• 検索結果がありません。

農村における血圧調査 : II埼玉県川越市芳野地区における調査

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "農村における血圧調査 : II埼玉県川越市芳野地区における調査"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

(東京女医画論第27巻第2号:頁:89−96昭禾目32年2月)

農村における塩圧調査

亜 埼玉県川越市芳野地区における調査

東京女子医科大学衛生学教室(主任吉岡博人教授) 助教授 諸 岡 モロ オカ

安 楽’城

ア ラ = キ 和 ワ 田 ダ

妙 子・山 口たか子

タエ コ ヤマ グチ コ

元・吉 田

ハジメ ヨシ ダ 歌 ?タ

(受付 凝霜3i年霜月27日)

1 緒 言 昭和3⑪年5月われわれは埼玉県福岡村において 血圧の集団検診を行い,先にその結果を報告1)し たが,引続き川越保健所管内の川越市芳野地区に おいて同年7月下旬から約3週間にわたって調査 を行った。芳野地区は最近川越市に合併された純 農村であって,入口4,500,687世帯のうち殆んど が農家である。脳卒中死亡率は人口10万対164で, これは福岡村と同様埼玉県会体の脳卒中死亡率と ほぼ同率である。40才以上の男女1,191名のうち ほぼ8割の937名について調査iし得た。

H 調査方法

調査方法は第1報1)の福岡村において行ったものと 次の点を除いては全く同様である。福岡村では右側を 先に測定したが,本調査においては左側から先に測定 を行った。調査は昭和30年7月下旬から約3週聞にわ たって行われた。気温は調査期間中30。C前後であっ たが,34。C.に達する日もあった。

皿 砺究結畢

調査人員は40才以上の男子428名,女子509名, 計937名で,これを5才階級にわけて比較検討し た。 ω 性別年令別血圧分布 図1は右側における性別年令別!血圧分布曲線で ある。最高勇旺の最頻値についてみると,男女と 、央 Uロ、.シ も40∼44才から60∼64才までは130mmHg以下で あるが,6与∼69才以上り高年令層になって初めて

150mmHgを越える。最低血圧の最頻値は男子6

、5∼69才を除いた男女すべての年令層において100 mmHgを越えることはない。 〔2)性別年令別平均』血圧 表亙は左右の性別年令別平均血圧値である。右 側の平均値について検討する.と,最高血圧の平均 値が150艶n遜9を越えるのは;男子は7◎才以上, 女子は65才以上の高年令屡である。最低血圧の平 均値が90mm取を越えるのは,男子は65才以上, 女子は60才以上の高年令層である。 男女間の平均血圧では最高血圧の65∼69才にお いて,有意の差をもつて女子の平均値が男子より 高いのみで,その他の年令階級では最高血圧,最 低血圧とも男女の平均血圧値閥に有意のttは認め られなかった。 (3)血圧の左右差 表1における平均値は左側を:先に測づ咋場合の 値であるが,男女の最高血圧,最:低t立庄ども左右 の平均血圧値闇に有意の差は認められなかった。 男女の最高血凪最低血田こついて∴右側が左 側より高いもの,左右岡じ値のもの,左側が右側 より高いものの数とそれぞれのしめる率を表Hに 示した。男女の最高」血圧,最低並L圧とも右側の高 Taeko MOROOKA, Takako yAiMAGVTE, H翻置贈A翼A灘, H畳ro曲畳『YOSHIDA and Vta WADA.

(Department of }lygiene, Tokyo Women’s Medical Cellege) : lnvestigations on the bloed pressure of inhibitants in the rural areas. ll lnvestigatioii in the Yoshino area of Kawagoe city of Saitama Prefecture.

(2)

28

30 20 10 0L ’ ’ 1 虞 t: 昌 i l t 昌

il

t l L , 図1 芳野地区性別年令別血圧度数分布曲線 量.高血圧 ・

男一既血嘱 A 女

へ 3・ ハ ほ し 40∼44才20 .1 ㌔t

\ 、。..己.!..\:

、㌧一/ .ノ ,ノ . ’、 . o/0 30 20 10 0 0/0 30 2C lo o o/0 30 20 10 90 30・ 20 10 0 30 20 io’ o o/0 30 20

噛う50■OQ

’ix f ノ ノ 、 1 /s,.一 ノ. 150 200 ’ Q50 4ら一4gt ・o ti/0 30 20 1P 最.菖血圧 一一一ナ低血一圧

40−44t

o o/0 30 20 10 50 rOO . .i50 ∴ 11 ロ な 、 ㌧’、 、 ’ 1 ’ 、 1 、

ビ“∵

ヨ ノ し ’ 1 − 1 ・ ■ lsg ・?oo 2so

50∼54オ

mmH2b50 践100 昌 1、 置∼ 1’l l ㌦ ノ 、 、顯r_ ノ rl/ r 魅 200 2sonym H2

45∼49オ

150 200 z50

55 一一 59 /t o o/0 30 20 1 o’ 50 ・ loO 卜}’∼ I i ’tt t K f ’Y(一 ’ 、、_層

15・.2。・吊卿噛

50.∼54オ 零

mmHゾ0

lob i41 : ll : ll tt ll一 ノ ’ t’ JN t’ / is N 50 りO tAt tAs ノ\ハ ノ ’ 、 t t I S レt、s 150 ノ 200 250 rnmU3

55∼59オ

i−sO一”一 ’2bd . 2sO・’ O olo’ 30 60 ’一64オ 20 10 sN rmt 2VO Z50

65−69オ

o o/0 30 20 10 200 250 O % 30 ワ0オ以上 2D lo 50 100. ノへ、. ./1 1 、 が ,ノ 、 mmHs.50 ;oo ,、ノ失 tt” ilt ,ノ 1’へ\、 ramgs.50 too ’lso

八,4 :tT ’V’. SINI.. ノ \、 ノ 一 V N

t50 z

№?’ ZSOmrn Ae 6.0.へ64才

50. Po

ムノへ、 1・.’亀 ノ し ノ. 1 ノ 150 200 ’250rnmiHg 6.5.一一69オ ’lo o mmH5ラ50 ]OO’ 150 レへA一零 らO IOO ,’つ .iJtt . 111 ノ’ 1、 / t JA pmto 200.?50mmH3

70オ以上

2bo 2so O’” ’一 ” 一 T70’ ioo

!’LL一・×.一一,一一.=ks一‘一一L一

(3)

最高血圧

×

性別1 ”x. ’ ” 1 男 女

年令別\例剃

左 右 1例数 左 右 40 tv 4・4 45 tv 49 50 tv 54 55 tv 59 60 tv 64 65 tv 69

70才以上

才 65 70 74 69 51 53 46

mmHg

122.7 ± 2.0 125.6 ± 2.0 129.3 土 2.9 134.9 土 2.8 148.9土4。1 148.4士4.0 168.3 士 4.5

mmHg

エ21。2:ヒ1.8 125.1 ± 1.7 128.9 =ヒ 2.8 133.1士2.9 147.6 士 1.5 146.3 士 3.8 167.2 士 4,5 76 84 78 58 79 ・ 54 80 ilwt/ ’i’ 122.0 士 2.1 127.5 ± 3.4 135.0 士 3.0 142.4 ± 4.4 145.9 土 3.0 160.6 ± 4.3 170.5 ± 3.4

mmHg

123.7 ± 2.2 128.4 ± 2.5 133.3 ± 2.8 141.4 ± 4.0 145.3 ± 3.O q 159.6 ± 4.3 170.6 ± 3.3

最低血圧

×. ・ltliBtJ l

年令別\繭数「

男 女 左 右

lpm

左 右 ・一一一一一k 40 tw 44 45 n“ 49 50 tv 54 55 rv 59 60 nv 64 65 N 69

70才以上

才 65 70 74 69 51 53 46 mmHg1 76.1 ± O.8 80.7土0.8 81。9土1.2 83.0 :ヒ 1.0 88.7 ± 2.7 q. o.o ± L7 9L 5 ± 1.2 皿mHgI 76.4士1。2 79・4士1・2

P

11:贈:引

88.2 ± 2.5 90.9 ± 2.0 92.2士1.7 76 84 78 58 79 54 80 ih−m−fi−〟F’ 77.4 ± 1.3 79.3 士 0.8 82。4士1.1 88.5土1.4 87.0 ± 1.0 88・5 ± lp5 90.4 ± LO IIIim71firgl, 78.6 士 1.0 78.5 ± O.8 82.6 ± 1.1 1 87・8± le7 1 90・1士1・2 90.4± 1.8 ] いものが低率である。 次に男女の:最高血圧,最低血圧について,左右 差の大小と高血圧との聞の関係をみるために,左

右差がそれぞれ1GmmHg以上のものと9mmHg

表H 左右血圧の異同 89

8…2/

(4)高血圧および低血圧の出現率 表Wは右側の測定値における高.酌王圧の出現率で あるが,第1報1)と同じく最高血圧150mmHg以 男

最高血圧

右 高 等 左 高

1例数(%)

±一 女 115 (26.8) 156 (36.5) 157 (36.7) 右 等 左

高 164 (32.2) 165 (32.4) 180 (35.4)

最低血圧

例数 (%) 114 (26.6) 183 (42.8) 131 (30.6) 132 (25.9) 217 (42.6) 160 (31.5) 以下のものとの高1血圧出現率を比較した。男子の 最高血圧,女子の最高血圧,最低血圧において, 有意の差をもつて左右差10mmHg以上のものに 高血圧の出現が多かった。すなわち最高血圧の左 右差が大きいものに男女とも高血圧者が多く,最 低血圧では左右差の著しい女子に高血圧者が多く 認められた。 表町 A B 血圧の左右差の大小と高血圧の比率 左右差lemmHg以上あるもの

左罐9㎜Hg以下及び左翼しいもの

幽些圧左右三十井川鵬・%・騨掟

男 女 最高血圧 A 1 62] 24 (3s. 7) gL, g,6一一L”s−6(g{,!g2.s) 2. 31

IA

最低血圧1− B 110 1 20(18.2) ・・8 48(・…、」. O. 73 最高血圧i

A

76 1 3g(sl.3) B i 433i 136(31.4)

最雌脛L881

4Z(46. 6) ) 3. 27

B

421 i 134 (31. 8) 3. 03 上のものを高血圧とした揚合と(以下150と略記), 最高一血圧150mm芸19似上であって最低血圧が90 mmHgを越えるもの(以下150∼90と略記)を高 血圧とした場合について出現率を示したものであ

(4)

30 表IV 芳野地区高血圧の出現率 A’最高血圧150mmHg以上を高血圧としたもの B 最高血圧150mmHg以上,最低血圧90mmHg以上を高血圧としたもの

\ 性別

x

(4ikSL“

40∼.44才 ’45 rN, 49 50 t一 .54 55 rw 59 60 rv .64 65 rv 69

70才以上

男 被 検 者 数:

A

B

例 数 (%) 例 数 (%) 二 一”一

被検! A

者数 例数

B

(%) 例 数 (%) 65 70 74 69 51 53 46 4 (6.2) 7 (10.0) 14 (18.9) 13 (18.8) 19 (37.3) 23 (43.4) 31 (67.4) 3 7 14 11 .14 16 21 (4. 6) (10. 0) .(18. 9) (15. 9) (27r 5) (30. 2) (45.7) 76 84 78. 58 79 54 80 5 (6. 6) 15 (17.9) 17 (21.8) 21 (36. 2) 33 (41.8) 29 (53.7) 51 (72. 9) 5 12 12 19 an 22 30 (6. 6) (14. 3) (15. 4) (32. 8) (30. 4) ・(40. 7) (42. 9) る。150以上を高一血圧とする物合の率は,65∼69 才で女子は50%を越えるが,男子は同年令層では 50%に達しない。150∼90以上を高一血圧とする揚 合の出現率は,全年令50%に達することはない。 男女間の高血圧出現率は,一般に女子が男子より も高率である。55∼59才の女子が,男子の同年令 層に比して急に高率となっているのは,更年期直 後における女子の血圧の動揺をしめしているもの と思われる。 低血圧を最:高血圧99mmHg以下のものとする と,その出現率は表Vの如くである。低血圧は40 才以上の全年令層を通じて男子3.7%,女子3.3% に過ぎない。 (5)調査項目別による高血圧出現の比率 第1報1)のように各調査項目別による高血圧出 現率の差を比較した。表VIに示す。 既往症のうち心臓疾患,腎臓疾患にかかったこ ‘表V 芳野地区低」血圧の出現率 最高血圧99mmHg以下のもの 男 40∼ 44才 45 tv 49 50 iw 54. 55 tv 59 60 rv 64 65 一v 69

70才以上

被検者羽数(%) 65 70 74 69 51 53 46 3 (4. 6) 4 (5.7) 4 (5. 4) 2 (2. 9) 1 (2. 0) 2 (3.8) o 女 被検者例数(%) 76 84 78 58 79 541 80 3 (4.0) 5 (6. 0) 3 (3. 9) 3 (5. 2) 3 (3.8) o o

LJ

とのあるものとないものの間の高血圧出現率を比 較した。両者とも既往のあるものの方が高率に思 われたが,有意の差は認められなかった。 現症として肩凝,頭重等の訴えをもっているも のといないものとの高血圧出現率を比較すると, 自覚症のあるものの方が高率に見えたが,両者間 に有意の差は認められなかった。 .体格を肥満者と普通のものとに分けて,高血圧 出現率を比較したが,両者間には明らかに有意の 差を認めた。すなわち肥満者には普通の奪格のも のより高血圧のものが多かった。 『主食を,白米のみ食べているものと,,衰,麺類 等の混食のものと1ど分けたが,両者聞に有意の差 は認められなかった。肉,魚,海藻,鶏卵について, それぞれ1∼3日に1回食べるものと,あまり食 べないものとに分けて,高一血圧の出現率を比較し たが,それらのうちで鶏卵についてのみ有意の差 が見出された。すなわち鶏卵をあまり食べていな いものには,比較的多く食べているものよりも高 血圧者が数多く見出された。つぎにこの地方には 乳牛を飼っている家が多いので,牛乳の摂取につ いて調査してみた。毎日1合以上飲んでいるもの と,あまり飲まないものの聞の高血圧出現率を比 較したところ,あまり飲んでいないものの方に, 有意の差をもつて高血圧者が多く見出された。 嗜好品では酒および煙:草について,男子のみの のむものとのまないものとの間の高並旺出現率を 比較したが,両者とも有意の差は認められなかっ た。 労働については,はじめに農業とその他のもの とに分け,両者間の高血圧出現率を比較したとこ ろ,有意の差をもつて,その他のものに高血圧者 が多かった。’オかる1と,その他のもののうちには 農業以外の職業に従事するもののほかに,現在仕 事をしていない高年令層のものが含まれる。そこ

一92一

(5)

表VI調査項目別による高血圧出現の比率 調 査 項 目 既 往 症 あ

心臓疾患

な り し

腎臓疾患停

り し

被検者数

融圧者数(%)差の、判粕

42 895 267 (29.8)14 (33.3) O. 40 43 894 266 (29.8)15 (34.9) O. 69 脳 症

臨症状妻

り し 275 662 150 (54.6)327 (49.4) 体』

格 暴論誘

87067 31 (46.3) 250 ・ (28. 7) 1. 44. 主

食窺米の豊

92116 4 (25.0)277 (30.1) 1∼3日に1回 あまり食べない 2. 79** O. 46 肉 91522 5 (22.7)276 (30.2) O. 82 食 餌 魚 あまり食べない1t・LX 3日e・こ1[郵 575362 ”IT,,’1 746 1 101 (27.9) 180 (31.3) o. ge 海 藻 あまり食べない

1N3日に1回

鶏 卵 牛

Il 一v 3目el、回r

あま喰べない1

508429 嗜 好 品

1日1合以上

乳 あまり飲まない の む の ま な い

,陶器ll… …35

1167一一P1k.ti’s)i…一 m一”’’’”2’・34*’

P

II3 824 263 165 22 (19.5) 259 〈3L 4) 72 (27.4) 39 (23.6) 煙

草劣まな獣

297131 71 (23e9)40 (30.5) 2. gs** I O.85 1 ’i 玉.40 労 VJ

耕地面積窪

妊 娠

0∼3回

4回以上

1’“閲

家族

倦イ

尿 蛋 親 に 親 に

自屡

反以上

447 反未 溝 161 .一一一一一一一. hー一一一 I喜一.一 59

』ある1 32・

ない i 717

性 33

性 i 904

!02 (22.8) 32 (19・ 9s ) 127 (43.5) 23 (39.0) O. 7.J O. 69 8 4. (2 6. 3) 19. 7 (27. 5) 2! (63.6) 258 (28.5) O. 41 4. 12** * 5%の危険率で有意 ** で農業に従事するものを年令別にみると,40∼59 才の壮年層が77.8%をしめている。従って農業を 営むものめ血圧が,その他の職業のものより低い ということには意味がないものと考えられた。そ こで現在農業に従事しているもののうちで,工人 当りの耕地面積平:均4反以上のものと,4反に濡 たないものの高一血圧の率は,前者が高率のようで あったが,両者間に有意の差は認められなかった。 妊娠回数との関係については,40才台を除いて 50才以上について,3回以下のものと4回以上の ものの高血圧出現率を比較したが,有意の差は認 1%の危険率で有意 められなかった。 家族歴では,親に脳卒中に罹患中あるいは死亡 例のあるものとないもめについて,高1血圧の率を 比較したが,両者闇に有意の差を認めなかった。 尿蛋白陽性のものと陰性のものとの高血圧出現 率には明らかに有意の差を認めた。すなわち尿蛋 白陽性のものには,陰性の紛に上ヒベて高血圧者 が多く見出されたQ

IV考 察

一福岡村との比較一

本調査を第1報1)に報告した福岡村における調

(6)

32 査と比較する。性別年令別平均血圧を比べると, 最高1血圧は男子では全年令階級とも福岡村が高 く,女子では40∼44才を除いたすべての年令層に おいて,有意の差をもつて福岡村が高かつナこ。最 低血圧は女子の40∼44才のみ芳野地区が高かった が,概して男女とも壮年層では福岡村が高く,老 年層では両者間に有意の差を認めなかった。高1血 圧の出現率をみても,芳野地区に比して福岡村は 男女とも著しく高率である。このように福岡村が 芳野地区より1血圧値が高く,高一血圧者が多い傾向 を示しているのは,如何なる理由によるものであ ろうか。測定時の条件の相異点は,福岡村では5 月に右側から先に測り,芳野地区では8月に左側 を先に測ったことである。 まず季飾による影響についてみると,一色2)は 男子のみの統計であるが,50才以上では最高血圧, 最:低血圧とも冬期から春先にかけて高く,夏期か ら初秋にかけて低いと述べている。50才以上の月 別平均値をみると,最:高血圧は5月142.4mmH9,

8月138.5mmHg,最低血圧は5月87.2mmHg,

8月84. 9mmHgを示している。高橋5)は一般には 冬は夏に比し高い値をとる傾向があると述べ,中 沢4)は男女246名について6月と12月に血圧を測 定したところ,最高一血圧が有意の差をもつて12月 に高かった。故に一画の気温は昇圧の一つの因子 になるらしく思われると述べている。このような 点から夏期と冬期ほどの著しい差はないとして も,8月の酷暑の中で行われた芳野地区の血圧値 が,5月に行った福岡村の血圧値よりも低めの値 を示すであろうと心えられる。 これらの報告は右側の血圧値について述べてい るのであるが,血圧測定の順序は福岡村では右側 を先に測った値であり,芳野地区では左側を先に 測った場合の右側の値をとっている。斎藤5)も述 べているように,はじめに測る側の血圧が精神的 緊張によって高くなることがあるから,これによ ってもまた前述の如く,右側を先に測った福岡村 の値が芳野地区の値より高めに出やすいことが推 察される。 一般に.血圧の左右差については,、斎藤5)は尋常 の並旺をもつている健康な人では大体右の方が高 いと言い,通常最:高血圧については±10mmHg,

最低血圧については±5mmHgぐらいの差があ

ると述べている。青山6)は1力年にわたって男女 4名つつの左右血圧を左側を:先に測定し,最高血 圧は男子4例,女子3例に右側高く,最低一血圧は 男子3例,女子2例に右側が高かったと報告して いる。村瀬7)は100名について50名つつ左側およ び右側を先に測り,最高一血圧右側の高いもの56.0 %,左側の高いもの37.0%,左右同じもの7.0% で右高のものが多かったと述べている。そこで福 岡村と芳野地区の平均値を比較すると,右側を先 に測った福岡村では最:高血圧,最:低血圧とも概し て右側が高い傾向にあり,左側を:先に測った芳野 地区では最高血圧,最低血圧とも:左右差は認めら ’れなかった。右側の高いもの,左右心高のもの, 左側の高いものの分布は,福岡村では最高.血圧, 最低血圧とも右側の高いものが極めて高率であ り,芳野地区では概して左右同韻のもの,左側の 高いもの,右側の高いものの順に高率であった が,三者間に著しい相異はなかった。このように 左右1血圧の平均値をみると,右側を先に測ったと きは右側が高く,左側を先に測ったときは左右ep 血圧値間に差が認められなかったこと,左右の血 圧値の異同をみると,右側を先に測つtときは右 高のものが極めて高率であり,左側を:先に測った ときは右側の高いものが僅かに低率であったこ と,および先に測った方の血圧値が高めの値をと りやすいこと,これらの点より考えると,一般に 血圧は最高,最低とも右側が左側より高い傾向に あることが推測される。 斎藤5),木村8)も述べているように,1血圧の左 右差ことに最高血圧の左右差が著明なものに高1血 圧者が多いことは,本調査においても明らかであ った。 次に高血圧の出現率について検討する。最低血 圧が高血圧の決定および予後に重要な意義をもつ ことは明らかであり,佐々9)は経験上高血圧性疾 患に際し,最低一血圧の高いものほど経過が不良で あって最高1血圧よりは最低血圧の方がよりよき目 標となると述べている。しかし中沢4)は最高血圧 が180mmHgくらいあっても最低血圧が90mmH:9 くらいのものがまれではなく,しかもそういう人 々の中から脳盗」血がおこる。だからかりに:最高並L 圧が高くても,最低一血圧に恒久的上昇がないなら ば,それは本態性高血圧症ではないとしている学 者があるが,それは誤りであると言っている。そ こで本調査において,最低血圧が90mmHgに達

一94一

(7)

しないで最高血圧が150mmHg以上の値を示して いるものの数をしらべると,150∼169mmHgを しめるものが男子17名,女子30名,170mmHg以 上をしめすものが男子8名,女子19名をかぞえて いる。これらのうちには最高220mmHgをしめす ものも含まれている。逆に最高血圧が150mmHg に達しないで最:低血圧が90mmH:9を越えるもの の数をしらべると,90∼99mmHgをしめるものが 男子30名,女子33名,100mmHg以上の値をしめ すものが男子16名,女子12名で1これらのうちに は最高120mmHgをしめすものが含まれている。 これらの人々,ことに最低血圧100mmHgを越え る人々が,はたして正常一血圧者として看過されて いいものかどうか,前者とともに予後の追及が必 要であろう。 問診の上に現われた福岡村と芳野地区の生活状 況をみると,食生活において肉類を1∼3日に1 回食べるものは,福岡19.8%,芳野23.5%であま り差をみないが,魚類を1∼3日に1回食べるも のは,福岡63.9%,芳野38.6%で,農家の多い芳 野地区は福岡村に比べて魚類の摂取が少い。それ に代るものとして芳野地区の鶏卵の摂取状況をみ ると,1∼3日に1回食べるものが54.2%をしめ ている。また副業として乳牛を飼っている農家が 多いので牛乳の摂取についてしらべたが,毎日1 合以上飲んでいるというものは12.1%に過ぎなか った。しかし鶏卵,牛乳ともにあまり摂:取してい ないものに,有意の差をもつて多くの高血圧者を 見出している点から,何らかの形で良質の蛋白質 の補給が必要であることを物語っているのではな かろうか。 V 総 括 昭禾U30年7月下旬から約3週間にわだり,埼玉 県川越市芳野地区において血圧調査を行った。椅 気位で左側を先に左右両側を測定した。対象を40 才以上の男女としたが,ほぼ8割の937名につい て調査しえた。その結果は次の如くであった。 1)性別年令別1血圧分布をみると,最高血圧の 最頻値が150mmHgを越えるのは,男女とも65才 以上の高年令層である。

2)性別年令別平均血圧は,最高血圧が150

mmH:9を越えるのは,男子70才以上,女子65才以

上の高年令聞であり,最低血圧が90mmHgを越

えるのは,男子65才以上,女子60才以上の高年令 層である。男女間の平均血圧は,65∼69才の最高 血圧において,女子の平均値が有意の差をもつて 男子より高いのみで,その他の年令層にあっては 最高一血圧,最:低血圧とも,両者間に有意の差は認 められなかった:。 平均血圧値を第1報に報告した福岡村における 調査と比較すると,概して最高血圧,最低血圧と も本調査の方が低めの値を示している。これは本 調査は8月の酷暑の中で行われたために,5月に 行われた福岡村の調査よりは低めの値をとったこ と,および本調査は左側から先に測ったときの右 側の値であり,福岡村の調査は右側を先に測った 値であるために,福岡村の調査が高めの値をとっ たものと考えられた。 3)左右の平均血圧値聞には男女の最高1血圧, 最低血圧とも差はなかった。左右の1血圧値聞にお いて,右高のもの,左右一高のもの,晶晶のもの それぞれのしめる率のうちで,右高のものが僅か に低率であった。左側を先に測った本調査が上記 の如くであり,右側を先に測った福岡村の調査が 最高血圧,最:低一血圧とも概して右側が高い傾向に あり,また右高のものが極めて高率であったこ と,およびその他種々の報告から,右側の一血圧が :左側より高い傾向にあることが推測された。 血圧の左右差,ことに最高血圧の左右差が著し いものに,明らかに高血圧者が多く見出された。 4)高血圧の出現率は,最高一血圧150mmHg以 上および最高血圧ユ50mmHg,最低1血圧90mmHg 以上の2つについて観察した。前者では,65∼69 才で女子は50%を越えるが,男子は同年令層では 50%に達しない。後者では,全年令層にわたって 50%を越えることはない。男女間の高1血圧出現率 には著しい差はないが,55∼59才の女子が男子の 同年令層に比して急に高率となっているのは,更 年期後における女子の一血圧の動揺をしめすもので あろう。 最:低血圧が90mmHgに達しないで最:高一血圧が1

50mmHg以上のものが,男子25名,女子49名を

カ〉そえ,漏壷圧が150㎜H9燵しない撮低

血圧が90mmHgを越えるものが,男子46名,女

子45名をかぞえているが,これらの人々の予後の 追及が重要と思われる。 低血圧の出現率は,40才以上の男子3.7%,女 子3.3%である。

(8)

34 5)問診による調査項目のうちで,高血圧の出 現に有意の差を認めたのは,次のものである。肥 満者には普通の体格のものより高血圧者が多く, 鶏卵をあまり食べないものは多く食べているもの より高血圧者多く,牛乳をあまり飲んでいないも のは比較的多く飲んでいるものより高血圧者が多 かった。尿蛋自の陽性のものに陰性のものより高 一血圧者が数多く見出された。 (おわりに,吉岡博入教授のご指導とこ校閲を深く感 謝いたします。) 交 献 1) 諸岡妙子外:農村における血圧調査, 1 埼玉 県福岡村における調査,東京女子医科大学雑誌, 26, 397tv4e6 (BB31) 2)一色嗣武:血圧の統計的研究,第1報,保険医 学雑誌,54,29∼36(昭31) 3)高橋英次:東北の一農村部落における血圧の夏 冬の比較,医学と生物学,36,64∼67(昭30) 4)中沢房吉:高血圧病と環境条件,医学シンポジ ウム第5輯”高血圧”,82∼91,診断と治療社(昭 30) 一 5)斎藤十六:血圧の左右差,. 坙{医事新報,No. 1489, 3828t−v29’(HB27) 6)青山 隆:健康者に於ける血圧値の動揺につい て(予報),保健医学雑誌,51,5∼16(昭28) 7)村瀬英吉:某造船所従業員血圧値について,広 島医学,9,175∼181(昭31) 8)木村 武:岩手県農山漁村の血圧調査(第1報) 岩手医学雑誌,5,155・V162(昭29) 9)佐々廉平:最低血圧の臨床的意義,日本医事新 報,No.1515,1868∼69(昭28)

一96一

参照

関連したドキュメント

浸透圧調節系は抗利尿ホルモンが水分の出納により血

 活性型ビタミン D₃ 製剤は血中カルシウム値を上昇 させる.軽度の高カルシウム血症は腎血管を収縮さ

一方、区の空き家率をみると、平成 15 年の調査では 12.6%(全国 12.2%)と 全国をやや上回っていましたが、平成 20 年は 10.3%(全国 13.1%) 、平成

基幹系統 地内基幹送電線(最上位電圧から 2 階級)の送電線,最上位電圧から 2 階級 の母線,最上位電圧から 2 階級を連系する変圧器(変圧器

○「調査期間(平成 6 年〜10 年)」と「平成 12 年〜16 年」の状況の比較検証 . ・多くの観測井において、 「平成 12 年から

(水道)各年の区市町村別年平均日揚水量データに、H18 時点に現存 する水道水源井の区市町村ごとの揚水比率を乗じて、メッ

(79) 不当廉売された調査対象貨物の輸入の事実の有無を調査するための調査対象貨物と比較す

ラボにおける比重選別実験の結果を図19に示す。比重選別操作 1 回目では水に沈むフ レークと浮くフレークがあった。浮くフレークは比重が水の