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Microsoft Word - P.4.1.2研究発表会要旨(東燃ゼネラル) v6.doc

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[P4.1.2] ディーゼル燃費に及ぼす軽油燃料性状の影響評価に関する研究

開発

(ディーゼル燃費グループ) 大井第502研究室 ○ 河野 尚毅、川口 浩司、青柳 良和、中村 修

1.研究開発の目的

黒煙をはじめとするディーゼル車からの排出ガスに対する懸念等によって日本では デ ィ ー ゼ ル 車 両 の 比 率 が 低 下 し て き た が 、 近 年 の 排 出 ガ ス 対 策 技 術 の 進 展 に よ り ディーゼルエンジンからの排出ガスは大幅に清浄化されている。こうした中、輸送分 野における CO2 排出量削減の観点で、ガソリンエンジンに比較して熱効率に優れる ディーゼルエンジンが注目されている。燃料製造面でも、ガソリンから軽油に需要構 造がある程度シフトすると製油所からの CO2総排出量が削減されると言われている。 こ う し た 状 況 に 鑑 み 、 日 本 に お い て デ ィ ー ゼ ル 車 両 を 拡 充 さ せ た 場 合 ( い わ ゆ る 「ディーゼルシフト」)の効果・影響を検証するための重要技術として、ディーゼル車 の燃費を高精度に評価する技術を開発する。さらに、当該開発技術を基に、ディーゼ ル燃費に及ぼす軽油燃料性状の影響についても考察する。

2.研究開発の内容

本研究では、ディーゼル車両を対象として、ガソリン車両向けに確立された高精度 燃費評価技術と同程度(繰返し精度 1.0%)以上の高精度燃費評価技術を開発すること、 および当該技術の有効性を具体的に実証することを目標に設定している。 研究開発年度としては表 2-1 に示されるように、平成 19 年度から平成 23 年度まで の 5 ヵ年を予定している。主としてその前半期間において、高精度燃費計測に係わる 基礎技術・要素技術開発を行い、評価手順の確立を図る計画である。平成 22 年頃には、 平成 21 年(2009 年)施行のポスト新長期規制に適合する国産ディーゼル乗用車が複 数の自動車メーカーから市場投入される見込みであることより、その後半期間におい て、高精度燃費計測技術をこれらのディーゼル乗用車に適用し、その有効性を確認す る計画である。 表 2-1 研究開発計画 H19 H20 H21 H22 H23 最新技術搭載ディーゼルエンジン・車両 の制御機構の把握 燃費・熱効率に及ぼすエンジン制御因 子・燃料性状因子の影響解析 燃費・熱効率の評価において必要となる 燃料品質評価技術の検討 燃費・熱効率評価における適切な試験手 順の検討、提案 ディーゼルエンジン・車両の高精度燃費 評価法の妥当性を示す試験例の提示 最新ディーゼルエンジン・車両技術および その性能評価技術に関する調査 項   目 計 画 年 度

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平成 19 年度は、「最新技術搭載ディーゼルエンジン・車両の制御機構の把握」と「最 新ディーゼルエンジン・車両技術およびその性能評価技術に関する調査」を実施した。 以下にそれぞれの研究開発の内容を述べる。 2.1.最新技術搭載ディーゼルエンジン・車両の制御機構の把握 ディーゼル車両の燃費・熱効率に及ぼす各種変動因子の定量的影響検討を平成 20 年 度から開始するに先立ち、平成 19 年度は予備的検討として最新技術搭載ディーゼル車 両を用いて燃費計測を行う中でエンジン制御機構を理解・把握する取り組みを行った。 2.2.最新ディーゼルエンジン・車両技術およびその性能評価技術に関する調査 排出ガス規制強化や新たな省燃費目標の設定に対応して、低排出ガスかつ省燃費の 車両技術の開発が進んでおり、エンジン制御・パワートレイン制御が高度化している。 それらの車両に対して広く適用しうる高精度燃費計測技術を開発する観点で、最新の ディーゼルエンジン・車両の制御技術動向を調査・検討した。

3.研究開発の成果

3.1.最新技術搭載ディーゼルエンジン・車両の制御機構の把握 新長期規制適合のディーゼル車両を用い、、燃費の繰返し再現性を評価した。その際、 ECU モニタを用いてパワートレインの制御状態を計測することにより、高精度燃費計 測技術確立に向けての今後の課題を把握した。 3.1.1 供試車両の選定 平成 19 年度時点では国産自動車メーカーはディーゼル乗用車を販売していない。そ のため、供試車両選定にあたっては今後市販されることが想定されるディーゼル乗用 車においても採用が見込まれるパワートレイン技術・機構が盛り込まれているディー ゼル商用車(2t トラック)を選定した。供試車両の主要諸元を表 3.1-1 に示す。 表 3.1-1 供試車両の主要諸元 Vehicle category Chassis configuration Chassis dimensions Cylinders layout Compression ratio Aspiration Displacement vol [L] Max. power [kW @rpm] Max. torque [NM

Fuel injection system

Fuel specification Fuel system

configuration

Technologies for reduced emissions and improved fuel economy

High-press. fuel injection DOC + DPF (Diesel Particulate Filter)

Cooled EGR

Variable geometry turbo-charger 4 valves/cylinder layout Electronic controlled fuel injection system

Idling stop system Common rail

Emission regulation (New long-term regulation)J-2005 regulation Diesel Fuel

(50 mass ppm S or less required, 10 mass ppm S or less recommended) Engine

configuration

Transmission configuration

375 @1600 rpm Cabin over engine L4, Direct Injection (DI)

17.5

Durbo-charged with intercooler

AT 3.0 110 @2800 rpm Vehicle A Vehicle configuration

2 ton cargo truck 4680 (L), 1690 (W), 1960 (H)

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当該パワートレインには、コモンレールシステム高圧燃料噴射システムと Cooled EGR (Exhaust Gas Recirculation)システムが採用されている。高圧噴射により燃料 の 微 粒 化 と 空 気 と の 混 合 を 促 進 さ せ 完 全 燃 焼 を 図 る こ と に よ り PM ( Particulate Matter)の低減を図り、また、Cooled EGR に加えて複数回の分割燃料噴射により燃焼 の高温化を防ぎ NOx を低減させるアプローチで、新長期排出ガス規制に適合している。 3.1.2 燃費試験方法 今回の供試車両は総重量 3.5t 超の重量車であるため公定の燃費・排出ガス測定モー ドはエンジンベンチベースの JE05 モードであるが、今回は将来のディーゼル乗用車評 価を念頭に、シャシベースでの試験法である、JIS D 1012:2005 「自動車-燃料消費 率試験方法」に定められる 10-15 モード燃費評価法を適用した。JIS D 1012 は、シャ シダイナモメータを用いた燃料消費率試験方法である。使用した燃費計測システムの 構成を図 3.1-1 に示す。 JIS D 1012 では、燃料流量測定法とカーボンバランス法との2つ燃費計測法が定義 されている。燃料流量測定法とは、燃料ライン中にフローメータを設置し、そこを通 過する燃料量を計測することにより、燃費試験中に消費された燃料量をダイレクトに 測定するものである。一方、カーボンバランス法では、排出ガスの全量を Constant Volume Sampler (CVS)に導入し、その一部を一定流量でバッグに採取する。燃費試験 走行中にバッグに採取された排出ガスを走行後に分析し、その中に含まれ る Total Hydrocarbon (THC)、Carbon Monoxide (CO)、Carbon Dioxide (CO2)を定量することに

よって、カーボンバランスにより燃料消費量を算出するものである。本検討では、小 これまでの検討で繰返し再現性がより良好であったカーボンバランス法を基本として 解析・考察を行うことにした。

なお、日本における公的な車両燃費測定基準としては JIS D 1012 の他に、新型自動 車 審 査 関 係 基 準 集 に 示 さ れ る 新 型 自 動 車 の 試 験 方 法 (TRIAS : Traffic Safety and Nuisance Research Institute’s Automobile Type Approval Test Standard)が存在

図 3.1-1 本研究で用いた燃費評価システムの構成概念図

F F F

B

CVS (Constant Volume Sampler) Exhaust gas

Dilution air

Exhaust gas analyzer

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す る 。 TRIAS に お い て は 、 ガ ソ リ ン 用 試 験 法 ( 5-3-1999 ) と デ ィ ー ゼ ル 用 試 験 法 (5-4-1999)が定められているが、両方共に燃費換算において供試燃料性状は考慮さ れていない。これに対して JIS D 1012 においては、1997 年の改正時に、従来から対 象とされていたガソリンエンジン搭載車両に加えて、ディーゼルエンジン搭載車両お よび、LPG ガスエンジン搭載車両も対象となった。その際、燃料性状(密度、H/C、O/C 元素比率)を考慮して異なる燃料に対しても精度よくカーボンバランス法による燃費 計測が行えるよう改善が図られている。また、JIS 法は、欧米の燃費測定法と比較し ても、燃料性状の考慮の点で最も進んだ試験法となっている。すなわち、米国 FTP 法 (CFR 600.113-88)では、ガソリンについては密度、H/C のみを考慮しているものの、 ディーゼルでは燃料性状は考慮していない。EU 法 (80/1268/EEC)では、ガソリン、 ディーゼルともに、燃料密度のみが考慮されている。 10-15 モード燃費試験における運転サイクルの速度パターンを図 3.1-2 に示す。ここ で、図中点線で示された最初の 15 モード区間はプレコンディショニングサイクルであ り、この区間が終了した後の、10 モード 3 回と 15 モード 1 回の走行時における燃料 消費率が 10-15 モード燃費として測定される。 最新ディーゼル車両では、排出ガス対策ならびに燃費向上対策として、エンジンシ ステムを統合制御するエンジン制御ユニット(ECU)が高度化している。このため、同 一の運転パターンを走行しても、必ずしも車両として同じ制御がなされるとは限らず、 結果として、試験毎に燃費・排出物質に大きな差が出ることがあり得ると考えられる。 そのため、NMHC, CH4, CO, CO2, PM などの基礎データの計測を行う際には、排出ガス 測定モード全体を通算してのバッグサンプリング法のみならず、排出ガスのリアルタ イム計測を行い、時々刻々の排出ガス変化をモニタすることが重要である。同様に、 エンジンシステムの制御因子についてもリアルタイムで計測することが重要である。 燃費測定時にリアルタイムで計測された時々刻々のデータを解析することにより、燃 費・熱効率に変動を及ぼしうるエンジン因子について、その影響度を定量的に把握す ることが可能となることが期待される。燃費に及ぼす各エンジン因子の影響度をモデ ル化・数式化し、実測された燃費データ・熱効率を補正するなどの規格化アプローチ 図 3.1-2 10-15 運転サイクルの速度パターン J10-15 mode driving cycle 0 20 40 60 80 100 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 Time [min] V e lo ci ty [ km /h] Emission sample corrected in bag No emission sample corrected Time: 11.0 (14.9) min, Distance: 4.165 (6.339) km, Ave. speed: 22.8 (25.6) km/h

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が高精度燃費計測の観点で有効であると考えられるためである。ECU モニタの構成概 念図を図 3.1-3 に、ECU モニタユニットのエンジンルーム内設置状況を図 3.1-3 に、 収録データ仕様例を表 3.1-2 にそれぞれ示す。 表 3.1-2 ディーゼル ECU モニタの収録データ仕様 No 1 噴射開始角度 1段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 2 噴射開始角度 2段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 3 噴射開始角度 3段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 4 噴射開始角度 4段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 5 噴射開始角度 5段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 6 噴射終了角度 1段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 7 噴射終了角度 2段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 8 噴射終了角度 3段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 9 噴射終了角度 4段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 10 噴射終了角度 5段 -360°CA ~ +360°CA -3.6V ~ +3.6V 11 噴射時間 1段 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 12 噴射時間 2段 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 13 噴射時間 3段 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 14 噴射時間 4段 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 15 噴射時間 5段 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 16 噴射時間 使用段トータル 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 17 噴射時間 パイロット+メイン 0msec ~ 10msec 0V ~ +10V 18 噴射回数 19 EGRバルブ開度 全閉 ~ 全開 約0.8V ~ 約4.0V 20 スロットル開度 全閉 ~ 全開 約0.8V ~ 約4.0V 21 アクセル開度 全閉 ~ 全開 約0.8V ~ 約4.0V 22 燃料噴射圧力 0MPa ~ 200MPa 約1.0V ~ 約5.0V 23 マニホールド圧力 0KPa ~ 200KPa 約0.8V ~ 約4.0V 24タービン可変度 (アクチュエータ負圧) 0KPa ~ -100KPa 約0.8V ~ 約4.0V 25 DPF差圧 0KPa ~ 200KPa 約0.8V ~ 約4.0V 26 エンジン回転数 0rpm ~ 5000rpm 0Hz ~ 30000Hz 名称 入力信号 出力信号 0 or 1 or 2 or 3 or 4 or 5回 0 or 1 or 2 or 3 or 4 or 5V 図 3.1-3 ECU モニタの構成概念図 信号中継 BOX 車載各種センサー エンジン制御部へ (燃料噴射等) 車載 ECU ECU制御・ 計測 ユニッ ト 操作表示 記録 信号中継 BOX 車載各種センサー エンジン制御部へ (燃料噴射等) 車載 ECU ECU制御・ 計測 ユニッ ト 操作表示 記録 図 3.1-4 ECU モニタ装置の設置状況 車両オリジナル ECUユニット ECUモニタ ユニット

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3.1.4 供試燃料 平成 19 年度試験では供試燃料として市販の JIS2 号軽油を用いた。供試燃料の主要 燃料性状を表 3.1-3 に示す。 ベース軽油 試験法 密度(15℃) Density g/cm3 JIS K 2249 0.8287 硫黄分 Sulfur mass ppm JIS K 2541-6 4.6 セタン指数 Cetane index JIS K 2280 60.5 蒸留 IBP 179.5 5% 205.5 10% 223.5 20% 248.0 30% 265.5 40% 278.0 50% 289.0 60% 300.0 70% 312.0 80% 326.0 90% 345.0 95% 360.0 97% 370.0 FBP 370.5 Saturate (vol %) 80.4 Olefin (vol %) ND Total-Aroma (vol %) 19.6 1R-Aroma (vol %) 17.6 2R-Aroma (vol %) 1.8 3R+Aroma (vol %) 0.2 水分 (mass %) JIS K2275 0.0031 灰分 (mass %) JIS K2272 0.001 計算総発熱量  (J/g) 45880 計算真発熱量 (J/g) 43010 実測総発熱量 (J/g) 46020 脂肪酸メチルエステル (mass%) 0.1以下 トリグリセリド (mass%) 0.01以下 試 験 項 目 JIS K 2254 平成19年度 経産省告示法第78号 JPI-5S-49-2007 JIS K 2279 表 3.1-3 供試燃料の主要燃料性状

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3.1.5 燃費測定精度(繰返し再現性)試験結果 10-15 モード燃費測定における再現性を評価する目的で 43 回の繰返し測定を行った。 運転パターンの再現性確保の観点で、今回は全て自動運転ロボットによって運転した。 燃費のトレンドグラフを図 3.1-5 に、その頻度分布を図 3.1-6 にそれぞれ示す。 43 回の繰返し燃費測定において、第 36 回目と第 43 回目の試験が非常に低い燃費値 を示した。3.1.6で後述するように ECU モニタを用いた計測・解析の結果、これ ら 2 回の試験においては、排出ガス後処理装置(Diesel Particulate Filter: DPF) の再生運転が行われていたことがわかった。「全 43 回」、DPF 再生運転運転が行われな かった「通常運転時 41 回」、「DPF 再生運転時 2 回」のそれぞれについて燃費測定結果 (平均燃費、標準偏差、繰返し測定精度)を整理した結果を表 3.1-4 に示す。

図 3.1-5 10-15 モード 43 回の燃費測定データ(トレンドグラフ) Driving mode: J10-15 mode

Vechile: Vehicle-A Fuel: JIS No.2 standard fuel

0 2 4 6 8 10 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 Measurment times F uel ec onom y [k m /L ] 表 3.1-4 燃費測定結果、 全平均 通常運転時 DPF再生時 平均燃費 Ave [km/L] 9.23 9.39 5.87 標準偏差 σ [km/L] 0.752 0.037 0.052 繰返精度≡2*σ/Ave. [%] 16.29 0.78 1.78 図 3.1-6 10-15 モード 43 回の燃費測定データ(ヒストグラム) Histogram 0 5 10 15 20 5. 6 5. 8 6. 0 6. 2 6. 4 6. 6 6. 8 7. 0 7. 2 7. 4 7. 6 7. 8 8. 0 8. 2 8. 4 8. 6 8. 8 9. 0 9. 2 9. 4 9. 6 9. 8 Bin F requ ency

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DPF 再生運転が行われなかった、いわゆる「通常運転時」においては、41 回の繰返 し精度は 0.78%と良好であるが、DPF 再生運転を含む全ての運転を対象とすると 43 回 の繰返し精度は 16.29%と大幅に低下した。本研究開発の目標値である繰返し測定精度 1.0%以下を実現するためには、DPF 再生運転などの特殊運転モードの影響を包括的に 考慮して、車両燃費を定義・計測することが必要であることが示された。 なお、今回の 43 回の繰返し測定において、DPF 再生運転が行われた試験は 2 回のみ であり、かつ、それらが比較的後半部分に集中しているように見られるが、実際の DPF 再生運転は 43 回に 2 回の頻度ではなく、より高頻度に、かつ、コンスタントに行われ ていた。すなわち、この車両の DPF 再生間隔は約 150km 毎であり一日の試験走行距離 も約 150km であったため、毎朝の車両暖機運転中に DPF 再生が実施される状況が繰り 返されていた。言い換えると、燃費計測時には DPF 再生運転が入らない状況であった。 試験の最後の期間において DPF 再生時の燃費も評価するべく試験パターン(一日あた りの走行距離)を変更し、DPF 再生運転時の燃費データを計測したものである。 3.1.6 燃費に及ぼすエンジンシステム制御状態の影響把握 近年ではほとんどのディーゼル車両に Particulate Matter (PM)低減のための DPF が装着されている。DPF としては連続再生式と呼ばれるタイプのものが主流となって いる。その基本的メカニズムは、すすを捕捉しながら、その場で連続的に酸化し CO2 に転換・浄化するものである。しかし、走行条件等によってはこの連続再生メカニズ ムが充分に機能せず、特殊な再生運転を適宜追加して強制的にすすを除去する必要が 生じる。通常の運転条件ではディーゼルエンジンの排出ガス温度はそれほど高くない ため、DPF に蓄積されたすすを強制的に燃焼させるために、燃料噴射量の増量ならび に多段噴射等の特殊制御運転を行って排出ガス温度を上昇させることが行われる。 今回の供試車両における 10-15 モード運転時の排出ガス温度の推移を図 3.1-7 に示 す。通常運転時には約 200℃程度の排出ガス温度であるが、DPF 再生運転時には最高 600℃程度まで昇温されていることがわかる。排出ガス温度の昇温のために、車両が行 う仕事量以上に燃料が消費されるため、DPF 再生運転中は燃費が悪化する。今回の供 試車両では表 3.1-3 に示されたように、通常運転時の燃費 9.39km/L に対して、DPF 再 生時の燃費は 5.88km/L と、約 38%の燃費悪化を示した。 図 3.1-7 DPF 再生運転時の排出ガス温度推移 0 100 200 300 400 500 600 700 0 120 240 360 480 600 720 840 960 Time [sec] E x. g as te m p. [d eg C ] -60 -40 -20 0 20 40 60 80 V ehi cl e s peed [ km /h r]

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図 3.1-7 に示されるように排出ガス温度をモニタすることによって、比較的簡便に、 DPF 再生運転の有無を把握することが可能である。しかしながら、DPF 再生が燃費悪化 に及ぼす影響は上述のように非常に大きいため、DPF 再生運転の開始及び終了のタイ ミングを正確に把握する必要がある。この観点では、ECU 制御モニタの燃料噴射回数 の計数機能が非常に効果的であった。図 3.1-8 および図 3.1-9 に 2 回の DPF 再生運転 時の燃料噴射回数の推移を示す。図 3.1-8 では最初の 15 モード運転の最後の区間から 燃料噴射回数がそれまでの 1~2 回から、3~4 回へと増加し、DPF 再生運転の第 1 段階 が始まっている。その後の 10 モード運転(1 回目)の最後の区間から、燃料噴射回数 が 4~5 回へと更に増加し、第 2 段階の DPF 再生運転制御が行われていることがわかる。 図 3.1-9 では、DPF 再生開始のタイミングが図 3.1-8 よりも数十秒早く開始されてお り、より多量の燃料を消費する第 2 段階の DPF 再生運転期間がより長くなっている。 図 3.1-9 の燃費が 5.83km/L であり、図 3.1-8 の 5.91km/L よりも若干悪い理由として、 前者の方が燃費計測中における再生運転の比重が相対的に高かったことが考えられる。 なお、DPF の再生中には、蓄積されたカーボンが CO2として排出されるためカーボン バランス法では見かけ上、燃費が悪化して観測される懸念がある。そのため、次年度 の詳細評価においてカーボンバランス法と体積流量測定法とを比較し、DPF 再生時の すす燃焼に伴うカーボン排出の影響度を定量的に検証する予定である。 図 3.1-8 DPF 再生運転時の燃料噴射回数推移(その1:燃費 5.91km/L) 0 5 10 0 120 240 360 480 600 720 840 960 Time [sec] F uel in je ct ion t im es -60 -40 -20 0 20 40 60 80 V ehi cl e s peed [k m /hr ]

Inj. times (Regen. mode) Inj. times (Norm. mode) Vehicle speed km/hr Early stage of

regeneration mode Later stage of regeneration mode

図 3.1-9 DPF 再生運転時の燃料噴射回数推移(その2:燃費 5.83km/L) 0 5 10 0 120 240 360 480 600 720 840 960 Time [sec] Fu el in je ct io n t ime s -60 -40 -20 0 20 40 60 80 V ehi cl e s peed [ km /hr ]

Inj. times (Regen. mode) Inj. times (Norm. mode) Vehicle speed km/hr Early stage of

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3.2.最新ディーゼルエンジン・車両技術およびその性能評価技術に関する調査 燃料性状が燃費に及ぼす影響を正確に評価するためには高精度燃費評価技術の確立 が必要であると考えられるため、研究目標として、繰返し再現精度 1.0%以内の測定手 法開発を設定している。当該目標の達成には、燃費計測にかかわる技術開発・ノウハ ウの蓄積が必要であるが、効率的に研究を進める観点では、内外の研究機関の知見・ ノウハウを積極的に吸収・採用することが重要である。今回、米国の代表的自動車評 価機関を訪問し、また、米国自動車技術会主催の国際会議 2007 Powertrain and Fluid Systems Conference に参加し、パワートレインの燃費向上技術の動向ならびに自動車 燃料評価技術の動向について調査した。

燃 費 、 排 出 ガ ス 等 に か か わ る 自 動 車 評 価 技 術 に 関 す る 意 見 交 換 を Southwest Research Institute (SwRI), Ricardo, FEV の三研究機関とそれぞれ行い、省燃費・ 低排出ガスの最新車両の高精度燃費評価技術に関して以下のコメント・知見を得た。 車両の燃費計測は各種センサー等からの信号を受けて変動する場合が多く、そのため 一般に車両ベースでの燃費計測はエンジン単体での燃費計測よりも測定精度(繰返し 再現性)が劣る。これに対し、ガソリンエンジン搭載車両の高精度燃費評価技術とし て、本研究に先立つ大井 501 研究室で開発した手法はエンジン単体での燃費計測に匹 敵あるいはそれを上回る測定精度であり注目に値する技術であるとのコメントを得た。 一般に、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも制御因子が多いため高精度の 燃費計測技術を確立することが難しいことが予想されるが、大井 501 研究室において ガソリンエンジン車両向けに開発された高精度燃費評価技術をディーゼルエンジンに 適用するアプローチは有効と考えられる。

4.まとめ

ディーゼル車両の燃費・熱効率に及ぼす各種変動因子の定量的影響検討を平成 20 年 度から開始するに先立ち、平成 19 年度は予備的検討として最新技術搭載ディーゼル車 両を用いて燃費計測を行う中でエンジン制御機構を理解・把握する取り組みを行った。 まず 10-15 モード燃費の繰返し再現性を評価した。供試燃料には市販の JIS2 号軽油を 用いた。運転パターンの再現性を確保する観点で、車両の運転はドライバーではなく 自動運転ロボットで行った。43 回の繰り返し燃費測定を行った結果、再現性の指標と している 2σ/Average は 16.29%と、目標値(1%以下)に対して大幅に再現性が劣って いることが判明した。排出ガス後処理装置として搭載されている Diesel Particulate Filter (DPF)の強制再生運転が行われたサイクルでの大幅な燃費悪化が繰返し再現性 低下の要因であることがディーゼル ECU モニタを用いた解析により明らかとなった。 今回の試験では、仮に DPF の強制再生運転が発生しなかった場合を仮定すると、計算 上は繰返し再現性指標 2σ/Average は 0.78%となり、通常運転における繰返し再現性 は良好であることがわかった。 今後の課題としては、後処理装置再生運転等の特殊運転モードを含めた総合燃費特 性に関して、高精度評価手法を検討することが挙げられる。また、DPF の再生中には、 蓄積されたカーボンが CO2として排出されるため、カーボンバランス法では見かけ上、 燃費が悪化して観測される可能性があり、定量的な検証が必要である。

図 3.1-1  本研究で用いた燃費評価システムの構成概念図
図 3.1-5  10-15 モード 43 回の燃費測定データ(トレンドグラフ)
図 3.1-9  DPF 再生運転時の燃料噴射回数推移(その2:燃費 5.83km/L) 05100120240360480600720840960Time [sec]

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