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イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(2) -中学校理科「水溶液」単元を事例として-

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(1)Title. イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用 する試み(2) −中学校理科「水溶液」単元を事例として−. Author(s). 栢野, 彰秀; 森, 健一郎. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 61(1): 197-207. Issue Date. 2010-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2272. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第61巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.61,No.1. 平成22年8月 August,2010. イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツール. として利用する試み(2) 一中学校理科「水溶液」単元を事例として−. 相野 彰秀・森 健一郎*. 北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践講座 *釧路市立幣舞中学校. ATrialApproach:ImageMappingTestastheWayofStudySupportingTool forKnowledgeAcquisiton;Report2. −In CaseofMiddleSchooIScience−. KAYANOAkihideandMORIKen−ichiro* AdvancedTeacherProfessionall)evelopmentPrograms,GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation. *NusamaiLowerSecondarySchool,Kushiro. 概 要 本研究は,筆者らの前報「イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試 み一中学枚理科「水溶液」単元を事例として−」の続編として位置づけられる。本箱においては,イメージ マップ法を授業において学習者の知識獲得を促進するための学習支援ツールとしての有効性に検討を加える ために,イメージマップに書き出された連想語やその構造に分析を加えた。 鍵概念が「とける」と設定されたイメージマップを利用した最初の授業では,連想語全体の中に学習に関 連する連想語が隠れ,授業の進行に伴って獲得された知識や概念の傾向が必ずしも明確にならなかった。し かし,イメージマップを利用した2度目の授業では,学習内容に関連する連想語が増え,連想語数の増減や連 想語の種類の増減,連想系列のつながりに検討が加えられ,知識獲得状況や概念形成状況が概ね明らかになっ. た。これらのことからイメージマップは,理科学習の支援ツールとして位置づけられる可能性が再確認された。. はじめに. 本研究は,筆者らの前報の続編として位置づけ. られる報告である1)。前報では,授業においてイ. メージマップを学習支援ツールとして使用する と,学習者の科学的知識や学習内容や振り返りに 加え,学習者の学習意欲に関してもモニターでき ることが明らかになった。しかし前報では,学習. 197.

(3) 相野 彰秀・森 健一郎. 者がイメージマップを比較し,イメージマップの. 表1 授業展開の概要. 変容や気づいたこと,分かったことを自己評価し た記録に質的検討が加えられたのみである。学習. 鍵 時. ・イメージマップ1を作ろう. 者が作成したイメージマップに書き出された連想. ・身の回りで水に溶けているものにはど んなものがあるか,それらはどのよう な性質を持っているかについて話し合 おう. 語やその構造に検討は加えられていない。 そこで本研究においても先の研究に引き続き,. 理科授業における知識獲得を促進するための学習 支援ツールとしてのイメージマップの有効性を検. 授業展開の概要. 概念. 2. ろうか ・実験:水に溶ける物質の様子を調べよ. 討することを目的とした。 け. う. ・固体の物質が水に溶けていくようすを まとめよう. 3. Ⅰ.学習支援ツールとしてのイメージマップ る. と比較しよう. 前報においても報告されているが,試行授業が 行われた単元とその概要,およびイメージマップ. ・水溶液から溶質を取り出す方法を話し 合おう ・イメージマップ3を作って,1,2の マップと比較しよう. 4. の作成と比較方法を改めて簡潔に述べる。なお, イメージマップそのものに関する説明は,筆者ら の前報を参照されたい。. ・イメージマップ4を作ろう. 5. ・酸性,アルカリ性とは何か ・実験:酸性とアルカリ性の水溶液を調 ベよう. 6. 1.試行授業が行われた単元とその概要. 水. 試行授業が行われた単元は,中学校第1分野「水. 溶液」単元である。授業は全8時間で構成されて. プと比較しよう こ恵. 7. いる。授業実践の対象者は公立中学校1年生1ク ラス34人(男子15人,女子19人)である。授業は 2009年2月中旬に行われた。なお,イメージマッ プに検討を加えた学習者数は33人である。表1に は,授業展開の概要が示されている。. 2.イメージマップの作成と比較 イメージマップ作成および比較の手続きは次の. 液 8. ・酸性とアルカリ性の水溶液を混ぜ合わ せるとどうなるだろうか ・実験:酸性とアルカリ性の水溶液を混 ぜ合わせてみよう ・中和,塩,中和と中性の違いを例をあ げて説明しよう ・イメージマップ6を作って,4,5の マップと比較しよう. で,「2枚のイメージマップを比べてみよう」と 題された用紙を配布する。これまでの授業を思い. 通りである。. 出しながら,2枚のマップを比べて,授業内容に. ① イメージマップ1の作成. 関連したことで,気がついたことや分かったこと. 第1時の授業に入る前に,鍵概念「とける」が. を5分間で書き出させる。. 記されたイメージマップを生徒に配布し,鉛筆を 用いて5分間でマップを作成させる。. ③ イメージマップ3の作成とイメージマップ 1,2,3の比較. ② イメージマップ2の作成とイメージマップ. 第4時の授業終了前に,鍵概念「とける」が記. 1,2の比較. されたイメージマップを生徒に配布し,緑色の色. 第3時の授業終了前に,鍵概念「とける」が記. 鉛筆を用いて5分間でマップを作成させる。次い. されたイメージマップを生徒に配布し,青色の色. で,「3枚のマップを比べてみよう」と題された. 鉛筆を用いて5分間でマップを作成させる。次い. 用紙を配布する。これまでの授業を思い出しなが. 198.

(4) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(2). ら,3枚のマップを比べて,授業内容に関連した. 観点から筆者らが分類した。理科学習に関連する. ことで,気がついたことや分かったことを5分間. 連想語は“直接連想語’’,直接関連しない連想語. で書き出させる。. は“間接連想語’’と名付けた。. イメージマップ4∼6に関しても,鍵概念が「水. 図1には,鍵概念が「とける」と設定された3. 溶液」に変更されただけで,作成および比較の手. 枚のイメージマップ1∼3に書き出された直接連. 順は同様である。. 想語数および間接連想語数が示されている。図2 には,鍵概念が「水溶液」と設定された3枚のイ. Ⅰ.イメージマップの分析方法. メージマップ4∼6に書き出された直接連想語数 および間接連想語数が示されている。. 三宅は,イメージマップに書き出された連想語 にどのような検討を加えると,学習による学習者. イメージ マップ1. の知識獲得や概念形成のどのような状況が明らか. になるか,次のように報告している2)。 第一に,イメージマップ上に書き出された連想 語数の増減に検討を加えることで,学習者の量的. イメージ マップ2. イメージ マップ3 100. 0. 2(氾. な知識獲得や概念形成状況が明らかにできる。. えることで,学習者の質的な知識獲得や概念形成. 4∝1. 5∝1. 600. 田直接連想語□間接連想語. 第二に,イメージマップ上に書き出された連想 語の属するカテゴリー(種類)の増減に検討を加. 3(旧. 連想語数(語). 図1 鍵概念が「とける」のイメージマップに書き 出された直接連想語数および間接連想語数. 状況が明らかにできる。. 第二に,イメージマップ上に書き出された第一 円上の連想語とそれに関連づけられた第二円以降 の円上に書き出された連想語の連想系列(つなが り)に分析を加えることで,学習者が捉えている. 概念や知識,意味の構造が明らかにできる。 本稿では,前偏において報告された試行授業の 際に学習者によって描かれた6枚のイメージマッ プに書き出された連想語に,前述した3つの視点. イメージ マップ4. イメージ マップ5. イメージ マップ6. 0. 100. 必X1. 300. 400. 500. 1IOO. 連想語数(言吾). Ⅷ直接連想語□間接連想層. 図2 鍵概念が「水溶液」のイメージマップに書き 山された直接連想語数および間接連想語数. から検討を加え,理科授業における知識獲得を促 進するための学習支援ツールとしてのイメージ マップの有効性に言及する。. 図1より,学習者からイメージマップ1に書き 出された直接連想語数は96,間接連想語数は3飢, 連想語総数は477であることが分かる。同様に,. Ⅱ.イメージマップの分析検討. イメージマップ2に書き出された直接連想語数は 145,間接連想語数は412,連想語総数は557,イメー. 1.連想語数の増減に関する検討. 水溶液単元の学習において学習者は,鍵概念が 「とける」および「水溶液」のイメージマップを. ジマップ3に書き出された直接連想語数は169, 間接連想語数は417,連想語総数は586であった。. 図2より,学習者からイメージマップ4に書き出. それぞれ3回ずつ書いた。これらのイメージマッ. された直接連想語数は222,間接連想語数は135,. プに書き出された全ての連想語を,理科学習学習. 連想語総数は357であることが分かる。同様に,. に関連する連想語,及び直接関連しない連想語の. イメージマップ5に書き出された直接連想語数は. 199.

(5) 相野 彰秀・森 健一郎. 317,間接連想語数は145,連想語総数は462,イメー. よって,学習途中や学習後に書かせたイメージ. ジマップ6に書き出された直接連想語数は302,. マップと比較させる際に,学習前に持っていた誤. 間接連想語数は155,連想語総数は457であった。. 概念や誤った知識などに加え,単元の学習内容も. 図1から,鍵概念が「とける」のイメージマッ プに書き出された直接連想語の連想語総数に対し. 学習者により可視化させることができる。 学習途中と学習後にイメージマップを書かせる. て占める割合はイメージマップ1,2,3におい. 場面では,これまでの授業でどのような知識や概. てそれぞれ20.1%,26.0%,28.8%であることが. 念を学んだかを想起させ,かつ具体的に書かせよ. 分かる。一方表2から,鍵概念が「水溶液」のイ. うとさせるための指示が必要である。これによっ. メージマップに書き出された直接連想語の占める. て,単元の学習によって獲得が期待される知識や. 割合はイメージマップ4,5,6においてそれぞ. 概念の再確認が行われるとともに,イメージマッ. れ62.2%,68.6%,66.1%であることが分かる。. プの比較の際には,学習者がこれまでに持ってい. これらのことから,鍵概念が「水溶液」のイメー. た誤概念や誤った知識も可視化できる。. ジマップに書き出された直接連想語の占める割合. 同様に,イメージマップの比較の際には,次の. は,鍵概念が「とける」のそれに比べて大きいこ. ような記述の視点を具体的に与える指示が必要で. とがいえる。すなわち,イメージマップを授業に. あると考えられる。第一に,前に書いたイメージ. おいて知識獲得のためのツールとして使った初め. マップと比較して今回書いたイメージマップに. ての授業の試みより2度目の試みの方が直接連想. は,学習事項がどのように描かれているか具体的. 語が数多く書き出されたといえる。. に書く。第二に,前に書いたマップに誤ったこと. このことから,イメージマップを知識獲得のた めの促進ツールとして使う授業を重ねて,学習者 のイメージマップの使い方に関する理解が深まる. につれ,理科学習に関連する直接連想語数が増加 すると考えられる。. しかし,図1および図2における直接連想語数. を書いていないか。. 次回の教育実践の際には,指示のためのマニュ アル作成を行いたい。. 図1より,イメージマップ1,2,3に書き出 された直接連想語数の学習者一人あたりの平均値 はそれぞれ2.9,4.4,5.1となる。図2より,イ. の占める割合の大きな差異は,筆者らにイメージ. メージマップ4,5,6に書き出された直接連想. マップの書かせ方と比較のさせ方に対して再考を. 語数の学習者一人あたりの平均値はそれぞれ6.7,. 迫る結果と捉えられる。本研究では,イメージマッ. 9.6,9.2となる。授業の進行に伴い,直接連想語. プを書かせるときに鍵概念を与えただけで,それ. 数が増加するか否かを見るために,イメージマッ. に基づいてほぼ自由にイメージマップを書かせ. プ1と2に書き出された有効連想語の平均値にf. た。その結果,イメージマップ1∼3では,直接. 検定を加えた(以下,1→2の平均値と略)。同. 連想語数の占める割合が小さくなったと考えられ. 様に,2→3の平均値,4→5の平均値,5→6. る。イメージマップをどのように利用するかの理. の平均値にもf検定を加えた。その結果,1→2. 解が進んだイメージマップ4∼6では直接連想語. の平均値および4→5の平均値の差は有意であっ. 数の占める割合が大きくなっている。. た(1→2;f=2.9,4r=、詑,♪<0.OJ,4. このことから,イメージマップを書かせるとき. →5;f=3.3,4r=32,♪<0.OJ)。2→3の. の指示に工夫を加えると,直接連想語数の占める. 平均値,5→6の平均値には有意差は見られな. 割合がより大きくなると考えられる。学習前に書. かった(2→3;/=J.4,(げ=32,乃.ざ.,5. かせる場面では,これから学ぶ単元の概略を説明. →6;f=0.5,〃=詔,〃.5.)3)。. した後,単元の学習内容について現時点で知って いることを書かせる指示が必要である。これに. ?00. このことから,イメージマップ1,2,3およ びイメージマップ4,5,6ともに,学習前のイ.

(6) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(2). メージマップより学習途中のイメージマップ方が. 想語以外の既習・未習の科学的用語で構成され. 多くの直接連想語が書き出されるが,学習途中と. る。「その他」のカテゴリーを除いた5つのカテ. 学習後のイメージマップに書き出された直接連想. ゴリーを統合したカテゴリー名を,主カテゴリー. 語数の間には増減が見られないことがいえる。. 「既習・未習事項」と名付けた。 「その他」カテゴリーには,上記の8カテゴリー. 2.直接連想語の属するカテゴリーに関する検討 (1)鍵概念が「とける」のイメージマップ. に分類されなかった連想語が分類された。. 今後,「水溶液に関連する科学的用語」や「水. イメージマップ1,2,3の直接連想語には,. 溶液の具体例」など,主カテゴリーを構成する下. 理科学習に関連する連想語が書き出されている。. 位のカテゴリーはサブカテゴリーと呼称する。表. だが,その中には単元の学習事項に直接関連する. 2には分類されたカテゴリーと各カテゴリーに含. 語彙とその他の語彙が同時に書き出されている。. まれる主な有効連想語が示されている。. イメージマップ1,2,3を作成し,それらを比 較させる第1∼4時の授業では,①溶質が水(溶. 表2 カテゴリーと含まれる主な有効連想語. 媒)に溶けた水溶液に関する学習,②水溶液の概. カテゴリー. 念理解に関する学習,③溶解度と再結晶に関する. 主. 学習に加え,④溶質を水に溶かす実験が行われる。. 単 溶質,溶媒と溶液 元. イメージマップ1,2,3に書き出された直接連 想語が上述した4つの学習内容のうちのどれに相 当するか,筆者らが分類した。. の. 学 習 事 項. ④に関する直接連想語は書き出されていなかっ 既. いた。そこで①の溶質が水(溶媒)に溶けた水溶液. 習. に関する学習内容に関連する連想語のまとまりを. 未. 様に②の水溶液の概念理解に関する学習に関連す る連想語のまとまりを「水溶液の概念」カテゴリー. 含まれる主な連想語 水溶液 溶質 溶媒. 混合物 純粋な物質. 溶解度 再結晶 飽和 飽和水溶液 水溶液の具体例 食塩水 砂糖水. たが,①∼③に関する直接連想語は書き出されて. 「溶質,溶媒と溶液」カテゴリーと名付けた。同. サブ. 学習内容 習 事 項 その他の科学的用語 その他. 二酸化炭素 アンモニア水 塩酸 アルカリ性 中性 石 海. と名付けた。③の溶解度と再結晶に関する学習に 関連する連想語のまとまりは「溶解度と再結晶」. 学習者の理解傾向を検討するために,3枚のイ. とカテゴリー名付けた。これら3つのカテゴリー. メージマップに書き出された直接連想語を数え上. は,溶質が水(溶媒)に溶けた水溶液に関する知. げ,直接連想語総数に対する各サブカテゴリーに. 識や理解などの学習内容に関連する連想語で構成. 属する連想語数の占める. される。これらの3カテゴリーを統合したカテゴ. マップごとに算出し,図に表した。図3には,イ. リー名を主カテゴリー「単元の学習事項」と名付. メージマップごとの直接連想語総数に対する各サ. けた。. ブカテゴリーに属する連想語数の占める割合が示. 残った直接連想語はKJ法を用いて分類し. 割合を3枚のイメージ. されている。. た4)。6つのカテゴリー「水溶液の具体例」,「溶 媒の具体例」,「溶質の具体例」,「直前の単元の学 習内容」,「その他の科学的用語」,「その他」に分. 類された。これらの6つのカテゴリーは,水溶液 に関する知識や理解などの学習内容に関連する連. 201.

(7) 相野 彰秀・森 健一郎. これらのことから,次の2点がいえる。第一に,. イメージ マップ1. 科学的用語に関しては授業の進行に伴って適切な. イメージ. 時期に学習者から出される傾向はあるがその数,. マップ2. 割合ともに多いとはいえない。第二に,水溶液の. イメージ マップ3. 概念理解は高いとはいえない。 0%. 10%. 20%. 30%. 40%. 501. 60%. 70㌔. 8D%. 80%. 1∝粍. 連想語数の占める割合(%). 田その他 田溶属の具体例 ■溶質.溶媒と溶液. □水溶液の具体例 目溶媒の具体例 円直前の単元の学習内容 口その他の科学的用語 □水溶液の概念 囲溶解度と再結晶. 図3 イメージマップごとの各サブカテゴリーの 占める割合の増減 図3より,イメージマップ1では,主カテゴリー. 学習者の考えの広がりを見るために,3枚のイ メージマップに書き出された直接連想語の属する カテゴリー数の変化を検討した。しかし,主カテ ゴリー「単元の学習内容」と. 「既習・未習事項」. の間には前述した質的相違があるため,3枚のイ メージマップに書き出された直接連想語の属する. 「単元の学習事項」に属する3つのサブカテゴリー. サブカテゴリーの増減を比較するだけでは,学習. に含まれる連想語数は全体の20.2%であった。イ. 者の理解の変容は明確にならないと考えられる。. メージマップ2では,26.7%,イメージマップ3. そこで,学習者が3枚のイメージマップに書き出. では36.5%であった。このことから,授業の進行. した直接連想語が,2つの主カテゴリーを構成す. とともに学習内容に関連する有効連想語が増加し. るサブカテゴリーの幾つに属するかを数え上げ. ていることが分かる。. た。一人の学習者が学習前後に書き出したサブカ. サブカテゴリー「溶質,溶媒と溶液」に属する. テゴリーの数の平均値は,主カテゴリー「単元の. 連想語の占める割合は,“水に物質が溶けるとは. 学習内容」ではイメージマップ1では0.4,イメー. どういうことが’が学習課題となった直後のイ. ジマップ2では0.7,イメージマップ3では0.7で. メージマップ2において12.0%に増加し,その後. あった。主カテゴリー「既習・未習事項」ではイ. のイメージマップ3でも保持(19.2%)されてい. メージマップ1では1.1,イメージマップ2では. ることが分かる。学習者から書き出された連想語. 1.8,イメージマップ3では1.6であった。イメー. を検討しても,「溶質」,「溶媒」,「溶液」,「水溶液」,. ジマップ1と2の間の平均値およびイメージマッ. 「純粋な物質」,「混合物」などの教科書に記載さ れた用語全てが見られた。. サブカテゴリー「溶解度と再結晶」に属する連. プ2と3の間の平均値に≠検定を実施した。 主カテゴリー「単元の学習内容」については,. イメージマップ1と2の平均値の間に有意傾向が. 想語の占める割合は,“水に溶けている物質は取り. 見られたが,2と3の平均値の間には有意差は認. 出せるが’が学習課題となった直後のイメージマッ. められなかった(イメージマップ1と2の間;f. プ3において16.8%に増加していることが分かる。. =2.0,4r=32,♪<0.J,イメージマップ2. 学習者から書き出された連想語を検討しても,「結. と3の間;f=0,dr=、ヲ2,〃.ざ.)。主カテゴリー. 晶」,「飽和」,「飽和水溶液」,「溶解度」,「再結晶」 などの教科書に記載された用語全てが見られた。. しかし,サブカテゴリー「水溶液の概念」に属 する連想語の占める割合は当該の学習が行われた. 「既習・未習事項」については,イメージマップ 1と2の平均値の間に有意差が見られたが,2と 3の平均値の間には有意差は認められなかった (イメージマップ1と2の間;f=3.J,4r=、詑,. 直後のイメージマップ2においても増加が見られ. ♪<β.β7,イメージマップ2と3の間;f=β.β,. なかった。学習者から書き出された連想語を検討. 好=32,乃.ざ.)。. しても,水溶液の質量保存や均一性,透明など,. このことから,授業の進行に伴って書き出され. 水溶液に関連する概念理解に関する連想語はきわ. た直接連想語は,主カテゴリー「単元の学習内容」. めて少なかった。. を構成するサブカテゴリーに属する連想語より,. 202.

(8) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(2). 主カテゴリー「既習・未習事項」を構成するサブ カテゴリーに多く書き出されたことがいえる。. 鍵概念が「とける」のイメージマップに書き出. 残った直接連想語はKJ法を用いて分類した。 7つのカテゴリー「水溶液に対するイメージ」,「水 溶液の具体例」,「溶媒の具体例」,「溶質の具体例」,. された直接連想語の検討を通して,イメージマッ. 「直前の単元の学習内容」,「その他の科学的用語」,. プを知識獲得のための支援ツールとして利用する. 「その他」に分類された。これら7つのカテゴリー. 試みは,学習途中及び学習直後の科学的知識獲得. は,水溶液の液性に関する知識や理解などの学習. に関しては概ね有効性が見られるが,水溶液の概. 内容に関連する連想語以外の既習・未習の科学的. 念理解や理解の広がりに関しては十分な成果が得. 用語で構成される。「その他」のカテゴリーを除. られたとはいい難い点も認められる。しかし,本. いた6つのカテゴリーを統合したカテゴリー名を. 研究は,教科書を用いた通常の授業に慣れている. 主カテゴリー「既習・未習事項」と名付けた。. 公立学校の生徒に初めてイメージマップを書かせ る試行授業が実施されたものである。イメージ. 「その他」カテゴリーには,上記の11カテゴリー に分類されなかった連想語が分類された。. マップを知識獲得のための促進ツールとして使う. 今後,「指示薬の色と変化」や「水溶液の具体例」. 授業を重ねて,生徒のイメージマップの使い方に. など,主カテゴリーを構成する下位のカテゴリー. 関する理解が深まるにつれ,この点は克服される. はサブカテゴリーと呼称する。表3には分類され. と考えられる。. たカテゴリーと各カテゴリーに含まれる主な直接 連想語が示されている。. (2)鍵概念が「水溶液」のイメージマップ 表3 カテゴリーと含まれる主な有効連想語. 鍵概念が「とける」のイメージマップを作成し,. それらを比較させる第6∼8時の授業では,(手指 示薬と指示薬の色の変化に関する学習,②水溶液. カテゴリー. 主. 含まれる主な連想語. サブ. の液性と性質に関する学習,③中和に関する学習 に加え,④溶質を水に溶かす実験が行われる。イ. メージマップ4,5,6に書き出された直接連想 語が上述した4つの学習内容のうちのどれに相当 するか,筆者らが分類した。 ①の指示薬と指示薬の色の変化に関する学習内. 指示薬と色の変化 フt. 酸性 アルカリ性. の. 水溶液の液性と性質. 中和. 学習内容に関連する連想語で構成される。これら の4カテゴリーを統合したカテゴリーを主カテゴ リー「単元の学習事項」と名付けた。. あわ 蒸発再結晶 何かとけてる. イメージ. 付けた。③の中和に関する学習に関連する連想語. 性など,水溶液の液性に関する知識や理解などの. マグネシウムリボン. 水溶液に対する 液体 水でうすめる. とまりを「水溶液の液性と性質」カテゴリーと名. これらの4つのカテゴリーには,酸性やアルカリ. 中和 塩(えん). 授業で行った実験. の液性と性質に関する学習に関連する連想語のま. は「授業で行った実験」カテゴリーと名付けた。. 学 習. すっぱい. 事 項. 変化」カテゴリーと名付けた。同様に②の水溶液. の授業で行った実験に関連する連想語のまとまり. BTB液 赤 青 黄 緑. 単. 容に関連する連想語のまとまりを「指示薬と色の. のまとまりは「中和」カテゴリーと名付けた。④. リトマス紙 フェノール フタレイン溶液. 食塩水 塩酸 炭酸水 石灰水. 水溶液の具体例 既 習 未 溶質の具体例. 習. 項 直前の単元の 学習内容. 事. 塩(しお)砂糖 ミョウバン. 二酸化炭素 水酸化ナトリウム とうめい 溶媒 溶質 とける. その他の科学的用語 酸素 物質 温度 その他. 危険 割合. 203.

(9) 䜨䝥䞀䜼 䝢䝇䝛䠆 䜨䝥䞀䜼 䝢䝇䝛䠇 䜨䝥䞀䜼 䝢䝇䝛䠈 㻓㻈. 㻕㻓㻈. 㻗㻓㻈. 㻙㻓㻈. 㻛㻓㻈. ㏻᝷ㄊ䛴ྱ䜄䜒䜑๪ྙ䟺䟸䟻 䛣䛴௙ Ề⁈ᾦ䛱ᑊ䛟䜑䜨䝥䞀䜼 ⁈፳䛴රమౚ ├๑䛴ᑚ༟ඔ䛴Ꮥ⩞හᐖ ᣞ♟ⷾ䛮Ⰵ䛴ን໩ ୯࿰. 䛣䛴௙䛴⛁ᏕⓏ⏕ㄊ Ề⁈ᾦ䛴රమౚ ⁈㈹䛴රమౚ ᤭ᴏ䛭⾔䛩䛥ᐁ㥺 Ề⁈ᾦ䛴ᾦᛮ䛮ᛮ㈹. 㻔㻓㻓㻈.

(10) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(2). 習・未習事項」については,イメージマップ4と. 連想語を「具体的概念」より上位の概念レベルで. 5および5と6の平均値の間にはともに有意差は. ある「一般概念(以下,レベルⅢと略)」と分類. 認められなかった(イメージマップ4と5の間;. した。. f=0.3,4r=32,〃.ざ.,イメージマップ5と6の 間;f=0.5,4r=、ヲ2,〃.ざ.)。 このことから,主カテゴリー「単元の学習内容」. また,鍵概念から連続して2つ以上の連想語が 書き出される連想系列には2つの型がある。一つ は,鍵概念から2以上の連想語が直線的に連想さ. を構成するサブカテゴリーに属する連想語は,授. れる系列(以下,直線型と略)である。二つめは,. 業の進行に伴い概ね増加しているといえる。一方,. 鍵概念から3以上の連想語が連想され,かつ枝分. 主カテゴリー「既習・未習事項」に属する連想語. かれした連想系列(以下,分岐型と略)である。. は,授業の進行に伴う増加はみとめられないとい. そこで,一つの直線型または分岐型の連想系列に. える。. 書き出された有効連想語がどの概念レベルに属し. 上述した傾向は,鍵概念を「とける」と設定し たときのそれとは異なると指摘できる。イメージ. ているか数え上げた。. 直線型の連想系列も分岐型の連想系列も,レベ. マップを知識獲得のための促進ツールとして使う. ルⅠの連想語だけで構成される系列(以後,A型. 授業を重ねて,学習者のイメージマップの使い方. と略),レベルⅠ及びレベルⅢの連想語双方で構. に関する理解が深まったため,上述した傾向が現. 成される系列(以後,B型と略),レベルⅢの連. れてきたと考えられる。そのため,平均値の変化. 想語だけで構成される系列(以後,C型と略)に. が有意傾向にとどまったイメージマップ5と6の. 分類される。. 間に関しては,イメージマップを知識獲得のため. 図5には,鍵概念が「とける」のイメージマッ. の促進ツールとして使う授業を重ねて,生徒のイ. プに書き出された直線型及び分岐型の連想系列に. メージマップの使い方に関する理解が深まると,. おけるマップごとの概念レベルの内訳が示されて. これらの平均値の間には有意差が現れてくると考. いる。. えられる。. 鍵概念が「水溶液」のイメージマップに書き出 された直接連想語のこれまでの検討を通して,イ メージマップを知識獲得のための支援ツールとし て利用する試みは,学習直後の科学的知識獲得に 加え,それらの理解の広がりに関して概ね成果を. イメージ マップ1. イメージ マップ2. イメージ マップ3. 得られたといえよう。 0. 10. 20. 30. 40. 50. 連想系列数. 3.直接連想語の連想系列に関する検討. イメージマップ1,2,3およびイメージマッ. 図5 直線型及び分岐型の連想系列におけるマップ ごとの概念レベルの内訳. プ4,5,6に書き出された直接連想語は,主カ テゴリー. 「単元の学習事項」および「未習・既習. 図5より,レベルⅠのみの連想語で構成される. 事項」に分類される。そこで,学習内容に関連す. A型の連想系列数はイメージマップ1では13系列. る連想語以外の既習・未習の科学的用語で構成さ. であり,連想系列数全体に対するA型の占める割. れる主カテゴリー「既習・未習事項」に属する連. 合は約62%であることが分かる(以後,13,62%. 想語を「具体的概念(以下,レベルⅠと略)」と. と略)。イメージマップ2では17,50%,イメー. 分類した。学習内容に直接関連する連想語で構成. ジマップ3では20,44%を占めていることが分か. される主カテゴリー「単元の学習内容」に属する. る。一方,レベルⅠの連想語からレベルⅢの連想. 205.

(11) 相野 彰秀・森 健一郎. 語が連想されたり,レベルⅢの連想語からレベル. たり,レベルⅢの連想語からレベルⅠの連想語が. Ⅰの連想語が連想され連想語のレベルが変化する. 連想され連想語のレベルが変化するB型とレベル. B型とレベルⅢの連想語で構成されるC型の連想. Ⅲの連想語で構成されるC型の連想系列数の和及. 系列数の和及び全体に対する割合はそれぞれ8,. び全体に対する割合はそれぞれ20,36%,45,59%,. 38%,17,50%,25,56%であることが分かる。. 49,61%であることが分かる。このことから,授. このことから,授業が進行しても依然として具体. 業が進行しても依然として具体的概念に分類され. 的概念に分類されるレベルⅠの連想系列が半数程. るレベルⅠの連想系列が書き出される傾向は残る. 度書き出される傾向があるが,一般概念に分類さ. が,一般概念に分類されるレベルⅢを含む連想系. れるレベルⅢを含む連想系列は,授業の進行に. 列は,授業の進行に伴ってその数,割合ともに増. 伴ってその数,割合ともに増加する傾向があると. 加するといえる。. 鍵概念が「とける」のイメージマップではこの. いえる。. 筆者らは,授業が始まる前のイメージマップ1. ような傾向は見られなかったが,イメージマップ. においてはレベルⅠに属する連想系列が多く,授. を知識獲得のための促進ツールとして使う授業を. 業途中のイメージマップ2においてレベルⅢを含. 重ねたことで,生徒のイメージマップの使い方に. む連想系列がその数,割合とも大きく増加すると. 関する理解が深まりこの傾向が現れたと考えられ. 考えていた。しかし,そうはならなかった。この. る。. 点に関しては,イメージマップを知識獲得のため の促進ツールとして使う授業を重ねて,生徒のイ メージマップの使い方に関する理解が深まると,. おわりに. 筆者らが期待する傾向が現れると考えられる。. イメージマップを知識獲得のための促進ツール. 図6には,鍵概念が「水溶液」のイメージマッ. として使う一連の授業を終え,学習者の書いたイ. プに書き出された直線型及び分岐型の連想系列に. メージマップの検討結果から,次の点が指摘でき. おけるマップごとの概念レベルの内訳が示されて. る。. イメージマップを利用した最初の授業では,連. いる。. 想語全体の中に学習に関連する連想語が隠れ,授 業の進行に伴って獲得された知識や概念の傾向が. イメージ マップ4. 必ずしも明確にならなかった部分もあった。しか し,イメージマップを利用した2度目の授業では,. イメージ マップ5. 学習内容に関連する連想語が増え,連想語数の増 イメージ. 減や連想語の種類の増減,連想系列のつながりに. マップ6. 検討が加えられ,概ね授業による知識獲得状況や 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 90. 連想系列数 図6 直線型及び分岐型の連想系列におけるマップ ごとの概念レベルの内訳. 概念形成状況が明らかになった。. このことから,イメージマップは概ね理科授業 における知識獲得のための促進ツールとしての利 用可能性があるといえる。. 図6より,レベルⅠのみの連想系列で構成され るA型はイメージマップ4では36,64%であった が,イメージマップ5では31,41%と減少し,イ. しかし,研究をさらに精微にするためには,次 の諸点の検討が今後の課題として残された。. 第一に,イメージマップを利用する授業は継続. メージマップ6では31,39%であった。一方,レ. 的に行う。本研究では,1単元を2つに分け,2. ベルⅠの連想語からレベルⅢの連想語が連想され. 通りのイメージマップを学習者に描かせた。後に. ?06.

(12) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(2). 書かせたイメージマップの方が直接連想語が多く 書き出された。すなわち,イメージマップを利用. する授業を重ねて学習者のイメージマップの使い. 1996. 3)分析には,統計パッケージSPSS Ver.11を使用した。 以後の分析も同様である。 4)川喜田二郎:『発想法』,1967,中央公論社.. 方の理解が深まるにつれて,直接連想語が多くな る。それに伴って,連想語の種類の増減の検討や 連想系列の構造などの分析検討が深められる。. (相野 彰秀 大学院教育学研究科教授) (森 健一郎 釧路市立幣舞中学校教諭). 第二に,イメージマップの書かせ方と比較のさ せ方を定式化する。本研究では,イメージマップ. を書かせるときに鍵概念を与えただけで,ほぼ自 由に書かせた。加えて,イメージマップを比較さ. せるときにも,授業内容に関連したことで気がつ いたことや分かったこともほぼ自由に書かせた。 このようにイメージマップをほぼ自由に書かせ,. ほぼ自由に比較させるだけでも授業におけるイ メージマップの位置づけが学習者にとって分かっ てき始めるとある程度の量的・質的分析を加える ことのできるイメージマップを学習者が作成でき た。今後,イメージマップの書かせ方と比較のさ. せ方を定式化することで,学習者による知識や概 念の獲得状況や誤概念の可視化がさらに進むこと が期待できる。. これまで筆者らは,イメージマップを理科授業 における知識獲得のための促進ツールとしての利 用可能性に言及した報告を2報にわたって行っ た。しかしこれら2報では,利用可能性が検討さ れたのみである。今後,授業で利用する定式化さ れた方法を確立し,授業実践を行い,その結果に 量的,質的な検討を加え,イメージマップを知識. 獲得のための促進ツールとして利用できることを 明らかにしたい。. 註 1)相野彰秀,森健一郎:「イメージマップを知識獲得. を促進するための学習支援ツールとして利用する試み 一中学校理科「水溶液」単元を事例として−」,『北海. 道教育大学紀要』,教育科学編,Vol.60,No.2, pp.109−124,2010.. 2)三宅正太郎:「学習者の知識獲得状況を把捉する一 方法としてのイメージマッピング・テストについて」, 『日本科学教育学会20周年記念論文集』,pp.685−693,. 207.

(13)

参照

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