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佐藤幸人編「アジアの産業発展と技術者」 (新刊紹介)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

佐藤幸人編「アジアの産業発展と技術者」 (新刊紹

介)

著者

佐藤 幸人

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

184

ページ

54-54

発行年

2011-01

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004342

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.184 (2011. 1)

54

  本書はアジア諸国 の産業発展における 技術者の位置づけや 行動に焦点を当てて いる 。産業発展にお いて技術は重要な要 素であり 、技術的な 発展において技術者 は中心的な役割を果 たす。したがって、彼らに注目するこ とによって、アジアの産業発展に対す る理解を深められるのではないかと 、 本書は考えた。分析の対象としたのは 韓国、 台湾、 フィリピン、 中国である。   本書が主として取り組んだ課題は 、 技術者はどのように育成され、そして どのようにその能力を発揮し、その結 果、どのように産業発展に寄与してき たか、またそれはどのような産業発展 のメカニズムに基づいていたのかであ る。本書で明らかになったことは、韓 国においては一九七〇年代、政府主導 メカニズムによる重化学工業化の一環 として、理工系の高等教育に重点が置 かれ、技術者が養成されたこと、彼ら は重化学工業化の担い手である財閥傘 下の大企業に吸収されていったことで ある。また、フィリピンについては一 種の悪循環が観察された。フィリピン では電子産業の発展は外資系企業主体 のメカニズムに基づ いていて、研究開発 は低調である。その 結果、技術者の能力 を活かせる場が限ら れているため、技術 者の多くは海外に職 を求める。そのこと が国内の技術的発展 をいっそう停滞させている。   本 書 の 課題は もう ひと つ あ る 。 それ は産 業 発 展 の メ カ ニ ズ ム は ど の よう に 変化 し て き た の か で あ る 。 上 述 の 第 一 の 課題に お い て は 、 技 術 者は 既に構 築 さ れた産 業 発展メ カ ニ ズ ム を 前 提 と し て 受動的 に 行動す る も の と し て い る 。一 方 、 第二 の 課 題 で は 産 業 発 展 メ カ ニ ズ ム が 変わ り う る も の で あ る こ と を 明 示 的 に 想 定 し て い る 。 上 述 の よう に、 一 九 七〇 年代 の 韓 国 の 産業発 展 メ カ ニ ズ ム は 、 政府 に よ っ て 構築 さ れ た も の だ っ た 。   さらに 、 本 書 では政 府 や 企 業 ば かり でなく 、 技 術者 が能動 的 に メ カ ニ ズ ム を変 化させうると考え て い る 。 実 際 、 既に拙 著 ﹃ 台 湾 ハ イ テ ク 産 業 の 生成 と 発展 ﹄︵ 岩 波 書 店 、 二 〇〇七年 ︶ で 論 じたように 、 今日 の台 湾 経 済 を支え る ハ イ テ ク 産業 は 、 技術者た ちが 起業 し たり 、 国 家 プ ロジ ェ ク トに積 極 的に参 加した り する こ と で生 み出さ れ た 。 研 究会を 組 織 し た 出 発点 に 立 ち 返 る な ら ば、技 術 者 が 産 業 を 生 み 出 し、発 展 さ せる と い う 発 展 メ カ ニ ズム が 、 台 湾 ハ イテ ク 産 業の 他 に も あ るのか ど う か 確 かめた い と い う 動 機 が そ こ に は あ っ た。   本書では台湾ハイテク産業と同じメ カニズムは観察されなかったものの 、 関連する興味深い現象が見つかってい る。韓国では財閥系大企業が一貫して 産業発展を牽引しているが、その内部 では技術者出身の経営者のプレゼンス が増している。フィリピンではIMI という台湾のハイテク企業とよく似た 企業が現れたが、産業発展メカニズム の形成には至っていない。一方、台湾 自身ではかつてのスタートアップが巨 大化し、ハイテク産業の発展を主導す るようになったこと、それにともない 技術者の起業というメカニズムは後退 していることが明らかになった。   本書の意義は三点にまとめられる 。 第一に、各国の産業発展に対する理解 を深めることができた 。韓国 、 台湾 、 フィリピンについては既に述べたとお りである。中国についても、一九九〇 年代半ばに企業が研究開発志向に転換 したということが示されている。   第二の意義は、アジアの産業発展に 対する包括的な理解への寄与である 。 現在における韓国、台湾とフィリピン の経済発展の大きなギャップをみるな らば、技術者を産業発展のメカニズム に組み込むことの重要性が浮かび上が る。韓国と台湾の企業において技術者 は重要な役割を果たしているのに対 し、フィリピンでは技術者の多くが海 外に流出している。また中国のケース も技術者の役割の重要性を支持してい ると考えられる。一九九〇年代半ばに 中国の企業が研究開発志向に転じ、技 術者を積極的に採用するようになった ことが、今日まで続く成長を支えてい るのかもしれない。   韓国と台湾を比べると、技術者の産 業発展メカニズムへの組み込みにおけ る相違と共通点がみえてくる。韓国で は政府が企業に対して技術を高め、そ のために技術者を採用することを強く 求めた。一方、台湾では技術者の能動 的な行動が新しいメカニズムをつくっ ていった。これは韓国の経済発展が政 府主導であり、台湾が民間主導であっ たというこれまでの研究結果と合致す る。同時に韓国と台湾には共通性もあ る。それはどちらにおいても、技術者 を産業発展メカニズムの重要な要素と して包含することは、静態的な経済合 理性をはるかに超えた試みだったこと である。韓国政府は経済の不安定化を 招きながらも、強力に産業政策を推し 進め、技術者を企業システムに組み込 んだ。台湾において当初起業に挑んだ 技術者は異端児であった。   最後に第三の意義は、これまで述べ てきたように、技術者に注目するアプ ローチによってアジア諸国の産業発展 に対する理解を深められることが確認 できたことである。そして恐らくより 豊穣な収穫へとつながっていることが 期待される。本書はそこへと向かう第 一歩と考えている。 ︵さとう   ゆきひと/アジア経済研究所 新領域研究センター︶

佐藤

幸人

産業発展

技術者﹄

研究双書 No.五八九   アジア経済研究所 ■

佐藤 幸人

新刊

紹介

参照

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出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .

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1 Library, Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization (3-2-2 Wakaba Mihama-ku Chiba-shi, Chiba 261-8545). 情報管理 56(1), 043-048,