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正断層による内陸地震の巨視的断層パラメータの 相似則に関する検討 具典淑 1) 壇一男 2) 小穴温子 3) 鳥田晴彦 4) 本村一成 5) 一徳元 6) 1) ( 株 ) 大崎総合研究所 博士 ( 工学 ) 2) 正会員 ( 株 ) 大崎総合研究所 博

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正断層による内陸地震の巨視的断層パラメータの

相似則に関する検討

具典淑

1)

、壇一男

2)

、小穴温子

3)

、鳥田晴彦

4)

、本村一成

5)

、一徳元

6) 1) (株)大崎総合研究所、博士(工学)、[email protected] 2) 正会員 (株)大崎総合研究所、博士(工学)、[email protected] 3) 正会員 清水建設(株)技術研究所、[email protected] 4) (株)大崎総合研究所、博士(工学)、[email protected] 5) 正会員 九州電力(株)、[email protected] 6) 九州電力(株)、[email protected] 要 約 正断層による内陸地震の強震動を予測するための断層モデルを設定できるように、断層の 長さと幅の関係、地震モーメントと断層面積の関係、地震モーメントと短周期レベルの関 係を調べた。その結果、断層タイプを区別しない地震調査研究推進本部 (2005) と同じ諸関 係が得られた。また、提示した方法により設定した正断層の地震の断層モデルがどの程度 の強震動を生成するかを統計的グリーン関数法で調べた結果、最大加速度の場合は、ほか の断層タイプとほぼ同程度であるが、最大速度の場合は、地震調査研究推進本部 (2005) の 方法による横ずれ断層とほぼ同程度で、壇・他 (2011) の方法による横ずれ断層や、壇・他 (2015) の方法による逆断層に比べて小さい結果が得られた。 キーワード: 内陸地震、正断層、断層パラメータ、相似則、強震動予測 1. はじめに 1995年兵庫県南部地震の震源に関する研究成果 (例えば、松島・川瀬, 2006)1) を受けて、アスペリテ ィモデルを用いた強震動予測手法が確立されてきた (地震調査研究推進本部, 2005; IAEA, 2015など)2), 3) 特に、活断層に起因する内陸地震の強震動予測は精力的に行われており、実務への応用事例が蓄積され つつある (多賀・他, 2011; 東北電力, 2009)4), 5) 。アスペリティモデルを記述する主な断層パラメータは、 断層面積、平均応力降下量、アスペリティの面積、アスペリティの応力降下量、地震モーメント、短周 期レベルの6つである。実務では通常、断層面積を地質調査などで決めたあと、経験式を用いて地震モー メントを算定し、さらに、この地震モーメントをもとに経験式を用いて短周期レベルを算定し、最後に、 平均応力降下量とアスペリティの面積およびアスペリティの応力降下量を理論式で算定している。 最近、短周期レベルは、地震のタイプ (内陸地震、プレート境界地震、スラブ内地震) や断層のタイ プ (横ずれ断層、逆断層) によって、違いがあることが指摘されている (壇・他, 2003など)6)。これを受 けて、壇・他 (2010a)7) は、内陸地震の断層パラメータ設定方法を逆断層の場合と横ずれ断層の場合に分 けて提示し、提示した方法で設定した断層モデルによる強震動の試算結果がそれぞれのタイプの断層に よる地震の観測記録と整合することを示している。 日本地震工学会論文集 第16巻、第3号(特集号)、2016

(2)

(a) 小地震 (b) 大地震 図 1 震源断層と断層(破壊領域)のイメージ(壇・他,2015)17) 一方、わが国では従来、事例が少なかった正断層の内陸地震が2011年東北地方太平洋沖地震 (MW 9.0) 以降、福島県や茨城県で起っており、正断層の地震の断層パラメータが蓄積されつつある。 そこで、本論文では、国内外の正断層による内陸地震の巨視的断層パラメータを収集し、横ずれ断層 および逆断層による内陸地震の巨視的断層パラメータとの違いについて検討し、正断層による地震の断 層モデルを設定する方法を提示した。さらに、提示した方法によって設定した正断層の地震の断層モデ ルがどの程度の強震動を生成するかを調べるために、統計的グリーン関数法 (壇・他, 2010b)8) による強 震動の試算を行い、ほかの断層タイプによる地震動強さとの違いや既往の距離減衰式との関係を調べた。 2. 断層パラメータの相似則の検討 2.1 データベース 本論文では、正断層による内陸地震の地震モーメントと断層面積の経験的関係式および地震モーメン トと短周期レベルの経験的関係式を得るために、断層長さ、断層幅、地震モーメント、短周期レベルの4 つのデータを収集した。

既往の地震は主にBlaser et al. (2010)9) とStirling et al. (2002)10) のデータベースを参照し、日本国内の近

年の地震は主に佐藤・堤 (2012)11) を参照した。収集したデータを表19)~15)に示す。また、他の断層タイ プの断層パラメータの相似則と比較するために、横ずれ断層の地震のデータおよび逆断層の地震のデー タも収集した。参照した文献では、主なすべり方向で断層タイプを分類しており、ここでは、文献と同 じにした。 2.2 断層長さと断層幅の関係 断層長さLと断層幅Wの関係として、(1)式による経験的な関係が入倉・三宅 (2001)16) により示されて いる。 ( 17km), max 17km ( 17km) W L L < W W  L≧ (1) 上式は、図117) に示したように、小地震では内陸地震の断層幅Wは断層長さと比例するが、大地震では

地震発生層 (seismogenic layer: Scholz, 2002)18) の厚さの限界により内陸地震の断層幅WはW

=Wmax =17 km で一定値となることを示している。また、(1)式では、断層タイプの違いは考慮されていない。 一方、図2(a)には収集した正断層による内陸地震の断層長さと断層幅の関係を示す。図に示したデー タに、(1)式と同じ形の式を適用し、最小二乗法を用いて2つの直線の境界を求めたところ、下式が得ら れた。 ( 14km), max 14km ( 14km) W L L < W W  L≧ (2)

(3)

図2(a)では断層長さが14km未満の小地震のデータを黒丸で、断層長さが14km以上の大地震のデータを 白丸で示している。また、図には比較のために(1)式も示している。図より、断層タイプを区別していな い(1)式ではWmax =17kmであり、正断層による地震ではWmax =14kmとなっているので、両者はほぼ一致し ていることがわかる。 同じく、横ずれ断層と逆断層による内陸地震の断層長さと断層幅の関係を、図2(b)と図2(c)に示し、そ れぞれのデータに(1)式と同じ形の式を適用し、最小二乗法を用いて2つの直線の境界を求めた。図2(b) と図2(c)より、横ずれ断層の地震の場合、正断層の場合と全く同じで、回帰式は断層タイプを区別して いない(1)式ともほぼ一致していることがわかる。一方、逆断層の地震では、断層長さが23km以上の場合 に、大地震とみなせることがわかる。 表1 正断層による内陸地震の断層パラメータ9)~15) モーメ ントマ グニチ ュード 断層 長さ 断層 幅 地震モー メント 短周期 レベル モーメ ントマ グニチ ュード 断層 長さ 断層 幅 地震モー メント 短周期 レベル MW L [km] W [km] M0 [N・m] A [N・m/s2] MW L [km] W [km] M0 [N・m] A [N・m/s2] 1946 米国 Ancash 7.3 28 30 1.05×1020 - 9) 1992 エジプト Dahshour 5.8 25 12 5.55×1017 - 9),12) 1959 米国 Hebgen Lake 7.3 45 17 1.08×10 20 - 9) 1992 ギリシャ Galaxidi 5.9 25 15 8.50×1017 - 9),12) 1970 トルコ Gediz 7.2 63 17 7.41×1019 - 9) 1993 米国 Eureka Valley 6.1 16.7 7 1.83×10 18 - 10),12) 1978 ギリシャ Thessaloniki 6.2 28 14 2.71×1018 - 9),12) 1995 ギリシャ Kozaini 6.5 35 14 7.64×1018 - 9),12) 1978 米国 Wheeler Crest 5.4 7 5.5 1.78×10 17 - 9),12) 1995 ギリシャ Aegio 6.5 27 11 6.01×1018 - 9),12) 1980 フランス Arudy 5.1 3.8 5 6.36×1016 - 10),12) 1995 トルコ Dinar 6.4 35 20 4.72×1018 - 9),12) 1980 イタリア South Apennines 6.9 60 15 2.47×10 19 - 10),12) 1996 イタリア Irpinia 5.1 9 3 5.00×1016 - 9),13) 1981 ギリシャ Corinth 6.6 30 16 9.01×1018 - 10),12) 1997 イタリア Umbria 6 25 11 1.14×1018 - 9),12) 1981 ギリシャ Corinth 6.2 26 18 2.77×1018 - 10),12) 1999 ギリシャ Athens 6 25 14 1.14×1018 - 9),12) 1982 イエメン Dhamar 6.2 20 7 2.52×1018 - 10),12) 2009 イタリア L’Aquila 6.3 25 15 3.56×1018 - 14) 1983 中国 Taipingshan 5.7 9 20 4.27×1017 - 10),12) 2011 日本 茨城県北部 5.8 - - 6.35×1017 1.85×1018 11) 1983 米国 Borah Peak 6.9 33 20 3.12×1019 - 9),12) 2011 日本 福島県 浜通り 5.7 - - 4.26×10 17 1.10×1018 11) 1984 イタリア Perugia 5.6 17 5 3.36×1017 - 9),12) 2011 日本 福島県 浜通り 5.2 - - 7.01×10 16 8.36×1017 11) 1984 イタリア Lazio-Abruzzo 5.9 4.5 10 7.82×10 17 - 9),12) 2011 日本 福島県 浜通り 4.4 - - 5.00×1015 2.89×1017 11) 1986 ギリシャ Kalamata 5.9 15 14 9.82×1017 - 10),12) 2011 日本 福島県浜通り 6.6 26,14 16 9.58×1018 9.70×1018 11),15) 1987 ニュージーランド Edgecumbe 6.5 32 14 6.44×1018 - 10),12) 2011 日本 福島県 浜通り 5.4 - - 1.72×10 17 1.90×1018 11) 1992 米国 Little Skull Mountain 5.7 8 4.5 4.83×10 17 - 9),12) 2011 日本 福島県 浜通り 5.4 - - 1.36×1017 9.99×1017 11) 出典 国 国 年 地震 出典 年 地震 (a) 正断層の地震 (b) 横ずれ断層の地震 (c) 逆断層の地震 図 2 内陸地震の断層長さ L と断層幅 W の関係

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(a) 正断層の地震 (b) 横ずれ断層の地震 (c) 逆断層の地震 図 3 内陸地震の地震モーメント M0と震源断層面積 Sseisの関係 (a) 正断層の地震 (b) 横ずれ断層の地震 (c) 逆断層の地震 図 4 内陸地震の地震モーメントM0と短周期レベル A の関係 (正断層の地震の短周期レベル A の値は佐藤・堤(2012)11) より) 2.3 地震モーメントと断層面積の関係 地震調査研究推進本部 (2005)2) では地震モーメントと断層面積の関係において、小地震と大地震の場 合に分けて、それぞれの経験的関係式を用いている。小地震 (M0<7.5×1018 N・m) の場合は、断層長さ と断層幅と平均すべり量が比例するとした、Somerville et al. (1999)19) による(3)式を、大地震 (7.5×1018 N・m≦M0≦1.0×1021 N・m) の場合は、断層幅が一定で断層長さと平均すべり量が比例するとした、入 倉・三宅 (2001)16) による(4)式を適用するとされている。二つの式とも断層タイプを区別していない。 2 15 7 2/3 0 [km ] 2.23 10 ( 10 [N m]) seis S    M   (3) 2 11 7 1/ 2 0 [km ] 4.24 10 ( 10 [ N m]) seis S    M   (4) ここに、Sseisは震源断層面積で、図1に示したように、小地震では断層面積Sと同じであるが、大地震で は断層面積Sのうち地震発生層にある部分の面積である。 一方、壇・他 (2011)20) は横ずれ断層による大地震 (M 0≧7.5×1018 N・m) を対象とした下式を提案して いる。ここに、#は平均動的応力降下量で3.4MPa、W seisは震源断層の幅で15kmである。 # 0 , 0.5 2 exp[ / ] seis seis seis M c c L W S W       (5) 全く同様に壇・他 (2015)17) は逆断層による大地震 (M 0≧2×1019 N・m) を対象とした下式を提案して いる。ここに、平均動的応力降下量#は2.4MPa、震源断層の幅W seisは17kmである。

(5)

# 0 , 0.45 0.7 exp[ / ] seis seis seis M c c L W S W       (6) 図3(a)には収集した正断層による内陸地震の地震モーメントM0と震源断層面積Sseisの関係を示す。大地 震の震源断層面積Sseisについては、既往の事例 (地震調査研究推進本部,2005)2) を参考に地震発生層の上 端深さを3km、下端深さを18kmとして、断層面積SからSseis=(15/18)Sで推定した。 (2)式より正断層では小地震と大地震の境界はL=14kmと考えられることから、断層長さが14km未満の 小地震に対して(3)式と同じ形の式を最小二乗法で求めたところ、下式が得られた。 2 15 7 2/3 0 [km ] 2.56 10 ( 10 [N m]) seis S    M   (7) また、断層長さが14km以上の大地震に対して(4)式と同じ形の式を最小二乗法で求めたところ、下式が 得られた。 2 11 7 1/2 0 [km ] 4.66 10 ( 10 [N m]) seis S    M   (8)

図3(a) には(7)式と(8)式とともに、比較のためにSomerville et al. (1999)19) による(3)式と入倉・三宅

(2001)16) による(4)式も示す。図より、(7)式と(8)式は既往の(3)式や(4)式とほとんど一致していることが わかる。 同じく、横ずれ断層と逆断層による内陸地震の地震モーメントM0と震源断層面積Sseisの関係を、図3(b) と図3(c)に示し、それぞれのデータに対してSomerville et al. (1999)19) による(3)式や入倉・三宅 (2001)16) よる(4)式と同じ形の式を最小二乗法で求めた。図3(b)より、横ずれ断層の地震の場合、回帰式はSomerville et al. (1999)19) による(3)式や入倉・三宅 (2001)16) による(4)式とほぼ同じであること、断層面積が大きい ところで壇・他 (2011)20) による(5)式はデータのほぼ中央を通っていることがわかる。そして、図3(c)よ り、逆断層の地震の場合、小地震については、回帰式はSomerville et al. (1999)19) による(3)式と若干異な るが、大地震については、回帰式は入倉・三宅 (2001)16) による(4)式とほぼ一致していること、また、 断層面積が大きいところで壇・他 (2015)17) による(6)式はデータの中央を通っていることがわかる。 2.4 地震モーメントと短周期レベルの関係 内陸地震の地震モーメントM0と短周期レベルAの関係として(9)式による経験的関係が壇・他 (2001)21) により示されている。 2 10 7 1/3 0 [N m / s ] 2.46 10 ( 10 [N m]) A    M   (9) 上式では、断層タイプの違いは考慮されていない。 一方、横ずれ断層による内陸地震の短周期レベルが壇・他 (2011)20) により下式で示されている。ここ

に、seisは地震発生層のS波速度、#aspはアスペリティの動的応力降下量で、12.2MPaである。

# 0 2 {0.5 2exp[ / ]}

4 seis seis asp

seis L W M A W        (10) また、逆断層による内陸地震の短周期レベルが壇・他 (2015)17) により下式で示されている。ここに、 アスペリティの動的応力降下量# aspは18.7MPaである。 # 0 2 {0.45 0.7 exp[ / ]}

4 seis seis asp

seis L W M A W        (11)

(6)

ほかにも、逆断層と横ずれ断層の違いを考慮した日本の地殻内地震の短周期レベルのスケーリング則 として、横ずれ断層の場合の(12)式、逆断層の場合の(13)式による経験的関係が佐藤 (2010)22)より示され ている。 2 10 7 1/3 0 [N m / s ] 1.58 10 ( 10 [N m]) A    M   (12) 2 10 7 1/3 0 [N m / s ] 3.57 10 ( 10 [N m]) A    M   (13) 図4(a)に収集した正断層の内陸地震の地震モーメントM0と短周期レベルAの関係を示す。図に示したデ ータに、(9)式と同じ形の式を適用したところ、下式が得られた。 2 10 7 1/3 0 [ N m / s ] 1.06 10 ( 10 [ N m ]) A    M   (14) 図4(a)には参考のために壇・他 (2001)21) による(9)式も示す。佐藤・堤 (2012)11)で指摘したように、正 断層の短周期レベルは、(9)式の値に比べて小さいが、マグニチュード依存の傾向もみられることがわか り、2011年4月11日の福島県浜通りの地震 (MW 6.6, MJ 7.0) の短周期レベル (9.7×1018 N・m/s2) は、壇・ 他 (2001)21) による(9)式の値に近いことがわかる。 同じく、横ずれ断層と逆断層による内陸地震の地震モーメントM0と短周期レベルAの関係を、図4(b) と図4(c)に示し、それぞれのデータに対して壇・他 (2001)21) による(9)式と同じ形の式を最小二乗法で求 めた。図4(b)より、横ずれ断層の短周期レベルは、壇・他 (2001)21) による値に比べて小さいこと、壇・ 他 (2011)20) による値とよく整合していることがわかる。そして、図4(c)より、逆断層の短周期レベルは、 平均的には壇・他 (2001)21) による値に比べてやや大きいことがわかる。この傾向は既往の研究 (佐藤, 2010)22)で指摘されていることと一致している。 3.強震動の試算例 3.1 断層パラメータおよび断層モデルの設定 2.3節での検討より、正断層による大地震の地震モーメントM0と断層面積Sの関係は、既往の入倉・三 宅 (2001)16) による(4)式と整合していることがわかったので、ここでは(4)式を採用した。一方、正断層 による地震の地震モーメントM 0と短周期レベルAの関係は、2.4節での検討より、(14)式で示されるよう に、平均的には既往の壇・他 (2001)21) による(9)式より短周期レベルは小さいが、マグニチュード依存 の傾向もあり、MW が大きい地震の短周期レベルは既往の壇・他 (2001)21) の式と整合していることがわ かった。そこで、ここでは、正断層による大地震を対象にしていることより、短周期レベルを既往の(9) 式で与えることとした。既往の(4)式と(9)式を用いる方法は、断層タイプを区別しない地震調査研究推進 本部 (2005)2)の方法と全く同じとなる。 そこで、強震動の試算に用いた正断層の断層モデルの設定では、地震調査研究推進本部 (2005)2)と同 じ方法を適用した。そして、断層タイプの違いによる地震動強さの違いを調べるために、横ずれ断層に 対しては地震調査研究推進本部 (2005)2)の方法と壇・他 (2011)20)の方法を、逆断層に対しては壇・他 (2015)17) の方法を適用して、同様に断層モデルを設定した。なお、地震調査研究推進本部 (2005)2)の方 法による逆断層のモデルも考えられるが、本研究による正断層のモデルによる計算結果と大きさは同じ で、符号のみが反対になることが予想されるので、ここでは省略することにした。 強震動予測の実務では断層長さを与条件とする場合が多いことから、試算例では、すべての断層タイ プで共通なパラメータとして、断層長さを30kmと仮定した。ここでは、いずれの断層タイプも大地震を 考えることとなる。また、地震発生層の上端深さを3km、下端深さを18km、傾斜角を60°とした。したが って、断層幅WはW=Wmax =18km/sin60°=20.8km、断層面積Sは30km×20.8km=624km2、震源断層の幅Wseis

は15km/sin60° =17.3km、震源断層の面積Sseisは30km×17.3km=520km2となる。さらに、セグメントは1つ、

アスペリティは2つとし、すべての断層タイプで大きいアスペリティと小さいアスペリティのそれぞれの 上端深さを揃えた。破壊開始点は大きいアスペリティの左辺中央とし、破壊様式は同心円状と仮定した。

(7)

(a) 正断層(本研究) (b) 横ずれ断層(地震本部) (c) 横ずれ断層(壇・他,2011) (d) 逆断層(壇・他,2015) 図5 強震動の試算のために作成した断層モデルの例(★は破壊開始点) 図 6 地震モーメント M0と震源断層面積 Sseisの関係 図 7 地震モーメント M0と短周期レベル A の関係 以上の流れで設定した各断層のモデルを図5(a)~(d)に示す。ここで、図5(a)に示した本研究による正断層 のモデルと、図5(b)に示した地震調査研究推進本部 (2005)2)の方法による横ずれ断層のモデルはすべり角 のみ異なることになる。 各断層モデルの地震モーメントM0と震源断層面積Sseisの関係および地震モーメントM0短周期とレベル Aの関係をそれぞれ図6と図7に示す。図6より、同じ震源断層面積における地震モーメントは、本研究に よる正断層のモデル (MW 6.7) と地震調査研究推進本部 (2005)2) による横ずれ断層のモデル (MW 6.7)が 小さく、壇・他 (2011)20) による横ずれ断層のモデル (M W 7.0) と壇・他 (2015)17) による逆断層のモデル (MW 7.0) が大きいことがわかる。また、図7より、短周期レベルは4つの断層モデルともほぼ同程度であ ることがわかる。

(8)

3.2 統計的グリーン関数法による強震動の試算結果

強震動評価では、断層最短距離50km以内の地点がすべて含まれるように、135km×105kmの範囲で、 5kmメッシュの計567地点について統計的グリーン関数法(壇・他, 2010b)8) による面的計算を行った。具

体的なパラメータとして、放射特性係数は、釜江・他 (1990)23) に基づき、0.5Hz以下は理論的な放射特

性 (Aki and Richards, 1980)24) を、5Hz以上は理論的な放射特性をいろいろな方向で平均化した値0.445

(Boore and Boatwright, 1984)25) を用い、0.5Hzと5Hzの間は理論的な放射特性と0.445を結ぶ値とした。た

だし、0.445の符号は、理論的な放射特性の符号と同じにした。また、震源断層のとは、2.7g/cm3 3.5km/sを用いた。fmaxは鶴来・他 (1997)26) による1995年兵庫県南部地震の値を参考に6.0Hz、mは推本タ イプと同様に4.2とした。Q値はQ( f )=104 f 0.63 (ただし、1Hz以下ではQ =104) とした。強震動の評価位置 は、ρsur=1.9g/cm3、βsur=0.5km/sの解放工学的基盤面とし、地盤増幅特性の補正はインピーダンス比を考 慮して行った。 試算強震動の最大加速度の面的分布を図8に、最大速度の面的分布を図9に示す。いずれも、断層直交 方向と断層平行方向の中で大きい成分を示している。最大加速度の場合、いずれのモデルもほぼ同程度 であることがわかる。一方、最大速度の場合、正断層のモデルによる最大速度の大きさは、地震調査研 究推進本部 (2005)2) の方法による横ずれ断層のモデルとほぼ同程度であるが、壇・他 (2011)20) の方法に よる横ずれ断層のモデルや、壇・他 (2015)17) の方法による逆断層のモデルに比べて顕著に小さいことが わかる。これは、正断層のモデルの場合、短周期レベルはほかのモデルとほぼ等しいが、地震モーメン トは壇・他 (2011)20) の方法による横ずれ断層のモデルや、壇・他 (2015)17) の方法による逆断層のモデ ルより小さいことに対応していると考えられる。また、正断層や逆断層のモデルと違って、横ずれ断層 のモデルは断層平行方向に大きい地震動を示しているが、これはSH波の放射特性と破壊伝播効果の影響 が出たものである。 試算強震動の最大加速度および最大速度を司・翠川(1999)27) の距離減衰式と比較した結果を、それぞ れ図10と図11に示す。最大加速度の場合、いずれのモデルにおいても距離減衰式の平均±標準偏差に概 ね収まっており、同じ断層最短距離における最大加速度の大きさは、ほぼ同程度であることがわかる。 一方、最大速度の場合、試算結果は全般的に距離減衰式の平均よりやや大きくなっているが、その原因 として、地震波の放射特性と破壊伝播効果の影響が考えられる。また、断層近傍では、壇・他 (2015)17) の方法による逆断層のモデルによる最大速度が一番大きく、断層最短距離が遠くなると、壇・他 (2011)20) の方法による横ずれ断層のモデルの最大速度が大きくなり、正断層のモデルや地震調査研究推進本部 (2005)2) の方法による横ずれ断層のモデルはいずれも小さい値を示していることがわかる。 以上より、本研究で提示した断層パラメータのスケーリング則に基づく正断層の地震の強震動の大き さは、最大加速度の場合は、ほかの断層タイプとほぼ同程度であるが、最大速度の場合は、地震調査研 究推進本部 (2005)2) の方法による横ずれ断層とほぼ同程度で、壇・他 (2011)20) の方法による横ずれ断層 や、壇・他 (2015)17) の方法による逆断層に比べて小さい結果が得られた。 4.まとめ 本研究では、正断層による内陸地震の強震動を予測するための断層モデルを設定できるように、断層 の長さと幅の関係、地震モーメントと断層面積の関係、地震モーメントと短周期レベルの関係を調べた。 その結果、断層タイプを区別しない地震調査研究推進本部 (2005)2)と同じ諸関係が得られた。また、提 示した方法より設定した正断層の地震の断層モデルがどの程度の強震動を生成するかを統計的グリーン 関数法で調べた結果、最大加速度の場合は、ほかの断層タイプとほぼ同程度であるが、最大速度の場合 は、地震調査研究推進本部 (2005)2) の方法による横ずれ断層とほぼ同程度で、壇・他 (2011)20) の方法に よる横ずれ断層や、壇・他 (2015)17) の方法による逆断層に比べて小さい結果が得られた。 なお、本研究では福島県浜通りの地震の短周期レベルを重視して、壇・他 (2001)21) の経験式を正断 層の地震の地震モーメントと短周期レベルの関係式として用いることとしたが、これが一般にマグニチ ュード7クラスの正断層の地震の短周期レベルを代表しているかどうかについては今後データの蓄積が 必要である。

(9)

(a)正断層(本研究) (b)横ずれ断層(地震本部) (c)横ずれ断層(壇・他,2011)(d)逆断層(壇・他,2015) 図8 試算強震動の最大加速度(PGA)の面的分布 (a)正断層(本研究) (b)横ずれ断層(地震本部) (c)横ずれ断層(壇・他,2011)(d)逆断層(壇・他,2015) 図9 試算強震動の最大速度(PGV)の面的分布 (a)正断層(本研究) (b)横ずれ断層(地震本部) (c)横ずれ断層(壇・他,2011)(d)逆断層(壇・他,2015) 図10 断層最短距離と試算強震動の最大加速度(PGA)の関係 (a)正断層(本研究) (b)横ずれ断層(地震本部) (c)横ずれ断層(壇・他,2011)(d)逆断層(壇・他,2015) 図11 断層最短距離と試算強震動の最大速度(PGV)の関係

(10)

参考文献

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12) Global CMT Web Page, http://www.globalcmt.org/CMTsearch.html(2010.10.22.参照).

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14) Poiata, N., K. Koketsu, A. Vuan, and H. Miyake: Rupture processof the 2009 L'Aquila, Italy, earthquake

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18) Scholz, Christopher H.: The Mechanics of Earthquakes and Faulting, Second edition, Cambridge University

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19) Somerville, P., K. Irikura, R. Graves, S. Sawada, D. Wald, N. Abrahamson, Y. Iwasaki, T. Kagawa, N. Smith, and A. Kowada: Characterizing crustal earthquake slip models for the prediction of strong ground motion, Seismological Research Letters, Vol. 70, No. 1, 1999, pp. 59-80.

20) 壇一男、具典淑、入江紀嘉、アルズペイマサマン、石井やよい:長大横ずれ断層による内陸地震の 平均動的応力降下量の推定と強震動予測のためのアスペリティモデルの設定方法への応用、日本建

(11)

築学会構造系論文集、第670号、2011年、pp. 2041-2050. 21) 壇一男、渡辺基史、佐藤俊明、石井透:断層の非一様すべり破壊モデルから算定される短周期レベ ルと半経験的波形合成法による強震動予測のための震源断層のモデル化、日本建築学会構造系論文 集、第545号、2001年、pp. 51-62. 22) 佐藤智美:逆断層と横ずれ断層の違いを考慮した日本の地殻内地震の短周期レベルのスケーリング 則、日本建築学会構造系論文集、第651号、2010年、pp. 923-932. 23) 釜江克宏、入倉孝次郎、福知保長: 地域的な震源スケーリング則を用いた大地震 (M7 級) のための 設計用地震動予測、日本建築学会構造系論文集、第 416 号、1990 年、pp. 57-70.

24) Aki, K. and P.G. Richards: Quantitative Seismology, W.H. Freeman and Company, San Francisco, 1980. 25) Boore, David M.: Stochastic simulation of high-frequency ground motions based on seismological models of

the radiated spectra, Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 73, No. 6, 1983, pp. 1865-1894. 26) 鶴来雅人、香川敬生、入倉孝次郎、古和田明:近畿地方で発生する地震のfmaxに関する基礎的検討、 日本地震学会講演予稿集、1997年、B41-11. 27) 司宏俊、翠川三郎:断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式、日本 建築学会構造系論文集、第523号、1999年、pp. 63-70. (受理: 2015年 3月 27日) (掲載決定: 2016年 1月 12日)

Scaling Law of Outer Fault Parameters of Crustal Earthquakes Caused

by Normal Faults

JU Dianshu

1)

, DAN Kazuo

2)

, OANA Atsuko

3)

, TORITA Haruhiko

4)

,

MOTOMURA Kazunari

5)

, and ITTOKU Hajime

6)

1) Ohsaki Research Institute, Inc., Dr. Eng. 2) Member, Ohsaki Research Institute, Inc., Dr. Eng. 3) Member, Institute of Technology, Shimizu Corporation

4) Ohsaki Research Institute, Inc., Dr. Eng. 5) Member, Kyushu Electric Power Co., Inc.

6) Kyushu Electric Power Co., Inc.

ABSTRACT

We examined scaling laws of outer fault parameters of crustal earthquakes caused by normal faults, and obtained the same empirical relationship between the seismic moment and the fault area and that between the seismic moment and the short-period level as existing ones adopted by the Headquarters of Earthquake Research Promotion (2005). Furthermore, we estimated strong ground motions by the SGF method for a normal fault, which was set according to the proposed procedure. The PGA level of the resulting ground motions was similar to that for other types of faults. And the PGV level was similar to that for the strike-slip fault set according to the procedure by the Headquarters of Earthquake Research Promotion (2005), while it was smaller than that for the strike-slip fault set by Dan et al. (2011) or for the reverse fault set by Dan et al. (2015).

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