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[The Relationship between Man and Nature in Choice of Foods Materials: A Case Study in Northeast Thailand]

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(1)

東南 アジア研究 37巻4号 2000年3月

食物 をめ ぐる人 と自然 の関わ り

-

東北 タイでの事例か

ら-藤 田 渡 *

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Wataru FUJITA

*

Villagers'acquisitionoffoodmaterials五一om thenaturalenvironmentinaIAOvillageinNortheast n ailandisexam ined血・om theviewpointofinter・actionbetweenmanandnature. n evillageis surroundedwithexceptionallyrichforests,onwhichvillagersdependforalargepartoftheirdaily dietbesidesrice,thestaple.

Villagers'cookingmethodsandtastesarewelladaptedtothenaturalmaterialsavailable aroundthevillage. ¶1eavailabilityisinfluencedbyseasonalfactorsaswellasthemicrollevel changesofnatural conditions. Wh atfoodmaterilSaa retakenisalsoaffectedbyvillagers'own schedules. Theychoosedailyfoodmaterialsfrom amongwhatareavailableandh・om the viewpointofdietdiversification. Hunting-gatheringactivitiesarebasicallyforthenextmeal. Villagersknowwhatfoodmaterialsareavailableandplanhuntingorgatheringbasedonpast experience.

Thesefeaturesaregeneratedthroughvillagers'dai1yinteractionswithnature.Thecoreidea isthattheywanttolivetheirlivesfollowingtheconditionsofnature. nlisideaunderliesthe rhythm ofthevillagers'dailylife.

は じ め に 「森 は,市場 の ような ものだ

と,ふ と彼 は言 った。農閑期 の昼下が り,村 の間借 り先の農家 の軒先で家主 と雑談 していた。「いつで も必要 な時 に,必要 なだけ食べ物 をとって くる」。私が, ′′ 「市場 と違 って,ただで しょう」 と言い返す と

,

「その代 わ り,あれや これや とあ ま り浮気 はで きないな」 と答 えた。 東北 タイは, タイで も最 も森林破壊が深刻 な地方 として悪名高い。 1997年の統計では,森林 被覆率 は僅か13% で, タイ全国の平均 のお よそ半分で しかない [Tnailand,RoyalForestDepart -ment1997] 。 この ような森林破壊 の背景の一つ には もちろん農地の拡張がある。一方で,森 は

*京都 大 学 大 学 院人 間 ・環境 学研 究科 ;GraduateSchoolofHumanandEnvironmental Studies,Kyoto University,46Shimoadachi{ho,Yoshida,Sakyo-ku606-8501,Japan

(2)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然の関わ り 人々の毎 日の暮 らしに必要 な,いろいろな もの を与 えて くれ る場所で もあった。 近代化や経済発展が進み,森林その もの も少 な くなった今 日で も, 自然環境か ら得 られるい ろいろな物資が人々の暮 らしの中で演 じる役割 はまだ大 きい。1)その中で も,本稿で取 り上げる 食べ物 は,毎 日欠 くことが出来ない最 も身近な自然の産物である。 特 に東北 タイの食生活では, 食材 として馴化 された ものだけでな く, 自然環境 か らの採集物が多い ことが特徴 として挙げ ら れ る [重富 1997:167] 。 単 に食材の 自然環境 に依存す る量が多いだけではない。彼 らの食生活 は,季節の移 り変わ り やその他の 自然環境 の変化 に大 きく左右 される。一方,彼 ら自身の好みや習慣 とも無関係では ない。 冒頭 に挙 げた村 人の言葉が示唆す るように, 自然環境やその他の制約 の下,村人は食材 を選 び出す。狩猟 ・採集 とい う食材の採取か ら料理 までの一連の行動 は,いわば人 と自然の交 渉である。 これ までの様 々な地域や社会の食文化の研究の多 くは,食卓 と台所 しか見ていなかっ た。 しか し実際 には,食文化 とは人 と自然の交渉の産物である。2) 本稿では,東北 タイでは例外 的に森林が残 る地域 にある-農村 での事例 を もとに,そ うした 人 と自然のあ り方 について考察す る。 村での食事や料理法の特徴 ,食材の季節的変化,食材採 取の行動,の順で論 じる。 つ ま り,料理 されて人の口に入る ところか ら,食材の由来,それが 採取 され る場面, と潮 るように,人 と自然の一連の関わ りの全体像 を見 るのである。 最後 に, その全体 に底流 し,人 と自然の交渉 を統御す る文化的特徴3)について若干の考察 を したい。 1)近 年 , タ イで はそ の よ うな側 面 が注 目され , 様 々 な調 査 が 行 わ れ て い る (例 え ば, [Pei1987; Subhadhiraetal.1987;Somnasangetal.1986])o季節的変化や採取 の技術の記述 を含む もの もある。

しか し, これ らは 「外 部者」 に よる経済 的価値 や生態的 ダメー ジの測定

,

「伝統 的知識」の博物学 的 フ ァイリングであ り,現地の人々の 目線 や生活 の文脈 とい う視点が欠如 してい る。 2)バ ローが 「料理革命」 とい うように, 自然か ら採取 した材料 を 「料理す る」 ことは人間 とそのほかの 生 き物 とを分 ける大 きな違 いの一つである [バ ロー 1997:47-64]。 この 「料理革命」か ら始 まって, 食物 をめ ぐる様 々な文化や社会関係が展開 して行 くのである。食 をめ ぐる文化や社会関係 については, これ までに膨大 な研究の蓄積があ る。個 々の食べ物 の加工や調理の技術 の分布や歴 史的経緯 について の記述 は枚挙 にい とまが ない。 さ らには, レヴ イエス トロー スが

,

「火 を使 って調理 された もの

「生 の もの

「腐 った もの」の対比 を題材 に した神話の構造分析で示 した ように,食べ物 をめ ぐる身近 な経 験 は抽 象的思考 の知的道具 にさえな りうる [Lj;vi-Strauss1994] 。 しか し, これ ら食 に まつ わる文化の研究 は,ハ リスが 『食 と文化の謎』 [ハ リス 1988] で示 した, 食文化 を全て コス トとベ ネフ ィッ トの合理性 で説明 しようとい う唯物論 的説明は極端 に して も,食物 生産や加 工,調理の技術 や道具 といった物 質文化の淡 々とした記述か,食事 をめ ぐる社会関係や宗教 的世 界観 との関係で食物が担 う意味の分析 のいずれかであった。北 タイの タイ ・ヨン社会の食事文化 の 調 査 を した トラ ンケ ル の著 書 [Trankell1995]の序 章 で の "throughfoodoneembarksonthe studyofbothmaterialculture(theartefactsemployedinpreparationandcookingaswellasthe fooditemsthemselves)andsocialandsymbolicmeaningsascribedtofooditems,dishes,meals,and eating''とい う記述 は,端的に この ことを示 している (もっ とも,実際 には彼 自身宗教的世 界観-結 び 付 ける一本調子 の議論 に終始 しているが)。 しか し,実際の食生活 をめ ぐる,一連 の人々と食物の相互 作 用 を通底す る文化的特徴 は, これ まであ ま り省み られなか った。 3)「文化」 とは何か, とい う定義 を巡 る議論 は多岐 に亘 り錯綜 してい る。本稿では.「一定の範 囲の人々 が,あ る程度共有す る,価値 ,規範,行動様式の内,生物的生存のため必須ではない もの (理論的に は他 に も選択肢があ りうる もの)」 とい う意味で用 いる。栄養 の摂取 自体 は 「文化」 とは言 えないが, 特 定 の もの を選択 的 に食べ た り, 食物 を獲 得 す る過 程 の特 徴 は 「文化」 となる。 環境 に合 理 的 に /

(3)

東南アジア研究 37巻4号

ゴ ン カ ム 村

本稿 の舞台 は ゴ ンカム村 と言 う。 村 は, タイの最東端 に位置す る。 行政的 には, ウボ ンラー チ ャタ一二一県 シームア ンマ イ郡 ナムテ ン区の第4村 であ る。 東北 タイには珍 しく,村 の周辺 は森 (主 に乾燥 フ タバ ガキ林) に囲 まれ,1991年 に指定 されたパ ーテム国立公 園の内側 になっ て しまった。 国立公園指定 に伴 い,木材伐採 や農地拡張へ の監視 の 目は厳 しくなったが,村 人 の狩猟や採 集 に対 して は, ほ とん ど実効 的 な規制 は されてい ない。 村 の主 な生業 は水 田耕作 であ る。 しか し,特 に国立公 園の指定以後耕地不足 は深刻 にな り, ほ とん どの村 人 は飯米 を自給 で きない。稲作 以外 には,牧畜や近 隣での 日雇 い労働 につ くもの もい る。 森 か ら得 た材料 で,ホ ウキや延 を作 って売 る, あ るいは余所 の村 で米 と交換 した りす る もの も多 い。 しか し,バ ンコクな ど都市部- の出稼 ぎはほ とん どない。簡潔 に言 えば,村 人 の現 金収入 は極 めて少 ない 。 米以外 の食べ物 の多 くは周 りの 自然環境 に依存 す る。 森 だけで な く,池や小 川,水 田 と,あ らゆる所か らもた らされる。菜園の野菜や家禽,家畜 ももちろん食料源であ る。 魚醤や塩, シャ ロ ッ ト, ニ ンニ クは村 で作 るこ とが 出来 ないので,買 う しか ない。 このほか,村外 か ら物売 り の車が来 る と,少量 の魚や野菜 ,果物 ,菓子 な どを買 うこともあ る。 村 の料理 の根幹 をなす調 味料 であ る

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(魚 の塩辛,標準 タイ語 で は

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と呼 ばれ る) と トウガラシ (キ ダチ ト ウガラシ :Capsicum.如JteSCenS)は村 で も作 られ るが,十分 ではない。物売 りの車が来 る以外 に は,毎週土曜 日の朝 にナ-ポー クラー ン村 で開かれ る市 に,村 で一台 だけあ る ピックア ップ ト ラ ックに乗 り合 って,片道お よそ一時 間か けて出か けて行 く。

村 での食生活の概要 と料理法

村 の古老 は, ゴ ンカム村 を含 む地域一帯 はス ワイ人の住処 だった と言 うが,4)現在 では,村 人 の食生活 は,モチ米食 の ほか,基本 的 な料理法 は ラオ系 の 「標準東北 タイ料理」 と同 じで,バ ンコクの タイ料理 よ りラオス料理 に近 い5)(写真1)。 \ 適応 している部分と,そうでない部分があ りえよう。 4)「スワイ人」 とは,モン-クメール系の民族集団で,ラオ人が東北タイに移住する以前からの先住民で ある。自称 「タイ」で

,

「スワイ」はタイ人による侮蔑的意味を込めた呼称であるが,ここでは,村人 の呼び方に従い 「スワイ」 と記す。84歳のある村人が幼少の頃には,まだスワイ語が話せる人 (ラオ 語も話せる)が村にいたと言う。 しかし,現在では彼 も含め村人全員,言語面でもアイデンティティ の面でもラオ人化 してしまっている。ラオへ統合された過程は明らかではないが,ラオ人の婚入,移 住とともに先住のスワイ人も何時 しかラオ語を話 し,ラオ人としてのアイデンティティを得ていった のだろう。 5)重富 [1997]は,中部,北部,東北部,南部,というよく言われる地域差に言及し,それらを 「農村 における伝統的食生活」 とした上で,バ ンコクの 「タイ料理 レス トラン」で見られるような料理と- / 558

(4)

藤田 :食物 をめ ぐる人 と自然の関 わ り ただ し,pladaekは, ゴ ンカム村やその親村 のナムテ ン村 で作 られ る ようになったのは僅か 40年 ほ ど前 か らに過 ぎな い と言 う。 pladaek は,モチ米 と並 んで,東北 タイの料理 の象徴 と 見なされていて,今 日の ゴンカム村 も含め,ほ とん ど全 ての東北 タイ料理 に欠かせ ない食材で あ る。 この こ とは,かつ てスワイであった残洋 か も知れない。 しか し, ラオ語やモチ米食はpla daekが入 るはるか前か ら受 け入れ られていた。 写真1 村での食事風景 もち米 は竹 で編 んだ横 に入れ,料理 は盆 にのせ る。 いずれ も床 に直 に置 くこ,料理, もち米 とも 管,直接手 を伸ば し,個人の取 り皿は用いない。 古老 も,現在 に至 る まで ウルチ米が栽培 された こ とは全 くない, と言 う。 また,pladaekが ない時代 は塩 だけを使 っていたが,料理法 のそれ 以外 の部分 は変 わってない。 これ らの ことか ら,あるいは ラオ人社会の中に も,pladaekの製 造 と利用 に関 して濃淡が あったので はないか とす ら考 え うる

「ベ トナム人が ラオに伝 えたん だ」 と言 う村 人 もいる。6'歴 史的に言 えば,現在の村 での料理法や食文化 は, スワイとラオの混 合 なのか も知れ ない。そ もそ も,複雑 な民族 間の相互 関係 の所産であ る東南 アジア大陸部で, 純粋 な 「ラオ文化」 とか 「スワイ文化」 を想定す るこ と自体,無 意味 だろ う。 「タイの食文化」 とい う括 り万 自体が不 自然で座 りの悪い感がある。東北 タイの料理がむ しろラオス料 理 に近い ように, タイとい う国家全体 を貫 く何か普遍的な食文化の原理 原則があ る と推定す る根拠 な どどこに もない。低地 で水 田耕作 を営 む,いわゆる 「タイ系」 の人 々だけで も,地域 によ り異 なった える。例 えば, ヴ イエ ンテ ヤンの料理 は東北 タイの料理 と同 じだが, ルア ンプ ラバ ンの料理 には違 っ た趣がある。従 って, ゴンカム村や東北 タイの料理 をまとめて 「ラオス料理」 と呼ぶに も問題がある。 しか し,各地方 も含む タイ人自身の認識は一般的に重富 に近い。中部地方の食文化はバ ンコクの 「タ イ料理」 に包含 され

,

「標準 タイ料理」 と見なされ る。 一方,北部,東北部,南部それぞれの食文化の 違 い を前提 に,それぞれの地域 の料理の教科 書 も売 られているC これ らはあ くまで タイ国内の地 方料 理 としての もので

,

「ラオ (ス)料理」 とは決 して呼ば ない。 また, これ は地域 内での平準化で もある。 この こ とは,娯楽 的な もの (例 えば,筆 者の 手)亡にあ る ものでは 『イサー ン料理』 [Anonymous1997])だけでな く,教育省の学校検査官,ペ ンナ ッ ト ・ヨー シー ダーの 『イサー ン料理教本』[Yoshidan.d.] の ような,東北 タイ人で しか も家政学 ・栄養学的見 地か ら長年 に亘 り東北 タイ料理 を研究 し,教 えて きた人が書 いた もの に も当ては まる。東北 タイ料理 の背景や特徴 を説明 し,分類整理 し,70種 の レシピを挙げてある。 しか し, ここで も域 内の変異 につ いては全 く言及 されてい ない。「よ りよい料理の作 り方 を伝授す る」 とい う教科書そ もそ もの 目的か ら 考 えれば当然の ことだが

,

「東北 タイ料理」 とい うカテ ゴ1)-で 「教科書」が成立す るとい う 卜嬢があ るこ とは注 目に値す る。 ここで は, と りあ えず これ を 「標準 東北 タイ料理」 としてお く。 6)石毛 ・ラ ドル [1990] によれば,東北部は タイの中で塩辛 (pladaekもこれに含 まれる)やナ レズ シ の種類が最 も多い [同上書 :69]。乾燥 した コラー ト高原の低地で水田耕作 を営 むラオの環境では,1雨 法 としての塩 辛やナ レズシが発達 した理 由に挙げている。 しか し, これでは同 じような環境 の ゴンカ ム村 で なぜpladaekを始め魚 の発酵 食品が なか ったのか を説明で きない。 また同書 にはpladaekの 歴 史的経緯 に関す る記述が ない。 「現 在のベ トナムには塩 と魚 だけでつ くる単純 な塩辛 は見出せ ない」 [同上書 :143] のであれば,村人の言 う 「ラオ人はベ トナム人か ら学 んだ」 とい うのは信悪性が低い。

(5)

東南 ア ジア研 究 37巻4号 村 での主食 はモチ米で,三度の食事 に例外 な く供 され る。 普段 食べ る米がモチ米 か ウルチ米 か は, タイ国内での地域 や民族 の アイデ ンテ ィテ ィの指標 と して,広 く認知 されてい る。 大 ま か に言 えば,北部 と東北部 はモチ米地帯 で,それ以外 が ウルチ米地帯 であ る。 もちろん,北 部 の 山地少数民 や東北部 のモ ン ・クメール系住民 の ように, ウルチ米 を主食 とす る例外 もあ る。 バ ンコクを中心 とす る中央部 の人 々は,侮蔑 的意味 も含 め,モチ米食 を特 に東北部 の象徴 と見 る。 反対 に,東北部 の人 々 (モ ン ・クメー ル系 を除 く多数派の ラオ人) ち, この図式 を受 け入 れてい る。 都市 での肉体労働者 の多 くは東北部 出身者 だが,彼 らは, ウルチ米で はモチ米 を食 べ るの に比べ て力が 出 ない と言 う。 さ らにモチ米の方が腹持 ちが よい と言 う。 しか し,中央部 の人 々に聞 くと, ウルチ米の方が腹持 ちが よい, とい う逆 の答 えが返 って くる。 米以外 の 「おかず」 にあたる料理 は,一括 してkapkhaw (ご飯 と共 に食べ る もの, とい う意 咲) と呼 ばれ る。 次 に,村 で見 られ る主 なkapkhawの種類 と料理法 を挙 げ る。 これ らは 自然 か ら何 を採取 して食べ るか を決 め る最 も基礎 的 な文化 的 フ ィル ターであ る。 kaeng kaengは一言で言 えば,「煮物」 あ るいは 「シチ ュー」 の ような料理 であ る。 具材 を香草や香 辛料 とともに鍋 で煮 る。 どんぶ りに盛 られたkaengは,いつ も食卓の中心 であ る。 手で丸 めた モチ米 を汁 につ け,具 を一片指 でつ まんで口に入 れ る。 あ るいは,ス プー ンです くって食べ る (写真

2)

。 kaengは,最 も基本 的 な料理 と考 え られてい る。 村 人達 は,一種 の挨拶 と して,``kinkhaw kapyang''(何 をお かず に ご飯 食べ たの ?) と聞 き合 うが , 時 に, 同 じ意 味 で "kaengyang" (kaengは何 ?) と言 うこともあ る。 つ ま り,kaengとい う語 は,広 くkapkhaw全般 とい う意 味 を も包含す る。 それ ほ ど基本 的 な料理 であ りなが ら,kaengの正確 な定義 は意外 に難 しい。 一般 的 には,kaengは 「タイ ・カ レー」 と訳 され るO 恐 ら く,バ ンコクの ココナ ツ ミル クを用 いたkaengが,西洋人の 目にはイ ン ド ・カ レー に似 て見 えたのだろ う。 しか し 「カ レー」 はイ ン ド料理 の用語 で, タイで は本 来 な じみの ない 言 葉 で , い わ ゆ る イ ン ド ・カ レ二 は タイ語 で kaengkarl (-curry)と呼 ばれ る。 実際 には,バ ンコクや 中央部 に もココナ ツ ミ ル ク を用 い ない,汁 が透 き通 った kaengが あ る。 ゴ ンカム村 を含 む東北部のkaengもココナ ツ ミル クを全 く使 わ ない。 これ らは,西洋 人や イ ン ド人,我 々 日本人のイメー ジす る 「カ レー」 560 写真2 ある日の食卓 どんぶ りに盛 られたkaengと小鉢のjaew,焼 き 魚やキュウリ,イピルイピル (輿)も見える。

(6)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然 の 関わ り とはほ ど遠 い ものである。 ゴンカム村 で作 られる

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を構成す る要素 は,全て,「主 な具材」,「副具材」,それに香草 やスパ イス,調味料 に整理で きる。 これ らの もの を鍋で煮 る訳 である。 「主 な具材

は非常 に多彩であ る。 動物性 の もの として,幡乳類 の他, カエ ル, トカゲ,鳥 類,魚類,昆虫 を含む。家畜である午や水牛,鶏のほか,多 くは野生の ものである。 植物性 の もの と して は, タケ ノ コ とキ ノコが代 表 的 で あ る。 他 には,

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(タガヤサ ン:Cassia siamea)の葉や

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(サ トイモ科)の茎 も 「主な具材」 になるが,キノコや タケノコの

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ほ ど好 まれ ない。 「副具材」 はほ とん どが植物性 の ものである

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の種類 によって 「副具材」 を入れない も の もあ る し,手 に入 らない ときには省略す ることもある。 これ以外 の 「香草やスパ イス,調味料

と記 した材料 は,料理 に味や香 りをつけることが 目 的で使 われ る点で

,

「主 な具材

「副具材」か ら区別で きる。 しか し,味や香 をつ けるために入 れ るのだが,それ 自体 も食べ る とい うようにこの区別があい まいな場合 もある。 実際の村 での使用か ら見る と,上記の範噂 に入 る材料 は,

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(香が よい, とい う意味),

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(酸味),塩味の調味料, トウガラシ,化学調味料 に分け られ る。

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は香づ けである。 全て植物性で, シャロ ッ ト, ネギ, コリア ンダー, レモ ングラス,バ ジル類のほか,様 々な野生植物が含 まれる

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は酸味 を加 える。 これ も,ほ とん どは植物性 で, タマ l)ン ドと柑橘類のほか,やは り様 々な野生植物の果実や幼芽 も使 われるo唯一の例外 は

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(赤 ア リ :Oecophyllasmaragdina)だが,主 に

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といった料理 (後 に述 べ る)に使われ,

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にはあま り使われない

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を用いない

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はないが,種類 によっ て

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を入れない

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はある。

塩味の調味料 には塩 のほか

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(魚醤)がある。 前述の通 り

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われ るようになったのは約

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年前か ら, また

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は最近

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年 ほ どの ことだ と言 う。 つ ま り,それ以前 は専 ら塩 を使 っていた こ とになる。 しか し今 日で は

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は ともか く

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は塩 と並 んで どの種類の

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に も不可 欠である。 トウガラシも,村 の料理で最 も大切 な材料である。

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だけで な く,ほ とん ど全ての料理 に使 われ る。 トウガラシには,生の まま,生の もの を火で象 る,乾燥 させ る,乾燥 させ た もの を妙 る,乾燥 させ妙 った もの を粉末 にす る, とい う

5

つの使 い方がある。 この中で,

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に は,生の ものか,乾燥 させ た ものが使 われ る。 化学調味料 は,あ らためて説明す ることもなかろ う

「味の素

である。 代 わ りに砂糖 を少量 入れ ることもある。

(7)

東南 ア ジア研 究 37巻4号 tom tom もkaengと同 じく,具材 を香草,香辛料 とともに鍋 で煮 た 「煮物」である。 印象 として は,kaengよ りも淡 白で簡潔 な料理 に見 える。 このtomとい うカテゴ リーがあるせ いでkaengの定義が一層難 しくなる。tom とは字義通 りでは 「茄でる

「煮 る」 とい う意味である。 しか し,料理の カテゴ リー としては,tomはた だ単 に水で煮 るだけの単純 な ものではない。kaengと同 じように,hoamやsom,塩味の調味 料が使 われ る。7)

筆者が観察 した限 りでは,kaengとtomの違いは以下の3点である。kaengは トウガラシを 入れるがtomには入れない。kaengを作 る時 には,血oam,som と トウガラシは,khrokと呼ば れる鉢の中で砕いてか ら鍋 に入れるが,tomではhoam,somを砕かずその まま入れる。 狙板の 上で,包丁でたた くことはある。 さらにkaengの場合,全 ての材料 を鍋 に入れ,火が通 ったあ とある程度味が濃 くなるように少 し煮詰める。 しか し

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の場合,丁度火が通った ところで出 来上が りである。8) ある村人はkaengとtomの違いについて,「tomには トウガラシはいれない」が,一方 「kaeng には全種類の調味料 を入れる」 と説明 した。kaengでは,hoamやsom, トウガラシ,塩味 (pla daekや塩), と一通 りの調 味料 を必 ず入 れ るが,tomの場 合 は,塩 味 は例外 な く入 れ るが, hoamやsomは省かれることもあるとい う点 を指 しているのだろ う。 少な くともこの村 人の説 明は,tomがkaengよ りも簡略 な料理 と捉 え られていることを示 している。料理 を している村 人 に 「これはkaeng?

と聞 くと,「違 う。"tom suesue''(tom Lて るだけ)

とい う答 えが 返って くるの も,同様のことを示 している。 しか し,tomでは,「主 な具材

になるのは例外 な く動物性の もので

,

「副具材」 に当たる ものは入れ られない。 「主 な具材」 に当たる動物性 の食 材がた くさんあるときに,余分 な ものをあ ま り入れずに作 るとい う, どち らか と言 うと賛沢 な 料理である。 jaew jaewは, トウガラシとnam plaやpladaekを下地 に した 「たれ」 の ような もので,手で丸 めたモチ米や野菜 をつ けて食べ る。標準 タイ語でnam phrik (「トウガラシの汁

の意味) と呼 ばれ るものに当たる。 しか し, ほ とん ど毎回の食事 に供 され る。 村 で見 られるjaewは, ラ ン 7)Ⅳ章で示す食事データにあるように,nomaitom (nomaiはタケノコの意)という料理がある。タケ ノコを皮付きのまま火が通るまで茄でただけのこの料理は,ここで言うtomには含まれない。語順の 上でも,料理のカテゴリーとしてのtomに含まれるものは,例えばtomkai(鶏のtom)というよう に,主な具材などtomの種類を示す語を後置修飾語として伴う。nomaitomの場合はこれと逆であ る。 8)『イサーン料理教本』[Yoshidan.d.]のレシピは トウガラシを用いるtomを含む。 しか し,tomと kaengの違いについては明らかにしていない。 562

(8)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然の関わ り サ ー ン王家 の都 ルア ンプ ラバ ンのjaew や ,バ ンコク料理 の nam phrikの ような,様 々な種類 の素材 を用 いた複雑で凝 った もの とはお よそか け離 れた, とて も単純 な料理であ る。nam plaや pladaekに粉 末 トウガ ラ シを混ぜ るだ けの こ と も多 い。 そ れ に加 えて, シャロ ッ トや nomai son (タケ ノ コの塩 漬 け)が 入 る程 度で あ る。 1arp と koi

larp とkoiは, どち らも細 か く刻 んだ肉類 を hoam,som, トウガラシ,塩 味 の調味料 で和 え た ものであ る。 ほ とん どが 「肉」, とい う賛沢 な料理 であ る。 牛 や鶏 をつぶ した り野獣 を獲 った 時 は,大概 la印 か koiにす る。 両者 の違 い は次 の よ うな もので あ る。larpの場 合 ,細 か く肉 を刻 んだ後 ,和 える前 に残 りの ガラで とったスープを少量加 えて さっ と火 を通す。 これ に対 しkoiの場合 は,肉は刻 む前 に象っ て火 を通 し,水 分 を加 える こ とは ない。 さ らに,koiで は som を和 える際 に直接加 えるの に対 し,larpで は刻 ん だ 肉 に火 を通 す の に使 うスー プ を som で味付 け してお く。 また,larp には

khaw khua (煎 り米)が 欠かせ ないが ,koiには普通 入 れ ない。9)

larp,koiともに,野生動物 ,家畜 ,野鳥,嘩 虫類 ,魚 の 肉が使 われ る。 しか し,あ る特 定 の 材料 の場合,上記 の方法 とは少 し違 った方法 で料理 され ることが あ る。最 も際立 ってい るの は, larpdip (生 のlarpの意) だろ う。larpdipで使 われ るの は肉 は牛 肉だけで特 に これだけ を指 し て choklek と も呼 ぶ 。 牛 肉 (及 び, レバ ー) は生 の ま ま細 か く刻 まれ,hoam,som や nam pla, トウガラシ とともに血液や煮立 たせ た大腸 の 内容 物 を加 え て和 え る。 血 液 は, ア ヒル の 1arpに も入れ るが,肉には火 を通す。.koiplasiu (plasiu とい うコイ科 の小魚の koi) も火 を通 さ ない。 小魚 なので,刻 まず その ま ま使 う。som に赤 ア リを使 う。 生 の ままの魚 に赤 ア リを食 い

つ かせ ,そ こに トウガラ シ,nam pla,pladaek を加 え, さ らにhoam を入 れ て和 え る (写 真 3)。 写真3 koiplasiu 水 田脇で採 った魚 をす ぐさまkoiに して食べ た。 9)『イサ ー ン料理教本』,『イサー ン料理』 に示 された 「標準東北 タイ料理」 では,1a叩 で もsomを和 え る際 に直接 入れ る としてい る [Yoshidan.d∴10-29;Anonymous1997]。筆者 自身の東北部の他地域 や,東北部 出身者 との交流か ら得た経験 で も,直接 入れ るのが普通で, ゴ ンカム村 の1arpの調理法は 独特 である。Iarp とkoiの火の過 し方の違 い,煎 り米 を入れ るか どうかの違 いは両方の教科書が認め てい る。生 のIarp,koiまで考慮 し,両者の違 い を突 き詰 めれば, コ一 ・サ ワ ッ トパーニ ッ トが 言う ように,「煎 り米 を入れ るか入れないか」[Sawatphanit1990:51] とい うことになる。 しか し, これに も例外があ る。村 人の説明で は, タケ ノコのkoiに煎 り米 を入れ る と言 うのだ。ただ,筆者 自身は見 てい ない。 これが本 当だ とす れ ば,larp とkoiを厳密 に区別す る ことはで きな くなる。

(9)

東南 ア ジア研 究 37巻4号 tan tamとは 「抱 く」 とい う意味であ るo 料理 の カテ ゴ リー として は,主 な食材 に トウガラシや pladaek,somな どを加 え,khrokとい う鉢 で損 いて作 る 「な ます」 の ような料理であ る。 最 もな じみ深 いの は,未熟 なパパ イアの果実で作 るtam hungであろ う。 いわゆる 「ソム タム」 として,バ ンコクで もよ く売 られていて,東北部の料理の代表 と目されている。 村 ではこれ以外 に も瓜や キュウリ, ダニ一種 のバ ナナ (Musabalbisiana),ササゲマメを用 いた ものが見 られた。 somは,手 に入 る時 には入れ る (tam som と呼 ばれ る)が,入れ ない場合 もある。 tamは朝 食や昼 食 に供 され るこ とが多 い。

nueng

,

mok

及 び u nueng(蒸す,の意味),mok(火 にかける,の意味),uはいずれ も蒸 して作 る料理である。10) 獣 肉や魚 を塩 , トウガラシ,hoam,som とともに蒸 す。3つ の料理法 の違 いは次 の通 りであ る。nuengは竹で編 んだザ ルで蒸す。mokは材料 をバ ナナの葉 で包 んで,直火 にか ける。uは 材料 を鍋 に入 れ ご く少量の水 で火 を通す。

pOn

pon(細か く砕 く,の意疎) は,丸めたモチ米 をつ けて食べ る点 で,jaewに似 た料理 である。 主 となる材料 は魚 , カエル, トカゲであ るが,ナスで作 ることもあ る。 主 となる材料 をhoam, som,pladaekと塩 と ともに茄 で たあ と, 肉 をほ ぐして, トウ ガラ シ, ニ ンニ ク (省 略可), シャロ ッ ト (省略可) とともにkhrok(鉢) でつぶ し,煮汁で伸 ばす。 これ ら以外 に も,単に,焼 く,茄でる,妙 るといった単純 な料理法 ももちろんある。野菜類 は, 生 で食べ るもの も多い。 これ らの料理が供 され る3度の食事 の他 に,村人達 はよ く間食 を取 る。 以上述べ た ような,村 での料理 の特徴 を まとめ る と次の ようになる。 まず,最大 の特徴 は,脂 っ こい料理が少 ない こ とだろ う。 妙 め物が ほ とん どな く, ココナ ツ ミルクも使 わない。例 えば,獣 肉で も極力脂身の少 ない赤身が好 まれる。 また,甘味 も少 ない。 逆 に,苦みや香草 の持つ強い薫 りを好 む。 これ らの味覚 の特徴11)は,村周辺の 自然環境 か ら待 10)『イサーン料理教本』[Yoshidan.d.]では,uは鍋を使うためか煮物類に近い扱いをしているが,村人 の 「nuengとほとんど同じ」という言葉に従いこういうカテゴリーにした。確かに出来上がりは水分 をほとんど含まず,蒸 し物に近い。 ll)ここで言う 「味覚の好み」は,村人全般に当てはまる大まかな傾向を指し,概ね料理法の特徴に対応 する。もっとも,中学から村を離れた寄宿生活を経験 した若年層 (注15参照)からは,脂っこく甘い 料理の噂好を耳にする。ただし,これが村での食生活を変えるには至ってない。これ以外にも,個人 レベルで細かい好き嫌いはある。例えば,ある村人はキノコを食べない。また,特に la叩 dipを食べ ない村人は少なくない。 564

(10)

藤田 :食物をめぐる人と自然の関わり られ る食材 に適合 してい る。 もちろん,栽培 や飼育 に よる食材 も多 く用 い られ るのだが,彼 ら が噂好す る味覚 は, 自然 の食材 だけで作 れる ものであ る。 また,生の まま使 う食材が圧倒的 に多い こ とも特徴 だろ う。pladaek (魚の塩辛)や nomai som (発酵 させ た タケノコ),乾燥 トウガラシとい う調味料 は例外 であ る。 牛 肉を干 して保存す るこ ともある。 しか し,kaengな どの料理の具材 は生の ものが主体で,鮮 度の高 さが要求 され る。 中華料理 の よ うに乾燥 させ た り加工 した もののほ うが珍重 され る ことはない。12) hoam や som も, ほ とん どは生 もので,同 じ熱帯 で も乾燥香辛料 を多用す る南部やマ レー世界 と対照 的 であ る。 そのため,食材 は頻繁 に採取 しなければな らない。 この ような料理 の特徴 は,後述 の ような, タケ ノコや魚 な ど季節性が あるに も関わ らず保存す るこ とを好 まない とい う, 自然環 境の季節変化- の対応の仕方や,必要 な ときに必要 なだけ採 る とい う採集行動 に関連 している。

季節 に よ る変化 Ⅳ-1 サテ ィア ン家の食事デ ータ 本章では,筆者が 「間借 り」 した村 内のある世帯の食事が季節 に応 じどう変化す るか を見 る。 デー タは年 間 を通 しての もので はな く,一世帯 だけのデー タだが,参与観察 に よ りその世帯 の 日常 の活動 の詳細や社会 的背景 を把握す ることで,人 と自然 の関わ りとしての食事 の特徴 をよ り深 く理解す る ことがで きた。 対象 となる世帯,サ テ ィア ン家 は,村 の中で は比較的裕福 な方であるが,飯米 を自給 で きて いる, とい う程度の ことだ。 また,サテ ィア ン氏 は区会 (saphatambon)の議員 なので,僅 か なが ら月給 があ る

(

1

,

0

0

0

バ ー ツ程 度 - 日本円で

3

,

0

0

0

円強)。 筆者 も区会 月給程度の 「間借 り 代」 を渡 していたが,それ らを足 して も,村近辺で賃労働 に従事す る以上の現 金収 入 にはな ら ない。 とにか く,サ テ ィア ン家の毎 日の食生活 は他 の村 人 と基本的 に違 いはなか った。唯一の 例外 は,サ テ ィア ン家が村外か ら時折訪 れ る

NGO

ス タッフ達 の常宿 だ った ことである。 彼 ら は,村 で研 修や会合 を催す とき,市場 で購 入 した食物 を大量 に持 ち込む。その ような事例 は, デー タか ら省いてあ る。 表1か ら表5は,サテ ィア ン家の料理 のデー タを主 な食材 の種類毎 に分 けて示 してい る。 表 1 (6月),表 2 (8月),表 3 (9月)が雨季のデー タ,表 4 (2月),表 5 (3月)が乾季 の 12)ゴンカム村ではないが,やはり東北部の農村出身者に,子供の頃たまに買って食べるplathu(鰭)の 干物がとても賛沢品だった,という話を聞いたことがある。川や水田から新鮮な淡水魚がたくさん得 られたにも関わらず,珍 しいというだけで海の魚が珍重されたのである。 ゴンカム村の村人ち,おか ず売 りの車から鯵を買うことがあるが,ほとんどが生魚である。技術の進歩により,この山奥の村に も海から生魚が届 くようになったのである。一方,鯵の干物はほとんど見かけない。海の近 くにある バンコクで,未だに鯵の干物をよく食べるのと対照的である。これも,村人が生の食材を好む一つの 証左であろう。

(11)

東南 アジア研 究 37巻4号 デー タである。動物性蛋 白については

,

「噛乳類 ・僻虫類 ・鳥類

「両生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・ カニ

「昆虫」 に分 けた。 この内

,

「晴乳類 ・伸 虫類 ・鳥類

は主 に森で狩猟 によって得 られる もの,「両生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・カニ

は主に水辺で捕獲する ものである。 昆虫類 は,森か らの もの と水辺か らの ものの両者あるが,数が少 ないので別項 に した。主 な食材の由来 として, 「野生 (または採取場所

)

「栽培 ・飼育

「購入」 に分 けたが

,

「購入」とは村外か らの ものだけ で,村 人か らの野獣や牛 ・鶏肉の購入は含 まない。 ここで注 目するのはあ くまで食材の 「由来」 で,サ テ ィア ン家の家計ではないか らである。 また,「回数」 は,基本的に料理 された回数 (もしくは他家か らもらった回数) で,食事 に供 された回数ではない。 ある食事 のために作 られた料理の残 りは次 の食事 の際 に出 され るこ とも あるが,そ うい う場合 で も一回 として計算 してある。 村 人達の 自然か らの食材採取 は,次章で 述べ るように,基本的 には一回の料理 ・食事のための もので,一度にた くさん作 り置 きす る意 図ではないか らである。 ただ し

,

p

ha

k

(野菜)」の カテゴリーに入 る ものでは,特 に栽培植物 な ど,一度に収穫 しておいて何 日も食べ る傾向が見 られたので,実際 に供 された回数で計算 し ている。 この表1か ら表5のデー タを基 に,月毎 の割合の変化 を示 したのが図1-1であ る。 また, こ れ を食材の由来 に注 目して示 したのが図 1-2である。

Ⅳ-

2

雨季 通常,雨季 は 5月末か 6月か ら始 ま り,10月 まで続 く。ただ し, 6月 くらい までの初期 の間 は, まだ毎 日雨が降るとい うほどではない。特 に,この調査 を行 った1998年 は,エルニーニ ョ現 象のせいで7月末 まで本格的な降雨はなかった。村 人達の準備 した苗代 は大 きな被害 を受けた。 雨季の初期 には, タケノコは既 に出ているが, まだそれほ ど多 くはない。

6

月 (表

1

) には, タケノコ料理 は全

7

8

回の料理 中

,ka

e

n

gn

oma

i

(タケノコの

ka

e

n

g) 5

,noma

it

o

m

(茄で た タケノコ) 2回の合計 7回だった。図ト1か らもわか るように,例 えば9月の ような本格的 雨季 に比べ,割合 は低 い。 まだ,水 田耕作の前 なので,魚や カエ ルを捕 まえるの も本格的雨季 に比べ ると難 しい。その代 わ りに,池でおた まじゃ くしやヤ ゴ (トンボの幼虫) を捕 まえ,食 べ ていた。 これ らはこの時期特有の食材 である。 時期が過 ぎると成長 して しまう。13) 次 に本格 的雨季 を見 てみ よう。 8月 (表 2) には, タケ ノ コ料理 は72回申 7回 と, 6月 と 大差 ない割合である。 これは, 8月が田植 えの シーズ ンだったため,採集 に行 く時間がなかっ たためであ る (例年 は 7月)。村 で同居 してい るサ テ ィア ン氏 の娘 は まだ小学生 で平 日は

3

時 まで学校 に行 くので, た まに しか タケ ノ コ探 りには行 けない。 中学 を終 えて家 に戻 っていた 13)おたまじゃくしは,成長後もカエルに姿を変えて食卓に上る。 566

(12)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然 の関 わ り ()j](2∴iG) 8月 (1.85) 9月(2.13) 2月 (1.53) 3月 (1,47) 図 卜1 主 な食材の種類毎 の割 合 と季節変化 亨ケき.dJ= LLL批 ■: A,<L1 .pL…1〆I◆1!it!呈 rT .-. ■1圭1i】‡I圭‡IIIIIⅠiiIIIiIIiiIiiI }= ^ :べ >'■ ■ヽ I-.T: V HごヾLヽI//:;:■::i<i{くH-I<-VJ'j::H:-くiく:Iヽ:Vて■ '1{tJi{ i:< ヽ }= >I√■′: >..;■; ●一 :ヽ H.i V I;iM< 賢群雲雲 '1>}' >:}: /l ヽ ヽt:{ `:}: I ヽ H.< i; >: J I ヽt:く ‖ ll I I: >: ' .,l}:H 日日 烹 墨、J''JI.,>1''JIと '':,::ItIJ'喜、 'L.J.-㌔,. J,:.I.J㌔,.ヽ【■.:,):一、Lヽ∴十\_\\AJ )求:..LT.L'J''寸...>㌔、 ㌔\JヽJJ.,ヽ,一._.`ヽヽヽ -,JlTt'..),\'-., \`..uりへJ1、,b\ヽ】..㍉t ・墓 室.Il\′-_-L■..:>S}.J、_一`㌧,壬.Jl., 1aeW 昆 虫 両生 類 ・魚類 ・貝類 エビ・カニ 晴 乳類 ・帽 虫類 ・ 鳥類 タケノコ以外 の 植 物性食材 】aeW 動物性(購入) 動物性(飼育) 動物性 (野 生) 植 物 (購 入) 栽培植物 野生植 物 ti月 (2.:捕) f3月 (1.85) 9月(2.13) 2月 (1.53) 3月 (1.47) 図 1-2 主 な食材 の 由来 に よる割 合 と季節変化 図 1 サ テ ィア ン家の料理 デー タ

(13)

東南 アジア研 究 37巻4早 表 1 サテ ィア ン家の料理 デー タ :6月 (全33回の食事) 晴乳類 ・僻 虫類 ・鳥類が主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材の由来 SOmua SOmmu

p

a kaengkataekapyae kaengmu kaengueauahaeng plngkai larpbang larpkai larpmupa plngmupa plngnueauahaeng plngnu tom bang tom kai plngyae 塩 ・香辛料で発酵 させ た牛 肉 塩 ・香辛料で発酵 させ たイノシシ肉 (Susscro/zZ) k ntae(ツパ イ科) とyae(トカゲの一種 :LeiolePisspp.) のkaeng 豚 肉のkaeng 午干 し肉のkaeng 焼 き鶏

ヒヨケザル (Cynocephalusvariegatus)の1arp 鶏のlarp イノシシのlarp 焼 いたイノシシ肉 焼 いた牛干 し肉 焼 いた野 ネズ ミ ヒヨケザルのtom 鶏のtom 焼 いたyae 3 3 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 鮒 術 銅 品 森 森 閑 畑 森 術 森 両生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・カニが主 な食材の料理 料 理 名 回数 主 な食材の由来 kaengpla ponpla nuengpla plngpla plason kaeng

h

oai plngplathu 魚 のkaeng: 3

pladuk(Clan'asbatylaChus;ヒレナマズ科)+plalai(タウ (1) ナギ :Flutaalba)+plakang(雷魚 に似た魚) pladuk+plakang pladuk 魚のpon: pladuk pladuk+plakang 魚のnueng: pladuk+plakang+plala主 pladuk+plakang 焼 き魚: plalai pladuk+plakang+plalai ナ レズ シ (plataphian:Pungitiusspp.;トゲウオ科):焼 い た もの hoaichup(オニノツノガイ科 ・カニモ リガイ科)のkaeng アジの干物 を焼 いた もの ) ) ) ) ) ) ) ) l 1 3 2 1 2 1 1 2 1 1 1 1 1 ( ( ( ( ( ( ( ( 小川 ∫ ∫ J 入 川 入 小 小 小 購 小 購 昆虫が主 な食材の料理 料 理 名 回数 主 な食材の由来 kaengmaengla ヤ ゴのkaeng:

ngam maenglangam (ヤゴ)+huakkop(おた まじゃ くし)+ plasiu(コイ科)+ngotnam (タイコウチ)

1 池

(14)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然 の関わ り 表 1-つ づ き

植物 が主 な食材 の料理

料 理 名 回数 主 な食材 の 由来

kaengnomai タケ ノ コのkaeng

makkhuea makkhuea(ナ スの -種 :LinocierlaParkinsonii) の実 : 生で (phak)

phakkathin kathin(イ ピル イ ピル :Leucaeneaglauca) の実 :生 で (phak)

taengkwa キ ュウ リ:生 で (phak) nomaitom 茄で た タケ ノコ

tam taeng taengching(マ クワウ リの仲 間 :Cucumismelo)のtam kaengkhilek khilek(タガヤ サ ン :Cassiasiamea)の葉 のkaeng kathin イピル イピルの幼 芽:生で (phak)

hoam husuea 生 で (phak)

makkhaeng makkhaeng(ナ スの一種 :Solanum torvum) の実 :坐 で (p九ak)

phakkadon kadon(Careyasphaerica;サ ガ l)バ ナ科)の幼芽 :生で (phak)

phakmakyom yom (ア メダマ ノキ :Phyllanthusacidus) の幼芽 :生 で (phak)

phakmueat mueat(Memecylonedule;ノボ タ ン科)の幼芽 :生 で (p九ak)

phaktiw tiw (C71atOXylumformosum;オ ハ グ ロ ノキ 属) の幼 芽 : 生で (phak) jaew 唐辛子ベ ー スの タレ 合 計 5 水 田 +森林 5 購 入 5 栽培 (屋敷地) 5 購 入 2 水 田 +森林 2 栽培 (菜 園) 2 栽培 (寺) 2 栽培 (屋 敷地) 1 野生 (集落 内) 1 栽培 (菜 園) 1 野生 (水 田) 1 栽培 (屋敷地) 1 野生 (蘇) 1 野生 (蘇) 注 :調理 され た回数, または他家 よ り贈与 された回数 を示 す。但 し,生で食べ る野菜 は供 された回数。 (以下の表2-表5につ いて も同 じ。) 次男 は,時折 狩猟や魚捕 りには行 ったが , タケ ノコ探 りには行 か なか った。 田植 えの期 間中 は,水 田周辺で食べ物 を調達す るこ とが多か った。野 ネズ ミ (表2で2回)や カエ ル (表2で 6回 :kop と呼ばれる大型の もの 4回,khiatと呼ばれる小型 の もの 2回)はそれである。 例 え ば ,田植 えが始 まった8月10日の食事 は次 の ような ものだった。朝食は前 日の残 り。 昼 食は, 水 田脇 の休 み屋 で,カエ ル (朝 ,サ テ ィア ン氏が水 田で捕 まえた)の pon と,付 け合 わせ の 野 菜 (phak:後述 ) と して taengching (マ クワ ウ リの仲 間 :Cucumismelo),kathin (イ ピ ル イ ピ ル :Leucaeneaglauca)の 実 , sadaw (イ ン ドセ ン ダ ンの 変 種 :A.zadirachta indica Juss.∀ar.siamensisValeton)の幼芽 を食べ た。 これ らはすべ て,水 田脇 に植 えてあ る ものだっ

た。

(15)

東南 ア ジア研 究 37巻4号 表2 サ テ ィア ン家 の料 理 デ ー タ :8月 (全39回の食事 ) 晴乳 類 ・佃 虫類 ・鳥類 が 主 な食材 の料 理 料 理 名 主 な食材 の 由来 pingkai khaichiaw moknu kaengbang kaengkai kaengkatae kaengno女kathaet kaengnu khaitom pingkapom pingkatae la叩 nOknoai larpua pOnyae tom noknoai 焼 き鳥 卵 焼 き 野 ネズ ミのmok

ヒヨケザ ル (Cynocephalusvan'egatus) のkaeng 鶏のkaeng katae(ツパ イ科) の kaeng nokkathaet(野 鳥) のkaeng 野 ネズ ミのkaeng ゆで卵 焼 いたkapom (ア ガマ科) 焼 いたkatae noknoai(野鳥) の1arp 牛 肉のlarp yae(トカゲの一種 :LeiolePisspp.) noknoaiのtom 師 臥 榊 森 鮒 森 森 畑 鮒 森 森 森 鮒 森 森 両生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・カニが主 な食材 の料 理 料 理 名 回数 主 な食材 の 由来 kaenghoai ponkop 丈opphat plngkop plakapong plngpla plasom plngplathu thoatkhiat tom khiat hoaichup(オニ ッノ ガ イ科 ・カニモ リガ イ科)のkaeng kop(カエ ル :ア カガエ ル科 ) のpon kopの妙 め物 焼 いたkop イ ワシの缶 詰 焼 き魚 :plakhoa(Channastriata;タイ ワ ン ドジ ョウ科 ) ナ レズ シ (plataphian :Pungitiusspp.;トゲ ウオ科 ):焼 い た もの 焼 いた ア ジの干物 揚 げた khiat(小 型 の カエ ル:ア カガエ ル科 ) khiatのtom 2 2 1 1 1 1 1 池 畑 桐 畑 臥 州 臥 臥 桐 畑 昆 虫が 主 な食材 の料理 植 物 が 主 な食材 の料 理 料 理 名 回数 主 な食材 の 由来 taengching kaengbet nomaitom kaengnoma主 tam taeng maklingma主 570

taengching(マ クワ ウ リの仲 間 :Cucumismelo):生 で 8 栽培 (菜園) (phak) キ ノ コのkaeng 茄 で た タケ ノ コ タケ ノ コのkaeng taengchingの tam lingmai(ソ リザ ヤ ノキ :0,叩 Ium indicum) の実 :焼 い た もの (phak) 1I . 森 義 4 4 3 2 2

(16)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然の関わ り 表 2-つ づ き

料 理 名

kathin taengkwa phatp九akbung ponmakkhuea tam hung tan thua tom taeng ba主sadaw 回数 主 な食材の 由来 kathin(イピル イピル :L,eucaeneaglauca)の芙 :生で 2 栽培 (屋 敷地) (phak) キ ュ ウ リ:生 で (phak) phakbung(ヨウサ イ :IpomoearePtans)の妙 め物 makkhuea(ナスの 一種 :I,inocieraPay:kinsonii)の pon 未熟 なパパ イアのtam ササ ゲマ メのtam taengchingのtom sadaw(インドセンダンの変種 :A.zadirachtaindicaJuss. γar.siamensis)の幼 芽 :生 で (phak) jaew 唐辛子ベースのタレ 2 購 入 1 購 入 1 栽培 (菜 園) 1 栽培 (屋敷地 ) 1 栽培 (菜 園) 1 栽培 (菜園) 1 栽培 (水 田) 合 計 72 であ る。 しか し, タケ ノコと違 い不規則 に しか出ないキ ノコを逃す まい と,村 人達 は労働力の 一部 をキ ノコ探 りに割 いたのであ る。 9月は, 田植 え も既 に終 わ り, タケ ノコ料理の割合 は最 も高 くなる。表3で は,49回申 タケ ノコ料理が7回含 まれている (kaengnomaiが 5回,nomaitom が 2回,生 の タケ ノコだけ で nomaisom は含 まず)。kaengpla(魚 の kaeng) も7回 と多 く食べ られてい る。 これ は,

9月にサテ ィア ン氏が小川 に tonplaと呼ばれる壁 に似 た仕掛 けを作 ったため,毎 日,そ こか ら の魚が得 られ る ようになったか らである。 回 し1か らは, タケ ノコの割 合 はそれほ ど大 きい印象 を受 けない。 しか し実際 には,一 度 に 料理す る量が多 く,一度に供 される量 も残 り物の量 もほかの料理 よ り多いo従 って,食卓 に座 っ た感覚 で は, タケノコの比重 は,少 な くとも図1-1の倍程度 には感 じられ る。 実際, この時期 ほ とん ど毎 日タケ ノコ料理 を食べ ていた (写真

4)

0 この時期 には,総 じて村 人は精力的 に タケ ノコを採 り,生の まま仲 買の商 人に売 った り,販 売用の缶詰 を作 った りしていた。一部は nomaisom (酸 っぱい タケ ノコ,の意味) に も加工 さ れていた。nomaisomは一年間保存可能だが

,

「保存食」 とい うよ り,調味料であ る somの一 つ と言 うべ きであろう。 実際,作 ってす ぐか ら食べていた。 9月には,例 えば kaengplaの som として頻繁 に使 われていた。

村 人達が頻繁 に タケノコを食べ るのは,kaengの 「主 な具材」 として,khilekや boanとい う他 の植物性 の もの よ り好 むか らだが,毎 日の ように続 くとさすが に彼 らも飽 きを表明す る。

(17)

東南 ア ジア研 究 37巻4号 表3 サ テ ィア ン家 の料理 デー タ :9月 (全23回の食事 ) 晴乳類 ・爬 虫類 ・鳥類 が主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の由来 kaengkatae katae(ツパ イ科)のkaeng kaengua 牛 肉のkaeng larpkatae kataeの1arp pingnueauahaeng 焼 いた牛 干 し肉 tom ua 牛 肉のtom 両生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・カニが主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の 由来 kaengpla 魚 のkaeng plakhoa(Channastriata;タイワ ン ドジ ョウ科) 不 明 plakhoa+plakang(雷魚 に似 た魚) plalai(9,7+羊 :Flutaalba) pladuk(ナマ ズ) kaengplakrapong 缶詰の魚 のkaeng

koihoai hoaichup(オニ ノツノガ イ科 ・カニモ リガイ科)のkoi ponkop kop(カエ ル :ア カガエ ル科 ) のpon

ponueng ueng(カエ ルの一種 :ヒメアマ ガエ ル科) のpon uplasiu plasiu(コイ科) のu ) )

)

) ) 7 2 2

1

1 1 1 1 1 1 1 ( (

(

( ( 小川 ・水 田 臥 他 州 森

昆 虫が主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の由来

maengkhap maengkhap(BelionotaPrasina;タマムシ科):妙 った もの 1 森

植物 が主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の由来 kaengnomai makkhuea makthua nomaitom kathin maklingma主 makue

phakkangchoan phikluai taengching tan hung タケノ コのkaeng 5 makkhuea(ナ ス の 一 種 :Linocieraparkinsonii):生 で 3 (phak) ササ ゲマ メ :生 で (p九ak) 3 茄 でた タケ ノコ 2 kathin(イ ピ ル イ ピ ル :Leucaenea glauca) の 実 :生 で 2 (phak)

lingmai(Oroplum indicum;ノ ウゼ ン カズ ラ科 ) の実 : 2 焼 いた もの (phak)

カボチ ャ :蒸 した もの (phak) バ ナナの花

taengching(マ ク ワ ウ リの 仲 間 :Cucumismelo):生 で (phak)

未熟 なパパ イアのtam ngueanmakkhuea makkhueaの nguean

森 ・水 田 栽培 (菜 園) 栽培 (菜 園) 森 ・水 田 栽培 (屋 敷地) 栽培 (屋 敷地) 2 栽培 (菜 園) 2 森 2 栽培 (菜 園) 2 栽培 (菜 園) 1 栽培 (屋 敷地) 1 栽培 (菜 園) jaew 唐辛子 ベ ースの タレ Gaew nomaisom) (発 酵 タケ ノ コ入 り) 合 計 572

(18)

藤田 :食物をめぐる人と自然の関わり られ る し,野菜類 も頻繁 に供 され る。 ここでは

,

「野生動物」 とい う言葉で,表1か ら表5の 「晒乳類 ・雁虫類 ・鳥類」の うち野生の ものを示す。 これ らは,主 に狩猟 で得 られ る。 サ テ ィア ン家では,サ テ ィア ン氏 自身は鉄砲 の打 ち方 を知 らないので,わなを使 うか,手で捕 まえ られ る憧虫 類 くらい しか捕 まえ られな

。2人の息子 は鉄砲が使 える ので,時 々鉄砲 を持 って森14)へ 狩猟 に行 く。 しか し,調 査時 には,高校生であった長男 は週末 に しか家 に帰 らな かった。15)次男 は中学卒業後,高校での勉強が嫌 にな り, デー タを取 り始めた6月には帰宅 していた。表1では78回 写真 4 皮をむいたタケノコ これから縦に細 く刻んでkaengにす るところ。レンズキャップは5.2cm。 の料理の内,野生動物 は11回を数 えるが, この内5回が イノシシ

(

Su

ss

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r

ofa)である。 この時の イノシシの肉は,隣 に住 む義弟か らもらった ものであ る。 彼 は,狩猟 の グループに加 わ り,そ こで獲 られた イ ノシシの肉の分配 を受 けた。サ テ ィア ン家 に もそのおすそ分 けが来たのである。 Ⅴ章で述べ るようにこの ようなことは非常 に希 なケー スである。

8

月 には

,7

2

回の内

,1

0

回 を野生動物が 占めてい る。

6

月 とほぼ同 じ割合である。 イノシシ肉が なか った代 わ りに,田植 えの時期 だったので水 田で野 ネズ ミをわなで捕 って食べ ている。 しか し9月には40回の内,野生動物 は僅か3回で,全て義弟 よ りもらった ものである。 9月には次男 はバ ンコクで働 いていたためであ る。 次 は野菜である。 ここで言 う 「野菜」 とは,村 人の食生活の脈絡で

p

ha

k

と呼ばれる ものの訳 語 で あ る

。p

ha

k

とい う語 は,野菜全般 を意味す る (標準 タイ語 で も同 じ)。 しか し,

ki

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p

ha

k (

p

ha

k

として食べ る) と言 うように,食べ物 の カテゴリー として用い られる と,調理 され た料理 とは別に,それに付随す る野菜 とい う含意 を持つ。 この ような意味での

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k

は,生の ま ま食べ ることが多いが,茄でた り (例 えば

p

ha

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ミズヤ ツデ :L

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,焼 いた り す る もの (例 えば

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も含 むo Lか し, 同 じ茄 で るので も

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(茄でた タケノコ)は

p

ha

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とは言わない。村 人達 は,おかずが

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Lかない と,食事 は とて も粗 末 な ものだ と考 えるが

,noma

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が あればそ うは考 え ない。 この辺 に も,村 人が

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k

を補助 的 な食べ物 と認 識 していることが現れてい る。 特 に雨季 の

p

ha

k

は,量 に関 して言 えば,野生植物 よ りも栽培植物 の方が多い。表

1

,表

2,

14)鉄砲を使うような

,

「本格的」な狩猟の場所はほとんどが.村の南側 (入り口まで約3.5km)の ドン ナタムの森である。 ドンナタムの森はパーテム国立公園の中核をなす自然林である。 15)ゴンカム村は,特に発展が遅れ貧しいとのことで,シリントーン王女の奨学金によって子供たちは無 償で中学,高校,そして望めば大学にも行 くことが出来るC生徒は村から離れ,寮生活を送 りながら 通学する。

(19)

東南 アジア研究 37巻4号 表

3

で も圧倒的に栽培植物の割合が多い。

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a

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n

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hi

n

g

とナスが特 によ く食べ られている。 これ は,サテ ィア ン家の菜園で栽培 しているか らである。 サテ ィア ン家 と同 じように,水 田周辺 な どに小 さな菜園 を作 る村人は他 に もお り,家庭菜園はほぼ全世帯が持 っている。 ウリやナスの他 には

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の実 もよ く生で

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として食べ られ る

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は どこの家で も,家の周 りに植 えてお り,最 も一般的 な

p

ha

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の内の一つであ る。 Ⅳ-3 乾季 乾季 は11月か ら5月 までである。 筆者の手元 には,本格 的乾季の2月 と3月のデー タしか な い。大 まかに言 って,水 田が干上が り, タケノコの ように常 に手 に入 る ものが ない, とい うよ うに,乾季 は雨季 に比べ 自然環境か らの食物の採取 は難 しい。稲 の収穫後はほ とん どの村 人 (男 性)は毎 日の ように森-行 く。 家畜の放牧の他,狩猟や魚捕 りである。 狩猟 はいつ も獲物があ る訳ではない。道すが ら,食べ物 になるものは何で も持 って帰 る。特 に乾季 に特有 なものには, 赤 アリの卵がある。 そのほか

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として食べ る樹木の幼芽 も乾季の方が豊富である。魚捕 り は雨季 よ り難 しい。 このため

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9

9

8

年の

1

2

月に,軍隊が各世帯 の屋敷地内に小 さな養魚池 を掘 るプロジェク トを行 った。16)村人は魚 を飼い始め,乾季 にもある程度の量の魚が簡単 に得 られる ことになった。 しか し,雨季 に比べ れば魚の量 は少 な く,同 じ種類で も,養殖 された魚 は天然 の もの よ り味が落ちると言 う。養殖魚 はあ くまで天然の魚の代用で しかない。 サテ ィア ン家の食事 デー タに も,雨季 と比べい くつか違 う特徴が見 える。 一番わか りやすい 違いは, タケノコの頻度であろう。

2

月 (表

4)

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3

月 (表

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やそれ以外の タケノコ料理はなかった。

2

月に料理 され た タケ ノコは地面か ら出るいわゆ る 「タケ ノコ

」(

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と呼ばれ る)ではな く

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と呼ばれ る,節か ら出る新芽である。 自然には

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1

2

月 ごろ出るのが普通だが,人為的にタケの木 を切 るな どして痛めつけた場合,それ以外の時期 に も出るのだ と言 う。2月にサテ ィア ン家で 食べ られた

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e

n

は,サテ ィアン氏が何か道具 を作 るためにタケ材 を切 り出 した結果出た ものだ と言 う。17)

3

月の

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は全て,他家 よ りの到来物 である。使われた タケノコは,缶詰 を利用 した ものである。サテ ィア ン家で も缶詰 は作 ったが,販売用で利用 しなかった。だか ら, 同 じ

3

回 と言 って も,雨季の タケノコが豊富 な時期の

3

回 とは量が違 う。 いずれにせ よ, タケ ノコ料理 は乾季 には珍 しい料理 なのであ る。 野生動物 の料理の割合は雨季 とそれほ ど違 わない。魚 も,それほ ど少 な くはなっていないが, 養魚池の魚 を食べたのは

2

月の

2

回だけである。

2

月半ばに,養魚池の水 を入れ替 えるため,負 16)「軍隊に よる」 と言 って も,実際 に掘 るの も資材 を買 うの も村 人各 自であ る。軍隊が行 ったサー ビス は,資材 (ビニール シー トな ど) を調達 して届 けることだけだった。 17)

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a

e

n

を出 させ るために,村人達 は自然林 の下草 に火 をつけ,それが原因で山火事 になることもある。 サテ ィア ン氏 はわざわざ,筆者 に向かって 「そ うではない」 こ とを強調 したのである。 574

(20)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然 の 関 わ り 表4 サ テ ィア ン家 の料理 デー タ :2月 (全38回の 食事 ) 晴乳類 ・偶 虫類 ・鳥類 が 主 な食材 の料 理 料 理 名 kaengkai khaichiaw kaengmen larpkai kaengkaipa koikaipa koikatae khuanu moknu kaengnuea tom ua 鶏 のkaeng 卵焼 き men(ヤマ ア ラ シ科)のkaeng 鶏 のlarp

kaipa(野 鶏 :Gallusgallus)のkaeng kaipaのkoi katae(ツパ イ科)のkoi 妙 った野 ネズ ミ 野 ネズ ミの mok 牛肉のkaeng 牛 肉のtom 回 数 主 な食材 の 由 来 4 3 2 2 1 1 1 1 1 1 1 両 生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・カニが主 な食材 の料理 料 理 名 kaengpla plakapong kaengueng mokpla plngpla khuakung 昆 虫が 主 な食材 の料理 植 物 が 主 な食材 の料理 鮒 臥 森 鮒 森 森 森

如 踊 鮒 回数 主 な食材 の 由来 魚のkaeng:

pladuk(ClariasbatylaChus;ヒ レナマ ズ科 ) 不明 plasiu(コイ科 )+plakang(雷魚 に似 た魚 ) 缶詰 の魚 ueng(カエ ルの一種 :ヒメアマ ガエ ル科)の kaeng plasiuのmok 焼 き魚 :不明 妙 ったエ ビ ・) ・・1 -5 2 2 1 2 1 1 1 1 m川川t川u 円l u nl U 料 理 名 tan hung kaengnomai ba主makmuang som phakbua kaengmakmi supmakmi tan taengkwa makkhaeng phakbuang phakchi phakkhatkhaw phakkha phakkhonkhaen phakれam taengkwa 脈 州 州 臥 森 州 州 州 回数 主 な食材 の 由来 未熟 なパパ イアのtam タケ ノ コのkaeng マ ンゴの幼 芽 :生 で (phak) ネギ の塩漬 け (phak) ジ ャ ックフ ルー ツの kaeng ジ ャ ックフルー ツのsup キ ュ ウ リのtam

mak khaeng(ナ ス の 一 種 :Solanum torvum):生 で (phak)

生 で (phak)

コ リア ンダー :生 で (phak) 白菜 :生 で (p九ak)

kha(Acacia pennata subsp.insuvis) の 幼 芽 : 生 で (phak)

khonkhaen(DylaCaenaanguSttfolia;リユ ウケ ツ ジュ属 ) の幼 芽 :蒸 す (phak) phak man(ミズ ヤ ツ デ :Lnsia spinosa):茄 で た もの (phak) キ ュ ウ リ :生 で (phak) jaew 唐 辛 子 ベ ー スの タレ 4 栽培 (屋敷 地 ) 3 森 2 栽培 (屋敷 地 ) 2 栽培 (屋敷 地 ) 1 栽培 (屋 敷地 ) 1 栽培 (屋敷 地 ) 1 購 入 1 栽培 (屋 敷地 ) 1 森 1 栽培 (屋敷 地 ) 1 購 入 1 栽培 (屋 敷 地 ) 1 森 1 森 1 購 入 合 計 58

(21)

東南 アジア研 究 37巻4号 表5 サ テ ィア ン家の料理 デー タ :3月 (全30回の食事 ) 輔乳類 ・爬 虫類 ・鳥類 が主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の由来 koikapom kaenglaen khaichiaw SOm men kapom (アガマ科) のkoi

takuat(Varanusbengalensis;オオ トカゲ科)の kaeng

卵焼 き 塩 ・香辛料 で発酵 させ たmen(ヤマ アラシ科) の肉 2 1 1 1 両生類 ・魚類 ・貝類 ・エ ビ ・カニが主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の由来 kaenghoai kaengpla nuengpla tom pla ponplahaeng larppla larpplakrapong kaengkhiat tom ueng hoaichup(オニ ノツノガイ科 ・カニモ リガイ科)のkaeng 魚のkaeng:plamo(キノポリウオ科)+plakhoa(Channa striata;タイワ ン ドジ ョウ科) 魚 のnueng:不 明 魚 のtom: メコン川の魚 不 明 魚 の干物 のpon:メコ ン川の魚 魚 の1arp:メ コン川の魚 缶詰の魚のlarp khiat(小 型の カエ ル :アカガエ ル科) のkaeng ueng(カエ ルの一種 :ヒメアマ ガエ ル科) のtom 3 池 1 小川 1 小川 2 (1) 購 入 (1) 小川 2 DongNa村 よ りも らった 1 購 入 1 購 入 1 森 1 森 昆虫が主 な食材 の料理 植物 が主 な食材 の料理 料 理 名 回数 主 な食材 の由来 tan hung kaengnoma主 kaengboan tam taeng ngueankhuea tan makkhuea phakkadon phakkhat phakkha 未熟 なパパ イアのtam タケ ノコのkaeng(缶詰) boan (サ トイモ科) の茎のkaeng キ ュウ リのtam mak khuea(ナ ス の 一 種 :Linociera paykinsonii)の n酌lean* makkhueaのtam

kadon(Careyasphaerica;サ ガ リバ ナ科) の幼 芽 :生 で (p九ak) キ ャベ ツ :生で (phak) 6 栽培 (屋敷 地) 3 森 2 森 2 購 入 1 栽培 (屋 敷 地) 1 栽培 (屋敷 地) 5 森 1 購 入 kha(Acacia Pennatasubsp.insuviS) の 幼 芽 :生 で 1 購 入

(p九ak)

jaew 唐 辛子ベースの タ レ 4

合 計 44

注 :*ngueanmakkhueaは,魚 な どのponの中にmakkhueaを入れた料理。

(22)

藤 田 :食物 をめ ぐる人 と自然の関わ り 6月 8月 9月 2月 3月 図2 タケノコとtamの割合の変化 を全部食べ て しまったためで もある。 デー タか らわか るのは, タケ ノコの減少分の一部がtamによって補 われている とい うことで ある (図 2)0

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は 2月には

5

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月には

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回を数 えるのに対 し,

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月には

7

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回申 2回,8月には72回申 4回,9月には49回中,僅か1回 しか料理 されていない。tamの内, 最 も一般的 なのは未熟 なパパ イアを使 った

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だが,パパ イアの実は どこの家 に も植 え られてお り,雨季 ,乾季 を問わず簡単 に手 に入 る。 だか ら,雨季 で も

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を作 ることは 極めて簡単である。 つ ま り,村 人は,乾季 に タケ ノコや キ ノコが手 に入 らない分 を,最 も身近 で簡 単な方法で埋 め合 わせ ているのである。 さらに,2月には鶏が多 く食べ られている (6回)。 もちろん,全部サテ ィア ン家の家禽では な く,到来 ものが偶然重 なったの もあるが,乾季の しの ぎ万の一つであろ う。 3月には異常気 象で降雨が多 く,2月に比べ魚や カエ ルが多 く捕 れ るようにな り,野生の動物性 食材の割合が 増 えている (図 1-2)。 材料の減 る乾季 には一度の食事 当た りの料理の品数 も減 る。雨季の間, 6月が平均 2.36,8月 が

1

.

8

5

,

9

月が

2

.

1

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であるのに対 し,乾季の

2

月は

1

.

5

3

,

3

月は

1

.

4

7

である (いずれ も,小 数点 2桁未満 四捨五入)。乾季 には,雨季 に比べ低 い ことは事実である。 次 に

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ha

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についてだが, ここで も養魚池造成の影響が見 られる。 養魚池の周 りに,歳莱類 を植 え始めた。結果,それ まで雨季の間で も購入 していた

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(ネギの塩漬 け) も作 って 食べ るようになった。 しか し,雨季 によ く食べ られていた ウ リは植 え られてお らず,一一度 も食 膳 に上 ることはなか った。読薬類 に比べ大 きくなるので, よ り広 い土地 と水が要 り,植 え られ ないのだろ う。 その代 わ りに,乾季 には さまざまな種類 の樹 木の幼芽が出るので,それ を

p

ha

k

として食べ

(23)

東南 ア ジア研 究 37巻4号

る。 表4,5には,野生の樹 木の幼芽 としてphakkadon(サガリバナ科 :Cweyasphaerica)と

phakkhoankhaen(リュウケツジュ属 :Dracaenaangustlfolia),栽培種 の もの として,baimak muang(マ ンゴの幼芽),phakkha (AcaciaPennatasubsp.insuaviS)が挙が っている。 特 に,

3月に入 ってphakkadonが出始め,野生植物の占める割合の伸 びが顕著になっている (図1-2)。 Ⅳ-4 食生活 の季節 的変化 への村人の対応 の特徴 村 人達 は,乾季 は雨季 に比べ て食材 の採取が難 しい ことを強調す るが,サ テ ィア ン家の食事 デー タを見 る限 りでは,雨季 と乾季 の差 はそれほ ど大 き くない。村 人達 も部分的には, この こ とを認めている。 例 えば,雨季 の間有 り余 るほ どある タケノコを,乾季用 に保存 出来 る。 タケ ノコの缶詰が現 に作 られている。 しか し,ほ とん どは販売用で, 自分で食べ る として もほんの 一部で しかない。村人の説明によれば,「乾季 に も,雨季 よ りは少 ないけれ ど,他の食べ物があ るか ら」,わ ざわ ざタケノコを保存 した りは しないのだ と言 う。 彼 らはその時 々の状況 に応 じて 暮 らす ことを好 むのだ。 しか し,実際乾季 の食料確保 は厳 しい。村 人達の 「た くさんある時 はた くさん食べ,少 しし か ない時 にはそれで我慢す る」 とい う言葉 は,時 々の状況 に応 じた暮 らしの志 向だけでな く, 料理 の品数の多少か らは読み取 れない季節感 をも集約す る。1998年以前 には,養魚池の魚 もな く,乾季 には野菜類 は一切植 え られなか った。 また,食べ物 を得 るための苦労 も,乾季 の方が 大 きい。例 えばkhiat(アカガエル科の小型の カエル) は,雨季 には水 田や池で比較的簡単 に捕 まえ られるが,乾季 には土 を掘 って捕 まえなければな らない。 さらに,一回当た りの調理 で作 られ る料理 の量 も雨季 に比べ,乾季 の方が少 ない。 あ る種 の開発援助 のプロジェク トが,例 えば養魚池の ように,乾季の困難 を和 らげることは 可能である。1998年の2月に短期滞在 した ときには,筆者 自身,おかずがjaewとphakだけの 夕食を経験 したが,養魚池が作 られた1999年 にはその ような食事 は一度 としてなかった。サテ ィ ア ン家の料理 デー タに養魚池の魚が 占める割合 は大 きくない。 しか し,「何 もない」 とい う非常 時 をな くしている と考 えれば,その意味 は数字以上 に大 きい。今後 も,様 々な開発 プロジェク トに よって,雨季 と乾季 の食生活 の差 はあるいは さらに縮 まるか もしれない。 しか し,村 人の 「食べ物が豊富 な雨季」 とい う認識 は, 自然か らタケノコやキノコ,天然の魚が豊富 に もた らさ れる限 り,す ぐには変わ らないだろ う。 雨季 と乾季 の差の他 に, 自然か らの食べ物の獲得 は, もっ と細 かな 日々の 自然条件 の移 り変 わ りや,農作業 な ど村 人 自身の生活 スケジュール,種類 ご との生態的特性 に も影響 される。 自然か ら得 られる食物 は,大 きく分 けて,雨季 ,乾季 を問わず年 間を通 じて得 られ る もの と そ うでない もの に分かれる。 前者の例 としては,魚や野生動物,植物ではパパ イアやkhilek, boanな どがあ る。後者 は, さ らに三つ に分 かれ る。第一 に,雨季 または乾季 の どち らかの間 578

表 2 ‑つ づ き

参照

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