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意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察  ─ 大学生の中学校体育授業に対する意識に着目して ―

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意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察

── 大学生の中学校体育授業に対する意識に着目して ──

木 山 慶 子・國 安 花菜子

A Study about Good Physical Education Classes:

Focused on University Studentsʼ Learned Situation in Junior High School

Keiko KIYAMA and Kanako KUNIYASU

群馬大学教育学部紀要 芸術・技術・体育・生活科学編 第55巻 43―53頁 2020 別刷

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意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察

── 大学生の中学校体育授業に対する意識に着目して ――

木 山 慶 子1)・國 安 花菜子2) 1)保健体育講座 2)教育学研究科 (2019年9月25日受理)

A Study about Good Physical Education Classes:

Focused on University Studentsʼ Learned Situation in Junior High School

Keiko KIYAMA and Kanako KUNIYASU

Faculty of Education, Health and Physical Education, Gunma University (Accepted on September 25th, 2019) キーワード:意欲的,体育授業,中学校,大学生の意識調査

Ⅰ はじめに

 保健体育科の目標には、「心と体を一体として捉え、生涯にわたって心身の健康を保持増進すること」(中 学校学習指導要領,2017)が掲げられている。また、中教審(2005)は、体育は他の教科・科目ではできな い身体運動を通しての「経験」ができる教科・科目である、としている。  大築(2009)は、人間として生きていくための基礎的能力の総称である「体力」について、「憲法25条に 定められた『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を行使する必要不可欠な活動資源であり、よく鍛 えられ、健康で活力ある身体は、豊かな知識や流暢な外国語と同様に、それ自体が一つの身に付いた教養で ある。」と述べ、体力およびそれらを養う身体教育体育の重要性を指摘している。  しかしながら、体育は受験科目にないこと等により、受験科目に比べ軽視されているというイメージがあ り、中教審(2002)は、保護者をはじめとした国民の意識の中で、人を知識の量で評価しがちであったこと により、子どもの外遊びやスポーツの重要性を子どもの学力の状況に比べ軽視する傾向が進んだ、と述べて いる。  一方、近年の研究では、子どもの体力と学力に関連性があることが報告されている。新本ら(2016)は、 体力測定項目と学力測定項目間で多くの相関関係が認められたとしている。また、谷口ら(2010)は、体力 に自信のある子どもたちは学習意欲が高く、子ども期における体力と学力には関連性が存在する可能性を示 唆している。  このように、体育は心身の発育のみならず、学力向上においても有効な教科であると考えられる。また、 文部科学省は、変化の激しいこれからの社会を生きる子どもたちに身に付けさせたい「確かな学力」「豊か な心」「健やかな体」の3つを「生きる力」として掲げており、これらの力を育むうえでも体育は重要な教 群馬大学教育学部紀要 芸術・技術・体育・生活科学編 第55 巻 43―53 頁 2020 43

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科であると言える。よって、学習者に「体育が重要である」という意識を持たせ、意欲的に取り組ませる必 要がある。  そこで本研究では、大学生への質問紙調査を実施し、体育授業に対する認識の実態を把握する。それらの 結果から、意欲的に取り組むことができる体育授業の在り方について考察することを目的とする。

Ⅱ 研究方法

1.調査対象  群馬大学の1年生267名、及び群馬大学教育学部保健体育専攻の1~4年生56名、の計323名である。授 業の際に質問紙を配布し、調査の主旨に同意を得られた者を対象とした。 2.調査期日  2018年12月に質問紙調査を実施した。 3.質問紙の内容  岡野・山本(2003)の先行研究をもとに作成した。これらの質問に、「体育授業に意欲的に取り組むため に必要な条件は何であると思うか」「体育における“学力”とはどのような力であると思うか」「体育におい て必要な“学力”とは何か」を加えた全11問である。質問の内容は以下の通りである。  なお、中学校時は義務教育であり、体育に関する質問も中学校時のことを聞いているため、部活動経験に ついては中学校時の所属部活動を回答してもらった。 【1】個人に関すること(学部、性別、部活動経験) 【2】体育に関すること     ①体育はどのような教科か     ②体育の目的はどのようなものであると思うか     ③体育授業の進められ方・行われ方はどうであったか     ④体育の先生は授業中どのように指導してくれたか     ⑤体育の時間数についてどう思うか     ⑥体育授業に意欲的に取り組むために必要な条件は何であると思うか     ⑦体育における「学力」とはどのような力であると思うか     ⑧体育において必要な「学力」は何か 4.調査方法  質問紙は授業の担当教員に配布を依頼し、授業時に教員経由で学生へ配布した。回収ボックスを設け、対 象者は記入後、随時回収ボックスへ提出する形式をとった。配布から提出までの期間を1週間とした。  なお、収集したデータについては、研究のみで利用することとし、個人情報保護の配慮を最大限に行った。 5.分析方法  分析には、Excel及びSPSSを使用した。  また、教育学部保健体育専攻生は、教育学部の他専攻生と体育に対する意識に差があることが予想された ため、教育学部保健体育専攻生と教育学部他専攻生に分けて分析を行った。

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Ⅲ 結果と考察

 群馬大学の教育学部、社会情報学部、理工学部、医学部の1年生267名、教育学部保健体育専攻の1~4 年生56名、計323名から回答を得た。 1.個人に関すること 1─1.所属学部  教育学部(保健体育専攻を除く)は47名(14.6%)、社会情報学部は27名(8.4%)、理工学部は120名 (37.2%)、医学部は73名(22.6%)、保健体育専攻は56名(17.3%)であった。 1─2.性別  男性は158人(48.9%)、女性は165人(51.1%)であった。 1─3.部活動経験  中学校において、運動部に所属していた者が246人(76.2%)、文化部に所属していた者が69人(21.4%)、 部活動に所属していなかった者が8人(2.5%)であった。中学校において、運動部に所属していた者は全 体の約4分の3を占めた。 2.体育に関すること 2─1.体育はどのような教科か  体育がどのような教科であるか(図1の8項目)について、「とてもそう思う」「わりとそう思う」「あま りそう思わない」「全然そう思わない」の4件法で回答を求めた。さらに、「とてもそう思う」「わりとそう 思う」を「思う群」、「あまりそう思わない」「全然そう思わない」を「思わない群」として、検討した。  それぞれの項目について「思う群」の人数の割合を図1に示す。 得意 成績が よいと 嬉しい 好きだ し 楽しい 大切 役に立 ちそう 不安 意欲が 出る 必要 学んで よかっ た 教育 36.2 44.7 72.3 57.4 63.8 59.6 72.3 66.0 66.0 社会情報 37.0 55.6 55.6 33.3 55.6 51.9 51.9 59.3 63.0 理工 26.7 40.8 54.2 52.5 47.5 52.5 47.5 54.2 51.749.3 60.3 72.6 65.8 60.3 50.7 72.6 71.2 67.1 保健体育 94.6 73.2 98.2 78.6 76.8 41.1 92.9 80.4 85.7 0 20 40 60 80 100 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図1 体育はどのような教科か 意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察 45

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 その結果、以下のことが考察された。 ・「1.一番得意な教科」において、保健体育専攻は高い割合を示したが、他の4つの学部では半数に届か なかった。 ・「3.好きだし楽しい教科」において、保健体育専攻は高い割合を示したが、社会情報学部と理工学部で は半数にとどまった。 ・「4.学校の勉強の中で大切な教科」では、保健体育専攻は8割に届かず、教育学部も6割にとどまった。 また、社会情報学部では3割とかなり低い割合であった。 ・「5.将来役に立ちそうな教科」において、理工学部では5割に届かなかった。 ・「7.がんばろうという意欲が出る教科」において、保健体育専攻は高い割合を示し、教育学部と医学部 も7割を超える結果となった。一方、社会情報学部と理工学部では、半数にとどまった。 2─2.体育の目的  体育の目的(図2の11項目)について、「とてもそう思う」「わりとそう思う」「あまりそう思わない」「全 然そう思わない」の4件法で回答を求めた。さらに、「とてもそう思う」「わりとそう思う」を「思う群」、「あ まりそう思わない」「全然そう思わない」を「思わない群」として、検討した。  それぞれの項目について、「思う群」の人数の割合を図2に示す。  その結果、以下のことが考察された。 ・「1.健康なからだをつくり、体力をつける」においては、全ての学部で9割を超える結果となった。 ・「3.運動技能を身に付ける」「9.いろいろなからだの動かし方をできるようにする」「11.体を動かす ことのおもしろさを身に付ける」という3つの項目において、全ての学部で8割を超える結果であった。 ・「6.がんばってやり通す精神力を鍛える」「8.将来の生活で活かせるような運動の仕方を身に付ける」 体力 スト レス 発散 運動 技能 仲間 づく り 協力 助け 合い 精神 力 体育 的な 知識 運動 の仕 方 体の 動か し方 遊び 心 おも しろ さ 教育 97.9 89.4 91.5 80.9 89.4 89.4 85.1 76.6 89.4 72.3 89.4 社会情報 92.6 77.8 92.6 74.1 88.9 66.7 74.1 59.3 85.2 55.6 81.5 理工 96.7 85.0 84.2 70.0 78.3 66.7 77.5 65.8 83.3 60.8 83.3100.0 97.3 90.4 83.6 90.4 87.7 90.4 80.8 91.8 79.5 93.2 保健体育 98.2 96.4 100.0 91.1 94.6 91.1 94.6 87.5 98.2 85.7 100.0 0 20 40 60 80 100 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図2 体育の目的はどのようなものか

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「10.遊び心を身に付ける」という3つの項目において、社会情報学部と理工学部が、他の学部に比べ、 低い割合を示した。 2─3.体育授業の進められ方・行われ方  体育授業の進められ方・行われ方(図3の7項目)について、「とてもそう思う」「わりとそう思う」「あ まりそう思わない」「全然そう思わない」の4件法で回答を求めた。さらに、「とてもそう思う」「わりとそ う思う」を「思う群」、「あまりそう思わない」「全然そう思わない」を「思わない群」として、検討した。  それぞれの項目について、「思う群」の人数の割合を図3に示す。  その結果、以下のことが考察された。 ・「1.十分に運動する時間をとってくれた」においては、全ての学部で9割を超える結果であった。 ・「2.ていねいに教えてくれた」においては、8割を超えていたのが教育学部のみで、保健体育専攻は6 割に満たなかった。 ・「3.やる気を起こさせてくれた」においては、8割を超えていたのが教育学部のみであった。社会情報 学部と理工学部では6割に届かなかった。 2─4.授業中の教師の対応  授業中の教師の対応(図4の4項目)について、「とてもそう思う」「わりとそう思う」「あまりそう思わ ない」「全然そう思わない」の4件法で回答を求めた。さらに、「とてもそう思う」「わりとそう思う」を「思 う群」、「あまりそう思わない」「全然そう思わない」を「思わない群」として、検討した。 十分な 運動時間 丁寧な指導 やる気を くれた 安全面の 配慮 集団の 決まり を大切に 友だちとの 交流を 大切に 色々な面 から評価 教育 91.5 83.0 83.0 95.7 91.5 87.2 85.1 社会情報 96.3 74.1 59.3 77.8 85.2 81.5 81.5 理工 90.0 70.0 57.5 86.7 79.2 72.5 66.790.4 78.1 68.5 95.9 84.9 86.3 82.2 保健体育 100.0 58.9 69.6 91.1 89.3 85.7 80.4 0 20 40 60 80 100 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図3 体育授業の進められ方・行われ方 意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察 47

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 それぞれの項目について、「思う群」の人数の割合を図4に示す。  その結果、以下のことが考察された。 ・「1.技術やルールを教えてくれた」においては、全ての学部で約9割と高い割合を示した。 ・「4.一緒に練習したり、運動に誘ってくれた」においては、教育学部、社会情報学部、理工学部で約5 割という低い割合を示した。 2─5.体育の時間数について  体育の時間数について、「増やしたほうがよい」「このままでよい」「減らしたほうがよい」「なくしたほう がよい」からあてはまるものを選び回答してもらった(表1)。  その結果、以下のことが考察された。 ・保健体育専攻では、「増やしたほうがよい」と思っている者が約3割である。 表1 体育の授業時間数について 項 目 学     部 計 教育 社会情報 理工 医 保健体育 増やしたほうがよい 714.92 7.46 5.07 9.61933.94112.7) このままでよい 37(78.7) 21(77.8) 103(85.8) 61(83.6) 37(66.1) 259(80.2) 減らしたほうがよい 3 6.42 7.48 6.74 5.50 17 5.3) なくしたほうがよい 0 2 7.43 2.51 1.40 6 1.9) 人数(%)

技術やルールを

教えてくれた

工夫や雰囲気

づくりを

してくれた

練習している

ときに

力を貸してくれた

一緒に練習した

り運動に誘って

くれた

教育

93.6

85.1

80.9

51.1

社会情報

92.6

74.1

66.7

48.1

理工

88.3

74.2

58.3

44.2

89.0

79.5

75.3

61.6

保健体育

87.5

80.4

82.1

71.4

0 20 40 60 80 100 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図4 体育の先生は授業中どのように指導してくれたか

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・保健体育専攻以外の4つの学部では、「このままでよい」と思っている者の割合が約8割である。 ・保健体育専攻以外の4つの学部では、少数ではあるが、「減らしたほうがよい」「なくしたほうがよい」と 思っている者もいる。 2─6.体育授業に意欲的に取り組むために必要な条件は何であると思うか  体育授業に意欲的に取り組むために必要な条件(図5の11項目)について、特に必要だと思うもの3つ を選び回答してもらった。  それぞれの項目の学部別の人数の割合を図5に示す。  その結果、以下のことが考察された。 ・「1.授業がおもしろい」「2.授業の雰囲気がよい」を選択した者が多かった。 ・保健体育専攻以外の4つの学部では、「7.やりたい種目を自分で選択して行うことができる」を選択し た者も多かった。 2─7.体育における「学力」とはどのような力であると思うか  体育における「学力」とはどのような力であるかについて、図6の6項目から一つを選んで回答してもらっ た。  それぞれの項目の学部別の人数の割合を図6に示す。  「その他」には、「先のことを考えて自主的に行動できる力」「授業前後の運動能力の差」「学力的なもので はなく体力に関わるもの」「授業に出席していればよい」「仲間と協力できる力」「努力量や授業への姿勢」 「体の動かし方」「精神力」「やったことないものに挑戦する力」「体育に対する意欲」といった意見が挙げら れていた。 おも しろい 雰囲 気が よい 説明 法が よい 興味 を引 く教材 学ぶ 意義 ICT教 育 種目 を選択 受験 科目 にある 能力 別の 授業 男女 別の 授業 その他 教育 70.2 89.4 38.3 19.1 2.1 2.1 55.3 0.0 17.0 72.3 2.1 社会情報 77.8 74.1 22.2 25.9 0.7 3.7 51.9 0.0 29.6 3.7 3.7 理工 65.0 80.8 28.3 21.7 10.0 1.7 57.5 1.7 19.2 5.8 1.775.3 89.0 31.5 12.3 8.2 1.4 60.3 0.0 15.1 5.5 1.4 保健体育 85.7 28.6 50.0 12.5 3.6 17.9 7.1 7.1 3.6 5.4 1.8 0 20 40 60 80 100 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図5 体育授業に意欲的に取り組むための条件 意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察 49

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 その結果、以下のことが考察された。 ・「考える力」については、保健体育専攻で、8割を超え、他の4学部すべてにおいても5割を超える結果 となった。 ・「伝え合う力」については、保健体育専攻で7割を超え、教育学部、理工学部、医学部においては、ほぼ 半数となった。 ・「運動能力」については、3割~4割程度の結果となった。 ・体育の学力は、「運動能力」や「テストの成績」ではない、と捉えられてはいるが、一方「考える力」「伝 え合う力」「理解する力」であると捉えている者も、5割以下にとどまった。 2─8.体育において必要な「学力」は何か  体育において必要な「学力」とは何かについて、2─8同様、図7の6項目から一つを選んで回答してもらっ た。  それぞれの項目の学部別人数の割合を図7に示す。  「その他」としては、「先のことを考えて自主的に行動できる力」「授業前後の運動能力の差」「学力的なも のではなく体力に関わるもの」「授業に出席していればよい」「仲間と協力できる力」「努力量や授業への姿 勢」「体の動かし方」「精神力」「やったことないものに挑戦する力」「体育に対する意欲」といった意見が挙 げられていた。  その結果、以下のことが考察された。 ・「考える力」について、保健体育専攻では9割を超え、教育学部では7割近くとなったが、社会情報学部、 理工学部、医学部の3学部では、5割にとどまった。 ・「伝え合う力」については、保健体育専攻及び教育学部では7割を超えたが、社会情報学部、理工学部、 医学部においては、5割程度の結果となった。 ・「理解する力」については、保健体育専攻では3分の2を超えたが、社会情報学部では3割に満たなかった。 考える力 伝え合う力 理解する力 運動能力 テスト等で よい 成績をとれ る力 その他 教育 59.6 55.3 53.2 31.9 14.9 0.0 社会情報 55.6 40.7 33.3 40.7 3.7 7.4 理工 59.2 49.2 48.3 36.7 9.2 3.353.4 58.9 42.5 45.2 6.8 2.7 保健体育 82.1 71.4 64.3 37.5 3.6 3.6 0 20 40 60 80 100 ( ) 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図6 体育における「学力」とはどのような力であるか

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・体育に必要な学力は、「運動能力」や「テストの成績」ではない、と捉えられてはいるが、一方「考える力」 「伝え合う力」「理解する力」であると捉えている者も、保健体育専攻以外の学部では、多いといえない結 果となった。 3.まとめ  質問紙調査の結果をまとめると以下の通りになる。 ・体育は、「一番得意な教科」「好きだし楽しい教科」「がんばろうという意欲が出る教科」という3つの項 目で、保健体育専攻が9割を超えた。また、全ての項目において社会情報学部は6割以下、理工学部は5 割以下にとどまった。一方で、「大切な教科」と回答したものは、保健体育専攻でも8割に届かず、体育 はあまり大切な教科ではない、との意識を持っていると推察された。 ・体育の目的は、「健康なからだをつくり、体力をつけること」「運動技能を身に付けること」「いろいろな からだの動かし方をできるようにすること」「体を動かすことの喜びやおもしろさを身に付けること」と いう4つの項目で、どの学部も8割を超える結果となった。 ・体育授業の進められ方・行われ方は、「十分に運動する時間をとってくれた」という項目で、どの学部も 9割を超える結果であった。一方、「ていねいに教えてくれた」「やる気を起こさせてくれた」という項目 では、7割程度にとどまり、加えて、学部間で差がみられた。 ・体育の先生の指導は、「技術やルールを教えてくれた」という項目で、どの学部もほぼ9割を示した。一方、 「困ったときや練習しているときに力を貸してくれた」「一緒に練習したり、運動に誘ってくれた」という 項目では、学部間で差がみられた。 ・「体育授業に意欲的に取り組むために必要な条件」においては、「授業がおもしろい」を選択した者の割合 が7割を超えた。また、保健体育専攻以外の4つの学部では、「授業の雰囲気がよい」「やりたい種目を自 分で選択して行うことができる」を選択した者の割合も高かった。 考える力 伝え合う力 理解する力 運動能力 テスト等で よい 成績をとれ る力 その他 教育 68.1 70.2 57.4 25.5 14.9 0.0 社会情報 48.1 44.4 29.6 40.7 3.7 3.7 理工 53.3 55.0 39.2 36.7 9.2 3.349.3 58.9 37.0 39.7 6.8 2.7 保健体育 91.1 73.2 64.3 48.2 5.4 1.8 0 20 40 60 80 100 ( ) 教育 社会情報 理工 医 保健体育 図7 体育において必要な「学力」は何か 意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察 51

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・「体育の学力」については、何を体育の学力と捉えるのか、そしてどのような体育の学力が必要なのかを 理解しているものが多くない結果となった。前学習指導要領(文部科学省,2008)より、体育的学力は「技 能」「態度」「知識,思考・判断」と考えるようになっている。さらに新学習指導要領(文部科学省, 2017)においても、学習者の身につけるべき資質・能力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学 びに向かう力・人間性等」としている。むろん、体育・保健体育においても、これら3つの資質・能力を 身につけるための学習内容が系統的に明確に示されている。しかしながら、学習者にそれらが理解されて いない現状にあると言わざるを得ない。

Ⅳ 結 論

 本研究は、大学生への質問紙調査を実施し、中学校における体育授業に対する認識の実態を把握すること によって、意欲的に取り組むことができる体育授業の在り方について考察することを目的とした。  その結果、以下のように結論付けられた。  まず、子どもたちに体育の必要性や重要性を認識してもらうことが大切である。そのためには、学習者が 体育の目標を理解できるような授業を行っていく必要がある。具体的には、各単元のねらいや毎時間のめあ てを明確にし、それを子どもたちと共有することで、何のために行うのか、何をできるようにするのか、子 どもたちが目標を持って授業に取り組めるようにすることである。  また、丁寧な指導や子どものやる気を起こさせる授業を行っていく必要がある。丁寧な指導の具体的なも のとしては、ルールや課題の簡易化、技能面の具体的なフィードバックが挙げられる。また、やる気を起こ させる指導としては、肯定的なフィードバック、全員が“できた”という達成感を味わえるような内容が挙 げられる。  最後に、学習者が求めるようなおもしろい授業や雰囲気がよい授業を展開していく必要がある。おもしろ い授業にするためには、競争やゲーム性のある課題を設定したり、仲間とのかかわりを大切にし、チームで 一体となってできる活動を取り入れていく必要がある。また、雰囲気がよい授業にするためには、仲間同士 で励ましあったり教えあったりする雰囲気をつくったり、全員が約束やルールを守り秩序を保って活動でき るよう指導したり、教師が肯定的な声掛けを行っていくことが必要である。

Ⅵ 今後の課題

 本調査では調査対象校1校および対象学年1年生のみであったため、今後はさらに調査対象を増やしてい くことが必要である。また、今回使用した質問紙の文言に不明瞭な点があり、内容の捉え方に個人差があっ たことが推察されるため、さらにそれらの文言を推敲していく必要がある。また、今回得られた回答は、そ の詳細が不明確であったため、インタビュー調査などを実施することによって、より具体的な内容を把握す ることが必要である。 文献 1)東龍之介・宮本隆信・大塚剛弘(2010)小・中学校における体力と学力の関係について.高知大学学術研究報告,第 59 巻: 109-119. 2)中央教育審議会(2002)子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申) 3)中央教育審議会(2005)健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会これまでの審議の状況―すべての子どもたちが

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身に付けているべきミニマムとは?― 4)文部科学省(2017)中学校学習指導要領保健体育編 5)岡野 昇・山本俊彦(2003)現代の子どもと教師の体育に対する意識調査.三重大学教育学部研究紀要 教育科学,第 54 巻: 33-43. 6)大築立志(2009)教養としてのスポーツ・運動―身体知―.体育の科学,第 59 巻(11):723-727. 7)谷口勇一・田中賢治・西本一雄(2009)子ども期における「体力」と「学力」の関連性.大分大学教育福祉科学部研究紀要, 32(1):129-137. 8)新本惣一郎・三木由美子・山崎昌廣(2016)小学生の体力と学力の関連性.日本生理人類学,Vol.21 No.2:75-82. 9)植田深幸・魚住政男・澤本 章・林川基治・宮崎擴道(2008)学ぶ意欲を高めるための改善に関する研究.研究論叢,第 3 部芸術・体育・教育・心理 58:135-148. 意欲的に取り組める体育授業の在り方に関する一考察 53

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