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氏名(生年月日)
本 籍
学位の種類
学位授与の番号
学位授与の要件
学位論文題目
論文審査委員
(103)
タイラ タカ オミ
(昭和31
博士(医学)
乙第1449号
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
大脳皮質下刺激によって生じる視覚現象(phosphenes)について
(主査)教授 高倉 公朋
(副査)教授 鈴木 英弘,伊藤 達雄
論 文 内 容 の 要 旨
目的
ヒトの視覚路あるいは大脳視覚野を電気刺激すると
phospheneと呼ばれる視覚現象が起きることが報告
されている.この現象はおもに後頭葉視皮質の刺激で
検討されてきたが,皮質下領域が刺激された場合に関
する報告は少ない.機能的神経疾患に対して後頭部か
らの定位脳手術を行う際に,手術目標部位を生理学的
に同定するために局所の電気刺激を行うが,これに
よってしばしばphospheneが観察されたので,刺激の
部位とphospheneの性状との関係を中心にその発生
機序を検討した.
対象と方法
不随意運動や難治性痙痛に対し局所麻酔で定位脳手
術を行った24症例(20~69歳,平均44±14歳)を対象
とした.後頭部の穿頭孔から解剖学的な手術目標点に
到る経路上で,手術部位の正確な生理学的同定のため
に50Hzの単極電気刺激を行った.これによってphos-
pheneが報告された場合にその性状と刺激部位とを記
載した.
結果
計110回のphospheneが報告された.13例が白色,11
例が色のついたphospheneを報告した.正中から
10~15mm外側の領域での刺激では,鳥距溝の上側を
刺激した場合,視野の下半分にphospheneが出現する
傾向が見られた.しかし正中から16~32mm外側では,
鳥距溝の上側を刺激しても視野の上半分にphos-
pheneが出現した.また,刺激部位が深部になると急に
phospheneが出現しなくなる領域があり,この部位
は,前後交連の中点より30~501nm後方に分布してい
た.
考察
皮質下刺激では,鳥距溝の上側が下半視野を,下側
が上半視野を支配するという古典的概念に合致しない
現象がしばしば観察された.すなわち正中面から比較
的離れた領域では鳥距溝より上側の刺激でもphos-
pheneが上半視野に出現する傾向がみられる.これは
第一次視覚野の下半から第二次視覚野の外側へ投射す
る線維が刺激された結果と考えると,外側領域の刺激
で観察されやすいことと合致する.
刺激部位が深部になると急にphospheneが出現し
なくなる領域はちょうど後頭葉と頭頂葉の境界に相当
することが明らかになった.したがってphospheneを
観察することで頭頂後頭溝の生理学的同定が可能であ
り,正しい手術目標部位を定めるために良い指標とな
ると思われた.
結論
皮質下刺激によるphospheneは,色や形に関しては
視皮質刺激による場合と差はない.しかし,鳥距溝の
上側が下半視野を支配するという古典的概念に合致し
ない現象が外側領域での刺激で起こることが明らかに
なった.また,phosphenの観察は頭頂後頭溝の生理学
的同定を可能にし,手術時の指標として有用と考えら
れた.
一844一
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論文 審査 の 要 旨
頭部を強打した場合に経験される閃光のように光以外の刺激によって出現する視覚現象はphospheneと呼
ばれている.しかしこの現象が脳のいずれの部分が刺激されたときに発現するかについて研究した報告は少な
い.
本論文は,頑固な痛みや不随意運動の治療のために行われた定位脳手術に際し,手術の目標部位を定める目
的で電気刺激を行った際にたまたま出現した本現象の記録を詳細に分析し,phospheneの色,形,視野のどの
部分に出現するかについて脳の機能局在部位を明らかにした研究である.後頭葉皮質の生理学的機能解明と脳
神経外科手術における部位同定にきわめて重要な臨床的知見を加えた学術的価値の高い論文である.
主論文公表誌
大脳皮質下刺激によって生じる視覚現象(phos-
phenes)について
東京女子医科大学雑誌第63巻第12号
1478-1486頁(平成5年12月25日発行)平 孝臣
副論文公表誌
1)Comparison of glycogerl phosphoryエase
kinase of various rat tissues(ラットの各種組
織のグリコーゲンフォスフォリラーゼキナーゼ
の比較).JBiochem 91:883-888(1982)Taira
T,Kii R, Sakai K, Tabuchi H, Takimoto S,
Nakamura S, Takahashi J, Hashimoto E,
Yamamura H, Nishizuka Y
2) Cerebral evoked responses elicited by direct
stimulation of the lateral spinothalarnic tract
in the human(ヒトの外側脊髄視床路直接刺激
による大脳誘発反応).Appl Neurophysiol 48:
267-270(1985)Taira T, Amano K, Kawamura
H,Tanikawa T, Kitamura K
3)Signi負cance probability mapping of EEG in
patients with migraines(片頭痛患者の脳波の
有意差検定脳電図).Clin Topograph EEG&
EP 1:44-47(1986)Taira T, Amano K,
Kawamura H, Tanikawa T, Kawabatake H,
Notani M, Iseki H, Shiwaku T, Nagao T,
Iwata Y, Umezawa Y, Shimizu T, Kitarnura
K
4)Short-latency somatosensory-evoked poten・
tials-Direct recording from the human mid・
brain and thalamus(ヒトの視床および中脳か
ら記録した短潜時体性感覚誘発電位).Acta
Neurochir(Wien)39:170-173(1987)Taira
T,Amano K, Kawamura H, Tanikawa T,
Kawabatake H, Notani M, Iseki H, Shiwaku
T,Nagao T, Iwata Y, Umezawa Y, Shimizu
T,Kitamura K
5)脳内血腫に対するCT誘導定位脳手術手技の検
討142例の経験から.機能的脳神経外科26:
1-7(1987)平 孝臣,天野恵市,河村丁丁,谷
川達也,川畠弘子,能谷正雄,伊関 洋,塩飽
哲士,長尾建樹,岩田幸也,梅沢義裕,荒井孝
司,川崎造言,黒須昭博,村尾昌彦,清水俊彦
6)痙性斜頚を初発症状とするDystonia mus-
culorurn deformansについて.脳と神経
42(9):867-871(1990)平孝臣,Hitchcock
E
7)Decrease of peripheral blood flow after
intrathecal injection of hypertonic hypother-
mic saline(高張低温食塩水の髄腔内投与によ
る末梢血流の低下について).Pain Res
6(1):9-12(1991)Taira T, Tanikawa T,
Kawabatake H, Amano K, Fukuuchi A
8)Intracranial aneurysm in a ch五1d with Klippel
-Trenaunay-Weber syndrome:Ca6e report
(Klippel-Trenaunay-Weber症候群の小児の
頭蓋内動脈瘤).Surg Neurol 36:
303-306(1991)Taira T, Tamura Y, Kawamur-
aH
9)Unexpected movement disorders in neurosur-
gical practice:Report of three cases(脳外科
臨床における予期せぬ運動異常症).Surg
Neurol 38:135-140(1992)Taira T,
Kawamura H, Tanikawa T, Iseki H, Amano
K
10)パーキンソン病以外の運動機能異常症に対する
外科的治療の効果.機能的脳神経外科 31:
59-65(1993)平孝臣,伊関洋,河村弘庸,
谷川達也,川烏弘子,岩田幸也,梅沢義裕,高
倉公朋
一845一