経済環境の変化と生活設計の必要性 : 生命保険販
売チャネルの多様化をふまえて
著者名(日)
神田 恵未
雑誌名
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻
7
ページ
103-111
発行年
2017-01-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1072/00004079/
はじめに 「保険は人生で二番目に高い買い物である」とよく 言われるように、日本の約9 割の世帯は何らかの保険 に加入している。いいかえれば、生活設計の段階にお いて、消費者は保険加入によって得られる経済的保障 を1 つの合理的な手段として考えていることが明らか である。保険は1 つのクラブ財1として、保険料の負 担能力を有することが保険に加入する大前提となる。 したがって、社会全体で保険の必要性を感じ、そして 多くの人が加入を検討するようになることは、生活水 準の向上にともなう中間所得層の形成を意味する。戦 後の高度経済成長期と安定成長期において保険の普及 が進み、日本は世界2 位の保険大国となった。 その流れにおいて消費者のニーズが変化し、護送船 団2行政による強力な介入の元で保険商品が画一化し、 それに対する不満が高まった。また、市場の飽和化も 顕在化し、保険会社は新たな市場開拓の必要性に直面 した。国内保険経営環境の変化にプラスして、外的圧 力も加わった。つまり、アメリカによる市場開放の要 請である。1996 年に決着した日米保険協議によって、 両国はリスク細分型保険商品の導入や料率の自由化な どに関する合意に至った。日本型金融ビッグバン3の 実現に向けた金融システム改革の中に、もちろん保険 事業も含まれ、保険自由化が進むこととなった。 保険経営環境の大きな転換期は、1990 年代後半の 保険事業を巡る規制緩和である。自由化がもたらした 影響は、競争激化による保険会社に対する経営能力の 選別である。それは消費者がより良い保険商品をより 安く買うという保険選択によって実現されたといって も過言でもない。消費者ニーズの多様化は、保険会社 にとって経営圧力であると同時に競争力を高めるチャ ンスでもあった。 今日、生命保険事業は新たな転換期を迎えている。 人口減少と市場の縮小、女性の社会進出、そして長引 く不況から脱却に向けたアベノミクスへの期待など、 生命保険を取り巻く環境は複雑さを増している。とく に保険サービスシステム全体の見直しが要請されるよ うになってきており、保険販売チャネルの多様化と協 調をめぐる諸課題が浮き彫りになっている。生命保険 商品は、無形財4であり、生産と販売が一体化となっ ているため、保険の販売における商品構造と販売経路 について、各生保会社は独自のスタイルを構築してい けるか勝負のカギとなる。このような見地から、本稿 では生命保険販売チャネルの多様化に焦点を当てるこ ととする。論文の構成は次の通りである。第1 章では、 生命保険販売チャネルが多様化してきた背景とその諸 要因を分析する。第2 章では、生命保険販売チャネル にまつわる消費者ニーズの変化について、考察する。 そして、消費者が保険販売チャネルを選択する際の諸 要素を分析する。第3 章では、生命保険販売チャネル が多様化することがどのような影響をもたらすか議論 し、消費者にとっての合理的な選択について生活設計 の必要性をふまえて研討する。 大阪樟蔭女子大学研究紀要第7 巻(2017) 研究論文
経済環境の変化と生活設計の必要性
―生命保険販売チャネルの多様化をふまえて―
学芸学部 ライフプランニング学科 神田 恵未
要旨:本稿では、保険経営をめぐる環境の諸変化と消費者ニーズの変化にともなう、生命保険販売チャネルの多様化 がもたらす影響について分析し、選択肢の広がりが個人の生活設計にとってどのような意義を持つのか、考察した。 そこで、消費者の保険選択における販売チャネルの多様化が来すメリットを示し、消費者は保険商品の比較を通じて 自身の生活設計のプロセスにてベストな保険商品を選択できるチャンスが以前に増して多くなっていることを明らか にした。また、保険会社にとって多様化している消費者の潜在ニーズを、どのようにキャッチアップするかについて 言及した。 キーワード:生命保険、消費者ニーズ、販売チャネルの多様化1. 生命保険販売チャネルの多様化とその背景 (1)保険経営環境の変化 1996 年に始まった保険自由化以降、規制緩和にと もなう保険商品の自由化・料率の自由化が進むことに つれ、保険会社間の競争が激化した。とくに生保・損 保の子会社方式による相互参入が可能となったことを 受け、価格競争が追い風とり、生命保険商品の販売チャ ネルの多様化が顕著となった。2008 年に発生したリー マン・ショックを発端とする金融危機全般の影響は、 保険会社の資産運用戦略にも大きな影響を与えた。図 表1 示しているように、収入保険料ベースでみた生命 保険市場の規模は、2005 年から 2010 年まで落ち込ん だものの、約45 兆円の市場スケールを維持している。 しかし、保有契約高でみると、1995 年をピークに減 少の一途を辿っており、2013 年は約その 57%までと なった(図表2 参照)。 (2)社会環境と消費者ニーズの変化 少子高齢化と人口減少は、生命保険事業の運営を直 撃するほどのインパクトがあり、さらに晩婚化・晩産 化や単身世帯の増加など、消費者の価値観やライフス タイルの変化も生命保険の主要マーケットをシフトさ せたり、縮小させたりする大きな要因となっている。 生活者として、消費者の生活保障手段への認知の変化 が保険ニーズの変化をもたらしている。図表3 で示し ているように、生命保険商品の主力商品構図は大きく 変わっている。たとえば、新規契約件数でみる場合、 定期付終身保険は、2000 年度の 18.5%から 2013 年に は1.6%まで激減している。それと対照的に、医療保 険は、23%から 36.3%まで上昇した。とくに医療保 険商品は、新規契約でみても保有契約件数でみても、 生命保険商品全体の約4 割を占める勢いで普及してお り、主力商品となっている。 (3)情報技術の進化 近年注目されるネット保険チャネルは、非対面販売 の可能性を高めている。また、インターネットの普及 にともない、保険比較の簡便性が向上し、消費者が能 動的に保険商品の情報収集や価格の比較をするように 図表1 生命保険市場規模 出典:生命保険協会「生命保険事業の動向」各年度版、共済協会「ファクトブック」より 作成 図表2 保有契約高(個人保険)の推移 出典:http://www.ms-ad-hd.com/basic_knowledge/02.html 図表3 生命保険の主力商品の変化 出典:http://www.ms-ad-hd.com/basic_knowledge/02.html
なってきている。ネット社会化の進展にともなう保険 選択の変化は、まず情報収集力の向上を意味している。 最近の消費者は初歩的知識を取得のうえ、対面型チャ ネルを利用する傾向が強い。さらに、インターネット の普及などで消費者の保険に対する知識が深まってい るといえる。その結果、保険リストラが顕著になって きており、所得水準が伸びないことなども背景に、生 命保険商品を積極的に見直そうという機運が以前に増 して高まっている。 2. 生命保険販売チャネルの多様化と消費者の選択 本章では、生命保険文化センターが行っている「生 活保障に関する実態調査 平成27 年度版」の調査デー タに基づきながら、消費者選択の諸要因を考察する。 生命保険販売チャネルは、大きく2 種類に分けること ができる。対面販売と非対面販売である(図表4 参照)。 対面販売は消費者に直接アプローチする方式であり、 保険商品の性質上最も大切な販売経路である。それに 営業職員と店舗型の2 種類が含まれる。そのうち、営 業職員は今でも主力販売チャネルであり、保険の普及 に貢献したのはまさに大勢の営業職員であった。とく に、営業職員は生命保険会社の職員として所属会社の 販売スタイルを維持し、保険契約の保全のほか、既存 の契約者からさらに新たな契約を結ぶ可能性を併せ持っ た競争優位にある。一方で、店舗型チャネルには、代 理店、金融機関窓口販売と保険ショップが主要な形態 となっている。近年、代理店チャネルは広がりを見せ、 とくに生命保険商品と損害保険商品を同時に取り扱う 総合代理店が注目を集めている。それと対抗して人気 を集めているのは、保険ショップである。そのほか、 保険会社の窓口やファイナンシャルプランナーの資格 を活かしたFP コンサルティングツールも新たな境地 を拓き始めている。このような対面販売は一概に捉え ることが難しく、それぞれの販売チャネルが強みを生 かせるよう、生保会社は総合的なマーケット戦略を展 開するようになってきている。 非対面販売は、通信販売・電話セールスなどの形で とにかく保険の存在を知ってもらうきっかを作る上で 有効な手段である。もう1 つのインターネットチャネ ルは、能動的な消費者に訴えやすいチャネルといえる。 なぜなら、インターネット上さまざまな情報が存在し ており、利用者はその中から自分自身に必要な情報を 効率よく入手することが難しい状況の中で、関心のな いようものをスキップする可能性が高いからである。 したがって、保険の必要性を感じた時やベストな保険 加入の方法を考える際に、保険比較情報を調べるなど、 より主体的に選ぶことや保険料の安いことを優先的に 考える消費者は、インターネットチャネルを選択する 可能性が高い。 生命保険販売チャネルの推移を見ると、法人代理店 は減少の傾向が強く、2000 年頃の約 15 万店舗から 2015 年に 6 万店舗を切っている。個人代理店は、近 年ほぼ横ばいの状態を保ち、約3.5 万強店舗である。 営業職員チャネルはピーク時の40 万人弱から約その 半分まで減少している。ただし、代理店の合併や廃統 合が行われたことで店舗数が減っても、潜在的競争力 が高いため代理店の使用人数が増加したと考えられる (図表5 参照)。 このような変化を消費者側からみると、直近の情報 入手経路の上位3 位は次のとおりである。第 1 位は、 営業職員からの情報提供であり、約49%を占めてい る。それは、なぜ営業職員チャネルは主力チャネルで あり続けているかを説明できる1 つの根拠である。だ たし、時系列からみると、営業職員からの情報取集に 頼る割合が減小してきており、まだシェアの低いが保 険代理店と保険ショップへ流れる可能性が十分考えら れる。第2 位は、主に家族や友達(2015 年は約 22%) からである。もっとも身近で信頼できる家族や友人か らの勧めは信用力がもっと高く、保険加入を決断する 上で有効な参考になるであろう。第3 位は、代理店で ある。保険ショップと保険代理店が含まれ、存在感を 増してきている(2009 年度調査時は 9.7%だったが、 2015 年に 12.9%まで上昇)。 実際に加入したチャネルの比較からわかることは、 第1 に、営業職員チャネルがもっとも多く選択されて いる。前3 回の調査時より低下しているものの、主力 チャネルの座を守っている。第2 に、代理店チャネル 図表4 生命保険販売チャネルの分類 出典:筆者作成
は多様化を見せ、総合的な競争力を高めてきた。ここ では、銀行窓口販売チャネルもカウントされているた め、営業職員チャネルとの比較がより明確となってい る。第3 に、今まであまり認識されていなかった保険 加入経路は、勤め先や労働組合である。それを通じて 加入すれば、割安な団体保険を選択することができる。 第4 に、インターネットの普及が進んでいる実社会に おいて、完結型のネット保険への認知度は依然低い。 それは、ネット保険が引き受けできる保険はシンプル で割安なメリットがある一方で、危険選択が厳しく、 リスク管理が難しいデメリットも顕著であることが要 因といえる。なお、加入したチャネルへの満足度が高 図表5 生命保険販売チャネルの推移 出典:http://www.seiho.or.jp/data/statistics/trend/pdf/28.pdf 図表6 直近加入契約(民保)の加入時の情報入手経路(複数回答)
い場合、今後も同様なチャネルを通じて加入する可能 性が高い。調査データからわかることは、消費者がもっ と重視しているのは、販売チャネルの利便性、コンサ ルティング機能とサービスである。それを現している のは、「手間がかからない、相談に迅速に対応してく れる、定期的な訪問がある、商品知識や保障見直しの 提案力がよい」を選んだ消費者がもっと多いことであ る。納得のいく形で加入したチャネルに関して、消費 図表7 直近加入契約チャネルの割合の推移(%) 図表8 直近加入契約(民保)の加入チャネルに満足している点(複数回答) 出典:図表Ⅱ 37 より筆者作成 図表9 直近加入契約(民保)の商品・サービスに対する 満足度
者の満足度が非常に高いことがわかる(図表8 と 9 を 参照)。 つまり、必要とする保険があれば加入するという、 販売チャネルのコストパフォーマンスや利便性を商品 性ほど重要視していないと解釈できる。もう1 つは、 生命保険商品は長期契約が一般的であるため、目下今 後加入するかどうかは、短期間内に考えない可能性も あるからである。今後の加入意向は、あくまで現時点 における消費者の考えであり、保険商品と販売チャネ ルの進化にともなって、今後加入の際にまた大きく変 化しているかもしれない。 最後に、「今後加入したい意向」について確認する (図表10 を参照)。営業職員チャネルが、やはり常に 1 位に位置している。しかし、その割合は 35%と実際 の加入した割合よりかなり低い。第2 位は、代理店チャ ネルである。第3 位は、郵便窓口である。かんぽ生命 の民営化5後も、郵便局で加入できる保険へのニーズ が下がらず、最大手の市場規模を維持している。一方 で、「その他、不明」の割合は、10 年前の約 17%とほ とんど変わっていない。その理由は、2 つあると推測 出来よう。1 つは、保険加入時に、チャネルの選択を 重要視していない。しかし、加入を決断した時には、 手間暇がかからないコンサルティング機能が高いチャ ネルを重視する可能性が高い。もう1 つは、現在加入 したいる保険商品や加入したチャネルへの満足度が低 い可能性がある。 以上、調査データの中からいくつか重要なポイント を分析した。そこから、明らかになったことは次の5 点である。 (1)営業職員チャネルのシェアが減少傾向にあるも のの、依然主要チャネルとして支持されている。(2) 来店型保険ショップを代表とする乗合代理店の存在感 が高まっている。(3)金融機関の窓口チャネルも定着 している(ただし、限定した分野)。(4)加入意向の あるチャネルの選択肢が広がっており、多様なチャネ ルによる保険商品の提供を求める傾向が強い。(5)能 動的な消費者が増加傾向にあり、さらに消費者のニー ズの多様化は、新たな競争次元の到来を意味している。 3. 生命保険販売チャネルの多様化とその意義 保険販売チャネルの多様化によって選択肢が広がっ ていることは、消費者からの評価も高いといえる。問 題は、それぞれのチャネルの特質を理解し、賢く利用 できるか、どうかである。本章では、先般の分析をふ 図表10 今後加入意向のあるチャネル 出典:図表Ⅱ 37 より筆者作成
まえ、保険販売をめぐる関係性を議論することとする。 一般的に、保険商品と保険販売チャネルを個別の事象 として考えられがちである。また、保険商品の類似性 が高いがゆえに保険会社がどのような経営方針に基づ きマーケティング戦略を展開しているか、比較上難し い部分も存在する。 消費者は、保険商品を選択する際に最も信頼できる 家族友人以外に、営業職員の情報提供や勧めに基づい て判断している。それに対して、保険会社は商品の提 供にとどまらず、保険サービスをいかに展開していく か問われることとなる。保険会社と消費者をつなぐの は、保険販売チャネルである。ここで、保険契約が結 ばれることになるため、保険トラブルも発生しやすい。 保険販売チャネル間の競争において、「複数の生命 保険・損害保険商品を取り扱う保険代理店に今、大き な変化が起きている。一つは来店型保険ショップに大 手生保や異業種が参入するなど新しい動きが出ている こと。もう一つは2016 年 5 月 29 日に施行される改正 保険業法への対応が迫られていること」6である。乗 合代理店は、販売プロセスにおいて、顧客へ保険商品 の比較を示すため、商品のラインナップと比較に必要 な情報の提供、比較可能な商品の概要、その中での提 案・推奨・商品の絞り込みなどの理由の説明とそれを エビデンスとして残すことも必要とされている。つま り、今度の改正保険業法では、とくに代理店販売に対 する説明義務の明確化を厳しくした。「日本経済新聞」 朝刊記事「保険ショップに転機 金融庁、顧客重視、 規制強化」(2016 年 5 月 16 日)によると、改正保険 業法は保険ショップなどの代理店に適正な商品販売を 求めたその主な規制内容は、①アンケートなどで顧客 の意向を正確に把握する、②加入を判断するために必 要な情報提供を義務づける、③顧客情報の適切な取り 扱いなど社内体制を整備すること、などが柱となる。 複数の保険会社の商品を扱う場合、顧客の意向に沿っ た商品の提案や推奨理由の明示も義務づける厳しい規 制が敷かれた。さらに15 社以上の保険商品を提供す るか、手数料や報酬などが年10 億円以上の「特定保 険募集人」に当たる代理店には手数料の開示も求める。 その際に収入源が特定の保険会社に偏っていれば、中 立性に疑問があると見なされる可能性がある。透明性 の向上を求める規制は、手数料の引き下げ圧力が強ま る効果も期待できる。 保険代理店チャネルに異業種の参入も活発化してお り、まさに保険流通革命が起きている。このような変 化を消費者はどう捉えるか。生活設計の一環において、 消費者は各自のライフステージにおけるライフプラン を綿密に立てることが理想的である。しかし、常に家 計の収支のバランス、家族構成員に必要かつ十分な生 活資金・教育資金そして貯金など資産形成を総合的に 考えることが個人にとってそれなりの学習能力と先見 の目があることを求めることとなる。そこで専門家の 意見に重要な参加価値がある。保険商品に限ってみる と、生活設計の中でどれほど保険が必要であるかを客 観に的に捉え、そして加入する保険商品の給付内容や 免責事項等をきちんと理解することが理想である。生 命保険チャネルの多様化は、消費者に多様な選択を提 供できる上、比較研究を通じて、自分にとってベスト な保険商品を販売・購入できるチャンスがより多くなっ ていることを意味している。一方で、保険販売チャネ ルの多様化は、保険会社にとって多様化しているニー ズをキャッチアップするために必要であり、保険サー ビスの中心に位置づけられる。 おわりに 本稿では、保険サービスシステムの一貫として、生 命保険販売チャネルの多様化に着目した分析を行った。 チャネルの多様化は消費者の保険選択に大きく寄与す るが、保険会社はチャネル間の調整をする必要がある。 そのためにも、顧客との共創を主軸におきながら、充 実した多様なツールで販売チャネルの進化を追求して 行かなければならない。一方で、消費者自身は積極的 な保険比較をとおして、自らの生活設計に合ったベス トな保険商品を選択できるよう金融保険リテラシー能 力を高めていけるよう努力をしていくことが肝心であ る。 1 クラブ財とは、準公共財の一種で、一定の条件 (料金の支払など)で享受できる財である。競合 性があり、フリーライダーの発生を防止できる。 たとえば、有料の駐車場、会員制の施設など。 出典:筆者成作
2 護送船団方式とは、戦後の大蔵省の金融行政を象 徴する言葉である。最も速度の遅い船舶に合わせ て航行するところから、特定の産業において最も 体力のない企業が落伍しないよう、監督官庁がそ の産業全体を管理・指導しながら収益・競争力を 確保すること。金融秩序の安定を図るために行わ れた金融・保険行政を指していう。その語源につ いて、飯田(2005)を参照。 3 金融ビッグバンとは、金融市場の規制を緩和・撤 廃して、金融市場の活性化や国際化をはかろうと する政策のことである。その発端は、1986 年の 英国における証券市場改革である。1996 年に橋 本政権が提唱した「金融システム改革のプラン」 に盛り込まれた政策のことを「日本版ビッグバン」 という。1998 年には金融システム改革法によっ て関係法律を整備し、改革が進められた。金融ビッ グバン構想は、銀行・証券・保険の3 分野を対象 とすることが特徴で、Free(市場原理が働く自 由な市場)、Fair(公正な市場)、Global(国際 的で市場を先取りする市場)を3 原則とした。 4 保険商品は、保険契約そしてそれを可能にする一 連のサービスを通じて保険契約者となる消費者に 販売される。つまり、商品として保険は目に見え ないものであり、保険会社が一方的に保険約款を 作成し、その内容に納得した消費者が保険取引に 署名することで契約が成立する。保険会社は保険 金の支払い義務、保険契約者は保険料の支払いと 告知義務を課される。 5 かんぽ生命の前身は、1916 年に逓信省において、 創業された簡易生命保険事業創業であった。2006 年9 月に郵政民営化法に基づき、株式会社かんぽ が設立された。生命保険業の開始に伴い、2007 年に株式会社かんぽ生命保険に商号変更をし、管 理機構の委託を受け、簡易生命保険管理業務を開 始した。郵政民営化の変遷について、磯邊(2016) pp. 20 34 を参照。 6 『週間東洋経済』(2015/12/19 号)「異業種が続々 参入 生保版「流通革命」がやってくる!」pp. 82 85 を参照。それによると、改正された保険業 法の特徴は、保険の募集(販売)について新しい ルールを創設したことである。そのルールとは、 対象となる保険募集人(代理店)の規模や特性に 応じて異なるが、保険募集に当たってアンケート などで事前に顧客の意向を把握したうえで加入判 断に必要な情報の提供を法律上の義務として位置 づけたこと。また、複数の保険会社商品を比較販 売する乗合代理店については、顧客意向に沿った 商品の提案、比較推奨商品の提案理由、当初意向 と最終的な選択商品の確認やそのプロセスの記録・ 保存が求められるなど、より厳しいルールが適用 されている。代理店事業経営に対しても、社内規 定の制定や諸規則の整備、担当者(責任者)の設 置、募集人の教育・管理・指導、および前記の販 売ルールの遵守・チェック体制などについての体 制を整備することも義務づけられるなど、厳しい 義務と責任が課された。 参考文献 飯田隆(2005)「護送船団方式」についての一考察」 『経済志林』72 巻第 4 号(大谷禎之介教授退任記 念論文集) 石坂元一(2015)「生命保険の販売チャンネル」『生活 保障システムのパラダイムシフトと生命保険産業』 生命保険文化センター 磯邊良太(2016)「郵政民営化の歴史と課題」『金融』 828 号 鹿島純一(2006)「販売チャネル改革と保険経営」堀 田一吉・岡村国和・石田成則編『保険進化と保険 事業』慶應義塾大学出版会 田中隆(2009)「生命保険販売における営業職員に関 する一考察」『生命保険論集』169 号 堀田一吉(2003)『保険理論と保険政策 原理と機能』 東洋経済新報社 米山高生(1993)「戦後生命保険産業における販売チャ ネルの特殊性」『保険学雑誌』第540 号 米山高生(1997)『戦後生命保険システムの変革』同 文舘