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APSにおけるオーダ評価方法に関する一考察
船木 謙一
最近では,過剰在庫や欠品のりスクを減らすため,製品分野を問わず受注生産化を志向する企業が増えている.見込 み生産から受注生産への移行により,従来,製品在庫を境に分断していた販売側の顧客オーダと製造側の製造オーダは シームレスに直結される.受注生産の下でのAPSは,このような販売側と製造側の直結を実現する要になり,両者の 価値評価基準を統合した評価尺度によりオーダを評価し,計画立案できなければならない.本論では,受注生産の下で のAPSにおけるオーダ評価方法のあり方について報告する. キーワード:APS,受注生産,顧客オーダ評価,生産計画 州=川‖ll州l…l…ll川仙‖=‖lll川Illll…仙=‖川=州‖lllll州州=‖…………=州州=‖…………l………l州=l川州‖…………ll…洲‖l………l…llll州‖lll川川Illll………l川=‖州‖lllllllllllll州 などの電子部品についても,顧客仕様対応製品の比重 が増えるにつれ,受注生産化が進んでいる.見込み生 産から受注生産への体制変更は,SCM(Supply ChainManagement)における情報の流れという視点 で考えると,従来,製品在庫を境に分断されていた販 売側の顧客オーダと製造側の製造オーダとが,シーム レスに直結されることを意味する.同時に,業務とし ても処理ロジックとしても分かれていた受注,納期回 答,生産計画,スケジューリングなどSCMの要素機 能は,統合的または一元的に行われなければならない. APSは,このような販売側と製造側の直結,統合を 実現する要として位置づけられる(図2).APSを構 成する各機能は製品在庫によって分断されることなく, 同期して動作することが重要なポイントである. 票田[1]によれば,APSの特徴は,オーダと生産ロ ットの紐付け,部材の所要量計算とスケジューリング の同時処理,納期回答の三つの機能を持つこととして いる.したがって,APSは必ずしも受注生産の支援 に特化したものではないが,受注生産化志向が進む中 で,その下でのAPSのあり方を議論することは重要 である.受注生産の下でAPSが担うべき役割のうち, 見込み生産におけるAPSと決定的に異なる点は,(1) 顧客オーダを製造オーダにつなげること,(2)生産状況 を顧客への納期回答につなげることの2点である.顧 客オーダと製造オーダを直結して計画立案し,納期回 答するためには,従来,販売側と製造側が別々の価値 基準で行ってきた様々な業務や意思決定を統合または 一元化する必要がある.そのためには,販売側と製造 側の壁を取り払い,両者の価値基準を融合した全体の 価値基準を明確化する必要がある.その具体的な実施 事項の一つとして,顧客オーダ(これが製造オーダに 1. はじめに 本論では,受注生産化1を志向する企業が増えている現状を踏まえ,APS(Advanced Planning and
Scheduling)におけるオーダ評価方法について考察 する. 従来,不精完多数の顧客に対し,大量生産により製 品を供給していた時代のサプライチェーンは,おおま かにいって,需要予測に基づく見込み生産と,受注に 対する製品在庫引き当ておよび出荷という二つのプロ セスからなっていた. このような見込み生産体制を支 援するシステムでは,図1に示すように,販売側の機 能と製造側の機能が明確に分離され,そのインタフェ ースとして製品在庫が存在していた. しかし,昨今では顧客ニーズが多様化し,需要の変 動が激しくなっているため,需要予測はほとんど当た らず,見込み生産では過剰在庫や欠品をもたらすりス クが高くなっている.そのため,現在では製品分野を 問わず,受注生産化を志向する企業が多い.例えば, パソコン,記憶装置,プリンタなど情報機器のカスタ ム生産(いわゆるBTO:Build To Order,CTO: ConfigureToOrder)はいうまでもなく,かつては見 込み生産が中心であった自動車,家具,半導体や液晶 ふなき けんいち ㈱日立製作所生産技術研究所 〒244−0817横浜市戸塚区吉田町292 1本論で対象とする受注生産は,顧客の要求する仕様に対 応した製品または製造仕様が既に存在し,顧客オーダの受 付け時点で製造着手可能であり,かつ同じ顧客からのりピ ート受注がある場合を想定している.つまり,顧客オーダ を受けてから仕様検討,設計,試作を行うような完全受注 生産もしくはETO(Engineer To Order)のような体制 は対象としていない.
図1見込み生産を支援するシステムのイメージ 注1)実際には基幹業務(′受発注管理,実績管理など)を支援する多くの機能が存在 するが,図2で示すAPSの機能と対比するため,本図では捨象してある 注2)需要予測は,しばしば販売側と製造側の合議の下で決定されるが,本図では簡 略化するため,需要予測業務のトリガである販売側に配置してある 注3)本図のリソース計画とは,中英舶勺な負荷見込みに基づく人員や設備などの調達 計画であり,統合計画(AggregateProductionPlan)とも呼ばれる 販売側と製造側をつなぐ要 ノ ⊂]システムパ線能⊂〕業務 図2 販売と製造をつなぐAPSの位置づけ 注1)APSが持つべき機能は,製品分野や生産体制によって変わりうるため,APS の汎用的な構造定義は難しい. ちうる機能だけを含めてし、る 直結する)に対する評価方法の一元化がある.すなわ ち,生産計画立案などに際して,個々の顧客オーダを どのように評価し,製造能力の制約の下で何から作る べきかを決める基準を統一する必要がある.従来より, APSに必要な各機能(生産計画,スケジューリング, 納期回答など)のロジックに関する研究は盛んに行わ れているが,販売側と製造側が直結した際のオーダの 評価方法についての議論は少ない.この問題は,理論 的,技術的には必ずしも難しくないことが多いが,実 務上は重要な問題である.本論では,以上のような問 題認識に基づき,APSにおけるオーダ評価方法につ いて述べる.なお,生産計画やスケジュー リングロジ ックそのものには踏み込まない.
2.販売側と製造側の直結とはどういうこ
とか APSを販売側と製造側をつなぐ要であるという位 置づけで捉えると,APSは部材調達,製造,販売の 各プロセスについて,図3に示すような各事項を決め 5TO(10) 本図では,どのような場合でもほぼ共通的に持 る必要がある.受注生産により,顧客オーダから製造 オーダが直結され,製品在庫ポイントが取り払われる と,販売と製造の各決定事項は,統一した評佃基準の 下で一つのロジックによって決められなければならな い.特に,BTOやCTOのように,共通仕様部分ま でを見込みで製造し,残りの製造工程を顧客オーダに 基づいて行う場合には,製造の途中段階に在庫ポイン トを設け,その在庫ポイント以降の製造と販売に関す る決定を一元化する必要がある.このように,顧客オ ーダと製造オーダが直結される範囲と,見込みで製造 オーダが出される範囲とを分けるポイントが,いわゆ るデカプリングポイントである. デカプリングポイントがどこにあれ,顧客オーダを 製造につなげて生産計画を立てる際には,図4に示す ような顧客オーダと製造ライン(または工場)の関係 を同時に考えなければならない.従来の見込み生産で は,販売側では図4の上半分の関係,すなわち顧客オ ーダがどの製品をいつ,いくつ要求しているか,製造 側では同図の下半分の関係,すなわち要求された各製 オペレーションズ・リサーチ © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.・どこに売るか ・どの受注受けるか ・いくらで売るか ・いつ納品するか ・どこで作るか ・いつ作るか ・どれだけ作るか ・どこから調達するか ・いつ調達するか ・どれだけ調達するか 喜⋮皇 ﹂ ・販売価格 ・販売・製品戦略 (取容量要度、製品版 促重要度なの ■製造コスト ・製造能力 (キャパシティとケイ /くどリテイ) APSがカバーする決定事項 図3 製品A 製品B 製品C 製品Z 顧客オーダ1 ○ 顧客オーダ2 ○ ○ 顧客オーダ3 ○ 顧客オーダ4 ○ ○
1 1
製造ライン(またはエ鳩)1 製造ライン(またはエ場)2 ○ 製造ライン(またはエ場)3 製造ライン(または工場)4 同じ製品でも オーダによって 重要度は異なる 製品によって 優先的に使う 製造ラインは 異なる ○:該当する行と列の要素が関係あることを示す 例)顧客オーダ3は製品Bを注文しており、製品Bは製造ライン2で製造可能である 図4 顧客オーダと製造ライン(または二l二場)の関係 (2)製造に関する事項 ・ある製品が複数の製造ライン,工場で製造可能で あっても,生産戦略上の理由により,優先的に使 いたい製造ラインや工場がある. ・同じ製品であっても,製造コストは製造ライン, 工場によって異なる. 以上の各事項は,実務上当然のことのように思われる が,従来の研究ではしばしば問題から除かれ,捨象さ れていることが多い.3.顧客オーダ重要度に基づく生産計画作
成手順 個々の顧客オーダを認識して生産計画を立てるため には,販売・製品戦略上の観点から各顧客オーダの重 要度を評価し,何から生産すべきかを決める必要があ る.ここでは,顧客オーダの重要度を評価し,それに 基づいて生産計画を作成する手順の例を示す. 普通,各顧客オーダは顧客,販売チャネル,製品な どの情報を持っているので,これらの情報を販売・製 品をいつ,どこで,いくつ作るかだけを考えていたと いえる.受注生産においては,図4の全体の関係を踏 まえ,どの顧客オーダをどの製造ライン(または工 場)で作り,いつ納めるかを一元的に考える必要があ る.従来,製造側への要求は製品別の数量に集約され ていたのに対し,販売側と製造側が直結することによ り,個々の顧客オーダを認識して生産計画を立てなけ ればならなくなる.そのためには,実務上,次のよう な点を留意し,統一的な評価基準を設ける必要がある. (1)販売に関する事項 ・同じ製品であっても,販売価格は一定ではなく, 顧客,販売チャネル,時期などによって変わる. ・同じ製品に対する顧客オーダであっても,顧客, 販売チャネルなどにより販売戦略上の重要性は異 なる. ・いくつ生産できるかということより,どの顧客オ ーダに応えられるかということが重要である.す なわち,顧客の注文数量が100%満たされなけれ ば,その顧客オーダに応えたことにはならない.品戦略に照らして重要度を評価することができる.一 方,企業目的としては利益を上げるということも重要 であるので,最終的には収益性の観点も加味して,ど の顧客オーダから優先して生産するかを決められるよ うにしたい.ここで,前節の(1),(2)に述べたように, 同じ製品であっても顧客オーダによって販売価格は異 なり,製造ラインによって製造コストが変わるので, 収益性は顧客オーダと製造ラインの組合せに応じて決 まるものと考えなければならない.したがって,製造 ラインの選択基準にも依存する.以上のことより,生 産計画においてどの顧客オーダを優先するかを決める 問題は,概念的には図5のように表される.すなわち, 販売側の価値基準である販売・製品戦略に基づいて顧 客オーダの重要度を評価し,製造側の価値基準である 製造ライン選択基準を媒介して収益性を加味すること により,顧客オーダの優先順序が決められる. なお,ここで注意すべき点は,どの顧客オーダを優 先するかという問題は相対的なものであり,あるメト リクスに基づく絶対的評価値が重要というわけではな いということである.すなわち,ある顧客オーダは別 のある顧客オーダよりも優先すべきという評価ができ れば十分である. 3.1顧客オーダの重要度評価 販売・製品戦略上の観点では,顧客,販売チャネル, 製品によって顧客オーダの重要度を評価できる.その 際の評価項目として,例えば次のようなものがある. (1)顧客に関する評価項目 ・顧客の競争力 ・取引の継続性 ・その他の付随的効果(取引によるイメージ向上, 技術情報の入手可能性など) (2)販売チャネルに関する評価項目 ・販売・宣伝力 ・取引の柔軟性 ・販売地域・立地条件 (3)製品に関する評価項目 ・販促強化度 ・技術優位性 ・その他の付随的効果(ブランドイメージ向上,他 製品との相乗効果など) 以上はいずれも定性的評価項目であるが,それぞれに 関して,例えば10点満点などのスコア付けの基準を 設け,同一尺度で評価値が捉えられるようにする.そ してあらかじめ個々の顧客,販売チャネル,製品ごと に各項目を評価し,スコアを設定しておく.顧客オー ダを評価する際には,あらかじめ設定したスコアを使 って図6に示す2段階の重み付け計算によl),顧客オ ーダとしての重要度を求める.定性的な項目に対する 評価値を重み付けによって統合する方法は,戦略評価 や予算策定などの場面においてよく使われる方法であ る[2].また,評価項目のウェイトを求める方法とし てAHP(AnalyticalHierarchy Process)を用い, ウェイト間の整合性の確保を図る研究もある[3]. しかし,この方法における実際の要諦は,重要度の 計算やウェイト付けの方法よりも,いかに意一別央左に 参加するメンバが納得するスコア設定ができるかであ る.実務上は,参加メンバの様々な立場や思惑があり, 人によってスコアが異なるのが普通であるので,組織 として一本化し,合意,承認する業務プロセスを定義 することが必須である. 3.2 製造ライン選択基準 同じ製品が複数の製造ライン(または工場)で製造 可能な場合には,使用する製造ラインを決めなければ ならないが,そのための佃値基準として,例えば次の ようなものが考えられる. (1)製品別優先ラインの設定 生産技術や品質管理上の方針により,製品ごとに優 先して使う製造ラインが指定されている場合である. また,他社へのアウトソーシングが可能な場合に,ま ず自社製這ラインを使い,その製造能力で賄い切れな [販売側の価値基準] [企業目的] [製造側の価値基準] 収益件 限界利益 (販売額一直接変動費) ・製品別優先ライン設定 ・製造コスト重視 ・稼働率確保重視 ・配分割合設定
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オーダの優先順序 図5 顧客オーダの優先順序決定の考え方 572(12) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず. オペレーションズ・リサーチ3 3 Mi=∑w∑叫kSゎk(Mi:顧客オーダiの重要度) J=1 k=1 図6 顧客オーダ重要度の計算ロジック コストによって決まる.生産計画は,どの顧客オーダ から生産するかを決めることであるので,ここで考慮 すべき製造コストは,各顧客オーダの製品を製造する かしないかによって変わる部分,すなわち製造におけ る直接変動貿だけである.生産計画やスケジューリン グにおいては,使用するロジックにも依存するが,大 まかにいって,当該顧客オーダが消費する単位リソー ス量当たりの限界利益で評価するのが正しい. さて,実際の製造コストは使用する製造ラインによ って異なるので,上記限界利益は顧客オーダと製造ラ インの組合せに依存する.したがって,生産計画の手 順としては,製造ラインを選択しながら,収益性を評 佃するという形になる. 3.4 生産計画作成手順 以上の議論を踏まえ,生産計画を作成する手順を示 す.ここでは想定条件として次のものを考える. (1)計画対象とする顧客オーダは全て与えられてお り,各顧客オーダには,顧客,販売チャネル,製品が 明示されている. (2)顧客オーダ1件の注文製品は1品種のみとする. (3)複数の製造ラインで製造可能な製品もある. (4)各製品の製造コストは製造ラインごとに分かっ ており,製造ラインの選択は製造コスト重視基準に従 う.すなわち,ある顧客オーダの製造は,その製品の 製造コストが最も安い製造ラインを選択し,もし製造 能力不足などにより,当該製造ラインでの製造が不可 能であったら,次に製造コストが安い製造ラインを選 択する. 上記のうち,(2)について,現実には1件の顧客オー ダで複数品種の製品を注文することもあるが,その場 合には,当該顧客オーダを注文する品種ごとに分けて くなった分を他社にアウトソーシングするというよう な場合も該当する (2)製造コスト重視 同じ製品でも,使用する製造ラインや工場によって 製造コストは異なる.収益性を考え,よりコストの低 い製造ラインを選択するという基準である.この際, 考慮すべき製造コストは直接変動費部分だけである. 固定費部分は,その製造ラインを使用するかしないか にかかわらず,発生するコストだからである. (3)稼働率確保重視 製造ラインの稼働率を維持するという方針が取られ ることもある.稼働率を高める理由には,品質を安定 させる,投資回収を早める,作業員モラルを維持する など,様々なものが考えられるが,それらはしばしば ローカルな価値基準になりがちであるので,受注生産 においてはあまり好ましい基準ではない. (4)配分割合の設定 便宜的なルールとして,製造ラインや工場への配分 割合をあらかじめ設定しておくという方法も取られる. これは,事故発生や政情不安など不測の事態に対する リスク分散という目的や,製品の世代交代により,新 製品が投入されるのに伴い,旧世代製品の製造ライン を徐々に移す際の移行期間に用いられる場合がある. 生産計画を作成する場合には,上記のいずれかの基 準を用いて各顧客オーダの製品を製造するラインを選 択していく.理屈上は複数の選択基準を合わせて用い たり,使い分けることもありえるが,実務上は業務を 煩雑化するだけでなく,全体としての意思統一が不明 確になるので一つの基準に定めるのが現実的である. 3.3 収益性の評価 ある顧客オーダによる利益は,その販売価格と製造
次の手順を使うことができる.また,製品によっては 構成部品ごとに製造ラインが異なる場合も考えられる が,その場合には,部品,製品の製造が可能である製 造ラインの全ての組合せを挙げ,各組合せごとに製造 コストを出しておけば,上記(3),(4)の条件の下で次の 手順が使える. 本手順は,あらかじめ計算した各顧客オーダの重要 度と,製造ラインとの組合せにより計算した限界利益 を基に優先順位を決め,その順に生産計画に加えてい くというヒューリスティックである.なお,部品所要 量やリソース消費量の計算,製造開始および終了時間 の計算など,生産計画のロジック自身は隠蔽されてい るものとして言及しない.つま−),生産計画自身には どのようなロジックが使われてもよいという立場であ る2. 生産計画作成手順 [ステップ1]図6の計算ロジックに従い,各オー ダの重要度(Mi)を算出する. [ステップ2]顧客オーダごとに製造可能な製造ラ インを全て抽出し,顧客オーダと製造可能な製造ライ ンの組合せのリスト(オーダーライン組合せリスト) を作る. [ステップ3]オータ∵ライン組合せリストの各組 合せごとに, Pi=MiX単位リソース消雪量当たり限界利益 (Pj:顧客オーダiの優先度評価値) を計算して優先度評価値(Pi)を設定する. [ステップ4]オーダーライン組合せリストの中か ら,優先度評価値(Pi)が最も高い組合せを選ぶ. [ステップ5]選択した組合せの顧客オーダを当該 製造ラインの生産計画に加える(ここでの処理内容は それぞれの生産計画ロジックに従う).もし,能力不 足などにより,当該製造ラインの生産計画に加えられ なかったらステップ6へ,問題なく生産計画に加えら れたら,ステップ7に進む. [ステップ6]オーダーライン組合せリストから, 当該顧客オーダと製造ラインの組合せを削除し,ステ ップ8に進む. [ステップ7]オーダーライン組合せリストから, 当該顧客オーダを含む組合せを全て削除し,ステップ 8に進む. [ステップ8]オーダーライン組合せリストが空に なったら処理を終了.まだ組合せが残っていればステ ップ4に戻る. 以上の手順では,想定条件(4)の製造ライン選択基準 が明示的に扱われていないが,ステップ3において, 限界利益に基づく優先度評価値を計算することにより, 製造コスト重視基準が反映されている. 本手順の特徴はオーダーライン組合せリストと優先 度評価値である.オーダ∵ライン組合せリストは,可 能性のある顧客オーダと製造ラインの全組合せを持ち, それぞれについて優先度評価値を計算する.優先度評 価値は,販売・製品戦略を反映した顧客オーダ重要度 と,製造ライン選択基準に基づく収益性とから導かれ る値であり,販売側と製造側の価値基準が総合的に評 価されている.優先度評価値の高い組合せから生産計 画に加えていくことにより,販売側,製造側の両者か ら見て重要な顧客オーダが優先的に扱われる. さて,本手順による生産計画作成問題は,一見する と次のような組合せ最適化問題として扱うことができ るように思われる. 問題 最大化:生産計画に加えられる顧客オーダの優 先度評価値の合計 制約条件:生産計画ロジックにおける各種制約条 件 しかし,この間題を解くと優先度評価値の低い顧客オ ーダが優先されてしまうということが起こりうる.例 えば,優先度評価値が同じ2件の顧客オーダ(顧客オ ーダA,Bとする)とそれよi)少し優先度評価値が 高い顧客オーダ(顧客オーダCとする)があり,顧 客オーダAとBのりソース消費量の合計が顧客オー ダCのリソース消費量より少ない場合に,顧客オー ダAとBが優先的に計画され,顧客オーダCは後回 しにされるという結果になる可能性がある.これは最 適化の結果としては正しいが,実務上は顧客オーダ間 の相対的優先順序が重要なので受け入れ難し、.顧客オ ーダCは顧客オーダAやBよりも優先されるべきで あり,顧客オーダAやBが納期に間にあうにもかか わらず,顧客オーダCが納期遅れになるような生産 計画は許されない. 4.結言 本論では,APSにおいて顧客オーダを評価する方 オペレーションズ・リサーチ 2 ただし,厳密には本手順が生産計画やスケジューリング のロジックと完全に独立であるというわけではない.例え ば,ステップ3の限界利益の計算は使用するロジックに依 存することがある. 5丁4(14) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
基準も重要である.これらは生産計画やスケジューリ ングのロジックの設計に大きく関係する.生産計画や スケジューリングのロジックにこれらの評価基準を加 味すると,顧客オーダの優先順序と不整合が生じるこ とがある.例えば,優先度評価値が高い顧客オーダが リソースを長時間占有するために,他の顧客オーダが 遅れ気味になり,全体として納期遵守率を低下させる というような現象である.本論に示した,生産計画や スケジューリングロジックを隠蔽した生産計画作成手 順は,顧客オーダの評価結果が他の評価基準に優先さ れることを前提にしている.もし,顧客オーダの優先 順序と他の評価基準とを同列に扱わなければならない 場合には,顧客オーダの評価方法と生産計画やスケジ ューリングのロジックを一体化する必要がある. (3)顧客オーダ重要度計算におけるスコア設定 本論に示したオーダ評価方法では,顧客オーダの重 要度計算のために,顧客,販売チャネル,製品に関す る評価項目ごとのスコアがあらかじめ設定されている ことが必要である.しかし,実際にはこのようなスコ ア設定をあらかじめ完全に行うことは難しい.例えば, どのような顧客から受注があるかを事前に全て知るこ とは不可能であるので,新規顧客からオーダを受けた 場合の,その顧客の評価方法を決めておくなどの工夫 が必要である.具体的には,事前にスコア設定がない 場合に使うデフォルト値を決めておくなどである. 参考文献 [1]黒田充:“MRPからAPSへ一生産管理の進化とスケ ジューリングの新しい役割”,スケジューリングシンポジ ウム2002講演論文集,スケジューリング学会,pp.1−13, 2002.
[2]K.W.Platts,D.R.Probert and L.Canez:“Make VS.Buy Decisions:A ProcessIncorporating Multi− attribute Decision−making”,InternationalJournalof
Production Economics,Vol.77,No.3,Pp.247−257, 2002.
[3]].Korpela,K.Kylaheiko,A.Lehmusvaara andM. Tuominen:“An AnalyticalApproach to Production CapacityAllocationandSupplyChainDesign”,Inter− nationalJournalof Production Economics,Vol.78,
No.2,pp.187−195,2002. 法について考察した.本評価方法により,販売側と製 造側の価値基準を同時に考慮した生産計画作成が可能 となる.また,本論に示したオーダ評価方法や考え方 は,生産計画作成以外に,納期回答における生産座席 枠への引当て処理にも活用可能である. 本論に示した生産計画作成手順では,使われる生産 計画やスケジューリングのロジック自身には言及して おらず,顧客オーダを扱う際の優先順序を決める方法 だけを与えているという点で汎用的である.一方で, 次の点に触れていないという意味で,自己完結したも のではないので注意しておく. (1)時間軸の視点 本論では次の二つの時間軸の問題を無視している. ・見込み受注と確定受注の扱い 一般に顧客オーダは最初から確定した情報として入 ってくるものではなく,内示や引合いという形で見込 みの情報が先にあると考えるのが自然である.そして, 時間が経つにつれ,順次見込み受注は確定受注に変わ っていく.見込み受注よりも確定受注の方がビジネス 上の重要性が高いことが普通であるので,顧客オーダ の評価においては,見込み受注と確定受注を識別する ことも必要である. ・顧客オーダ受付け日と納期の関係 実際には,顧客オーダはある時点に一度に来るわけ ではない.したがって,計画対象とする顧客オーダの 中には,昨日受け付けたものもあれば,1ヶ月以上前 に受け付けたものもありえる.一方,各顧客オーダが 持つ要求納期も様々であり,後から受け付けた顧客オ ーダの方が以前に受け付けたものより納期が早いとい うこともある.このような顧客オーダ受付け日と納期 の時間軸上の位置関係をどう扱うかは生産計画やスケ ジューリングのロジックに大きく依存する.例えば既 に受け付けた顧客オーダのうち,納期が近いものに対 しては過去の生産計画作成によって決めた製造ロット や在庫の引き当て関係を保持(いわゆるハードペギン グ)し,他の顧客オーダについては再計画するという ようなロジックを使う場合,再計画対象となる顧客オ ーダには,過去に受け付けた顧客オーダと今回新規に 受け付けた顧客オーダが混ざっているので,それらを 識別した評価方法が必要であろう. (2)経営上の他の評価基準との関係 実際の経営では在庫回転率や納期遵守率などの評価