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商品推薦システム ─ E-Commerce サービスでの推薦システムの活用─

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(1)

1.は

 じ め に

推薦システムの研究は,1994 年に R. Agrawal によっ て提案された相関ルール抽出,およびそのアルゴリズ ムである Apriori [Agrawal 94] によって本格的に開始 された.それ以降,高速化を実現させた頻出アイテム セット抽出アルゴリズムが数多く提案されたり [Han 00, Minato 07],頻出アイテムセット抽出を拡張させ,アイ テムの順序列,部分木構造,部分グラフ構造を抽出対象 とした,頻出順序列発見 [Pei 00, Srikant 96],頻出順 序木抽出 [Asai 02, Zaki 05],頻出サブグラフ抽出 [浅井 04, Yan 02]などが提案されるなど,主に理論的な方面で の研究が盛んに行われていった [宇野 08]. 2000年に入り,E-Commerce が人々の生活に浸透し てくるにつれ,購買履歴データ,閲覧履歴データなど, 大量のユーザ行動データが容易に取得できるようにな り,E-Commerce サービス上での推薦システムの導入が 急速に進んでいった.現在,ユーザの利便性を上げるた め,あるいはより多くの購買を促すために,ほぼすべて の E-Commerce サイトにて推薦システムが稼働してお り,商品の推薦,クーポン配信の最適化,コンテンツの パーソナライズなどに活用されている.本稿では,商品 推薦システムをはじめとする E-Commerce での推薦シ ステムの活用例,推薦システムのアルゴリズム,および その実装方法について紹介していく.

2.EC での

商品推薦システムの活用

E-Commerce(EC)における商品推薦システムは多 様化してきており,複数の手法を適用させ,多角的に商 品をユーザに推薦している.図 1 は 2019 年 1 月時点の 楽天市場の Top ページ*1であるが,Top ページの中に も複数の商品推薦パーツが含まれている. 図 1 の(1)は,リターゲティングと呼ばれる機能で あり,ユーザの商品閲覧履歴データを参照し,直近に参 照した商品をユーザに提示する機能である.商品をユー ザに提示するということから,広義の意味での商品推薦 と捉えることができる.リターゲティングは,一般的な 商品推薦システムよりも CTR*2/CVR*3において,高い パフォーマンスを示す. 図 1 の(2)は,ユーザの過去に購買した商品の中から, 定期的に購入されやすい商品を抽出し,ユーザに提示す る機能である.米・ミネラルウォータなどの食料品,洗 剤などの日用品などが定期的に購入される確率が高いた め,定期購入をするユーザをターゲットとし,商品を推 薦する.定期的に購入されやすい商品は,購買履歴を参 照し,自動的に検知する. 図 1 の(3)は,商品のディスカウントクーポンを配 布する機能である.この機能の裏側には,商品推薦シス

商品推薦システム

─ E-Commerce サービスでの推薦システムの活用─

Item Recommender System

 ─ Use Cases of Recommender Systems in E-Commerce Service ─

平手 勇宇

楽天株式会社楽天技術研究所

Yu Hirate Rakuten Institute of Technology, Rakuten, Inc.

[email protected], http://rit.rakuten.co.jp/

Li Tianyu

(同   上)

Tianyu Li [email protected], http://rit.rakuten.co.jp/

Le Phuc

楽天株式会社 EC データアナリティクス部

Phuc Le EC Data Analytics Department, Rakuten, Inc.

[email protected], https://www.rakuten.co.jp/

Keywords:

e-commerce, recommender system, content-based recommender, collaborative filtering, deep learning. 「推薦システム」

*1 https://www.rakuten.co.jp *2 Click Through Rate:クリック率 *3 Conversion Rate:コンバージョン率

(2)

テムが走っており,ユーザへの推薦商品の中から,クー ポンが有効となっている商品を抽出したうえで,ユーザ に提示している. 図 1 の(4)は,いわゆる一般的な商品推薦システム であり,過去に閲覧した商品を入力とし,当該商品に関 連のある商品を提示している. 楽天 Top ページ以外でも,図 2 に示すように,商品 ページに,「この商品を買った人は,こんな商品にも興 味を持っています」といった Item2Item の商品推薦パー ツを提示したり,ユーザ会員ページ上に,過去に購入し た商品と関連のある商品を,「あなたにおススメの商品」 といった形でユーザに提示している(User2Item の商品 推薦).

3.

商品推薦アルゴリズム

現在の E-Commerce ではさまざまな商品推薦シス テムを適用させているが,ここでは,最も基本的な User2Itemの商品推薦システム*6を例にとり,それに 適用されているアルゴリズムについて紹介する. 商品推薦システムを構築するためのアルゴリズムは, 一般的に,コンテンツベースの手法,協調フィルタリン グの手法が存在する.また,近年,幅広い分野において 深層学習アルゴリズムが活用されているが,商品推薦シ ステムにおいても同様であり,深層学習を用いた手法の 活用が始まっている.さらに,近年の傾向として,各ア ルゴリズムの欠点を補うことを目的とし,複数のアルゴ リズムを組み合わせたハイブリッドなアプローチも提案 されている. 3・1 コンテンツベースの手法 コンテンツベースの手法は,ユーザが過去に興味を もった商品のコンテンツ(商品タイトル,商品説明文, 商品画像などが含まれる)とよく似たコンテンツの商品 を当該ユーザに推薦する手法である.具体的には,ある ユーザが過去に購入した商品あるいは閲覧した商品のコ ンテンツを解析し,ユーザの嗜好を表現する商品の特徴 量を生成する.そのうえで,候補となる商品の中から, 類似する特徴量をもつ商品をユーザに提示する. 商品の特徴量生成にあたっては,次に示すようなさま ざまな手法が存在する. 1.商品カテゴリー,ブランド,サイズ,価格帯と いった商品の属性値をあらかじめ抽出 [Charron 16, Shinzato 13]し,抽出した商品の属性値を商品の特 徴量として扱う方法. 2. 商 品 コ ン テ ン ツ 中 に 含 ま れ る 単 語 を も と に, TF-IDFなどの手法を適用して単語に重みを加え た後に,キーワードベクトル空間に射影する方法 *6 入力が「ユーザ」,出力が「当該ユーザに関連する商品集合」 の推薦システムのことを指す. *4 https://www.rakuten.co.jp(2019/1/10 参照) *5 2019/1/10 参照. 図 1 楽天市場 Top ページにおける商品推薦パーツ*4 図 2 商品ページにおける商品推薦パーツ*5

(3)

[Lieberman 95].

3.商品コンテンツを一つの文書と見立て,Word2Vec [Mikolov 13],Doc2Vec [Le 14] などの Embedding アルゴリズムを適用し,単語や商品にベクトルを与 え,これをもとに商品に特徴量を与える方法. 4.CNN などの深層学習アルゴリズムを適用すること で,商品の特徴量を与える方法 [Zheng 17].テキス ト情報だけではなく商品画像などのバイナリデータ も特徴量の対象とすることができる. コンテンツベースの手法は,後述するコールドスター ト問題に非依存であるという利点があるため,商品デー タベースに登録されたばかりの商品を推薦できるという 利点が存在する.そのため,現在の商品推薦システムお いても,幅広く活用されている.一方で,推薦結果のク オリティが商品コンテンツに大きく依存する点や,複数 ユーザを独立して扱うため,推薦結果の多様性が低くな るなどの欠点が存在する. 3・2 協調フィルタリングの手法 協調フィルタリング手法は,「自分と似たユーザが高 く評価した商品は,自分も高く評価するであろう」とい う仮説のもとでユーザの行動データをもとにして商品を 推薦する手法である.ここで,「高く評価する」というユー ザの嗜好は,商品レビューの評点などの明示的な評価情 報から獲得する場合もあるが,多くの場合には,豊富な 評価情報を得るために,ユーザの商品購買履歴データや 商品閲覧履歴データなどに含まれる暗示的な評価情報か ら獲得する. 協調フィルタリングの手法の基本的な考え方は,ユー ザの評価情報を,図 3 に示すようなユーザと商品の行 列にて表現し,評価行列をもとにユーザの類似性を定義 し,推薦する商品を決定する.評価行列とは,ユーザ i (0 ≤ i< m)の商品 j(0 ≤ j< n)に対する評価情報を r(i, j)とした,m×n の行列のことを指す.考え方はシン プルであるが,登録ユーザ数,取扱い商品数が増えてい くとともに,この行列のサイズも巨大化していくため, メモリ上に展開して短時間で計算するアプローチ(メモ リベース)を取ることが困難となる.したがって,バッ チプロセスなどで事前にモデル構築をしておくアプロー チ(モデルベース)をとることが一般的である. モデルベースの協調フィルタリングのアルゴリズム は,クラスタモデル [Breese 98],SVD による次元削減 など,数多くの手法が存在するが,現在,最も一般的に 採用されているアルゴリズムは,Matrix Factorization (MF)[Koren 09] である. Matrix Factorizationは,図 4 に示すように m×n の 評価行列 R ∈ Rm×nを,0 < d  m, n を満たす m×d の 行列 U ∈ Rm×d,および n×d の行列 V ∈ Rn×dを用い て以下のように近似する手法である. R ≈ UT V (1) ここで,評価値 ri, jは,uiTvjとして表現することがで

きる(ui∈ Rd, vj∈ Rd).Matrix Factorization は,実

際の評価行列 R から,下記の最適化関数を用いることで, ui, vjを学習するアルゴリズムである. minu (ri, j- uiTvj)2+λ(||ui||2+||vj||2) i, vj i, j (2) 協調フィルタリングの手法のよく知られた問題点とし て,コールドスタート問題*7がある.新しく商品データ ベースに登録されたばかりの商品は,ユーザからほぼ購 買・閲覧されていないため,ユーザからの評価情報が不 足している.その結果,協調フィルタリングの手法では, このような商品を推薦対象として抽出することはまれで ある.同様のことは,新規ユーザについても該当する. このように,新しく登録された商品が推薦されにくい, 新規ユーザに推薦する商品が抽出されにくい現象のこと をコールドスタート問題と呼ぶ. 3・3 深層学習アルゴリズムベースの手法 近年,深層学習アルゴリズムの適用がさまざまな分野 において行われているが,商品推薦システムの分野にお いても同様である.ここでは,再帰型ニューラルネット ワーク(Recurrent Neural Network:RNN)ベースの 手法,および Autoencoder(AE)ベースの手法につい て紹介する. RNNは,自己回帰型の構造をもつニューラルネット ワークのことを指し,時系列・順序列の概念をもつデー タのモデル化を行う際に,高い性能を示すことが知られ ている.商品推薦システムにおいても,過去のセッショ ンで購買・閲覧した商品集合を考慮したうえで,現セッ *7 スタートアップ問題とも表現される. 図 3 協調フィルタリングの評価行列

(4)

ションで推薦する商品を決定することは重要であるの で,RNN との親和性が高いと考えられる.こうした考 えから,RNN のモデルを適用した,セッションベース の商品推薦システムがいくつか提案されている [Hidasi 15, Loyola 17, Wu 16a]. Autoencoder(AE)は,入力層,隠れ層,出力層の 3層で構成されており,隠れ層で次元を削減しつつ入力 と出力を一致させるように学習するモデルである.推 薦システムへの適用にあたっては,評価行列に含まれ るユーザベクトルを入力とし,低次元ベクトル(隠れ 層)にエンコードしたうえで,出力層に向けてベクトル を再構成するように学習していく.複数ユーザのベクト ルを同一の AE に学習させることで,さまざまなユーザ の嗜好を反映させていく.AE の商品推薦システムへの 適用の初期取組みとしては,川上らの手法 [川上 14] や, AutoRec [Sedhain 15]がある.また発展形として,AE の代わりに Denoising Autoencoder(DAE)を適用した 手法 [Wu 16b],Stacked Denoising Autoencoder(SDAE)

[Strub 15]を適用した手法などが提案されている.

RNN,AE 以外にも,例えば Multilayer Perception (MLP)[Cheng 16] を適用した手法,制約付きボルツマ ンマシン(Restricted Boltzmann Machine:RBM)を 適用した手法 [Salakhutdinov 07] など,さまざまな手法 が提案されている. 3・4 ハイブリッドの手法 おのおののモデルの欠点を相互に補完し合うことで, 優れたモデルを構築するというアイディアのもとで,複 数のモデルを結合させるハイブリッドの手法も数多く提 案されている. § 1 コンテンツベースの手法×協調フィルタリングの 手法 コンテンツベースの手法,協調フィルタリングの手法 には,それぞれ推薦結果の多様性が低いという問題点, コールドスタート問題が存在する.そこで,両者の欠点 を補うために,両者の手法を組み合わせるアプローチが 効果的である.最もナイーブな実現方法として,コンテ ンツベースの手法,協調フィルタリングの手法を独立し て適用し,それらの出力を組み合わせることで最終的な 推薦結果とする方法があげられる. また,単一のモデルの中に両方のアプローチを組み込 むということもなされている.例として Melville らの手 法 [Melville 02] を以下に示す. 1.ユーザの評価情報を観測済みの既知の部分と,未 観測の未知の部分に分割する. 2.コンテンツ情報を用いて未知の部分の評価情報を 予測する. 3.予測した評価情報を元の評価情報行列に反映させ, 新たな評価行列を生成する. 4.当該評価行列を対象として,協調フィルタリング のアルゴリズムを適用する. § 2 深層学習アルゴリズムベースの手法×協調 フィルタリングの手法 深層学習アルゴリズムベースの推薦手法の高い性能を 示していることから,深層学習アルゴリズムのモデルを 組み込むことで,協調フィルタリング手法の欠点(コー ルドスタート問題)を補おうとする取組みが数多く実施 されている. 代表的なものとして,MLP のモデルと Generalized Matrix Factorization(GMF)のモデルを組み合わせ た Neural Collaborative Filtering(NCF)[He 17], Autoencoderの一種である SDAE のモデルと Probabilistic Matrix Factorization(PMF)のモデルを組み合わせた Deep Collaborative Filtering(DCF)があげられる [Li 15]. NCFは,図 5 に示すようにユーザの Embedding と 商 品 の Embedding の 両 者 を,GMF と MLP に 与 え, GMFと MLP 双方で学習する.最後に両者の出力を結 合し,最終的な評価行列を予測するモデルである.ま た,DCF は,図 6 に示すようにユーザベクトル,商品 ベクトルを対象とした SDAE を構築し,その隠れ層を Matrix Factorizationの Latent Factor とするモデルで ある.DCF をさらに発展する形で,著者らは,商品レ

図 5 Neural Collaborative Filtering(NCF)の構造

(5)

ビュー,商品説明文,ユーザプロファイルなどのさまざ まな形式のデータをモデルに取り込めるモデルを提案し ている [Li 18].

4.

商品推薦システムのアーキテクチャ

本章では,商品推薦システムをどのようにして大規模 サービスを実装しているかについて,楽天市場での事例 を利用して紹介する.図 7 は,楽天市場における商品推 薦システムのアーキテクチャである.以下では,図 7 の 付番に対応して説明する. (1)商品推薦アルゴリズムの適用  商品データ,商品購買履歴データ,商品閲覧履歴デー タをもとにして,3 章で示したような商品推薦リスト を生成する.このプロセスはバッチプロセスによって 実行されデイリーで更新される.通常,複数のアルゴ リズムが適用されているため,アルゴリズムごとに商 品推薦リストの生成を行う. (2)キャンペーン情報,ビジネスルールの適用  セールスイベント,「父の日」などの特集イベント など,イベントに関連のある特定の商品,あるいはキャ ンペーン対象の商品を,他の商品よりも優先的にユー ザに提示したいという事業要件が存在する.また,薬 品やコンタクトレンズに属する商品を推薦してはいけ ないといった,ビジネスルールも存在する.(1)で生 成した商品推薦リストに対して,これらの条件を適用 することで,加工済みの商品推薦リストを生成する. (3)商品推薦パーツの Call  フロントエンド側から,商品推薦パーツの読込みを 実施 . デリバリーシステム側に,対象となるユーザ ID と,商品推薦パーツの提示場所(URL など)を渡す. (4)適用アルゴリズムの決定   デ リ バ リ ー シ ス テ ム に て AB テ ス ト や,Multi-armed Banditアルゴリズムを適用し,商品推薦シス テム全体のパフォーマンスを向上させている.具体的 には,各推薦アルゴリズムの直近のパフォーマンスを 計測し,パフォーマンスに応じてユーザトラヒック割 合を動的に決定する.  この仕組みのもとで,商品推薦パーツを Call した ユーザに対し,どの推薦アルゴリズムの結果を適用す るのかを決定する. (5)キャッシュの問合せ  レイテンシーを下げるために,商品推薦システムに もキャッシュ機構を採用している.キャッシュには, ユーザをキーとした推薦商品群,および商品をキーと した推薦商品群(関連する商品群)などを保持してお く.キャッシュ機構は,一定時間*8経過したエントリ を削除する機能を付与する. (6)直近のユーザの行動を反映  (2)で生成してある加工済みの商品推薦リストは, バッチプロセスで生成されたリストであり,直近の ユーザの行動が反映されていない.そこで,直近で購 入した商品やそれに類似する商品を推薦結果から省い たり,直近で閲覧した商品や,それに類似する商品を 追加したりすることで,直近のユーザの行動を商品推 薦結果に反映させる. (7)商品の在庫を確認  在庫のない商品を推薦することは,単純に機会ロス であるため,推薦商品を提示する前に,在庫があるか どうかを API 経由で確認をする. 図 7 商品推薦システムのアーキテクチャ *8 セール期間中などユーザからのトラヒックが膨大になるタイ ミングでは,キャッシュ保持期間を長めに設定し,キャッシュ ヒット率を上げていく.ユーザからのトラヒックが落ち着いて いるタイミングでは,キャッシュ保持期間を短めに設定し,推 薦結果の鮮度を上げるようにする.

(6)

(8)商品推薦パーツの提示  生成した商品推薦結果をキャッシュに保存したうえ で,フロントエンド側で表示する. (9)アルゴリズムのパフォーマンスの更新  推薦結果を提示したうえで,実際にユーザがクリッ ク・購入したかは,すべて閲覧履歴データ・購買履歴 データに保存されている.これらのデータを参照しな がら,推薦アルゴリズムのパフォーマンスを更新し, デリバリーシステムで動かしている最適化のプロセス にフィードする.

5.その

他の推薦システム

3章では,ユーザに対する商品推薦(User2Item の推 薦システム)について述べてきたが,E-Commerce では, それ以外にもさまざまな推薦システムが存在する.通常 E-Commerceでは,図 8 に示すように,「商品」,「ユーザ」, 「商品カテゴリー」という概念が存在しており*9.それ ぞれの概念間の関連性を定義することで,さまざまな推 薦システムを定義できる.表 1 に,それぞれの概念間の 推薦システムの代表的な用途を示す. さらには,近年,E-Commerce で購入した商品の受 取り方法が多様化しており,自宅への配送以外にも,コ ンビニエンスストアでの受取り,駅などに設置されて いる受取ボックスなどを選択できるようになっている. E-Commerceで購入した商品の配送効率化が喫緊の課題 となっている中で,例えば,商品を購入した際に,当該 ユーザにとって利便性の高い,受取り方法,受取り時間 帯を推薦することで,再配達率を低減させるような推薦 システムも存在する.

6.

課題点と今後の方向性

商品推薦システムは多くの E-Commerce サイトに採 用され,推薦アルゴリズムの改良により,効果を上げて きているものの,下記に示すような課題点が存在しする ため,アルゴリズムのさらなる改善が期待されている. E-Commerceサイト上でのユーザの行動は多くの事象 に影響を受けている.例えば,ユーザの商品閲覧の多く は,検索結果ランキングページからのクリックによって 発生しているため,商品検索エンジンのランキングに大 きく依存している.また,テレビ番組で紹介された商品, SNS上のインフルエンサによって紹介された商品など は,一時的に閲覧数が急上昇する.このように,商品閲 覧データは,さまざまな事象の影響を受けているため, *9 楽天市場のビジネスモデルでは,それに加えて「販売店舗」と いう概念も存在する. 表 1 E-Commerce における推薦システムの例 図 8 中の番号 推薦システムの種類 代表的な用途 (1) Item2Item 商品推薦(この商品を買ったユーザはこの商品も買う):対象商品に関連のある商品集合を提示する.通常は商品ページにて利用される. (2) User2Item 商品推薦・クーポン配信・リターゲティング(あなたにおすすめの商品):対象ユーザに推薦する商品集合を抽出.Top ページや個人ページ,あるいはディスカウントクーポンを提示 する場合に利用される. (3) Item2User 潜在顧客抽出(この商品を購入しそうなユーザ):対象商品を購入する確率が高いユーザを抽出し,商品販売側に潜在顧客として提示する. (4) User2User (2)の商品推薦・クーポン配信や(3)の潜在顧客抽出に活用される.類似ユーザ抽出,潜在顧客抽出:対象ユーザに似た行動をするユーザ集合を抽出する機能. (5) User2Category 商品カテゴリー推薦,検索ランキングへの反映:対象ユーザが興味があると思われる商品カテゴリーを推定する.商品カテゴリーナビゲーションに応用したり,商品検索の検索結果ラ ンキングに反映させる. (6) Category2User イベントキャンペーン通知:商品カテゴリー特有の特集やキャンペーンをユーザに提示する. (7) Category2Category 類似カテゴリー(ナビゲーション):併売されやすい商品カテゴリーや,比較検討されやすい商品カテゴリーをユーザに提示することで,ユーザナビゲーションの最適化を図る. (8) Item2Category カテゴリー推定:商品登録時に商品タイトル.商品説明文,商品画像から当該商品の商品カテゴリーを推定し,商品登録をアシストする. (9) Category2Item カテゴリー内のおすすめ商品:カテゴリートップページなどのページにて,当該カテゴリーのおすすめ商品としてユーザに提示する. 図 8 E-Commerce における概念と推薦システム

(7)

その中から,純粋なユーザの嗜好によって発現したユー ザ行動を抽出することは困難である. また,ユーザにとっての商品の魅力度は時間を追う ごとに変化する.例えば,テレビ番組や SNS 上で紹介 された商品は,その直後から注目度が向上する.商品レ ビューに登録されているレビュー集合も時間を追うごと に変化しているため,例えば肯定的な商品レビューが投 稿され,それが見えやすい位置に表示されている期間は, 当該商品の魅力度は向上する.このように,商品の魅 力度は刻々と変化をしているため,商品推薦システムの CTR,CVR もその影響を受ける.このため,過去のデー タを対象としたオフラインテストでの性能結果と,オン ラインで適用したときの性能結果が大きく異なるといっ た事象が頻繁に発生する. これらの問題に対する現状の対応手段は,4 章で示し たように,多種のデータを対象とした商品推薦アルゴリ ズムを複数個用意し,それらを同時に本番環境にて適用 させ,パフォーマンスをリアルタイムに計測しながら, 適用するアルゴリズムの優先度を動的に変更する [Zhao 18]ことである.このような事象もモデル化することが 可能になれば,商品推薦システムのアーキテクチャがシ ンプルになると考えられる.

◇ 参 考 文 献 ◇

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Knowledge Discovery and Data Mining(PAKDD 2018), pp. 115-127(2018) 2019年 2 月 25 日 受理

著 者 紹 介

平手 勇宇(正会員) 2008年早稲田大学大学院理工学研究科情報ネット ワーク専攻博士後期課程修了.博士(工学).早稲 田大学メディアネットワークセンター助手を経て, 2009年楽天株式会社楽天技術研究所入所.2018 年 関西学院大学社会情報学研究センター客員研究員. 現在,楽天技術研究所東京シニアマネージャー.デー タマイニング,自然言語処理,機械学習に関する研 究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,日本データベース学会各 会員. Li Tianyu 2015年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能 システム科学専攻博士後期課程修了.博士(工学). 2015年 4 月に楽天株式会社に入社.2016 年より楽 天技術研究所所属.現在,楽天技術研究所インテリ ジェンスドメイングループ応用行動解析チームアシ スタントマネージャー.ディープラーニング,機械 学習,データマイニング,推薦システムに関する研 究に従事. Le Phuc 2012年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能 システム科学専攻博士後期課程修了.博士(学術). 株式会社ネットマイルを経て,2015 年より楽天株式 会社 EC データアナリティクス部に所属.現在,シ ステム開発運用の傍ら商品推薦アルゴリズムの改善 に従事.

図 4 Matrix Factorization 手法 [Koren 09]
図 5 Neural Collaborative Filtering(NCF)の構造

参照

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