1 . は じ め に 消防白書平成 11 年版から 20 年版によれば,図 1 の ように,日本では年間に約 53 000∼63 000 件の火災が 発生している.そのなかには,建物,林野,車両,船 舶,航空機その他火災が含まれている.ここでは,こ れら火災のなかで,電気用品が発火源となった火災(以 下,本稿で「電気火災」という)を取り上げ,近年の 火災傾向や火災事例を交えて紹介したい.電気火災に は,電気用品そのものが燃え出した場合と電気用品に よって他の物体が熱せられて火災になった場合が含ま れる.電気用品には電熱器,配線,配線器具,電気機 器,電気設備などが含まれる. 2 . 電気用品の安全対策 電気用品は身近に使用していることが多く,家事を するときや仕事中,また外出するときや寝るときにお いても,便利で快適な人間活動を支えている.身近な 物であればあるほど,万が一,事故を起こしたときに は直接人間の生活にかかわってくる.そのため,電気 用品の製造,販売に関して多くの法律で規制すること で,安全性の確保が図られている.これらの法律には, 例えば,電気用品安全法,電気事業法,薬事法,計量 法,電波法,家庭用品品質表示法,リサイクル法,製 造物責任法,消費生活用製品安全法などがある. 例えば,電気用品安全法は,電気用品の製造,輸入, 販売などを規制するとともに電気用品の安全性の確保 につき民間事業者の自主的な活動を促進することによ り,電気用品による危険および障害の発生を防止する ことを目的としている1),2).同法では,電線,ヒュー ズ,配線器具,小形単相変圧器,放電灯用安定器,電 熱器具,電動力応用機器器具,電線,電気温床線,電 線管,小形交流電動機,光源,光源応用機器器具,電 子応用機器器具など交流の電路から電源を得る幅広い 電気用品の安全性を確保するために規制がなされてい る.その効果として,電気用品による火災,感電,傷 害,爆発・破裂,毒性物質の発生,電波障害などが起こ らないことを目的としている.対象となる電気用品と しては,特に危険性の高い特定電気用品として 115 品 目,特定以外の電気用品として 338 品目が指定されて いる.製造の段階では事業の届出や電気用品の適合性 検査などを課している.適合性検査に合格した電気用 品は PSE(Product Safety Electrical Appliance and Materials) マークを表示できる.販売の制限では,PSE マークの ない用品は販売または販売の目的で陳列してはならな いことになっている.電気用品安全法の規制対象とな らない製品も多数存在し,例えば,充電式バッテリー で駆動される携帯電話は対象外である. 細かい技術上の基準が示され,それを遵守して用品 を作ったとしても,用品の事故や火災の発生を完全に 防止することはできない.設計段階で判明しなかった 理由,設置や施工の仕方,使用や操作の方法,使用さ れている環境などにより,事故や火災が起きている. 電気用品が発火源となった火災の近年の動向として,おもな発生原因,電気用品種類別の火災件数の推 移,火災事例を紹介し,あわせて,電気用品の製造や販売に関連した法規制についても紹介する. キーワード:電気火災,電気用品火災,火災事例,火災原因 安全/環境関連国際規格特集号
電気火災の動向と火災事例
†田 村 裕 之
† 総務省消防庁消防大学校消防研究センター:〒 182―8508 東京都調布市深大寺東町 4―35―3 E―mail:[email protected] 図 1 全国の火災件数の推移(消防白書より) 火災件数〔件〕 70 000 60 000 50 000 40 000 30 000 20 000 10 000 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平成〔年〕3 . 電気火災の発生原因 さまざまな電気機器や配線機器,電気設備から火災 が発生している.電気火災がどのように発生するかに ついて解説する. 物が燃えるには可燃物,酸化剤,点火エネルギーの 3要素が必要である.電気火災においてもこれらは同 様である.可燃物は,ケーブル被覆材や樹脂部品,ほ こりなど多様に存在する.酸化剤は一般的な電気用品 使用環境では空気中の酸素である.3 要素のあと一つ である点火エネルギーが加われば,燃焼が起きても不 思議ではない.この点火エネルギーを与えるものを電 気用品のなかで探すと,ジュール熱と放電がある. ジュール熱量 Q〔 J 〕は,電流 I〔A〕が抵抗 R〔Ω〕 に t〔秒〕流れたとき発生する熱量で, Q = RI2t で表される.超伝導の状態を除けば,どんな導体にで も抵抗は存在するため,通常の使用においてもジュー ル熱は発生する.普段はその熱が周囲に逃げることで, 極端な高温にならないだけである.しかし,設計段階 で想定された熱の拡散が見込めない条件や想定よりも 多くの熱が発生したとき,または,電流が流れないと 設計された部分に流れたときには,その部分が高温に なり燃焼が始まる.このような状態を作り出すものと して,束ね配線,過電流,接触部過熱,半断線過熱, 漏電などがあげられる. 放電には,電極間放電,静電気放電,雷放電など形 態の違う放電があるが,電気用品火災に大きく関係す るのは,電極間放電である.電極間放電も電圧,電極 間距離,電極形状などにより,火花放電,コロナ放電, グロー放電,アーク放電など特性の違った放電があ る.火花放電は電極間の絶縁が破壊されたときに発生 する放電で極短時間に放電が起こる.火花放電はガス 爆発や粉じん爆発の着火源となりうるが,樹脂や紙な どを着火させることは,エネルギーが小さいため難し い.コロナ放電は先端のとがった電極などで起こり, 電流は小さい.グロー放電とアーク放電は定常的な気 体放電であり,発生すると放電が持続する.両者を比 較すると,電圧が高く電流が小さい(mA 程度)のが グロー放電,電圧が低く電流が大きい(数 A 以上) のがアーク放電である.アーク放電は光り輝く陽光柱 を持ち,陽光柱は数千℃になる3).そのため,陽光柱 は近くの可燃物を着火させることができる.放電のな かではアーク放電が電気用品火災のおもな着火源で ある. 3 . 1 放熱異常や過電流過熱 ケーブルを図 2 のように束ねて使用したり,いわ ゆるたこ足配線をして定格以上の電流を流したりする と,ケーブル自体の温度が上昇する.放熱の悪い条件 であれば,ケーブル被覆の発火温度まで上昇し,発火 に至る.特に,ブレーカ(配線用遮断器)の定格電流 よりもケーブルの定格電流が小さい場合には,ケーブ ルに過電流が流れてもブレーカは作動しないので,温 度が上がってしまう.また,家庭に多い定格電流 30A 以下のブレーカの遮断時間は,定格電流の 125%の電 流で 60 分以内,200%で 2 分以内とすることが電気用 品の技術上の基準を定める省令(昭和 37 年通商産業 省令第 85 号)で定められているので,仮にケーブルと ブレーカの定格電流が同じであったとしても,過電流 が数分から数十分ケーブルを流れることがあるので, 放熱しやすい形態でケーブルを使用する必要がある. 3 . 2 接 触 部 過 熱 電源線の接続部分の締め付けが不十分なときや,コ ンセント内の差し刃がきちんとかみ合っていないとき に,設計上の接触面積よりも小さい面積で接触するこ とになり,接触部分の抵抗が増大し,大きなジュール 熱が発生する場合がある.この熱により,付近の絶縁 物が溶融して絶縁性が失われ放電や短絡が発生するこ とや,付近の可燃物が高温になり発火することで火災 へと至る.または絶縁物の絶縁性が高温により低下し, 漏電や短絡が起こる. 3 . 3 半 断 線 過 熱 電源ケーブル内部のより線が,繰り返し曲げ伸ばさ れた場合や,家具の脚などで踏まれた場合に,内部で より線の一部が切れることがある.そのとき,少ない 芯線で断面積が減った状態,すなわち抵抗が大きく なった状態で定格の電流を流さなければならないの で,通常よりも大きなジュール熱が発生する.この熱 により,付近の絶縁物が溶融して絶縁性が失われたり, 付近の可燃物が高温になり発火したりして火災へと 至る. 3 . 4 漏 電(地 絡) 漏電(地絡)とは,電流が設計経路以外を通って大 地へ流れることである.建物自体で起こる場合もあれ ば,用品から発生する場合もある.一般的には建物分 電盤に漏電遮断器が付いているが,分電盤よりも一次 図 2 電源コードを束ねて使用している様子
側(屋外からの引き込み線側)で起こった漏電では漏 電遮断器が作動しないため,装置の過信は禁物であ る.漏電火災の発生メカニズムは,数十から数百 mA の漏電電流が流れた部分やその周囲の可燃物で炭化が 発生し始め,ついには蓄熱により発火に至る4). 3 . 5 短 絡 電圧差のある 2 点間が低い抵抗でつながる状態がで き,負荷に流れるべき電流が設計外のこの 2 点間を流 れてしまうことである.この状態は,電気回路の絶縁 が劣化することで発生する.低い抵抗の回路を形成す る原因として,絶縁物そのものの絶縁性が不十分また は絶縁性が劣化する場合,電圧が加わっている露出充 電部に異物(例えば,ほこりや水分など)が付着する ことで絶縁が劣化する場合などがある.トラッキング 火災もこの一種である.短絡電流により熱が発生した り,短絡時に放電が発生したりして,付近の可燃物を 発火させる.短絡電流がブレーカの定格容量より低い 場合には,短絡が起きてもブレーカは作動しない. 4 . 電気火災の発生状況と傾向 電気火災の最近十年の変化について概観する. 消防白書によると,平成 19 年の建物火災 31 248 件 のうち,出火原因が電灯・電話などの配線,配線器具, 電気機器をあわせた火災件数は 2 723 件で 1 割弱を占 めている.白書には詳細な用品の内訳や発火源の記載 がない.そこで,詳しい用品の内訳や発火源がわかる 資料として,東京消防庁がまとめている「火災の実態」 から数字を拾ってみる.このなかでは,電気火災は電 気設備機器の火災として集計を行っている.電気設備 機器は大きく電熱器,電気機器,電気設備,配線等, 配線機器等に分けられている. 「火災の実態」をもとに,全火災件数,電気設備機 器火災件数,全火災件数に占める電気設備機器火災件 数の割合の推移を図 3 に示す.電気設備機器火災が 占める割合は,約 14%から約 20%へ,ここ十年で増 加傾向にある.火災の全体件数は横ばいか減少傾向で あるのに対し,電気設備機器が発火源の火災件数は横 ばいか増加傾向にあるため,割合が増加している.「火 災の実態」は東京消防庁管内の火災を対象としている ため全国を表していないが,全国の火災件数の 1 割以 上を占める東京消防庁管内の火災の統計であるので, 大まかな火災傾向はつかめると思われる. 電気用品の種類別に火災件数の推移を確認する.図 4に電熱器,電気機器,電気設備,配線等,配線器具 等,その他の火災件数の推移を示す.電気設備,配線 等,配線機器等は 10 年間で大きな増減の傾向はない が,電熱器と電気機器の件数が増加傾向にある.特に 電気機器は最近 5 年間で増加している.電気機器には, 照明器具,ハロゲンヒータ,冷暖房機,冷蔵庫,電磁 調理器,テレビ,換気扇などが含まれる. つぎに電熱器,電気機器,電気設備,配線等,配線 機器等の個々について,傾向を述べる. 4 . 1 電 熱 器 電気ストーブと電気クッキングヒータが例年上位を 占めていて,この二つで電熱器火災の半数以上を占め ている. 電気ストーブは取扱いが容易で空気を汚さないため 広く普及している.発火の経過を見ると,電気ストー ブの基板内のトラッキングや電源コードの半断線や短 絡など,機器自体から出火する場合もあるが,圧倒的 に多いのは可燃物が接触する場合であった.電気ス 図 3 東京消防庁管内の電気設備機器火災件数の推移 7 000 6 000 5 000 4 000 3 000 2 000 1 000 0 24 22 20 18 16 14 12 10 東京消防庁管内全火災件数 電気設備機器火災件数 電気設備機器火災割合〔%〕 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 火災件数〔件〕 割 合〔%〕 平成〔年〕 電熱器 電気機器 電気設備 配線等 配線器具等 その他 図 4 機器別の電気火災件数の推移 400 350 300 250 200 150 100 50 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平成〔年〕 火災件数〔件〕
トーブの上方にあった洗濯物が落下したり,就寝中に ストーブに布団がかかったりするケースが多い.適正 に使用することで多くの電気ストーブ火災を防ぐこと ができる. 電気クッキングヒータ火災は近年件数が多い.ス イッチを入れると熱源が高温になるタイプの機器であ る.このスイッチに無意識のうちに人体の一部やバッ グなどがぶつかり誤ってスイッチが入ってしまう場合 が多い.誤ってスイッチが入ったときに,たまたまヒー タの上に可燃物があった場合に発火する. 4 . 2 電 気 機 器 蛍光灯や白熱電球などの照明器具からの出火が 3 分 の 1 以上を占めている.また,ダウンライト,スポッ トライトの出火件数が加わり,照明器具からの出火件 数が最近 5 年間で増加している.そのほか,電子レン ジ,電気冷蔵庫,エアコン,ハロゲンヒータなどが ある. 蛍光灯は,安定器の巻線が絶縁劣化すること,力率 改善コンデンサや雑音防止コンデンサが経年劣化など により絶縁劣化することなどの原因が考えられる.白 熱電球やスポットライトなどは表面が高温になるた め,可燃物が接触することや,発生した熱が上方や周 囲の可燃物に蓄積して発火に至る.電子レンジでは, 基板上のほこりや水分が原因のトラッキングによる発 火や,食品を加熱しすぎたための発火などが見られ る.冷蔵庫やエアコンなどのように,コンプレッサや モータを使用した機器や使用中に振動の大きい機器で は,リレー接点内部のトラッキングによる発火や,配 線コネクタ部分の緩みによる接触部過熱,モータの過 熱による絶縁劣化から内部での短絡などにより火災が 起こる. 平成 15 年以降件数の多いものとしては,ハロゲン 電球を使用したハロゲンヒータがあり,年間 20∼30 件発生している.電気ストーブ同様手軽に使え,さら に電気ストーブほど赤熱した部分がないため,安全と 誤解されがちである.構造の不備や絶縁劣化,接触部 過熱などの要因もあるが,発火の経過で最も多いのは 可燃物が接触することである.ハロゲン電球部分は高 温になるため,可燃物が接触した場合には火災が発生 する. 4 . 3 電 気 設 備 電気設備には,低圧コンデンサ,分電盤,配電用変 圧器,制御盤,三相および単相モータなどが含まれる. 火災件数が特に多いのは低圧コンデンサであるが,そ の他,三相モータやトランスなどでも火災が発生して いる.コンデンサの発火原因の多くは絶縁劣化であ る.おもに経年劣化により内部の絶縁が劣化し,短絡 により発火する.その他の設備では,電線の短絡,接 触部の過熱,短絡などが原因となっている. 4 . 4 配 線 等 延長コードや屋内外配線などが含まれる.発火の原 因としては,電線の短絡,接触部の過熱,半断線によ る過熱,地絡などが多い.延長コードにおいては,折 り曲げられたり,家具につぶされたりしたときに被覆 や芯線が破損して,半断線などが起こり発熱する.こ れらの熱によってほこりなどのまわりの可燃物に着火 し火災となる.延長コードや電源コードは点検がしや すい状態で使用することが大切である. 4 . 5 配 線 機 器 等 コンセント,差し込みプラグ,テーブルタップの火 災件数が上位を占めているが,その他に遮断器,スイッ チ,電磁開閉器などが含まれる. 配線機器には,当然電線が接続されている.電線を 固定している部分の緩みによる接触部の過熱,電線の 短絡,プラグなどではトラッキング,過電流による発 熱などが発火の原因になっている.これらは身近な機 器であり,プラグの抜き差しやスイッチの入り切りは 頻繁に行う操作なので,日頃の注意深い観察で異常が あれば交換するなどの対応が重要となる. 5 . 火 災 事 例 5 . 1 ハロゲンヒータ(絶縁劣化により発生した火 災)5) ハロゲンヒータは空気を汚さず電気で安全に暖房効 果を得ることができるため,近年,普及が進んでいる 用品である. この火災は,2 階建ての住宅内で発見されたもので, 午前 6 時ごろに焦げ臭いのに気づいた住人が周囲を見 回したときに,ハロゲンヒータの支柱部分から炎が出 ているのを発見した.住人がベッドカバーをハロゲン ヒータに被せて消火することができた.幸い,ハロゲ ンヒータと畳を焼損した程度で大事には至らなかっ た.焼損したハロゲンヒータの状況を図 5 に示す. 消防によるハロゲンヒータの鑑識の結果,ハロゲン ヒータ支柱の内部にあるヒータの強弱を調節するダイ オードブリッジ内部で絶縁劣化が起こり,その電流に より発熱し,固定していた合成樹脂が発火したことが 判明した. このハロゲンヒータは輸入用品で数万台が国内で使 用されている.同様の火災事案が数件起こっているこ とから,メーカも社告を出し回収を行っている. ハロゲンヒータの火災には先にも触れたように可燃 物が接触することで起こる火災も多い.ハロゲンヒー タは,タイマーなどを用いて就寝時も使用する場合が
あるが,ハロゲン電球は高温になっているため,付近 の可燃物,例えばカーテンや布団などがヒータに接触 しないような環境を整えて使用することが大事で ある. 5 . 2 蛍光灯安定器(絶縁劣化により発生した火災)6) 駅構内の照明器具内にあった安定器から出火した火 災である.乗降客が案内板から煙が出ているのを発見 し,連絡を受けた駅員が発煙を確認し,案内板のブレー カを作動させたことにより,煙の発生が収まった.大 きな混乱もなく,ぼやで済んだ事例である.消防によ る鑑識の結果,蛍光灯用安定器内部のコンデンサが経 年劣化で絶縁が不十分になり,短絡し出火したことが 判明した.このときの安定器内のコンデンサの状況を 図 6 に示す.また,コンデンサ以外に安定器内のコ イルのなかで短絡が起こる場合も多く,これも経年に よる絶縁劣化が原因である.コンデンサやコイルの経 年劣化は長時間使用することで必然的に起こる現象の ため,点検や交換を定期的に実施することが必要で ある. 5 . 3 浴室用換気乾燥暖房システム(接触部過熱に より発生した火災7) 2階建ての住宅に帰宅した住人が,家のなかに煙が 充満していることに気づき,近隣の人とともに消防へ 通報した火災である.発見が早かったため部分焼で済 んだ.この住宅では,ユニットバスに浴室用換気乾燥 暖房システムが設置されており,ユニットバスの天井 裏にあるこのシステムの電源配線付近から出火してい るのが確認された.消防による火災原因調査の結果, 換気乾燥暖房システム本体のより線コードと屋内配線 の F ケーブルを設置工事業者が正規の接続をせず, 手よりにより接続(以下,「手より接続」という)し ていたことから,接続部分が次第に緩んで接触抵抗が 徐々に増え,ジュール熱の発生が増大し過熱されて出 火したものと考えられた.ケーブルを手より接続して いた状況を図 7 に示す.住人が確認することが困難 な部分であり,人為的なミスにより接触部過熱が発生 した事例である.工事業者やメーカは,きちんとした 工事を行わないと火災に至ることがあることを認識 し,慎重な工事が必要である.自宅の保守を自分で行 う際,電線を手より接続で行わないようにしなければ ならない. 5 . 4 エアコン室内機(トラッキングにより発生し た火災)8) 住宅に設置されたエアコンを起動して数分経ったと き,部屋の住人が室内機の壁側から炎と煙を発見し, 消火器で消した火災である.エアコンの焼損状況を図 8に示す.消防の調査によれば,室内機モータの電源 端子部分に外部に排出されるべき水分が付着し,端子 間でトラッキングが発生したことが火災の原因であっ た.トラッキングの熱により配線被覆が発火したもの である.ファンモータの電源端子部分の状況を図 9 に示す.この製品は後に社告を出し製品の回収を実施 図 5 焼損したハロゲンヒータ 図 6 焼損した蛍光灯安定器のコンデンサ 図 7 配線を手より接続したことがわかる痕跡 図 8 焼損したエアコン室内機の外観
している. 5 . 5 プラズマテレビ(短絡と過電流による発熱) プラズマテレビを見ていると,破裂音がして画面が 消え,その後,テレビ背面から白煙が発生し,焦げる 臭いがしたため電源プラグを抜いた.幸い大きな火災 にはならず,テレビの内部基板のみの焼損で済んだ事 案である.原因調査の結果,電源基板の実装部品で破 損が認められたのは MOS 形電界効果トランジスタの 部分だけであった.このトランジスタおよび周辺の回 路を調べた結果,トランジスタのゲートとドレイン端 子間がショートしており,そのためにトランジスタに 過電流が流れ発熱したものである.ただし,トランジ スタのゲートとドレイン端子間がショートした理由は 不明である. 5 . 6 ドラム式洗濯乾燥機(半断線部分の過熱によ る火災) 住宅内の洗濯乾燥機から出火して洗濯乾燥機が設置 されていた部屋を焼いた火災である. 出火原因は消防の原因調査によると以下のようであ る.洗濯乾燥機には温度制御用のサーモスタットが組 み込まれていた.サーモスタットに電線を接続する ファストン端子ホールド部分付近で半断線が起こり, 局部的に過熱状態となり電線の被覆が発火したもので ある.ファストン端子付近の半断線の状況を図 10 に 示す.半断線が起こった理由は不明であるが,ファス トン端子のかしめ方が不適正であったことや機器の振 動が考えられる.この製品はメーカが社告を出し,回 収や交換を行っているが,メーカがすべての製品の所 在を把握しているわけではないので,ユーザーは社告 などの情報に注意を払うことが安全に用品を使ううえ で大切なことである. 6 . お わ り に 電気用品の製造や販売における法規制,電気火災の おもな発生原因,電気用品の種類による火災件数の推 移,電気用品火災の事例などを紹介した.電気火災が 少しでも減少し,安全に暮らせる環境ができることに, 本稿が少しでも役立てば幸いである. 参 考 文 献 1) 電気用品の範囲等の解釈について,経済産業省商務情 報政策局製品安全課,平成 20 年 6 月 5 日 2) 櫨山泰亮:PSE 読本,pp.2─22,電波新聞社(2007) 3) 河野照哉:高電圧工学,pp.20─65,朝倉書店(1976) 4) 電気設備学会 編:電気設備工学ハンドブック,pp.108─ 109,オーム社(2006) 5) 東京消防庁予防部調査課:火災の実態 平成 16 年版, p. 218,東京消防庁(2004) 6) 東京消防庁予防部調査課:火災の実態 平成 21 年版, p. 223,東京消防庁(2009) 7) 東京消防庁予防部調査課:火災の実態 平成 16 年版, p. 219,東京消防庁(2004) 8) 東京消防庁予防部調査課:火災の実態 平成 17 年版, p. 216,東京消防庁(2005) 図 9 エアコン室内機内のファンモータ電源端子 の状態 図 10 ファストン端子付近の 半断線の状況