野にかかわる一連の大統領令に署名した。た だし、これらの大統領令は決して形式的なもの ではなかった。大統領令の実施に向けた決定が 次々と採択され、大統領令の実施状況が逐一モ ニタリングされる。もうひとつ重要なことは、 これらの大統領令が連邦権力機関の権限だけ でなく、地域権力機関の権限にもかかわるもの であったことだ。したがって、大統領令は連邦 関係にも波及することになる。なぜなら大統領 令を実施するに当たって連邦権力機関と地域 権力機関との連携が求められるからである。と りわけ、論議されているのは大統領令の実施に 向けて行政機関相互間の予算移転を追加実施

新プーチン体制下の

ロシアの地域経済政策

ロシア科学アカデミー・システム分析研究所 主任研究員 O.クズネツォヴァ *Ольга Кузнецова. Региональная экономическая политика и федеративные отношения при новом путинском режиме. ■ Research Report ■ РОССИИ

ロシアの有望地域を発掘する

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する問題である。 2012年5月7日だけで11件の様々な政策分 野にかかわる大統領令が署名された。大統領令 の大部分は社会分野にかかわるものであるが、 ロシアでは社会分野には地域、地方予算から支 出がなされている。たとえば、これらの大統領 令を挙げれば、「国家社会政策の実施施策に関 する大統領令」(第597号)、「保健分野における 国家政策の改善に関する大統領令」(第598号)、 「教育・科学分野における国家政策の実施施策 に関する大統領令」(第599号)、「ロシア連邦国 民に対する適正価格による快適な住宅の供給 および住宅公営事業の品質向上にかかわる施 策に関する大統領令」(第600号)、「民族間合意 形成に関する大統領令」(第602号)、「ロシア連 邦の人口政策の実施施策に関する大統領令」 (第606号)などがある。 そのほかにも、「長期国家経済政策に関する ロシア連邦大統領令」(第596号)、「国家運営シ ステム改善の主要方針に関する大統領令」(第 601号)、「ロシア連邦の外交方針の実施施策に 関する大統領令」(第605号)などがある。その ほかの2件は軍事問題に関する大統領令であ る。 上記の大統領令を見れば分かるように、これ らの中に地域経済政策および/もしくは連邦 関係にかかわる個別の大統領令はないので、こ れらの連邦権力機関の業務分野の目的および 課題についてある種の曖昧さを残した形にな っている。先に挙げた大統領令では連邦による 国内東部地域支援について触れていることも 指摘しておきたい。たとえば、「長期的国家経 済政策に関する大統領令」では遠隔地の輸送・ 交通路の確保を含めた、シベリアおよび極東の 社会経済発展の加速化に関する施策の策定を 指示している。「ロシア連邦における外交方針 の実施施策に関する大統領令」では、アジア太 平洋地域における東シベリアおよびロシア極 東地域の社会経済発展の加速化を支援するこ とを目的とした地域統合プロセスへの参加推 進を謳っている。 「国家運営システム改善の主要方針に関する 大統領令」では、連邦権力機関のみならず、地 域権力機関および地方自治体(市町村)機関の 活動にまで言及している。そこでは国家機関お よび地方自治体機関のサービスの質の向上、ワ ンストップサービスの提供、権力機関の情報公 開などについても触れている。この大統領令で は行政機関間予算調整関係の問題についても 触れているが、ほとんど地方予算についてのみ (地域予算もしくは地域予算および地方予算 ではなく)言及している。事実、この2年間に 行政機関間予算調整関係の分野では多少の修 正はなされたものの、根本的な変化はなかった。

地域政策を担う新しい機関

プーチンは自らの新たな任期をスタートさ せるにあたり、地域政策実施にかかわる連邦権 力機関の機構を大幅に改編した。ただし、機構 改編はその後も何度も行われている。 2012年5月21日付「連邦執行権力機関の機構 に関するロシア連邦大統領令」第636号により 連邦建設・住宅公営事業庁およびロシア連邦極 東発展省の設置に関する決定が下された。連邦 建設・住宅公営事業庁について言えば、それは 実質上、再建された組織で、1990年代初頭から 2008年まで連邦権力機関の機構の中で建設お よび住宅公営事業を担当する別個の省庁(時に 応じてそれらの組織は省、国家委員会、連邦庁 としてステータスが変わった)として存在して いた。2008~2012年に建設・住宅公営事業問題 を直接担当したのはロシア連邦地域発展省で あり、2012年に再建された連邦建設・住宅公営 事業庁はロシア連邦地域発展省に属していた。 ロシア連邦地域発展省が建設・住宅公営事業 を所管することについては多くの専門家から

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批判を浴びた。ロシア連邦地域発展省はその種 の問題に携わるべきではなく、連邦権力機関の 地域政策に専念すべきであると批判されたの だ。連邦政府上層部がこうした見解に同調した のかどうかは定かではないが、2013年11月1日 付大統領令第819号により、連邦建設・住宅公 営事業庁はロシア連邦建設・住宅公営事業省に 改編され、現在、ロシア連邦地域発展省は建 設・住宅公営事業を担当していない。建設・住 宅公営事業を所管する官庁が格上げされた(省 は省に属する庁よりは格上である)表向きの理 由は、ロシアが直面する建設・住宅公営事業の 問題は切実、かつ複雑で、それを解決するため には個別の省が必要だというものである。マス コミでは建設・住宅公営事業庁とロシア連邦地 域発展省のトップ同士のスタンスの相違など、 裏事情について報じている。 D.メドヴェージェフ首相の政府内において 新たに地域発展相が任命された(前任のV.バサ ルギンはペルミ地方知事に転出)。地域発展相 に就任したのはロシア連邦大統領府内政局長、 その後、中央連邦管区大統領全権代表を歴任し たO.ゴヴォルンであった。彼がこれまで歴任し てきた上記の機関は経済にはほとんど関与し ていないため、地域発展省の所管分野はゴヴォ ルンにとっては畑違いであったのか、2012年10 月には退任に追い込まれ、その後任にはI.スル ニャエフが就任し、現時点までその地位にとど まっている。スルニャエフの経歴には運輸第一 次官、アルタイ地方選出連邦会議議員とあり、 重要なことは、コストロマ州知事(2007~2012 年)を務めた経験があることだ。つまり、スル ニャエフは地域問題を熟知しているというこ とである。 ロシア連邦極東発展省が新設されるまでロ シアでは同種の省が設置されたことはなかっ た。ロシア連邦大統領令に基づき、ロシア連邦 極東発展省は極東連邦管区において次のよう な機能を担う。  ロシア連邦政府が承認したリストに掲載さ れた長期プログラムを含め、国家プログラム および連邦目的別プログラムの実施にかか わる事業を調整する。  連邦資産を管理する(ただし、森林資源、地 下資源鉱区および連邦特別自然保護区、ロシ ア連邦大統領が承認した戦略企業・戦略株式 会社リストに掲載された公開型株式会社、連 邦国営企業の資産を除く)。  ロシア連邦法令に基づいてロシア連邦構成 主体国家権力機関に移管されたロシア連邦 の権限をこれら権力機関が実施する際にこ れを監督する。 ロシア連邦極東発展省の特異な点はその中 央機関がモスクワだけでなく、ハバロフスクに も置かれたロシアで唯一の省であることだ。 ロシア連邦極東発展省の初代大臣にして極 東連邦管区ロシア連邦大統領全権代表に任命 されたのは長年にわたりハバロフスク地方知 事を務めたV.イシャーエフであった。イシャー エフが極東の特殊性や問題を熟知しているこ とは誰もが等しく認めるところだ。しかし、イ シャーエフは極東の経済発展にかかわる画期 的なアイデアを提案することはできなかった。 彼の役割はつまるところ、地域に対する連邦の 大規模な支援を陳情するロビー活動の域を出 るものではなかった。それに加えてイシャーエ フの権威は極東での洪水と絡んで失墜してし まった(洪水の被害を最小限に食い止め、また、 事後の処理を機敏、かつ適切に行うために全力 を尽くしたかどうか論議を呼んだ)。結果的に 2013年8月、イシャーエフは辞任に追い込まれ てしまった。そのほか、新たに組織上の決定が 採択され、極東連邦管区ロシア連邦大統領全権 代表は連邦政府副首相を兼任することになり、 ロシア連邦極東発展相のポストからは外れる ことになった。

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極東連邦管区ロシア連邦大統領全権代表に 就任したのは著名な連邦政治家のYu.トルトネ フであった。イシャーエフとは異なり、トルト ネフは極東には縁がなかった(彼はペルミ出身 で、ペルミ市長、ペルミ地方知事、ロシア連邦 天然資源環境大臣を歴任した)。2013年9月に 新しくロシア連邦極東発展相に就任したのは A.ガルシカで、同じく極東での勤務経験はなか った。以前、ガルシカは「実業ロシア」の会長 兼共同議長を務めたほか、「全ロシア人民戦線」 のリーダーの一人だった。ビジネスの視点から 見た極東の展望に対する彼の見解、は役人の視 点よりははるかに生産的である。 極東連邦管区ロシア連邦大統領全権代表に 副首相のポストを与えるのはさほどユニーク な決定というわけではなく、2010年にも北カフ カス連邦管区ロシア連邦大統領全権代表につ いて同様の決定が採択されたことがある。大統 領全権代表に副首相のポストを与える必要性 については、連邦管区における連邦省庁の活動 を調整する必要があるからだという理由づけ がなされている。しかし、連邦管区ロシア連邦 大統領全権代表がこうした任務を遂行するの は不可能である。なぜなら、全権代表はロシア 連邦大統領府に属しており、一方、社会経済政 策を担当するのはロシア連邦政府および連邦 省庁だからである。ロシア連邦地域発展省もロ シア連邦極東発展省も省庁の活動を調整する 任務を果たすことはできない。なぜなら、大臣 のポストをもってしても他の省の大臣を指導 することはできないからである。したがって、 省庁の活動を調整できるのは副首相のみとい うことになる。北カフカスと極東に特別の関心 を寄せるのは、この2つの地域がもっとも大き な問題を抱えたマクロ地域であり、実質的に北 カフカスと極東(もっと広く捉えるなら、極東 およびバイカル地域)は、近年、連邦権力機関 にとって地域政策の優先地域だったからであ る。プーチンが再び大統領に就任するかなり以 前からこの2つの地域は優先課題としてあっ たが、この2年間で極東への関心は一段と強ま った。 連邦の極東支援に一定の役割を果たしたの は2007年1月に設置され、連邦政府の副首相の 一人が議長を務める「極東・ブリヤート共和 国・ザバイカル地方・イルクーツク州社会経済 発展問題国家委員会」であった。2013年9月、 極東社会経済発展問題政府委員会が設置され、 メドヴェージェフ首相が直々に議長を務める ことになった(国家委員会は廃止された)。こ の手本となったのはやはり、2010年12月に設置 された北カフカス連邦管区社会経済発展問題 政府委員会であった。 地域経済政策および連邦関係全般について 言えば、その政策の実施に当たって重要な役割 を担っているのはロシア連邦財務省およびロ シア連邦経済発展省である。財務省は行政機関 間予算調整関係に責任を有する主要な省庁で ある。経済発展省は自らの活動分野の一つとし て「地域経済の発展」を掲げているものの、地 域発展の総合的な問題に取り組んでいるわけ ではない。その代わり、経済発展省は地域にと って重要な経済政策(特に投資政策)のツール を所管しており、様々な部局がこれを担当して いる(それは同省に統一した地域政策がないこ との裏返してでもある)。経済発展省が所管す るものとしては経済特区(経済特区・地域発展 局)、イノベーション地域クラスター(イノベ ーション発展局)がある。そのほか、2013年12 月10日、「ロシア連邦経済発展省に関する条項 の変更にかかわるロシア連邦政府決定」第1141 号が署名された。これに基づき、経済発展省に はモノゴーラド(ロシアに多く存在する単一の 産業や企業に依存する企業城下町)の安定的発 展にかかわる国家権力機関の活動を調整する 権限が付与されることになる。それは事実上、

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モノゴーラド支援の主な権限を地域発展省か ら経済発展省に移管することを意味するのだ が、地域発展省が当該分野での自らの権限を失 うことはないだろう。 財務省と他の省庁との軋轢は、従来からも起 こっている。財務省は、他の省庁が、何らかの 課題を解決するために追加予算を使う必要が 生じたり、投資家あるいは個別の経済セクター に対する税制上の優遇措置を導入したりする ような事案を主導しようとすると、常に警戒心 を抱く。財務省以外の省庁同士の対立はきわめ て稀な現象である(少なくともマスコミではこ うした対立は話題にもならない)。例外として は、(極東領内での)他の省庁の権限の一部を 自省に移転することを極東発展省が主張した ことくらいである。こうした要求は極東発展省 が発足した直後から大臣から出されていたが、 しかるべき決定が採択されることはなかった。

地域発展のための国家プログラム

ロシアにおける連邦地域政策の綱領的な基 盤と目されるのはロシア連邦国家プログラム である。ロシアにおける予算編成改革方針の一 つとして目的別プログラム方式による予算編 成方法への移行が宣言されたのはほぼ10年前 のことであった(2004年5月22日付ロシア連邦 政府決定第249号で承認された「2004~2006年 におけるロシア連邦予算編成改革構想」)。しか し、この課題が複雑だったためにプログラム方 式予算への移行プロセスが長引き、連邦予算が 国家プログラムに配分されたのはようやく 2014年度連邦予算からになる(2013年12月2日 付「2014年度および2015年・2016年計画期間に おける連邦予算に関する連邦法」第349-FZ号)。 プーチン新体制発足までに承認された国家プ ログラムは1件のみで、国家プログラムの大多 数は2012~2013年に承認された。プログラム方 式予算への移行プロセスが活発化したのはプ ーチンの功績によるものであろう。しかし、そ れに至るまでの長い準備作業がなければこの 移行プロセスもありえなかったはずである。 国家プログラムの一覧表は、2010年11月11 日付ロシア連邦政府指令第1950-r号により承 認された。リストでは一連の国家プログラムが、 「新しい生活の質」、「イノベーション発展およ び経済の近代化」、「国家安全保障」、「均衡のと れた地域発展」、「効率的国家」という5つの分 野に大別されている。すべての国家プログラム は現在もこの5つの分野に分類されているが、 国家プログラムリストそのものは2013年12月 中旬まですでに4度も修正が加えられている。 そのうち、2回は地域プログラムリストの修正 であった。 当初、「均衡のとれた地域発展」分野では「地 域政策および連邦関係」、「極東およびバイカル 地域の社会経済発展」、「北カフカス連邦管区の 発展」、「2014年ソチ・オリンピックの組織およ び開催ならびにソチ市におけるマウンテンリ ゾートの発展」という4つの国家プログラムが 想定されていた。しかし、国家プログラムの策 定が長引いたため、ソチに関するプログラムは 無意味となり、除外されることになった。その 代わりに他の3つの国家プログラムが加えら れた。具体的には、「2020年までのカリーニン グラード州の社会経済発展」、「地域および地方 自治体財政の効率的かつ責任ある運用、ロシア 連邦構成主体予算の安定性向上のための環境 整備」(2つの国家プログラムは2012年12月15 日付ロシア連邦政府指令第2394-r号により国 家プログラム・リストに加えられた)、「2020年 までの期間におけるロシア連邦北極圏の社会 経済発展」(2013年7月10日付ロシア連邦政府 指令第1181-r号)である。北極に関する国家プ ログラムはまだ承認されておらず、策定途上に ある。このように「均衡のとれた地域発展」分 野には6件の国家プログラムがある。

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(1)国家プログラム「地域政策および連邦関係」 の執行責任者はロシア連邦地域発展省で、共同 執行者はロシア連邦財務省およびロシア連邦 移民局である。国家プログラムリストを承認し た政府指令の中で掲げられている国家プログ ラムを遂行する上での主要方針は以下のとお りである。  個々の全国レベルの総合的投資プロジェク トの実施  官民パートナーシップのメカニズムを活用 した優先的投資プロジェクトの支援による ロシア連邦構成主体の社会経済発展の推進  国境隣接地域間協力の環境整備  国家地域政策実施の支援  ロシア連邦構成主体国家権力機関および地 方自治体機関が自らの権限を効率的に行使 するための環境整備  ロシア国民統合の強化および民族間関係の 調和に向けた国家民族政策の実施  ロシア連邦諸民族の民族文化発展の支援  ロシア連邦北方およびシベリアの少数先住 民族の経済的・社会的発展の支援  在外同胞のロシア連邦への自主的移住支援 国家プログラム「地域政策および連邦関係」 (2013年3月26日付ロシア連邦政府指令第 435-r号)で謳われているプログラムの目的は (戦略-2020と同じく)ロシア連邦構成主体の 均衡のとれた発展の支援である。プログラムに は以下の3つのサブプログラムがある。①「連 邦関係および地域発展管理メカニズムの改善」、 ②「ロシア民族統合の強化およびロシア諸民族 の民族文化発展」、③「在外同胞のロシア連邦 への自主的移住支援」。国家プログラムの実施 期間は2013~2020年である。 (2)国家プログラム「極東およびバイカル地域 の社会経済発展」の執行責任者はロシア連邦極 東発展省で、共同執行者はロシア連邦地域発展 省である。プログラムを実施する上での主要方 針は、以下のとおり。  ロシア連邦極東の少数先住民族の経済的・社 会的発展の支援  極東およびバイカル地域の総合的社会経済 発展の支援  極東およびバイカル地域構成主体の投資魅 力の向上  官民パートナーシップのメカニズムを活用 した優先的投資プロジェクトの支援による 極東およびバイカル地域構成主体の社会経 済発展推進  国境隣接地域間協力の環境整備  在外同胞の極東およびバイカル地域への自 主的移住支援  極東およびバイカル地域とアジア太平洋地 域との統合の支援  連邦目的別プログラム「2007~2015年におけ るサハリン州クリル諸島の社会経済発展」お よび「2013年までの期間における極東および ザバイカル地域の経済的・社会的発展」の実 施 (3)2015年までの期間における国家プログラ ム「北カフカス連邦管区の発展」の執行責任者は ロシア連邦地域発展省で、共同執行者はなし。 プログラム実施の主要方針は、以下のとおり。  北カフカス連邦管区の総合的発展の支援  北カフカス連邦管区構成主体の投資魅力の 向上  北カフカス連邦管区領内の安定および安全 の確保  連邦目的別プログラム「2010~2016年におけ るイングーシ共和国の社会経済発展」および 「ロシア南方(2008~2013年)」の実施 (4)国家プログラム「地域および地方自治体財 政の効率的かつ責任ある運用、ロシア連邦構成 主体予算の安定性向上のための環境整備」の執 行責任者はロシア連邦財務省で、共同執行者は ロシア連邦地域発展省である。プログラム実施

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の主要方針は、以下のとおり。  行政機関間予算調整関係システムの発展  ロシア連邦構成主体の予算執行の安定性の 維持  ロシア連邦構成主体および地方自治体の予 算管理の質の向上 (5)国家プログラム「2020年までのカリーニン グラード州の社会経済発展」の執行責任者はロ シア連邦地域発展省で、共同執行者はなし。プ ログラム実施の主要方針は、以下のとおり。  カリーニングラード州の総合的社会経済発 展の支援  投資魅力の向上  経済成長優先分野発展の促進  新しい産業の整備  新産業クラスターの発展  農業、観光の集約化  2015年までのカリーニングラード州発展に かかわる連邦目的別プログラムの実施 (6)国家プログラム「2020年までの期間におけ るロシア連邦北極圏の社会経済発展」の執行責 任者はロシア連邦地域発展省で、共同執行者は なし。プログラム実施の主要方針は、以下のと おり。  ロシア連邦北極圏の総合的社会経済発展の 支援  ロシア連邦北極圏の経済成長優先分野発展 の促進  ロシア連邦北極圏の環境安全性の保障 地域発展国家プログラムは数十、数百ページ に及ぶかなり分厚い文書である。残念ながら、 連邦権力機関は国家プログラムを分析するた めのしかるべき環境を整備していない。国家プ ログラムは多くの場合、ハードコピーをスキャ ンしてPDF化した形で公開されている。つまり、 紙の文書として読むことしかできず、検索シス テムを利用したり、オフィスソフトにデータを コピーして加工したりすることはできないこ とが多い。こうしたやり方は一般的なものでは なく(通常、連邦の基準法令文書は利用しやす いフォーマットで公開されている)、ポジティ ブなものとして評価することはできない。国家 プログラム策定のプロセスも不透明であると して多くの人々から批判を受けている。 肝心な問題は言うまでもなく、国家プログラ ムが実際に連邦地域政策の何を変えたのかと いうことである。これは主観的な評価かもしれ ないが、今のところ、国家プログラムが変えた のは連邦権力機関の業務の形であって、その業 務の内容ではない。連邦地域政策の中に地域発 展国家プログラムを採用した痕跡を示すよう な何らかの変化を見出すことは難しい。国家プ ログラムを実施した際の連邦国庫歳出の内訳 は大雑把な形でしか記載されていない。したが って、様々な問題についての詳細な検討は別の 文書で行われていて、実際の業務もその文書に 基づいて行われているとしても驚くには当た らない。そのような文書とは何かといえば、ま ず地域発展連邦目的別プログラムを含む連邦 目的別プログラム(FTsP)である。連邦目的別 プログラムは投資向け連邦予算歳出の大半の 配分を規定しており、現在、国家プログラムを 実質的に実施する分野と見られている。地域発 展連邦目的別プログラムについては国家プロ グラムについて述べる中ですでにこれらを列 挙している。このような連邦目的別プログラム は現在、極東およびザバイカル地域、サハリン 州クリル諸島、北カフカス(「ロシア南方」)、 イングーシ共和国、カリーニングラード州のプ ログラムの5件である。 プログラム方式による予算編成方法が今後 さらに進化する中で国家プログラムの質およ び連邦地域政策策定における国家プログラム の実質的な役割も高まるであろう。しかし、今 のところ、それは将来的な問題であって、現時 点の話ではない。

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投資環境改善に向けた共同作業

最近の2年間の連邦政策に見られる新たな 動向としては、国全体においても、地域におい ても、投資魅力の向上に向けた活動が急速に活 発化していることが挙げられる。国家プログラ ムの場合でもそうだが、このテーマはプーチン 新体制の発足に伴って初めて提起されたわけ ではない。たとえば、新プロジェクト推進戦略 イニシアティブ庁(ASI)は現在、積極的に地 域の投資魅力に取り組んでいるところである が、設立されたのは2011年8月であった(2011 年8月11日付ロシア連邦政府指令第1393-r号、 ASIはロシア連邦政府によって設立された独 立非営利団体である)。ただ、地域の投資環境 関連の作業に本格的な進捗が見られるように なったのが、まさに2012年5月以降であるのは 事実である。当該分野(それ以外の分野でも) での作業が活発化した要素の何が特に重要で あったかと言えば、以下の点が挙げられる。あ る局面ではいくつかの要素が同じような役割 を担うことになろう。  ロシア連邦大統領への信任票およびそれに 伴う根本的変化への期待感。  問題の先鋭さゆえにこれ以上解決を引き延 ばすのは不可能であること。  これまでの年月の作業を通じて整えられて きた問題解決への準備態勢。  全体的に見れば、全般的な経済状況には容易 ならざるものがあり、連邦権力機関が放置し ておくわけにはいかない、明確な答えのない 問題である。 ASIは地域における良好な投資環境整備に 向けたロシア連邦構成主体執行権力機関の活 動基準を策定した。この基準は地域の戦略策定、 事業者のための環境整備および投資家への保 証供与にかかわる15の項目から成っている。 2012年、同基準は11のパイロット地域(中央連 邦管区のベルゴロド州、カルーガ州、リペツク 州、ヤロスラヴリ州、南連邦管区のアストラハ ン州、沿ヴォルガ連邦管区のバシコルトスタン 共和国、ペルミ地方、ウリヤノフスク州、ウラ ル連邦管区のスヴェルドロフスク州、チェリャ ビンスク州で、このリストには東部地域は含ま れていない)に適用された。 2012年12月27日、ロシア連邦国家評議会会議 が開催された。議題は「ロシア連邦構成主体の 投資魅力の向上およびビジネス発展のための 良好な環境の整備」であった。会議の結果、上 記の基準を国内すべての地域に導入すべきで あるとのロシア連邦大統領の指示が発せられ た。当該作業は2013年に開始され、2013年末に はほとんどの連邦構成主体(ノヴゴロド州、チ ュコト自治管区を除く)がこの作業に取り組ん でいる。 ロシアでは連邦権力機関と連邦構成主体権 力機関との間で権限の分担が行われている。厳 密に言えば、連邦当局は連邦構成主体権力の権 限に干渉することはできない。しかし、連邦当 局には地域における投資環境の改善問題など で地域当局の政策に影響力を行使する力があ る。第1に、連邦当局は地域当局(正確に言え ば、ロシア連邦構成主体執行権力機関)の業務 の効率性を評価する立場にある。ロシアでは地 域首長を直接選出する方式に戻り、ロシア連邦 大統領が地域首長の任命に影響力を直接的に 行使することはできない。しかし、そうは言い ながらも地域首長は政治的にも、予算上も連邦 からの支援に期待を寄せる。第2に、連邦当局 は地域当局のために法的に強化された財政刺 激策を講じて、地域の投資魅力の向上を促す。 言い方を変えれば、地域権力機関が連邦当局側 から見て効率的な経済政策を行っていると判 断されれば、当該地域の予算支援を追加的に行 う方法が公式にも、非公式にも存在するという ことである。 地域の投資魅力の向上に向けた地域首長の

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活動を評価するために、2012年9月10日付「企 業活動を行うための良好な環境の整備に向け た連邦執行権力機関幹部およびロシア連邦構 成主体上級役職者(上級国家執行権力機関幹部) の活動の効率性評価に関するロシア連邦大統 領令」第1276号が署名された。この大統領令を 実施するために2012年11月15日付「企業活動を 行うための良好な環境の整備に向けた役職者 の活動の効率性評価の指標に関するロシア連 邦政府指令」第2096-r号(2013年3月15日付改 訂版施行)が署名された。本指令では9つの分 野の21の指標により地域首長を評価すること が提案されている。 2013年12月12日に連邦議会に向けて表明さ れたロシア連邦大統領教書の中でプーチンは、 ロシアでは2014年からロシア諸地域の投資環 境全国ランキングがスタートすると述べた。こ のランキングが実質上、ロシア連邦の各構成主 体における全国ビジネスイニシアティブの実 施状況を評価するメカニズムになるであろう。 この教書では連邦構成主体当局のための財 政刺激策を立案し、地域の投資魅力の向上を促 すもうひとつの新しい動きについても触れて いる。もし地域が工業団地、テクノパーク、ビ ジネスインキュベータの設立に自己資金を投 資した場合には、そこに進出した企業が3年間 に納付する追加連邦税を行政機関間の予算移 転の形で連邦構成主体に還付することも表明 された。この決定はまだ法令という形では定式 化されていないが、2014年中にはこのような文 書が発行されるであろう。 これに類似した別の決定はすでに採択され ている。2013年12月9日付「ロシア連邦構成主 体の財務能力の平準化に向けた補助金の配分 方法の改善に関するロシア連邦政府決定」第 1130号がそれである。同決定は2014年1月1日 に発効する。上記の補助金はロシアにおける行 政機関間予算移転の主要な形態である。補助金 の配分は連邦構成主体の租税負担能力と歳出 需要とを対比することによって行われる。租税 潜在力は地域予算に納付される税金に応じて 設定される課税標準のデータに基づいて算定 される。採択された決定の要点は何かと言えば、 利潤税で算定の対象となるのは利益額ではな く、実際の納税額であるということだ。こうし て地域に対しては、投資家に供与された利潤税 優遇措置のために得られなかった得べかりし 歳入が補填される。 地域の投資魅力向上、地域がこの作業を推進 するための刺激策立案の作業は、おそらく、今 後も続いていくであろう。

経済特区の進捗状況

経済特区はロシアでは関心が高い。経済特区 は国家の投資政策として実質的に進化しつつ あるツールの一つである。経済特区の歴史は 2005年7月22日付「ロシア連邦における経済特 区に関するロシア連邦法」第116-FZに始まる。 ちなみにこの法令の採択はプーチンの力によ るところが大きい。ロシアに経済特区を設置す ることの是非を巡って財務省と経済発展省と の間で論争が続いていたが、これに終止符を打 ったのがまさにプーチン大統領だったのであ る(法案の採択を主導したのは経済発展省で、 これに反対したのが財務省だった)。 ロシアにおける経済特区制度は常に変容し 続けている。経済特区関連法が変わったり、新 しい経済特区が設置されたり、そうかと思えば、 不採算の経済特区の廃止に関する決定が採択 されたりしてきた。この経済特区改善のプロセ スは、これが設置された当初から止むことなく 進行し、プーチン大統領が再任されてからも続 いてきた。しかも、この2年間でも経済特区発 展に対する連邦上層部の関心は衰えることは ない。 経済特区に関する連邦法では工業生産特区、

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技術導入特区、観光レクリエーション特区、港 湾特区といった4つのタイプの経済特区の開 設を想定している。投資家を経済特区に誘致す るために経済特区のインフラ整備(主に連邦予 算の資金による)が行われ、投資家には税制、 関税、行政上の優遇措置が供与される。ただし、 投資家(経済特区入居企業)には一定の要求が 課される。まず投資家は投資プロジェクトを実 施する義務を負わねばならない。 最初の工業生産特区は2005年にリペツク州 およびタタルスタン共和国(エラブガ市近郊) に開設された。両地域は他のロシア地域に比べ ると経済発展のレベルが高い。工業特区はきわ めて順調に発展を続けており、2013年10月初旬 現在で、タタルスタンでは経済特区への入居企 業が36社あり、そのうち12社は2012~2013年に 進出してきた。リペツク州では28社の入居企業 があり、そのうち6社はこの2年間に進出した ものである。 2010年、経済危機を背景にして、さらに2つ の工業特区を開設する決定が採択された。その 狙いは企業城下町の経済多角化であった。その うちの一つはサマラ州のトリヤッチ市(ロシア 最大の自動車工業中心地)の近くに開設された もので、ここには13社の企業が入居した。もう 一つの特区はスヴェルドロフスク州のヴェル フニャヤサルダ市に開設され、4社が入居した。 当初、工業特区入居企業への税制上の優遇措 置は粗末なものであった。このタイプの経済特 区が成功したのは何よりもインフラの充実ぶ りによるものだ。インフラは第1に、土地の区 画が提供され、アクセス道路やユーティリティ ネットワークが整備されていた。第2に、他の 地域と比べてインフラへの製造設備の接続料 金もかなり安い。そのほか、2012年以降、経済 特区入居企業への優遇税制は拡充された(ただ し、決定そのものは2011年末、つまり大統領選 挙以前に採択されたものである)。 開設された工業特区が成功し、おそらくはそ れが後押しする形でこのタイプの経済特区の 数を増やす決定が採択されたのであろう。2012 年、プスコフ州およびカルーガ州にさらに鉱業 特区を開設することが決定された。これらの州 を選んだ動機は様々である。プスコフ州は地域 経済の面ではもっとも問題の多い地域(北カス カスの諸共和国やロシア東部の諸地域よりも 状況はさらに悪い)であり、プスコフ州に経済 特区を開設するのは同地に投資を誘致する手 段の一つだったのである(プスコフ州はモスク ワ、サンクトペテルブルグといった巨大販売市 場に近接しているだけに、なおさらである)。 カルーガ州は逆に、投資の誘致で数々の成功を おさめ、飛躍的に発展してきたロシアの地域の 一つであるが、それは多くの点において州行政 府の積極的な投資政策によるものであった。同 地域における経済特区は成功をおさめたカル ーガ州に対する論功行賞のようなものである。 ただし、カルーガ州内の経済特区候補地として 選ばれたのは、州内では経済発展が芳しくない 地区だった。つまり、経済特区の開設はプスコ フ州と同じく、新たな成長ポイントを整備する ことが目的だったのである。 最初の技術導入特区は2005年にモスクワ市 ゼレノグラード、モスクワ州(ドゥブナ市)、 トムスク州(トムスク市)およびサンクトペテ ルブルグ市の4つの地域に開設された。このタ イプの経済特区も発展しているが、それは多く の点において人件費に対する減税措置による ところが大きいと見られる。テクノロジー特区 が開設されてから何年も経ったが、新しい特区 は開設されていない。その代わり、地域でイノ ベーションを支援する別のツールが登場した。 たとえば、2006年からハイテク分野のテクノパ ーク設立にかかわる連邦プログラム(国内各地 域に13のテクノパークを開設することを想定) が施行されており、2010年にはイノベーション

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センター「スコルコヴォ」を開設する決定が採 択され、2012年には「イノベーション地域クラ スター」に対する連邦支援策が開始された。し かし、2012年にもう一つの、5つ目となる技術 導入特区が、タタルスタンのカザン近郊に開設 する決定が採択された。この経済特区を開設す ることの妥当性をめぐっては、この特区が科学 研究の特に秀でた基盤も持たない、「何にもな い原野」に設置されるとして専門家は疑問を呈 している。しかし、経済特区がタタルスタンに 出現することについてはさして驚くには当た らない。タタルスタン共和国は連邦からの支援 獲得にかけては腕利きのロビイストなのであ る。連邦中央とタタルスタンとの特別な関係に は根深い問題があり、最近の2年間でそれを解 決しようとしたが、うまくいかなかった。技術 導入特区をタタルスタンに開設することはそ うしたことの一例なのである。このような問題 は1990年代初頭にすでに起こっている。 工業特区および技術導入特区が多かれ少な かれ順調に発展しているのに対し、観光レクリ エーション特区および港湾特区についてはそ うは言いかねる。これらの特区は今のところ問 題含みである。観光特区は他のタイプの特区よ りも多く、全部で16箇所開設され、そのうち7 箇所が2007年、さらに7箇所が2010年、2011 年と2013年に1箇所ずつ開設されている。しか し、2箇所の観光特区は入居する企業がなく、 期限前に廃止せざるをえなかった(クラスノダ ル地方では2010年、カリーニングラード州では 2012年、つまりプーチン新体制発足以降のこと である)。残った14箇所の経済特区のうち、2013 年10月上旬現在、入居企業があるのは4箇所 (アルタイ地方:17社、アルタイ共和国:5社、 ブリヤート共和国:10社、イルクーツク州:2 社)にすぎない。ただし、アルタイ共和国には 11社の入居企業が登録されているが、そのうち の6社は投資プロジェクトを実施するという 義務を履行できなかったため、資格を失ってし まった。 観光特区が失敗した原因は少なくとも2つ ある。第1は、投資家に対する特恵が小規模で あることだ。前にも述べたように、投資家が入 居企業の資格を得るということは余分な義務 を負わせられることでもある。具体的には、① 経済特区がある自治体の域内に登記しなけれ ばならない、②経済特区の域外に支店や代表部 を開設することは禁止される、③事業および投 資プロジェクトの実施にかかわる協定を締結 し、履行しなければならない。こうした余計な 義務は経済特区入居企業という資格の特典で 十二分に埋め合わされるはずなのである。とこ ろが、観光特区にはこのような特典がなかった。 コンパクトなサイズの工業特区や技術導入特 区と異なり、観光特区は広大な面積の場所に開 設される。したがって、観光特区の入居企業の 場合には特別のインフラは事実上、整備される ことはない。他のタイプの経済特区と異なり、 観光特区には自由関税区域体制というものが ない。観光特区入居企業に対する税制上の優遇 措置は当初、微々たるものであった。これらの 優遇措置は地域当局が通常、経済特区体制に関 係なく、投資家に供与している優遇税制とさほ ど変わりはなかった。観光特区入居企業に対す る優遇税制が拡充されたのはようやく2012年 になってからであった。正確に言えば、地域当 局は経済特区域外では利潤税の地域税率を 18%から13.5%までしか下げることができな いのに対して、経済特区入居企業の利潤税の地 域税率については18%から0%まで下げる権 利を与えられていた。工業特区についてもこれ とまったく同じ決定が採択された。しかし、工 業特区が開設されている連邦構成主体当局が みずからに付与された利潤税率を低減する権 利をフルに活用したのに対し、観光特区では、 筆者が得た情報によれば、利潤税率は13.5%の

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水準にとどまっていたという。 観光特区が失敗した第2の原因は、特異な社 会政治状況のために、特区が開設される場所は 投資家にとっては見るからに魅力に乏しい地 域であることだ。9箇所の観光特区は北カフカ スでいわゆる観光クラスターを形成している。 クラスターに加入しているのはクラスノダル 地方、スタヴロポリ地方、アディゲ、ダゲスタ ン、イングーシ、カバルダ・バルカル、カラチ ャイ・チェルケス、北オセチア、チェチェンの 各共和国である。チェチェン共和国の観光特区 が開設されたのは2013年であった。入居企業が 存在しないにもかかわらず、連邦当局は北カフ カスにおける観光クラスターの発展を放棄す るつもりはない。問題を抱えたこのマクロ地域 の経済発展を支援することはきわめて重要だ からである。 沿海地方の観光特区にも入居企業はいない。 この経済特区は2010年にウラジオストクのル ースキー島に開設された。現在、連邦と地域の 関係機関が、この観光特区を工業特区か技術導 入特区に転換する案を検討しているという(こ のような情報は2013年に流れた)。 港湾(もしくはロジスティクス)特区が失敗 した最大の要因は、開設に関する決定を採択し たのが経済危機の前夜(3箇所の特区は2008 年)もしくは危機の最中(1箇所の特区が2010 年)だったことで、投資家は以前に計画したプ ロジェクトを実施できる状態ではなかったた めに進出を断念してしまった。ある経済特区 (クラスノヤルスク空港)については開設の決 定にも至らず(つまり、特区は開設されず)、 ムルマンスク海港の経済特区については期限 前廃止が検討されている。極東のソヴェツカ ヤ・ガヴァニ海港の経済特区についても見通し が立っていない。唯一の例外はウリヤノフスク 空港の経済特区で、成長の段階にあり、6社の 入居企業が登録されている。 このように現在、ロシア東部では連邦権力機 関により「ロシア連邦における経済特区に関す る連邦法」に基づき、6箇所の経済特区が開設 されている。そのうち、4箇所がシベリアの観 光特区、2箇所が極東にあり、観光特区と港湾 特区が各1箇所ずつ開設された。 そのほか、1999年5月31日付「マガダン州に おける経済特区に関する連邦法」第104-FZ号が 有効のままになっているが、実際にはマガダン の経済特区は(北方に位置し、輸送ルート上、 他のロシア地域から隔絶しているため)この地 域で飛躍的な経済成長を推進することはでき なかった。 極東に新たに経済特区を開設する件につい ては今のところ、具体的な計画は一切提示され ていない。しかし、2013年に経済特区に関する 法令に修正が加えられた。公式情報によれば、 その修正は極東およびザバイカル地域を含む 諸地域に新しい工場を建設するための追加投 資誘致に向けた条件設定が骨子とされている。 経済特区法の当初の版では、経済特区内で鉱物 の加工業(天然薬物資源の利用を除く)を行っ てはならないとされていた。修正(2013年7月 23日付連邦法第231-FZ号)により上記のような 制限が撤廃され、現在では経済特区内で原料の 加工を行ってもよいことになった。この修正は まず原料生産が今後発展する条件が揃ってい るロシア東部地域にとってきわめて重要であ る。 経済特区に関する基準法令基盤を巡る、この 2年間の目新しい動きとしては経済特区の機 能の効率性の評価規則(規則第1版が公開され たのは2012年8月で、新訂版は2013年6月に公 開)に関するロシア連邦政府の決定が採択され たことを指摘しておかねばならない。連邦当局 は開設した経済特区がどのような成果をもた らしたのか、明確に把握しようとしている。

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モノゴーラドに対する連邦支援

モノゴーラドは1990年代からロシアの専門 家の研究対象となってきた。しかし、連邦支援 の対象となったのは一部のタイプのモノゴー ラドで、しかも、大抵の場合、石炭産業のリス トラを背景にした炭鉱都市、閉鎖都市、その他 の都市といったように産業分野の枠内でのこ とであって、地域政策の枠におさまるものでは なかった。モノゴーラドの連邦支援が連邦地域 政策の方針として提示されたのはようやく 2010年になって経済危機が顕在化してからの ことであった。 事業のスキームは次のようなものだった。地 域発展省が提案したモノゴーラドを抽出する 基準は次のとおりであった。単一の製造プロセ スの枠内で事業を行っている1社もしくは数 社の企業が、①労働人口の25%以上を占めてい るか、②工業生産高の50%以上を占めているか、 ③地方予算税収の20%以上を占めること。ただ し、この3つの基準すべてを満たさねばならな いのか、3つのうち1つでも基準を満たしてい ればいいのか言及されていないが、非公式情報 では、3つのうち1つの基準を満たせばいいと されている。また、居住地の人口の最低基準に ついても言及されていない(居住地が小さけれ ば小さいほど、企業1社が大勢を占める確率は 高くなる)。地域行政府は提示された基準に該 当する居住地が自らの域内にあるかどうかの データを提出しなければならなかった。そして、 この情報に基づいて地域発展省は335のモノゴ ーラドをリストアップした。その後、リストは 更新されたが、一貫した原則らしきものはない。 モノゴーラドのリストには実に多彩な居住地 が網羅されていた。ヤクーチヤ(サハ共和国) の人口1,000人以下の町から、アストラハンや リペツクなどの恵まれた条件の州都まで含ま れていた。 その後、それぞれのモノゴーラドに対して、 モノゴーラドの行政府や、都市の中核を形成し ている企業のオーナーたちによって、地域行政 府の支援を受けつつ、総合発展計画が策定され ることになった。これらの計画は連邦当局によ って検討され、必要であれば、モノゴーラドに は連邦支援が供与されることになっていた。最 も大規模な連邦支援としては、発展計画の実施 に対して補助金および公的融資が供与される。 連邦支援を受けたモノゴーラドは2010~2011 年で49に及んだ。ただし、その支援の多くは 2010年に集中した。 財務省の官僚たちはモノゴーラドの連邦支 援は非効率的で、2012~2013年には支援はほと んど行われなかったと語っている。支援の非効 率性はどのような点に現れているかについて のコメントはない。2012~2013年にモノゴーラ ドに対して多少とも意義のある追加金融支援 は行われなかったが、それでも地域発展省では この問題についての検討が続けられてきた。た とえば、もっとも困難な社会経済状況を抱えた モノゴーラドのリストを作成するといった作 業を行っている。 しかし、重要なことは、モノゴーラドの問題 はこの数年間で解消されたわけではないので、 これらのタイプの地域に対する連邦の関心を さらに強める決定が採択されたことである。た とえば、2013年10月15日、プーチンはロシア連 邦モノゴーラドに対する国家支援問題につい てロシア連邦大統領指示書リストに署名した。 それらの指示の中には次のようなものがある: a)モノゴーラドの安定した発展を担保する 活動の調整を担う連邦執行権力機関を定める こととし、そのために当該連邦機関内にしかる べき部門を設けることを想定する(上述したよ うにこうした機関としてロシア連邦経済発展 省が選ばれた);  2014年度および2015~2016計画年度の連邦 予算を編成する際、社会経済状態の悪化が予

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測されるモノゴーラドに対する緊急国家支 援策の実施にかかわる費用を手当てするた めに必要な資金を見込む。  モノゴーラドで実施される予定の投資プロ ジェクトリストを作成し、そのための実施メ カニズムおよび当該プロジェクトの財源を 決定し、必要に応じ、リストに修正を加える。  モノゴーラド内の中小企業主体に対して優 先順位に従って的を絞った支援を行う可能 性を探る。 ロシア連邦大統領教書ではモノゴーラドに かなりのスペースを割いている。プーチンの提 案の骨子は、モノゴーラドには社会インフラ、 住宅、専門能力を持った要員も揃っているので、 投資家を誘致するにはそれが可能となるよう なビジネス環境と特恵を整備しなければなら ないということである。投資家の誘致が可能と なるためには予算上の歳出(あるいは歳入の減 少)が必要となるが、これはプーチンが述べた ところによれば、事態が否定的なシナリオに従 って進行した場合に、後になってからモノゴー ラド住民の就職斡旋のために数百億ルーブル をつぎ込むよりはましなのである。プーチン大 統領はモノゴーラド総合発展に関する提案、財 源の手当てに関する提案を含む投資プロジェ クトの実施に関する提案、労働市場での緊張を 緩和し、中小企業に対して的を絞った支援を行 うことに関する提案を提出するよう指示した。 モノゴーラドの案件は経済発展省も担当す ることになるので、近々、モノゴーラド連邦支 援にかかわる新しいシステムが立ち上がるこ とになると思われる。

イノベーション地域クラスター

イノベーション地域クラスターはロシア経 済発展省が所管する連邦経済政策の新しいツ ールの一つである。パイロット地域クラスター を選定するコンペの実施およびその国家支援 メカニズム策定に関する決定が採択された。こ れは2011年11月にハバロフスクで開催された 「経済近代化における地域の役割向上」に関す る国家評議会幹部会会議の総括として発表さ れたロシア連邦大統領指示リストに記載され たものである。 イノベーション地域クラスター発展プログ ラムを選定するコンペは2012年に行われた。連 邦当局から支援を受けるクラスターのリスト にクラスター発展プログラムを記載させるた めの申請書は調整組織が地域当局および地方 自治体機関と共同で提出しなければならない。 提出された申請書の審査はクラスターの科学 技術、教育、生産潜在力、生活の質、クラスタ ーが本拠を置く地域の様々なインフラの発展 レベルなどの分析結果に基づき、鑑定方式で行 われた。コンペには94件の参加申請があり、そ のうち、25件が入選と認められた。そのうち、 連邦支援を受ける権利を得たのはわずか13件 で、12件のクラスター発展プログラムはさらに 練り直しが必要と判定された。 パイロット・イノベーション地域クラスター発展 プログラムの実施にかかわる、連邦予算からロシ ア連邦構成主体予算への 2013 年度助成金配分 ロシア連邦構成主体 助成金金額 (ルーブル) モルドヴィア共和国 112,679,700 タタルスタン共和国 213,153,500 クラスノヤルスク地方 18,724,998 カルーガ州 93,333,333 モスクワ州 97,267,000 ニジェゴロド州 42,233,331 ノヴォシビルスク州 149,399,997 サマラ州 328,764,000 トムスク州 46,783,331 ウリヤノフスク州 34,328,799 モスクワ市 3,017,089 合 計 1,139,685,078

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ロシア経済発展省の資料には2013年から5 年間にわたり年間総額50億ルーブルの資金が 連邦予算から拠出されると記載されている。た だし、10件のクラスター発展プロジェクトを選 定する予定なので、1件当たり5億ルーブル拠 出することになる。実際には、上述のように、 助成金を供与するためのクラスターは13箇所 選定されている。ところが、2013年度連邦予算 に関する法令では13億ルーブルしか見込んで いない。分配される金額はさらに少なくなった。 助成金の形で地域が受領する資金は様々なイ ンフラの整備、要員の養成および能力向上、そ の他、イノベーション事業の発展に必要な対策 に当てられるものと見られる。 2013年度のイノベーション地域クラスター 向け助成金の配分は2013年11月になってよう やく上掲の表のとおり承認された(2013年11 月18日付ロシア連邦政府指令第21258-r号)。東 部地域で助成金を受けたのはクラスノヤルス ク地方およびトムスク州のみであった。 経済政策の新しいツールとしてのイノベー ション地域クラスターへの連邦支援の効率性 について語るのは時期尚早である。はっきり言 えることは、このツールの導入がそれほど迅速 には進まないだろうということだけである。

極東およびシベリアにかかわる政策

極東が連邦地域政策の対象となって久しい。 最初の極東・ザバイカル地域社会経済発展連邦 目的別プログラムが採択されたのはまだ1996 年のことで、その後、何度も延長、更新されて きた。2012年秋にウラジオストクで開催された アジア太平洋経済協力会議(APEC)サミット もこのプログラムの一環として長年にわたっ て準備が進められてきたものである。上述した 「極東・ブリヤート共和国・ザバイカル地方・ イルクーツク州社会経済発展問題国家委員会」 は2007年1月に発足した。2011年11月、極東発 展基金(公開型株式会社「極東・バイカル地域 発展基金」)が設立された。対外経済銀行(ロ シア開発銀行)が創立者にして唯一の株主であ る。極東への航空便助成金が導入されたのは 2009年であった(2009年12月29日付「極東・ロ シア欧州部間旅客航空便の利便性を図ること を目的とした航空輸送機関に対する助成金の 供与規則の承認に関するロシア連邦政府決定」 第1095号)。経済危機を背景としてロシア製乗 用車新車の鉄道輸送に対する助成金供与に関 する決定が採択された(2009年3月4日付ロシ ア連邦政府決定第194号および以後の決定)。ま た2010年には極東およびバイカル地域にかか わる個別の国家プログラムの策定に関する決 定が採択された。 プーチン新体制発足とともに極東に対する 連邦の関心は急速に高まった。上述したように ロシア極東発展省が設立され、極東連邦管区ロ シア大統領全権代表にロシア連邦政府副首相 のポストが与えられた。しかし、2013年秋まで について言えば、東部地域にかかわる連邦政策 の主要部分では本格的な進展はなかった。 極東支援としては重要な決定となる優遇税 制の導入がすでに採択されている。2013年9月 30日付「極東連邦管区および個々のロシア連邦 構成主体域内における地域投資プロジェクト の実施推進にかかわるロシア連邦税法典第2 章および第3章の変更に関するロシア連邦法」 第267-FZ号が採択された。当該法令採択を主導 したのは連邦政府だった。法令は2014年1月1 日から施行される。 法令は税法典に「地域投資プロジェクト」と いう概念を持ち込んだ。これは極東連邦管区に 属するロシア連邦構成主体、ブリヤート共和国、 トゥヴァ共和国、ザバイカル地方、イルクーツ ク州の域内における商品の生産を目的とする 投資プロジェクトである。地域投資プロジェク トは上記の連邦構成主体の一つもしくはいく

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つかの域内で行われる。ブリヤート共和国およ びザバイカル地方はザバイカル地域に属し、ブ リヤート共和国、ザバイカル地方およびイルク ーツク州はバイカル地域に属する。極東および ザバイカル地域もしくは極東およびバイカル 地域は、以前は一括りにされ、トゥヴァ共和国 は初めて極東に「合流」した。そのほか、2013 年12月12日の連邦議会向けのロシア連邦大統 領教書でプーチンは優遇税制を東シベリア全 域、つまり、クラスノヤルスク地方およびハカ ス共和国にも適用するよう提案した。 シベリアについては、これまで連邦地域政策 の中で極東のように重要度の高い対象として 扱われたことは一度もなかった。2000年代には シベリアに関する連邦目的別プログラムはな かったし、シベリア地域の発展問題に関する国 家委員会もしくはそれに代わる組織もなかっ た。例外は極東と同一の決定が採択されたザバ イカル地域(もしくはバイカル地域全体)の一 部として扱われただけだった。それに加えて、 どこからどこまでがシベリアなのかという地 理的問題が、たびたび紛糾してきた。たとえば、 チュメニ州といくつかの自治管区は、伝統的に 西シベリアに属してきた。しかし、連邦管区発 足に伴い、チュメニはウラル連邦管区に編入さ れてしまったのである。 東部地域に導入された優遇税制は商品の生 産のみに適用され、しかも商品の種類は問わな い。ただし、石油、天然ガス、ガスコンデンセ ートの採掘、精製、輸送、消費物資の生産(乗 用車およびオートバイを除く)、利潤税率がす でに0%になっている事業だけは優遇課税の 対象外である。これと同様のきわめて分かりや すい優遇はロシアの経済特区にも適用されて いる。優遇税制は必要以上の国家支援を受けず とも順調に発展している、あるいは政策上奨励 されない産業(アルコールおよびたばこの製造) には適用されない。 経済特区に関する連邦法から、当該法令で実 施された他のアイデアが若干修正されて援用 されている。たとえば、東部地域における優遇 税制に関する法令は優遇措置を受けたいと希 望する投資家に対して一定の要求を課してい る。そうした要求の一部は東部地域がオフショ ア化するのを防ぐための防波堤を設けるもの である。特に、地域投資プロジェクト出資者は 投資プロジェクトを実施している連邦構成主 体の域外に独立した部門を設けてはならない。 地域投資プロジェクト出資者の収入の90%は 地域投資プロジェクト実施の結果として製造 された商品の販売収入でなければならない。 優遇税制の適用を受けようとする投資家に 対する重要な要求としては、最低投資額につい てのそれがある。東部地域での投資額は3年間 にわたって投資する場合で5,000万ルーブル以 上、5年間にわたって投資する場合で5億ルー ブル以上とされている。工業生産特区と比較し てみると、特区の入居企業は1億2,000万ルー ブルの投資をしなければならないが、そのうち、 4,000万ルーブルは3年以内に投資しなければ ならない。実際、これは東部地域関連法令の重 要な特徴である。投資プロジェクトに追加要求 が設定されるのと同じく、連邦構成主体の法令 でも最低投資額が引き上げられる可能性があ る。 東部地域の優遇税制に関する法令では、地域 投資プロジェクトの出資者には連邦に納付さ れる利潤税の税率を0%に設定している(通常 の税率が2%のところ、連邦国庫には利潤税を 納付しなくてもよいということである)。地域 に納付される利潤税の税率は最初の5課税年 度には10%を超えないが、次の5課税年度には 10%を下回ってはならない。優遇課税期間の会 計報告は地域投資プロジェクト実施の結果と して製造された商品の最初の販売収入を得た 期間から始める。簡単に言えば、東部地域の地

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域投資プロジェクトについては、利潤税率は最 初の5年間では0%~10%とし、次の5年間で は10%~18%にするものとし、税率を何%にす るかについては連邦構成主体権力機関が地域 独自の法令で定めることになる。 東部地域で投資家に提案された優遇税制は 有意義ではあるが、気前がよいものであるかと 言えば合点し兼ねる。たとえば、工業生産特区 の入居企業は利潤税の連邦納税分を免税され ていないが、その代わり、地域税率は期間の制 限なく(正確には経済特区の存続年限である49 年間の制限がある)0%まで引き下げることが できる。そのほか、ロシア連邦税法典では経済 特区入居企業に対して企業の地域資産税およ び地方土地税にかかわる優遇措置を保証して いるが、一方、東部地域では、採択された連邦 法にはこれらの税金の優遇措置についての規 定がなく、万事が現地権力機関の裁量に委ねら れている。東部地域の優遇税制に関して地域当 局がどのような決定を下すか、問題はまだ決着 していない。 東部地域が発展するためには優遇税制だけ では不十分である。そのため連邦議会向けのロ シア連邦大統領教書では、輸出をも志向する非 資源産業を立ち上げるための特別の環境を備 えた先行経済発展特別区域ネットワークを極 東および東シベリアに整備することが提案さ れた。このような先行発展区域では投資家のた めに税負担を軽減するあらゆる可能な措置が 採られ、アジア太平洋地域の主要なビジネスセ ンターと競争しうるビジネス展開の環境(建設 許可、電源網への接続、通関などの手続を含む) が整備されることになる。このような区域での インフラ整備には極東開発基金を活用するこ とが計画されている。先行発展区域が国内東部 のどこに開設されるかという問題は2014年7 月1日までに決定される。その頃までにはしか るべき基準法令が策定されるはずである。 2013年秋、ロシア極東発展省のトップ交代に 伴い、事実上、新たな極東発展戦略が打ち出さ れたことも指摘しておかねばならない。アジア 太平洋地域を志向した輸出産業を極東で発展 させようとの期待が公式レベルで表明された のはおそらく初めてのことではないかと思わ れる。非政府系の専門家たちがこのような戦略 を提起したのはもう大分以前のことだが、それ が正式な戦略として採用されることはなかっ た。対外経済関係を重視することはロシア領土 の一体性に対する脅威と受けとめられたから だ。そのため、極東とロシア欧州部との商品流 通を何とかして発展させることが提案された。 結果として、これほどの長距離の貨物輸送を行 って利益を出すには国からの助成がなければ 不可能だということが判明した。ところが、国 にはその可能性もなければ、このような助成を 行う意思もなかったので、商品流通が発展する ことはなかったし、輸出産業が発展することも なかった。 新たな極東発展戦略が打ち出され、承認を受 ける舞台となったのが、2013年10月24日に開催 された極東社会経済発展政府委員会会議であ った。新しいモデルが「極東連邦管区で製造さ れた商品(役務、サービス)のアジア太平洋地 域諸国への輸出、競争力のある投資環境、外国 人投資を含む直接投資の誘致、経済活動の成長、 中小企業の発展、経済特区、工業・テクノロジ ー・農工パークを含む、競争力のある先行発展 区域の整備を基盤としたモデル」としてそれま でよりも完全な形で定義された。そのほか、政 府委員会会議では極東における連邦管理改善 問題が再び取り上げられたが、12月中旬時点で はいかなる決定も採択されていない。 2013年末にもう一件重要な決定が採択され た。2013年12月6日付「連邦目的別プログラム 「2018年までの期間における極東およびバイ カル地域の社会経済発展」に関するロシア連邦

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