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市町村における児童虐待相談の実態 : 市町村における被虐待児事例のレトロスペクティブ調査の結果から

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Academic year: 2021

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市町村における児童虐待 相談 の実態

一市 町村 に おけ る被虐 待見 事 例の レト ロ スペ クテ ィブ 調 査の 結果 か らー

大岡 由佳・中村 乂一・杉本  正

1 は じ め に 日本に おける虐待 の認識と対応 は、 H 2年に 日本 で最初の民 間ネ ット ワー クであ る児童虐待 防止協会 が大 阪に誕生 したこ とが始まりで ある。 その後、H 3年 には東京 でこど もの虐待防止 センタ ーが設 立さ れ、民 間の ネットワ ークが全国的 な広 がりを みせてき た。一 方、児 童虐待 の 相談件 数は、 全 国児童 相談所 で対応 した児 童虐 待対応 件数 がH 2年時点 で1,101件であ った も のが、H20 年 度におい ては42,662件と、年 々増加し続 けてきた。 このよ うに児童虐待 の深刻さ が世間 に知 られるよ うになる中、H12 年 に「 児童虐待 の防止等 に関する 法律(通称、児童 虐待防止 法)」が施行さ れ、 その後上記法 律はH16 年、H19 年、H20 年 と見直 しが行 われてきた。 それらの法律 改正で目 指されてき たものと は、 他で もな い、 より 市民 に近い ところで虐 待を予防し、 そして対 応してい く体制作り にあった。 具体的 には、 住民 に身 近な相談 機関 とし て市町村 が児童虐待 の通告先 に加 わるこ とになり、 市町村が 相談 の一義 的な窓口 に位置づけ られた。 また、 虐待の予 防早期 発見 に関し ても市町村 に児童家 庭相談機能 が付与さ れた。 児童虐 待の対象 となる者 が福祉保健 サービスを活 用し、 含 め細やかな支 援を市町 村から受 けるこ とができるよ うに位置づ けら れた のである。更 に、 市町 村におい て児 童虐待事 例を主体 に検討す ることがで きるよう に要保護児 童対 策地域 協議会の設 置が努力 義務 とさ れた。 その結果、H13 年 度には地 域協議 会又 はネ ットワ ークの設 置率 は15.6 %だ ったが、H20 年 度には94.1% とな った 几 そし て、 法 的措置 の権限を もつ児 童相談所 は、 市町村の後方 支援を 行う機関 として、 より 要保護性 の高い困難 事例の対 応を 行う機関 に位置づ けら れた。 具体的 には、 緊急性 の伴う児童 虐待が確認 された時 の一 時保 護や、 施設入 所・里親 等 の支援 が主 な ものになる。勿論、 児童相 談所が主 体とな って 在宅 支援 も行う場合 はあるが、 多 くの場合、 市町村 に在宅 支援 が委 ねら れたのであ る。 一 方、 日本の児童虐 待の調査 研究の多 くは、 児童 相談所を対象 に行 われてきた。近 年にな っ て児童養 護施設や一時 保護所 の調 査 も出て きてい るが、 残念な がら、市町 村におけ る児童虐待 について の実 態や ケアを絡め た調査研究 はほとん ど存在しない。 しかし、 市民の身近 で起こり 続ける児 童虐待と その対応機関 としての市 町村の位 置づけを考え た時、こ の市町村 における児 −1 −

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市町村における児童虐待相談の実態 童 虐 待 支 援 を ど の よ う に 考 え て い く か が 課 題 に な っ て き て い る。 な お 、 今 回 取 り 上 げ る A 市 にっ い て で あ る が 、 A 市 は、 大 都 市 の ベ ッド タ ウ ン と し て 、 高 度 経 済 成 長 時 代 に 総 合 家 電 メ ー カ ー 等 の 拠 点 都 市 と し て 栄 え た 街 で あ っ た 。 し か し 現 在 は 徐 々 に 人 口 が 減 少 し て き て い る。 A 市 の児 童 虐 待 対 応 に つ い て は、 児 童 虐 待 防 止 法 が 出 来 る以 前 の H 9年 よ り、 4機 関 一 市 町 村 窓 口 ( 児 童 課 )、 児 童 相 談 所 ( 子 ど も家 庭 セ ン タ ー)、 保 健 セ ン タ ー、 保 健 所− を 中 心 に 、 児 童 虐 待 問 題 連 絡 会 議 を 設 置 し て 、 児 童 虐 待 に 対 す る取 り 組 みを 進 め て き た。 H11 年 度 に は 児 童 虐 待 の ハ イ リ ス ク家 庭 の 母 親 の グ ル ー プ を 立 ち 上 げ 、 月 一 回 の頻 度 で 市 民 ボ ラ ン テ ィ ア の 協 力 も 得 て 行 っ て き た 。( 残 念 な こ と に 、 予 算 の 関 係 で 昨 年 度 に 中 止 さ れ て し ま っ た。) し か し A 市 に お い て も 、 全 国 児 童 相 談 所 の 児 童 虐 待 相 談 件 数 の 増 加 傾 向 と 同 じ よ う に、 相 談 件 数 が 増 加 し 続 け る 状 況 に お か れて い る 。 今 、 市 町村 に お け る児 童 虐 待 の 予 防 や ヶ ア の 観 点 か ら み た 新 た な 取 り 組 みを 行 っ て い く た め に も、 実 態 の 現 状 分 析 が 欠 か せ な い。 そ こ で今 回 は、 A 市 に お け る 虐 待 事 情 の 実 態 か ら、 市 町 村 の 児 童 虐 待 支 援 の 方 向 性を 模 索 す る こ と と し た。

2。 一 市 町村 の児 童虐 待 相談 の実 態調 査 につ い て

1) 研究の対象 調査におい ては、A市 の20年度 の相談台 帳記 録に登 載されてい るH14 年 から20年 まで の事例 を対 象とし た。 2) 研究の方 法 A 市の 児童虐待 事例139世帯 を 抽出し、 そ れらの個別 台帳 から情 報を 読 みとる レトロ スペ ク ティブ調査 とした。 抽出した情報 は、 性別、年 齢、き ょうだい、両 親の有無、 虐待種別、 虐待 者、 虐待 の重 症 度、主 な 虐 待対 応機 関、 把 握経 路な どで あ った。 統 計的 検定 に はEXCELと SPSS17.0 for windows を使 用し た。 な お、 倫理的 配慮 として、 A市 役所 には研究 協力 契約 を 文 書で取り交 わした上、 日本社会 福祉学会 研究倫理指 針を 参考 に量 的研究 のデータ につ いては 個人 が特定 されないよ うに数値化 して管理 保管 し、事 例の詳細 につ いては、 対象者のプ ライバ シー保護 に最 新の注意を 払い、同 意を 得た事 例につい ての み詳 細な 記載 がな されてい る台 帳か ら情報の 抽出を 行った。 3) 結果 <被虐待児 の相談件数の動 向> A 市にお ける被虐待児 の受 付人数 の動向 につ いては、H20 年度 の台帳登録 者でH14 年 が13名 (6.1%) 、15 年が 7名(3.3%) 、16年 が30名(14.2%) 、17年 が12名(5.7%) 、18年 が17名(8.0 −2 −

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市 町村 に お け る児 童 虐 待 相談 の 実 態 %)、19年 が65名(30.7%)、20年 が68名(31.7%) 、 計212名であ った <表1. >。 なお、 全国児 童相談所 の相談受 付件数(H20 ) と比較す ると、児 童相談所 が増加し続 ける傾向 にあ るのに対 して、市 町村におい ては、H16 、H19 、H20 の児童 虐待防止法 改正 時に急 激な伸 び率 となって いた。 <被虐待児 の属性 > 対象児 の 性別 は、 男 児116名(54.7%) 、 女 児96名(45.3%) であ っ た。 0歳−3歳 は31名 (14.6%) 、3 歳 一就学 前は48名(22.6%) 、 小学生 は81名(38.2%) 、 中学生 は32名(15.1%) 、 高校生・ その 他は20名(9.4%) であ った<図2. >。 全国児 童相談 所の 相談 件数 (H19 ) と比 較する と、 児童 相談所に おいて も小 学生 が38.1% と被虐待児 として挙 がるこ とが最 も多 く、次 に多 い のが3歳一就学前 までで23.9% とな っていた。 A市 の被虐待児 の属性 は、 全国 水準と ほ ぼ同じ傾向 にあっ た。 0   0   0   0   0   0   0   0   0 8   7   6   5   4   3   2   1 表 1.受 付件数 の動 向 韶

㎜  ■

30       

1

■    17  1

こ 

7 

■ 

12  

■ I

■  ㎜  ■ 

■  ■  ■

H14   H15   H16   H17   H18   H19   H20 図 2.相談 時の 被虐 待児 の分 類 3歳 一 就学 前 48 <虐待分類 > 虐待 分類 の内訳 は、 身 体的虐 待62名(29.2%) 、 心理 的虐 待42名(19.8%) 、 ネグレ クト101 名(47.6%) 、 性的虐待 7名(3.3%) とな っていた <図3. >。 虐待 の重症度 に関して は、 軽度 165名(76.4%) 、 中度41名(20.8%) 、 重 度3名(1.4%) 、 最重 度3名(1.496) とな ってい た。 なお、虐待 分類の定義 につい ては、 児童虐 待の防止等 に関す る法律第 2条 に準ず るこ とにし た <表2. >。 全国児 童相談所 の相談件数(H19 ) で は、身 体的 虐待が最 も多 く40%を 占め、次い でネ グレ クト38%、心 理的虐待40%、性 的虐待 3% とな って おり、全国 と比較す るとA市 においては ネ グレ クト が最 も多い 傾向にあ るこ とが確認 された。 また、重症 度におい ては、 児童 相談所につ いてのデ ータが見当 たらない ので一 概 に比 較できな いが、市町 村におい ては 4分 の3が軽度 の − 3−

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市 町 村 に おけ る 児 童 虐 待相 談 の 実態 表 2. 虐待 の定 義 (簀)身 体 的 虐 待 … 子 ど も の 身 体 に 外 傷 が 生 じ 、 ま た は 生 じ る 恐 れ の あ る 暴 力 を 加 え る こ と。 (萋)心 理 的 虐 待 … 子 ど も に 対 す る 著 し い 暴 言 ま た は 著 し く 拒 絶 的 な 対 応 、 子 ど も が 同 居 す る 家 族 に お け る 配 偶 者 へ の 暴 力 、 そ の 他 子 ど も に 著 し い 心 理 的 外 傷 を 与 え る こ と。 (券)ネ グ レ ク ト … 子 ど も の 心 身 の 正 常 な 発 達 を 妨 げ る よ う な 著 し い 減 食 、 ま た は 長 時 間 の 放 置 。 そ の 他 保 護 者 と し て の 監 護 を 著 し く 怠 る こ と 。 保 護 者 以 外 の 同 居 人 に より 虐 待 行 為 と 同 様の 行 為 を 保 護 者 が 放 置 す るこ と。 (蚕)性 的 虐 待 … 子 ど も に わ い せ つ な 行 為 を す る こ と、 ま た は 子 ど も に わ い せつ な 行 為 を さ せ る こ と 。 図 3. 虐待 分類 の内訳 性 的虐 待 3% 1 心 理的 虐待 20% ネ グレ クト 48% 身 体的 虐待 29% ケ ー スと な っ て い た 。 児 童 相 談 所 が 重 度 ・ 最重 度 のケ ー ス を 扱 う 機 関 と 位 置 づ け ら れて い る こ とを 勘 案 す る と、 市 町 村 事 例 の 特 徴 と し て 軽 度 に 分 類 さ れ る ケ ー ス が多 い こ と が 確 認 さ れ た。 <虐 待に絡む家 庭環境 > 虐待家族 におけ る子ど もの数は本人 を含め て2.67人 となって いた。 また、 虐待 が起こ ってい る家 庭 には1.97人 の被 虐待児数 が存在 してい た。 本邦 にお ける合計 特殊出生 率(H20) が1.37 大 であるこ とを踏まえ ると、 多子 の傾向にあ ることが確認 さ れた。 また、一家 庭に約 2人 の被 虐待 児がい ることが明 らかになっ た<表3. >。 また、 父親不 在 のケ ースが105名(49.5%) で あっ た。 被 虐待 児がい る家 庭 には、 ほ とんど の事 例で 実 母あ る いは 継 母 がい るこ と が確 認 さ れた。 虐待 の主 因者 につ い て は、 両 親33名 (15.6%) 、父 親26名(12.3%) 、 母親129名(59.9%) 、 継父 6名(2.8%)、 その他(兄 含 む)18 名(9.4%) となっ ていた。 全国児 童相談所 の相談 件数(H19 ) では、実 母 が62.4% 、 実父 が2 2.6% とな っており、 市 町村 におい ては父 親に よる虐待 事例 数が若干 少な か った。 しかし、 本 調 査におい て父 親不在 の家 庭が多 いことを 鑑みると、 虐待 の主 因者 の父 母 の割合として は、 全 国と同様の傾 向にある といえるであろ う。 また、一人 っ子 のケ ースは44名(20.8%) 、2 人 き ょうだい のケー スは84名(39.6%) 、3 人 以上 のき ょうだい がいるケ ースが84名 (39.6%) あ った。 被虐 待児の立 場か らみたとき、 姉・ 兄 がいるケ ースは115名(54.2%) 、 妹・弟 がい るケ ースは91名(42.9%) とな っていた。 212名 の事 例の うち64名(30.2%) が生活 保護受 給中 のケ ース となっ てい た。 児 童相談所 の 全 体の統計で も 2割弱 が生 活保護受 給中であ るとの報 告もあり、貧 困家庭 に虐待が起こ ってい る点 は同様 の傾向 と考え ら れた。 な お、 A 市 におい ては、 そ れら の生活 保護世 帯 のう ち62名 (96.9%) が母子 世帯 とな っていた。 − 4−

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市 町村 に お け る児 童 虐 待 相談 の 実 態 表 3. 被虐待 児を 取 り巻く 家庭 状況 被虐 待児  総 数 被虐 待児  世帯 総 数 一 世帯 の被虐 待児 数 被虐 待児 の父 母 被虐 待児 世帯の子 ども数 (被虐 待 児を 含む) 被 虐 待 児 のき ょ うだ い 生 活 保 護 受 給 の 有 無 平 均 父 無 し 実 父  有り 継 父等  有 り 母 無 し 実 母  有り 継 母等  有 り 212 事 例 139世帯 105事例(ム 笑 継父 80 事 例(37.7 %) 27 事 例(12.7%) 3 事 例( 1.4%) 203 事 例(95.7 %) 6 事 例(2.8 %) 一 人 っ子       44 事例(20.8%) 2 人 きょ うだい    84 事例(39.6%) 3 人 吉 ようだい    43 事例(20.3%) 4 人以 上のきょうだい 41 事例(19.3%) 平 均     2.67人 兄 姉  有り     115 事例(54.2%) 眛 弟  有り      91 事例(42.9%) 受 給 中        64 事例(30.2%) 受 給 してい ない   148 事例(69.8%) 図 4. 虐待 の主 因者 < 相 談 の把 握 経 路 > 相 談 ・ 通 報 に 至 る 経 路 で あ る が 、 市 町 村 に お い て は < 表4. > に あ る よ う に、 保 健 セ ン タ ー か ら の ケ ー ス が36 名 (17.0 % ) と も っ と も多 か っ た 。 同 時 に、 市 町 村 の 児 童 虐 待 の窓 口以 外 の 他 部 署 か ら 相 談 を 受 け る ケ ー ス も36 名 (17.0 % ) と多 か っ た。 児 童 相 談 所 の 相談 件 数(H19) と比 較 す る と、 児 童 相 談 所 事 例 で は身 内 か ら の相 談 ・ 通報 が多 く、 市 町 村 事 例 で は保 健 セ ン タ ー に お け る 保 健 師 等 の 専 門 職 が 子 ど もの 検 診 や育 児 相 談 等 で 児 童 虐 待 の 疑 い を 発 見 す る ケ ー ス が 多 か った 。 ま た 、 相 談 を 受 け た 後 の 対 応 機 関 に つ い て は 、 < 図5. > の通 り で あ る 。 市 町 村 の 児 童 虐 待 の 相 談 窓 口 と し て の 児 童 課 が 、 事 例 の 半 数102 名(48.1%) に 対 応 し て い た 。 あ と の 半 数 は 他 表 4 . 相 談 の 把 握 経 路

膕 人 児 童 委 員 口 警 察 子 家 C 八 見 相 心ノ 役 所 学 校

奏1

病 院 本 人 その 他 市 町 村 13% レ 7% 15 % 11 % 6% 17 %n % 5% 4% 1 % -児 相

15 % 7 % - 15 % 15 % 18 % 4% 1 % 22 % − 5− 図 5. 主 な対 応機関 保健所 4% 保健C 15% 子 家C 33%

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市町村における児童虐待相談の実態 機 関が主 となって対 応にあ たってい た。 児童 相談所( 子家 C) が33.5% 、 保健 センタ ー( 保健 C) が14.6% とな っていた。 実際、 例えばH20 年度 において はA市で は68件 の相談件数 があ っ たが、そ のうち19人(27.9%) が児童 相談所( 子家 C) を経て一 時保護 所・児 童養護施設 等の 施設 利用 に至 ってい た。 すな わち、 児童相談所 (子家 C) が主 に対 応す る場 合という のは施設 利用 にな っている場合を 指してい た。 地域 で在宅 援助を するとい う意味で は、 市町村 の児童課 が大 きな役 割を 担ってい ることが確認 され た。 4) まとめ 児 童虐待 の対象者(被 虐待児) の属性 とい う観点か ら述べる と、 全国児童 相談所の実 態と類 似点 が見受 けられた。例 えば、被 虐待児の年 齢や学年、 虐待の主 因者な どについては全 国児童 相談 所の ケースと同様 の傾向があ った。ま た、 被虐待児 世帯の数 割が生活保 護世帯であ ること や、 被虐待児 がいる家庭 では一般 世帯と比 較して多子 の傾向にあ ること等、 ある一定 の同傾向 が見出さ れた。 こ れより、 今回の 市町村相談 の児童虐待 の実態 が、 全国レベ ルの児童虐 待の傾 向 の一 部 と考 えて差し支え ないと判断 でき た。 しかし、市 町村相談 の調査を行 うことに よって、下記 の市町村 に特徴的な 児童虐待相談 の実 態を 把握す ることができ た。 冫  市町村 相談におい ては、法律改 正に伴い、 通報(相談) 件数 が顕 著に増加 していた。 冫  市町村 相談におい ては、相談 把握経 路は保健セ ンターを通 じての ものが多 く、身 内か ら の相談 が少なか った。 冫  市町村 相談におい ては、児童 虐待分類 として、ネ グレクトかつ軽 症事例 が多 かった。 冫  在宅支 援を行う ケースは、 児童相談所 ではなく 市町村の相談 窓口 がその対応 に当 たる場 合 がほとんどであ った。 5) 考 察 こ こ で 、 市 町 村 に お け る 児 童 虐 待 相 談 を ど の よ う に 捉え 、 そ し て 今 後 ど の よ う に 推 し 進 め て い く べ き か に つ い て 検 討 し て みた い 。 <法律改正 が意味する もの> 今 回の市町村調査 では、H16, H19, H20 に顕著 にヶ −ス数が増加 していたが わけであ るが、 はじめに記載 したよう に、 そ れぞれの年は ちょうど児 童虐待防止 法の見直 しの年にあ たってい た。 特に前年 度と比 べて件数が急 激に増大 したH19 に は、 市町村家 庭児童相 談援助指 針の改定 (厚生 労働省児 童家 庭局長 通知) が行 われる年 でもあ った。 その中 で、 ○ 市町村 におい ても安 全確 認を行 うこと、○市 町村か ら児童相談所 に対して立 ち入り調 査や一 時保 護の実施 に関し通 知 できる仕組 み、 ○要保 護児童対策地 域協 議会の調整機 関が虐待事 例の進行 管理台帳を 作成し − 6−

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市町村における児童虐待 相談の実態 定 期 的 に チ ェ ッ クす る、 な ど の強 化 が 図 ら れ て い た 。 こ のよ う な 改 正 を 機 に 市 町 村 の 相 談 ( 通 報 ) 件 数 が 増 加 す る と い う こ と は 、 児 童 虐 待 に つ い て 法 律 改 正 を 機 に マ ス メ デ ィ ア が 取 り 上 げ た り 、 啓 発 活 動 が 活 発 化 し た こ と の 成 果 と い え る だ ろ う 。 し か も 注 目 す べ き こ と は、 こ の 法 律 改 正 によ っ て 市 町 村 の 相 談 件 数 の みが 急 増 し た と い う こ と で あ る ( 児 童 相 談 所 は 急 激 な 件 数 増 加 が 見 ら れな い )。 こ れ は 、 市民 に よ り 近 い 市 町 村 が 虐 待 相 談 の 窓 口 とし て 市 民 に受 け入 れ ら れ た こ と を 意 味 し て い る の か もし れ な い。 市 町 村 が 窓 口 に な る と い う こ と に つ い て は、 一 般 市民 に と っ て身 近 で あ る ば か り で な く 、 日 常 様 々 な 福 祉 的 ニ ー ズ の 相 談 に乗 っ て い る 保 育 ・ 保 健・ 医 療 等 の地 域 機 関 の 相 談 員 に と っ て も 相談 し や す い 環 境 に な った こ とを 指 して い る。 実 際、 匚<表4. > 相 談 の 把 握 経 路 」 の 結 果 にあ っ た よ う に、 市 町 村 ( 児 童 課 ) が 窓 口 に な る こ と で 、 保 健 セ ン タ ー や 保 育 所 か ら の 相 談 が 全 国 児 童 相 談 所 の 相 談 件 数 と 比 較 し た 際 に多 くな っ て い る。 例 え ば 保 健 セ ン タ ー等 に よ る検 診 や 育 児 相 談 で 浮 か び 上 が っ て き た 虐 待 ” を 、 地 域 機 関 の 保 健 師 が 市 町 村 の 窓 口( 児 童 課 ) に つ な げ た も のと 考え ら れ る。 た だ 、 相談 の 把 握 経 路 と し て 身 内 か ら の 相 談 件 数 が 全 国 児 童 相談 所 の 相談 件 数 と比 べ て 少 な か っ た 。 こ れ が 意 味 す る と こ ろ は、 法 律 改 正 に よ っ て 市 町 村 が 第一 義 的 な 窓 口 と 認 識 さ れ た も の の 、 虐 待 を し て し ま う 当 人 や二 次 的 な 当 事 者 とな る 親 族 が 市 町 村 窓 口 に 相 談 す る に は、 窓 口 の プ ラ イ バ シ ー 等 へ の 配 慮 が な さ れ て い な い と い う こ と の 反 映 で あ る か もし れ な い。 そ もそ も市 町村 の 窓 口 と な れば 、 どこ で誰 が 見 て い る か わ か ら な い 状 況 で あ る。 虐待 と い う、 デ リ ケ ート で 、 か つ 、 そ の 後 の支 援 が な い の で あ れ ば 単 な る レ ッ テ ル 貼 り に な り か ね な い 深 刻 な 問 題 は 、 よ り 防 音 設 備 が 整 っ た 相 談 室で 応 対 さ れ て し か る べ き で あ ろ う。 し か し な が ら 市 町 村 相 談 窓 口 の多 く が、 事 務 所 の一 角 を パ ー テ ー シ ョ ン で 囲 っ た だ け のお 粗末 な ス ペ ー ス で あ っ た り す る の が 実 情 な の で あ る 。 こ のよ う に 考 え る と、 法 律 改 正 に よ って 市民 が 喚 起 さ れ 、 今 ま で 潜 在 化 し て き た で あ ろ う 多 く の 虐 待 ヶ − ス が 市民 に よ っ て 早 期 に発 見 さ れ る よ う に な っ た点 で は 意 味 深 い 。 し か し な が ら、 市民 に 身 近 な 市 町 村 窓 口 は 、 虐 待 当 事 者 や 親 族 に と っ て は 安 心 し て 相 談 で き な い 状 況 に な っ て し ま っ て い る 可 能 性 が あ る 。 今 後 は、 児 童 虐 待 対 応 に あ た って 環 境 設 備 等 の 拡 充 等 ハ ー ド 面 へ の 財 政 的 援 助 な ど も考 慮 し た 体 制 を 目 指 し てい く 必 要 か お る だ ろ う 。 <市町村 の相談体制 > 市町村 へ児 童虐待 の相談に至 った後 に、 果たして充 実した被 虐待児家 庭の支援 に結び付いて いるか否 かという検証を 行うこ とも欠かせない 視点であ る。 例え ば、A 市 において は、 <図6. >にあ るよ うな児童 虐待防 止ネ ット ワー クシス テムを早 期から稼 働させ虐待対 応に当 たってい る。 ただ残念 ながら、市 町村の児童 虐待対応 の在り方 は 各地 方自治 体の財政事 情や人事体 制に委 ねられてい る現状にあ る。 人的 に、 制度的 に十分な支 − 7−

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市町村における児童虐待相談の実態 図 6.A市 児童 虐待 防 止ネ ット ワー ク システ ム 援 体 制 が 取 ら れ て い る か と い う と、 A 市 も含 め 十 分 に 支 援 す る 予 算 が 配 当 さ れ て い る訳 で は な い 。 そ し て 、 そ れ ら の支 援 の 充 実 ・ 拡 充 は 、 地 域 に よ って 格 差 が あ る と 考 え ら れ て い る 。 例 え ば 、 A 市 を 管 轄 す る 都 道 府 県 で は 、H16 年 改 正 児 童 福 祉 法 を 受 け 、 国 版 市 町 村 児 童 家 庭 相 談 援 助 指 針 の 中 か ら必 要 な 事 項 を 抽 出 す る と と もに 、 児 童 相 談 所 に お け る 実 際 の 相 談 援 助 の ノ ウ ハ ウ を 詳 細 に 記 載 し 、 市 町 村 の 相 談 担 当 者 が 日 常 的 に 参 考 に し や す い 内 容 で 編 集 し た 市 町 村 相 談 担 当 者 の た め のガ イ ド ラ イ ンを 発 行 し た。 内 容 は、 市 町 村 に お け る児 童 家 庭 相 談 体 制 や 組 織 の あ り 方 、 虐 待 通 告 ・ 相 談 へ の 具 体 的 な 対 応 方 法 、 市 町 村 と子 ど も家 庭 セ ン タ ー( 児 童 相 談 所 ) の 連 携 方 法 、 要 保 護 児 童 対 策 地 域 協 議 会 の 設 置 ・ 運 営 方 法 、 な ど を 含 む もの とな っ て い た。 ま た、 市 町 村 に お け る相 談 体 制 確 立 を 支 援 す る た め に 市 町 村 窓 口 に 子 ど も 家 庭 セ ン タ ー ( 児 童 相 談 所 ) の ケ ー ス ワ ー カ ーを 2年 間 派 遣 す る とい う 事 業 ( 残 念 な が らH21 年 度 で 終 了 ) につ い て の 経 費 の一 部 助 成 を 先 駆 的 に 行 って き た 几 そ の よ う な 意 味 で は、 全 国 的 に も A 市 を 管 轄 す る 都 道 府県 の 市 町 村 体 制 支 援 の 取 り 組 み は 評 価 で き よ う。 し か し な が ら、 市 町 村 で 児 童 虐 待 相 談 を 推 し 進 め て い く に あ た っ て、 国 版 市 町 村 児 童 家 庭 相 談 援 助 指 針 で 推 奨 さ れて い る 児 童 福 祉 司 任 用 資 格 を 有 し て い る 者 は A 市 も含 め 市 町 村 相 談 窓 口 に ほ と ん ど い な い の が 実 情 で あ る 。 実 際H19 時 点 で 、 全 国 の市 町 村 相 談 担 当 者 は12.3% の み が 児 童 福 祉 司 ( 同 等 の 資 格 を 有 す る 者を 含 む ) と な っ て い る の で あ る。 児 童 福 祉 司 以 外 の 専 門 職 で多 い の は、 保 健 師 等20.7% 、 保 育 ±10.6% と な っ て お り 、 福 祉 援 助 職 に至 っ て は、 社 会 福 祉 ±3.8% 、 精 神 保 健 福 祉 ±0.8% と 非 常 に 少 な い 几 一 方 、 担 当 職 員 の 3 割 は 一 般 事 務 職 員 な の であ る。 も ち ろ ん専 門 性 の 有 無 だ け で 力 量 を 測 れ る も の で は な い 。 し か し、 問 題 で あ る の は 市 町 村 の 担 当 職 員 は、 専 門 職 を 含 め 数 年 で 人 事 異 動 と な っ て し ま う こ と で あ る。 結 局 の と こ ろ 市 町 村 に お け る “児 童 ” や “虐 待 ” の 専 門 性 は 育 っ て い か な い 状 況 に直 面 し てい る の で あ る。 志 村4)に よ る と 、 今 、 市 町 村 に も( と く に 発 達 心 理 学 や 精 神 医 学 的 な ) 専 門 性 が 不 可 欠 で あ −8 −

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市町村における児童虐待相談の実態 るという。 なぜな らば、 児童虐待 事例 が深 刻な もの であれば児 童相談所 が有 してい る措置権 に よって家 庭分離を 行うが、こ の分離を児童 相談所 に適切・柔軟 に行って もらうに は、 在宅 支援 を する中 でその分離を 必要とす る理由を明 らかにし、 児童相談所 の児童 福祉司と市町 村の担当 職員 が対等 に協議 していく必要 に迫ら れて いるか らである。今、 児童相談所 の児童虐 待対応職 員 が煩 雑な対 応で業 務量 過多 に陥 り、 バ ー ンアウトし ていく 傾向 が高 いと言 わ れている5ふ。 児 童相談所 が相談を受 ける手前 で市町村窓 口が如何 にヶ − スを抱 えるこ とが出来 るかが問 われ ているこ とに もな るだろう。 そしてそこ に、 市町村 の相談窓口 において 継続的に関 わり続け る ことので きる専門性を 有した職員 配置を推 し進めてい く根拠かお るように思 われる。 < 見 え て き た 虐 待 の背 景 > 今 回 の 調 査 にお い て は 、 生 活 保 護受 給 世 帯 が30.2% で あ っ た。 こ れ は 全 国 児 童 相 談 所 の 傾 向 よ り も若 干 高 い が 、 ど ち ら に せ よ 児 童 虐 待 家 庭 に 低 所 得 者 層 が多 い と い う こ と を 指 し て い る 。 実 際 、 本 邦 で 起 こ っ た 児 童 虐 待 の 末 に死 亡 し て し ま っ た53 例 の 検 証 結 果 報 告7) で も、 生 活 保 護 世 帯 や 市 町 村 民 税 非 課 税 世 帯 が43 % を 占 め て い た 。 如 何 に 児 童 虐 待 が 貧 困家 庭 で 発 生 し て し ま う か と い う こ と を 物 語 っ て い る と 言 わざ るを え な い 。 先 日 、 厚 生 労 働 省 の 調 査 で 、 日 本 の ひ と り 親 世 帯 の 相 対 的 貧 困 率 が54.3% と 、OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構) の主 要30 力 国 の 中 で も最 悪 で あ る と の 結 果 が 報道8) さ れ た 。 特 に シ ン グ ル マ ザ ー の 貧 困 の 程 度 は 深 刻 と 考 え ら れ て い る 。 そ の よ う な 意 味 で い う と 、 今 回 の 調 査 にお い て も父 親 不 在 の家 庭 が 半 数 あ っ た が 、 母 親 が 貧 困 状 態 の中 で子 ど も の養 育 に 孤 独 に あ た らざ る を 得 な い 状 況 で 虐 待 行 為 を 起 こ し て し ま っ た と 想 像 す る に 難 く な い 。 そ の背 景 と し て 、 こ の よ う な 貧 困 状 態 に よ る 経 済 的窮 屈 感 は 、 保 護 者 を 抑 う つ 的 に さ せ 、 そ し て そ れ が 子 育 て の 仕 方 に もマ イ ナ ス に 働 く と い う こ と が 挙 げ ら れ よ う ‰ 月 々 の支 払 い に 困 る等 の 心 配 事 に 日常 的 に 気 を 取 ら れ てい る と、 フ ラ スト レ ー シ ョ ン や 抑 う つ 感 、 や る気 の無 さ、 未 来 に対 す る 悲 観 な ど の否 定 的 な 感 情 を 持 ち や す く な る と い う ので あ るlO)。 実 際 、 本 調 査 の 個 別 事 例 の詳 細 か ら 、 虐 待 を し た養 育 者 の メ ン タ ル ヘ ル ス 問 題 が 見 え 隠 れ し て い た 。 本 調 査 の 相 談 時 に 確 認 で き た だ け で、 う つ 病 や パ ニ ッ ク 障 害 、 知 的 障 害 な ど の 病 気 ・ 障 害 を 抱 え る 養 育 者 が212 例 中40 名 も い た の で あ る。 松 宮 の 調 査11)に お い て も、 児 童 虐 待 を 理 由 に 児 童 養 護 施 設 に 入 所 し て い る 子 ど も の 調 査 結 果 か ら、 そ れ ら の 養 育 者 の 4割 も が ア ル コ ー ル 依 存 症 や人 格 障 害、 知 的 障 害 、 う つ 病 、 統 合 失 調 症 な ど の 精 神 障害 を 患 って い た と し て い る 。 加 え て 、 虐 待 を し て し ま う 虐 待 親 の 中 に は、 自 分 が 被 虐 待 児 で あ っ た と い う こ と も多 く 、 被 虐 待 児 の 2 − 3割 が、 親 に な っ た 時 に 虐 待 親 に な る こ と が 知 ら れ て い る 。 ま た 、 虐 待 が 起 こ る 背 景 に ド メ ス テ ィ ッ ク バ イ オ レ ン ス ① V) を 受 け て い た と い う 母 親 も多 く 、 本 調 査 に お い て も 把 握 で き た だ け で212 事 例 中18 例 が、 DVを 虐 待 の 要 因 と し て 相 談 に 至 っ て い た 。 海 外 の 虐 待 を し た 親 の 調 査 結 果 で は 、 こ れ ら の 被 虐 待 体 験 やDV 等 な ど に よ っ て 心 に ト ラ ウ マ を 負 い −9 −

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市町村における児童虐待相談の実態

PTSD (post-traumatic stress disorder : 外 傷 後 スト レ ス 障 害 ) に な っ た 者 は 4 割 近 く に 上 る

と の こ と で あ っ た 几 当 然 、 そ の よ う な 虐 待 やDV 等 の 暴 力 が 絶 え な い 家 庭 で 育 っ た 子 ど も へ の 影 響 は 計 り 知 れ な い 。 そ れ ら の 子 ど も は、 思 春 期 頃 に な っ て 家 出 を し 早 す ぎ る 性 行 動 に 走 り 、 異 性 と 同 棲 や 半 同 棲 を 始 め て 自 分 の 居 場 所 を 作 ろ う と す る こ と が多 い と 言 わ れ て い る。 彼 ・ 彼 女 の 多 く が 自 分 の 家 庭 で 満 た さ れ な い 孤 独 を 、 恋 愛 と い う 形 で 庇 護 さ れ た い と 願 う 表 れ で もあ る の だ と い う1几 し か し、 そ の 後 結 婚 に至 る 若年 夫 婦 は 、 学 歴 も 低 く、 経 済 的 基 盤 も不 安 定 な こ と が 多 く、 か つ、 育 児 を 始 め る 際 に そ ば で 育 児 の手 助 け し て く れ る 人 が い な い 孤 立 し た 状 態 に あ る 。 自 ら が 愛 を 受 け な い で 育 っ た 場 合 に、 ど う や っ て 子 ど もを 愛 し、 育 て る こ と が出 来 る と い う の で あ ろ う か。 結 局 、 親 の 自 覚 が あ る か 否 か は 別 に し て 、 虐 待 が 起 こ っ て し ま う こ と も あ る 。( 多 く の 場 合 は 被 虐 待 親 に 虐 待 を し て い る と い う 認 識 が な い 。) そ し て そ こ に 虐 待 一 被 虐 待 の 負 の 世 代 間 連 鎖 が 誕 生 し て し ま う 。 こ れ ら の 虐 待 の 背 景 を 考え る と 、 児 童 虐 待 を 受 け た 子 ど も の みな ら ず、 そ の 基 に あ る 養 育 者 自身 へ のヶ ア も連 動 さ せ て 支 援 を 考 え て い くこ と が 重 要 課 題 に な るで あ ろ う。 < 予 防 的 取 り 組 み の 視 点 > 市 町 村 で 取 り 上 げ ら れ る 児 童 虐 待 相 談 は 、 重 篤 な 身 体 的 虐 待 は め っ た にな く、 比 較 的 軽 微 な 身 体 的 虐 待 や ネ グレ ク ト と心 理 的 虐 待 が 多 くを 占 め て い る と い う 報 告 が あ る14)。 実 際 、 本 調 査 にお い て もネ グレ クト 事 例 が多 く、 比 較 的 軽 症 と みな さ れ が ち のネ グレ クト は、 在 宅 支 援 に よ っ て 市 町 村 が主 な 対 応 を 行 う こ と に な っ て い た。 で は 、 ネ グレ クト と は 如 何 な る も の で あ ろ う か 。 ネ グ レ クト の 定 義 は 表2. に あ る よ う に 、 保 護 の 怠 慢 や 拒 否 によ り子 ど もの 健 康 状 態 や安 全を 損 な う 行 為 を 指 す。 そ れ ら のネ グレ クト は、 身 体 的 虐 待 等 と 同 様 に、 さ ま ざ ま な 影 響 を 子 ど も に与 え る こ と が 知 ら れ て い る 。 田 中15)に よ る と、 ネ グ レ ク ト を 受 け た 子 ど も に見 ら れや す い 問 題 と し て、 愛 着 形 成 の 障害 、 他 者 へ の共 感 能 力 の 低 下 あ る い は 形 成 不 全、 仲 間 か ら の孤 立 、 知 的 機 能・ 認 知 発 達 の 低 下 、 学業 不 振 、 引 き こ も り、 不 安 ・ 恐 怖 、 抑 う つ、 身 体 化 、 暴力 、 非 行 等 が 挙 げ ら れ る と い う 。 つ ま り 、 ネ グ レ ク ト は子 ど も に と っ て 、 生 涯 に わた っ て 影 響 を 及 ぼ す 重 大 な 問 題 で あ る。 そ し て 、 そ こ に求 め ら れ る支 援 と は、 ネ グレ クト ケ ー ス に対 し て 経 過 を 観 察 し て い ぐ 見 守 り ” 支 援 だけ で は な く、 も っ と 積 極 的 な サ ポ ー ト 体 制 で は な か ろ う か と 考 え ら れ る 。 実 際 竹 中16)も、 児 童 虐 待 に つ い て は、 要 保 護 児 童 対 策 地 域 協 議 会 ( A 市 に お い て は 図6. の 児 童 虐 待 防 止 ネ ット ワ ー ク で 行 わ れ る 定 期 的 な 会 議 ) の よ う な 市 町 村 児 童 虐 待 対 応 体 制 が あ っ て も、 そ の体 制 だ け で は 不 十 分 で あ る と 述 べ て い る 。 そ し て 、 日常 的 に 児 童 家 庭 相 談 ・ 子 育 て 支 援 実 務 を 行 う 機 関 ( 児 童 家 庭 相 談 ・ 子 育 て支 援 セ ン タ ー 〈 仮 称 〉 ) の 設 立 が 必 要 で は な い か と 提 案 し て い る。 確 か に 、 親 子 関 係 の問 題 を 育 児 や し つ け 上 の 問 題 が 起 き て か ら対 応 す る の で 遅 い 。 あ ら か じ −10 −

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市町村における児童虐待 相談の実態 め リ ス ク の 高 そ う な 家 庭 に 対 し て 定 期 的 な 面 接 や 訪 問 が で き る の で あ れ ば、 ネ グ レ ク ト も深 刻 化 し な い こ と が 想 定 で き る 。 特 に、 地 域 社 会 の 人 間 関 係 が 希 薄 化 す る 中 で、 育 児 不 安 を 抱 え る 母 親 が 増 加 し て い る と 言 わ れて い る。 こ れ ら の 母 親 が 気 軽 に セ ン タ ーに 立 ち 寄 り 相 談 で き る の で あ れば 、 そ の 不 安 も 軽 減 す る こ と で あ ろ う。 ま た、 虐 待 の リ ス ク の高 い 若 年 妊 娠 出 産 を す る 者 に 対 し て、 母 子 手 帳 発 行 段 階 か ら セ ン タ ー が 様 々 な 形 で 関 与 す る 体 制 を 取 れ る と す る の で あ れ ば 、 養 育 不 全 の リ ス ク を 早 め に キ ャ ッ チ し、 気 に か け て い く こ と が 可 能 に な る だ ろ う。 更 に ネ グ レ クト ケ ー ス等 に、 セ ン タ ー を 通 じ て ホー ムヘ ル プ 等 を 派 遣 し 日 常 生 活 の 支 援 を 提 供 で き れ ば 、 生 活 が 安 定 す る こ と で 更 な る 虐 待 の抑 止 が 期 待 で き る 。 参 考 ま で に 述 べ る と、 虐 待 大 国 と言 わ れ る ア メ リ カ で は、 若 年 の 母 親 に 対 し て 、「 テ ィ ー ン・ ペ ア レ ント ・ プ ロ グ ラ ム 」 と い う、10 代 の 親 の 子 育 てを 支 援 す る プ ロ グ ラ ム が 各 地 で 広 く 実 施 さ れ る よ う に な っ てい る と い う。 自 分 の家 族 か ら も サ ポ ー ト が受 け ら れな い10 代 の 母 親 に 対 し て、 子 ど も と 暮 ら せ る 場 所 を 提 供 し、 相 談 員 が さ ま ざ ま な 日 常 生 活 の サ ポ ー ト を 行 っ た り 相 談 相 手 にな っ た り す る と い う 。 ま た 、 妊 婦 ・ 乳 幼 児 を もつ 母 親 につ い て は 、 圃 一 3歳 児 二 次 的 予 防 イニ シ ア テ ィ ブ」 とい う ア ウト リ ー チ・ プ ロ グ ラ ムを 実 施 し てい る とい う。 病 院 な どで サ ー ビ ス 対 象 者 の ス ク リ ー ニ ン グを 行 い 、 虐 待 ハ イ リ ス クの 者 ( ア ル コ ー ル ・ ド ラ ッ ク 使用 、 失業 、 一 人 親 、 社 会 的 孤 立 な ど ) を 選 定 す る とい う。 そ し て 家 庭 訪 問 や サ ポ ート グ ル ープ の 紹 介 、 カ ウ ン セリ ン グ サ ー ビ ス の 提 供 な ど を 行 う 。 郡 の 公 衆 衛生 局 や コ ミュ ニ テ ィ の 民 間 福祉 団 体 に 委 託 し て 行 っ て い る とい う。 さ ら に、 乳 幼 児 を もつ 親 の育 児 支 援 サ ー ビ ス と し て 、 委 託 さ れ た 大 学 が 各 地 域 で 子 ど も へ の 育 児 指 導 の プ ロ グ ラ ムを 実 施 し て い る と い う 。 例え ば 、 子 ど も が 言 う こ と を 聞 か な か っ た り、 大 声 で 叫 ん だ り 、 もの を 投 げ る な ど の不 適 切 な 行動 を と っ た 時 に 、 ど の よ う に対 処 す れ ば よ い か と い っ た こ とを 具 体 的 に受 講 者 と 双 方 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンを 図 る 中 で 教 え あ う と い う。 実 際 、 そ の プ ロ グ ラ ムを 受 け た 親 た ち は、 虐 待 を し な い で そ の 後 の 人 生 を 送 っ てい る と の報 告 もあ る1≒ こ のよ う に 、 今 後 、 地 域 で 虐 待 対 応 支 援 を 行 って い く 際 に は 、 児 童 家 庭 相 談 ・ 子 育 て 支 援 セ ン タ ー 〈 仮称 〉 の 創設 も 含 め 、 各 地 の 先 駆 的 な 取 り 組 み 例 を 参 考 に し な が ら 、 多 種多 様 な プ ロ グ ラ ムを 、 児 童 相 談 所 を 始 め 市 町 村、 民 間 団 体 、 教 育 機 関 等 が 連 携 し て 実 践 し て い く べ き で は な い か と思 わ れる 。 他 職 種 、 他 分 野 の 市 民 が 知 恵 を 出 し 合 う 中 で 虐 待 を 生 ま な い 社 会 を 模 索 し て い くこ と が、 重 要 で あ ろ う 。 6) おわり に 英 国 のフレ ア首相 は下 記の よう に述べ る。「 …荒廃 した家 に生 まれた子 ど もで も、 緑 の多い 郊外に住 んでいる子 どもと同じ ように、行 き届い た教育 を受け、 健康でい られる チャンスを も つべきだ。 ……私 たちは、 貧 困な 子ど もたちが社会 的な剥奪や 排除にさ らされ続け るという、 社会的不平等 の連鎖を 打ち破 らな ければな らない。 ゆえに、子 どもた ちに社会的 に投 資するこ ― 11 ―

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市町村における児童虐待相談の実態 と が 重 要 な の だコ 今 、 イ ギ リ ス に お い て は、 現 在 、 フ レ ア首 相 の 下 、H32 年 ま で に 貧 困 な 子 ど もた ちを 根 絶 す る と い う 数 値 目 標 が 掲 げ 、 さ ま ざ ま な 施 策 を 導 入 し て い る 途上 に あ る と い う 几 そ の 最 た る 例 と し て 、 イ ギ リ スで 児 童 虐 待 によ っ て 死 亡 事 件 が 起 き る と、 膨 大 な 頁 数 を も つ 報 告 書 が 作 成 さ れ、 そ れ は一 般 の 書 店 や 図 書 館 で も 市 民 に 公 開 さ れる 。 市 民 、 地 方 自 治 体 職 員 、 政 府 関 係 者 の 間 で 匚社 会 の 子 ど も 」 匚社 会 的 共 同 親 」 と い う 意 識 が 浸 透 し て い る 所 以 で あ る とい う18)。 さ ら に、 そ れ ら の 児 童 虐 待 死 亡 例 の報 告を 受 け て、 今 後 の方 針 と し て の 文 書 も発 行 し 、 例 え ば そ の 文 書 の 中 で 、 ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー に 高 水 準 の 訓 練 を 受 け さ せ 、 そ れ ら の 者 に 適 切 な 虐 待 対 応 を 行 っ て も らう と い っ た 具 体 的 な 提 言 が 盛 り 込 ま れ、 そ の財 政 措 置 が 取 ら れ る ので あ る≒ 一 方 、 日本 政 府 は 、 私 た ち の将 来 の 財 産 と も い え る 社 会 を 蝕 む児 童 虐 待 に 対 し て 、 ど れ ほ ど の 社 会 的 投 資 を 行 っ て い る で あ ろ う か 。 本 稿 で 述 べ て き た よ う な 、 社 会 の底 辺 で 経 済 的 問 題 を 抱 え 、 そ の末 に、 メ ン タ ル ヘ ル ス不 全 に 陥 り児 童 虐 待 と い う 深 刻 な 事 態 を 生 ん で し ま っ て い る 人 々 の 存 在 、 そ し て 、 そ れ ら の人 々 の 貧 困 は 再 生 産 ・ 連 鎖 を 生 ん で い く とい う 事 実 を 再 認 識 す る必 要 が あ る だ ろ う 。 そ の よ う な 格 差 社 会 を 作 っ た の は、 他 で もな い 日 本 政 府 で あ り 私 た ち 市 民 で あ る 。 社 会 の 歪 み が児 童 虐 待 とい う 形 で 投 影 さ れ て い る に す ぎ な い 。 増 え 続 け る 虐 待 件 数 を 直 視 し 、 国 や 地 方 自治 体 は そ の 児 童 虐 待 と い う 固 有 の 領 域 に更 な る 財 政 的 援 助 を 行 う こ と を そ ろ そ ろ 決 断 す る 時 期 に 差 し 掛 か っ て い る と 考 え ら れ る。 市 町 村 の 虐 待 対 応 窓 口 の創 設 が 、 国 の 財 政 的 側 面 の 効 率 か ら み た 地 方 分 権 で はな く、 市 民 に身 近 な コ ミュ ニ テ ィ 形 成 に向 け て の も の で な け れ ば な ら な い だ ろ う 。 市民 の 生 活 が 守 ら れ る よ う に 、 市 町 村 の 相談 窓 口 や、 そ の 他 の 相 談 窓 口 の委 託 等 の充 実 に よ っ て、 児 童 虐 待 の リ ス ク の 高 い 家 庭 へ の 相 談 と ヶ ア 、 生 活 応 援 体 制 を 確 立 し て い くこ と が 先 決 で あ ろ う と 考 え ら れ る。 最 後 に 、 市 民 に お い て も “虐 待 を 許 し て は な ら な い ” と い う 強 い 意 識 を そ れ ぞ れ が 持 ち、 地 域 の 子 ど も は地 域 で 護 る と い う 意 識 を 高 め て い く こ と が こ と に 大 切 で あ る こ とを 付 け 加 え た い。 ;王 1) 厚生 労 働省:H21 年 度 全 国 児童 福 祉主 管 課 長 ・ 児 童相 談 所長 会議H21 年 度 7月14 日報 告 資 料. 2) 厚 生 労 働省 : 今 後 の児 童 家 庭相 談 体 制 のあ り 方 に 関 する 研 究 会. H18 年 3月23 日報 告 書. 3) 厚 生 労 働 省 : 市 町 村 の 児 童家 庭 相 談 業 務 の 状 況 及 び 要保 護 児童 対 策 地 域 協 議 会 の 設 置 状況 等 につ い て.H 20 年 4月 4) 志 村 浩二: 市 町村 にお け る 児童 家 庭 相談 の実 態 と今 後 の 課題 一亀 山 市 子ど も総 合支 援 室 の 取 り組 みを 参考 に. 子 ど もと福 祉. vol.2, 72-78, 2009. 5 ) 才 村 純 他 : 虐 待 対 応 等 に 係 る 児童 相 談 所 の 業 務 分 析 に 関 す る調 査 研 究 (2 ).日 本 子 ど も家 庭 総 合 研 究 所 紀 要. 41, 129-174, 2005. 6 ) 高 橋 重宏 他 : 児 童 福祉 司 の 職務 と スト レ スに 関 す る研 究 .日 本 子 ど も家 庭 総 合研 究 所 紀 要. 38,7-48, 2002. - 12 −

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市 町村 に お け る児 童 虐 待 相談 の 実 態

7) 児 童 虐待 等 要 保 護 事 例 の 検 証 に 関 す る専 門 委 員 会 : 子 ど も 虐 待 に よ る死 亡 事 例 等 の 検 証 結果 等 につ い て . 第二 次 報 告.社会 保 障 審 議会 児 童 部 会, H18 年 3月 .

8) 読 売 新 聞: 一 人 親家 庭の54 %「 貧 困 」.東 京 朝 刊, H21 年11月14 日.

9 ) Conger, R., Donnellan, B : An interactionist Perspective on 七he Socioeconomic Conteχt of Human Development, "Annual Review of Psychology, 58, 175-199. 2007.

10) 山 野 良一 : 子 ど も の最 貧 国 ・ 日本 一学力 ・ 心 身 ・ 社 会 にお よ ぶ 諸影 響 .光 文 社 新書, 167-170, 2008. 11) 松 宮 透 高 : 被 虐 待 児 童事 例 に み る親 の メ ン タ ル ヘ ル ス問 題 と そ の 支 援 課 題.川 崎 医 療 福 祉 学会 誌.18 (1 ), 97-108,2008. 12 ) 小 野 善朗 : 精 神 科医 療に お け る 児童 虐 待.臨床 精 神 医 学, 3282), 173-178, 2003. 13 ) 笹 田 琴美 : 女 性 の 貧困 と 暴力 の連 鎖 .総 合 社 会福 祉 研 究, 35. 46-54, 2009. 14) 小 川 衛 子: 児 童 相 談所 と 市 町村 児 童 家 庭 相 談窓 口 と の連 携 .子 ど も と福 祉. vol.2, 66-71, 2009. 15) 田 中 究: 虐 待 を受 け た子 ど も の心 理 .治 療87 (12):3193-3199, 2005. 16 ) 竹 中哲 夫 : 児 童 相 談 所・ 児童 相 談 の現 状 と 展 望 一 児 童 相 談 の 制度 設 計 を め ぐっ て .日本 福 祉 大 学 社 会 福 祉 論 集. 115 号 ,2006. 17) 原 田 綾 子:「 虐 待 大国 」 ア メ リ カの 苦 闘.ミネ ル ヴ ァ書 房,188-203,2008. 18) 田 邉 泰美 : イ ギ リ ス の児 童 虐 待 防止 と ソ ー シ ャル ワ ー ク.明 石 書 店 ,399-400,2006. 19 ) 訳 者 代 表 ; 柏 野 健 三 ,共 訳 ; 相 川 貴 文・ 大 岡 由 佳・ 才 村 眞 理 ・ 杉 本 正 ・ 渡辺 嘉久 : 英 国 の挑 戦 − い か に し て 子 ど もを 虐 待 か ら 守 るの か .紀 伊 国屋 出 版 会 .( 印 刷中 ). ― 13 ―

参照

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