Title
マウス皮膚パピローマに対するカンタキサンチンとβ-カロ
テンの抗腫瘍効果( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
勝村, 直樹
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1079号
Issue Date
1996-11-20
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15190
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 且 勝 村 直 樹(岐阜県)
博
士(医学) 乙第 1079 号 平成 8 年11月 20 日 学位規則第4条第2項該当マウス皮膚パピローマに対するカンタキサンチンとβ一力ロテンの抗腫瘍効果
(主査)教授 武 藤 泰 敏 (副査)教授 高 見 剛 教授 佐 治 重 畳 論 文 内 容 の 要 旨 近年,各種カロテノイドが多くの動物モデルにおいて,皮膚,唾液腺,乳腺,肝,大腸などの組織の発癌を予 防することが報告されている。カロテノイドはまた,人体での発癌予防にも有効であるらしいという多くの研究 がなされてきており,β-カロテン(β-CarOtene;BC).カンタキサンチン(canthaxanthin;CX)など,あ る種のカロテノイドは.癌の化学予防物質として働くという証拠が蓄積されつつある。カロテノイドはまたt 発 癌予防作用に加えて,紫外線からの保護作用,フリーラジカルの消去作風 抗酸化作用を持つことも示されてい る。これらの作用の分子レベルのメカニズムは十分には解明されていないが,フリーラジカル消去作用のような ある種の働きは,レチノイン酸(retinoic acid;RA)を含めたレチノイドに変換されることなく行われる。同 様にカロテノイドの抗腫瘍効果の発現にも,レチノイドへの変換を必要としないことが推測される。 そこで申請者は,このことを確かめるために,マウスの皮膚パピローマモデルにおいて二種類のカロテノイド, BCとCXを用いてその抗腫瘍効果を検討し,パピローマ中の両カロテノイドの濃度を測定し,合わせてRA誘導 性遺伝子であるRA receptor-β(RAR-β)の発現誘導に対する影響を検討した。 対象および方法 (l)皮層パピローマモデルの作製:8週齢の雌性CD-1マウスに9,10-dimethyl-1,2-benzanthracene (DMBA)150FLg/匹を通算2回投与後.クロトン油500FLg/匹の投与を各マウスに10∼20胤 長径の総和が10 ∼30mmのパピローマが発現するまで行った。 (2)試験群:このマウスを10匹ずつ4群(対照群,CX群.BC群,RA群)に分け,それぞれ,ピーナツ油0.1 ml/日,CX200mg/kg/日/0.1mlピーナツ油,BC200mg/kg/日/0.1mlピーナツ油,RA50mg/kg/E] /0.1mlピーナツ油を2週間強制経口投与した。投与第0日,第7日,第14日に各群のマウスのすべてのパピロー マの長径を測定しその総和を求めた。 (3)カロテノイド,レチノイドの定量:マウスを第14日に剖検し採血,パピローマ,肝を摘出し,それぞれ CX,BC,レチノール,レチニールエステルを抽出し,高速液体クロマトグラフィーにて定量測定した。 (4)RNAの抽出およびノーザンプロットによる解析:パピローマよりacid guanidiniumthiocyanate-phenol-Chloroform法によりRNAを抽出し,RNAの濃度を算出した。得られたRNAでのRAR-β.c-myCのmRNAの発 現をノーザンプロットにて解析した。 (5)統計処理:Dunnettのt一検定にて行った。 結 果 (1)各群の第0日のパピローマサイズの累積径(平均値)を100%としたとき,第14日の累積径(平均値)は, 対照群では117.2%と増加を認めたのに対し,CX群では81.6%(P<0.01),BC群では96.4%(P<0.05).RA群 では65.9%(P<0.01)と有意に累積径の減少を認め,CX群とBC群を比較すると,CX群でより強い抑制効果を 認めた(P<0.05)。 (2)各群間での血清,肝,パピローマ中のレチノール濃度,レチニールエステル濃度には,有意差は認められ なかった。カロテノイド濃度はt 対照群では血清,肝,パピローマのいずれにおいてもCXt BCは測定感度以下-77-であったのに対し,CX群では,CXが血清で平均0.0110pMt 肝で平均1.00nmol/g組織.パピローマで平均 0.110nmol/g組織であり,また,BC群ではt BCが血清で平均0・0060FL.M.肝で平均0・60nmol/g組毒乱 パピ ローマで平均0.121nmol/g組織と,投与されたそれぞれのカロテノイドが,血清,肝のみならず,パピローマ 中でも検出された。 (3)ノーザンプロットによる解析では,RA群では強いRAR-βのmRNAの発現を認めたのに対して,CX群で はもちろん,BC群でもRAR-βのmRNAの発現はまったく認められなかった。また.c-TnyCの発現に対する影響 は,対照群と比較して,RA群とCX群では強いc-TnyCのmRNA発現の抑制が認められ,BC群でもわずかにc-TnyC のmRNA発現の抑制が認められた。 考 察 RA群>CX群>BC群の順でパピローマの抑制効果を認めた。レチノイドへ変換されないカロテノイドである CXにも腫瘍抑制効果がみられたことより,BCの抗腫瘍効果もまた,BCがRAに変換されて発揮されたものでは なく,BCそれ自体の作用と考えられた。実際,対照群とBC群の問で,血清,肝,パピローマ中のいずれにおい ても.レチノール,レチニールエステル濃度に有意差がみられなかったことは,BC群で投与されたBCからレチ ノイドに変換されたBCの総量は組織でのレチノイド濃度を上昇させるほどには多くなかったことを示している。 一方,BC群ではパピロ,マ中にBCを検出しており,BCから変換されたごく少量のRAが腫瘍を抑制したという 可能性よりもBCはカロテノイドのまま抗腫瘍効果を発揮したという可能性のほうが.より理解しやすいように 思われた。このことを確かめるために,少量のRAの生合成の指標としてRA誘導性遺伝子であるRAR-βmRNA の,パピローマの細胞増殖の指標としてプロトオンコジンであるc-TnyCのmRNAの発現を検討した。BCはCXと 同様に,RAR-βの発現を誘導することなしに,C-myCの発現を低下させており,この結果からは,BCがRAに 変換されて抗腫瘍効果を発揮したとは考えにくく,BCそれ自体が抗腫瘍効果を発揮した可能性が強く示唆され た。 論文審査の結果の要旨 申請者 勝村直樹は.マウスの皮膚パピローマモデルを用い,β-カロテンが,カンタキサンチンと同様に, レチノイドに変換されることなしに抗腫瘍効果を発揮することを示した。この新知見は腫瘍学.臨床栄養学の進 歩に少なからず寄与するものと認める。 [∃三論文公表誌] マウス皮膚パピローマに対するカンタキサンチンとβ-カロテンの抗腫瘍効果 岐阜大医紀 44(5):548∼555,1996