経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題
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(2) . 第1 9巻 第 2 号. 北海道教育大学紀要 (第一部B). 昭和43年12月. 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 赤. 太. 金. 石. 郎. 北海道教育大学岩見沢分校経済学教室. i I M[ l Kintaro AKAIWA : The Po i i tura zat on in the oderni cul cy of Agr l j icy and Sub Re l t ion of Economic Po ec sin AgriculturaI Education at. 次. 目 1. ロ. 皿,. 序, 「農業白書」 が示す日本農業の問題 農業近代化をめざす農業基本法の目標 経済政策の日標. 弾, 農業政策と経済政策との関連 V. 農業教育の課題. 1. 序, 「農業白書」 が示す日本農業の問題 ) におい 昭和42年度の 「農業の動向に関す る年次報告」 いわゆる 「農業白書」 は, その第3部1 て, 農業施策の3つの基 本問題を示し, 4つの重点施策をかかげてい る. 基本問題の第1は, 農産物の需給の問 題である, 近年の農産物 の需要の変化に対して, 農業生 産が対応しえない面が生じてきており, 農産物価格 が大巾に上 昇する傾向 があるという. 第2は, 生産性の問題である. 農業所得の増加は, 生産性の向 上が寄与するところよりも農産 物価格の上昇に負うところが大きく, 国民生活の安 定を害ぅ, という, 第3は, 農業構造に関する問題である, 農家労働力の流出が農地の流 動化に結びつかず, 経営 規模拡大が進んでいない, という. これらの問題点から, 農業施策を行うに 当っ て, 生産, 維持, 価格, 流通等に関する各般の施 策を総合的に推進す ることが必要であるとして, 4つの重点施策をあげてい る. 第1は, 農業生産基盤の強化な ど, 需要の動向に即応して農業 生産の振興を図ること, 第2は, 自主経営 の育成な ど, 農業構造 の改善を 推進し, 農業経営の近代化を促進すること, 第3は, 農産物の価格安定および流通の改善, 合理化に努 めること. 第4は, 農業経営者を養成確保するとともに, 農村生活環境 整備をすす めること, であ る,. 3つの基 本問題は, いずれも 「農業基本法」 いわゆる 「農基法」 において, 重要な国の施策と してあげている もので, 選択的拡大, 生産性の向上, および農業構造の改善の点である, このこ 6年当時の日 本農業と42年のそれと は, 数年を経過してかなり状況を異 とは, 農基法制定の昭和3 にするものであるが, 重要な基本問題はいずれもきびしく存してい ることを示している. 基本法 に応じてつ ぎつぎに政策が実施さ れてきて, その方向に進 められたのであろう. しかし選択的拡 -172-.
(3) . 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 ) として, 米によりウェイ トをかけた結果になっているのではな 大の問題については, 農業政策2 いかという事体があり, また, 生産性の問題については, 所得格差を縮めるうえで, 生産性が示 す農家所得ないし農業所得に対する寄与はょ・り小さく, 賃金ないし農産物価格 の上昇 に負うとこ ろがより大きいとみられる し, さらに, 構造改善の問題については, 経営拡大に連ならないばか りか, 経営を縮小する傾向もあるといわれる. 農基法の示す目標への歩みは小さく, あるいは停 滞的に, あるいは逆行的にさえ見られるものがあるようである, それらに対する重点施策であるが, いかに具体的に実施されるか, どのような効果が庸らされ るかは, 予測しがたい. 端的にとらえると, 農基法は農業の近代化をめざすものといわれるが, いかなる農業政策を以てしても急速な目標達成は困難であろう. このような問題をもつ日本農業と 農業政策を農業教育はどう受けとめるものかというのが本稿 の主題である. 註 2年度, 農業の動向に関する年次報告, 第3部, 昭和43年度において講じようとする農業施策, 1~ 1) 昭和4 4頁.. 2) 農業政策を農政と略称するのは,両者が必ずしも一致しない. それぞれ別個の意義をもつ, という見方(大 阪市立大学経済研究所編, 経済学辞典, 岩波書店, 1 965 , 935頁) があって, 当をえたものといえないよ うだ, 本稿ではこれに従って略称をさけた,. ロ. 農業近代化をめざす農業基本法の目標 近代化ということは, 近来, しばしば使われる語であるが, あるいは, いろいろな意味をもち ) と い う 語 は, アメ リ カ やイ ギ ionl あるいは, 正確でないばあいが多いようである. Modemizat リスでよく使われるとい う語ではないようだが, 近代化はそ の訳で, その内容は輸入されたもの であるというものでもないようである, それにしても, 近代化は, 複雑な内容がうかがわれ, 端 的にあらわし難い ものがある, ) によれば, 「近代化ということばの中に示された2つの面は」 「経済の近代化と 1つの見解2 社会の近代化と名 づけることができ」 る, 「物の生産や流通についての秩序を経済とすれば, そ 」 「一方, 人間の共同生活の場としての の面での合理化が近代化の第1の主要な内容を形成する, 社会に は, その中の人間対人間の関係で, い っそう進んだ規律と自由のもち方への不断の歩みが ある」. 「社会の近代化は, その意味では, 経済の近代化よりも, はるかに広い概念である」 と考 えられる. さらに, 経済の近代化は, 物財関係の合理化から工業化を求め, 社会の近代化は, 人 間 関係の合理化か ら民主化を求めると見られるよ うである, このような理解は, 近代化について 社会の広汎な考え方に立ち, 歴史の長期の見方からとらえるならば, おおよそ問題の中心にふれ てい る も の とい え るで あ ろ う,. 農業の近代化 もこのよ うな近代化にもとづくものといえよう. 農業も産業の一環 であり, 経済 の一面だからである. 農業基本法 は農業の近 代化をめざしている, 同法の第1条は 「国の農業に関する政策の目標」 を示して, 「国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向 上に即応し, 農業の自然的経済 的社会的 制約による不利を補正し, 他産業との生産性の格差が是正されるように農業の生産性が向 上する こと及び農業従事者が所得を増大して 他産業従事者と均衡する生活を営むことを期するこ とがで きることを目途として」 いる, 目標の焦点は, 農業の生産性を向上し, 農業従事者の所得を増 大することにある, 従 って, 「農業の近代化」 も, 「農業の生産性が上が」 り, それとともに,. 農業所得力 増大することを日指し, 「具体的には, 農業有業者の比率が減少して, 産業構造が西 3- -17.
(4) . 赤. 岩. 金. 太 郎. ) だ とし・え る よ う で あ る, 欧 のよ う に も っ と 工 業 中 心 に な る こ と を 指 向 し て い る も の」3. それは, 農業近代化の過程には, つぎのような関連が必然だからである. 農業の経済 的合理化 をめざすならば, 経営規模の拡大がのぞまれ, また, 技術的向上 ないし工業化 が必要となる. 同 時に, 過剰な農業従事者の非農業への流出によ っ て, 農業有業者の比率の減少を招来することが 期待される, このよ うな経過のうちに生産性は高められ, 所得格差は縮少さ れることになろう, と考えるのは得られ易い論理である, 西ヨーpッ パ諸国において, 「農業基本法」 とい う意味のことばは必ずしも使われていないが ) これに類する計画をたて, 法制化して, 農業政策が実施されてきている4 . 各国いずれも, 経済 事情を異にし, 農業の経過も同じくないが, それらの法制の目標のうえに共通点があるよ うであ る, tz l955 で あ っ た, 同 国 で は, 日 本 に t sgese 西 ドイ ツにおける法律は, 農業法 Landwirt schaf. よく似た経済 事情にあり, 重化学工業が急成長して, 農業がとりのこされていた, l I Ac icu tura tl947 があげられるが, その後数次の改正 イ ギ リ ス に お ける も の は, 農 業 法 Agr があった, 同国では, 農業の資本制が進み, 合理化 が行われていたが, 農業の人口およ び所得の 割合は小さく, 国際競争力の強化に迫られてきていた. フラ ンスにおけるものは, 農業の方向づけに関する法律 Loi 窪orientation agricole l960 であ る, 同国では, 農業生産はかなり豊かで輸出可能であるが, 農業交易条件は悪化してきていた. ヴ ァノ ー ニ, プ ラ ンー イ タ リ ア 雇用 ・ 所 得 発 展10ヶ 年 (1955~64) l lreddi l ia nel decennio luppode l ioneede Piano Vanoni‐Schema dis ivi toinl ta aoccupaz. イ タ リ ア に お け る も の は,. 計画. l955~1964 で あ る. 同 国 で は, 農 業 は か な り お く れ て い て, 農 業 過 剰 人 口 を か か え て い た.. オース トリアにお けるものは, 農業法-食糧の確保及び経済的に健全なる農民層の維持のため l i l960 の 措 置 に 関 す る 連 邦 法 Bundesgeset z vom 13 Ju. t dem mi. Massnahmen zur. f l l Si i i 土scha t tung eines wi ch gesunden Bauernstandes cherung des Ern浅hrung sowie Zur Erha. である.同国では, 農業の特殊な地域性があり, 永世中立国であることから, 食糧の国内自給 が要求されていた,. fen we t t t r schaf z) rden (Landwi sgese getrof .1960. 以上は, 各国の法律成 立の背景が簡単にとらえす ぎているが, それぞれ農業に関する状況が異 なるもの があることは理解されよう, しかし, 各国とも農工間の所得格差縮少と, 農業の生産性 向上の課題を共通にも っており, 西 ドイ ツ, イ ギリ スに倣 ってそれぞれ農業政策 が実施されてき てい る。. 日 本 も ま た こ れ ら に 学 ん だ も の と い え よ う.. ところで, 農業の近代化は, 農業を他産業と比較したうえでの問題であり, また, 中山論著か らもうか がえ るように, 日本農業と欧米農業と 対比したを あいのことである, 対比するそれらの 現在の事態を対象として, それらに近 づけることをねらいにするのである. しかし, それらの対 象自体が向上し, あるいは変動するものであろうし, そして, それらとのバラ ンスを得ること が 目標となるであろうから, 一定の近代化ではなくして方向としての近代化のようである, 註 i incet i ty i on Un ver s 1) Mi erence on Modem japan に よ っ て Pr t chi ver s gan Uni y でつくられた The Conf i Pres zat on” が 肌・られ, その問題がとりあげられている. s からの出版になる次の著に, “ Moderni i i i i A ius B.Jansen C N1ar d h t tudes Toward N[ J t odern zat on e a n e s e a n n a g g p .1965 . , , ,. つぎの邦訳がある. 3年, 岩波書店, マリウス B , ジャ ソセ ソ編, 細谷千博編訳, 日本における近代化の問題, 昭和4 4 2 講談社 頁 2) 中山f 昇知郎, 日本の近代化,1965 , , , 3) 前掲書, 32頁. -174-.
(5) . 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 4) 農林漁業基本問題調査事務局, 西ヨーロッパ諸国における農業基本問題と基本対策, 1~6, 196 1 , 農林 協会,. m. 経済政策の目標 近来, しだいに経済政策は社会経済 におけるその意義を強めてきているようである, 「現代の 大勢として<混合経済>とか, <福祉国家>とい ったことばに表わされているように, 経済政策 1 ) いるといわれる の役割に対する人々の信頼と期待とはますます高まって」 . 経済政策の本質を端的に示すことは離しいが, 経済政策には, いかなる主体が, いかなる客体 に, いかなる目標をもって, 行うのか, が重要 であろう. したが って, 経済政策の目標は主体や 客体のあり方に応じて変らざるをえないことにもなろう. 2 ) に お い て, 経 済 政 策 を 論 ず る に あ K, 日. Bou ldi l l inc ip i ng はその著 Pr esof Economic Po cy た っ て 4つの目標をとりあげる. l i ti 彼は, まず 「経済政策は何か Wha cy?」 に つ い て, 第 1 章 で 論 ず る が, 章 の s economic po 初めに, 本文の要意をとりあげてう たった次の詩をかかげている.. われわれの政策が, 有効なためには, 適当な目的を追求しなくてはならぬ, それゆえ, われわれの経済は 成長的で, 安定して, 正義にそい, かつ自由であるべきはずだ. 一時に, 4 つのものを追いかけようとする犬は おらそく ばかなのであろう, しかし経済専門家のしごととして 計画するには正 しくこの方法しかない ! (0ur Policy, to be e任ective, l Must chase a sui j ive tab t e ob ec , l So, our econo 1 鮪 L .ou1d be ys F Both Growing,Stabl t e ,jus ,and ree,. ld surely be a Dunce The Dog wou vvho t i r ed to chase four things at once, l Yetthi t the way we p an si sjus 3 )) The task of Economic Man !. この詩文は比噛的に, かつ簡明に, 問題をうた っている, 経済政策として4 つの目標がすべて 必要であることを示 し, それらがいずれも1 つの目標でよいというものではなく, また, 一義的 に優先の順序をつけがたく, たがいに拘束 しあうものであることをふくんでいて, 難しい要件だ が, 綜合的でなければならぬことを意味している 経済政策の necessary and su係cient obj ‐ ect . ives を 示 して い る とい え よ う.. 続いて, 順次に各日標について論じている, 第2章は 「経済的進歩 Economi c progress」 の 目 標 で あ っ て, 冒頭 の 詩 は つ ぎ の も の で あ る,. 賢明な経済学者は -175-.
(6) . 赤. 岩. 金. 太 郎. 成長のかわりに何れかを放棄することをきらうものだ,. 急速な成長は 国をまったく不安定にすることがあるものだ が. 貧困な国々は 平等で, 正義にそい, 統制されてかつ自由な状態をつくり 出すことはできない, それゆえ富者によってだけ実行される 多くの道徳がそこにみられる. (The wi sl se economisti oath To give up anything f or Growth.. 1 Though very rap id growth i e sab To make a country qui te unstable . ’ Poor count i r es cant a什o rd to be. Both equa l l l t ed ,and free, ,contro ,jus So there are many virヒues whi ch )) 4 Are practiced onl ch. y by the Ri. 経済の急成長は経済 の不安定を伴うが, 進歩を除外しては経済政策の大きな意義を失う, 後進 国はおよそ進歩を急いで, 所得の格差を大きく するものだ, という. したが って, 経済的進歩は 経済的安定と密接に関連 し, たがいに拘束 しあうことに意義が見出される, 競争による一義的な 急成 長を排 し, 安定を伴う成長が, 正義や自由をも導きうるもの であることをふくんでいる. つ づく第3章は 「経済 的安定. Economic s l i ty」 の 目 標 で, 次 の 冒 頭 の 詩 が あ る. tabi. われわ れの制度は不景気 という践 病の性向をもつ, ブームにな りがちでもあり, さもなくば恐 慌に陥り易い. こ の こ とか ら安 定 させ るこ とが. 政府にとって賢明となる -- 安定で堅実な成長を することが 必要だと知らねばならぬ, 恒常的完全 雇傭をも イ ンフ レは 実 現 を 鈍 ら せ る も の だ. tem i (oursys s depressive-manic; i. l 1 1 弱 runs to boonl ,or ese to pan c ln view of this it would be wise. l ize-- For Goverlnnent to S tabi th ing the need for bo Remenュber l Stabi i ty and steady growth, ion du l l And that il ・Rat s the enjoyment 5 ) l l employnlent Even o f constant fu . ). -176-.
(7) . 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 資本主義経済の制度は必然に景気の変 動を伴うから, これを安定させ, 堅実な成長を進め るこ とが政策の大きな 目標となる. イ ンフレは完全雇傭に導くようでありながら, かえ って, これを 阻止するにいたる, 進歩は重要だが, 安定があっ てのそれでなくて はならぬこ とを示している, ice」 で, つ ぎ の 詩 を 示 す, また第4章は 「経済的正義 Economic just 不正が見逃がされることは 民主主義ではありえない, 不正があることを見出 して 驚かされることがあろうとも, 正 義がもたらすものは不満がもたらすものよりも 明 らか に よ り 小 さ い も の で あ る こ と を わ れ わ れ は 知 っ て い る,. それで正義に対する探索は 必要に応じて賞罰がつりあうように導くのだ, d (Democracies can not a性or t i Tol ce be ignored, etinjus Thoughi t might cause them some surprise i i To 賃ndjus t where inj es ust cel , ly whati Wre know l ear ess cl s meant. i By Jus t ce than by Discontent, And so the search for Jus i t eads cel 6 ) To balancing Desert wi th Needs ) .. 民主主義は, 不正を許さず, 正義を尊ぶ. その正義はあいまいである が, あいまいであるだけ に重要である, しかしそこに不満があってはならず, そのために公平が求められる. ここにも重 要ながら1つの目標が一義的に優先しえない意味をふくんでいる. さらに続く第 5章は 「経済的自由 Economic freedom」 で, つ ぎ の 詩 が あ る. 自由は, 道徳の, 貨幣の, 法律の, および思慮の, かきの内側にあるものだ, それで, もしこのかきが広ければ, われわ れはそれだけ自由が大きいのだ (さもないばあい, 反対側には何もない), もしあなたのすく れた自由が私を拘束するなら われわれは政治 (そして罪) に当面する. それ故法律によ ってわれわれは そ の自 由を せば め られる こ と にな る-- 自 由 で ある た め に ide the fence (Freedom i s what sins l of N【 s oney ora , N[ ,Law,and Sense, And we are f fthi ree sis wide ,i ide) (or nothing’s on the other s . -1 77-.
(8) . 赤. 岩. 金 太. 郎. l i i Wecome to Po t in) cs (and S Wr hen Your 6ne freedoms fence ルー e in, And so through Law we come to be 7 )) Cur l ta i ing Freedom to bef ree. 自由はいかなるばあい でも, 制限された自由である. もしその自 由が大きすぎて他の自由を損 えば, 法にとがめられて, それだけその自由は, 他の自由のためにせばめられる, 自由は人間に とってまことに貴重だが, 明確なものではない. 他の自由を損わないか ぎりにおいてだけ最大 の ・うことである. 自由が求められてよいとし あげられた4つの目標は, すでにふれたように, 経済政策としていずれの1つも除き難く, 順 位をつけえない重要性をもって, たがいに関連 する ものである が, そのうち, 正義と自由とは経 済政策部門に限られるものではなく, 政策全般において, 欠くことのできない重要な目標であろ う. しかし進歩と安定とは経済部門の政策において, 他と異なる重要性をもつものと 考えられよ う, 社会における経済は, 時の経過のうちに, たえず変り動く 本質をもつが, 進歩は長期的なう えで, 安定は短期的なうえでとらえ られる. それに しても, それらは, つねに補い合って, 社会 の永続と繁栄を可能ならしめる必要条件となるものであろう, 経済政策に対し, その一環をなす農業政策も, それらの4つの目標を同じくするも のであり, そのうち, 進歩と安定とが同じ意味においてとくに重要さをもつことから, ま ったく共通性を有 するものである, しかし特殊な性格をもつ農業政策は, その共通性のうえに, 特殊な目標をつけ 加えねばならぬといえよう. 註 1) 館竜一郎, 小宮隆太郎, 経済政策の理論, 2頁, 勤草書房, 1 96 7 . i仔s: Pr i l i l inc i 1 l l 2 ent ce-Ha esof Economi c Po cy ewood C1 ) Kenneth E.Boulding P ,1958 . , Pr , Bng 邦訳, 内田忠夫監訳, 経済政策の原理, 東洋経済新報社, 1960 . 9章にわたる各章の冒頭にかかげる詩文が訳出されていない. この邦訳では, 原著の本文1 b d i 3)i .p ,1 . id,p 4)ib ,21 . b d i 5)i ,51 .p . id 6)i b ,p .83 .. id 7)ib ,p .110 .. IV, 農 業 政 策 と 経 済 政 策 と の 関 連. 農業は産業の一部門であり, 農業政策は経済政策の一環であるから, 政策両者の関連は密接で ある. しかし, 経済政策の綜合方針に沿わ なくてはならぬと同時に, 農業政策の特殊性は主張さ れなくてはならぬから関連は単純ではない. このことに立って, 農業政策の目標を端的に示せば 経済循環が順調に行われるために, 農業と非農業との均衡を保つことにあるとい っ てよいであろ ) をたずねよう. う. これに関 して一書の所見1 「国民経済 の一部門としての農業は, 工業化のすすんだ経済においては, 非農業部門の動向に よってさま ざま に動かされるが, それを対象とする農業政策も, 全体と しての経済政策が何を重 点的な課題と し, どういう政策手段の体系を選択するかによ って, その政策目標と政策手段を規 制される. J とい う. そ して, 資本主義体制として, 経済政策の主体をなす国家は, 個別資本に対して, 社会的再生 産のうえから, 総資本をとらえる, 78- 一1.
(9) . 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 「総資本 の立場からの状況認識と判断 から 農業という個別産業部門に対する 積極的あるい は , 消極的な要求が生まれ る. 農業政策は, この農業 の外からの要求 を与件と してうけとり その目 , 標に接近する政策手段を経済政策の全体的わく組が許容する範囲で探索 しなければならない」 という. 要するに, 農業政策は経済政策によ っ て 総資本 の立場に基づいて規制を受け その , , わくのなかで進められなけれを ならぬ, と見る . 産業における 農業, 経済政策のなかの農業政策 の意味においてとらえられるのであるか ら, 資本の在り方や政 治体制およ び国際経済関 係は経済 政策 の方向 を定めようし, 農業政策もその方向から大 きく外れうるはずはない しかし 農業政 . , 策が経 済政策のわくのなかに あって 一般的方向に従うだけ のものであり 独自な方向 をもちえ , , ない も の で あ る か と い う に,. 「しか し, 農業政策は, 他方で, その対象として の農業および農業者 の側からの制約を免かれ ることはできない, 農業政策 の形成過程には, 農業政策の客体と しての農業者 の政策的要求が」 あり, 「劣勢産業としての農業はとくに国家の政策に依存するところが大きい し また統轄者 と , して巨大資本があっ て, それがきわめて直接的に政策形成過程に関与するという他 の多く の個別 経済政策にみ られる形が 農業政策にはないから それだけにとくにこの客体の側からの要求が大 , きな意味をもつことになる, それは, 農業および農業政策 に対する農業外からの要求にと て っ , 強力な制約条件 と して作用する. つまり, 個別経済政策としての農業政策は 全体と して の経済 , 政策 の方向とわく組によ って制約されるとともに, 農業の現 実の状態およ びそこから発 してくる 農業の内か らの要求によ って制約される 」という . , 劣勢産業 であり, 巨大資本をもたない農業 であるから 農業者の要求が 農業政策に影響を与え , 経済政策 の制約に対抗して強力 にはたらく. も しそれなく しては 資本主義経済 の進展に応 じて , 農業は衰亡 へ向うであろう, 農業政策の経済政策への抵抗や主張が強力 であるか否かは 農業者 , の要求に対する, 資本状勢, 政治体勢また国際関 係等の在り方によ っ て定まるものであろう . 「したがっ て, 農業政策の形成過 程は, ごく単純化 していえば 総資本の立場 から発する農業 , の外から の要求と, 農業の内か らの要求との調整の過程 である といえる もちろん 両方の要 , . , 求がいつもおなじバラ ンスをたもって調整されるわけではない 経済的ならびに政治的状況の変 . 動にともなって, あるときは外からの要求が内からの要求を圧倒し あるときは逆に後者に重味 , が か か る,一. と, 農業政策と経済政策との関係 は変化するもの であることを説い ている , しかし, 経済循環 の過程では, この変化関係は, 両者の均衡をめ ざして進もうとする必然をも っ と い え る で あ ろ う.. ところで, 産業政策と経済政策との関連 のうちに, 農業の内部からの主張による農業 の特殊性 は, 進歩と安定という農業政策の目標 のうえに政策を特殊化する そういう農業の特殊性という , のは, 農業の資本主義的後進 性であろう, 農業の近代化をめざす農業基本法は, 農業の特殊性に基づき, 農業政策を特殊化するための目 標をなすものといえようし, より適確に, その目標を あげるならば 生産性の向上と所得の増大 , とい う こ と が で き よ う, Bou l ding の論者第1 3章における詩は,. 「農業政策. た わ れ て い る,. -17 9-. Agr l lpo i l tura i cu cy」 で, つ ぎ の よ う に う.
(10) . 赤. 岩. 金 太. 郎. 農家は物価になやまされる: それ故 平衡価格は農家の好ましい 方策だ; しかしい まや, ああ, 国民の最も高価な慈善によ って われわれは平衡価格を見出している, 貧者を救う べきそ れらの寛容な寄与は 富者を助けている, 何故なら, 物価をわれわれ が支持するとき, われわれがより多く支払うということは, より多く売ら れることになるからだ, i th Pr ce: (The Farmer i s obsessed wi i ty’ i SO Par sh ce; s pet devi. i ty But now, alas, we 6nd in Par ty. The nation’s n・ost expensive chari ions which ibut Those generous cont r t the Ri l l Shou d he ch, p the Poor , suppor. l d, Because when Pr i ces we upho , )) 2 We pay the more,the more issold.. 工産物価にひきくらべ, 低下傾向の農産物 価であるから, 両者のバラ ンスのえられる価格が, 農家にとってのぞま しいわけだ が, 政策的に農産物価が支持されると, 消費者はその負 担を忍ば ねばならず, 食糧品が主である から, 少数の富者よりも多数の貧者にその重圧が加わることをう た っ て い る,. 農業者の所得を支持すると同時に一般消費者のそれをも損わぬ政策がのぞましく, 一方により 利 する政策に偏することは許されがたい, 政策として 衰退農業の課題における短 期的な見方を と りあげたものである, この見方は日本農業と農業政策にもあてはまり, 進歩よりも安定の目標をとりあげ, 長期的よ りも短 期的にとらえた農産物価 政策の性格が簡明に とらえられ, 農業における所得増大をめざす にしても関連 し影響 するところが大きいことが示されている. しかし, 長期的な進歩につな がる 生産性向上について見落されてはならぬことである, 註. 6 6頁. 65~1 1) 加藤÷即, 阪本楠彦編, 日本農政の展開過程, 東京大学出版会, 1967 ,1 d,p i b 2) Boulding .313 . ,i. V. 農業教育の課題 農業教育は. 広く農業に関 する一般教養の意 義をもつものである が, 農業に従事しようとする 者に対する専門的意 義をもつのが本来の任務であろう. それ故に, 農業教育は農業の次代を約束 するものであるから, 農業政策とは密接に連なる, 農業政策の成否に及ぼす影響は 大きい. ) がある, 近来の農業教育に対 し, 教育の立場から, 批判的な意見1 自立経営農家育成という農業政策の課題と, 産業の技術革新への対応という 高校教育に 対する 課題とが, 農業教育の改革を進 めて来た. その経過は, 「農業の動向そのも のが客観的な要請と して教育にもちこ まれ」 たものである. このことは, 「産業が教育を規定し, 産業の現段階が教 育内容を決定 することにならざるをえない, 客観的に要求されている 能力と教育改革 とが対応し 0- -18.
(11) . 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 ているにすぎない図式からは, 新しい産業の担い手の論理は出てこ ない, 教育の独自 な機能は, 客観的な能力の要求に対して, 主体的な学力を形成するところにあり, 能力と学力の統一的把握 から教育の ブラ ンと教育改革の構想が生ずる のでなけれを ならない. 困難と混乱の山積した日本 の農業ととりくむ力を若き農業者が身につけるためには, 現段階の生産力の水準を切りひらく生 産組織と技術の展望とが不可欠である, その為の主体的な学力の形成への志向が, 昨今の農業教 育改革の流れの中にみられるであろうか」 と, 農業教育改革 の在り方に疑問を投げる . 考え方の前提に教育 と訓練とは異なるも のであることをとりあげる. 「産業がそれにたずさわ る労働者に要求する能力 は客観的なもの」 であり, 「計量可能なもの」 である, それに対し, 教 育が生徒 に求める学力は 「教育目的による価値の編成と, 主体的 な形成という二因子」 をもつ . それ故に, 「能力は, 技術-高度なものから, 技能-低度なものにいたるまで, いかよ うに差が あろうとも, 教育的に編成 されていなければ, そのかくとくは訓練におわる 能力と学力の差は , 訓練と教育 の差に対応 している,」 それにもかかわらず● 国民の教育要求を 「 多様化」 の論理で進 , め, いろいろの形の教育訓練機関を高校教育と等置してきた 「その底に, 教育 ( i t educa on) を , i 訓練 ( t r a ni ng) と同一視する」 誤 った教育観がある, とする, そして, 「農業教育再編はいろい ろな次元でおこ っている,」 まず, 農林省系統の農業教育再編 については 「経営伝習農場」 の拡充から 「農民大学」 の創設への経過をとりあげる. 「農林省系 統の農村青少年教育の中心は, 各県の経営伝習農場の歴史をもつく農村青少年研修センター〉に あり, 能力の訓練が主題で, 訓練ご教育の考え方 から, 形式的学校教育が見られ, 「農民大学」 の構想は, 「農民エリートを, 経営能力の側面 を 通してつくっていくことに主眼がある, 2 ) とい 」 う,. つぎに, 文部省系統の農業教育再編は, 「農業近代化への即応」 から 「自営者養成農高へ」 の 経過を示す, そこでは, 「経済と産業の論理を高校教育に投影し, アグリ ビジネス3 ) 系学科の優 位, 自営科の細分化・技能化・多様 化」が, 農業教育再編の方向にな っていったという ここでも , 能力の訓練 に重きがおかれ, 教育の訓練化が見 られる . さらに, これらの農業教育に対して, 農民のなかの自主的学習運動としての農業教育は, 農民 の自主性, 主体性およ び創造性を 育てる意味において最大に重視される, このよ うに, 教育目標 の観点から農業教育をとりあげるばあい, 現実の農業の要求にそう企業 的農業教育の在り方に問題を見出し, 農民の自主性の尊重を主張するのは当然といえよう, それ は教育の本質的な問題だからである, しかし, 教育内容的に見る場合, 農業教育は, 農業の現実の意向にもそわなくてはな らぬであ ろう. 自主性を以て農業の将来を 展望しうる教育が重要ではあるが, 農業の現実に処 してこれを 高めることもまた緊急であろうか らである. 農業の本質的な問題として, 農業の現実は, 非農業 のそれにくらべ, 資本主義的におくれている し, おく れるものであるから, より急速に, よ り確 実に非農業に均衡せしめる必要があろう, 農業教育において, 教育内容には技術的なものと理論的なものとがある, 技術的教育は技術革 新に当 って, これに適応する教育が 必要であり, これが行われなくては農業の発展は期し難い. しかし技術にともなう理論的教育もまた緊要であって, これが行われなくては農業の資本主義的. 後進 生の是正の在り方は理解しえない. 前者の問題はさてお き, 後者について, 課題となるものは, 農基法の示すように, 農業の生産 性と農業の所得の問題があげ られる. その生産性や所 得が低いということおよびそれに関する諸 8 1- 一1.
(12) . 赤. 岩. 金 太. 郎. 問題について, かかる現象をもたらす原因 は何か, どのような形体であらわれるのか, どのよう な結果を 来すのか, な どについて能う かぎり深く かつ広く理解がえ られることが 農業教育として のぞましい. それは根本には, いずれも生産関 係の問題と して, 経済 的なとらえ方の理 解が必要 と な る.. 所得の問題についてとらえると,,それは生産性の問題に連るが, さらに, 農業生産の季節性に. よる就業過小の問題や農産物価格が 農家の非農産物購入価格に対する格差の問題とも関連するも のであって, 零細経営に基 づいて, 農業所得は過小となるものである. それは農業の合理的発達 を妨げ, 国内市場の拡大を阻むであろうから経済 の発展を阻害 するであろう. 生産性の問題についてみると, 農業所得を低下 させる要因ともなるもので あるが, 地代の存在 とともに, 資本のあり方 が農業の生産性を低下せしめるもので ある. 非農業の生産性 との格差を 生じて, 均衡はえ られがたい, これらに関 する諸問題は, 農業の特殊性であり, 農業発展のいわ ば経済 的制約となるものとい えよう. それらに関する理解はもっ とも重要であろう. なお, 経済的制約に連 って, 経営的制約といえるものに, 土地所有の問題 がある. 小農を解消 して大農に導く障 害となるものであろう. また, 歴史的制約として, 農民の保守性の問題がある, 政治の農業保 護の問題とともに, 自主 性の獲得を阻む要因となるものであろう. さらに, 社会的制約に, 社会意識の問 題がある. 協同化が進められ なくては企業的対応は困難 で あ ろ う,. など, 経済問題およびそれに関連する諸問 題が, 農業の特殊性からひ き だされる. それらの理 解なく しては, 農業教育の目標は達せられがたいであろう. 上述して きた ところから, つぎの要 約が得られる. 農業教育の課題として, 教育の立場からは, 農民の自 主性の尊重が希望される. 農業の現実と 理論の立場 からは, 農業の 当面の政策の立場 からは, 農業の技術の獲得が要求される. さらに, . 特性の基本的理解が主張される, と. そしてそれらは, 何れを是とし, あるいは非とするような比較は不可 能であって, むしろ, そ れらの総合のうえに農業教育は進められるべ きものである. 農業の理論 と技術とをふまえた とき に, はじめて農民の自主性が豊かになりうるし, これ からの農業の展望が可能となるのではない か, ということが, 農業教育の課題に答える在り方であろう. しかしなお, 農業教育と農業政策に関して, 基本的に困難があるようである. 教育は政策に連る. 政策に隷属するものではないが, ま ったく独立でありうるものではない. 国家の意志に反することはできない からである, また, 教育は将来に 期待するものである, それ は社会の将来をになう者を育成する任務をもつからである。 それに対 して, 政策はより近い現実 に対処するものである, それは社会の当面 する問題を解決する任務をもつ からである. このこと から, 教育と政策とは粛難の性格と関係にある といえるようである, そのような対応が, 現時の 農業教育と農業政策との間にも根強 く横たわ っていて, 農業教育の課題解決を困難にする要因に なっているようである. これを どう超克するかである かは本稿のとりあげるところではない, 註 1) 藤岡貞彦, 農業教育再編と農民の学力 (農業経済研究, 第39巻, 第2号, 1967年9月,63~73頁) , 2) 中野舜司, 農民教育に関する覚書 (農民構造問題研究, 11号) , 一182-.
(13) . 経済政策に連る農業近代化政策と農業教育の課題 i b i s は, そのあり方によっては, 農業の分化を us ne s 3 ) 農業および農業関連産業とを包括的にとらえる agr 見出すものであるとともに農業の総合をとらえるものであり, 農業と関連産業とのつながりを見出 して, 農業の資本主義的後進性を是正する方途に近づくものでもあろう.. -183-.
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