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実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) (調査報告33)

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調査報告三十三 ﹃苔の衣﹄は鎌倉時代の擬古物語作品である。作者は未詳。﹃無名草子﹄に記述が見られぬこと、﹃風葉和歌集﹄に二 首採用されていることから、前者の成立推定年代上限の正治二年︵一二○○︶をその上限とし、後者の成立する文永八年 ︵一二七一︶を下限とする時期を﹃苔の衣﹄の成立と推定されている。登場人物は三代、設定年代は四○年余に亘る恋物 語であり、四巻ないし五巻に記述される長編の物語である。梗概は﹃日本古典文学大辞典﹄︵岩波書店刊︶をはじめとし て、本作品を紹介する近年の著述にはほとんど欠かさず記載されているので、本稿では省略したい。 散逸作品が多い同時代の物語の中ではかなり読者に歓迎されたらしく、比較的多くの写本が現存する。﹃國書總目録﹄ に掲載するのをそのまま挙げれば、①国会図書館一○冊本、②同二冊本、③内閣文庫二冊本、④同︵残巻一・二︶二冊本、 ⑤書陵部一冊零本、⑥金沢大三冊本、⑦京都大二冊本、⑧東京教育大四冊本、⑨実践女子大五冊本、⑩同五冊本、⑪東京 大一冊本、⑫島原松平文庫︵残巻一・四︶二冊本、⑬同一冊本、⑭盛岡公民館四冊本、⑮神宮文庫二冊本、⑯尊経閣文庫 四冊本、⑰竹柏園文庫四冊本、⑱春海文庫四冊本、⑲穂久邇文庫四冊本、⑳竜門文庫三冊本、④旧彰考館文庫本、の計二

実践女子大学図書館蔵﹃苔の衣﹂︵五本︶

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三十三実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) ◇尊経閣叢刊﹃こけ衣﹄︵一九三九年二月刊︶⋮:⑯尊経閣文庫本の複製 ◇久曽神昇氏校﹃苔の衣上・下﹄︵古典文庫、一九五四年四・六月刊︶・⋮:⑲穂久邇文庫本の翻刻 などがあるに過ぎず、後者において、諸本を穂久邇文庫本系と前田尊経閣文庫本系の二系統に分類する基準が立てられた が、一般に容易に読まれうる状態ではなかった。最近、 ◇市古貞次・三角洋一両氏編﹃鎌倉時代物語集成。第三巻﹄︵笠間書院、一九九○年五月刊︶・⋮.③内閣文庫本の翻刻 が出版され、ようやく本格的な研究態勢の条件が整いつつあるといえよう。 今回ここに紹介するのは本学図書館の各文庫に分蔵する﹃苔の衣﹄五本である。すでに学外にも周知の如く、本学には 黒川・常盤松の両文庫をはじめ、山岸徳平博士旧蔵本からなる山岸文庫などの由緒ある文庫を擁して定評があるが、次に 示すようにいずれの文庫にも当該作品﹃苔の衣﹄写本を所蔵している。

こけのころも江戸初期写鳥の子料紙粘葉装/表紙紺紙金泥草木絵見返し金箔貼四帖

﹁夏の巻﹂巻頭少脱文あり。﹁英王堂蔵書﹂及び﹁和学講談所﹂蔵印あり。 とある︵現在のところ売り立て先については不明︶。以上に挙げたものの中で現在所在不明のものも含め、さらにこれを一 本として加えれば、学会既知の写本は二三部にのぼることになる。 しかし、擬古物語という性格がわざわいしてか、近代に入ってからもいくつかの論考が試みられながらも、本文の紹介 同会の目録には、 は遅々として進まず、かろうじて、 ・十六両日に東京古典会主催で行なわれた﹁古典籍下見展観大入札会﹂に未知の江戸初期写四冊本の一本が出品された。 一本。﹃古典籍総合目録﹄には、⑳伊達開拓記念館四冊本、が補足されている。また、平成三年︵一九九一︶十一月十五 − 1 1 q − ユ ュ ジ

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㈹﹁こけ衣全﹂一冊、書陵部本の写。文庫リスト番号﹁三三三一﹂。 ⑤﹁苔の衣﹂︵巻一題叢による︶四冊本、東京文理大学本の写。文庫リスト番号﹁三三三二﹂。 ﹃國害總目録﹄には﹁実践︵五冊本二部︶﹂︵第三巻三九○頁︶と記載されているが、﹁五冊本﹂で該当するのは黒川文 庫ののしか見当らない。あるいは②を誤認したものか。﹃尊経閣叢刊﹄の別冊解説には﹁黒川真頼旧蔵本﹂の他に﹁山岸 徳平蔵本五冊題策に古解呉呂裳とあり﹂︵二八頁︶とあるが、この五冊本も山岸文庫には見当らず、今のところ不明 であり、不審を感じさせる。とすれば、右に触れたような研究情勢からすれば、いまこの五本を紹介するのは何らかの意 義があるものと信ずる次第である。 ︹黒川文庫︺ ︹常磐松文庫︺ ③﹁一江 ︹山岸文庫︺ ︵注︶文芸資料研究所で作成している﹁山岸文庫リスト﹂では、﹁三三三三﹂︵同文庫登録番号﹁一九六二七﹂︶に ﹁こけ衣春﹂があるが、安田文庫本の翻刻を和文タイプしたもので、巻末の山岸氏の識語に﹁こけ衣春一冊安 田文庫本/橘氏借覧臨講時印刷云云/回顧十数年前也/今日綴之、今昔感頻涌者也/昭和舟年大呂昏黄/於高田本町 寓居記之/岸廼舎﹂と墨書されている。本文には山岸氏の筆跡の.ヘン字の言込があり、和文タイプ用紙を綴じた裏に ボール紙を補強に当てた、武骨な体裁をしている。当面これを除外しておくが、山岸氏識語を有する点で、同氏旧蔵 ②﹁こけ乃衣﹂四冊本、文庫目録番号﹁一二九﹂。 ⑩﹁苔衣﹂︵巻一題釜による︶五冊本、文庫目録番号コニ八﹂。 ﹁こけころも 一二﹂一冊零本、整理番号﹁五九一二六﹂。

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三十三実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) 墨付、第一冊より順に、五四・四八・五四・四一︵別に首遊紙一丁︶・三九。無辺無界、一面十行に書く。吉墨・朱筆 の言き入れ・ミセヶチなどあり。各冊巻首第一丁オモテ右下端に﹁黒川真頼蔵書﹂﹁黒川光隆蔵﹂﹁黒川真道蔵書﹂の単 枠長方朱印あり。第一冊一丁オモテに春村の序が細字で記されてある。 此物語︿建長の頃なと作れりしものとそおほゆる其故︿なそといふに﹂ことはつかひなといやしきかおほくてそれよ りかミにくのほるましくおのつから﹂おほゆれ︿そかしそれより下りてもおほえす文永の風葉集に此うちの﹂歌二首 を撰へりそく風葉集恋五云ひさしうおとし侍らさりける人に五月雨のひま﹂につかはされ侍りけるこけのころもの 一品宮おもひやれはれまも見えぬさミたれに﹂とはて程ふる袖のしつくを同雑一云女のおもひに侍りけるころさかの 院へまゐり﹂けるに色つきわたれる梢を見て苔のころもの右大将小倉山ミねのもミちはいろ﹂つきぬなけきのミこ そとぎはなりけりと見えたり上のうた︿此物語の第三廷﹂次のうたも同巻越ハに見えたり物語中のうたすへて九十 以下、各本の書誌を略記しておこう。 伽黒川文庫・黒川春村害入五冊本文庫目録番号コニ八﹂。以下﹁春村害入本﹂と仮称する。 空色紙表紙、寸法・縦二七・三糎、横一八・八糎。中央に冑墨流の題篭︵一八・五糎×四・一糎︶に外題を墨書、﹁苔 衣こ﹁こけ乱ろも二﹂﹁古計五呂毛三﹂﹁よ→ころも四﹂﹁苔衣五終﹂。第一冊のみ右上端に丸に﹁物語﹂ の朱印、﹁春村害入本﹂と朱書し、さらに右下端にも﹁共五冊十七﹂︵﹁十七﹂は墨書︶と朱書する。内題は各冊なく、第 一冊・第三冊見返し︵本文共紙︶が剥離して遊紙化したオモテ左上端に小字で﹁苔衣こ﹁苔衣三﹂との墨書がある。 一冊・第三冊見返、 料紙は楮、袋綴。 墨付、第一冊よ鯛 本の中でも微小ながらも位置を占めるために付言しておく。 − 1 2 1 −

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が上流に立つものであろう。 比較対照の便に、いま系両 ︵・点I朱︶一程に先帝とミゆ 九首標↑蔀軒勃密葬仁蔀首﹂癖淫封籠あるを風葉に︿た具二首を載たりさて此物語を苔の衣といふ︿巻一巻に﹂逢ての恋も あはぬなけきも人の世にくさま,I、のおほかなる中に苔の衣の御なからひはかり﹂あかぬわかれまてためしなくあ はれなる事ハなかりけり叉巻一豆十六に山おろしのけはしきに﹂苔をころもとして風をふせきてのミ過侍る云々綾羅錦 繍にも苔の衣草のまくらハこよなく﹂かへまさりに侍りぬへけれ︿菜つミ水くミてもかの世界へ参り侍らんこそ年こ ろのねかひにて﹂侍らめとていとくちをしくおほしたる御けしきくいひしらすめてたく見奉れ︿れいのさほう一こと りまかなひてやつしはて給ひぬれ︿しうせんのこけの衣き給ふとて色々にたもとを﹂今︿とて苔のころもにたちそか へつるとそなかめられ給ふ云々とあるによれり既に﹂いへることく詞つかひなと︿無下に後さまなるところノーも見 ゆれとさ︿いへと一部の作意ご頗あはれにかけりしものなりさて系図をもおるj、しるしいふへし 以下、一丁ゥラから二丁ウラにかけて系図を付し、系図末尾に﹁右︿一読のついてに大概をしるせるなれハ猶不審のす ちj、おほかり他日なほ再考/芳蘭︵花押︶﹂という注記をする︵﹁芳蘭﹂は春村の号︶。この系図は﹃尊経閣叢刊﹄の解説 にある系図と同じものだが、それは﹁帝国図書館蔵本の害入その他を参考﹂した由であり、現国会図書館蔵の一○冊本を 安政六年︵一八五九︶の写とする奥書に従えば、春村の晩年︵慶応二年・一八六六︶と相前後するものの、おそらく該本 ︵・点I朱︶ 。l朱雀院 ’’一世源 一存にミゆ

氏I

一淨朱雀院とミゆ いま系図の一 部を掲げておこう。 一崔当今とミゆ一計四御譲位

冷泉院 一冬にミゆ五郵一叺道弛姫鱈腱峠ゆ

女一宮又莞し給ふとミゅ

一一霊嵯峨院へ遷り給ふ

’三條院

五 一 左冊左六 一 御 御 母 讓 関 一 位 白 右 冊 と 御 四 き 妹 御 こ と 談 ゆ お 位 二一東宮とミゆ

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三十三実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) 以上、一丁ウラの分を掲げてみた。 ’1右大臣壹缶大納言とミゆ任三位中将の時より内大臣三君に住給ふ 一計一任右大将一都七任内大臣二麺ハ右大臣三動莞給ふ ︵、朱点ミセヶチ︶

I内大典蕊師號議と噂

一二五宝何日J誕ヨレー﹃、、恥斐

|l中君一計一式部卿宮北方王右爵満点

ノ ー三君一在源大納言北方東院御方と聞ゅ︵・点l朱︶一暹故中務卿宮とミゅ .I中務卿宮 姫 中 権 君 納 大 = 右 十 右 九 一 口 =

ふふふふ冨脊

ミ ゆ ゆ

’1兵部卿宮l腫着螺俸維蓄瀝︲

fL −識ナにミゆ前斎院とミゆ ’四君四錘式部卿宮のうへの対君

四麺おとり腹とミ︽ゆ給ふ

此宮達朱雀院皇子欺

二計二降誕一一 兵部卿宮l1llll 御母同上四罎兵部卿宮と 五割莞給ふ

l当今局縢L

一一暹御元服 し 一麺御母関白姫君 部四東宮に立給ふ 五計一御即位 垂御着袴四毎御元服 申す四卦四式部卿宮姫君に通給ふ l姫宮 一敬一源中将通給ふ 一垂宰相中将とミゆ二割一宰相に任給ふ ︲J1中納一一一戸 とミゆ下蕃一対七壬巾油言 | ’ 東 姫 宮 君 五 四 一 四 一 五 五 出 立 降 源 御 家 左 冊 右 廿 右 十 右 三

坊 蕊 蝿 囎

罵│韓‘

の 御 1 1 とミゆ不審一都七任中納言

l姫講一許喜

関白北方 一壼源内大臣 l中君北方こ西院 一計七うせ給ふ 御母女御右大将入道御女 | ’

l皇子畠一御誕生

− 1 2 3 −

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という校合本奥書を記す。﹃尊経閣叢刊﹄の解説では諸本を四巻本・五巻本の二系統に大別し、五巻本として﹁黒川真頼 氏旧蔵本﹂﹁佐佐木信綱氏蔵本﹂﹁帝国図書館蔵本﹂﹁彰考館蔵本﹂﹁山岸徳平氏蔵本﹂の五本を挙げているが、いずれ も伝流上かなり近しい関係にあるものと思われる。彰考館本は戦火に罹災して現存せず、佐佐木信綱蔵のいわゆる竹柏園 本も行方が不明のごとくだが、上記の﹃尊経閣叢刊﹄解説によれば、 奥書によれば藤尾景秀なる人が黒川春村所蔵の本を以て書写し、後塙家所蔵の本︵上田万年蔵本とは別の本︶を以て 校合したもの。塙本は四冊の本でその奥書は、 右四冊正敷元本令借之写之畢不可有他見者也 とある。塙本校合は竹柏園本の段階でなされたものではなく、竹柏園本は既に校合された春村害入本を奥書ごと書写した のであり、春村害入本が親本であることが明らかなのである。 その他該本に直接関わる識語等は見えないが、各冊末尾に細字でその冊内の歌数を記す。これも第一冊より順に挙げれ ば、第一冊五一丁オモテ最終行下端に﹁歌員十九首﹂、第二冊四七丁オモテ﹁歌員十七首﹂、第三冊六二丁ウラ﹁歌員三十 六首﹂、第四冊四一丁ウラ﹁歌員十一首︲﹂、第五冊四○丁オモテ﹁歌員十六首/惣計九十九首﹂とある。本文中、和歌は一 孝争た、 校合本 塙氏蔵書奥書 右四冊正敷元本令借之 写之畢不可有他見者也 天和元年仲秋吉日 第五冊・三九丁オモテ左上端に貼紙して、 天和元年仲秋吉日

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三十三実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) 右下端に単枠長方﹁黒川真頼圭 に﹁筒井蔵書﹂の朱円印あり。 ことにする。 和歌は一行二字下げにして地の文に続け書きにする。朱筆の書入は少なく︵全六例。巻一、五オ③④行目の合点・区切 れ記号、九ゥ⑧﹁いかなるきよく﹂の﹁く﹂をミセヶチにして﹁ら﹂と振る、巻四、三七オ①行頭に.本みや云々/ヨ リ五巻トス﹂と割注二行書、同行に段落の区切れ記号︶、墨によるミセヶチ・修正箇所は多い。また、小紙片を本文の脇 に貼付して修正部分を示す方法を採る箇所も少なくない。以下、その実例を挙げておこう。なお、剥離して丁の間に挟ま っている例もいくつかあるが、本来貼付されていたとおぽしき部分が判断できる場合には、しかるべき位置を示しておく 墨付は、第一巻・五二丁︵その他に首遊紙二、尾遊紙一︶、第二巻・四八︵首遊紙一、尾遊紙一︶、第三巻・五九︵首遊 紙一、尾遊紙二︶、第四巻・七○︵首遊紙一、尾遊紙一︶。ただし遊紙としたものの多くは、表紙に貼付した見返し用紙の 剥離したものと認められる。無辺無界、一面十行に書く。朱筆・墨の書入れ・︽、、セヶチなどあり。各冊巻首第一丁オモテ 右下端に単枠長方﹁黒川真頼蔵書﹂﹁黒川真道蔵書﹂、丸形印﹁黒川/真頼﹂などの朱印あり。第四巻裏表紙見返し左下端 行二字下げにして地の文に続け書きにする。 ②黒川文庫・﹁こけ乃衣﹂四冊本文庫目録番号コニ九﹂。便宜﹁黒川四冊本﹂と仮称する。 第一・二巻は打曇りに唐獅子に石橋と﹁石橋﹂の散らし文字表紙、第三巻は打曇りに千鳥・若松文表紙︵裏表紙には五 七桐も︶、第四巻は打曇りに菊花・五七桐・桜花並び文表紙。寸法、縦二六・○糎、横一九・五糎。中央に金銀箔散らし の題簸︵一三・六糎×三・一糎︶に外題を墨書、﹁こけ乃衣一︵∼四︶﹂。第一巻右上端に丸に﹁物語﹂の朱印、﹁異本﹂ と朱書する。内題は各巻なし。と朱書する。内題哩 料紙は楮、袋綴。 T 、 信 一 上 空 0 −

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︹第二巻︺ ︹第一巻︺ ︹第三巻︺

Ⅳ五ゥ④

焔八オ⑤

昭二一オ⑩

理五ウ⑤

u三ウ⑨

10 回 1一七ゥ④なつかしきかなとひとりうちて:!・ 悶悶ⅥN’ 2二○ゥ⑨ひとjく∼にかつけ物しなくなり:⋮・ 一円回一 3三四オ⑦さいゐんの上営の春のころより::: 岡旧凶例洞一 4三四オ③れいの御事にやとおほかすさはなくて 回 5三六オ⑥おほつかなくてす坐しつらんよと・・⋮ 1オ⑦ 因 ねひと入のふにしたまひて 伝卜rトト区︵剥離︶ きんたちのは上/ともらうたけに:. |ゆ坐一 けいし給まことにゆるしとおほしたる 回MNⅢ口 内にもなをとくととまいらせへきよし −たわ一 つかうまつりつるにたりふれにて⋮・・・ |とは一 のたまひたるにあしたとのなけれと 一,:一厩隆︵、︲,︲,ぼ剥離の痕︶

6三八オ④みたまふに弓の心ちし⋮⋮

’たゑまも一 7四○オ⑦この程のたまへもさすかに.⋮: |ひき合たる一 8四六オ②おかしくひたいたる中に⋮・・・ 9二四ウー二五オ|なっかた一︵剥離︶ 1 6 1 5 1 4 三 二 二 二 六 四 オ オ ウ ① ⑦ ④ 2 0 1 9 四 一 三 一 ウ オ ④ ⑩ |o今し一 ⋮なりて/はしもかけと坐め 一国 ふきたまへる/千より︿しめて 図Ⅲ凶 きしにもたかひて:.⋮ |・宮一 承かとわたらせたまへ︿さうのこと 画 いとLなに人ならさまむと⋮

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三十三実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) ょうに、ほぼ妥叩 後に検討したい。 以上、紙片の貼付による本文修正箇所は三○。直接の害入などを含めれば、稿者の数えるところではおおよそ一七九箇 所に及び、例えば、第一巻五丁ウラ8行目﹁殿はかりなく﹂は、﹁か﹂の上に﹁Cを重ね書きしてさらに右に叉﹂を 傍害したものであり、同巻二五丁オモテ4行目﹁上も頓而さまかへ給ふわくかたなくて﹂の﹁給﹂は、もともと﹁そ﹂と あったのを鋭利な刃物で紙面を削り取り、その上に﹁給﹂と記したものである。いずれもその懇切な態度に表されている ように、ほぼ妥当な修正結果をもたらしていると見ることができる。本文は穂久邇文庫本の系統に属するようであるが、 ③常磐松文庫・−冊零本整理番号﹁五九二一六﹂。以下﹁常磐松本﹂と仮称する。 朽葉色布目紙表紙、寸法、縦三一・○糎、横二○・七糎。中央に題叢︵二○・三糎×三・八糎︶を貼付し外題を墨書、 ﹁こけころも←一二﹂。虫損・湿汚の痕がある。内題なし。 料紙は楮、袋綴。 詔五一 ︹第四巻︺ 記一五ゥ⑥まさるつくもなき御気しき oワ ー I 躯五○ウ④おひへてミちおとろき給ひて 一N| 鍋五一オ②うちなかれぬ程も人ぬれハ・・.

虹四六ウ②

−0ふ一

三ゥ⑨しき/きやうのミやのう

園 すまひにていゑミ/たてまつるまし |H’ 回 、声﹂ −1 鋤四○ウー四一オnMHU︵剥離︶ ’。まことに一︵剥離︶ 羽六○ウ③かたらひたまふによわくなりはて⋮

妬妬四九ウー五○オ

型五五オ④

|かり一 いつノ、へもまちなん

1

ぬ 、Ⅱリグ仁E/ 戸与小前部﹂ − 1 ワ ワ ー ム ー j

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墨付、六八丁。但し、三五丁ウラ7行目まで巻一相当の本文を記したのち空白にし、次の三六丁を表裏とも白紙のまま とし、三七丁より﹁との上中納言内へまいり給へるに⋮﹂と第二巻冒頭本文を書き出す。首遊紙・尾遊紙各一丁を有す。 無辺無界、一面十二行に書く。墨の書き入れ・ミセヶチなどあるが、朱書。貼紙なし。首遊紙オモテ右上に単郭方形陽刻 ﹁芸叢/之印﹂の朱印。一丁オモテ右下に単郭長方陽刻﹁三柚書屋﹂の朱印。六八丁ゥラの本文末尾、左下に菱形陰刻の ﹁芸/叢︲|の朱印、方形陽刻﹁豊蔀/家庫﹂の朱印あり。奥書等なし。 和歌は一行二字下げにしてほぼ書き終えるが、地の文に続け書きすることもある。朱書はないが、墨による修正・補入 がある。修正箇所の多くは、鋭利な刃物で誤記部分を削り取り、その上に記したものであり、以下にその実例を目に入る 限り挙げておこう。 ①四オ①僧ともに御い/のりの事:・・.︵﹁と︵も︶﹂ヲ削り﹁僧と︵も︶﹂ヲ重ネ書キスル︶ ②四ウ⑧姫君の御はかまき︵﹁に﹂ノ上二﹁の︿字母・濃﹀﹂ナゾリ害キ︶ ③五オ⑪あなつらハしからす︵﹁ら﹂ノ上二﹁なく字母・那﹀﹂ナゾリ書キ︶ ④六オ⑥おはするをこ︲坐るもとなく:.⋮︵﹁るく字母・類﹀﹂ヲ削り﹁す︿字母・須﹀﹂ヲ重ネ書キ︶ ⑥九ウ⑦殿のうへも聞給ひて:::︵﹁ふ﹂ト書キサシテ﹁ひ﹂トナゾリ害キ︶ ⑥ニオ⑩さてのミすぎ給へは僧とも・上・⋮:︵﹁ふ﹂ヲ削り﹁へ﹂ヲ重ネ書キ︶ ⑦一二ウ⑦かしつき給はかなく,⋮:︵﹁へる﹂ヲ削り﹁は﹂ヲ重ネ言キ︶ に ⑧二三オ③ょ所のミおもひし物をあかつきの⋮⋮ 側二三オ⑥御つかひの禄なとめやすきさま也︵﹁け﹂ヲ削り﹁と︿字母・登﹀﹂ヲ重ネ言キ︶ ⑩二四ゥ④いわけなき程なれと⋮.:︵﹁に﹂ヲ削り﹁な﹂ヲ重ネ害キ︶

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実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) 三 十 三

仰山岸文庫

本﹂と仮称する。 墨付、六○丁。印記は一丁オモテ左下に﹁山岸文庫﹂の長方朱印。但し右上に親本の印記にかたどり、﹁帝室/圖害﹂ と朱書する。五八丁ウラの本文末尾に﹁岸廼舎蔵﹂の複枠長方六角朱印。巻一のみの零本である書陵部現蔵本の手写本で ある。巻末に山岸氏の奥書・識語がある。 緤色紙表紙、寸法、縦二四。五糎、横一六・七糎。左肩に双辺の刷り題篭︵一七・○糎×三・五糎︶を貼付し、﹁こけ 衣全﹂と外題を墨書する。内題なし。 ひイ ⑪二八オ⑨雪とふるこ生ろはしらすと︿てのミ過るたへまは..⋮ ⑫二九オ③・ひめ君︿ちいさき:⋮.︵﹁姫﹂ヲ削り﹁君﹂ヲ重ネ言キ︶ oおろかに︿ ⑬三○ウ③めつらしさには。をほされんやハ:。⋮ を ⑭三二オ②⋮⋮へくや有とてや・らいりて::。. ⑮三二オ③きこゆれはおほつかなくて・⋮..︵﹁か﹂ヲ削り﹁つか﹂ヲ重ネ書キ︶ ⑯四一ゥ⑩⋮⋮せさせ給ひて・⋮:︵﹁ゐ﹂ノ上二﹁給︿勺﹀﹂トナゾリ書キ︶ ⑰四三オ⑪なへてならいすミつき筆の・・⋮.︵﹁なた﹂ノ﹁た﹂ノー筆目ノ上二﹁ぬ︿字母・怒﹀﹂ヲ重ネ害キ︶ ⑱五一オ⑦誠にかなひかたくおほされ。:⋮︵﹁かね﹂ト書キサシテ削り﹁かた﹂卜重ネ書キ︶ その他、濁点の例もいくつか見えるが近世の写本としては特筆する必要もあるまい。本文は前田本系統に属すると思わ れるが、これも一括して後に検討したい。 仰山岸文庫・﹁こけ衣全﹂一冊文庫リスト番号﹁三三三一﹂・文庫登録番号﹁一九六二二﹂。便宜﹁山岸文庫一冊 料紙は楮、袋綴。 − 1 ワ q − 公 竺 』

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奥云 右四冊正敷元本令借之嶌之早不可有他見者也

天和元年仲秋吉日﹂︵六○オ︶

和歌は二字下げ二行書き、二行目をさらに半字分ほど下げる。上欄外、細字の書込若干あり。本文の修正・傍書・袖入 なども巻頭付近にわずかに見える。本文は前田本系統に属する。 ⑤山岸文庫・﹁苔の衣﹂四冊本文庫リスト番号﹁三三三二﹂・文庫登録番号﹁一九六二三∼一九六二六﹂。いま便宜 的に﹁山岸文庫四冊本﹂と仮称する。 渋引表紙、寸法、縦二七・三糎、横一九・六糎。左肩に双辺の刷り題篭︵一八・六糎×三・九糎︶を貼付、第一巻から 順に﹁苔の衣春﹂﹁こけの衣夏﹂﹁苔の衣秋﹂﹁あけの衣冬﹂と外題を墨書する。各巻扉あり、その中央に内題 を記す。これも第一巻から順に﹁よけの衣春﹂﹁融けの衣夏﹂﹁苔の衣秋﹂﹁よけの衣冬﹂。

苔衣四巻

本書其第一巻也 内閣文庫本二部 大正十四年十月三日高野孫三郎氏 於鎌倉害嶌畢 原本宮内省圖吾寮藏惠本也

岸廼舎記

一、昌平坂学問所本二冊巻二、三欠

二、和学識談所本二冊春夏秋冬

﹂︵五九ウ︶

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尖践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) 三 十 三 さて、以上の書誌的事項の中に、行文の都合上すでに本文系統について触れてきたが、ここで一括して実践女子大学の 所蔵本の本文を検討してゆこう。なお、山岸文庫の二本は現写本であることが明らかであり、かつその親本がそれぞれ現 料紙は斐、袋綴。 墨付は、春・五L 題篭の右上端、扉︵ 岸氏の識語がある。 苔乃衣四巻 天和元年仲秋吉日 和歌は二字下げ二行書き、二行 Ⅲ田本系統に属する。虫損の痕ま 内閣文庫本 一、林家旧藏本二冊巻上之末、下之本欠巻也 二、和学講談所本二冊 乃衣四巻以東京文理大藏本令書真 夏冬二冊黄鐘中院嶌了春秋二冊同下院 写了 右四冊正敷元本令借之嶌之不可有他見者也 奥云 五七︵尾遊紙一︶、夏.五○︵尾遊紙一︶、秋.六六︵尾遊紙三︶、冬.七四︵尾遊紙一︶、各冊に扉紙一・ 扉の右裾に﹁山岸文庫﹂の朱印がある。書入など朱筆は春・夏の二巻、秋・冬は墨書のみ。冬の巻末に山 書き、二行目をさらに一宇ほど下げる。識語にあるごとく﹁東京文理大藏本﹂の写であり、本文は 虫損の痕まで写しとどめた丹念な仕事ぶりを見ることができる。 − 1 3 1 −

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脚Ⅱ旦仏川一山円周一コ毛太’ヨ臣ノゴ判﹂ ﹁春村書入本﹂のような五冊本が四冊本の第四巻を二分割して成ったものであることは、現在のところ異論はない。四 冊本の各巻の末尾が﹁⋮.:とぞ﹂という形式で統一されているのに対して、該本巻四が﹁かきつむるその水くぎを見るた ひにおき所なくかなしさそます﹂︵四一オー四一ウ︶という歌でぶつつりと閉じられるのは、やはり不自然とせねばなる まい。また、五冊本が前田本系統から派生した形態であることもすでに評価が定まっており、該本もその埒外に出るもの ではないと思われる。次に、巻一で穂久邇文庫本・前田本と対比したものを表示して承よう。穂久邇本は古典文庫の翻刻 存しているので、今回の検討からは除外しておきたい。 ﹃國書總目録﹄等で知られる写本が二○余本、さらに今回紹介に及んだ実践女子大学藏本のうち﹁常磐松本﹂を含めた 諸本が現存すると考えられる訳だが、そのほとんどが江戸期の写本であり、ひとり穂久邇文庫本の承が﹁室町時代中期永 正頃の書写﹂︵古典文庫﹃苔衣物語上﹄解説、久曽神昇氏︶と推定されており、さらに残りの本の中でも比較的古いと 看倣される前田尊経閣文庫本と併せて、これを基準として諸本の系統分類がなされてきた。かつて﹁穂久邇文庫本なるも のは、前田本系の本文に注釈的敷桁的改作をほどこして生まれた﹂︵今井源衛氏﹁王朝物語の終焉﹂﹃國語と國文學﹄四 一巻一○号、一九五四・一○︶と評されたことがあるが、近年では﹁前者︵穂久邇文庫本︶は本文的にすぐれている点が 多いと見られるものの、中には冗長に引き延ばした表現かと疑われるところも少なからずある。近世の写本の大部分は後 者︵前田本︶の本文を有しており、前者にくらべて本文節略の傾向が顕著ではあるが、一概に優劣を定めがたいところが ある﹂︵市古貞次・三角洋一両氏編﹃鎌倉時代物語集成・第三巻﹄笠間書院刊︶という慎重な読みが求められている状況 である。本稿もまた、これら通説となりつつあるこの二系統分類に従う︵巻三のみが独立して﹃宇治大納言物語﹄と呼称 する続群書類従本などの一群については、当面これを除外する︶。する続群書類従本などの一群程 叩黒川文庫﹁春村害入本﹂

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三十三実践女子大学図書館蔵『苔の衣』(五本) に依拠しつつ、異本の校合は省略する。前田本は読点を補い、黒川本は春村の書入をも示しておくことにする。 / 、 三 幸 衣 p − L ゴ まことやくはんばく殿には、ひめ君 はおはすれど、わか君はおはせざり けるを、こ上ろもとなくおぽしわた ︵a︶︲ りしほどに、たまひかるぱかりのわ ︵恥U︶ か君、いまだふたぱよりさまことに ひかる源氏のちごおひもこれほどに はなくやとおぽゆる人えたまひて、 またなくかしづき給さま、こちたき ︵C︶l までなり。北の方こ上ろうるはしく おはする人にて、此大納言殿のうへ をおろかならずもてなしきこえ給へ ぱ、よのおぼえもゆ上しくぞおはす る。かくて殿の姫君八に成給へぱ、 なつかたはかまぎ有て、やがてとう

穂久邇本

いてき給、またふたはよりさまことに 光源氏のちこをひもかほとにはあらし かしとおほゆる人えたまひて、 又なくかしつき給さま、こちたきまて ︵。︶

なり、御心うる︿しくおは

する人さまにて、此大納言殿のうへと もをろかならすもてなしきこえたまへ は、よのおほえもゆ坐しくそおはする かくてとの上ひめぎミ八になり給へは 此夏比御はかまきありて、やかてとう るを﹄︵3ウ︶こ&ろもとなくおほしわ はおはすれとわかきミのおはせさりけ まことやくわんはくとのにはひめきぷ

︵認︶︵b︶F脾

たり給に、たまもはかりのわかきミに ].j ユ別 田 本 は まことや、関白殿に︿、姫君︿おわす ○ れと、わかきみのおくせさりけるを、 心もとなくおほしわたり給ふに、たま

︵証︶︵げ︶.

もはかりのわかきゑそいてき給ふ、ま たふた葉よりさまことに、光源氏のち お こをひも、かほとにくあらしかしとお ○ ほゆる、人、えたまひて、又なくかし つき給ふさま、こち﹄︵5オ︶たきまて ︵。︶

なり、御心うる︿しくおハ

する人さまにて、この大納言殿のうへ ともおろかならすもてなし聞給へ︿、 よのおぼえもゆ上しくそお︿する、か くてとの坐ひめ君八に成給へ︿、此夏 頃御はかまきありて、やかてとう宮へ 黒川文庫﹁春村書入本﹂ − 1 3 3 −

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そもそも穂久邇文庫本・前旧本の両系統ともさほど本文に相違があるわけではないが、右表で両系統の差異の状態を推 察することができるだろう。相違点を︵a︶から︵d︶まで挙げてみたが、穂久邇本の︵a︶︵C︶が前田・黒川の両本 になく、また後者の︵b︶︵d︶が前者にないという共通点を見出すことができ、他の部分においても同様な傾向を見る ことができるのである。冗漫になるのを避けて別の箇所を例示するのを控えておきたい。﹁春村害入本﹂を前田本系統と 認定するのに不都合はあるまい。なお、前田本に﹁ママ﹂を付した箇所は単純な誤写と判断してよかろう。同系統の内閣 文庫藏天和元年書写本︵函架番号、二○三’八二︶では、それぞれ﹁わか君そいてき⋮﹂︵3ウ︶、﹁はえなき事とおほし て⋮﹂︵4オ︶とあり、﹁春村書入本﹂と一致する。 該本についても如上のごとき方法で検討して采よう。 巻二、帝は故西院の上の姫君に執心だが、なかなか入内が実現しないのに業を煮やしてその兄・中将を介してひそかに 歌を送る。中将がその文をもたらした時の姫君の状況を描く場面である。 ぐうへとおぽしめす。大なごん殿に ︵鄙︶ は、 ひめ君のおはせぬことをはへなくお ぼして、宮の御かたひとりぐしきこ えて石山へ参給ふ。⋮:,︵上・五頁︶ ②黒川文庫﹁黒川四冊本﹂ ぐうへとおほし﹂︵4オ︶たり、大納言 殿には、わかきミたち︿物し給へと、 ひめきミのおはせぬことをはへなきこ ママ とくおほして、宮の御かたひとりくし きこえ給ふていしやまへまいり給、⋮ ︵d︶ ︵d︶ とおほしたり、大納言に︿若き承たち ハ物し給へと、姫きゑのおはせぬこと 窪え を、はへなきことLおほして、宮の御 ○

ぐう

かたひとりこしきこえ給ふて、石山へ ○ ○ ゐ まいり給ふ、⋮⋮﹄︵5ウ︶ ○

(18)

三 十 三 実 践 女 子 大 学 図 書 館 蔵 『 苔 の 衣 』 ( 五 本 ) なるべく異同の大きいところを選んでゑたが、表示される通り、その相違は一目瞭然というべきである。穂久邇本と黒 川本に共通する︵1︶︵4︶が前田本では別文であり、前二者が有する︵2︶を後者はなく、後者に見える︵3︶︵5︶ 戸 、 ゴ ー 衣 L J おぼつかなげになづね給へぱ、さき のさい宮よりたてまつり給たりつる にこそ。あはれにむかしの御ゆかり とて、よくつねに申しかよはし給ふ ︵y︶ に、 ︵2︶ おしやられたるを﹁いづィ、よりか﹂と しきしのふ象のす■りのかたはらに ︵Ⅲ︶ つきせずいへるも あはれなり。︵上・九一∼二頁︶ いますこしものし給ざりけん﹂と、 ﹁したしき御よすがだになども

穗久邇本

、〃 ︵4︶I 、0J〃 ︽FD﹂ せすいへるも あはれなり⋮;・﹄︵6ウ︶ こそ、あはれにむかしの御ゆかりとて よりたてまつり給たりつるに﹄︵6オ︶ ほつかなけに尋給へは、さきのさい宮 ︵y︶ よくつねに申かよ︿し給ふに、 しきしのふミのすユリのかた︿らにお ︵2︶’ しやられたるを﹁いつくよりか﹂とお いますこし物し給︿さりけん﹂とつき 1−

黒川四冊本

﹁したしき御よすかになるも ︵印︶ ︵4砦︶

給はねは﹁したしき御なからひといへ と、ことにつLましけにて物もきこえ しろきしきしのす上りのかたはらにを ︵Ⅲ︶ ︵副︶ しやられたるを﹁いつくよりか﹂と たつね給へは、さきの斎宮よ りたてまつり給たりと聞ゆるも、あは れにむかしの御ゆかりとて、かくつれ ︵勺。︶ と、かく浅ましきまてへたてたまへる めて、しはしやすら﹄︵7ウ︶ひたまへ はつらく侍るかな﹂とうらミ給もいと あはれなり・・・・・﹄︵8オ︶ にのたまひかくし給ふよ、とうちなか ﹂Ⅱ 今月

田本

、J・ノ 〆44﹂ ︵5︶I − 1 3 5 −

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は前者にはない。前述のごとく、﹁黒川四冊本﹂は穂久邇本系統に属すると看倣しうる。 なお、先に該本には墨によるミセヶチ・修正箇所が二○○足らずと少なくない由に触れたが、それらを概観するに、異 本の校合というよりも誤写の修正であることは、小紙片が示しているところであった。その他、例えば一ウ4行目﹁なら

ててくね

ふ人なく・おわす﹂、五オ2﹁象もしはてしをとなん﹂、セウ6﹁事にりにみえ給ふ﹂、ニウー﹁春宮さゐに女御の﹂等々 上 の類と考えて大過ないと思われる。 戸 表 三 宮 御ふみ引ときてちかくよりてふせき ︵ァ︶I こえ給へど、かほうちあかめてしる しありげも桑へぬを、されぱよと中 ︵イ︶I 将はくるしくおぽせば﹁おろかなら ︵ウ︶’ ず侍りつる御きそくに、むなしくて ︵エ︶ かへり侍らん事などいとわびしく﹂ とたび人∼申給。﹁げにさのみしら ぬさまならんもびんなかりぬべし﹂ これも巻二、︹表二︺に統ノ ⑧常磐松文庫﹁常磐松本﹂

穗久邇本

に続く場面から採り上げて染よう。 御文引ときてちかくよりて見せ聞え給 ︵ア︶.︲︲・ へと、かほうちあかめて、御返きこへ 給へき気しきも見えぬを、され︿よと ︵ 詑 祁 ︶ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ 中将︿くるしくおほして﹁をろかなら ︵岩ソ︶軸ⅡⅡⅡ す侍りつる御きそくを、むなしくてか ︵こ’ ヘリ侍らん事いとわひしぐ侍る﹂とた ひj、申給、﹁けにさのミしらぬさま ならんも、ひんなかりぬへし﹂とて、 ﹄Ⅱu

田本

二目 御文ひきときてちかくよりて采せ聞え たまへと、かほうちあかめて御返きこ え給ふへきけしきも桑えぬを、されは ︵ノイ︶ⅡⅡⅡⅡⅡⅡⅡ よと中将︿くるしくおほして﹁おろか ならす侍りつる御﹄︵調ウ︶きそくを、 むなしくてかへり侍らん事いとわひし ︵エ︶l く侍る﹂とたひj、申給﹁けにさのミ しらぬさまならんもひんなかるぬへし

常磐松本

I

(20)

実践女子大学図番館蔵『苔の衣』(五本) 三 十 三 この場合も、桑ごとに﹁穂久邇文庫本﹂対﹁前田本・常磐松本﹂の本文分立を看取することができる。︵ア︶のような かなり大きな異同の部分はもちろん、︵イ︶︵ウ︶︵エ︶︵キ︶のような微細な表現まで一致することは、系統分類の指 標として興味深い。このようなわずかではあっても際立った対立があることは、現存諸本の成立する以前のかなり早い段 階で穂久邇文庫本系統と前田本系統とが派生・分立したことを示唆するものであろうか。そういえば、現存諸本中最も早 く書写されたと思われる穂久邇文庫本自体が、すでに前田本系と思われる朱書の校合本文を有していたのだった。 側聞するに、一九五○年代の半ばにはすでに﹃苔の衣﹄の校本作成が試みられ、最近また現存本を再調査、網羅するか たちで校本が作られつつあるという。そうした作業の過程で、諸本の整理、両系統の本文派生のメカ’一ズムが明らかにな ることを期待したいものである。 とて、ふでなどとり給つ上、をしへ たてまつりてかLせきこえ給ひたる ︵力︶ もじやういかでかくしもとりあつめ ておひいで給ひけんと、さきの世ゆ ︵キ︶l かしう⋮:︵上・九二∼三頁︶ 最後に、﹃苔の衣﹄のような鎌倉時代物語が物語史にどう位置付けられるか、簡単に触れておきたい。 この物語が著名な先行作品lとりわけ﹃源氏物語﹄﹃狭衣物語﹄﹃寝覚物語︵夜の寝覚︶﹄を積極的に摂取しているこ へ オ ン

︵オ︶.・ ふてとりまかなひつ上をしへたてまつ りてか上せきこえ給へたり、もしやう ︵力︶ す、、、つき、いかて﹄︵8ウ︶かくしもと りあつめておひ出給ひけんと、さきの ︵キ︶ よゆかし.:⋮ とて筆とりまかなひつ上をしへたてま つりてか上せきこえ給へたり、もしや

︵ヵ︶I

うすミつき、いかてかくしもとりあつ めておひ出給ひけむと、さきの世ゆか ︵キ︶ し⋮⋮ へ オ レ 1 0 句 一 J ・ イ ー

(21)

冒頭のI

が下がればその物語たちもやがて新作の物語の目標となる、文学史的循環というべき物語史の展開である。 文学大辞典﹄岩波書店刊︶ともいう。鎌倉時代の物語たちが範を王朝のただ中に華ひらいた作品群に求めたように、時代 の作品と考えられる﹃小夜衣﹄﹃兵部卿物語﹄は、いずれも主人公が兵部卿宮で、本物語の影響が見られる﹂︵﹃日本古典 とはすでに多くの先学に指摘されている︵神野藤昭夫・豊島秀範などの諸氏に研究史の論がある︶。また、﹁鎌倉時代後期 かつて、鈴木一雄氏は、﹃源氏物語﹄以前の物語が古代の伝承を基層として、むしろ伝承の枠を利しつつ形成・成立し たことを述べ、さらに﹃源氏物語﹄以後l後期物語の伝承性とその基層についてこう論じたことがあった。 後期物語の伝承性は、ほとんど基層とは言えない。それは、物語内部における必然性を失いながら断片的に残存する に過ぎない。古伝承的基層の断片化に代わって、大きい拠り所になったのが﹃源氏物語﹄という目前に輝く先行の物 語であった。﹃源氏物語﹄は以後の物語にとって、まさに第二の基層部となったのである。おおまかにいえば、これ こそ﹃源氏物語﹄の影響といわれるものの意味であろう。︵﹃堤中納言物語序説﹄桜楓社、一九八○・四刊、六一頁︶ 鈴木氏のいう﹁古伝承的基層﹂の上に物語が試象られたのを第一段階、さらに﹃源氏物語﹄そのものが基層の中に組糸 込まれて﹃狭衣物語﹄﹃寝覚物語﹄などの後期物語が成立した段階を第二と数えるならば、この後期物語までも基層に組 象入れた﹃苔の衣﹄のような作品は、物語史の第三段階と把握すべきだろう。夙に指摘されているように、本作品の開巻 あふての恋もあはぬなげきも、人の世に︿さま人1おほかる中に、こけのころもの御なからひ︵かりあかぬわかれま でためしなく、あはれなる事︿なかりけり。此比権大納言ときこゆるく、こせんていの御おとうと、一世の源氏とき

こへし二らう、大しやうの御おと上ぞかし。︵黒川四冊本による︶

の一文が、﹃寝覚物語﹄の﹁人の世のさま人1なるを見附きつもるに、なほ寝覚の御なからひばかり、あさからぬ契りな

(22)

実践女子大学図書館蔵『苔の衣」(五本) 三 十 三 がら、よに心づくしなる例は、ありがたくも有けるかな﹂に依拠しつつ、﹃源氏物語﹄の面影を点綴しているのに象徴さ れるように、ここでは後期の物語すらがもはや踏まえるべき基層として機能しているのである。﹃日本古典文学大辞典﹄ がいうごとく、物語史の第三段階に立ち至った﹃苔の衣﹄を下敷きにする作品があったとするならば、史的展開として第 四の段階が用意されていた、ということになろうか。しかし、第二段階までがかろうじて持ち得ていた古代の伝承性は、 もはやここでは完全に形骸として遣るに過ぎない。︿物語﹀という、古代文学としての文学形態が伝承性を喪失した時、 その行くては困難な道があるばかりである。﹃苔の衣﹄は、そうした険しい道程の崖ふちに立った、︿物語﹀の残光に映 える一作品というべきではないだろうか。 − 1 q Q − ユ リ ゾ

(23)

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(25)

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調査報告二十六’三・三十三’二 調査報告二十六山岸文庫本﹃本朝麗藻﹄︵﹁年報﹂第九号所収︶・調査報告三十三実践女子大学図書館蔵﹃苔の衣﹄ ︵五本︶︵﹁年報﹂第十一号所収︶につき、次のように訂正致します。

訂正箇所誤

第九号七六頁3行目楮紙渋引表紙

第十一号一二八頁4行目一﹁三柚書屋﹂の朱印。|後に﹁川瀬一馬氏旧蔵 *******

﹃本朝麗藻﹄﹃苔の衣﹄訂正

関係各位にご迷惑をおかけしました。お詫び致します。︵横井孝︶ * 本﹂と補記。 *** 楮紙刷毛目渋引表紙 正

参照

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